(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077666
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】容器の検査方法及び検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
G01N21/88 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189742
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】390014661
【氏名又は名称】オムロン キリンテクノシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 千代子
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕宗
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA11
2G051AB01
2G051BA02
2G051BA05
2G051CA04
2G051CB10
2G051CC07
2G051EA08
2G051EA16
(57)【要約】
【課題】容器の外面における液体の付着の検出に適した容器の検査方法を提供する。
【解決手段】容器の検査範囲を当該容器が蛍光発光する波長域の励起光にて照明する手順と、励起光にて照明された検査範囲における蛍光の明暗差に基づいて、当該検査範囲における液体の付着を検出する手順と、を含む検査方法において、励起光の波長域を、液体における蛍光の強度が容器にて生じる蛍光の強度よりも相対的に低くなり、かつ容器と当該容器に付着した液体との間に生じるべき明暗差が消失しないように液体における励起光の透過が制限される波長域に設定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の外面への液体の付着を検出するための容器の検査方法であって、
前記容器の検査範囲を当該容器が蛍光発光する波長域の励起光にて照明する手順と、
前記励起光にて照明された前記検査範囲における蛍光の明暗差に基づいて、当該検査範囲における前記液体の付着を検出する手順と、
を含み、
前記励起光の波長域は、前記液体における蛍光の強度が前記容器にて生じる蛍光の強度よりも相対的に低くなり、かつ前記容器と当該容器に付着した液体との間に生じるべき明暗差が消失しないように前記液体における前記励起光の透過が制限される波長域に設定される容器の検査方法。
【請求項2】
前記励起光の波長域が、さらに、前記容器と当該容器に付着した液体との間に生じるべき明暗差が消失しないように、前記容器における前記励起光の透過が制限される波長域に設定される請求項1に記載の容器の検査方法。
【請求項3】
前記液体が前記容器に充填されるべき内容液である請求項1に記載の容器の検査方法。
【請求項4】
前記液体が前記容器に内容液として充填されるべき食用油であって、前記励起光の波長域は280nm以下の波長域に設定される請求項1に記載の容器の検査方法。
【請求項5】
前記検出する手順では、前記励起光にて照明された前記検査範囲における蛍光の明暗差を反映した画像を撮像し、前記画像中における前記蛍光の明暗差に基づいて、前記検査範囲における前記液体の付着を検出する請求項1~4のいずれか一項に記載の容器の検査方法。
【請求項6】
容器の外面への液体の付着を検出するための容器の検査装置であって、
前記容器の検査範囲を当該容器が蛍光発光する波長域の励起光にて照明する照明手段と、
前記励起光にて照明された前記検査範囲における蛍光の明暗差を反映した画像を撮像する撮像手段と、
前記画像中における前記蛍光の明暗差に基づいて、前記検査範囲における前記液体の付着を検出する検出手段と、
を含み、
前記照明手段による前記励起光の波長域が、前記液体における蛍光の強度が前記容器にて生じる蛍光の強度よりも相対的に低くなり、かつ前記液体における透過が、前記容器と当該容器に付着した液体との間に生じるべき明暗差が消失しない範囲で制限される波長域に設定された容器の検査装置。
【請求項7】
前記励起光の波長域が、さらに、前記容器と当該容器に付着した液体との間に生じるべき明暗差が消失しないように、前記容器における前記励起光の透過が制限される波長域に設定される請求項6に記載の容器の検査方法。
【請求項8】
前記液体が前記容器に充填されるべき内容液である請求項6又は7に記載の容器の検査方法。
【請求項9】
前記液体が前記容器に充填されるべき食用油であって、前記励起光の波長域は280nm以下の波長域に設定される請求項6又は7に記載の容器の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の外面における液体の付着を検出するための容器の検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に充填されるべき内容液等の液体が何らかの原因で容器の外面に付着することがある。容器の外面に液体が付着しているか否かは、従来、作業者が容器を手で触ってその有無を確認する手法によって検査されている。ちなみに、蛍光発光現象を利用して液体の存在を検出する手法としては、プラント機器等の部品からの油漏れを検出することを目的として、油の吸収波長を含むパルス光を部品に照射し、その照射によって励起された油の分子が発する蛍光を捉えることにより油漏れを検出する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手法は、容器の外面に付着する液体が蛍光発光する性質を帯びていれば、その検出にも応用できる可能性がある。しかしながら、容器それ自体が蛍光発光する場合、容器とその外面に付着した液体のいずれもが蛍光発光して容器とその外面の液体とを区別することが困難となる。蛍光発光する液体が内容液として容器に充填されている場合には、液体からの蛍光を検出できたとしても、それが容器の内外いずれからの蛍光かを判別することが困難となることもある。いずれの場合でも、液体の付着を正しく検出できない不都合が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、容器の外面における液体の付着の検出に好適な容器の検査方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る容器の検査方法は、容器の外面への液体の付着を検出するための容器の検査方法であって、前記容器の検査範囲を当該容器が蛍光発光する波長域の励起光にて照明する手順と、前記励起光にて照明された前記検査範囲における蛍光の明暗差に基づいて、当該検査範囲における前記液体の付着を検出する手順と、を含み、前記励起光の波長域は、前記液体における蛍光の強度が前記容器にて生じる蛍光の強度よりも相対的に低くなり、かつ前記容器と当該容器に付着した液体との間に生じるべき明暗差が消失しないように前記液体における前記励起光の透過が制限される波長域に設定されるものである。
【0007】
本発明の一態様に係る容器の検査装置は、容器の外面への液体の付着を検出するための容器の検査装置であって、前記容器の検査範囲を当該容器が蛍光発光する波長域の励起光にて照明する照明手段と、前記励起光にて照明された前記検査範囲における蛍光の明暗差を反映した画像を撮像する撮像手段と、前記画像中における前記蛍光の明暗差に基づいて、前記検査範囲における前記液体の付着を検出する検出手段と、を含み、前記照明手段による前記励起光の波長域が、前記液体における蛍光の強度が前記容器にて生じる蛍光の強度よりも相対的に低くなり、かつ前記液体における透過が、前記容器と当該容器に付着した液体との間に生じるべき明暗差が消失しない範囲で制限される波長域に設定されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】菜種油における3次元蛍光スペクトルを測定した結果の一例を示す図。
【
図1B】添加成分が異なる他の菜種油における3次元蛍光スペクトルを測定した結果の一例を示す図。
【
図1C】大豆油における3次元蛍光スペクトルを測定した結果の一例を示す図。
【
図1D】こめ油における3次元蛍光スペクトルを測定した結果の一例を示す図。
【
図1E】べに花油における3次元蛍光スペクトルを測定した結果の一例を示す図。
【
図1F】ごま油における3次元蛍光スペクトルを測定した結果の一例を示す図。
【
図1G】オリーブオイルにおける3次元蛍光スペクトルを測定した結果の一例を示す図。
【
図2】樹脂製容器の3次元蛍光スペクトルを測定した結果の一例を示す図。
【
図3】食用油の光の透過率を測定した結果の一例を示す図。
【
図9】試験例1にて得られたさらなる画像の一例を示す図。
【
図10】試験例2にて得られた画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の一形態を説明する。本形態の検査方法では、容器の検査範囲に対して特定の波長域の励起光を照射し、その照射に対応して生じる蛍光の検査範囲における明暗差に基づいて容器の外面における液体の付着を検出する。励起光の波長域は、容器の材質、及び容器の外面への付着を検出すべき液体の種類に応じて選択される。以下では、容器が樹脂製であって、液体が容器に内容液として充填されるべき食用油である場合を例に挙げて励起光の波長域を説明する。
【0010】
図1A~
図1Gは、7種類の食用油をサンプルとして選定し、各サンプルに照射する励起光と、その照射に対応して生じる蛍光との関係を表す3次元蛍光スペクトルを測定した結果を示している。各図において縦軸は励起光の波長域であり、横軸は蛍光の波長域である。サンプルとしての食用油は、
図1Aが菜種油A、
図1Bが菜種油B、
図1Cが大豆油、
図1Dがこめ油、
図1Eがべに花油、
図1Fがごま油、
図1Gがオリーブオイルである。菜種油Aと菜種油Bとは菜種を原料とする点で共通するが、添加成分が互いに異なる。
【0011】
図1A~
図1Gによれば、食用油の種類によって蛍光の特性に差があるものの、いずれの場合も励起光が概ね260nm~400nmの波長域で蛍光が生じている。
図1A~
図1Eの例では蛍光の波長域が概ね400nm前後であるが、
図1Fのごま油の例、及び
図1Gのオリーブオイルの例では320nm前後の波長域の蛍光が生じている。一方、いずれの例でも、励起光が概ね280nm以下の波長域で蛍光の強度が低下し、260nm付近から短波長側の波長域では蛍光がほぼ生じない点で共通する。
【0012】
図2は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PET樹脂と表記する。)製の容器における3次元蛍光スペクトルを測定した結果を示している。縦軸は励起光の波長域であり、横軸は蛍光の波長域である。
図2によれば、PET樹脂製の容器では、励起光が概ね200nm~400nmの波長域の場合、概ね360nm~420nmの波長域の蛍光が生じる。容器にて蛍光を生じさせる励起光の波長域は、食用油にて蛍光を生じさせる励起光の波長域と比較して短波長側に広がっている。そのような特性は、PET樹脂とは異なる樹脂製の容器でも同様である。
【0013】
次に、
図1A~
図1Gで用いた食用油の各サンプルにおける光透過スペクトルを調べた結果を
図3に示す。
図3でも、縦軸は光の透過率であり、横軸は光の波長域である。
図3から明らかなように、食用油の場合は、概ね320nm~400nmの間の波長を境として短波長側の領域で光の透過率が明確に低下する。280nm付近の波長域に着目すると、大豆油、こめ油、べに花油及びごま油の透過率はほぼ0%、菜種油A、Bの透過率は概ね10%以下であり、透過率が最も高いオリーブオイルでも45%前後まで透過率が低下している。オリーブオイルに関しては、その透過率が320nm付近の波長域から低下を開始し、概ね270nm~280nmの波長域で45%程度の透過率を維持するが、それよりも短波長側では透過率が再び低下して250nm付近でほぼ0%の透過率となる。
【0014】
以上のような3次元蛍光スペクトル及び透過スペクトルを考慮すると、容器の外面への食用油の付着を検出するためには、励起光の波長域を以下のように設定すればよい。まず、容器を蛍光発光させることが可能な波長域は、食用油を蛍光発光させることが可能な波長域と比較して短波長側に広がっている。この性質に着目して、容器を蛍光発光させることが可能であって、かつ食用油における蛍光の強度が容器にて生じる蛍光の強度よりも相対的に低くなるように励起光の波長域が設定される。すなわち、容器を蛍光発光させることが可能な波長域であることを第1要件とし、食用油における蛍光の強度が容器にて生じる蛍光の強度よりも相対的に低くなる波長域であることを第2要件とした場合、励起光の波長域は第1要件及び第2要件の両者を満たすように設定される。それにより、容器を蛍光発光させつつ、容器の外面に付着した食用油の蛍光発光を容器のそれに比して抑制し、容器と食用油との間で蛍光に明暗差を生じさせることが可能である。容器と食用油との間の明暗差が拡大するほど食用油の付着の検出には有利である。そのため、励起光の波長域は、食用油が蛍光発光しないか、又は仮に蛍光発光してもその強度が容器で生じる蛍光の強度よりも明確に低下する波長域であることが好ましい。
【0015】
一方、食用油における蛍光が抑制されたとしても、容器の外面に付着した食用油を励起光が透過する場合には、食用油の背後にて励起光が容器に到達して蛍光が生じ、その蛍光が食用油を透過して外部に放出される。この場合、食用油の背後で生じた蛍光が外部から観察され、その結果として、容器と食用油との間での明暗差が損なわれて両者の区別が困難となる可能性がある。そのような不都合を回避するためには、食用油それ自体が励起光の透過を制限する手段として作用するような波長域の励起光を選択することが必要である。具体的には、容器と食用油との間に生じるべき明暗差が消失しないように、食用油における励起光の透過が制限される波長域の励起光を選択すればよい。以下では、そのような制限作用が生じる波長域であることを第3要件とする。なお、ここでいう明暗差の消失とは、明暗差が完全に失われる場合に限らず、明暗差が認識不可能な程度まで減少する場合を含む概念である
【0016】
励起光の波長域が第1要件及び第2要件に加えて第3要件も満たす場合には、容器とその外面に付着した食用油との間に蛍光に明暗差を生じさせ、その明暗差を手掛かりとして容器の外面における食用油の付着を検出することができる。容器と食用油との間に明暗差を生じさせるためには、選択した波長域における食用油の透過率が低いほど有利である。しかしながら、食用油における励起光の透過率は完全に0%であることを要しない。例えば、励起光の波長域に対する食用油の透過率が少なくとも50%以下、望ましくは30%以下であれば、食用油の背後における容器の蛍光発光が容器と食用油との間の明暗差に与える影響を抑制できる可能性がある。
【0017】
次に、上述した第1要件、第2要件及び第3要件を満たす波長域を
図1A~
図1G、及び
図2の例で検討する。
図2の例によれば、樹脂製容器では、励起光が概ね200nm~400nmの波長域であれば蛍光発光することが確認できる。したがって、励起光の波長域を400nm以下に設定すれば第1要件は満たされる。一方、
図1A~
図1Gの3次元蛍光スペクトルによれば、励起光の波長域が260nm以下であれば食用油はほぼ蛍光発光しない。ただし、励起光の波長域が280nm以下であれば蛍光の強度が比較的低く、容器と食用油との間における明暗差を確保できる程度に食用油の蛍光発光を抑制し得ると解される。したがって、励起光の波長域が第2要件を満たすためには、280nm以下を目安として励起光の波長域を設定すればよい。次に、
図3の光透過スペクトルによれば、食用油の透過率は概ね280nm以下であれば種類を問わず50%以下まで低下し、260nm以下であれば透過率は30%以下に低下する。したがって、励起光の波長域が少なくとも280nm以下、望ましくは260nm以下であれば食用油の種類を問わず第3要件は満たされると考えられる。以上を総合すれば、第1要件、第2要件及び第3要件の全てを満たすためには、励起光の波長域を280nm以下に、望ましくは260nm以下に設定すればよい。そのような波長域は紫外光の波長域に含まれるものである。
【0018】
なお、励起光の波長域の下限については第1要件が満たされる限りにおいて適宜に設定が可能である。
図2によれば、樹脂製容器では200nm以上の波長域で蛍光が生じる。200nm以下の波長域は真空紫外と呼ばれる領域であるため、実用上、励起光の波長域の下限は200nmを目安とすればよい。市場にて比較的容易に入手可能な紫外域の照明光源は222nm、265nm、280nmである。いずれの波長域の照明光源も、励起光を照射するための光源として選択されてよい。特に、222nmの紫外光は、人体にほとんど影響を与えない殺菌紫外光として近年注目されている波長の紫外光であって、殺菌光として盛んに技術開発が行われているものである。そのような背景を考慮すると、222nmの波長の紫外光を励起光として利用することは有力な選択肢となり得る。ただし、上記の検討によれば、265nm又は280nmの波長域の照明光源も選択されてよい。
【0019】
以上の説明では、容器が樹脂製でかつその外面への付着を検出すべき液体が食用油である場合を例に挙げている。しかしながら、容器の材質、及び液体の種類の組み合わせに関しては、上述した第1要件、第2要件及び第3要件の全てを満たす波長域が選択可能な限りにおいて適宜に変更されてよい。容器は少なくとも特定の波長域で蛍光発光する性質を帯びていれば第1要件を満たすための容器の選択候補となり得る。液体に関しては蛍光発光する性質を帯びていることを必ずしも要しない。あらゆる領域で蛍光発光しないか、又は蛍光発光してもその強度が容器のそれに比して十分に低い液体も第2要件を満たすための液体の選択候補となり得る。一方、液体における光の透過特性については、第1要件及び第2要件を満たす波長域の少なくとも一部において、第3要件を満たすような波長域が選択可能となるような透過特性を備えている必要がある。上記の例では、第1要件及び第2要件を満たす波長域を選択すれば結果として第3要件も満たされる。しかしながら、第3要件の充足性は第1要件及び第2要件の充足性に対して必ずしも従属するものではない。例えば、第1要件及び第2要件を満たす波長域の一部で第3要件が満たされない場合には、励起光の波長域をさらに第3要件で絞り込むことが必要である。
【0020】
上記では、励起光に対する容器の透過率については検討を省略した。しかしながら、PET樹脂製の容器では360nm付近から短波長域側で透過率が低下し、概ね320nm以下の波長域では透過率がほぼ0%となる。PET樹脂以外の樹脂を素材とする容器、例えばポリエチレン樹脂(以下、PE樹脂と表記する。)製の容器でも概ね320nm以下の波長域では透過率がほぼ0%まで低下する。したがって、上記のように励起光の波長域を280nm以下に設定した場合、励起光は容器を透過することができず、容器内への励起光の入射も阻止される。この場合、選択された波長域の励起光に対して蛍光発光する物質が容器内に含まれていたとしても、その内部の物質で生じた蛍光の拡散光が容器に付着した液体を透過し、その影響で容器とその外面に付着した食用油との間の明暗差が損なわれることはない。
【0021】
しかしながら、励起光の波長域によっては、容器内で生じる蛍光の影響で容器とその外面に付着した液体との間の明暗差が損なわれることも想定される。そのような場合には、容器とその外面に付着した食用油との間に生じるべき明暗差が消失しないように、容器における励起光の透過が制限される波長域であることを、励起光の波長域が満たすべき第4要件としてさらに加重して励起光の波長域を選択すればよい。ここでいう明暗差の消失も、明暗差が完全に失われる場合に限らず、明暗差が認識不可能な程度まで減少する場合を含む概念である。なお、容器に食用油が充填されている場合に関しては、第2要件によって食用油の蛍光発光が抑制される波長域の励起光が選択されることになるため、仮に励起光が容器を透過して内部の食用油に到達しても、その内部の食用油で生じる蛍光の影響で容器の外面の食用油と内部の食用油とが判別困難となる虞はない。
【0022】
次に、
図4~
図7を参照して、上記の手法を用いて液体の付着を検出するための検査装置の例を説明する。
図4は検査装置の一例を示している。検査装置1は、容器の一例としてのボトル2の外面における液体の付着を検出することをその目的として構成される。検査装置1は、ボトル2の画像を取得する画像取得部10と、取得された画像を処理して容器の外面への液体の付着を検出する処理部20とを備えている。
【0023】
ボトル2は、一例として、中空で円筒形状又は多面体形状のPET樹脂製である。ただし、容器はPET樹脂製のボトル2に限らない。励起光の照射に対して蛍光発光する性質を帯びる限り、各種の素材で容器が形成されてよい。例えば、PE樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、COP(シクロオレフィンポリマー)樹脂等の他の樹脂素材、ガラス等にて形成された容器が対象とされてよい。ボトル2の外面への付着を検出すべき対象となる液体は、一例として、ボトル2に内容液として充填されるべき食用油であってよい。ただし、液体の種類に関しても、上述した第2要件及び第3要件を満たし得る限り、適宜に変更されてよい。
【0024】
ボトル2は、一例として、口部を上にしてその軸線AXを鉛直方向に一致させた正立状態に保持される。画像取得部10は、ボトル2の少なくとも検査範囲を、所定の波長域の励起光にて照明する照明手段の一例としての照明装置11と、ボトル2を撮像する撮像手段の一例としての撮像装置12とを備えている。照明装置11が照射する励起光の波長域は、上述した第1要件、第2要件及び第3要件を満たす波長域に設定される。さらに、第4要件を満たすように励起光の波長域が設定されてもよい。照明装置11は、撮像装置12によるボトル2の撮像光軸Lpを挟んで対称的に配置された複数の照明器11aを備えている。照明器11aの個数は適宜に変更されてよい。単一の照明器11aにて照明装置11が構成されてもよい。
【0025】
撮像装置12は、照明装置11にて照明されたボトル2の検査範囲を撮像するカメラ13を備えている。カメラ13の光軸が撮像装置12の撮像光軸Lpに相当する。カメラ13は、例えば、CCD、CMOS等の撮像素子を用いてボトル2の光学像を電気的な画像信号に変換する。カメラ13は、照明装置11による照明に対応してボトル2で発生する蛍光の明暗差を反映した画像を取得できるようにその撮像対象の波長域が設定されたものであることを要する。例えば、
図2で示したように、樹脂製容器では、200nm~400nmの波長域の励起光の照射に対して概ね360nm~420nm程度の波長域の蛍光が生じるため、カメラ13は360nm~420nmの波長域の少なくとも一部で感度を有していればよい。市販されている可視光域用のカメラは、400nm付近、場合によってはそれよりも幾らか短波長域側の波長域までは感度を有している。したがって、可視光域用カメラを利用することが可能である。なお、励起光がボトル2上で反射してカメラ13に入射する可能性があるため、撮像装置12は励起光に対する反射光のカメラ13への入射を遮るフィルタをさらに備えてもよい。ただし、上述したように励起光の波長域は、280nm以下の短波長域に設定されることが想定され、その波長域ではカメラ13が感度を有しないことが多い。したがって、フィルタを省略しても、カメラ13が撮像する画像の明暗差が反射光の影響で損なわれる虞はなく、フィルタを設けることは必須ではない。
【0026】
ボトル2の検査範囲はボトル2の全体であってもよいし、一部であってもよい。すなわち、検査範囲は適宜に変更されてよく、照明装置11の構成及び照明方向もボトル2の検査範囲に合わせて適宜に変更されてよい。
図4は、ボトル2の肩部が検査範囲に設定された例であり、カメラ13はその撮像光軸Lpをボトル2の軸線AXと一致させた状態で、ボトル2を鉛直上方から撮像するように配置されている。照明装置11は撮像光軸Lpの回りに対称的に配置された複数の照明器11aにてボトル2の肩部を斜め上方から照明するように配置されている。
図5は、カメラ13が
図4と同様に配置される一方で、照明装置11は撮像光軸Lpの片側に配置された一又は複数の照明器11aにてボトル2の肩部を斜め上方から照明するように配置されている。
図5の例では、ボトル2の肩部の一部を検査範囲とする場合に適用可能であるが、ボトル2をその軸線AXの回りに自転させ、あるいは照明装置11を軸線AXの回りに回転させることにより、ボトル2の肩部の全周を検査範囲としてその画像を撮像することも可能である。
【0027】
図6及び
図7は、ボトル2をその側方から撮像するようにカメラ13を配置し、照明装置11は、カメラ13の撮像光軸Lpを挟んで左右対称的に複数の照明器11aを配置するように設けられた例である。このような配置では、ボトル2の胴部の少なくとも一部を検査範囲に含めるようにしてその画像を取得することができる。ボトル2の肩部や首部もさらに検査範囲に含め得る。ボトル2を軸線AXの回りに回転させ、あるいは照明器11a及びカメラ13を軸線AXの回りに回転させれば、ボトル2の全周を検査範囲としてその画像を取得することが可能である。さらに、図示を省略したが、ボトル2を下方から撮像するようにカメラ13を配置し、照明装置11もボトル2の底部を斜め方向から照明するように配置することにより、ボトル2の底部の画像を取得して、その底部における液体の付着を検出することも可能である。なお、照明装置11は常時点灯させてもよいし、所定周期でパルス状に点灯させてもよい。
【0028】
画像取得部10が設置された環境におけるボトル2の照明光は、主として照明装置11による励起光にてボトル2が照明され、そのボトル2にて生じる蛍光の明暗差を反映した画像がカメラ13にて撮像される限りにおいて、可視域の環境光、例えば自然光が含まれてもよい。すなわち、環境光を遮光し、照明装置11からの励起光によってのみボトル2が照明されてもよいし、蛍光の明暗差を反映した画像に実質的な影響を与えない限りにおいて幾らかの環境光がボトル2に入射してもよい。あるいは、フィルタを利用して、蛍光の明暗差を反映した画像の撮像に対して不要となる可視域の光の影響をカメラ13にて撮像される画像から除いてもよい。
【0029】
図4に戻って、検査装置1の処理部20を説明する。なお、
図5~
図7では処理部20の図示が省略されているが、
図5~
図7の例でも
図4と同様に処理部20が設けられる。処理部20は、画像取得部10によって撮像された画像中における蛍光の明暗差に基づいて、ボトル2の検査範囲における液体の付着を検出する。処理部20は、一例として、CPU及びその動作に必要な内部記憶装置等を含んだコンピュータユニットを用いて構成される。処理部20には、画像調整部21と検出部22とが設けられている。画像調整部21及び検出部22は、例えば処理部20のコンピュータハードウエアと、ソフトウエアとしてのコンピュータプログラムの一例である検査プログラムPGとの組み合わせによって実現される論理的装置として設けられる。ただし、処理部20の少なくとも一部は、LSI等の論理回路を組み合わせた物理的装置として構成されてもよい。なお、処理部20には、検査装置1のオペレータが適宜の指示を入力するためのキーボード、ポインティングデバイスといった各種の入力手段が接続されてよい。
図1では、入力手段の図示が省略されている。
【0030】
画像調整部21は、カメラ13から出力される画像信号を受け取り、検出部22の検査に適した画像処理を施すことにより、カメラ13で撮像された画像を検出部22の処理に適した画像に調整する。例えば、画像調整部21は、画像の明度、コントラスト等の補正処理等を実施してよい。検出部22は、画像調整部21にて処理された画像信号を受け取り、ボトル2の検査範囲における液体の付着を検出する。それにより、検出部22は検出手段の一例として機能し、その処理が対象物を検出する手順の一例に相当する。
【0031】
検出部22の処理は、検査範囲における蛍光の明暗差に基づいて液体の付着を検出するものである。すなわち、上述した第1要件~第3要件を満たす波長域、必要に応じてさらに第4要件を満たす波長域の励起光にて検査範囲が照明される場合、液体が付着した領域の蛍光の強度は容器の他の領域にて生じる蛍光の強度に比して相対的に低くなる。したがって、カメラ13が撮像した画像中に液体の付着に対応した暗部が出現しているか否かを判別し、そのような暗部が存在している場合に、液体の付着が検出されたと判定するように検出部22の処理を構成すれば、画像中の明暗差に基づいて液体の付着を検出することが可能となる。
【0032】
検出部22の処理は、画像中における蛍光の明暗差に基づいて容器の外面への液体の付着を検出するための処理を含む限りにおいて、適宜に構成されてよい。例えば、検出部22は、液体が付着していない正常なボトル2の画像を基準画像として用意し、実際に撮像された検査範囲の画像と基準画像との差分を求めることにより、液体の付着を検出するように構成されもよい。検出部22の処理は、液体の付着が生じていることを検出することをその内容の少なくとも一部に含むものであればよい。検出部22は、液体の付着の有無を判別するように構成されてよいが、必ずしもこれに限定されない。例えば、液体が付着している領域の位置、その領域の面積等をさらに判別するように検出部22の処理が構成されてもよい。容器の外面に付着した液体の厚さが、画像中の暗部それ自体の明度に反映される場合には、その暗部の明度を手掛かりとして液体の厚さ、あるいは付着量といった物理量がさらに推定されてもよい。
【0033】
処理部20は、検出部22にて液体の付着が検出された場合に、その旨を検査結果としてモニタ23に表示させ、あるいは記憶装置24に記憶させてもよい。検査結果には、液体が付着した領域の位置、付着した液体の面積等の情報が含まれてもよい。ボトル2に充填されるべき内容液がボトル2の外面に付着している場合には、ボトル2への内容液の充填工程にてボトル2外への内容液の飛散等が生じているか、あるいはボトル2から内容液が漏れている可能性がある。処理部20は、内容液の付着が検出されたボトル2を異常品として判定し、その判定結果を検査結果として出力してもよく、その場合、充填工程の不良あるいはボトル2の液漏れの可能性を併せて通知してもよい。検査結果の出力手段はモニタ23、及び記憶装置24に限らず、プリンタが出力手段として接続されてもよい。
【0034】
次に、本形態の検査装置1の画像取得部10を利用して、液体が付着した容器を実際に撮像し、得られた画像中に蛍光の明暗差が出現するか否かについて試験した結果を、以下の試験例1、2及び比較例に沿って説明する。
【0035】
(試験例1)
まず、222nmの波長の紫外光を励起光として選択した場合の効果を確認した。照明条件及び撮像条件は以下の通りである。試験例1では、容器としてPET樹脂製のボトル、PE樹脂製のボトル、及びガラス壜を選択した。液体は、
図1A~
図1Gの測定で用いた食用油のサンプルのうち、菜種油A、ごま油及びオリーブオイルを対象とした。容器は、サンプルが充填され、キャップにて密封された状態とした。容器の検査範囲は肩部に設定し、その一部にサンプルの食用油を付着させた。撮像方向は鉛直下向きである。
・照明条件
ウシオ電機株式会社製のCare222を照明器として4台使用し、それらの照明器を
図4に例示したようにボトルの軸線回りに等間隔に配置した。当該照明器は222nmの波長をピークとする紫外光を照射するものであって、上限の波長は250nm以下である。各照明器の俯角、すなわち照明光の中心軸線が水平面に対して下方に傾く角度は概ね20°に設定し、各照明器の発光面からボトルの肩部までの距離は概ね80mmに設定した。励起光は連続照射とした。
・撮像条件
株式会社アイジュール製のID2MB-CLKTS2をカメラとして使用し、そのカメラを
図4に例示したようにボトルの軸線上で鉛直下方に向けて配置した。当該カメラは、CMOSセンサを用いた解像度200万画素のモノクロカメラである。カメラのレンズは、株式会社ケンコー・トキナー製のTC1614-3MP、焦点距離16mmであり、これを絞り1.4で使用した。シャッタースピードは1/30、カメラの撮像距離は概ね230mm、撮像範囲は概ね160mm×85mmの範囲である。また、米国法人であるMidwest Optical Systems社(略称はMidOpt社である。)製のバンドパスフィルタBP550をレンズに装着し、概ね400nm以下の波長域の光のカメラへの入射を制限した。なお、以下に示す画像では、各容器に装着されたキャップに対応する領域を暗部となるように処理している。また、各図の画像は、容器以外の領域を除外するため、カメラによる撮像範囲に対して左右方向を幾らかトリミングしたものである。
【0036】
試験例1にて得られた画像を
図8及び
図9に示す。
図8は、容器としてPET樹脂製を選択した場合に得られた画像の例であって、同図(a)は菜種油A、同図(b)はごま油、同図(c)はオリーブオイルの場合をそれぞれ示している。いずれの画像でも、領域Xに暗部が出現していることが確認できる。それらの暗部は、サンプルの食用油を付着させた範囲と概略一致するものである。
【0037】
図9は、容器として、PET樹脂製の容器に代えて、PE樹脂製の容器及びガラス壜を選択し、液体として菜種油Aを選択した場合に得られた画像の例であって、同図(a)はPE樹脂製容器の場合を、同図(b)はガラス壜の場合を示している。なお、照明条件及び撮像条件は
図8の例と同じであり、容器はサンプルが充填されて密封された状態である。これらの図から明らかなように、PE樹脂製の容器、ガラス壜のいずれの場合でも領域Xにて食用油の付着を示す暗部が出現していることが確認できる。また、
図9(b)によれば、樹脂製の容器に限らず、ガラス壜でも領域Xにて食用油の付着を示す暗部が出現していることから、本発明が樹脂以外の材質の容器であっても、液体の付着を検出し得ることが確認できる。
【0038】
(試験例2)
次に、上記で目安として例示した280nmの波長を励起光の波長として選択した場合の効果を確認した。照明条件及び撮像条件は以下の通りである。試験例1では、容器としてはPET樹脂製のボトルを選択した。液体は、
図1A~
図1Gの測定で用いた食用油のサンプルのうち、菜種油A、ごま油及びオリーブオイルを対象とした。容器は、サンプルが充填され、かつキャップにて密封された状態とした。
・照明条件
株式会社レイマック製のKTDBA-43_18UV-280を照明器として2台使用し、それらの照明器を
図5に例示したようにボトルの軸線に対する片側に配置した。当該照明器は280nmの波長をピークとする紫外光を照射するものであって、下限の波長は250nm以上である。各照明器の俯角は概ね15°に設定し、各照明器の発光面からボトルの肩部までの距離は概ね40mmに設定した。励起光は一定周期のパルス照射とした。
・撮像条件
試験例1に対してシャッタースピードを1/250に変更し、その余は試験例1と同一に設定した。
【0039】
試験例2にて得られた画像の例を
図10に示す。
図10(a)は菜種油A、同図(b)はごま油、同図(c)はオリーブオイルの場合をそれぞれ示している。いずれの画像でも、領域Xにて、食用油の付着を示す暗部が出現していることが確認できる。
図3によれば、オリーブオイルに関しては、280nm付近の波長域における光の透過率が他の食用油に比して大きく、概ね45%前後であるが、その場合でも
図10(c)に示すように暗部が出現しているため、280nmの波長の励起光が食用油の付着を検出可能な励起光として選択し得ることが確認できる。
【0040】
(比較例)
試験例1、2に対する比較のため、365nmの波長を励起光の波長として選択した場合の効果を確認した。比較例で用いた容器、及び液体は試験例1と同じである。照明条件及び撮像条件は以下の通りである。
・照明条件
京都電機器株式会社製のKDUV-L110-4236Aを照明器として1台使用し、その照明器を
図5に例示したようにボトルの軸線に対する片側に配置した。当該照明器は365nmの波長をピークとする紫外光を照射するものである。照明器の俯角は概ね10°に設定し、照明器の発光面からボトルの肩部までの距離は概ね80mmに設定した。励起光は一定周期のパルス照射とした。
・撮像条件
試験例1に対してシャッタースピードを1/1000に変更し、その余は試験例1と同一に設定した。
【0041】
比較例にて得られた画像の例を
図11に示す。
図11(a)は菜種油A、同図(b)はごま油、同図(c)はオリーブオイルの場合をそれぞれ示している。いずれの画像でも。容器の蛍光に対応して生じる明部中に、液体の付着を示す暗部が出現していない。励起光が365nm付近の波長域の場合、
図1A、
図1F及び
図1Gから明らかなようにサンプルの菜種油A、ごま油及びオリーブオイルのいずれも蛍光発光し、かつ
図3から明らかなように菜種油A及びオリーブオイルの透過率がほぼ100%、最も透過率が低いごま油でも60%程度の透過率を示す。そのため、励起光の波長域が上述した第2要件及び第3要件の少なくともいずれか一方を満たさず、食用油の蛍光、あるいは食用油の背後における容器の蛍光で明暗差が消失することが原因と考えられる。
【0042】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、適宜の変形又は変更が施された形態にて実施されてよい。例えば、容器及び液体の組み合わせは、第1要件~第3要件を満たす波長域、必要があればさらに第4要件を満たす波長域が見いだせる限りにおいて適宜に選択が可能である。容器の外面への液体の付着を検査すべき必要が生じる限りにおいて、本発明は容器に内容液として充填されるか否かを問わず、容器の外面への液体の付着を検出するための方法及び装置として適用可能である。
【0043】
上記の形態では、撮像手段として、カメラ13を含んだ撮像装置12を用いたが、撮像手段はカメラを用いる例に必ずしも限定されない。本発明の検査においては、容器とその外面に付着した液体との間における明暗差を示すデータが取得できれば、そのデータにて示された蛍光の明暗差に基づいて液体の付着を検出することが可能である。したがって、検出対称の蛍光の強度に応じた検出信号を出力する各種のセンサを利用して蛍光の明暗差を反映したデータを取得し、得られたデータ中における蛍光の明暗差に基づいて液体の付着の検出が試みられてもよい。例えば、2次元平面状の検出範囲を有する光強度センサを用いて検査範囲における蛍光の明暗差を示したデータが取得されてもよい。あるいは、1次元の光強度センサ(ラインセンサ)にて検査範囲を走査することにより、検査範囲における蛍光の明暗差を示したデータが取得されてもよい。そのように取得されたデータは、蛍光の明暗差を示す信号強度を有する点で上記の形態のカメラ13にて取得される画像データと実質的に等価である。したがって、その種のデータも本発明における「画像」の概念に含まれるものであって、その種のデータを取得するための各種のセンサもまた本発明の「撮像手段」の概念に含まれるものである。
【0044】
上述した実施の形態及び変形例のそれぞれから導き出される本発明の各種の態様を以下に記載する。なお、以下の説明では、本発明の各態様の理解を容易にするために添付図面に図示された対応する構成要素を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0045】
本発明の一態様に係る容器の検査方法は、容器(2)の外面への液体の付着を検出するための容器の検査方法であって、前記容器の検査範囲を当該容器が蛍光発光する波長域の励起光にて照明する手順と、前記励起光にて照明された前記検査範囲における蛍光の明暗差に基づいて、当該検査範囲における前記液体の付着を検出する手順と、を含み、前記励起光の波長域は、前記液体における蛍光の強度が前記容器にて生じる蛍光の強度よりも相対的に低くなり、かつ前記容器と当該容器に付着した液体との間に生じるべき明暗差が消失しないように前記液体における前記励起光の透過が制限される波長域に設定されるものである。
【0046】
励起光の波長域を上記の通りに設定すれば、容器が蛍光発光する一方、容器の外面に付着した液体における蛍光発光は容器における蛍光発光よりも抑制され、それにより両者の間に蛍光の明暗差が生じる。しかも、液体における励起光の透過が制限されることにより、液体の背後、すなわち液体が付着した領域における容器の蛍光発光も抑制され、容器とその外面に付着した液体との間の明暗差が確保される。したがって、容器の外面に液体が付着していれば、その付着領域は容器の他の領域と比較して相対的に暗くなる。そのため、励起光による照明に対応して生じる蛍光の明暗差を利用すれば、容器の外面への液体の付着を検出することができる。
【0047】
上記態様の検査方法においては、前記励起光の波長域が、さらに、前記容器と当該容器に付着した液体との間に生じるべき明暗差が消失しないように、前記容器における前記励起光の透過が制限される波長域に設定されてもよい。容器における励起光の透過も制限される場合には、容器内に励起光の照射で蛍光発光する物質が存在していても、その蛍光発光の影響で容器とその外面に付着した液体との間で生じるべき明暗差が消失する不都合を回避することが可能である。
【0048】
前記液体は前記容器に充填されるべき内容液であってもよい。これによれば、容器に内容液を充填する際の容器外への飛散、あるいは容器からの液漏れ等に起因する容器の外面への内容液の付着を検出することができる。
【0049】
前記液体は前記容器に内容液として充填されるべき食用油であって、前記励起光の波長域は280nm以下の波長域に設定されてもよい。これによれば、容器に充填されるべき食用油が容器の外面への付着を適切に検出することができる。
【0050】
前記検出する手順では、前記励起光にて照明された前記検査範囲における蛍光の明暗差を反映した画像を撮像し、前記画像中における前記蛍光の明暗差に基づいて、前記検査範囲における前記液体の付着を検出してもよい。これによれば、容器の外面への液体の付着を、画像処理技術によって検出することが可能である。
【0051】
本発明の一態様に係る容器の検査装置(1)は、容器(2)の外面への液体の付着を検出するための容器の検査装置であって、前記容器の検査範囲を当該容器が蛍光発光する波長域の励起光にて照明する照明手段(11)と、前記励起光にて照明された前記検査範囲における蛍光の明暗差を反映した画像を撮像する撮像手段(12)と、前記画像中における前記蛍光の明暗差に基づいて、前記検査範囲における前記液体の付着を検出する検出手段(22)と、を含み、前記照明手段による前記励起光の波長域が、前記液体における蛍光の強度が前記容器にて生じる蛍光の強度よりも相対的に低くなり、かつ前記液体における透過が、前記容器と当該容器に付着した液体との間に生じるべき明暗差が消失しない範囲で制限される波長域に設定されたものである。
【0052】
上記態様の検査装置によれば、画像処理技術を用いて上記態様の検査方法を実現することが可能であり、容器の外面への液体の検出に用いて好適な容器の検査装置を提供することができる。
【0053】
上記態様の検査装置においては、上記態様の検査方法と同じく、前記励起光の波長域が、さらに、前記容器と当該容器に付着した液体との間に生じるべき明暗差が消失しないように、前記容器における前記励起光の透過が制限される波長域に設定されてよい。前記液体が前記容器に充填されるべき内容液であってもよい。前記液体が前記容器に充填されるべき食用油であって、前記励起光の波長域は280nm以下の波長域に設定されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 容器の検査装置
2 ボトル
10 画像取得部
11 照明装置
12 撮像装置
13 カメラ
20 処理部
22 検出部