(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077716
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】エネルギ再生装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240603BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240603BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240603BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240603BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6568
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189826
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 俊彦
【テーマコード(参考)】
5H031
5H770
【Fターム(参考)】
5H031CC09
5H031KK08
5H770BA01
5H770BA02
5H770CA02
5H770CA06
5H770JA13W
5H770JA14W
5H770KA01W
5H770PA11
5H770PA28
5H770PA41
5H770PA44
5H770QA40
(57)【要約】
【課題】フィルタの発熱量が少くとも、エネルギ損失を小さくできるエネルギ再生装置を提供すること。
【解決手段】エネルギ再生装置(1)は、直流電源(30)に連なる供給側ライン(11)と回収側ライン(12)との間に設けられる、発熱要素としての抵抗(R)およびインダクタ(L)の一方または双方を備えるノイズフィルタ(10)と、発熱要素(R,L)を収容し、供給される熱媒体(HM)と発熱要素(R,L)とを直に熱交換させる第1熱交換器(25,29)と、熱媒体(HM)を蓄える第1貯留槽(21)と、第1貯留槽(21)から第1熱交換器(25,29)に向けて熱媒体(HM)が流れる供給する第1往路配管(23,23A,23B)と、第1熱交換器(25,29)で熱交換された熱媒体(HM)を第1貯留槽(21)に向けて流れる第1復路配管(27,27A,27B)と、を備える第1循環回路(20)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に連なる供給側ラインと回収側ラインとの間に設けられる、発熱要素としての抵抗およびインダクタの一方または双方を備えるノイズフィルタと、
前記ノイズフィルタの前記発熱要素と熱交換する熱媒体を、前記発熱要素に対して循環させる第1循環回路と、
前記第1循環回路において熱交換により加熱される前記熱媒体により加熱される被加熱体と、を備え、
前記第1循環回路は、
前記発熱要素を収容し、供給される前記熱媒体と前記発熱要素とを熱交換させる第1熱交換器と、
前記熱媒体を蓄える第1貯留槽と、
前記第1貯留槽から前記第1熱交換器に向けて前記熱媒体が流れる第1往路配管と、
前記第1熱交換器で熱交換された前記熱媒体を前記第1貯留槽に向けて流れる第1復路配管と、を備える、エネルギ再生装置。
【請求項2】
前記熱媒体は、
前記被加熱体でもある油圧アクチュエータの作動油である、
請求項1に記載のエネルギ再生装置。
【請求項3】
前記被加熱体は、電動モータの駆動用電源としての電池である、
請求項1に記載のエネルギ再生装置。
【請求項4】
前記被加熱体は、自動車のシートである、
請求項1に記載のエネルギ再生装置。
【請求項5】
前記被加熱体は、空調機器の加熱媒体である、
請求項1に記載のエネルギ再生装置。
【請求項6】
前記第1熱交換器における熱交換により加熱された前記熱媒体からの熱エネルギを受けて蓄熱する蓄熱槽を備える、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のエネルギ再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズフィルタで生ずる熱エネルギを他の用途に利用する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばモータの絶縁を劣化させたり、電磁ノイズとなって各種制御回路の誤動作を引き起こしたりする高調波などの高周波成分をノイズフィルタにより除去することが行われている。
ノイズフィルタによって除去される高調波のエネルギは熱エネルギに変換されてノイズフィルタを発熱させる。発熱する素子として、ノイズフィルタを構成する発熱要素としての抵抗RおよびインダクタLが知られている。ノイズフィルタの温度が上昇すると、ノイズフィルタの特性に悪影響を与えるため、ノイズフィルタの温度上昇を抑える必要がある。
【0003】
ノイズフィルタの温度上昇を抑えるための冷却システムが特許文献1に開示されている。特許文献1の冷却システムは、フィルタから発せられる熱で冷媒を加熱することにより、フィルタとの間で熱交換を行う熱交換器を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の熱交換器は、容器に充填された冷却用媒体を介して、容器に収容されるノイズフィルタと容器を貫通する配管に導かれる冷媒との間で熱交換を行う。具体的には、ノイズフィルタから発せられる熱によって容器に充填された冷却用媒体が加熱され、加熱された冷却用媒体と容器を貫通する配管を流れる冷媒との間で熱交換が行われる。特許文献1は、熱交換でエネルギを回収した冷媒を用いて発電装置のタービンを駆動させることで、回収したエネルギを電力として再生させ、この電力を他の装置類の駆動に供する。
【0006】
以上のように、特許文献1は、熱を電気に変換してエネルギを回収するが、この変換の際には不可避的に損失が生ずる。したがって、ノイズなどの高周波成分を除去するフィルタの発熱量が少なければ、冷媒はタービンを駆動するほどのエネルギを有することができない。この場合、熱から電気に交換されたエネルギは実用に供されないとさらなる損失を生む。
以上より、本発明は、フィルタの発熱量が少なくとも、エネルギ損失を小さくできるエネルギ再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエネルギ再生装置は、電源に連なる供給側ラインと回収側ラインとの間に設けられる、発熱要素としての抵抗およびインダクタの一方または双方を備えるノイズフィルタと、ノイズフィルタの発熱要素と熱交換する熱媒体を、発熱要素に対して循環させる第1循環回路と、第1循環回路において熱交換により加熱される熱媒体により加熱される被加熱体と、を備える。
第1循環回路は、発熱要素を収容し、供給される熱媒体と発熱要素とを熱交換させる第1熱交換器と、熱媒体を蓄える第1貯留槽と、第1貯留槽から第1熱交換器に向けて熱媒体が流れる供給する第1往路配管と、第1熱交換器で熱交換された熱媒体を第1貯留槽に向けて流れる第1復路配管と、を備える。
【0008】
本発明のエネルギ再生装置において、好ましくは、熱媒体は、
加熱体でもある油圧アクチュエータの作動油である。
【0009】
本発明のエネルギ再生装置において、好ましくは、被加熱体は、電動モータの駆動用電源としての電池である。
【0010】
本発明のエネルギ再生装置において、好ましくは、第1熱交換器における熱交換により加熱された熱媒体により加熱される被加熱体を備え、被加熱体は、自動車のシートである。
【0011】
本発明のエネルギ再生装置において、第1熱交換器における熱交換により加熱された熱媒体により加熱される被加熱体を備え、被加熱体は、空調機器の加熱媒体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエネルギ再生装置によれば、フィルタの発熱量が少なくても、第1循環回路において熱交換により加熱される熱媒体により被加熱体を加熱することを通じて、エネルギ損失を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るエネルギ再生装置の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態の変形例に係るエネルギ再生装置の構成を示す図である。
【
図3】第2実施形態に係るエネルギ再生装置の構成を示す図である。
【
図4】第3実施形態に係るエネルギ再生装置の構成を示す図である。
【
図5】第4実施形態に係るエネルギ再生装置の構成を示す図である。
【
図6】第5実施形態に係るエネルギ再生装置の構成を示す図である。
【
図7】第5実施形態の変形例に係るエネルギ再生装置の構成を示す図である。
【
図8】第5実施形態の他の変形例に係るエネルギ再生装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
以下では、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態および第5実施形態の5つの実施形態を順に説明する。第1実施形態~第4実施形態は、ノイズフィルタ10の抵抗Rと熱媒体HMとの間で熱交換できる構成を有するが、以下の点でそれぞれ相違する。また、第5実施形態は、ノイズフィルタ10の抵抗Rと熱媒体HMとの間で熱交換できる構成を有する。
第1実施形態~第5実施形態は、いずれもノイズフィルタ10の発熱要素と熱交換された熱媒体HMを被加熱体の加熱に用いるので、例えば熱エネルギから電気エネルギに変換するときのような損失は生じない。つまり、第1実施形態~第5実施形態は、熱エネルギをそのまま熱エネルギとして利用し、他のエネルギ形態に変換することなく、直接的な熱交換を行う。
【0015】
第1実施形態は、熱媒体HMが油圧アクチュエータの作動油HOであるとともに、この作動油HOが被加熱体である。第1実施形態に係るエネルギ再生装置1A,Bは、例えば、油圧アクチュエータを備える射出成形機に付帯する。
第2実施形態は、被加熱体が電動モータ駆動用の電池である。第2実施形態に係るエネルギ再生装置2は、例えば、電動モータを備える電動自動車に付帯する。
第3実施形態は、被加熱体が椅子である。第3実施形態に係るエネルギ再生装置3は、例えば、加熱式のシートを備える自動車に付帯する。
第4実施形態は、熱媒体HMが空気調和装置の冷媒であり、この冷媒が被加熱体である。第4実施形態に係るエネルギ再生装置4は、例えば、電動モータを備える電機自動車に付帯する。
【0016】
〔第1実施形態:
図1〕
第1実施形態に係るエネルギ再生装置1Aは、
図1に示すように、直流電源30と直流電源30から供給される電力により駆動される被駆動装置50との間に設けられ、直流電源30と被駆動装置50に電気的に接続される。直流電源30は、電流が供給される供給側ライン31と電流が回収される回収側ライン32を備える。被駆動装置50は、例えば電動機が該当し、直流電源30の供給側ライン31に電気的に繋がる供給側ライン51と直流電源30の回収側ライン32に電気的に繋がる回収側ライン52と、を備える。また本実施形態では電源を交流電源から供給された交流電流(または交流電圧)をインバータ回路で直流に変換したスイッチングノイズを含む直流電流(または直流電圧)による直流電源を想定しているが、エネルギ再生装置1Aは直流電源ではなく、高周波ノイズを含む交流電源に直接に接続してもエネルギ再生装置1Aは有効に作用する。
【0017】
エネルギ再生装置1Aは、ノイズフィルタ10と、熱媒体HMの第1循環回路20と、を備え、第1循環回路20を流れる熱媒体HMが油圧アクチュエータ40を駆動するための作動油HOからなる。また、この作動油HOは本発明における被加熱体に該当する。
ノイズフィルタ10は、一端が供給側ライン31に他端が供給側ライン51に接続される供給側ライン11と、一端が回収側ライン32に他端が回収側ライン52に接続される回収側ライン12と、の間に設けられる。回収側ライン12はグランドラインをなす。直流電源30からの直流電流は供給側ライン31、供給側ライン11および供給側ライン51を通じて被駆動装置50に供給される。被駆動装置50を通過した直流電流は回収側ライン52、回収側ライン12および回収側ライン32を通じて直流電源30に戻される。またエネルギ再生装置1Aが交流電源、例えばU相、V相、W相からなる三相交流電源に接続されている場合は、エネルギ再生装置1Aは、U相、V相、W相のそれぞれの間に設けられてもよい。具体的にはU相とV相の間、あるいはU相とW相の間、あるいはV相とW相の間のいずれかに、あるいは全部にエネルギ再生装置1Aを設けられることが好ましい。
【0018】
[ノイズフィルタ10]
ノイズフィルタ10は、コンデンサCと、コンデンサCと直列に接続される抵抗Rと、を備える。コンデンサCと抵抗Rは、供給側ライン11から分岐し、回収側ライン12に合流するフィルタライン13に設けられる。ノイズフィルタ10は、直流電源30から回収側ライン32を流れる全ての周波数成分の電流からノイズの主要因である高周波成分を取り除いて、低周波成分および中周波数成分を有する電流だけを被駆動装置50に流す。なお、以下においては、低周波成分および中周波数成分を総称して低周波成分等と略記する。
【0019】
コンデンサCは、公知の以下の式(1)に表されるように、周波数の低い信号成分に対してはインピーダンスZが高く、周波数の高い信号成分に対してはインピーダンスZが低くなる。この性質を利用して高周波成分を減衰させるノイズフィルタ10を構成するためには、コンデンサCをノイズの通り道となる供給側ライン11とグランドラインとなる回収側ライン12の間に設ける。こうすることによって、周波数の低い信号成分は供給側ライン11をそのまま通過し、周波数の高いノイズ成分はグランド側のインピーダンスZが低くなるのでグランド側に向けて流れることで、被駆動装置50へ高周波成分の電流が流れるのを阻止する。こうして高周波成分の電流はコンデンサCを経由して抵抗Rを通過するが、この電流の通過により抵抗Rが発熱する。次に説明する第1循環回路20は抵抗Rの発熱による熱エネルギを熱交換することにより再生する。
|Z|=1/(2π・f・C) … (1)
Z:インピーダンス,f:周波数,C:静電容量
【0020】
[第1循環回路20]
第1循環回路20は、ノイズフィルタ10の発熱要素としての抵抗Rと直に熱交換する熱媒体HMを、抵抗Rに対して循環させる。第1循環回路20は、熱媒体HMを溜める第1貯留槽21と、第1貯留槽21から熱媒体HMをくみ上げる第1ポンプ22と、第1ポンプ22でくみ上げた熱媒体HMをノイズフィルタ10の抵抗Rに向けて流す第1往路配管23と、第1往路配管23を介して熱媒体HMが供給される第1熱交換器25と、を備える。この第1熱交換器25は、ノイズフィルタ10の抵抗Rを収容する。また、第1循環回路20は、第1熱交換器25を流れて加熱される熱媒体HMを第1貯留槽21に向けて流す第1復路配管27と、を備える。第1復路配管27には、途中に仕切弁26が設けられている。第1循環回路20において、第1熱交換器25は内部に抵抗Rが収容されており、第1往路配管23を介して第1熱交換器25に供給される熱媒体HMは、第1熱交換器25を通過する過程でノイズフィルタ10の発熱した抵抗Rとの間で熱交換してから第1復路配管27を通って第1貯留槽21に戻される。なお、本実施形態では抵抗Rが発する熱が外部に漏れずに熱交換できるように、第1熱交換器25は抵抗Rを内部に収容している例を示すが、第1熱交換器25は抵抗Rを内部に収容するのではなく、抵抗Rの外表面に直に接するように第1熱交換器25を熱交換可能な様態で取り付けてもよい。
【0021】
[油圧アクチュエータ40]
エネルギ再生装置1Aは、熱媒体HMを構成する作動油HOの供給先として、油圧アクチュエータ40を想定している。油圧アクチュエータ40は、第1給排管41および第2給排管42を介して第1貯留槽21から加熱された作動油HOが供給されることで、所定の動作をすることができる。油圧アクチュエータ40が適用される装置類は限定されないが、例えば一部あるいは全部が油圧駆動の射出成形機に適用される。
【0022】
[エネルギ再生装置1Aの動作]
エネルギ再生装置1Aの動作を説明する。
直流電源30から被駆動装置50に向けて直流電流を供給している。このとき、
図1に示すように、低周波数成分~高周波成分の全周波数成分(All)のノイズを含む電流が回収側ライン32および供給側ライン11を流れてくる。ところが、供給側ライン11とグラウンドラインである回収側ライン12との間にノイズフィルタ10のコンデンサCが設けられているので、全周波数成分のうちで高周波成分(High)のノイズを含む電流はコンデンサCおよび抵抗Rを経由して回収側ライン12に向けて流れる。一方で、高周波成分が取り除かれ残ったノイズが低周波成分等(Low)だけになった電流が被駆動装置50に供給される。
【0023】
以上のようにしてノイズフィルタ10を設けることにより、高周波成分のノイズが取り除かれた直流電流が被駆動装置50に供給されるが、ノイズフィルタ10を高周波成分のノイズを含む直流電流がノイズフィルタ10を通過する過程で、抵抗Rが発熱する。エネルギ再生装置1Aは、抵抗Rの発熱を油圧アクチュエータ40の作動油HOに熱エネルギとして与えることにより、発熱エネルギを再生、回収する。
【0024】
直流電源30から被駆動装置50に向けて直流電流を供給している間、第1循環回路20の第1ポンプ22が駆動し熱媒体HMを構成する作動油HOをくみ上げる。くみ上げられた作動油HO(熱媒体HM)は、第1往路配管23を通って第1熱交換器25に向けて供給される。第1熱交換器25に供給される作動油HOは、第1熱交換器25を通過することで、発熱した抵抗Rとの間で熱交換することで温度が高くなる。つまり、第1熱交換器25を通過する作動油HOが発熱による抵抗Rの熱エネルギを受け取る。熱交換により加熱される作動油HOは、第1復路配管27を通って第1貯留槽21に戻される。
【0025】
加熱された作動油HOは、第1貯留槽21から第1給排管41および第2給排管42を介して第1貯留槽21から油圧アクチュエータ40に供給され、油圧アクチュエータ40に必要な動作を与える。
【0026】
[効果]
第1実施形態のエネルギ再生装置1Aが奏する効果を説明する。
一般的に油圧アクチュエータ40を駆動する作動油HOは、低温環境において粘度が上昇し流動性が低下して圧力損失が増大する。したがって、油圧アクチュエータ40の作動油は適正な温度に保持することが求められ、特に冬季などの低温環境において作動油HOをヒータにより加熱することが行われている。作動油HOの適正温度は35~55℃と加熱温度としては比較的低温であることから、ノイズフィルタ10の抵抗Rのように発熱量が小さい場合であっても、作動油HOを必要な温度に昇温するのに足りるエネルギを得ることができる。そして、作動油HOは第1熱交換器25を通過する過程で発熱する抵抗Rから直接的に熱交換されているので、エネルギ損失が小さい。この効果は、エネルギ再生装置1B、2~5においても同様に備えられる。
また、高周波ノイズは周辺装置の制御用の信号電流に悪影響を与えて装置の誤動作の原因となるが、エネルギ再生装置1Aにより高周波ノイズを除去しかつ熱に変換して消費(放熱)させることができるので、信号電流に影響を及ぼす原因を電気回路中から外部に排出して制御の安定化を図ることにも有効である。
【0027】
〔第1実施形態の変形例:
図2〕
エネルギ再生装置1Aは、被加熱体である作動油HOを直接に熱媒体HMとして用いたが、第1実施形態は、作動油HOを直接に熱媒体HMするのではなく、加熱された熱媒体HMを用いて間接的に作動油HOを加熱するエネルギ再生装置1Bとすることもできる。
以下、
図2を参照して、エネルギ再生装置1Aの変形例であるエネルギ再生装置1Bを説明する。なお、エネルギ再生装置1Bは、熱媒体HMが循環する第1循環回路20に加えて、作動油HOが循環する第2循環回路60を備えることを除けば、エネルギ再生装置1Aとほぼ同様の構成を備える。したがって、以下においては、エネルギ再生装置1Aとの相違点を中心にしてエネルギ再生装置1Bを説明する。
【0028】
[第1循環回路20]
第2実施形態に係る第1循環回路20は、第1復路配管27にキャピラリチューブからなる放熱器28を備える。第1復路配管27は加熱される熱媒体HMが流れる。放熱器28は、第1熱交換器25を流れる過程で加熱される熱媒体HMが流れることで、熱交換を促進させる。
【0029】
[第2循環回路60]
第2循環回路60は、作動油HOを溜める第2貯留槽61と、第2貯留槽61から作動油HOをくみ上げる第2ポンプ62と、第2ポンプ62でくみ上げた作動油HOを流す第2往路配管63と、第2往路配管63を介して作動油HOが供給される第2熱交換器65と、を備える。この第2熱交換器65は、放熱器28を収容する。また、第2循環回路60は、第2熱交換器65を流れた作動油HOが第2貯留槽61に戻す第2復路配管67と、を備える。第1循環回路20において、第2熱交換器65は内部に放熱器28が収容されている。
【0030】
第2往路配管63を介して第2熱交換器65に供給される作動油HOは、第2熱交換器65を流れる過程で放熱器28との間で熱交換してから第2復路配管67を通って第2貯留槽61に戻される。放熱器28には第1熱交換器25で加熱された熱媒体HMが流れる。したがって、第2熱交換器65において、作動油HOは加熱されて流れてくる熱媒体HMとの間で熱交換され、加熱される。この加熱された作動油HOは油圧アクチュエータに供給される。
【0031】
[効果]
エネルギ再生装置1Bは、エネルギ再生装置1Aと同様の効果を備えるのに加えて、熱媒体HMとして単独で熱媒体を選定できるので、例えば熱媒体HMとして導電性の低い流体を適用した場合は、電気回路の熱交換流体としてより安全に装備適用できる。あるいは熱媒体HMとして水を適用した場合は、万一、熱媒体HMが外部に漏れ出た場合であっても環境に悪影響を与えない。
【0032】
〔第2実施形態:
図3〕
次に、第2実施形態に係るエネルギ再生装置2について、
図3を用いて説明する。
エネルギ再生装置2は、電動モータ45の電源である電池46を被加熱体とする。なお、エネルギ再生装置2は、被加熱体が相違することを除けば、エネルギ再生装置1Aとほぼ同様の構成を備える。したがって、以下においては、エネルギ再生装置1Aとの相違点を中心にしてエネルギ再生装置1Bを説明する。
【0033】
エネルギ再生装置2は、第1復路配管27に放熱器28が設けられている。この放熱器28に近接して電池46が設けられている。加熱された熱媒体HMが放熱器28を流れると周囲に向けて放熱し、電池46を加熱する。電池46としては、EV(Electric Vehicle)やHEV(Hybrid Electric Vehicle)に搭載されているリチウムイオン電池やニッケル水素電が該当する。
【0034】
[効果]
EVやHEVに搭載されているリチウムイオン電池やニッケル水素電池の使用温度範囲は、0~45℃程度に定められており、特に理想的な温度範囲は約20~30℃である。よって、上記と同様に電池の使用温度も加熱温度としては比較的低温であることから、ノイズフィルタ10の発熱量が小さい場合であっても、電池46を昇温可能なエネルギを得ることができる。つまり、第2実施形態においてもエネルギ損失が小さい。
【0035】
〔第3実施形態:
図4〕
次に、第3実施形態に係るエネルギ再生装置3について、
図4を用いて説明する。
エネルギ再生装置3は、自動車、特にEVやHEVに設けられるシート48を被加熱体とする。つまり、エネルギ再生装置3はシートヒータとして機能する。なお、エネルギ再生装置3は、被加熱体が相違することを除けば、エネルギ再生装置2と同様の構成を備える。したがって、以下においては、エネルギ再生装置2との相違点を中心にしてエネルギ再生装置3を説明する。
【0036】
エネルギ再生装置3は、第1復路配管27に放熱器28が設けられている。この放熱器28は、シート48に近接して設けられるか、シート48の内部に設けられる。加熱された熱媒体HMが放熱器28を流れると周囲に向けて放熱し、シート48を加熱する。通常、自動車には複数のシート48が設けられるが、その場合には、それぞれのシート48に対応する数だけ第1復路配管27を分岐させることもできる。
【0037】
[効果]
冬季に自動車のシートに座った際に冷たくて不快な思いをすることがあるが、エネルギ再生装置3は、自動車のシート48を加熱することができる。シート48は人が座って暖かいまたは冷たくない温度に昇温されていればよい。通常、人の体温は35~37℃であるため、シート48の加熱温度も30~40℃程度であればよく、ノイズフィルタ10の発熱量が小さい場合であっても、シート48を適切な温度に昇温できるとともに維持できる。つまり、第3実施形態においてもエネルギ損失が小さい。
【0038】
〔第4実施形態:
図5〕
次に、第4実施形態に係るエネルギ再生装置4について、
図5を用いて説明する。
エネルギ再生装置4は、空調機器の熱媒体を被加熱体とする。つまり、エネルギ再生装置4は空調機器の一部、特に暖房として機能する。なお、エネルギ再生装置4は、被加熱体が相違することを除けば、エネルギ再生装置3と同様の構成を備える。したがって、以下においては、エネルギ再生装置3との相違点を中心にしてエネルギ再生装置4を説明する。
【0039】
エネルギ再生装置4は、第1復路配管27に放熱器28が設けられている。この放熱器28は、空調機器の筐体48の内部に設けられる。筐体48の内部にはファン49も設けられており、ファン49の回転により生ずる気流は、放熱器28に吹き付けられる。加熱された熱媒体HMが放熱器28を流れ、かつ、ファン49の回転による気流が放熱器28を通過することで、この気流が加熱される。
【0040】
[効果]
空調機器における暖房温度は、通常は18~25℃程度である。したがって、エネルギ再生装置4によれば、ノイズフィルタ10の発熱量が小さい場合であっても、適切な温度の暖房を実現できる。つまり、第4実施形態においてもエネルギ損失が小さい。
【0041】
〔第5実施形態:
図6,
図7,
図8〕
次に、第5実施形態に係るエネルギ再生装置5A,5B,5Cについて
図6、
図7および
図8を参照して説明する。なお、
図6~
図8において、第1実施形態~第4実施形態と同じ要素については、
図1~
図5と同じ符号をしてその説明を省くことがある。
【0042】
エネルギ再生装置1~4におけるノイズフィルタ10として働く素子がコンデンサCであるのに対して、エネルギ再生装置5A,5B,5Cはノイズフィルタ10として機能する素子がインダクタLである。インダクタLは式2のように、周波数の低い成分に対してインピーダンス(抵抗のようなもの:インピーダンスが高くなるほど信号が通りにくくなる)が低く、周波数の高い成分に対してはインピーダンスが高くなる。このため、インダクタLをノイズの通り道に直列に挿入すると、周波数の低い信号成分は通りやすく、周波数の高いノイズ成分は通りにくくなる。
|Z|=2π・f・L … (2)
Z:インピーダンス,f:周波数,L:インダクタ
【0043】
エネルギ再生装置5Aは、
図6に示すように、供給側ライン11にインダクタLが直列に挿入されている。したがって、直流電源30から被駆動装置50に向けて流れる直流電流に含まれるノイズの中で高周波成分が取り除かれる。
インダクタLは、抵抗の大きくなる高周波電流が流れることで発熱する。そこで、エネルギ再生装置5Aはこの発熱によるエネルギを利用して作動油HOを加熱する。つまり、エネルギ再生装置5Aは、インダクタLが第1循環回路20に設ける第1熱交換器29に収容されている。第1熱交換器29は、第1熱交換器25と同様に、発熱要素であるインダクタLと熱媒体HMとが直に熱交換できる。なお、本実施形態ではインダクタLが発する熱が外部に漏れずに熱交換できるように、第1熱交換器25はインダクタLを内部に収容している例を示すが、第1熱交換器25はインダクタLを内部に収容するのではなく、インダクタLの外表面に直に接するように第1熱交換器25を熱交換可能な様態で取り付けてもよい。
【0044】
ノイズフィルタ10としてインダクタLを備える場合、
図7に示すようにインダクタLに加えてコンデンサCを備えるエネルギ再生装置5Bとすることができるし、
図8に示すようにインダクタL、コンデンサCに加えて抵抗Rを備えるエネルギ再生装置5Cとすることができる。エネルギ再生装置5Bのように、インダクタLとコンデンサCを備えることにより、インダクタLにより高周波ノイズを熱交換して消費できることに加えて、インダクタLで消費できなかった高周波ノイズをコンデンサCにより除去できる。また、エネルギ再生装置5Cのように、インダクタL、コンデンサCおよび抵抗Rを備えることにより、インダクタLと抵抗Rの両方で高周波ノイズを熱に変換して消費できる。したがって、エネルギ再生装置5Cによれば、エネルギ再生装置5A、5Bよりもエネルギの回収量を多くできるので省エネ効果を増大できるとともに、信号電流に影響を及ぼす原因をより確実に電気回路中から外部に排出して制御の安定化を図ることができる。
【0045】
エネルギ再生装置5Bにおいて、インダクタLとコンデンサCのうち、発熱要素はインダクタLだけであるので、インダクタLだけに第1熱交換器29が設けられる。
エネルギ再生装置5Cにおいて、インダクタL、コンデンサCおよび抵抗Rのうち、発熱要素はインダクタLおよび抵抗Rであるから、インダクタLには第1熱交換器29が設けられ、抵抗Rには第1熱交換器25が設けられる。このように、第1熱交換器25と第1熱交換器29というように、エネルギ再生装置5Cは2つの発熱要素からエネルギを収集できるので、エネルギ再生装置5Cはより多くのエネルギを再生できる。
【0046】
[効果]
エネルギ再生装置5A,5B,5Cによれば、インダクタLを備えるノイズフィルタ10においても、ノイズフィルタ10における抵抗Rの発熱量が少なくても、熱媒体HMと被加熱体であるインダクタL、抵抗Rとが直に熱交換するので、エネルギ損失が小さい。
なお、エネルギ再生装置5A,5B,5Cは、作動油HOを熱媒体HMであって被加熱体とする例、つまり第1実施形態のように油圧アクチュエータHAに適用されることを想定しているが、エネルギ再生装置5A,5B,5Cによる被加熱体はこれに限定されず、例えば第2実施形態~第4実施形態における被加熱体、その他の被加熱体の加熱に用いることができる。
【0047】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、例えば被加熱体の加熱温度が10~60℃程度の範囲において、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることができる。
電源として電池を適用した場合は、ノイズは被駆動装置を駆動するための発電時だけでなく、電池の充電時に発生するノイズであってもよい。
また、ノイズフィルタ10で発生した熱を蓄熱しておくことで、まだ熱量が少ない次回の放電直後(あるいは被駆動装置の駆動開始直後)であっても、蓄熱した熱で被加熱体を加熱することができる。または、充電時に電池に発生する熱を被加熱体の加熱用の熱として蓄熱しておき、この蓄熱した熱の温度保持のためにノイズフィルタ10で発生した熱を使用してもよい。
【0048】
蓄熱方式としては、例えば熱媒体として空気などの湿潤気体を適用するとともに、水分を吸収あるいは放出することで発熱あるいは放熱する素材を蓄熱材として用い、この蓄熱材に湿潤気体を供給して化学的に蓄熱および放熱することができる。この蓄熱材としては、非晶質アルミニウムケイ酸塩(HAS:Hydroxyl Aluminum Silicate)と低結晶性粘土(Clay)からなる複合体の無機系吸放湿材、吸湿発熱特性のあるポリエステルやポリアミドなどの高分子樹脂素材など有機系素材を用いることができる。この場合、高温気体を蓄熱材である吸放湿材を通すことで吸放湿材を乾燥させた後、吸放湿材に湿潤気体を通すことで吸放湿材に給水発熱させて気体を加熱することができる。
例えば、
図3に示すエネルギ再生装置2を例にすると、放熱器28で加熱された空気を受ける位置に蓄熱材を備える蓄熱槽を設ける。この場合、電池46に対して並列的に蓄熱槽を設けることができるし、電池46の代替として蓄熱槽を設けることもできる。
【0049】
また本発明のノイズフィルタによって加熱された熱媒体HMの全部または一部を断熱材によって囲まれた蓄熱槽に貯蓄しておくなどの機械的あるいは物理的な蓄熱方式でもよい。
例えば、
図1に示すエネルギ再生装置1を例にすると、第1貯留槽21の全体を断熱材で作製された閉空間を有する蓄熱槽とすることができるし、第1貯留槽21の一部に断熱材で作製された閉空間を有する蓄熱槽を設けることもできる。
【0050】
ノイズフィルタの要素であるコンデンサC、インダクタLおよび抵抗Rがケーシングの中に収容され、ノイズフィルタが一体の部材を構成する場合がある。この場合は、例えば、当該ケーシングに接するように第1熱交換器を併設すればよい。他の形態として、第1熱交換器の中に当該ケーシングを内蔵させる、または、当該ケーシングの中に第1熱交換器を内蔵させることもできる。以上の形態であっても、ノイズフィルタの発熱要素の発熱の熱エネルギを加熱体の加熱に直接的に熱交換できる。
【符号の説明】
【0051】
1A,1B,2,3,4,5A,5B,5C エネルギ再生装置
10 ノイズフィルタ
11 供給側ライン
12 回収側ライン
13 フィルタライン
20 第1循環回路
21 第1貯留槽
22 第1ポンプ
23 第1往路配管
25 第1熱交換器
26 仕切弁
27 第1復路配管
28 放熱器
29 第1熱交換器
30 直流電源
31 供給側ライン
32 回収側ライン
40 油圧アクチュエータ
41 第1給排管
42 第2給排管
45 電動モータ
46 電池
50 被駆動装置
51 供給側ライン
52 回収側ライン
60 第2循環回路
61 第2貯留槽
62 第2ポンプ
63 第2往路配管
65 第2熱交換器
67 第2復路配管
C コンデンサ
L インダクタ
R 抵抗
HM 熱媒体
HO 作動油