(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077675
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】トランスアクスル用玉軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/41 20060101AFI20240603BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
F16C33/41
F16C19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189758
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 太郎
(72)【発明者】
【氏名】寺田 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】江尻 一博
(72)【発明者】
【氏名】江尻 康浩
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA25
3J701BA44
3J701BA49
3J701CA40
3J701EA31
3J701EA52
3J701EA70
3J701FA31
3J701XB03
3J701XB13
3J701XB26
3J701XB41
3J701XE33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低粘度オイルが用いられる環境下において、玉の損傷を抑えると共に、高速回転に対応することのできるトランスアクスル用玉軸受を提供する。
【解決手段】本発明にかかるトランスアクスル用玉軸受(軸受100)の構成は、外輪110、内輪120、および外輪110と内輪120との間を転動する玉130を含み、100℃における動粘度が4cst以下の潤滑油が使用される電動車両用のトランスアクスルに用いられるトランスアクスル用玉軸受であって、玉130を保持する樹脂製の冠型保持器(保持器140)を備え、dmn値が75万以上であり、かつ0.065<Pr/Crであることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪、内輪、および前記外輪と前記内輪との間を転動する玉を含み、100℃における動粘度が4cst以下の潤滑油が使用される電動車両用のトランスアクスルに用いられるトランスアクスル用玉軸受であって、
前記玉を保持する樹脂製の冠型保持器を備え、
dmn値が75万以上であり、かつ0.065<Pr/Crであることを特徴とするトランスアクスル用玉軸受。
【請求項2】
前記樹脂製の冠型保持器は、
y=(保持器帯幅×背肉^2)/6、x=PCD×最高回転数/10000としたとき、
y≧5×10(-5)×x^2+0.015x+0.035の式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のトランスアクスル用玉軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスアクスル用玉軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランスアクスルとは、トランスミッションとデファレンシャルギヤとが一体化された車両用装置であり、その内部には軸受が設けられている。例えば特許文献1には、「デフケースとリングギヤとを備えるディファレンシャル装置と、ディファレンシャル装置が収容され且つ底部に潤滑油が貯留されるトランスアクスルケースと、デフケースをトランスアクスルケースに回転軸線まわりに回転可能に保持する軸受と、トランスアクスルケースの底部に貯留された潤滑油を吸入するオイルポンプと、オイルポンプで吸入された潤滑油をトランスアクスルケース内に供給する潤滑油供給路とを含む車両用動力伝達装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエンジンを駆動源とする車のトランクアクスル用軸受には、鉄製保持器が用いられることが一般的であった。鉄製保持器は、高速回転時における動作の安定性(遠心力に対する信頼性)が確保できるというメリットを有していた。
【0005】
一方、近年ではHV車(ハイブリッド車)やEV車(電気自動車)が普及し始めている。HV車やEV車は従来のエンジン車と比べて駆動機構が高速回転・高負荷で動作するため、駆動機構およびこれに含まれる軸受も高速回転・高負荷に対応することが要求される。特に高速回転のために潤滑油は低粘度オイルを用いることが好ましい。
【0006】
しかしながら低粘度オイルを用いた場合、油膜が薄くなるため、保持器と転動体との間において十分な潤滑性が得られない可能性がある。鉄製保持器を用いた場合に充分な潤滑性が得られないと、回転時に玉(転動体)との接触によって玉の表面に損傷が生じやすいというデメリットがあった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、低粘度オイルが用いられる環境下において、玉の損傷を抑えると共に、高速回転に対応することのできるトランスアクスル用玉軸受を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるトランスアクスル用玉軸受の代表的な構成は、外輪、内輪、および外輪と内輪との間を転動する玉を含み、100℃における動粘度が4cst以下の潤滑油が使用される電動車両用のトランスアクスルに用いられるトランスアクスル用玉軸受であって、玉を保持する樹脂製の冠型保持器を備え、dmn値が75万以上であり、かつ0.065<Pr/Crであることを特徴とする。
【0009】
上記樹脂製の冠型保持器は、y=(保持器帯幅×背肉^2)/6、x=PCD×最高回転数/10000としたとき、y≧5×10(-5)×x^2+0.015x+0.035の式を満たすとよい。
【0010】
本発明によれば、低粘度オイルが用いられる環境下において、玉の損傷を抑えると共に、高速回転に対応することのできるトランスアクスル用玉軸受を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態にかかるトランクアクスル用玉軸受を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態にかかるトランクアクスル用玉軸受(以下、軸受100と称する)を説明する図である。本実施形態の軸受100は、ハイブリッド車等の電動車両に搭載される電動車両用のトランスアクスル(不図示)に使用される軸受を想定していて、100℃における動粘度が4cst以下の潤滑油(以下、低粘度潤滑油と称する)が用いられる。
図1に示すように本実施形態の軸受100は、外輪110、内輪120、それらの間を転動する玉130、および玉130を保持する樹脂製の冠型保持器(以下、保持器140)を含んで構成される。
【0014】
本実施形態では軸受100では、PCDをdm(
図1参照)、回転数をn、基本動定格ラジアル荷重をCr、動等価ラジアル荷重をPrとしたとき、「PCDの値dmおよび回転数nの積であるdmn値が75万以上、かつ基本動定格ラジアル荷重Crおよび動等価ラジアル荷重Prの比が0.065を超える値(0.065<Pr/Cr)」となるように設定している。これにより、低粘度オイルが用いられる環境下において、玉の損傷を抑えると共に、高速回転に対応することのできるトランスアクスル用玉軸受を提供することが可能になる。
【0015】
より好ましくは保持器140は、保持器の帯幅をw、背肉の厚みをhとし、y=(保持器帯幅w×背肉h^2)/6、x=PCD×最高回転数/10000としたとき、「y≧5×10(-5)×x^2+0.015x+0.035」の式を満たすとよい。これにより、上述した効果をより確実に得ることが可能となる。
【0016】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、トランスアクスル用玉軸受に利用することができる。
【符号の説明】
【0018】
100…軸受、110…外輪、120…内輪、130…玉、140…保持器