(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077673
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】熱シール機及びこれを用いた熱シール方法
(51)【国際特許分類】
B65B 51/10 20060101AFI20240603BHJP
B65B 51/16 20060101ALN20240603BHJP
【FI】
B65B51/10 210
B65B51/10 220
B65B51/16 100
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189751
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】595123427
【氏名又は名称】シール栄登株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】井上 久史
(72)【発明者】
【氏名】井上 哲也
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅也
【テーマコード(参考)】
3E094
【Fターム(参考)】
3E094AA12
3E094CA02
3E094CA10
3E094CA12
3E094DA06
3E094EA20
3E094FA05
3E094GA01
3E094GA07
3E094GA13
3E094GA23
3E094HA08
(57)【要約】
【課題】 熱シールの品質を安定的に維持しうる熱シール機及びこれを用いた熱シール方法を提供すること。
【解決手段】 上下一対のベルトにより被シール体の一部を挟持して搬送する搬送機構と、加熱板を各ベルトに摺接して被シール体の一部を上下のヒーターで各々加熱する上下一対の加熱部30と、加熱された被シール体の一部を押圧する押圧部とを有する。上下一対の加熱部に設けられた少なくとも上下一対の温度センサ71,72と、温度センサからの情報により上下のヒーターを制御する制御部101a,101bとを備え、上下一対の加熱部は、互いに圧接される圧接機構をベルトの流れ方向に対し異なる複数位置に設ける。一対の温度センサ71,72とはベルトの流れ方向の異なる位置の上下に、制御部101a,101bには情報を送らない温度モニター専用の他の温度センサ82,83,85,86をそれぞれ設けてある。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリーの間に掛け渡した上下一対のベルトにより被シール体の一部を挟持して搬送する搬送機構と、加熱板を前記各ベルトに摺接して被シール体の一部を上下のヒーターで各々加熱する上下一対の加熱部と、前記加熱部により加熱された被シール体の一部を押圧する押圧部と、前記上下一対の加熱部に設けられた少なくとも上下一対の温度センサと、前記温度センサからの情報により前記上下のヒーターを制御する制御部とを備え、前記上下一対の加熱部は、互いに圧接される圧接機構を有している熱シール機であって、
前記圧接機構は前記ベルトの流れ方向に対し異なる複数位置に設けられ、
前記一対の温度センサとは前記ベルトの流れ方向の異なる位置の上下に前記制御部には情報を送らない温度モニター専用の他の温度センサをそれぞれ設けてある熱シール機。
【請求項2】
前記制御部は、前記温度センサ及び他の温度センサのいずれかが一定の閾値範囲外又は前記ベルト順方向移動が停止した場合にシール動作を実施禁止し又は警告を発するシール停止ステップと、前記温度センサ及び他の温度センサの全てが前記一定の閾値範囲内に所定時間収まった場合にシール動作を開始可能とし又は開始可能信号を発するシール開始ステップとを遂行する請求項1記載の熱シール機。
【請求項3】
前記制御部は、前記ベルトの回転及び前記ヒーターの加熱後設定時間内はシール動作を実施禁止し又は警告を発するシール停止ステップと、前記設定時間経過後にシール動作を開始可能とし又は開始可能信号を発するシール開始ステップとを遂行する請求項1記載の熱シール機。
【請求項4】
前記温度センサは、前記他の温度センサよりも前記加熱部におけるベルト順方向の上手側に設けられている請求項1~3のいずれかに記載の熱シール機。
【請求項5】
前記他の温度センサは、前記上下一対の加熱部において夫々複数個設けられ、前記温度センサは、前記複数の他の温度センサの中間に設けられている請求項1~3のいずれかに記載の熱シール機。
【請求項6】
前記他の温度センサは、前記上下一対の加熱部において夫々複数個設けられている請求項1~3のいずれかに記載の熱シール機。
【請求項7】
前記複数の圧接機構は個別に圧接解除、圧接開始が設定可能である請求項1~3のいずれかに記載の熱シール機。
【請求項8】
請求項1記載の熱シール機を用いた熱シール方法であって、前記温度センサを用いた温度制御の結果を、当該温度センサ及び複数の前記他の温度センサによりモニターし、前記ベルトの回転及び前記ヒーターの加熱後設定時間経過後に熱シールを開始する熱シール方法。
【請求項9】
請求項1記載の熱シール機を用いた熱シール方法であって、前記温度センサを用いた温度制御の結果を、当該温度センサ及び複数の前記他の温度センサによりモニターし、前記温度センサ及び他の温度センサの全てが前記一定の閾値範囲内に所定時間収まった場合にシール動作を開始する熱シール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱シール機及びこれを用いた熱シール方法に関する。さらに詳しくは、プーリーの間に掛け渡した上下一対のベルトにより被シール体の一部を挟持して搬送する搬送機構と、加熱板を前記各ベルトに摺接して被シール体の一部を上下のヒーターで各々加熱する上下一対の加熱部と、前記加熱部により加熱された被シール体の一部を押圧する押圧部と、前記上下一対の加熱部に設けられた少なくとも上下一対の温度センサと、前記温度センサからの情報により前記上下のヒーターを制御する制御部とを備え、前記上下一対の加熱部は、互いに圧接される圧接機構を有している熱シール機及びこれを用いた熱シール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の熱シール機としては、例えば、次の特許文献1に記載のごときものが知られている。同文献の段落番号0027,0028では、上下各3個のセンサ により上下加熱板の温度がモニタリングされ、当該温度が一定となるように自動制御がなされている。
【0003】
前記圧接機構が、前記ベルトの流れ方向に対し異なる複数位置に設けられた場合、各複数位置での圧接状態が異なると、熱シール対象物への熱伝達が円滑になされないおそれがある。そして、発明者らの実験によれば、そのような状態で上下各複数のセンサによりモニタリングと温度制御を行っても、シール品質を安定的に維持するのが困難であることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、熱シールの品質を安定的に維持しうる熱シール機及びこれを用いた熱シール方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る熱シール機及びこれを用いた熱シール方法の第一の特徴は、プーリーの間に掛け渡した上下一対のベルトにより被シール体の一部を挟持して搬送する搬送機構と、加熱板を前記各ベルトに摺接して被シール体の一部を上下のヒーターで各々加熱する上下一対の加熱部と、前記加熱部により加熱された被シール体の一部を押圧する押圧部と、前記上下一対の加熱部に設けられた少なくとも上下一対の温度センサ(以下の実施形態では「第一温度センサ」とする。))と、前記温度センサからの情報により前記上下のヒーターを制御する制御部とを備え、前記上下一対の加熱部は、互いに圧接される圧接機構を有する構成であって、前記圧接機構は前記ベルトの流れ方向に対し異なる複数位置に設けられ、前記一対の温度センサとは前記ベルトの流れ方向の異なる位置の上下に前記制御部には情報を送らない温度モニター専用の他の温度センサ(以下の実施形態では「第二温度センサ」とする。))をそれぞれ設けることにある。
【0007】
同構成によれば、ベルトの移動により、ヒーターの熱はベルトによっても伝導される。このとき、例えば前記ベルトの流れ方向に対し異なる複数位置に設けられた各圧接機構の圧接力が異なると、ベルトの移動による熱伝導は円滑に行われない。このとき、前記一対の温度センサとは前記ベルトの流れ方向の異なる位置の上下に前記制御部には情報を送らない温度モニター専用の他の温度センサをそれぞれ設ける場合は、熱伝導の異常を温度制御で修正することなく、温度分布でモニターできるため、各圧接機構の圧接力が異なる状態を温度分布から判別することができ、シール品質の低下を未然に察知できる。
【0008】
上記第一の特徴に加え、前記制御部は、前記温度センサ及び他の温度センサのいずれかが一定の閾値範囲外又は前記ベルト順方向移動が停止した場合にシール動作を実施禁止し又は警告を発するシール停止ステップと、前記温度センサ及び他の温度センサの全てが前記一定の閾値範囲内に所定時間収まった場合にシール動作を開始可能とし又は開始可能信号を発するシール開始ステップとを遂行するものとしてもよい。
【0009】
同構成によれば、前記温度センサ及び他の温度センサのいずれかが一定の閾値範囲外であること又はベルト移動の停止により、熱伝達の不均一による熱シール品質の低下を警告し、閾値への所定時間の収まりにより、シール可能状態を告知することができる。
【0010】
また、上記第一の特徴に加え、前記制御部は、前記ベルトの回転及び前記ヒーターの加熱後設定時間内はシール動作を実施禁止し又は警告を発するシール停止ステップと、前記設定時間経過後にシール動作を開始可能とし又は開始可能信号を発するシール開始ステップとを遂行するものとしてもよい。
【0011】
このような設定時間内のシール動作等を禁止するステップと、設定時間経過後のシール開始ステップを有すると、シール品質の低下状態でのシール動作開始を回避することができる。
【0012】
上記各特徴において、前記温度センサは、前記他の温度センサよりも前記加熱部におけるベルト順方向の上手側に設けられるとよい。ヒーターの熱はベルト流れ方向に沿って下手側に移動するため、ヒーターを上手側のセンサで制御し、下手側への熱伝達をモニタすることができる。
【0013】
これに対し、上記各特長において、前記他の温度センサは、前記上下一対の加熱部において夫々複数個設けられ、前記温度センサは、前記複数の他の温度センサの中間に設けられてもよい。温度制御をおこなう温度センサの上手及び下手の他の温度センサでモニタを行うことができる。
【0014】
前記他の温度センサは、前記上下一対の加熱部において夫々複数個設けられているとよい。
【0015】
また、前記複数の圧接機構は個別に圧接解除、圧接開始が設定可能であると作業性が良い。
【0016】
一方、上記熱シール機を用いた熱シール方法の特徴は、前記温度センサを用いた温度制御の結果を、当該温度センサ及び複数の前記他の温度センサによりモニターし、前記ベルトの回転及び前記ヒーターの加熱後設定時間経過後に熱シールを開始することにある。
【0017】
また、上記熱シール機を用いた熱シール方法の他の特徴は、前記温度センサを用いた温度制御の結果を、当該温度センサ及び複数の前記他の温度センサによりモニターし、前記温度センサ及び他の温度センサの全てが前記一定の閾値範囲内に所定時間収まった場合にシール動作を開始することにある。
【発明の効果】
【0018】
上記本発明によれば、熱シールの品質を安定的に維持しうる熱シール機及びこれを用いた熱シール方法を提供しうるに至った。
【0019】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明にかかるシール機要部の正面図である。
【
図4】加熱板とヒーターとの関係を示す裏面側からの斜視図である。
【
図5】加熱板とセンサ取り付け位置との関係を示す加熱板の背面図であって、(a)は第一実施形態、(b)は第二実施形態である。
【
図6】センサとヒーターとの制御系統関係を示す概略のモジュール図であり、(a)は必要最小限の構成、(b)は実験用の構成、(c)は比較例の構成を示す図である。
【
図7】シール機の構造を示す写真であって、(a)は加熱板を取り付けた状態の正面側、(b)は加熱板を外して裏面側を手前に向けた状態の正面側の写真である。
【
図8】各時刻における温度センサの温度を示すグラフであって、(a)は第一温度センサ、(b)は第二温度センサのグラフである。
【
図9】加熱板の上げられた状態を示す写真であって、(a)は左加熱板が上がっている状態、(b)は右加熱板が上がっている状態、(c)は左右双方の加熱板が上がっている状態である。
【
図10】各時刻における第一温度センサの温度を示すグラフであって、(a)は加熱板が正常な状態、(b)は左加熱板が上がっている状態である。
【
図11】各時刻における第二温度センサの温度を示すグラフであって、(a)は加熱板が正常な状態、(b)は左加熱板が上がっている状態である。
【
図12】各時刻における第一温度センサの温度を示すグラフであって、(a)は加熱板が正常な状態、(b)は右加熱板が上がっている状態である。
【
図13】各時刻における第二温度センサの温度を示すグラフであって、(a)は加熱板が正常な状態、(b)は右加熱板が上がっている状態である。
【
図14】各時刻における第一温度センサの温度を示すグラフであって、(a)は加熱板が正常な状態、(b)は左右双方の加熱板が上がっている状態である。
【
図15】各時刻における第二温度センサの温度を示すグラフであって、(a)は加熱板が正常な状態、(b)は左右双方の加熱板が上がっている状態である。
【
図16】タイマーの効果を検証するための各時刻における第一温度センサの温度を示すグラフである。
【
図17】タイマーの効果を検証するための各時刻における第二温度センサの温度を示すグラフである。
【
図18】第一温度センサ故障時の各時刻における温度センサの温度を示すグラフであって、(a)は第一温度センサ、(b)は第二温度センサのグラフである。
【
図19】比較例の実験として上加熱板を複数の第一温度センサで制御する際の温度センサの設定を示すシール機正面側の写真である。
【
図20】
図19のシール機で左加熱板を上げた状態の各時刻における温度センサの温度を示すグラフである。
【
図21】
図19のシール機で右加熱板を上げた状態の各時刻における温度センサの温度を示すグラフである。
【
図22】
図19のシール機で加工したシール面の写真を示し、(a)は加熱板が正常位置にある場合、(b)は左加熱板が上がった場合、(c)は右加熱板が上がった場合である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、
図1~7を参照しながら、本発明に係る熱シール機及びこれを用いた熱シール方法の基本構造、並びに、実験用装置の構成をさらに詳しく説明し、その後実験結果を説明する。シール機1は、内容物を樹脂製の袋等である被シール物に充填し、袋の開口部をベルト搬送で加熱板間を通過させ、加熱融着により開口部を封止するものである。シール機1は、フレーム10にプーリー21を有する搬送機構20、ベルト26、加熱部30、圧接機構40及び冷却部60を備えている。
【0022】
搬送機構20のプーリー21は、上前プーリー22a及び上後プーリー23a、並びに、下前プーリー22b及び下後プーリー23bを備え、後述のモーター104で駆動回転される。上下それぞれのプーリーに上ベルト26a、下ベルト26bが個別に掛け渡され、上ベルト26a、下ベルト26bの接合面に被シール物をはさんで
図1の正転方向F移動させる。そして、加熱部30で加熱し、圧接機構40で封着した後、冷却部60で冷却して融着部を冷却固定する。すなわち、正転時には、
図1の右から左への正転方向Fに向かって上ベルト26a、下ベルト26bの接合面が移動して被シール物を運び、逆転時にはベルトを焼損から防ぎシール動作ができない状態となる。
【0023】
加熱部30は、
図4,5に示すように、上加熱板31a及び下加熱板31b(加熱板31)のそれぞれに独立に制御される上ヒーター32a及び下ヒーター32b(ヒーター32)を収納している。上ヒーター32a及び下ヒーター32bは、上加熱板31a及び下加熱板31bにそれぞれ形成された横孔31xに挿入され、電力を供給する端子を切欠31yから内側に張り出させ、回路に接続させている。穴31xはフレーム10又は後述の圧接機構40への加熱板31の取り付け用で用いられる。また、位置P1~6に後述のセンサ71,72,81~86を挿入する穴を表面又は裏面に形成してある。
【0024】
下加熱板31b、下圧接ローラー51b及び下冷却板61bは、下横軸40gによりフレームに固定されている。これに対し、上加熱板31a、上圧接ローラー51a及び上冷却板61aは、それぞれ第一圧接機構41及び第二圧接機構42、第三圧接機構43並びに第四圧接機構44で下方に付勢され、固定状態の下加熱板31b、下圧接ローラー51b及び下冷却板61bに対してベルト26を介して圧接されている。
【0025】
圧接機構40は、フレーム10に固定される固定ブロック40a内に上下にスライド可能な状態で可動ブロック40bが支持され、可動ブロック40bに固定されたスライド軸40cとフレーム10の水平部10aとの間にスプリング40eが挿入される。上横軸40fは上加熱板31aを可動ブロック40bに固定し、先のスプリング40eの弾性力により上加熱板31aを下加熱板31bに圧接させる。
【0026】
スライド軸40cの外面は雄ねじが形成され、樹脂製のタブ40dはこれに螺合され、上下固定位置が可変である。フレーム10の水平部10aの先には立上部10bが形成され、このタブ40dをスライド軸40c周りで180度反転させて立上部10bに掛止することで、上加熱板31aを下加熱板31bから離隔させ、仕掛かり中の被シール物の除去やベルト26等のメンテナンスが可能となっている。以下において、加熱板を上げるとは、タブ40dを立上部10bに掛止して上加熱板31aを下加熱板31bから離隔させることを意味する。第一圧接機構41を例にとって説明したが、第二圧接機構42、第三圧接機構43及び第四圧接機構44も同様の構造である。
【0027】
先の加熱板31において、
図6(a)の如く、位置P1,P4には第一温度センサ(温度センサ)71,72が取り付けられ、位置P2,3,5,6には第二温度センサ(他の温度センサ)82,83,85,86を設けてある。第一温度センサ(温度センサ)71,72及び第二温度センサ(他の温度センサ)82,83,85,86は、加熱板31の温度を温度監視器102で監視している。加えて、第一温度センサ(温度センサ)71,72は、それぞれ上温度制御器101a、下温度制御器101bにも接続され、取得した温度情報に基づき、PID制御にて上ヒーター32a、下ヒーター32bの温度を個別に制御している。
【0028】
動作制御器103は温度監視器102の情報に基づき、モーター104及び警報器105を制御する。モーター104は、先のプーリー21に接続され、ベルト26回転の方向と可否を制御する。後述のごとく、温度監視器102による温度の安定状態が一定時間連続することでシールの可否を警報器105で利用者に告知し、タイマー制御でプーリー21の正転・逆転の切り替え等を行う。
【0029】
以下の実験用の構成では、
図6(b)及び
図7(a),(b)の如く、位置P1~6には第二温度センサ(他の温度センサ)81~86を取り付け、位置P1,P2の近傍である位置Q1,Q2に。第一温度センサ(温度センサ)71,72を設けている。位置P1,P2と位置Q1,Q2とは近傍であるため、
図6(b)の実験結果は
図6(a)の構成でも再現可能である。
【0030】
さらに、比較実験の構成では、
図6(c)及び
図19の如く、位置P1~4に第一温度センサ(温度センサ)71~74を設けている。そして、第一~第四温度制御器101c~fを介して、第一~第四ヒーター32c~fを個別の第一温度センサ71~74で温度制御している。こちらは、全てを温度制御用のヒーターで制御すると却ってヒートシールの不都合が生じる状況を再現するためのものであり、本発明の先行技術文献に相当する構成である。以下の実験において、特に注釈の無い限り、目標設定温度は115度、ベルト搬送速度は5m/minである。
【0031】
図19,6(c)の構成では、上加熱板31a’が形式は異なるが上記と類似の左右一対の圧接機構40’により下方に押圧されている。以下の比較実験では、左及び右の圧接機構40’の圧接を解除し、上記押圧を片方ずつ解除する状態で実験を行っている。シール機メンテナンスの終了後に、再押圧を忘れたり、圧接機構40’のトラブルで押圧力が不十分となるようなケースを想定するものである。
【0032】
図20のグラフは先の上加熱板31a’が左側のみを上げたものである。
図21のグラフは先の上加熱板31a’の左側のみを上げたものである。Tb1,Tc1はそれぞれ加熱板を上げた時刻、Ta2,Tb2,Tc2はそれぞれ被シール体をシール機に投入した時刻を示し、シール面の外観写真をそれぞれ
図22(a)~(c)に示す。
【0033】
時刻Ta2に投入した
図22(a)では正常にシールされているが、時刻Tb2,Tb3に投入した
図22(b)(c)ではいずれもシール不良が発生している。時刻Tb2,Tc2ではセンサ温度は誤差範囲内に収まっているが、それでもシール不良が発生している。このことは、各部位に設けたセンサで各部位のヒーターが誤差範囲内に収まるように制御しても、ベルト26の加熱状態の安定性を維持できないことを意味する。
【0034】
上述のことより、全てのセンサをヒーターの制御に用いず、温度監視及びヒーターを制御するためのセンサと、温度監視のみのセンサとの双方を用いる
図6(a)(b)の構成を採用し、以下にその効果を説明する。
【0035】
まず、
図6(b)、
図7の構成によるシール機を用いて、オーバーシュートの影響を調べた。
図8(a)は、位置Q1,Q2に設けた制御用の第一温度センサ(温度センサ)71,72の出力である。一方、
図8(b)は位置P1~6に取り付けた第二温度センサ(他の温度センサ)81~86の出力である。なお、各グラフの縦軸はセンサの温度、横軸は時刻であるが、以下説明を省略する。
【0036】
被シール体の挿入時は、Td1オーバーシュート時(193秒)、Td2オーバーシュート後(292秒)、Td3安定時(616秒)であり、それぞれのシール強度を測定した。Td2,3において十分なシール強度が得られている一方、Td1ではそれらの1.6倍のオーバースペックのシール強度であり、不要な溶解の発生リスクが増大する。これらの結果より、オーバーシュート時を外し、温度の安定する時点でのシール作業が望ましいことが判明した。
【0037】
次に、加熱板が上がっている場合に、その状態を第二温度センサ(他の温度センサ)81~86(位置P1~P6)で判定できるか否かの実験を行ったのでこれを説明する。
図9は、加熱板の上げられた状態を示す写真であって、(a)は左加熱板が上がっている状態、(b)は右加熱板が上がっている状態、(c)は左右双方の加熱板が上がっている状態である。
図10~18における目標設定温度は120度である。
【0038】
図10は、各時刻における第一温度センサの温度を示すグラフであって、(a)は加熱板が正常な状態、(b)は左加熱板が上がっている状態である。
図11は、各時刻における第二温度センサの温度を示すグラフであって、
図11(a)は加熱板が正常な状態で先の
図10(a)に対応し、
図11(b)は左加熱板が上がっている状態で先の
図10(b)に対応する。位置Q1,Q2の近傍に設置された位置P1,P4の温度は、
図11(b)において同図(a)と同様目標温度に収束している。しかし、位置P5,P6の温度は大幅に下落して許容値を割り、これにより、左加熱板の上がりという異常事態を検知可能である。
【0039】
図12は、各時刻における第一温度センサの温度を示すグラフであって、(a)は加熱板が正常な状態、(b)は右加熱板が上がっている状態である。
図13(a)(b)の比較により、位置P5,P6の温度は大幅に下落して許容値を割り、これにより、右加熱板の上がりという異常事態を検知可能である。
【0040】
図14は、各時刻における第一温度センサの温度を示すグラフであって、(a)は加熱板が正常な状態、(b)は左右双方の加熱板が上がっている状態である。
図15(a)(b)の比較により、位置P5,P6の温度は大幅に下落して許容値を割り、これにより、左右加熱加熱板の上がりという異常事態を検知可能である。
【0041】
図16,17は安定タイマーの有用さを確認するための実験である。被シール体には水滴を付着させて、条件の悪い状態を再現している。この被シール体を、
図16の時刻Te1,Te2から時間ΔTe1,ΔTe2の範囲内で挿入し、シール試験を行った。Te1の範囲内では、位置P1での第一温度センサの下落はわずかであるが、
図17の位置P1の第二温度センサでは、大幅に下落し、シール不良が発生した。これに対し、P1~6の各第二温度センサの値が安定する時刻Te2の範囲内でシールを行うと適正なシール結果が得られた。
【0042】
これらの結果より、電源投入後Te2の如く温度が安定する時刻までの到達時間(安定時間ΔTx)を予め調べ、この安定時間ΔTxのカウントを動作制御器103に組み込み、モーター104及び警報器105を制御する。具体的には、安定時間経過まではモーター104を逆転させ、安定時間経過後にモーター104を正転させるとよい。また、安定時間経過までは警報機105で警告信号を流し、安定時間経過後に作業可能を告知する信号を発生させるとよい。
【0043】
図18はQ2の第一温度センサ71が破損した状態において、(a)は第一温度センサ、(b)は第二温度センサそれぞれの制御状態を示したものである。ここでは、時刻Tf1から時間ΔTf1の間において、実際の温度は
図18(a)のようには上下していないが、第一温度センサ71が破損により適正温度が把握できないため、温度制御器101aは上ヒーター31aの温度を上げることとなる。この第一温度センサのみではこのような温度以上は発見できないが、第二温度センサを設置すると、
図18(b)の如く位置P2,3の第二温度センサの異常昇温として、検出することができる。
【0044】
このように、温度センサを制御用の第一温度センサのみとすると、センサの異常を打ち消すようにヒーターの温度制御を行うため、本来の異常事態が発見することができない。特にヒーターとベルトとは異なる位置にあるため、異常事態を打ち消す温度制御がなされるとさらに異常事態の発見が困難となるジレンマが存在する。本発明は、ヒーターとベルトが分離し、保守のために存在する圧接機構による圧接不良に起因する異常事態を極めて合理的に発見することができ、シール品質の向上に寄与するものである。
【0045】
最後に、本発明のさらなる改変例を記載する。上記実施形態と同様の部材には同じ符号を附してある。
【0046】
第一温度センサ(71,72)及び第二温度センサ(他の温度センサ81~86)は、上記実施形態では、
図5(a)の位置P1~6に設けたが、その設置位置は適宜変更が可能である。例えば、
図5(b)の位置P1’~P6’のごとくよりベルトの摺接面に近い位置に第一温度センサ(71,72)及び第二温度センサ(他の温度センサ81~86)を設けてもよい。
【0047】
上記実施形態において、第一温度センサ(71,72,Q1,Q2)は、第二温度センサ(他の温度センサ81~86,P1~6)よりも加熱部におけるベルト順方向(正転方向F)の上手側に設けた。これにより、第一温度センサ(71,72,Q1,Q2)による制御結果を、より下手側の第二温度センサ(他の温度センサ81~86,P1~6)で検出しうることがわかる。その他、第二温度センサ(他の温度センサ)は、上下の各加熱部において夫々複数個設けられ(上下各2個以上)、第一温度センサは、第二温度センサの中間に設けてもよい。すなわち、
図6(a)において、位置P2,5に第一温度センサを設け、位置P1,3,4,6に第二温度センサを設けてもよい。これにより、中間の位置P2,5に第一温度センサによる制御結果が、上手側及び下手側双方に位置する第二温度センサへどのように反映されるかについてモニターが可能となる。
【0048】
なお、上記本発明の各実施形態は、相互の矛盾のない限り、組み合わせて実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば、食料品、医薬品、生活用品又は工業製品等の各種商品が収容された包装袋等の口部をヒートシールする熱シール機及びこれを用いた熱シール方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:シール機、10:フレーム、20:搬送機構、21:プーリー、22a:上前プーリー、22b:下前プーリー、23a:上後プーリー、23b:下後プーリー、26:ベルト、26a:上ベルト、26b:下ベルト、30:加熱部、31:加熱板、31a:上加熱板、31b:下加熱板、32:ヒーター、32a:上ヒーター、32b:下ヒーター、32c~f:第一~第四ヒーター、40:圧接機構、40a:固定ブロック、40b:可動ブロック、40c:スライド軸、40d:タブ、40e:スプリング、40f:上横軸、40g:下横軸、41:第一圧接機構、42:第二圧接機構、43:第三圧接機構、44:第四圧接機構、50:押圧部、51:圧接ローラー、51a:上圧接ローラー、51b:下圧接ローラー、60:冷却部、61:冷却板、61a:上冷却板、61b:下冷却板、71,72:第一温度センサ(温度センサ)、81~86:第二温度センサ(他の温度センサ)、101a:上温度制御器、101b:下温度制御器、101c~f:第一~第四温度制御器、102:温度監視器、103:動作制御器、104:モーター、105:警報器