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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077689
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】供給システムおよび供給方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240603BHJP
   E03B 3/08 20060101ALI20240603BHJP
   H02S 40/10 20140101ALI20240603BHJP
【FI】
G06Q50/06
E03B3/08 Z
H02S40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189779
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】521510040
【氏名又は名称】株式会社イクシス
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5F151JA15
5F151JA28
5F251JA15
5F251JA28
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】災害時であっても安定した電力および水を供給しつつ、電気代や水道代などのコストを抑えることができる供給システムおよび供給方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る供給システム1は、太陽光パネルを用いて発電する発電手段と、発電手段により発電された電力が貯められる蓄電手段と、発電手段により発電された電力の供給先および供給量を制御する電力制御手段と、を含む電力供給設備10と、地下水を汲み上げる汲み上げ手段と、汲み上げ手段により汲み上げられた地下水をろ過するろ過手段と、ろ過手段によりろ過された処理水が貯められる受水槽と、ろ過手段によりろ過することができなかった地下水を、洗浄水として発電手段に供給する地下水制御手段と、を含む地下水供給設備20と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光パネルを用いて発電する発電手段と、
前記発電手段により発電された電力が貯められる蓄電手段と、
前記発電手段により発電された電力の供給先および供給量を制御する電力制御手段と、
を含む電力供給設備と、
地下水を汲み上げる汲み上げ手段と、
前記汲み上げ手段により汲み上げられた地下水をろ過するろ過手段と、
前記ろ過手段によりろ過された処理水が貯められる受水槽と、
前記ろ過手段によりろ過することができなかった地下水を、洗浄水として前記発電手段に供給する地下水制御手段と、
を含む地下水供給設備と、
を備えた供給システム。
【請求項2】
前記電力制御手段は、異常を検知した場合、前記地下水供給設備に優先して電力を供給する請求項1に記載の供給システム。
【請求項3】
前記地下水供給設備から前記電力供給設備まで繋がっており、前記洗浄水が運ばれる配管を備え、
前記電力供給設備は、前記配管と繋がり、前記洗浄水を用いて前記発電手段を洗浄する洗浄手段と、利用者の操作に応じて、前記地下水制御手段に前記洗浄水の供給を要求する操作手段と、を備えた請求項1または2に記載の供給システム。
【請求項4】
太陽光パネルを用いて発電する発電手段により、電力を発電すること、
蓄電手段により、前記発電手段により発電された電力を貯めること、
電力制御手段により、前記発電手段により発電された電力の供給先および供給量を制御すること、
を含む電力供給方法と、
汲み上げ手段により、地下水を汲み上げること、
ろ過手段により、前記汲み上げ手段により汲み上げられた地下水をろ過すること、
受水槽に、前記ろ過手段によりろ過された処理水を貯めること、
地下水制御手段により、前記ろ過手段によりろ過することができなかった地下水を、洗浄水として前記発電手段に供給すること、
を含む地下水供給方法と、
を有する供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会社、工場、病院、ホテルや老人ホームなどの建物に、電力および水(ろ過した地下水)を供給する供給システムおよび供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電気や水は電力会社や水道局から供給されるものである。しかし、地震や台風などの自然災害、または操作ミスや事故などの人為災害でインフラに被害が発生し、電気や水の供給が断たれる場合がある。そして、このような停電および断水は、業種によっては(例えば、病院や老人ホーム)大きな被害に繋がり得る。
【0003】
その一方、電気や水を自分で賄おうという動きもある。例えば、太陽光パネルを設置して発電したり、地下水から生活水を汲み上げたりすることが行われている。発電した電力を使ったり、生活水の一部または全部を地下水で賄ったりすることにより、電気代や水道代を抑えることができるためである。
例えば、経済産業省資源エネルギー庁の資料によると、家庭向けの電気代および産業向けの電気代のどちらも年々上がっていることが分かる。また、総務省統計局の家計調査によると、水道代も年々上がっていることが分かる。
【0004】
ここで、特許文献1には、より長期にわたり電力および水を供給することを目的としたエネルギー供給システムが記載されている。
このエネルギー供給システムは、非常時に、避難所に対してエネルギーを供給可能なエネルギー供給システムである。また、自然エネルギーを電力に変換することで発電する発電装置と、発電された電力を用いて、避難所の廃水および自然水利を浄化する浄化装置と、発電された電力を用いて、避難所の下水汚泥から水素を生成する水素生成装置と、浄化された水を電気分解することで水素を生成する水電解装置と、生成された水素を貯蔵するとともに、貯蔵している水素を供給する水素貯蔵装置と、供給される水素と浄水とを用いて電力および水または温水を生成して、避難所に供給する燃料電池と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-190394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、電力や水を供給する供給システムは、災害時であっても安定した電力および水を供給し得ることと、電気代や水道代などのコストを抑えることが求められている。
【0007】
よって、本発明は、災害時であっても安定した電力および水を供給しつつ、電気代や水道代などのコストを抑えることができる供給システムおよび供給方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る供給システムは、太陽光パネルを用いて発電する発電手段と、発電手段により発電された電力が貯められる蓄電手段と、発電手段により発電された電力の供給先および供給量を制御する電力制御手段と、を含む電力供給設備と、
地下水を汲み上げる汲み上げ手段と、汲み上げ手段により汲み上げられた地下水をろ過するろ過手段と、ろ過手段によりろ過された処理水が貯められる受水槽と、ろ過手段によりろ過することができなかった地下水を、洗浄水として発電手段に供給する地下水制御手段と、を含む地下水供給設備と、
を備える。
【0009】
これにより、電力供給設備側で、発電手段により発電された電力が、電力制御手段により建物に供給されたり、蓄電手段に貯められたり、または地下水供給設備に供給されたりする。一方、地下水供給設備側で、汲み上げ手段により汲み上げられた地下水がろ過手段によりろ過されて建物に供給されると共に、ろ過手段によりろ過することができなかった地下水は、洗浄水として発電手段に供給される。
【0010】
また、電力制御手段は、異常を検知した場合、地下水供給設備に優先して電力を供給することが望ましい。
これにより、災害や事故などの異常を検知した場合、電力制御手段は、地下水供給設備に優先して電力を供給する。
【0011】
さらに、地下水供給設備から電力供給設備まで繋がっており、洗浄水が運ばれる配管を備え、電力供給設備は、配管と繋がり、洗浄水を用いて発電手段を洗浄する洗浄手段と、利用者の操作に応じて、地下水制御手段に洗浄水の供給を要求する操作手段と、を備えることが望ましい。
これにより、地下水供給設備からろ過することができなかった洗浄水が配管を通って電力供給設備まで運ばれ、電力供給設備の洗浄手段により、当該洗浄水を用いて発電手段の洗浄が行われる。また、このような洗浄は、利用者の操作に応じて、操作手段が地下水制御手段へ洗浄水の供給を要求することで行うことができる。
【0012】
なお、本発明に係る供給方法は、太陽光パネルを用いて発電する発電手段により、電力を発電すること、蓄電手段により、発電手段により発電された電力を貯めること、電力制御手段により、発電手段により発電された電力の供給先および供給量を制御すること、を含む電力供給方法と、
汲み上げ手段により、地下水を汲み上げること、ろ過手段により、汲み上げ手段により汲み上げられた地下水をろ過すること、受水槽に、ろ過手段によりろ過された処理水を貯めること、地下水制御手段により、ろ過手段によりろ過することができなかった地下水を、洗浄水として発電手段に供給すること、を含む地下水供給方法と、
を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る供給システムによれば、かかる構成により、電力供給設備で、発電手段により発電された電力が、電力制御手段により建物に供給されたり、蓄電手段に貯められたり、または地下水供給設備に供給されたりするため、災害時であっても安定した電力および水を供給することができる。一方、地下水供給設備で、汲み上げ手段により汲み上げられた地下水がろ過手段によりろ過されて建物に供給されると共に、ろ過手段によりろ過することができなかった地下水は、洗浄水として発電手段に供給されるため、発電手段は当該洗浄水により洗浄されて熱や汚れに起因する発電量の低下を防ぐことができ、その結果電気代や水道代などのコストを抑えることができる。
【0014】
また、電力制御手段は、異常を検知した場合、地下水供給設備に優先して電力を供給する構成により、災害や事故などの異常を検知した場合、電力制御手段は、地下水供給設備に優先して電力を供給するため、災害時であっても地下水供給設備は安定して稼動し続けて建物に水を供給することができ、より災害時に安定した電力および水を供給することができる。
【0015】
さらに、地下水供給設備から電力供給設備まで繋がっており、洗浄水が運ばれる配管を備え、電力供給設備は、配管と繋がり、洗浄水を用いて発電手段を洗浄する洗浄手段と、利用者の操作に応じて、地下水制御手段に洗浄水の供給を要求する操作手段と、を備える構成により、地下水供給設備からろ過することができなかった洗浄水が配管を通って電力供給設備まで運ばれ、電力供給設備の洗浄手段により、当該洗浄水を用いて発電手段の洗浄が行われる。また、このような洗浄は、利用者の操作に応じて、操作手段が地下水制御手段へ洗浄水の供給を要求することで行うことができるため、利用者は定期的にまたは任意のタイミングで発電手段の洗浄を行うことができる。
【0016】
なお、本発明に係る供給方法によれば、本発明に係る供給システムと同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る供給システムの概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電力供給設備の概略構成図である。
図3】本発明の実施の形態に係る地下水供給設備の概略構成図である。
図4】本発明の実施の形態に係る洗浄手段の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の内容に限定されない。
【0019】
[供給システム]
図1は、本発明の実施の形態に係る供給システムの概略構成図である。
本発明の実施の形態に係る供給システム1は、図1に示すように、電力供給設備10および地下水供給設備20を備える。
【0020】
そして、供給システム1は、建物Bに、電力および水(ろ過した地下水)を供給する。建物Bは、例えば、会社、工場、病院、ホテルや老人ホームなどの建物であり、その他、テーマパーク、商業施設、学校、マンションや戸建て住宅などであってもよい。
【0021】
供給システム1において、電力供給設備10は、太陽光発電を行い、発電した電力を建物Bに供給する設備である。また、地下水供給設備20は、井戸Gから地下水W1を汲み上げて、ろ過した地下水W1を建物Bに供給する設備である。
【0022】
なお、電力供給設備10は、図1に示すように、発電した電力を地下水供給設備20にも供給する。一方、地下水供給設備20は、配管Pを介して、後述する「ろ過することができなかった地下水W2(以下、単に「地下水W2」ということもある)」を、電力供給設備10に供給する。
【0023】
その他、供給システム1が利用される建物Bは、電力供給設備10から電力が供給される他、電力会社などからも不足分の電力が補完的に供給される。また、同様に、建物Bは、地下水供給設備20から水が供給される他、水道局などからも不足分の水が補完的に供給される。
【0024】
[電力供給設備]
図2は、本発明の実施の形態に係る電力供給設備の概略構成図である。
電力供給設備10は、図2に示すように、太陽光パネルを用いて発電する発電手段12と、発電手段12により発電された電力が貯められる蓄電手段13と、発電手段12により発電された電力の供給先および供給量を制御する電力制御手段11と、を含む。
【0025】
また、電力供給設備10は、配管Pと繋がり配管Pを介して地下水供給設備20から運ばれてくる「ろ過することができなかった地下水W2」を用いて、発電手段12を洗浄する洗浄手段14を含む。
配管Pは、後述する地下水供給設備20のろ過手段26(図3参照)から、電力供給設備10の洗浄手段14まで繋がっている。
【0026】
発電手段12は、建物Bに設置された太陽光パネルを用いて発電を行う。太陽光パネルは、建物の屋上や屋根を始めとした、南向きであり太陽の日がよく当たる場所に設置することが望ましい。
【0027】
蓄電手段13は、発電手段12により発電された電力が貯められる。建物Bに供給される電力は、特に災害時などは、蓄電手段13に貯められた電力から供給される。
【0028】
電力制御手段11は、発電手段12により発電された電力の供給先および供給量を制御する。供給先は、例えば、建物Bへ電力を供給するのか、蓄電手段13へ電力を供給する(蓄電する)のか、または地下水供給設備20へ電力を供給するのか、などである。
【0029】
また、電力制御手段11は、蓄電手段13に貯められた電力を、建物Bまたは地下水供給設備20へ供給することを制御する。特に、電力制御手段11は、異常を検知した場合、地下水供給設備20に優先して電力を供給する。
異常を検知した場合とは、例えば災害や事故などを検知した場合であり、震度が閾値以上の揺れの地震を検知した場合や、台風により電力会社からの建物Bへの電力の供給がストップした場合などである。
【0030】
これにより、災害発生時に、電力会社から建物Bおよび地下水供給設20への電力の供給がストップした場合であっても、地下水供給設20に優先して電力が供給される。そのため、地下水供給設備20は、災害発生時であっても、井戸Gから地下水W1を汲み上げて、ろ過した地下水W1を建物Bに供給し続けることができる。
このように、生命維持にとって必要な水が供給され続けるため、特に、地震や台風などの災害時であっても、建物Bは、普段通り水を使うことができる。
【0031】
[地下水供給設備]
図3は、本発明の実施の形態に係る地下水供給設備の概略構成図である。
地下水供給設備20は、図3に示すように、井戸Gから地下水W1を汲み上げる汲み上げ手段22と、汲み上げ手段22により汲み上げられた地下水をろ過するろ過手段26と、ろ過手段26によりろ過された処理水が貯められる受水槽27と、ろ過手段26によりろ過することができなかった地下水W2を、洗浄水として発電手段12に供給する地下水制御手段21と、を含む。
【0032】
また、地下水供給設備20は、図3に示すように、原水槽23、除鉄・除マンガン塔24、および活性炭塔25を含む。
【0033】
汲み上げ手段22は、井戸Gから地下水W1を汲み上げる装置であり、例えばポンプである。
【0034】
汲み上げ手段22により汲み上げられた地下水W1は、原水槽23に貯められる。そして、原水槽23に貯められた地下水W1は除鉄・除マンガン塔24に移され、地下水W1に溶け込んでいる鉄が除去される。それから、さらに活性炭塔25に移され、かび臭物質やトリハロメタン前駆物質などが除去される。
【0035】
最後に、ろ過手段26によりろ過された地下水W1は、建物Bへ供給される生活水として、受水槽27に貯められる。なお、このような汲み上げ手段22により汲み上げられた地下水W1がろ過されて受水槽27に貯められるまでの過程は、あくまで一例である。例えば、水が上質で含まれている不純物が少ない場合は一部の除去工程を省いたりと、地下水W1の水質に応じて適宜設計変更可能である。
【0036】
地下水制御手段21は、この受水槽27に貯められた、ろ過された水を建物Bへ供給する。例えば、地下水制御手段21は、受水槽27に十分に水が貯められている場合は、この受水槽27に貯められた水を優先的に建物Bへ供給することができる。一方、受水槽27に十分に水が貯められていない場合(残量が少ない場合)は、水道局から建物Bへ水を供給するように制御することができる。その他、地下水供給設備20の機器(例えば、汲み上げ手段22やろ過手段26など)がメンテナンス中の場合や故障中の場合なども、補完的に、水道局から建物Bへ水を供給することができる。
【0037】
また、地下水制御手段21は、ろ過手段26によりろ過することができなかった地下水W2を、洗浄水として発電手段12に供給する。
例えば、ろ過手段26に膜ろ過システムを採用した場合、膜ろ過システムでは、ろ過することができなかった水が30~50%程度生じてしまう。地下水制御手段21は、このようなろ過することができなかった地下水W2を、洗浄水として発電手段12に供給するため、本来は捨てるはずだった水を再利用することができる。また、ろ過することができなかった水を捨てる場合は別途下水道料金がかかってしまうため、同時に水道代を抑えることができる。
【0038】
なお、図示していないが、受水槽27と同様に、ろ過手段26によりろ過することができなかった地下水W2が貯められる槽があってもよい。この槽に貯められた地下水Wは、発電手段12を洗浄するためにのみ用いられる。
【0039】
[洗浄手段]
図4は、本発明の実施の形態に係る洗浄手段の一例を説明する図である。
前述したように、電力供給設備10は、地下水W2を用いて発電手段12を洗浄する洗浄手段14を含む。
【0040】
図4に示す例において、発電手段12は複数枚の太陽光パネルが並べられたものであり、洗浄手段14は、当該太陽光パネルの表面に向かって地下水W2を放出する散水器である。
【0041】
洗浄手段14は、例えば、太陽光パネルの表面に付着した、砂埃、土埃、花粉や鳥の糞などの汚れを洗浄するための手段である。そのため、このような汚れを洗い流すことができれば、太陽光パネルの表面に向かって放出する地下水W2の水量や強さは適宜設計変更することができる。
【0042】
ここで、太陽光パネルは、熱に起因して発電量が減衰することが知られている。例えば、下記参考文献1には、熱に起因して太陽光パネルの発電量が減衰することを示すグラフが記載されている。
(参考文献1)太陽生活ドットコムのサイト
URL:https://taiyoseikatsu.com/faq/faq087.html
このグラフは、縦軸が最大出力(発電量)の割合(%)、横軸が太陽光パネルの表面温度(℃)である。ここで、太陽光パネルは、太陽光を直に浴びた場合、その表面は最大70℃~80℃になると言われている(特に、真夏)。
【0043】
そして、このグラフに示されるように、太陽光パネルの表面温度が上がるにつれて、最大出力(発電量)は下がる。例えば、太陽光パネルの表面温度が80℃付近になると、最大出力(発電量)は80%程度にまで下がる。
これは、太陽光パネルの内部は、半導体(シリコン)でできているためであり、シリコンは、高温になると性能が低下するためである。
【0044】
よって、洗浄手段14により、太陽光を浴びて表面温度が上がった太陽光パネルに、冷たい地下水W2を供給することで、太陽光パネルの表面温度を下げることができる。その結果、太陽光パネルの最大出力(発電量)が下がること、つまり発電効率の低下を防ぐことができる。
【0045】
さらに、太陽光パネルは、汚れに起因して発電量が減衰することが知られている。例えば、下記参考文献2には、汚れに起因して太陽光パネルの発電量が減衰することを示すグラフが記載されている。
(参考文献2)株式会社デベロップのサイト
URL:https://www.dvlp.jp/lp/energy_mainte/cleaning.html
このグラフは、縦軸が最大出力(発電量)の割合(%)、横軸が太陽光パネルを設置してからの経過年数(年)である。このグラフに示されるように、太陽光パネルはその表面が汚れるにつれて、最大出力(発電量)が下がっていることが分かる。例えば、毎年洗浄する場合(図5(B)の上のライン)に比べて、洗浄しない場合(図5(B)の下のライン)は年々最大出力(発電量)が下がっており、10年経過後においては、20%程度の差が生じている。
【0046】
よって、洗浄手段14により、太陽光パネルに付着した砂埃、土埃、花粉や鳥の糞などの汚れを取り除くことで、太陽光パネルを洗浄することができる。その結果、太陽光パネルの最大出力(発電量)が下がること、つまり発電効率の低下を防ぐことができる。
【0047】
なお、これらの洗浄は、本来捨てるはずであった、ろ過することができなかった水を利用するものである。太陽光パネルの表面温度を下げるためや、太陽光パネルに付着した汚れを取り除くために使用された水は、太陽光パネルに残らず自然蒸発する。そのため、捨てる場合にかかっていた下水道料金分、水道代を抑えることができる。
【0048】
ここで、太陽光パネルを洗浄する水に水道水を利用すると、水道料金がかかる。その上、水道水にはカルキや塩素などの成分が含まれているため、太陽光パネルの洗浄に水道水を利用すると、太陽光パネルを傷めたり、水垢が太陽光パネルに付着したりしてしまう恐れがある。
【0049】
これに対して、洗浄手段14は、地下水W2(いわゆる、真水)を用いて発電手段12(太陽光パネル)を洗浄するものであるため、このような問題が生じることはない。
【0050】
なお、電力供給設備10は、図4に示すように、利用者の操作に応じて、地下水制御手段21に地下水W2の供給を要求する操作手段Cを備える。
例えば、操作手段Cは、地下水制御手段21とインターネット回線(図示せず)で接続されており、当該インターネット回線を介して、操作手段Cから地下水制御手段21へ供給要求を送信することができる。一方、当該供給要求を受信した地下水制御手段21は、前述したように、ろ過手段26によりろ過することができなかった地下水W2を、洗浄水として発電手段12(洗浄手段14)に供給する。
【0051】
操作手段Cにより、地下水制御手段21に対して地下水W2の供給を要求する他、地下水制御手段21が、自動で発電手段12(洗浄手段14)に供給するものとしてもよい。例えば、地下水制御手段21は、毎月、決まった日の決まった時間に地下水W2を発電手段12(洗浄手段14)に供給することで、太陽光パネルの表面温度が上がることを防ぐ作業、および太陽光パネルの表面に付着した汚れを取り除く作業を定期的に行うようにしてもよい。
【0052】
以上のように説明した本発明の実施の形態はあくまで一例であり、本発明が利用される会社や工場などの建物の種類、規模、場所や地域の特性(日射量が多い地域、気温が安定した地域、木や建造物などで日陰が作られにくい地域)に応じて、適宜設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、災害時であっても安定した電力および水を供給しつつ、電気代や水道代などのコストを抑えることができる供給システムおよび供給方法であり、種類や規模を問わず、様々な建物に利用することができるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 供給システム
10 電力供給設備
11 電力制御手段
12 発電手段
13 蓄電手段
14 洗浄手段
20 地下水供給設備
21 地下水制御手段
22 汲み上げ手段
23 原水槽
24 除鉄・除マンガン塔
25 活性炭塔
26 ろ過手段
27 受水槽
B 建物
P 配管
C 操作手段
G 井戸
W1 地下水
W2 ろ過することができなかった地下水(洗浄水)
図1
図2
図3
図4