(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077718
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】生産計画立案システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240603BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189829
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100201455
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 宏治
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】友利 韻哲
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生産拠点で製品を生産し、出荷拠点から出荷するまでの総コストを従来に比べて低減できる生産計画を立案する生産計画立案システムを提供する。
【解決手段】システムは、生産要求する製品の種類、製品数及び時期を含む説明変数から、以下の(1)~(8)の合計を最小化する第1生産拠点で生産する中間品の種類、生産数、生産時期、輸送数及び輸送時期と、第2生産拠点で生産する製品の種類、生産数、生産時期及び中継拠点又は出荷拠点への輸送数及び輸送時期を含む目的変数と、を算出する。(1)第1生産拠点での生産コスト、(2)第2生産拠点での生産コスト、(3)第1生産拠点での品種切替コスト、(4)第2生産拠点での品種切替コスト、(5)第1生産拠点での在庫保管コスト、(6)第2生産拠点での在庫保管コスト、(7)第1生産拠点から第2生産拠点への輸送コスト、(8)第2生産拠点から中継拠点及び/又は出荷拠点への輸送コスト。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生産拠点を経て複数種類の製品を生産し、生産拠点から直接又は中継拠点を経由して出荷拠点から出荷する生産計画立案システムであって、
前記複数の生産拠点は、生産要求があった製品に応じて、第1材料から中間品を生産する第1生産拠点と、前記第1生産拠点で生産された前記中間品を含む第2材料から前記生産要求があった製品を生産する第2生産拠点を含むものであり、
生産要求する製品の種類、製品数、及び時期を含む説明変数データを入力する入力部と、
前記入力部に入力された説明変数データから、制約条件を満たしつつ、少なくとも以下の(1)~(8)のコストを含むコストの合計を最小化とすることを目的関数とする最適化問題を解いて、前記第1生産拠点で生産する中間品の種類、前記中間品の各種類の生産数、生産時期、並びに前記第2生産拠点への輸送数及び輸送時期と、前記第2生産拠点で生産する製品の種類、製品の各種類の生産数、生産時期、並びに前記中継拠点又は前記出荷拠点への輸送数及び輸送時期を含む目的変数を算出する最適化部と、
前記最適化部によって算出された目的変数を用いて生産計画データを作成する計画作成部を備える、生産計画立案システム。
(1)前記第1生産拠点での中間品の生産コスト
(2)前記第2生産拠点での製品の生産コスト
(3)前記第1生産拠点で生産する中間品の品種切替コスト
(4)前記第2生産拠点で生産する製品の品種切替コスト
(5)前記第1生産拠点での第1材料及び中間品の在庫保管コスト
(6)前記第2生産拠点での第2材料及び製品の在庫保管コスト
(7)前記第1生産拠点から前記第2生産拠点への輸送コスト
(8)前記第2生産拠点から前記中継拠点及び/又は前記出荷拠点への輸送コスト
【請求項2】
前記第2生産拠点から一又は複数の中継拠点を経由して前記出荷拠点に輸送するものであり、
前記最適化部は、前記入力部に入力された説明変数データから、前記(1)~(8)のコストに加えて(9)~(11)を含むコストの合計が最小となるように最適化問題を解いて前記目的変数を算出するものであり、
前記目的変数は、前記第2生産拠点の前記中継拠点への輸送数及び輸送時期及び前記中継拠点から前記出荷拠点への輸送数及び輸送時期を含む、請求項1に記載の生産計画立案システム。
(9)前記中継拠点での前記製品の在庫保管コスト
(10)前記第2生産拠点から前記中継拠点への輸送コスト
(11)前記中継拠点から前記出荷拠点への輸送コスト
【請求項3】
前記目的変数は、中間品の種類間での生産順序を含む、請求項1又は2に記載の生産計画立案システム。
【請求項4】
前記目的変数は、製品の種類間での生産順序を含む、請求項1又は2に記載の生産計画立案システム。
【請求項5】
前記在庫保管コストは、入出庫コストと、保管継続コストを含む、請求項1又は2に記載の生産計画立案システム。
【請求項6】
複数の生産拠点で複数種類の製品を生産し、生産拠点から直接又は中継拠点を経由して出荷拠点から出荷する生産計画立案システムであって、
前記複数の生産拠点は、生産要求があった製品に応じて、材料から製品を生産する第1製品生産拠点と第2製品生産拠点を含むものであり、
生産要求する製品の種類、製品数、及び時期を含む説明変数データを入力する入力部と、
前記入力部に入力された説明変数データから、制約条件を満たしつつ、少なくとも以下の(1)~(8)のコストを含むコストの合計を最小化とすることを目的関数とする最適化問題を解いて、前記第1製品生産拠点で生産する製品の種類、前記製品の各種類の生産数、生産時期、並びに、中継拠点又は出荷拠点への輸送数及び輸送時期と、前記第2製品生産拠点で生産する製品の種類、製品の各種類の生産数、生産時期、並びに、前記中継拠点又は前記出荷拠点への輸送数及び輸送時期を含む目的変数を算出する最適化部と、
前記最適化部によって算出された目的変数を用いて生産計画データを作成する計画作成部を備える、生産計画立案システム。
(1)前記第1製品生産拠点での製品の生産コスト
(2)前記第2製品生産拠点での製品の生産コスト
(3)前記第1製品生産拠点で生産する製品の品種切替コスト
(4)前記第2製品生産拠点で生産する製品の品種切替コスト
(5)前記第1製品生産拠点での材料及び製品の在庫保管コスト
(6)前記第2製品生産拠点での材料及び製品の在庫保管コスト
(7)前記第1製品生産拠点から前記中継拠点及び/又は前記出荷拠点への輸送コスト
(8)前記第2製品生産拠点から前記中継拠点及び/又は前記出荷拠点への輸送コスト
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産拠点で製品を生産し出荷拠点から出荷する生産計画を立案する生産計画立案システム及び生産計画の立案方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顧客から要求される製品の多様化により、一つの製品を生産する場合に、一つの生産拠点で材料から製品まで生産することは少ない。また、一つの生産拠点で複数製品を切り替えて生産する場合もあり、一つの製品を生産して顧客に出荷する場合に、一つの生産拠点のみで完結することが少なくなってきている。
材料から一つの製品を生産して顧客の手元に届くまでの間の一例としては、複数のサプライヤー等の生産拠点で、製品の生産に使用される部品を生産し、メーカー等の生産拠点に生産した部品を供給し、メーカー等が当該部品を用いて製品を生産する(例えば、特許文献1)。そして、メーカー等が生産した製品を出荷拠点に輸送し、出荷拠点から顧客に出荷されることで顧客の手元に製品が届く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、サプライヤーとメーカーの関係等では、部品の生産拠点と製品の生産拠点は、離れた地域に設けられることが多く、一つのメーカー内においても、複数の地域に個別の生産拠点を設けている場合がある。これらのような場合、生産コストとは別に生産拠点間の輸送コストや保管コストが発生する。そのため、製品コストを管理する上で輸送コストや保管コストを十分に考慮する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、生産拠点で製品を生産し、出荷拠点から出荷するまでの総コストを従来に比べて低減できる生産計画を立案する生産計画立案システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、複数の生産拠点を経て複数種類の製品を生産し、生産拠点から直接又は中継拠点を経由して出荷拠点から出荷する生産計画立案システムであって、前記複数の生産拠点は、生産要求があった製品に応じて、第1材料から中間品を生産する第1生産拠点と、前記第1生産拠点で生産された前記中間品を含む第2材料から前記生産要求があった製品を生産する第2生産拠点を含むものであり、生産要求する製品の種類、製品数、及び時期を含む説明変数データを入力する入力部と、前記入力部に入力された説明変数データから、制約条件を満たしつつ、少なくとも以下の(1)~(8)のコストを含むコストの合計を最小化とすることを目的関数とする最適化問題を解いて、前記第1生産拠点で生産する中間品の種類、前記中間品の各種類の生産数、生産時期、並びに前記第2生産拠点への輸送数及び輸送時期と、前記第2生産拠点で生産する製品の種類、製品の各種類の生産数、生産時期、並びに前記中継拠点又は前記出荷拠点への輸送数及び輸送時期を含む目的変数を算出する最適化部と、前記最適化部によって算出された目的変数を用いて生産計画データを作成する計画作成部を備える、生産計画立案システムである。
(1)前記第1生産拠点での中間品の生産コスト
(2)前記第2生産拠点での製品の生産コスト
(3)前記第1生産拠点で生産する中間品の品種切替コスト
(4)前記第2生産拠点で生産する製品の品種切替コスト
(5)前記第1生産拠点での第1材料及び中間品の在庫保管コスト
(6)前記第2生産拠点での第2材料及び製品の在庫保管コスト
(7)前記第1生産拠点から前記第2生産拠点への輸送コスト
(8)前記第2生産拠点から前記中継拠点及び/又は前記出荷拠点への輸送コスト
【0007】
ここでいう「中間品」とは、生産の途中にある製品をいい、仕掛品だけではなく、半製品も含み、それ単体で販売の可否を問わない。
【0008】
本様相によれば、第1生産拠点から第2生産拠点を経由して出荷拠点までの生産コストや品種切替コスト、在庫保管コスト、輸送コストを踏まえた生産画データを作成することができ、第1生産拠点、第2生産拠点を経て製品を生産してから出荷拠点で出荷するまでの総コストを従来に比べて低減できる。
【0009】
好ましい様相は、前記第2生産拠点から一又は複数の中継拠点を経由して前記出荷拠点に輸送するものであり、前記最適化部は、前記入力部に入力された説明変数データから、前記(1)~(8)のコストに加えて(9)~(11)を含むコストの合計が最小となるように最適化問題を解いて前記目的変数を算出するものであり、前記目的変数は、前記第2生産拠点の前記中継拠点への輸送数及び輸送時期及び前記中継拠点から前記出荷拠点への輸送数及び輸送時期を含む。
(9)前記中継拠点での前記製品の在庫保管コスト
(10)前記第2生産拠点から前記中継拠点への輸送コスト
(11)前記中継拠点から前記出荷拠点への輸送コスト
【0010】
本様相によれば、中継拠点での在庫や輸送コストを踏まえた生産計画データを作成することができ、生産拠点で生産してから出荷するまでの総コストをより低減できる。
【0011】
好ましい様相は、前記目的変数は、中間品の種類間での生産順序を含む。
【0012】
本様相によれば、生産する中間品の種類間での生産順序が考慮されるので、リードタイムと品種切替コストを少なくすることができる。
【0013】
好ましい様相は、前記目的変数は、製品の種類間での生産順序を含む。
【0014】
本様相によれば、生産する製品の種類間での生産順序が考慮されるので、リードタイムと品種切替コストを少なくすることができる。
【0015】
好ましい様相は、前記在庫保管コストは、入出庫コストと、保管継続コストを含む。
【0016】
本様相によれば、より事業全体の収益に対して良く最適化できる。
【0017】
本発明の一つの様相は、複数の生産拠点を経て複数種類の製品を生産し、生産拠点から直接又は中継拠点を経由して出荷拠点から出荷する生産計画立案システムであって、前記複数の生産拠点は、生産要求があった製品に応じて、材料から製品を生産する第1製品生産拠点と第2製品生産拠点を含むものであり、生産要求する製品の種類、製品数、及び時期を含む説明変数データを入力する入力部と、前記入力部に入力された説明変数データから、制約条件を満たしつつ、少なくとも以下の(1)~(8)のコストを含むコストの合計を最小化とすることを目的関数とする最適化問題を解いて、前記第1製品生産拠点で生産する製品の種類、前記製品の各種類の生産数、生産時期、並びに、中継拠点又は出荷拠点への輸送数及び輸送時期と、前記第2製品生産拠点で生産する製品の種類、製品の各種類の生産数、生産時期、並びに、前記中継拠点又は前記出荷拠点への輸送数及び輸送時期を含む目的変数を算出する最適化部と、前記最適化部によって算出された目的変数を用いて生産計画データを作成する計画作成部を備える、生産計画立案システムである。
(1)前記第1製品生産拠点での製品の生産コスト
(2)前記第2製品生産拠点での製品の生産コスト
(3)前記第1製品生産拠点で生産する製品の品種切替コスト
(4)前記第2製品生産拠点で生産する製品の品種切替コスト
(5)前記第1製品生産拠点での材料及び製品の在庫保管コスト
(6)前記第2製品生産拠点での材料及び製品の在庫保管コスト
(7)前記第1製品生産拠点から前記中継拠点及び/又は前記出荷拠点への輸送コスト
(8)前記第2製品生産拠点から前記中継拠点及び/又は前記出荷拠点への輸送コスト
【0018】
本様相によれば、複数の製品生産拠点から出荷拠点までの生産コスや品種切替コスト、在庫保管コスト、輸送コストを踏まえた生産計画データを作成することができるので、第1製品生産拠点と第2製品生産拠点で同じ製品を生産する場合でも、コスト的に最適な拠点で生産する計画を立案できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の生産計画立案システムによれば、生産拠点で製品を生産し、出荷拠点から出荷するまでの総コストを従来に比べて低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態の生産計画立案システムの構成図である。
【
図2】
図1の生産計画立案システムの各拠点間の関係の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図2の生産計画立案システムのX部分のブロック図である。
【
図4】
図1の生産計画立案システムの生産計画データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明の第1実施形態の生産計画立案システム1は、需要者から生産要求があった製品100を生産し、当該製品100を需要者に出荷するものである。
具体的には、生産計画立案システム1は、
図1~
図3のように、原材料生産拠点2から一又は複数の第1生産拠点3を経て一又は複数の第2生産拠点4(第1製品生産拠点、第2製品生産拠点)で製品100を生産し、各第2生産拠点4から直接又は中継拠点5を経由して出荷拠点6から製品100を出荷するものである。
本実施形態の生産計画立案システム1は、
図1のように、原材料生産拠点2と、第1生産拠点3と、第2生産拠点4と、中継拠点5と、出荷拠点6と、管理コンピュータ7を備えており、
図4に示される管理コンピュータ7が作成した生産計画データ103に従って、各拠点2~6で生産や輸送、出荷を実施可能となっている。
【0023】
(原材料生産拠点2)
原材料生産拠点2は、第1生産拠点3で生産される製品100の中間品101の材料102(第1材料)を生産する拠点であり、
図3のように、一又は複数の原材料生産装置20と、原材料管理倉庫21を備えている。
原材料生産装置20は、第1生産拠点3で生産される製品100の中間品101の材料102を生産する装置である。
原材料生産装置20は、生産計画データ103に従って、複数種類の原料から複数種類の材料102を生産可能となっている。
原材料管理倉庫21は、原材料生産装置20で生産された各種類の材料102及び原材料生産装置20で使用される各種類の原料を保管する倉庫である。
各原材料生産拠点2は、それぞれ同種の材料102を生産してもよいし、異種の材料102を生産してもよい。
【0024】
(第1生産拠点3)
第1生産拠点3は、一又は複数の原材料生産拠点2から一又は複数種類の材料102が供給され、第2生産拠点4で生産される製品100の中間品101を生産する拠点である。
第1生産拠点3は、
図3のように、一又は複数の第1生産装置30と、第1管理倉庫31を備えている。
第1生産装置30は、第2生産拠点4で生産される製品100の中間品101を生産する装置である。
第1生産装置30は、生産計画データ103に従って、原材料生産拠点2で生産された複数種類の材料102から複数種類の中間品101を生産可能となっている。
第1管理倉庫31は、第1生産装置30で生産された各種類の中間品101及び第1生産装置30で使用される各種類の材料102(第1材料)を在庫として保管する倉庫である。
各第1生産拠点3は、それぞれ同種の中間品101を生産してもよいし、異種の中間品101を生産してもよい。
【0025】
(第2生産拠点4)
第2生産拠点4(第1製品生産拠点、第2製品生産拠点)は、一又は複数の第1生産拠点3から一又は複数種類の中間品101が供給され、製品100を生産する製品生産拠点である。
第2生産拠点4は、
図3のように、一又は複数の第2生産装置40と、第2管理倉庫41を備えている。
第2生産装置40は、製品100を生産する装置であり、具体的には、中間品101を加工する加工装置である。
第2生産装置40は、生産計画データ103に従って、第1生産拠点3で生産された複数種類の中間品101から複数種類の製品100を生産可能となっている。
第2管理倉庫41は、第2生産装置40で生産された複数種類の製品100及び第2生産装置40で使用される複数種類の中間品101(第2材料)を在庫として保管する倉庫である。
各第2生産拠点4は、それぞれ同種の製品100を生産してもよいし、異種の製品100を生産してもよい。
【0026】
(中継拠点5)
中継拠点5は、一又は複数の第2生産拠点4から一又は複数種類の製品100が輸送され、第2生産拠点4で生産された製品100を第2生産拠点4から出荷拠点6に出荷するにあたって、製品100の輸送の中継地となる拠点である。
中継拠点5は、
図3のように中継管理倉庫51を備えている。
中継管理倉庫51は、第2生産拠点4から輸送された製品100を一時的に保管する倉庫である。
【0027】
(出荷拠点6)
出荷拠点6は、一又は複数の第2生産拠点4又は一又は複数の中継拠点5から一又は複数種類の製品100が輸送され、第2生産拠点4で生産された製品100を需要者に出荷する拠点である。
出荷拠点6は、
図3のように、出荷管理倉庫61を備えている。
出荷管理倉庫61は、第2生産拠点4から直接又は中継拠点5を介して輸送された製品100を在庫として保管する倉庫である。
【0028】
(管理コンピュータ7)
管理コンピュータ7は、ハードウェア構成として、各装置を制御する制御装置とデータに対する演算を行う演算装置で構成される中央処理装置と、データを記憶する記憶装置、外部からデータを入力する入力装置、外部にデータを出力する出力装置を備えたコンピュータである。
管理コンピュータ7は、
図1のように、入力部71と、最適化部72と、計画作成部73と、出力部74と、データ蓄積部75を備えている。
【0029】
入力部71は、少なくとも需要者が生産要求する製品100の種類、製品数、及び時期を含む説明変数データを入力する部位である。
入力部71は、入力された説明変数データを最適化部72に入力可能となっている。
なお、入力部71は、説明変数データの一部をデータ蓄積部75から取得して最適化部72に入力してもよい。
【0030】
最適化部72は、入力部71に入力された説明変数データから、制約条件を満たしつつ各生産装置20,30,40の生産コストと、各生産装置20,30,40の品種切替コストと、各管理倉庫21,31,41での在庫保管コストと、各拠点2~6間の輸送コストと、製品100の出荷納期や各生産装置20,30,40の稼働時間を超過したときのペナルティコストの合計を最小化することを目的関数とする最適化問題を解いて目的変数を算出し、目的変数データを作成する部位である。
【0031】
すなわち、最適化部72で解く最適化問題は、以下の(a-1)~(a-17)のコストの合計コストを最小化することを目的関数とするものである。
(a-1)各原材料生産拠点2での中間品101の材料102の生産コスト
(a-2)各第1生産拠点3での中間品101の生産コスト
(a-3)各第2生産拠点4での製品100の生産コスト
(a-4)各原材料生産拠点2の原材料生産装置20での材料102の品種切替コスト
(a-5)各第1生産拠点3の第1生産装置30での中間品101の品種切替コスト
(a-6)各第2生産拠点4の第2生産装置40での製品100の品種切替コスト
(a-7)各原材料生産拠点2の原材料管理倉庫21での材料102及びその原料の在庫保管コスト
(a-8)各第1生産拠点3の第1管理倉庫31での中間品101及びその材料102の在庫保管コスト
(a-9)各第2生産拠点4の第2管理倉庫41での製品100及びその中間品101の在庫保管コスト
(a-10)各中継拠点5の中継管理倉庫51での製品100の在庫保管コスト
(a-11)各出荷拠点6の出荷管理倉庫61での製品100の在庫保管コスト
(a-12)各原材料生産拠点2から輸送対象となる各第1生産拠点3への材料102の輸送コスト
(a-13)各第1生産拠点3から輸送対象となる各第2生産拠点4への中間品101の輸送コスト
(a-14)各第2生産拠点4から輸送対象となる各中継拠点5及び/又は輸送対象となる各出荷拠点6への製品100の輸送コスト
(a-15)中継拠点5から他の中継拠点5及び/又は輸送対象となる各出荷拠点6への製品100の輸送コスト
(a-16)需要者が生産要求する製品100の時期(納期)を超過したときのペナルティコスト
(a-17)各生産装置20,30,40のあらかじめ規定された規定生産時間を超過したときのペナルティコスト
【0032】
在庫保管コストは、各管理倉庫21,31,41,51,61での保管継続コストと、各管理倉庫51,61での入出庫コスト及び横待ちコストが含まれている。
【0033】
ここでいう「保管継続コスト」とは、製品100等を一定期間保管する際に発生するコストをいう。
ここでいう「入出庫コスト」とは、製品100等を管理倉庫へ入庫する際や管理倉庫から出庫する際に発生するコストをいう。
【0034】
最適化問題を解くための最適化手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、数理最適化、メタヒューリスティック最適化、量子コンピュータ、深層強化学習が採用できる。
数理最適化としては、例えば、混合整数計画法がある。
メタヒューリスティック最適化としては、例えば、タブーサーチや遺伝的アルゴリズムがある。
量子コンピュータとしては、例えば、量子アニーリングマシンを用いた Quadratic Unconstrained Binary Optimization. (QUBO)がある。
深層強化学習としては、例えば、Deep Q-Networkがある。
【0035】
最適化部72に入力部71から入力される説明変数データは、以下の(b-1)~(b-22)を含んでいる。
(b-1)上記の(a-1)~(a-17)の各コスト
(b-2)原材料生産拠点2の原材料生産装置20で使用される原料の品種別の入荷量(調達量)及び入荷日(調達時期)
(b-3)需要者が生産要求する製品100の種類、製品数、及び時期(納期)
(b-4)各生産装置20,30,40の品種別の単位量当たりの生産時間
(b-5)各生産装置20,30,40の生産種類別の単位量当たりの生産量
(b-6)各生産拠点2~4の品種別の生産可否及び生産能力
(b-7)各生産装置20,30,40の最大生産時間
(b-8)各生産装置20,30,40の品種別の1回の連続生産当たりの最低生産量
(b-9)各生産装置20,30,40の品種別の1回の連続生産当たりの最大生産量
(b-10)各生産装置20,30,40の品種別の生産後の最低滞留時間
(b-11)各生産装置20,30,40の品種別の生産後の最低生産間隔時間
(b-12)各生産装置20,30,40の最低稼働率
(b-13)製品100に必要な上流側の中間品101及び材料102の必要量(BOM)
(b-14)各生産装置20,30,40の品種切替の切替時間
(b-15)各生産装置20,30,40の品種切替の変更の可否及び区分
(b-16)各生産装置20,30,40の品種切替の最大変更回数
(b-17)現在の各拠点2~6の管理倉庫21,31,41,51,61における在庫量
(b-18)各管理倉庫21,31,41,51,61の品種別の安全在庫数
(b-19)各管理倉庫21,31,41,51,61の品種別の在庫上限数
(b-20)各管理倉庫21,31,41,51,61の最大在庫数
(b-21)各拠点2~6間の輸送の可否
(b-22)各拠点2~6間の輸送時間
【0036】
ここでいう「生産後の最低滞留時間」とは、生産後、検査待ちや養生などの工程によってすぐに輸送できない最低待ち時間をいう。
ここでいう「最低生産間隔時間」とは、ある品種の製品100等を生産した後に、再度、その品種の製品100等を生産するのに最低限空けなければいけない時間をいう。
【0037】
最適化部72で最適化問題を解くために使用される制約条件としては、説明変数データ等によって適宜変更できるが、本実施形態では、上記した(b-4)~(b-12)、(b-15)、(b-16)、(b-18)~(b-20)を使用している。
【0038】
最適化部72で算出される目的変数は、以下の(c-1)~(c-8)を含んでいる。
(c-1)原材料生産拠点2の原材料生産装置20で生産する材料102の種類、材料102の生産数、材料102の生産時期、及び材料102の生産順序
(c-2)原材料生産拠点2の原材料生産装置20で生産した材料102の輸送先、材料102の輸送数、及び材料102の輸送時期
(c-3)第1生産拠点3の第1生産装置30で生産する中間品101の種類、中間品101の生産数、中間品101の生産時期、及び中間品101の生産順序
(c-4)第1生産拠点3の第1生産装置30で生産した中間品101の輸送先、中間品101の輸送数、及び中間品101の輸送時期
(c-5)第2生産拠点4の第2生産装置40で生産する製品100の種類、製品100の生産数、製品100の生産時期、及び製品100の生産順序
(c-6)第2生産拠点4の第2生産装置40で生産した製品100の輸送先、製品100の輸送数、及び製品100の輸送時期
(c-7)中継拠点5の製品100の輸送先、製品100の輸送数、及び製品100の輸送時期
(c-8)出荷拠点6の製品100の出荷先、製品100の出荷数、及び製品100の出荷時期
【0039】
計画作成部73は、最適化部72によって算出し作成された目的変数データを用いて生産計画データ103を作成する部位である。
生産計画データ103は、原材料生産拠点2の生産から出荷拠点6での出荷に至るまでの各拠点2~6での生産や輸送、出荷等のスケジュールをまとめた生産計画のデータである。
生産計画データ103は、
図4のように、各生産拠点2~4での品種、生産数、生産時期、生産時期、及び生産順序等の生産に関するスケジュールと、各拠点2~5の輸送先、輸送数、輸送時期、及び輸送順序等の輸送に関するスケジュールと、出荷拠点6での出荷に関するスケジュールが表現されている。
例えば、
図4に示される生産計画データ103では、1日ごとのスケジュールが計画され、第2生産拠点4の第2生産装置40によって3種類の製品C1~C3を生産するべく、原材料生産拠点2の原材料生産装置20によって2種類の材料A1,A2を生産し、第1生産拠点3の第1生産装置30によって3種類の中間品B1~B3を生産する場合について計画されている。
図4に示される生産計画データ103では、例えば、1週目の月曜日から水曜日までに数量a1の材料A1を生産し、1週目の木曜日に原材料生産拠点2から第1生産拠点3に材料A1を輸送し、1週目の金曜日と土曜日で、材料A2を生産するために原材料生産拠点2の原材料生産装置20の品種を変更することが計画されている。
【0040】
出力部74は、計画作成部73で作成された生産計画データ103を各拠点2~6に出力する部位である。
【0041】
データ蓄積部75は、過去及び現在における説明変数データ、目的関数データ、制約条件データ、目的変数データ、及び生産計画データ103を保管する部位である。
【0042】
続いて、本実施形態の生産計画立案システム1の生産計画立案動作について説明する。
【0043】
本実施形態の生産計画立案システム1の生産計画立案動作は、需要者から製品100の生産要求があると、製品100の生産要求を受けて管理コンピュータ7の入力部71に説明変数データの一部又は全部を入力する。
【0044】
入力部71に説明変数データの一部又は全部が入力されると、説明変数データの残部をデータ蓄積部75から取得し、説明変数データを最適化部72に入力する。最適化部72は、入力部71に入力された説明変数データから、制約条件を満たしつつ、各生産装置20,30,40の生産コストと、各生産装置20,30,40の品種切替コスト、各管理倉庫21,31,41での在庫保管コスト、各拠点2~6間の輸送コスト、製品100の出荷納期や各生産装置20,30,40の稼働時間を超過したときのペナルティコストの合計を最小化することを目的関数とする最適化問題を解いて目的変数を算出し、目的変数データを作成する。
【0045】
最適化部72で目的変数データが作成されると、目的変数データを用いて計画作成部73が生産計画データ103を作成し、出力部74から各拠点2~6に生産計画データ103を送信する。
【0046】
各拠点2~6は、出力部74から生産計画データ103を受信すると、生産計画データ103に従って製品100等の生産物を各種生産し、各出荷拠点6から各種類の製品100を各需要者に出荷する。
【0047】
本実施形態の生産計画立案システム1によれば、原材料生産拠点2から出荷拠点6に至るまでの生産コスト、各生産装置20,30,40での品種切替コスト、各管理倉庫21,31,41での在庫保有コスト、各拠点2~6間の輸送コスト、及び製品100の出荷納期や各生産装置20,30,40の稼働時間を超過したときのペナルティコストを踏まえた生産計画データ103を作成できるので、川上から川下までの総コストを最小化することができる。
【0048】
本実施形態の生産計画立案システム1によれば、目的変数として中間品101の種類間での生産順序を算出するので、生産順序を最適化することができ、納期等の制約を満足した上で品種切替コストを最小とすることができる。その結果、総コストをさらに低減できる。
【0049】
上記した実施形態では、原材料生産拠点2で材料102を生産し、第1生産拠点3で中間品101を生産したが、本発明はこれに限定されるものではない。原材料生産拠点2で材料102を生産せずに、生産計画立案システム1外の他の会社や機関から購入して材料102を調達してもよい。
【0050】
上記した実施形態では、第2生産拠点4から中継拠点5を経由して出荷拠点6に製品100が輸送されたが、本発明はこれに限定されるものではない。第2生産拠点4から直接出荷拠点6に輸送してもよい。
また、上記した実施形態では、第2生産拠点4から一か所の中継拠点5を経由して出荷拠点6に製品100を輸送したが、本発明はこれに限定されるものではない。第2生産拠点4から複数か所の中継拠点5を経由して出荷拠点6に製品100を輸送してもよい。
【0051】
上記した実施形態では、各生産装置20,30,40の生産コストと、各生産装置20,30,40の品種切替コスト、各管理倉庫21,31,41での在庫保管コスト、各拠点2~6間の輸送コスト、製品100の出荷納期や各生産装置20,30,40の稼働時間を超過したときのペナルティコストの合計を最小化することを目的関数としていたが、本発明はこれに限定されるものではない。各生産装置20,30,40の生産コストと、各生産装置20,30,40の品種切替コスト、各管理倉庫21,31,41での在庫保管コスト、各拠点2~6間の輸送コストの合計を最小化することを目的関数としてもよい。
【0052】
上記した実施形態では、生産計画データ103は、1日単位でのスケジュールを計画していたが、本発明はこれに限定されるものではない。単位時間当たりでのスケジュールを計画してもよいし、月単位でのスケジュールを計画していてもよい。
【0053】
上記した実施形態では、生産計画立案システム1は、複数の第2生産拠点4を有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。生産計画立案システム1は、一つの第2生産拠点4のみ有していてもよい。
【0054】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0055】
1 生産計画立案システム
2 原材料生産拠点
3 第1生産拠点
4 第2生産拠点(第1製品生産拠点、第2製品生産拠点)
5 中継拠点
6 出荷拠点
71 入力部
72 最適化部
73 計画作成部
100,C1~C3 製品
101,B1~B3 中間品(第2材料)
102,A1,A2 材料(第1材料)
103 生産計画データ