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  • 特開-保水性測定装置および保水性測定方法 図1
  • 特開-保水性測定装置および保水性測定方法 図2
  • 特開-保水性測定装置および保水性測定方法 図3
  • 特開-保水性測定装置および保水性測定方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077642
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】保水性測定装置および保水性測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/04 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
G01N5/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189709
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】513282515
【氏名又は名称】株式会社モル
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【弁理士】
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】奥原 廣久
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、試料中の保水性を測定するために使用される装置であって、従来の装置よりも簡易な構成を有する装置の提供を課題とする。
【解決手段】本発明は試験試料を収納するための円筒容器と試料のサクションを測定する圧力計を天秤上にセットし、サクションと重量を同時に測定することを特徴とする保水性測定装置である。さらに当該装置は、試料からの水分除去のための手段として、試料を乾燥させるための熱源を具備することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験試料を収納するための円筒容器と試料のサクションを測定する圧力計を天秤上にセットし、サクションと重量を同時に測定することを特徴とする保水性測定装置
【請求項2】
前記円筒容器の試料のサクションを測定する受感部がセラミックスである請求項1に記載の装置
【請求項3】
前記円筒容器の試料を乾燥させる熱源を備えた請求項1に記載の装置
【請求項4】
前記円筒容器の試料を飽和させるマリオットサイフォンによる加水器具を備えた請求項1に記載の装置
【請求項5】
前記円筒容器の試料の乾燥から飽和までの工程における、当該試料の重量と圧力を記録するデータ収録機器を接続した請求項1に記載の装置
【請求項6】
前記円筒容器の試料を乾燥させる熱源の入切、試料を飽和させる加水器具の入切を制御する装置を接続した請求項1に記載の装置
【請求項7】
試料の保水性を測定する方法であって、水で飽和した試料を乾燥させる工程、および水分特性曲線を作成する工程を含むことを特徴とする前記方法


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の保水性測定装置および試料の保水性測定方法に関する。
【0002】
試料中の保水性を知ることは、種々の技術分野または産業分野において重要なことである。例えば土壌の保水性は、家屋を建築する際に事前に地盤の強さなどを知るために重要である。また土壌汚染の調査においては、汚染のメカニズムを知る上で貴重なパラメーターになり得る。
農業分野では、作物を栽培する上で土壌の保水性は作物の生育に大きく影響を及ぼすため、事前に把握する事は重要である。
【0003】
これまで土壌の保水性を測定する方法としては、測定範囲に応じて砂柱法、加圧法、遠心法など(例えば、非特許文献1などの参照のこと)が確立されている。これらの測定方法は、試料に対して圧力や重力を増減させ試料中の水を段階的に脱水、又は加水し、各段階の試料の質量を量ることで各段階における保水量を測定するものであった。
【0004】
しかしながら、従来の装置構成は大きくなりがちで、場所の確保が必要となり、また大きなコストもかかるため、簡易迅速に試料の保水性を測定するには不向きであった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】砂防学会誌、Vol.73,No.3,p.91-94,2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は試料中の保水性を測定するために使用される装置であって、従来の装置よりも簡易な構成を有する装置の提供を解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、装置全体を天秤上に設置し、試料中の水分を取り除く手段として乾燥させる方法を用いることにより、従来装置よりも簡便に試料の保水性の測定を可能にする装置の開発に成功した。
より具体的には、脱水過程の各段階での試料のサクション(サクションとは不飽和の土が、毛管現象によって水を吸い上げている力)は、小型のテンシオメータで測定する。測定装置全体が天秤上に設置されているため、脱水量は重量の減少で取得することができ、保水性試験に必要なパラメーターであるサクションと脱水量を同時に取得可能である。装置全体は天秤上に設置できる大きさであって、その構成も簡素であるため、保水性試験を行う場所の自由性と導入コストの面では、従来の試験方法に対して優位である。
上記知見に基づいて本発明は完成された。
【0008】
本発明は、以下の(1)~(7)である。
(1)試験試料を収納するための円筒容器と、試料のサクションを測定する圧力計を天秤上にセットし、サクションと重量を同時に測定することを特徴とする保水性測定装置
(2)前記円筒容器の試料のサクションを測定する受感部が、セラミックスである上記(1)に記載の装置
(3)前記円筒容器の試料を乾燥させる熱源を備えた上記(1) に記載の装置
(4)前記円筒容器の試料を飽和させるマリオットサイフォンによる加水器具を備えた上記(1)に記載の装置
(5)前記円筒容器の試料の乾燥から飽和までの工程における、当該試料の重量と圧力を記録するデータ収録機器を接続した上記(1)に記載の装置
(6)前記円筒容器の試料を乾燥させる熱源の入切、試料を飽和させる加水器具の入切を制御する装置を接続した上記(1)に記載の装置
(7)試料の保水性を測定する方法であって、水で飽和した試料を乾燥させる工程、および水分特性曲線を作成する工程を含むことを特徴とする、前記方法
なお、本明細書において「~」の符号は、その左右の値を含む数値範囲を示す。
【発明の効果】
【0009】
本発明により保水性試験が容易に実施できるようになる。試験装置の導入コストは従来の試験方法と比較して安価である。
また当該保水性測定器による保水性試験から水分特性曲線を作成することにより、サクションデータから体積含水率への変換が可能になる。ここで「水分特性曲線」とは、土壌のマトリックポテンシャルと含水率との関係である。マトリックポテンシャルとは、土壌水分が毛管作用や吸着により土粒子の隙間に引き付けられている力の大きさを示す。すなわち、圃場等にテンシオメータを設置する場合、設置位置の土壌についての保水性試験を実施する事により、その地点におけるサクションから体積含水率への変換ができ、テンシオメータが含水率測定器としての機能を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】保水性試験器の概要の1例を示す。1~5の構成が保水性試験器本体、6が重量の変化を測定する天秤、7~9の構成が加水器具、10が熱源、11~13の構成が重量の変化と圧力の変化を記録する機器である。12のデータ収録器は、5テンシオメータに接続し圧力変化を記録する。5のテンシオメータが測定した値で、10の熱源と8の電磁弁を13のプログラムリレーによって制御する。乾燥から吸水に至る重量の変化は、11のPC(パーソナルコンピューター)で記録する。
図2】本発明にかかる保水性測定装置を使用して、圧力水頭と体積含水率を測定した結果(水分特性曲線)を示す。縦軸は体積含水率(%)、横軸は圧力水頭(cmH2O)である。
図3】水分特性曲線のヒステリシスと走査曲線を、水分特性曲線「地盤材料試験の方法と解説(第一回改訂版) -二分冊の1-第7章 土の保水性試験(p184)より抜粋し、ここに示す。縦軸はマトリックポテンシャル(kPa) の常用対数値、横軸は含水比(%)(体積含水率%)である。
図4】本発明にかかる保水性測定装置を使用して作成した水分特性曲線を示す。縦軸はマトリックポテンシャル (kPa)の常用対数値、横軸は体積含水率 (%)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
第1の実施形態は、試験試料を収納するための円筒容器と、試料のサクションを測定する圧力計を天秤上にセットし、サクションと重量を同時に測定することを特徴とする保水性測定装置(以下「本実施形態にかかる保水性測定装置」とも記載する)である。
ここで試料とは、粒状や団粒を形成する物であり、例えば土、砂、吸着材などを挙げることができる。また試料を収納するための円筒容器の材質は特に限定されるものではなく、いかなる材質であっても良いが、例えばステンレス等の金属製やアクリル等の樹脂製を挙げることができる。不撹乱の土壌(乱さない試料)を採取する場合は、直接土壌に円筒容器をハンマ等で打ち込んで採取することから、頑丈なステンレス製が望ましい。尚、当該測定装置は市販されている土質試験用のステンレス製試料円筒がセットできる設計である。
【0012】
試料のサクション(吸着力や毛管力および浸透圧などによって保持されている土中水を大気中に引き離す力)を測定する圧力計は、テンシオメータと呼ばれる測定器であって、天秤上に設置する必要性からその形状は小型である方が望ましく、市販品を用いても良い。ここでテンシオメータとは、不飽和帯における土壌水のサクション Ψ m {\displaystyle \Psi _{m}} を測定するための測定器である。この測定器は、多孔質セラミックス(ポーラスカップ)が受感部であり、圧力を測定する機器とパイプ等で接続され、多孔質セラミックス(ポーラスカップ)から圧力計までは水で満たされている。
テンシオメータは主として土壌に埋設し、多孔質セラミックス(ポーラスカップ)に接する土壌水とテンシオメータ内の水ポテンシャルを平衡させ、土壌水が蒸発等によって減少すると、土壌水のマトリックポテンシャルが低下し、テンシオメータ内の圧力も低下する。土壌に水分が加わると、マトリックポテンシャルが上昇し、テンシオメータ内の圧力も上昇する。このようにテンシオメータの圧力は、土壌水のマトリックポテンシャルをあらわしており、土壌水分挙動を把握することが可能な測定器である。
【0013】
テンシオメータの受感部は多孔質セラミックス(ポーラスカップ)であるが、材質はセラミックスに限定する物では無い。空気侵入値を考慮して多孔質な物を選択すれば良い。例えばガラスフィルタ、焼結金属フィルタ等が有る。しかしながら、セラミックスは入手と加工が容易である。ここで空気侵入値とは、フィルタの空気の通りにくさを表す値で、50kPa、100kPa等と表記される。
【0014】
本実施形態においては、試料中の水分を取り除く手段として、試料に対して圧力や重力を増減させて試料中の水を段階的に脱水する従来の手段ではなく、乾燥させる手段を用いている。乾燥させる手段としては風乾(自然乾燥)も選択できるが、熱源を設置するとより効率的に脱水できる。従って本実施形態にかかる保水性測定装置には、試料を乾燥させるための手段が、さらに具備されていても良い。ここで試料を乾燥させるための手段としては、測定装置の材質に多くの樹脂が使われている事を考慮して、熱源は高温になり過ぎない機器が良い。当該測定器は、電球用のソケットにねじ込んで使用するセラミックスヒーター等の保温器具を使用しても良い。これら保温器具は、爬虫類飼育用に広く市販されている。
【0015】
加水器具はマリオットサイフォンの原理を利用しており、その構造は簡素だが一定の流速での滴下が可能である。マリオットサイフォンとは、トリチェリの定理に基づく一定の流量を実現する加水装置である。当該加水器具は、樹脂製のシリンジのプランジャにチューブを通し、大気開放位置を調整できる様に細工されている。シリンジに挿入されているチューブの下端が大気開放位置になるので、ノズル出口とチューブ下端の高さが圧力差になる。それによってシリンジ内の液量にかかわらず、ほぼ一定の流速で滴下が可能となる。チューブ下端を下げると圧力差が少なくなり流速は遅く、チューブ下端位置を上げると流速は速まる。
【0016】
当該保水性測定装置を設置する天秤は、水分の増減を重量として測定するものであり、必ずしも測定値が自動で記録できる物である必要は無い。また、テンシオメータの圧力値も同じである。テンシオメータの圧力値を直接または間接的にでも表示できる物が接続されていれば良い。測定者があらかじめ計画した記録時間に、テンシオメータの圧力とその時の重量を記録すれば良い。ここで間接的とは、指示値が圧力ではなく、電流値や電圧値で出力される場合のことを言う。これらは校正式で圧力値に変換する。
しかし時間を要する測定において、測定者がいちいち記録をとるのは大変である。そこで天秤からの重量データとテンシオメータからの圧力データを、任意に設定した間隔で記録できるPC(パーソナルコンピューター)やデータ収集装置が接続できる。両者のデータ収録時間は同時刻とする。近年の電子天秤では、重量データを外部に出力できる機能を持つ物が多く市販されている。同様に、テンシオメータの出力データも容易に記録できる収録装置が多く市販されている。
【0017】
本実施形態にかかる保水性測定装置は、対象試料を風乾(自然乾燥)または熱源で乾燥し、湿潤については加水器具を使用する。天秤で重量の増減を測定し、圧力計で圧力の増減を測定するが、必ずしも一連の操作を自動で行う必要は無い。しかし時間を要する測定において、測定者がいちいち熱源や加水器具の操作を行うのは大変である。そこで、この一連の操作を自動で行う為の装置を接続できる。脱水過程は乾燥によって行うが、設定した圧力に達したら熱源は停止し、設定したタイミングで加水器具からの加水を開始する。飽和に到達したら加水器具からの加水は停止する。この脱水から飽和までに必要な熱源と加水器具の電源を、プログラムできるリレーに接続して制御する。
【0018】
本実施形態にかかる保水性測定装置は、その構成が極めて簡素であることを特徴とし、適用範囲はテンシオメータで測定することが可能な範囲で、サクション(負圧:pF3以下)、圧力水頭で0~-800cm(~pF2.9)程度である。圧力水頭とは、0cm が飽和を表し、負の値は不飽和を表す。負の値が大きければ大きいほど乾燥した状態を表す。この圧力水頭の絶対値の常用対数値をpFで表す。
ここで保水性の試験方法として、土壌を例に、例えば「地盤材料試験の方法と解説 地盤工学会室内試験規格・基準委員会著」に解説されているが、砂柱法、吸引法、加圧法、遠心法で段階的に脱水させその各段階の質量を測ることで、それぞれの段階における水の保持量を求める方法などが知られている。以下、各脱水法について説明する。
【0019】
砂柱法
0cm ~-100cm (~pF2)一定の自由水面を持つ砂柱の上に試料を載せ、平衡に達するまで排水する。
吸引法
0cm ~-200cm(~pF2.3) 一定の負圧を持つ水を試料内の水に接触させ、平衡に達するまで排水させる。負圧の与え方により、真空ポンプを用いる「減圧法」と、排水ビュレットの水面の高さを調節する「水頭法」がある。
加圧法
0cm ~-15,000cm(~pF4.2) 試料内の水に正の空気圧を負荷し、平衡に達するまで排水させる。セラミックス板を用いる「加圧板法」とセルロース膜を用いる「加圧膜法」がある。
遠心法
0cm ~-15,000cm(~pF4.2) 試料を回転ドラムに入れて一定の回転数で回すことで一定の重力を与え、平衡に達するまで排水させる。
【0020】
上記説明から、本実施形態にかかる保水性測定装置は、その適用範囲から吸引法と加圧法の中間に位置する試験方法に使用可能であるが、排水は乾燥、吸水は加水で実現し、試験試料を収納する為の円筒容器と試料のサクションを測定する圧力計を天秤上にセットし、試料のサクションと重量を同時に測定する事を特徴とする。これは、本発明が簡素であるがゆえに実現できる試験方法である。
【0021】
第2の実施形態は、試料の保水性を測定する方法であって、水で飽和した試料を乾燥させる工程、および水分特性曲線を作成する工程を含むことを特徴とする前記方法である。
従来、水で飽和させた試料の水分を除去する方法としては、上述の通り、試料に対して加える圧力や重力を増減させて試料中の水を段階的に脱水する方法が行われていた。この方法により試料の水分除去を行うためには、大がかりな装置が必要であった。これに対し
本実施形態にかかる方法によれば、試料の水分除去は自然乾燥または簡便な熱源による乾燥によって実施することができる。また本実施形態にかかる方法は、水分特性曲線を作成する工程を含んでおり、この工程により圧力から体積含水率への換算を容易に行うことが可能になる。
【0022】
より具体的には以下に説明を行う。土壌などの試料に含まれる水分を除去させる過程において、サクションおよび重量を同時に測定する。次いで試料に加水し、試料中の水分を飽和させる過程において、サクションおよび重量を同時に測定する。試料のサクションおよび重量測定後の試料を乾燥させ、試料の乾燥重量を計測する。各過程で計測した試料の重量と当該乾燥重量の値に基づいて、各過程の体積含水率を算出する。測定した圧力(圧力水頭としてプロットする)と体積含水率の関係をグラフ化することにより、水分特性曲線を作成することができる。この水分特性曲線を用いて、圧力から体積含水率の換算が可能になる。
【0023】
本明細書が英語に翻訳されて、単数形の「a」、「an」、および「the」の単語が含まれる場合、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り、単数のみならず複数のものも含むものとする。
以下に実施例を示してさらに本発明の説明を行うが、本実施例はあくまでも本発明の実施形態の例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例0024】
1.保水性試験
1-1.装置の設定
図1を参照しながら保水性試験の手順を以下に示す。あらかじめ2セラミックス、4台座および5テンシオメータを脱気し、2セラミックスを飽和させ、セラミックスからテンシオメータのセンサ部までを水で満たした。
1試料円筒と3ボトムプレートの重量を測定し、風袋重量を記録した。試験試料を詰めた1試料円筒を、3ボトムプレートにセットし、セラミックスが差し込まれる部分の試料はφ6mmのパイプで取り除き、重量を測定した綿を穴に詰めて崩れ防止を施した。これらの重量を測定して事前重量として記録した。なお、本実施例で使用した試料は、黒土である。黒土とは、黒色がかった火山灰土で関東ローム層の表層部分から採取することができる。
試験試料を詰めた1試料円筒および3ボトムプレートは、水を入れた容器で浸漬して試験試料を飽和させた後、重量を測定して記録した。3ボトムプレートと4台座を密着させるため、4台座には真空グリスを塗布し、崩れ防止の綿を除去した穴にセラミックスを挿入し、1試料円筒および3ボトムプレートを4台座に密着させた。
天秤にこれらの装置(1~5)を載せ、5テンシオメータを12データ収録器及び13プログラムリレーに接続し、6天秤は11PC(パーソナルコンピューター)に接続した。次いで、7マリオット式シリンジ、8電磁弁、9ノズル、10熱源をセットし、8電磁弁と10熱源は13プログラムリレーに接続した。13プログラムリレーは、圧力が-60kPa(約-610cmH2O)になると「熱源停止」、-80kPa(約-816cmH2O)になると8電磁弁が開き、「加水開始」となるように設定した。さらに、8電磁弁の開閉は、6秒間「開」、5分間「閉」とし、ゆっくりと試験試料が飽和するまで繰り返すようにプログラムした。プログラムリレーによる一連の動作を自動測定とした。
【0025】
1-2.測定
土壌のサクションと水分量の関係を求めるには、測定対象の土壌試料を採取し、種々の方法で「土の保水性試験」が実施されている。
ここで実施する保水性試験は、テンシオメータで測定することが可能な範囲のサクション(負圧:pF3以下)に対する体積含水率を求めることを目的としている。
図1に示す構成により、一定間隔での自動測定で得られた結果を、ここでは連続測定結果とする。本実施例においては、飽和した土壌試料を乾燥する場合の脱水過程から、引き続き乾燥した土壌試料に吸水させる吸水過程まで、試験試料のサクションと試料重量を一定間隔で連続測定した。脱水過程と吸水過程の測定結果は、圧力水頭(cmH2O)と体積含水率(%)として得た。
【0026】
脱水過程から吸水過程までの連続測定で得られた圧力水頭と体積含水率の関係(水分特性曲線)を図2に示す。図2から明らかなように、脱水過程と吸水過程の経路は異なる経路をたどっているが、このように脱水過程と吸水過程の経路が異なる現象は、ヒステリシスと呼ばれている。一般的には、水分特性曲線の同一圧力水頭に対する脱水過程の体積含水率と吸水過程の体積含水率の平均値を求め、圧力水頭と体積含水率平均値の関係を基に、圃場などの現地測定で得られる圧力水頭から体積含水率を求める計算に適用する。
図2では、連続測定で得られた脱水過程と吸水過程の同一圧力水頭(cmH2O)に対する体積含水率の平均値を、破線で表記した。またこの測定例の場合、圧力水頭と体積含水率の平均値の関係は、次の近似式で表すことができる。
【数1】
ここで、yは体積含水率(%)、xは圧力水頭(cmH2O)である。
圃場などの現地測定で得られた圧力水頭をこの近似式に入力することにより、測定対象深度の体積含水率を求めることができる。
【0027】
なお図3は、「地盤材料試験の方法と解説(第一回改訂版)-二分冊の1-第7章 土の保水性試験(p184)より抜粋した「水分特性曲線のヒステリシスと走査曲線」である。排水過程と吸水過程ではヒステリシスがあることを示している。図4は、本実施形態にかかる保水性測定装置(図1に示す構成の装置)によって得られた水分特性曲線(マトリックポテンシャルと体積含水率の関係)である。図3に示した文献からの抜粋と比較の為、図2に示す測定結果(本実施形態にかかる保水性測定装置で測定した結果)を、縦軸はマトリックポテンシャル(kPa)の常用対数値、横軸は体積含水率(%)に変換して図化した。グラフの形状の比較から、排水過程と吸水過程では、図3と同様に本実施形態にかかる保水性測定装置で測定した場合でも、ヒステリシス曲線が示されている事が分かる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、農業、防災、研究などの分野における利用が大いに期待される。
【符号の説明】
【0029】
1 試料円筒
2 セラミックス
3 ボトムプレート
4 台座
5 テンシオメータ
6 天秤
7 マリオット式シリンジ
8 電磁弁
9 ノズル
10 熱源
11 PC(パーソナルコンピューター)
12 データ収録器
13 プログラムリレー

図1
図2
図3
図4