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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077665
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
A61M25/00 530
A61M25/00 534
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189741
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏友
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267BB02
4C267BB08
4C267BB09
4C267CC09
(57)【要約】
【課題】高周波電力がイメージングデバイスによるイメージングに悪影響を及ぼすことを抑制する。
【解決手段】カテーテルは、シャフトと、電極と、リード線とを備える。シャフトは、イメージングルーメンと、イメージングルーメンと並んで配置されたガイドワイヤルーメンとを有する。電極は、シャフトの外周面に設けられている。リード線の少なくとも一部は、シャフトの側壁に埋設されている。リード線の先端部は、電極に電気的に接続されており、リード線は、電極との接続箇所から基端側に向かって延在している。リード線には、高周波電力が印加される。シャフトには、ガイドワイヤルーメンと連通する開口が設けられている。電極は、開口の先端または基端に隣接して配置されている。リード線は、開口の基端よりも基端側に位置する特定位置からリード線の先端に向かうにつれて外径が小さくなるテーパ部を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
イメージングデバイスが挿入されるイメージングルーメンと、前記イメージングルーメンと並んで配置され、ガイドワイヤが挿入されるガイドワイヤルーメンと、を有するシャフトと、
前記シャフトの外周面に設けられた電極と、
少なくとも一部が前記シャフトの側壁に埋設され、先端部が前記電極に電気的に接続されるとともに前記電極との接続箇所から基端側に向かって延在し、高周波電力が印加されるリード線と、を備え、
前記シャフトには、前記ガイドワイヤルーメンと連通する開口が設けられており、
前記電極は、前記開口の先端または基端に隣接して配置され、
前記リード線は、前記開口の前記基端よりも基端側に位置する特定位置から前記リード線の先端に向かうにつれて外径が小さくなるテーパ部を有する、カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルであって、
前記リード線の少なくとも一部は、前記イメージングルーメンと前記ガイドワイヤルーメンとの境界部に配置される、カテーテル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のカテーテルであって、
前記シャフトの前記側壁には、前記特定位置よりも基端側において、導電性の補強体が埋設されており、
前記リード線の基端部は、前記補強体の先端部と電気的に接続されている、カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
CTO(Chronic Total Occlusion、慢性完全閉塞)のように、血管の真腔が脂質成分や石灰成分等からなる閉塞物によって閉塞されてしまう症例がある。このような症例では、造影剤は閉塞物が存在する領域には流れ込まないため、閉塞物がアンギオ画像に写らない。従って、PCI(Percutaneous Coronary Intervention、経皮的冠動脈形成術)によりCTOを治療する場合、IVUS(Intravascular Ultrasound、血管内超音波法)等のイメージングデバイスと、ガイドワイヤと、これら2つのデバイスを挿入できる2つのルーメンを有するカテーテルと、を併用して治療を進めることが考えられる。
【0003】
上記3つのデバイスによるCTOの治療方法としては、例えば、(1)閉塞物の入り口側から、イメージングデバイスで閉塞物の状態を確認しつつ、ガイドワイヤで閉塞物を貫通させる方法や、(2)閉塞物の入り口側において、カテーテルと、カテーテルに挿入されたイメージングデバイスおよびガイドワイヤとを真腔から偽腔へ一旦進入させ、閉塞物を越えた付近で、ガイドワイヤ等を偽腔から真腔へと再進入させる方法が考えられる。このとき、ガイドワイヤによる閉塞物の貫通や偽腔から真腔へのガイドワイヤ等の再進入を比較的容易に実現するために、ガイドワイヤに高周波電力を印加してガイドワイヤ先端付近にプラズマを発生させ、閉塞物や血管組織をアブレーション(切除)することが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/141417号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プラズマを発生させるためにガイドワイヤに高周波電力を印加すると、該高周波電力が、イメージングデバイスによるイメージングに悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
なお、このような課題は、CTOの治療のために血管内に挿入されるカテーテルに限らず、生体管腔内に挿入されるカテーテル全般に共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示されるカテーテルは、シャフトと、電極と、リード線とを備える。シャフトは、イメージングデバイスが挿入されるイメージングルーメンと、前記イメージングルーメンと並んで配置され、ガイドワイヤが挿入されるガイドワイヤルーメンとを有する。電極は、前記シャフトの外周面に設けられている。リード線の少なくとも一部は、前記シャフトの側壁に埋設されている。リード線の先端部は、前記電極に電気的に接続されており、リード線は、前記電極との接続箇所から基端側に向かって延在している。リード線には、高周波電力が印加される。シャフトには、前記ガイドワイヤルーメンと連通する開口が設けられている。電極は、前記開口の先端または基端に隣接して配置されている。リード線は、前記開口の前記基端よりも基端側に位置する特定位置から前記リード線の先端に向かうにつれて外径が小さくなるテーパ部を有する。
【0010】
本カテーテルでは、リード線が、シャフトに形成された開口の基端よりも基端側の特定位置から先端に向かうにつれて外径が小さくなるテーパ部を有する。そのため、リード線に印加される高周波電力がイメージングデバイスによるイメージングに悪影響を及ぼすことを抑制することができる。この結果、カテーテルを用いたプラズマアブレーションを精度よく行うことが可能となる。
【0011】
また、本カテーテルでは、シャフトの基端から電極の位置までリード線が配置されているため、カテーテルのプッシャビリティを向上させることができる。この結果、カテーテルを屈曲した生体管腔内に比較的容易に推し進めることができるため、カテーテルを用いたプラズマアブレーションをさらに精度よく行うことが可能となる。
【0012】
(2)上記カテーテルにおいて、前記リード線の少なくとも一部は、前記イメージングルーメンと前記ガイドワイヤルーメンとの境界部に配置される構成としてもよい。本構成を採用すれば、リード線に印加される高周波電力がイメージングデバイスによるイメージングに悪影響を及ぼすことを効果的に抑制することができると共に、リード線の存在に起因するシャフトのプロファイルの増大を抑制することができる。
【0013】
(3)上記カテーテルにおいて、前記シャフトの前記側壁には、前記特定位置よりも基端側において、導電性の補強体が埋設されており、前記リード線の基端部は、前記補強体の先端部と電気的に接続されている構成としてもよい。本構成を採用すれば、補強体の存在により、カテーテルのプッシャビリティを向上させることができる。この結果、カテーテルを屈曲した生体管腔内に比較的容易に推し進めることができるため、カテーテルを用いたプラズマアブレーションをさらに精度よく行うことが可能となる。また、シャフトの軸方向の一部においてリード線が不要となるため、カテーテルの耐久性を向上させることができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、カテーテル、カテーテルを備えるカテーテルシステム、それらの製造方法や使用方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態におけるカテーテルシステム10の構成を概略的に示す説明図
図2】カテーテル100の詳細構成を示す説明図
図3】カテーテル100の詳細構成を示す説明図
図4】カテーテル100の詳細構成を示す説明図
図5】カテーテルシステム10の使用方法の一例を示す説明図
図6】カテーテルシステム10の使用方法の一例を示す説明図
図7】第2実施形態におけるカテーテル100aの構成を概略的に示す説明図
図8】変形例におけるカテーテル100の構成を概略的に示す説明図
図9】他の変形例におけるカテーテル100の構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.第1実施形態:
A-1.カテーテルシステム10の構成:
図1は、第1実施形態におけるカテーテルシステム10の構成を概略的に示す説明図である。カテーテルシステム10は、例えば、血管に生じたCTOを順行性アプローチで治療する際に用いられる。より具体的には、カテーテルシステム10は、例えば、イメージングデバイスによるガイド下でガイドワイヤを操作しつつ、ガイドワイヤに高周波電力を印加してガイドワイヤ先端付近にプラズマを発生させ、該プラズマによって閉塞物や血管組織をアブレーションすることによりCTOを治療する際に用いられる。
【0017】
なお、図1では、カテーテルシステム10を構成する各装置の一部分の図示を適宜省略している。図1には、互いに直交するXYZ軸を示している。上記各装置において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。図1では、上記各装置がZ軸方向に平行な略直線状となった状態を示しているが、上記各装置は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。これらの点は、以降の図においても同様である。本明細書では、上記各装置およびその構成部材について、先端側の端を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0018】
カテーテルシステム10は、カテーテル100と、イメージングデバイス200と、イメージングコンソール300と、プラズマガイドワイヤ400と、RFジェネレータ500とを有する。
【0019】
図2から図4は、カテーテル100の詳細構成を示す説明図である。図2は、カテーテル100の先端部のX軸方向視側面構成を拡大して示しており、図3は、カテーテル100の先端部のY軸方向視側面構成を拡大して示しており、図4は、図2のIV-IVの位置におけるカテーテル100の横断面構成を示している。
【0020】
カテーテル100は、長尺状の医療用デバイスである。カテーテル100は、長尺状のシャフト110と、シャフト110の基端部に設けられたコネクタ105(図1)とを有する。
【0021】
図2から図4に示すように、シャフト110は、第1インナーシャフト111と、第2インナーシャフト112と、アウターシャフト113とを含む。
【0022】
第2インナーシャフト112は、イメージングデバイス200が挿入されるイメージングルーメン160Lを有する略円筒状の部材である。イメージングルーメン160Lは、第2インナーシャフト112の先端から基端まで第2インナーシャフト112の中心軸に沿って延びている。第2インナーシャフト112の先端には、イメージングルーメン160Lと外部とを連通する先端第2開口110bが形成されており、第2インナーシャフト112の基端には、イメージングルーメン160Lと外部とを連通する基端第2開口110d(図1)が形成されている。
【0023】
第1インナーシャフト111は、ガイドワイヤが挿入されるガイドワイヤルーメン150Lを有する略円筒状の部材である。ガイドワイヤルーメン150Lは、第1インナーシャフト111の先端から基端まで第1インナーシャフト111の中心軸に沿って延びている。本実施形態では、ガイドワイヤルーメン150Lの内径は、イメージングルーメン160Lの内径より小さい。第1インナーシャフト111の先端には、ガイドワイヤルーメン150Lと外部とを連通する先端第1開口110aが形成されており、第1インナーシャフト111の基端には、ガイドワイヤルーメン150Lと外部とを連通する基端第1開口110c(図1)が形成されている。
【0024】
図3に示すように、ガイドワイヤルーメン150Lは、途中の位置(例えば、シャフト110の先端から200mm~400mm程度離隔した位置)において分岐し、シャフト110の側面に形成されたポート110eを介して外部に連通している。以下、ガイドワイヤルーメン150Lから分岐してポート110eに繋がるルーメンを「分岐ルーメン150Lb」という。また、シャフト110のうち、ガイドワイヤルーメン150Lと分岐ルーメン150Lbとの接続部周辺を「分岐部150」という。
【0025】
第1インナーシャフト111と第2インナーシャフト112とは、延伸方向が互いに平行である状態で、Y軸方向に並んで配置されている。図2および図3に示すように、第1インナーシャフト111の最先端部(以下、「突出部115」という。)は、第2インナーシャフト112の先端より先端側に突出している。そのため、先端第1開口110aは、先端第2開口110bよりも先端側に位置している。また、第2インナーシャフト112の先端部は、基端側から先端側に向かって外径が漸減し、先端面が第1インナーシャフト111の突出部115になだらかにつながるような形状となっている。
【0026】
第1インナーシャフト111の突出部115の少なくとも一部分には、先端チップ120が接合されている。先端チップ120は、例えば放射線不透過性を有する材料により形成されている。先端チップ120の形状は、任意に設定することができ、例えば、先端部にRが付された略円柱形状や、基端側から先端側に向かって外径が漸減する略円錐台状とすることができる。
【0027】
第1インナーシャフト111の延伸方向に沿った少なくとも一部分は、第2インナーシャフト112と接合されている。第1インナーシャフト111と第2インナーシャフト112との接合としては、熱溶融による樹脂同士の接合(溶着)や、エポキシ系接着剤などの絶縁性の接着剤による接合を採用することができる。
【0028】
図4に示すように、アウターシャフト113は、略楕円筒状の部材である。アウターシャフト113の内部空間には、第1インナーシャフト111および第2インナーシャフト112が収容されている。アウターシャフト113の内部空間における第1インナーシャフト111および第2インナーシャフト112の周囲には充填材116が充填されており、これにより第1インナーシャフト111および第2インナーシャフト112が固定されている。図2に示すように、アウターシャフト113の先端は、第1インナーシャフト111および第2インナーシャフト112の先端よりも基端側に位置する。すなわち、アウターシャフト113は、第1インナーシャフト111および第2インナーシャフト112の先端部を覆わず、かつ、該先端部よりも基端側の部分を覆っている。
【0029】
アウターシャフト113、第1インナーシャフト111、第2インナーシャフト112、充填材116およびコネクタ105は、例えば、ポリアミドなどのナイロン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の公知の材料により形成され得る。アウターシャフト113、第1インナーシャフト111、第2インナーシャフト112、充填材116およびコネクタ105は、同一の材料で形成されていてもよく、少なくとも一部、または全部が、他とは異なる材料により形成されていてもよい。
【0030】
図2および図3に示すように、シャフト110(第1インナーシャフト111)の側壁には、ガイドワイヤルーメン150Lと連通する切欠状の開口130が形成されている。開口130は、第1インナーシャフト111の側壁のうち、ガイドワイヤルーメン150Lの中心軸Oを基準として、イメージングルーメン160Lとは反対側の位置に形成されている。本実施形態では、開口130は、Y軸方向視で、シャフト110の延伸方向(Z軸方向)を長軸とする略楕円形状である。Z軸方向に沿った開口130の大きさは、例えば3mm~10mm程度である。開口130は、例えば、アウターシャフト113の先端より先端側の位置に形成されている。
【0031】
シャフト110(第1インナーシャフト111)の外周面には、プラズマ用の電極174が設けられている。電極174は、例えば、リング状、部分リング状または板状である。電極174の幅(シャフト110の軸方向に沿った大きさ)は、例えば、0.5mm~1.0mm程度である。電極174は、シャフト110に形成された開口130の先端に隣接して配置されている。なお、本明細書において、AがBに隣接して配置されているとは、AがBからシャフト110の軸方向に沿って10mm以内の範囲に配置されていることを意味する。
【0032】
電極174は、例えば導電性金属により形成されている。電極174の形成材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金、ピアノ線といった放射線透過材料や、白金、金、タングステン、またはこれらの合金といった放射線不透過材料が用いられる。
【0033】
シャフト110の側壁には、プラズマ用のリード線170が埋設されている。図4に示すように、リード線170は、イメージングルーメン160Lとガイドワイヤルーメン150Lとの境界部に配置されている。リード線170の先端部は、電極174に電気的に接続されている。より具体的には、リード線170の先端部は、例えば溶接によって電極174に接合されている。リード線170は、電極174との接続箇所からシャフト110の基端側に向かって延在している。図1に示すように、リード線170の基端部は、コネクタ105より基端側に突出しており、コネクタ178およびケーブル52を介してRFジェネレータ500の端子502に接続されている。
【0034】
リード線170は、略一定の外径を有する基準部171と、基準部171の先端側に位置するテーパ部172とを有する。テーパ部172は、基準部171との境界位置からリード線170の先端に向かうにつれて外径が小さくなるテーパ状である。本実施形態では、テーパ部172の基端(すなわち、基準部171との境界)の位置(以下、「特定位置P1」という。)は、開口130の基端よりも基端側であり、イメージングデバイス200の後述するトランスデューサ201の可動範囲R1の基端位置に略一致する。基準部171の外径は、例えば0.1mm~0.5mm程度であり、テーパ部172の先端の外径は、例えば0.05mm~0.5mm程度である。テーパ部172の軸方向に沿った長さは、例えば10mm~300mm程度である。
【0035】
リード線170は、例えば導電性金属により形成されている。リード線170を形成する材料としては、例えば、ステンレス鋼が用いられる。リード線170のうち、外部に露出している部分は、例えば樹脂により被覆されていてもよい。
【0036】
プラズマガイドワイヤ400は、例えば、CTOの治療のために血管に挿入される長尺状の医療用デバイスである。図1から図4に示すように、プラズマガイドワイヤ400は、コアシャフト402と、先端チップ404とを有する。
【0037】
コアシャフト402は、長尺状の部材である。コアシャフト402の基端部は、カテーテル100のコネクタ105より基端側に突出しており、コネクタ408およびケーブル54を介してRFジェネレータ500の端子504に接続されている。コアシャフト402は、例えば導電性金属により形成されている。コアシャフト402を形成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金、ピアノ線等が用いられる。
【0038】
先端チップ404は、コアシャフト402の先端に配置されている。先端チップ404の先端形状は、例えば、円錐形(やじり形状)である。先端チップ404は、後述するように、プラズマ用の電極として機能する。先端チップ404は、例えば導電性金属により形成されている。先端チップ404を形成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金等が用いられる。
【0039】
なお、プラズマガイドワイヤ400は、コアシャフト402の先端部を覆うコイル体を有していてもよい。この場合において、コアシャフト402とコイル体とは、先端チップ404および/または他の接合部により接合されていてもよい。また、プラズマガイドワイヤ400の少なくとも一部が樹脂により被覆されていてもよい。
【0040】
RFジェネレータ500は、2つの端子502,504間に、例えば600~700V程度の高周波電力を出力する。プラズマガイドワイヤ400の先端チップ404を含む先端部がカテーテル100のシャフト110に形成された開口130から突出した状態で、RFジェネレータ500によって2つの端子502,504間に高周波電力が出力されると、プラズマガイドワイヤ400およびリード線170に高周波電力が印加される。これにより、リード線170に電気的に接続された電極174と、プラズマガイドワイヤ400の先端チップ404と、の間の電圧差に起因して、先端チップ404にプラズマが発生する。このプラズマにより、CTOや血管組織をアブレーションすることができる。なお、プラズマの安定的な発生のために、電極174と先端チップ404との間の距離は100mm以下であることが好ましい。
【0041】
イメージングデバイス200は、IVUSにより生体管腔内の画像を取得するための装置であり、全体として長尺状の外形を有している。図1に示すように、イメージングデバイス200は、トランスデューサ201と、ドライビングケーブル202と、コネクタ203と、モータドライブ204とを有する。
【0042】
トランスデューサ201は、超音波を発信すると共にその反射波を受信する超音波探触子(超音波振動子、圧電体、超音波送受信素子、超音波素子とも呼ばれる。)を有する。モータドライブ204は、トランスデューサ201の回転を制御するための装置である。モータドライブ204は、ケーブル56を介してイメージングコンソール300と電気的に接続されている。ドライビングケーブル202は、長尺状の部材であり、トランスデューサ201とモータドライブ204とを電気的に接続する同軸線を有する。コネクタ203は、ドライビングケーブル202の同軸線とモータドライブ204とを接続するための部材である。
【0043】
イメージングコンソール300は、イメージングデバイス200を制御すると共に、イメージングデバイス200から受信した信号に基づき画像を生成して表示する装置である。具体的には、イメージングコンソール300は、コネクタ105に対する操作に応じて、イメージングルーメン160L内のトランスデューサ201を、可動範囲R1(図2および図3参照)内においてシャフト110の延伸方向(Z軸方向)に移動させると共に、シャフト110の周方向に回転させる。トランスデューサ201の可動範囲R1は、例えば、第2インナーシャフト112の先端から、該先端から100mm~200mm程度離隔した位置までの範囲に設定することができる。なお、トランスデューサ201の可動範囲R1は、シャフト110に形成された開口130の位置を含む。
【0044】
また、イメージングコンソール300は、図示しない入力手段を介した術者の操作に応じて、トランスデューサ201に超音波の発信および受信を実行させる。トランスデューサ201が受信した反射波は、ドライビングケーブル202およびケーブル56を介してイメージングコンソール300に入力される。イメージングコンソール300は、受信した反射波の強度に応じた濃淡の階調で表現された画像を生成し、生成した画像をディスプレイ302に表示させる。以降、イメージングデバイス200により取得され、ディスプレイ302に表示された画像を、「センサ画像」ともいう。
【0045】
(カテーテルシステム10の使用方法)
図5および図6は、カテーテルシステム10の使用方法の一例を示す説明図である。図5および図6には、生体管腔の一例としての冠動脈80と、冠動脈80に発生したCTO81と、真腔84と、冠動脈80の内膜または内膜下に形成された偽腔82(デリバリーガイドワイヤ70等の医療用デバイスにより形成された真腔84以外のすべての解離腔)と、真腔84と偽腔82との間に存在する線維性皮膜(プラーク)83とを示している。なお、線維性皮膜83は、CTO病変の表面に繊維状に形成されることがある。
【0046】
まず、図5の(A)欄に示すように、冠動脈80にデリバリーガイドワイヤ70を挿入する。図5の(A)欄では、術者が操作するデリバリーガイドワイヤ70が、冠動脈80の内膜に迷入し、あるいは内膜下で偽腔82を形成している。
【0047】
次に、図5の(B)欄に示すように、デリバリーガイドワイヤ70を用いてカテーテル100をデリバリする。より詳細には、術者は、デリバリーガイドワイヤ70の基端部を、カテーテル100の先端第1開口110a(図1等参照)からガイドワイヤルーメン150L内に挿入し、分岐ルーメン150Lb(図3参照)を介してポート110eから外部に引き出す。その後、術者は、デリバリーガイドワイヤ70をガイドとして、イメージングルーメン160Lにイメージングデバイス200が挿入された状態のカテーテル100を、偽腔82の位置までデリバリする。
【0048】
カテーテル100のデリバリ中および/またはデリバリ後において、術者は、イメージングデバイス200のトランスデューサ201により取得された画像をイメージングコンソール300のディスプレイ302で確認しつつ、カテーテル100の位置の調整を行うことができる。例えば、術者は、カテーテル100を冠動脈80に沿って移動させることにより、カテーテル100の開口130を、プラズマガイドワイヤ400によるアブレーションのために最適な位置に配置することができる。また、術者は、カテーテル100を周方向に回転させることにより、カテーテル100の向きを、開口130が真腔84に対向するような向きに調整することができる。また、術者は、コネクタ105を操作することにより、トランスデューサ201を可動範囲R1内において移動させることができる。
【0049】
次に、術者は、図6の(A)欄に示すように、デリバリーガイドワイヤ70を抜去する。その後、図6の(B)欄に示すように、カテーテル100にプラズマガイドワイヤ400を挿入する。より詳細には、術者は、プラズマガイドワイヤ400をカテーテル100の基端第1開口110c(図1参照)からガイドワイヤルーメン150L内に挿入し、プラズマガイドワイヤ400の先端部がシャフト110の開口130から突出する位置まで、プラズマガイドワイヤ400を進行させる。このとき、術者は、イメージングデバイス200のトランスデューサ201により取得された画像をディスプレイ302で確認しつつ、プラズマガイドワイヤ400の先端部をアブレーションのために最適な位置に誘導する。
【0050】
その後、術者は、RFジェネレータ500を操作して、端子502,504を介してカテーテル100のシャフト110の電極174とプラズマガイドワイヤ400の先端チップ404との間に高周波電力を印加する。これにより、プラズマガイドワイヤ400の先端チップ404にプラズマを発生させ、該プラズマにより線維性皮膜83をアブレーションする。この結果、プラズマガイドワイヤ400の先端部を、真腔84に容易に再進入させることができる。
【0051】
このような方法により、カテーテルシステム10によるCTO81の開通が可能となる。なお、上述した方法はあくまで一例であり、カテーテルシステム10は、種々の手技で使用することができる。例えば、カテーテルシステム10は、偽腔82から真腔84へのアプローチに限らず、CTO81をアブレーションすることによって近位側の真腔84から遠位側の真腔84へCTO81を貫通するアプローチを行う際に使用されてもよい。
【0052】
A-2.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のカテーテル100は、シャフト110と、電極174と、リード線170とを備える。シャフト110は、イメージングデバイス200が挿入されるイメージングルーメン160Lと、イメージングルーメン160Lと並んで配置され、プラズマガイドワイヤ400が挿入されるガイドワイヤルーメン150Lと、を有する。電極174は、シャフト110の外周面に設けられている。リード線170の少なくとも一部は、シャフト110の側壁に埋設されている。リード線170の先端部は、電極174に電気的に接続されている。リード線170は、電極174との接続箇所から基端側に向かって延在している。リード線170には、高周波電力が印加される。シャフト110には、ガイドワイヤルーメン150Lと連通する開口130が設けられている。電極174は、開口130の先端に隣接して配置されている。リード線170は、開口130の基端よりも基端側の特定位置P1からリード線170の先端に向かうにつれて外径が小さくなるテーパ部172を有する。
【0053】
このように、本実施形態のカテーテル100では、リード線170が、シャフト110に形成された開口130の基端よりも基端側の特定位置P1から先端に向かうにつれて外径が小さくなるテーパ部172を有する。そのため、リード線170に印加される高周波電力がイメージングデバイス200によるイメージングに悪影響を及ぼすことを抑制することができる。この結果、カテーテル100を用いたプラズマアブレーションを精度よく行うことが可能となる。
【0054】
また、本実施形態のカテーテル100では、シャフト110の基端から電極174の位置までリード線170が配置されているため、カテーテル100のプッシャビリティを向上させることができる。この結果、カテーテル100を屈曲した血管内に比較的容易に推し進めることができるため、カテーテル100を用いたプラズマアブレーションをさらに精度よく行うことが可能となる。
【0055】
また、本実施形態のカテーテル100では、リード線170の少なくとも一部は、イメージングルーメン160Lとガイドワイヤルーメン150Lとの境界部に配置されている。そのため、リード線170に印加される高周波電力がイメージングデバイス200によるイメージングに悪影響を及ぼすことを効果的に抑制することができる。さらに、リード線170の存在に起因するシャフト110のプロファイルの増大を抑制することができる。
【0056】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態におけるカテーテル100aの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第2実施形態のカテーテル100aの構成のうち、上述した第1実施形態のカテーテル100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0057】
第2実施形態のカテーテル100aでは、シャフト110の側壁に、導電性の補強体180が埋設されている。補強体180は、任意の構成を取り得るが、例えば、素線を網目織りにしたメッシュ形状の筒状体(いわゆるブレード)であってもよいし、素線を螺旋状に巻いたコイル体であってもよい。補強体180は、ガイドワイヤルーメン150Lを覆うように形成されていてもよいし、イメージングルーメン160Lを覆うように形成されていてもよいし、ガイドワイヤルーメン150Lおよびイメージングルーメン160Lを一体的に覆うように形成されていてもよい。
【0058】
補強体180は、例えば導電性金属により形成されている。補強体180の形成材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金等が用いられる。
【0059】
補強体180は、リード線170のテーパ部172の基端の位置である特定位置P1より基端側に配置されている。リード線170の基端部は、補強体180の先端部と電気的に接続されている。また、補強体180の基端側には、別のリード線170aが設けられている。リード線170aの先端部は、補強体180の基端部と電気的に接続されている。リード線170aの基端部は、コネクタ178およびケーブル52を介してRFジェネレータ500の端子502に接続されている。なお、補強体180がシャフト110の基端まで延伸し、リード線170aが設けられないとしてもよい。
【0060】
このように、第2実施形態のカテーテル100aでは、シャフト110の側壁に、導電性の補強体180が埋設されている。補強体180は、リード線170のテーパ部172の基端の位置である特定位置P1より基端側に配置されている。リード線170の基端部は、補強体180の先端部と電気的に接続されている。そのため、第2実施形態のカテーテル100aによれば、補強体180の存在により、カテーテル100aのプッシャビリティを向上させることができる。この結果、カテーテル100aを屈曲した血管内に比較的容易に推し進めることができるため、カテーテル100aを用いたプラズマアブレーションをさらに精度よく行うことが可能となる。また、シャフト110の軸方向の一部においてリード線170が不要となるため、カテーテル100aの耐久性を向上させることができる。
【0061】
C.変形例:
本明細書に開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0062】
上記実施形態におけるカテーテルシステム10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、電極174は、シャフト110に形成された開口130の先端に隣接して配置されているが、図8に示す変形例のように、電極174が開口130の基端に隣接して配置されていてもよい。
【0063】
上記実施形態では、シャフト110の側壁にプラズマガイドワイヤ400の先端部を突出させるための開口130が形成されているが、図9に示す変形例のように、シャフト110(第1インナーシャフト111)の先端面に形成された開口(例えば、先端第1開口110a)からプラズマガイドワイヤ400の先端部を突出させてもよい。この場合においても、シャフト110の外周面に設けられた電極174は、先端第1開口110aの先端または基端に隣接して配置される。なお、この場合において、先端第1開口110aの先端または基端は同一箇所である。
【0064】
上記実施形態では、リード線170の少なくとも一部は、イメージングルーメン160Lとガイドワイヤルーメン150Lとの境界部に配置されているが、リード線170が、イメージングルーメン160Lとガイドワイヤルーメン150Lとの境界部以外の位置に配置されていてもよい。
【0065】
上記実施形態では、リード線170のテーパ部172の基端の位置である特定位置P1は、イメージングデバイス200のトランスデューサ201の可動範囲R1の基端位置に略一致しているが、特定位置P1が可動範囲R1の基端位置に一致しなくてもよい。
【0066】
上記実施形態では、第1インナーシャフト111および第2インナーシャフト112が、先端から基端まで単一の筒状体により形成されているが、第1インナーシャフト111および/または第2インナーシャフト112が、延伸方向に並んだ複数の筒状体が互いに継がれた構成を有してもよい。また、上記実施形態では、第1インナーシャフト111および第2インナーシャフト112がアウターシャフト113により覆われているが、アウターシャフト113が省略されてもよい。
【0067】
上記実施形態では、カテーテル100に、ガイドワイヤルーメン150Lから分岐する分岐ルーメン150Lbが形成されているが、分岐ルーメン150Lbが形成されていなくてもよい。
【0068】
上記実施形態では、イメージングデバイス200としてIVUSデバイスが用いられているが、IVUSデバイスに代えて、OCT(Optical Coherence Tomography、光干渉断層撮影法)デバイスやカメラといった他のイメージングデバイスが用いられてもよい。
【0069】
カテーテルシステム10は、上述した方法以外の方法により使用されてもよい。例えば、カテーテルシステム10は、冠動脈以外の血管(例えば脳血管等)に使用されてもよく、血管以外の生体管腔内において使用されてもよく、CTOの開通以外の他の治療や検査のために使用されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10:カテーテルシステム 52:ケーブル 54:ケーブル 56:ケーブル 70:デリバリーガイドワイヤ 80:冠動脈 81:CTO 82:偽腔 83:線維性皮膜 84:真腔 100:カテーテル 105:コネクタ 110:シャフト 110a:先端第1開口 110b:先端第2開口 110c:基端第1開口 110d:基端第2開口 110e:ポート 111:第1インナーシャフト 112:第2インナーシャフト 113:アウターシャフト 115:突出部 116:充填材 120:先端チップ 130:開口 150:分岐部 150L:ガイドワイヤルーメン 150Lb:分岐ルーメン 160L:イメージングルーメン 170:リード線 171:基準部 172:テーパ部 174:電極 178:コネクタ 180:補強体 200:イメージングデバイス 201:トランスデューサ 202:ドライビングケーブル 203:コネクタ 204:モータドライブ 300:イメージングコンソール 302:ディスプレイ 400:プラズマガイドワイヤ 402:コアシャフト 404:先端チップ 408:コネクタ 500:RFジェネレータ 502,504:端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9