(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077730
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】人検知用座標出力装置
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
B66C15/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189852
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】川尻 栄作
(72)【発明者】
【氏名】能塚 和磨
(72)【発明者】
【氏名】野口 峻介
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA02
3F204AA03
3F204CA05
3F204DB03
3F204DC08
(57)【要約】
【課題】人検知装置を構成するPCに汎用PCを用いて、クレーンの吊り荷が人に衝突することを確実に防止することができるようにした人検知用座標出力装置を提供すること。
【解決手段】クレーンのクラブ上に汎用PC16を、ガーダ上にPLC09を、それぞれ備え、カメラ18、20によって検知した人の座標及びクレーンのフックからの距離を算出することで、クレーンの吊り荷が人に衝突することを防止するもので、汎用PC16は、カメラ18、20によって検知した人の座標を算出し、当該算出した人の座標を含む予め定めた設定人数分の人の座標及びカメラ18、20によって検知した人数をPLC09に通知し、PLC09は、汎用PC16から通知された設定人数分の人の座標及びカメラ18、20によって検知した人数に基づいて、カメラ18、20によって検知した人のクレーンのフックからの距離を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのクラブ上に汎用PCを、ガーダ上にPLCを、それぞれ備え、カメラによって検知した人の座標及びクレーンのフックからの距離を算出することで、クレーンの吊り荷が人に衝突することを防止する人検知用座標出力装置において、
前記汎用PCは、カメラによって検知した人の座標を算出し、当該算出した人の座標を含む予め定めた設定人数分の人の座標及びカメラによって検知した人数をPLCに通知し、
前記PLCは、汎用PCから通知された設定人数分の人の座標及びカメラによって検知した人数に基づいて、カメラによって検知した人のクレーンのフックからの距離を算出する
ことを特徴とする人検知用座標出力装置。
【請求項2】
前記PLCは、汎用PCから通知された設定人数分の人の座標から、カメラによって検知した人数分の人の座標のみを取り出して、カメラによって検知した人のクレーンのフックからの距離を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の人検知用座標出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン作業エリアにおける作業者(人)とクレーンの吊り荷の衝突を防止するための安全確認装置に用いられる人検知用座標出力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーン作業エリアにおける作業者とクレーンの吊り荷の衝突を防止するための安全確認装置として、クレーンの上方からカメラでクレーン周辺領域を撮影し、作業者が装着するヘルメットを認識する認識部で危険領域を設定してモニタに表示して安全確認を行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の安全確認装置においては、PC及びPLC(Programmable Logic Controller、プログラマブルロジックコントローラ)を用いてカメラによって検知した人の座標及びクレーンのフックからの距離を算出することで、クレーンの吊り荷が人に衝突することを防止するようにしている。
具体的には、
図4に示すPC及びPLCのシーケンス図のように、人検知装置を構成するPCは、クレーンの速度、移動方向に合わせて画像をシフトし、カメラによって撮影した人の画像を画像処理することで、人の座標及びクレーンのフックからの距離を算出し、算出した結果をTCP/IPパケット通信によってPLCに通知するようにし、PLCは、PCから通知された情報に基づいて、吊り荷(荷物サイズ)を加味した人(カメラによって検知したヘルメット)までの距離が危険か否かを判定し、クレーンを制御する(停止させる)ようにしている。
このように、カメラによって撮影した人の座標及びクレーンのフックからの距離の算出までを人検知装置を構成するPCに汎用PCを用いて行うようにすると、例えば、検知する人の人数が多い場合、人の座標及びクレーンのフックからの距離の算出に時間を要することで、安全確認が遅延する可能性があった。
また、検知する人の人数が少ない場合も、汎用PCでは、PCからPLCに通知する通信間隔(1回の通信が終了し、次の通信を開始するまでの時間)が短くなり、通信回数が増加する。このような場合、PLCは、PLC側のTCP/IPパケット受信エリアがオーバーフローする前にデータ受信を一時停止するため、PCからPLCへの通信にリトライが発生する。これにより、PCからPLCへの通知に遅れが発生することで、安全確認を安定してできなくなる可能性があった。
これは、PCとPLC間でTCP/IPパケット通信を行う場合、PCとPLCとのコネクションをオープン処理したり、クローズ処理したりするが、クローズ処理した後、再度オープン処理するまでの間にウェイト時間(待機時間)が必要であることに起因する。
【0005】
上記問題を解消するためには、高スペックで、かつ、検知する人の人数に関わらずPC-PLC間の通信間隔について、通信のクローズ処理後、再度オープン処理するまでのウェイト時間(待機時間)を所定時間確保できるように処理時間が指定可能なリアルタイムOSを搭載したPCを採用することが考えられるが、汎用PCと比較して高コストになるという問題があった。
【0006】
また、人検知用座標出力装置は、既存の安全確認装置を含むクレーン制御システムに容易に適用でき、人検知用座標出力装置を組み込むことで、最終的なクレーンとしての安全に関する動作可否をPLC側で安定して判断することができるようにする必要があった。
【0007】
本発明は、上記人検知装置を構成するPCに汎用PCを用いた場合に生じる問題点に鑑み、人検知装置を構成するPCに汎用PCを用いて、クレーンの吊り荷が人に衝突することを確実に防止することができるようにした人検知用座標出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の人検知用座標出力装置は、クレーンのクラブ上に汎用PCを、ガーダ上にPLCを、それぞれ備え、カメラによって検知した人の座標及びクレーンのフックからの距離を算出することで、クレーンの吊り荷が人に衝突することを防止する人検知用座標出力装置において、前記汎用PCは、カメラによって検知した人の座標を算出し、当該算出した人の座標を含む予め定めた設定人数分の人の座標及びカメラによって検知した人数をPLCに通知し、前記PLCは、汎用PCから通知された設定人数分の人の座標及びカメラによって検知した人数に基づいて、カメラによって検知した人のクレーンのフックからの距離を算出することを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記PLCは、汎用PCから通知された設定人数分の人の座標から、カメラによって検知した人数分の人の座標のみを取り出して、カメラによって検知した人のクレーンのフックからの距離を算出するようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の人検知用座標出力装置によれば、既存の安全確認装置を含むクレーン制御システムに組み込むことで、人検知装置を構成するPCに汎用PCを用いて、クレーンの吊り荷が人に衝突することを確実に防止することができるようにした人検知用座標出力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の人検知用座標出力装置を適用する安全確認装置のシステム構成図である。
【
図3】汎用PC及びPLCのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の人検知用座標出力装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1~
図3に、本発明の人検知用座標出力装置の一実施例を示す。
【0014】
図1に、本発明の人検知用座標出力装置を適用する、クレーン作業エリアにおける作業者(人)とクレーンの吊り荷の衝突などの事故を防止するための安全確認装置のシステム構成の一例を示す。
図1において、クレーンは、クレーン上に、駆動機構として、主巻モータ01、主巻インバータ02、補巻モータ03、補巻インバータ04、横行モータ05、横行インバータ06、走行モータ07、走行インバータ08を備え、ガーダ上に、PLC制御盤09(本明細書において、「PLC」という。)、人検知状態表示灯10、人検知人数表示器11、無線受信器12を備え、クラブ上に、荷重検出用のロードセル13、上限リミットスイッチ14、音声拡声器15、パソコン16(本明細書において、「汎用PC」という。)
、タッチパネル17、人検知用カメラ18(人検知用カメラ1(人検知カメラユニット1))、赤外線投光器からなる人検知用投光器19(人検知用投光器1(人検知カメラユニット1))、人検知用カメラ20(人検知用カメラ2(人検知カメラユニット2))、赤外線投光器からなる人検知用投光器21(人検知用投光器2(人検知カメラユニット2))、無線送信器(無線操作器)22を備えるようにしている。
【0015】
本発明の人検知用座標出力装置は、
図2に示す汎用PC及びPLCのシーケンス図のように、クレーンのクラブ上に汎用PC16を、ガーダ上にPLC09を、それぞれ備え、カメラ18、20によって検知した人の座標及びクレーンのフックからの距離を算出することで、クレーンの吊り荷が人に衝突することを防止するもので、汎用PC16は、カメラ18、20によって検知した人の座標を算出し、当該算出した人の座標を含む予め定めた設定人数分(特に限定されるものではないが、例えば、10~50人分。本実施例においては、20人分。)の人の座標及びカメラ18、20によって検知した人数をPLC09に通知し、PLC09は、汎用PC16から通知された設定人数分の人の座標及びカメラ18、20によって検知した人数に基づいて、カメラ18、20によって検知した人のクレーンのフックからの距離を算出し、吊り荷(荷物サイズ)を加味した人(カメラによって検知したヘルメット)までの距離が危険か否かを判定し、クレーンを制御する(停止させる)ようにしている。
【0016】
この人検知用座標出力装置では、吊り荷(荷物サイズ)は、予め最大定型サイズ(縦、横、高さ)として、タッチパネル17から登録し、吊り荷の中心から一番遠い箇所までを半径とする外接円として吊り荷の形状を定義する。
【0017】
また、人の検知は、ヘルメットに貼り付けた再帰反射のマークを検知するようにする。具体的には、赤外線投光器からなる人検知用投光器19、21のON/OFF画像を人検知用カメラ18、20で撮影した映像を汎用PC16に取り込み、取り込んだ画像を、使用しているフックを中心座標(0,0)とし、クレーン移動方向と速度に合わせて、画像をシフトさせて赤外線投光器のON/OFF画像の差分処理を行うことで、検知した人の座標(X,Y)を算出する。
【0018】
汎用PC16とPLC09間のデータの送受信は、それぞれ、送信データ、送信フラグ、受信フラグを設けて伝文で行う。
具体的には、
図3に示す汎用PC及びPLCのタイミングチャートのように、PLC09側のタイミングで、クレーン移動方向、速度、主補巻選択のデータを汎用PC16に送信する場合、PLC09側の送信エリアに当該データのセットを完了すると、PLC09側の送信フラグをONさせる。
汎用PC16は、PLC09側の送信フラグのONを確認すると、PLC09側の送信データの受信を開始する。汎用PC16は、送信データの受信を完了すると受信フラグをONさせる。
PLC09は、汎用PC16側の受信フラグのONを確認すると、PLC09側の送信エリアのデータをリセットし、送信フラグをOFFさせる。
最後に汎用PC16は、PLC09側の送信フラグのOFFを確認し、汎用PC16側の受信フラグをOFFにすることで1伝文を終了する。
【0019】
人の検知は、人検知用カメラ18、20のそれぞれでヘルメットと判定した座標をクレーンの移動方向と速度に合わせて追跡処理を行い、人検知用カメラ18、20の認識座標をフックを基準とする実空間に座標変換を行う。座標変換した結果の人検知用カメラ18、20のそれぞれの座標で近いもの同士をグルーピングし、フックを中心座標(0,0)として統合を行う。統合した結果をフック中心からヘルメットまでの座標計算を行い、座標情報をカメラ視野内で検知した順番に先頭アドレスからデータをセットする。具体的に
は、座標情報の検索順は、X-Y座標平面を4象限に分類し、(0,0)、(+X,0)、第一象限(+X,+Y)、(0,+Y)、第二象限(-X,+Y)、(-X,0)、第三象限(-X,-Y)、(-Y,0)、第四象限(+X,-Y)の順に検索を行い、検知した順番に先頭アドレスからデータのセットを行うようにする。
【0020】
検知したX-Y座標の結果と検知した人数のデータを、汎用PC16からPLC09に送信する場合は、
図3に示す汎用PC及びPLCのタイミングチャートのように、汎用PC16側の送信エリアにデータをセットを完了させると、汎用PC16側の送信フラグをONさせる。
PLC09は、汎用PC16側の送信フラグのONを確認すると、汎用PC16側の送信データの受信を開始する。PLC09は、送信データの受信を完了すると受信フラグをONさせる。
汎用PC16は、PLC09側の受信フラグのONを確認すると、汎用PC16側の送信エリアのデータをリセットし、送信フラグをOFFさせる。
最後にPLC09は、汎用PC16側の送信フラグのOFFを確認し、PLC09側の受信フラグをOFFにすることで1伝文を終了する。
【0021】
図4の参考例に示すように、人検知人数が少ない場合において、座標計算、人数通知、距離計算をした場合、汎用PC16からPLC09に通知する通信間隔が500ms等のようなメーカ推奨時間より短くなり、通信回数が増加した場合、PLC09側のTCP/IPパケット受信エリアがオーバーフローする前にデータ受信を一時停止していた。また、汎用PC16側の送信フラグがONして一定時間(1秒)経ってもPLC09側の受信フラグがONしない場合、通信異常とし強制終了していた。
このため、汎用PC16側の人検知に関するすべての情報を安定してPLC09に通知できない可能性があるため、
図4の実施例に示すように、汎用PC16は、カメラ18、20によって検知した人の座標(X,Y)を算出し、当該算出した人の座標(X,Y)を含む予め定めた設定人数分(20人分)の人の座標(X,Y)及びカメラ18、20によって検知した人数をPLC09に通知するようにすることで、汎用PC16からPLC09への通知する通信間隔が500ms等のようなメーカ推奨時間以上となるようにしている。ここで、カメラ18、20によって検知した人の座標(X,Y)以外の人の座標(X,Y)は、例えば、(0,0)が書き込まれるようにする。
【0022】
PLC09側では、汎用PC16から送信された設定人数(20人分)の座標情報(X、Y)から人数通知した人数分のみの情報、すなわち、検知した順番に先頭アドレスからデータセットされた人数分のみの情報を取り出し、フックから近い人から順番に距離計算((X2+Y2)1/2)を行う。
これは、カメラ18、20によって検知した人の座標(X,Y)以外の人の座標(X,Y)には、(0,0)が書き込まれ、フックに最も近い座標(0,0)と区別する必要があるためであり、検知した人数を通知して、検知した人数分の情報だけを取り出すようにしている。
次に、吊り荷の中心から一番遠い場所までを半径とする外接円から人(ヘルメット)までの距離を計算し、荷物サイズを加味したフックから人までの距離がクレーンを減速若しくは停止させる範囲の数値か比較を行い、横行インバータ06及び/又は走行インバータ08の出力周波数を減速か停止させるかの判定を行う。
【0023】
PLC09側で停止させる必要があると判定した場合、現在のロープ長及びクレーン現在速度指令の確認をし、現状から停止させた場合の振れ止めシミュレーション計算式に数値を代入し、シミュレーション結果を横行インバータ06及び/又は走行インバータ08のアナログ指令(周波数)に出力し、シミュレーション結果に合わせて吊り荷が振れないように横行インバータ06及び/又は走行インバータ08の周波数を制御することで横行
モータ05及び/又は走行モータ07の回転数の制御を行い、フックから人までの距離が停止させる範囲の場合、ブレーキをかけるようにする。
【0024】
以上、本発明の人検知用座標出力装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の人検知用座標出力装置は、汎用PCによる簡易な設備構成で、クレーン作業エリアにおける作業者とクレーンの吊り荷の衝突事故を防止することができることから、天井クレーンの用途に好適に用いることができるほか、例えば、クレーンを用いる建設機械等の用途にも用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
01 主巻モータ
02 主巻インバータ
03 補巻モータ
04 補巻インバータ
05 横行モータ
06 横行インバータ
07 走行モータ
08 走行インバータ
09 PLC制御盤(PLC)
10 人検知状態表示灯
11 人検知人数表示器
12 無線受信器
13 ロードセル
14 上限リミットスイッチ
15 音声拡声器
16 パソコン(汎用PC)
17 タッチパネル
18 人検知用カメラ1
19 人検知用投光器1
20 人検知用カメラ2
21 人検知用投光器2
22 無線送信器(無線操作器)