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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077731
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】防災盤の筐体構造
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
G08B17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189853
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA06
5G405CA55
5G405FA01
5G405FA25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】工場等での製造時及び現場設置時における筐体内部に対する作業を容易に行うトンネル防災設備の防災受信盤及び火災報知設備の火災受信盤等を含む防災設備に設置される防災盤の筐体構造を提供する。
【解決手段】防災設備に設置される防災盤としてのトンネル防災設備の防災受信盤10は、防災受信盤10の筐体構造として、箱形に形成された筐体40と、筐体40の前面に形成された扉開口に開閉自在に設けられた前面扉42と、筐体の右側面に形成された扉開口に開閉自在に設けられた右側面扉46と、筐体の左側面に形成された扉開口に開閉自在に設けられた左側面扉50と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災設備に設置される防災盤の筐体構造であって、
箱形に形成された筐体と、
前記筐体の前面に形成された扉開口に開閉自在に設けられた前面扉と、
前記筐体の前記前面以外の所定の側面に形成された扉開口に開閉自在に設けられた側面扉と、
を備えたことを特徴とする防災盤の筐体構造。
【請求項2】
請求項1記載の防災盤の筐体構造において、
前記筐体の前記前面以外の何れか1つの側面に扉開口が形成されたことを特徴とする防災盤の筐体構造。
【請求項3】
請求項1記載の防災盤の筐体構造において、
前記筐体の前記前面以外の複数の側面に扉開口が形成され、前記側面扉は扉開口の各々に設けられたことを特徴とする防災盤の筐体構造。
【請求項4】
請求項2又は3記載の防災盤の筐体構造において、
前記筐体内部の前記前面以外の所定の側面に前記防災盤の所定の構成物が配置される場合には、前記扉開口は前記所定の構成物が配置される前記所定の側面を避けて形成されることを特徴とする防災盤の筐体構造。
【請求項5】
請求項3記載の防災盤の筐体構造において、
前記側面扉の開放方向は設けられた前記側面扉毎に個別に定められたことを特徴とする防災盤の筐体構造。
【請求項6】
請求項1記載の防災盤の筐体構造において、
前記側面扉は、前記筐体から取外し自在に設けられたことを特徴とする防災盤の筐体構造。
【請求項7】
請求項1記載の防災盤の筐体構造において、
対象となる防災盤として、少なくともトンネル防災設備の防災受信盤又は火災報知設備の火災受信盤を含むことを特徴とする防災盤の筐体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル防災設備の防災受信盤、火災報知設備の火災受信盤等を含む防災設備に設置される防災盤の筐体構造に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路等のトンネル内には、トンネル内で発生する火災事故等から人身及び車両を守るため、トンネル防災設備が設置されている。
【0003】
このようなトンネル防災設備としては、火災の監視と通報のために、火災検出器、手動通報装置、非常電話等の機器・装置が設けられ、また火災の消火や延焼防止のために消火栓装置が設けられ、更にトンネル躯体を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧装置などが設けられ、これらのトンネル防災設備に設けられた端末機器を監視制御するために防災受信盤を設けることで、トンネル防災設備を構築している。
【0004】
また、ビル等の施設内にあっても、同じように火災等から人身及び施設を守るため、火災報知設備が設置されている。このような火災報知設備としては、監視領域となる建物内の部屋、階段、廊下等の各監視区画に火災検出器を設けて火災を監視し、火災検出器で火災を検出した場合に火災検出器から火災受信盤へ火災検出信号を送信して、火災受信盤から火災警報を出力するようにしている。
【0005】
また、トンネル防災設備の防災受信盤や火災報知設備の火災受信盤等の防災盤には、箱形の筐体の前面に形成された扉開口に開閉自在な前面扉が設けられ、筐体内部に監視制御に使用する機器・装置が設けられ、前面扉に表示部としてディスプレイや表示ランプが設けられると共に操作部として各種の操作スイッチが設けられ、筐体内部及び前面扉に設けられた機器・装置の間の必要な箇所を配線接続している。
【0006】
これらの防災盤は、工場での製造時や現場での設置時に、前面扉を開放した状態で筐体内部及び前面扉に対する機器・装置の取付けや機器・装置の間の配線等の作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-032114号公報
【特許文献2】特開2018-049426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の防災盤にあっては、筐体内に対する機器・装置の取付けや配線等の作業が前面扉を開いて開放された前面開口からしか行うことができない狭所作業となり、また、トンネルや施設等の設置現場にて、防災盤の外部から引き込んだ配線ケーブルを接続する作業にあっては、トンネルや施設の環境が整っていない工事中の作業となるために作業環境が悪く、例えば十分な照明が得られずに狭所作業に加えて暗所作業となり、防災盤を設置するのに多くの手間と時間が掛かり、作業効率が低い問題がある。
【0009】
また、工場の製造段階では、筐体内部の背面側に配置した金属基板上に各種の機器・装置を取り付けることになるが、取り付けた機器・装置と筐体内部の両側面との間には、その後の配線作業等を考慮してある程度の作業用スペースを確保しておく必要があり、機器・装置を取り付けるための金属基板の横幅が作業用スペースを確保する分だけ狭く制約される問題もある。
【0010】
本発明は、工場等での製造時及び現場設置時における筐体内部に対する作業を容易に行うことを可能とする防災盤の筐体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(防災盤の筐体構造)
本発明は、防災設備に設置される防災盤の筐体構造であって、
箱形に形成された筐体と、
筐体の前面に形成された扉開口に開閉自在に設けられた前面扉と、
筐体の前面以外の所定の側面に形成された扉開口に開閉自在に設けられた側面扉と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
(1つの扉開口に設けられた側面扉)
筐体の前面以外の何れか1つの側面に扉開口が形成される。
【0013】
(複数の扉開口に設けられた側面扉)
筐体の前面以外の複数の側面に扉開口が形成され、側面扉は扉開口の各々に設けられる。
【0014】
(筐体内部の構成物を避けて設けられた側面扉)
筐体内部の前面以外の所定の側面に防災盤の所定の構成物が配置される場合には、扉開口は所定の構成物が配置される所定の側面を避けて形成される。
【0015】
(側面扉の開放方向)
側面扉の開放方向は設けられた側面扉毎に個別に定められる。
【0016】
(取外し自在な側面扉)
側面扉は、筐体から取外し自在に設けられる。
【0017】
(防災盤の具体例)
対象となる防災盤として、少なくとも少なくともトンネル防災設備の防災受信盤又は火災報知設備の火災受信盤を含む。
【発明の効果】
【0018】
(防災盤の筐体構造の効果)
本発明は、防災設備に設置される防災盤の筐体構造であって、箱形に形成された筐体と、筐体の前面に形成された扉開口に開閉自在に設けられた前面扉と、筐体の前面以外の所定の側面に形成された扉開口に開閉自在に設けられた側面扉と、を備えたため、工場等での製造時における筐体内部に対する機器・装置の取付けや配線等、防災盤の現場設置時における筐体内に対する外部から配線ケーブルの引込みや引き込んだ配線ケーブルの接続等の筐体内部に対する作業が前面扉に加え側面扉を開放した状態とすることで行い易くなり、筐体内部に対する作業の作業効率を高めることを可能とする。
【0019】
また、防災盤の現場設置の照明が十分でない等、現場環境が悪い状態であっても、前面扉に加え側面扉を開放した状態とすることで外部からの照明を筐体内部に多く取り込むことができ、筐体内部の作業環境を改善することを可能とする。
【0020】
また、側面扉が複数設けられる場合には、開放される領域が多くなることから、作業効率を高める効果及び筐体内部の作業環境を改善する効果はより得られることとなる。
【0021】
(筐体内部の構成物を避けて設けられた側面扉の効果)
また、筐体内部の前面以外の所定の側面に防災盤の所定の構成物が配置される場合には、扉開口は所定の構成物が配置される所定の側面を避けて形成されるため、例えばトンネル防災設備の防災受信盤のように、防災盤の構成物として筐体内部の前面に相対する後面付近に金属基板が配置される場合であっても後面には扉開口及び側面扉は設けられず、また別の側面に形成された側面扉からその金属基板にアクセスすることが可能になることから、金属基板のような筐体内部に配置される防災盤の構成物に対する作業を行うためのスペース(作業スペース)を筐体内部に確保している必要はなく、その必要としない作業スペース分だけ金属基板等の防災盤の構成物を配置するためのスペースを拡大可能とする。
【0022】
(側面扉の開放方向の効果)
また、側面扉の開放方向は設けられた側面扉毎に個別に定められるため、設置された場所の環境により筐体の側面毎に開放可能な方向が異なる場合であっても側面扉の各々を開放することを可能とする。
【0023】
(取外し自在な側面扉の効果)
また、側面扉は、筐体から取外し自在に設けられるため、側面扉を開いた状態で側面扉が作業の邪魔になるような場合や周囲の環境により十分に側面扉が開放できない場合であっても、側面扉を外すことで、筐体内部に対する作業の高い作業効率を維持することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】防災受信盤を備えたトンネル防災設備を示した説明図である。
図2】防災受信盤を取り出して示した説明図である。
図3】側面扉を開いた状態で防災受信盤を示した説明図である。
図4】防災受信盤の筐体構造を分解して示した説明図である。
図5】防災受信盤に設けた側面扉の開閉パターンを平面で示した説明図である。
図6】側面扉を取外し自在に設ける取外し蝶番構造を示した説明図である。
図7】消火栓装置を取り出し、側面扉を開いた状態で示した説明図である。
図8】消火栓装置を正面から示した説明図である。
図9】消火栓扉、保守扉及び消火器扉を開放状態として消火栓装置の内部構造を正面から示した説明図である。
図10】レバー案内板を備えた消火栓弁の操作機構を左側面からの断面で示した説明図である。
図11】消火栓扉の閉鎖に伴うレバー案内板による消火栓弁開閉レバーの閉鎖位置への案内移動を示した説明図である。
図12】側面扉を備えた火災受信盤を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る防災盤の筐体構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0026】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、防災設備に設置される防災盤の筐体構造に関するものである。
【0027】
ここで、「防災設備」とは、防災機器や装置を設けて火災等の異常から人や物を防護するための設備であり、例えば高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置される非常用設備の一種であるトンネル防災設備やビル等の建物・施設に設置される火災報知設備等を含むものである。
【0028】
また、「防災盤」とは、監視領域に設置された消火栓装置、水噴霧装置等や火災検出器等の防災設備に設けられた機器・装置等の端末機器を接続することで、これらの端末機器を制御すると共に監視領域の火災等の異常を監視するものであり、前述したトンネル防災設備にあっては、トンネル防災設備の電気室等に設置される防災受信盤が該当し、火災報知設備にあっては、火災報知設備も防災センターや管理人室等に設置される火災受信盤が該当する。
【0029】
実施形態による防災盤の筐体構造は、筐体、前面扉及び側面扉を備えるものである。ここで、「筐体」とは、箱形に形成された盤本体であり、防災盤による監視・制御機能を実現するのに必要な各種の機器・装置等が配置され、監視領域に設置された端末機器の各々との間を接続する配線ケーブルが配線されるものである。
【0030】
また、「箱形」とは、必ずしも立方体や直方体に限られたものではなく、筐体内部に機器・装置等を配置できるものであれば任意の箱形として良い。また、「配置」とは、収納、設置等の意味合いから代替し得る用語は含み得る概念である。
【0031】
また、「前面扉」とは、筐体の前面に形成された扉開口に開閉自在に設けられた扉であり、従来の防災盤と同様に必要に応じて操作表示部等が設けられるものである。また、「前面」とは、筐体の天面、底面を除いた側面の中の一面に当たるものであり、「側面」とは、筐体の天面、底面を除いた各面であり、「前面」、「後面」とは、側面の中の所定の一面である。
【0032】
また、「側面扉」とは、筐体の前面以外の所定の側面に形成された扉開口に開閉自在に設けられた、前面とは異なる側面に設けられた扉であり、工場等での製造時や防災盤の現場設置時に、前面扉に加えて開放されることで、筐体内部に対する各種の作業を前面の扉開口及び側面の扉開口から行うことを可能とするものである。
【0033】
また、側面扉は、筐体の前面以外の何れか1つの側面に形成された扉開口に設けられるか、筐体の前面以外の複数の側面に形成された扉開口の各々に設けられる。
【0034】
また、側面扉は、筐体内部の前面以外の所定の側面に防災盤の所定の構成物が配置される場合には、扉開口は所定の構成物が配置される所定の側面を避けて形成される。
【0035】
また、「防災盤の所定の構成物」とは、防災盤による監視・制御機能を実現するのに必要な各種の機器・装置、配線ケーブル等に限られたものではなく、それらの機器・装置、配線ケーブルを筐体に取り付ける構成物、例えばトンネル防災設備の防災受信盤にあっては金属基板が含まれる。また、「側面に防災盤の所定の構成物が配置される」とは、その側面に対して直接的に構成物が配置されるものに限らず、その側面に近い位置に間接的に配置された場合も含むものである。
【0036】
また、側面扉が複数設けられる場合には、側面扉の開放方向は設けられた側面扉毎に個別に定められる。ここで、側面扉毎に個別に定められる開放方向は、当然各側面扉の開放方向が他の側面扉の開放方向と異なる場合を含み、開放方向が他の側面扉と同じ方向となる側面扉が存在する倍も含む。
【0037】
また、側面扉は、筐体から取外し自在に設けられる。
【0038】
以下、具体的な実施形態を説明する。実施形態では、「防災設備の防災盤」として、「トンネル防災設備の防災受信盤」及び「火災報知設備の火災受信盤」を対象とし、「側面扉」として「右側面扉」と「左側面扉」が設けられた場合について説明する。また、防災盤と同様に側面扉を設けたトンネル防災設備の消火栓装置の実施形態についても説明する。
【0039】
[実施形態の具体的内容]
防災盤の筐体構造について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.トンネル防災設備
b.防災受信盤
b1.防災受信盤の概要
b2.防災受信盤の筐体構造
b3.側面扉の開閉パターン
b4.取外し構造を備えた側面扉
c.消火栓装置
c1.消火栓装置の概要
c2.消火栓装置の内部構造
c3.消火栓扉の閉鎖に伴うレバー案内板による消火栓弁開閉レバーの案内移動
d.火災報知設備の火災受信盤
e.本発明の変形例
【0040】
[a.トンネル防災設備]
まず、防災受信盤を備えたトンネル防災設備について説明する。当該説明にあっては、トンネル防災設備を示した図1を参照する。
【0041】
図1に示すように、自動車専用道路のトンネルとして、上り線トンネル1と下り線トンネル2が構築され、上り線トンネル1と下り線トンネル2は避難連絡坑3により繋がっている。上り線トンネル1と下り線トンネル2の内部には、トンネル長手方向の壁面に沿って、例えば50メートル間隔で消火栓装置16が埋込み設置されている。また、トンネル内には、消火栓装置16と同様に、例えば50メートル間隔で火災検出器が設置されているが、図示を省略している。
【0042】
また、トンネル内に設置されている消火栓装置16、火災検出器等の端末機器を接続してトンネル内の火災を含む異常を監視するために、トンネル防災設備の電気室等に防災受信盤10が設置されている。防災受信盤10と端末機器との間で行われる伝送には、消火栓装置や火災検出器を含む端末機器に固有のアドレスを設定して信号の送受信を行う「R型(Recorded type)の伝送」と、端末機器を回線単位に接続して信号を送受信する「P型(Proprietary-type)の伝送」があるが、本実施形態ではR型の伝送を例にとっている。
【0043】
また、防災受信盤10と各端末機器を接続するために、防災受信盤10からは伝送回線1210、1220を含む伝送ケーブル12が引き出されている。伝送回線1210は上り線トンネル1内に引き出され、伝送回線1220は下り線トンネル2内に引き出され、それぞれ消火栓装置16が接続される。
【0044】
また、伝送回線1210、1220はトンネル内に設置された中継増幅盤18を経由して配線され、中継増幅盤18は防災受信盤10から遠方に設置された消火栓装置16が防災受信盤10との間で送受信する信号を中継増幅している。
【0045】
また、伝送回線1210、1220の構成は任意であるが、例えば電源線、コモン線、防災受信盤10から端末機器に電圧モードで下り信号を送信すると共に消火栓装置16から防災受信盤10に電流モードで上り信号を送信するための伝送線で構成されたものとする。電圧モードによる下り信号の送信にあっては、例えば線路電圧を18ボルトと30ボルトの間で変化させる電圧パルスとした下り信号の送信とする。
【0046】
また、電流モードによる上り信号の送信にあっては、例えば伝送データのビット1のタイミングで信号電流を流し、いわゆる電流パルス列として上り信号を送信するものとする。尚、伝送線とコモン線からなる2線式の伝送回線1210、1220による伝送の場合には、電圧モードによる下り信号と電流モードによる上り信号を切り替えて伝送する半二重通信となる。
【0047】
また、トンネル非常用設備として、その他に、消火ポンプ設備24、IG子局設備(インテリジェント子局設備)26、換気設備28、警報表示板設備30、ラジオ再放送設備32、テレビ監視設備34及び照明設備36等が設置され、これらの設備はIG子局設備26がデータ伝送回線で防災受信盤10に接続する点を除き、P型信号回線14により防災受信盤10に個別に接続されている。尚、消火ポンプ設備24と防災受信盤10との間の伝送をR型伝送としてR型伝送回線により消火ポンプ設備24と防災受信盤10を接続する場合もある。
【0048】
ここで、IG子局設備26は、防災受信盤10を含むトンネル内に設置された設備とトンネル外部の遠方に設置された遠隔管理設備とを結ぶ通信設備である。また、換気設備28は、トンネル内の天井側に設置しているジェットファンの運転による高い吹き出し風速によってトンネル内の空気にエネルギーを与えて、トンネル長手方向に換気の流れを起こす設備である。また、警報表示板設備30は、トンネル内の道路利用者に対して、トンネル内の異常を電光表示板に表示して知らせる設備である。また、ラジオ再放送設備32は、トンネル内で道路利用者等が道路管理者からの情報を受信できるようにするための設備である。また、テレビ監視設備34は、火災の規模や位置を確認したり、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合等のトンネル内の状況を把握したりするための設備である。また、照明設備36は、トンネル内の照明機器を駆動させる設備である。
【0049】
[b.防災受信盤]
続いて、トンネル防災設備に設けられた防災受信盤について説明する。当該説明にあっては、防災受信盤を取り出して示した図2、及び側面扉を開いた状態で防災受信盤を示した図3を参照する。尚、図2(A)は正面(前面)を示し、図2(B)は右側面を示し、図2(C)は平面(上面)を示す。
【0050】
ここで、図2及び図3の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、前面扉が設けられた防災受信盤の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。尚、図4乃至図6も同様となる。
【0051】
(b1.防災受信盤の概要)
まず、防災受信盤の概要を説明する。図2(A)に示すように、防災受信盤10は、架台45の上に縦長の直方体(上下方向に長い直方体)の箱形となる筐体40が取付け固定されている。筐体40の前面の扉開口(前面扉開口)には、右側を軸に右方へ横開きするように前面扉42が開閉自在に設けられている。前面扉42には扉ハンドル44が設けられ、扉ハンドル44を操作すると筐体40に対する前面扉42のロックが解除され、前面扉42が開放可能となる。また、前面扉42の扉面には上部からディスプレイ52と操作表示部54が設けられ、トンネル内の火災等の異常監視に伴う警報表示や制御操作を可能としている。
【0052】
筐体40の右側面の扉開口(右側面扉開口)には、図2(B)及び図3に示すように、例えば後端側の上中下3箇所に分けて設けられた蝶番56により、後端側を軸に後方へ横開きするように右側面扉46が開閉自在に設けられている。
【0053】
また、図2(B)に示すように、右側面扉46には公知の埋込型の扉ハンドル48が設けられ、図3に示すように、扉ハンドル48に対応して扉内側に公知の扉ロック機構を構成するロックバー58が上下に分けて設けられている。扉ハンドル48は、中央を押込むとレバーが飛び出し、飛び出したレバーを回すと上下に分けて設けられたロックバー58が扉側に引き込まれ、筐体40に対する右側面扉46のロックが解除され、右側面扉46が開放可能となる。
【0054】
筐体40の左側面の扉開口(左側面扉開口)には、右側面扉46と同様に後端側を軸に後方へ横開きするように左側面扉50が開閉自在に設けられている。また、左側面扉50にも公知の埋込型の扉ハンドルが設けられ、扉ハンドルの中央を押込むとレバーが飛び出し、飛び出したレバーを回すと筐体40に対する左側面扉50のロックが解除され、左側面扉50が開放可能となる。また、図3に示すように、筐体40内部の背面(後面)に近い位置には、各種の機器、装置、端子台等を取付け固定するための想像線で示す金属基板68が取付け固定されている。
【0055】
(b2.防災受信盤の筐体構造)
次に、防災受信盤の筐体構造について説明する。当該説明にあっては、防災受信盤の筐体構造を分解して示した図4を参照する。
【0056】
防災受信盤10の筐体構造は任意であるが、例えば図4に示すように、各面に矩形の開口が形成されるようにフレーム部材(アングル材)を連結して箱枠形状とした筐体フレーム60が構成されている。筐体フレーム60の底部には底板66が取付け固定され、底板66が架台45上に取付け固定される。また、筐体フレーム60の上部には天板62が取付け固定され、筐体フレーム60の背部(後部)には裏板64が取付け固定される。このため、実施形態の防災受信盤10の筐体40は、筐体フレーム60、天板62、裏板64及び底板66で構成されている。
【0057】
筐体フレーム60に対する底板66、天板62及び裏板64を取付け固定するための構造は任意であるが、例えばボルトとナットを用いた取付け固定、溶接による取付け固定等とする。尚、ボルトとナットを用いた取付け固定にあっては、防水性を確保するため、接触面となる筐体フレーム60のフレーム部材と各板との間にゴム製のシールパッキンを配置した上で取付け固定する。
【0058】
筐体フレーム60の前部には、取付け固定された場合に筐体フレーム60の前部の右端側に位置するように前面扉42の一方の側端(図4では前面扉42の後端側)に上中下3箇所に分けて設けられた蝶番56により、前面扉42が開閉自在に取付け固定される。前面扉42の蝶番56が設けられた側端に相対する他方の側端(図4では前面扉42の前端側)には、扉ハンドル44により操作されるロックバー58が上下に分けて配置されている。ロックバー58は、前面扉42を筐体フレーム60に取付け固定して閉鎖した状態で扉ハンドル44を図2及び図3に示した閉鎖位置に操作すると、筐体フレーム60側に設けられた受け穴に係合して前面扉42を閉鎖位置でロックする。また、扉ハンドル42を開放位置に操作すると、ロックバー42の先端が受け穴から引き出され、前面扉42のロックが解除される。
【0059】
筐体フレーム60の右側部には、取付け固定された場合に筐体フレーム60の右側部の後端側に位置するように右側面扉46の一方の側端(図4では右側面扉46の後端側)に上中下3箇所に分けて配置された蝶番56により、右側面扉46が開閉自在に取付け固定される。また、前面扉42と同様に右側面扉46も、蝶番56が設けられた側端に相対する他方の側端(図4では右側面扉46の前端側)には、扉ハンドル48により操作されるロックバー58が上下に分けて配置され、ロックバー58が筐体フレーム60側に設けられた受け穴に係合することで右側面扉46を閉鎖位置でロックする。
【0060】
筐体フレーム60の左側部には、取付け固定された場合に筐体フレーム60の左側部の後端側に位置するように左側面扉50の一方の側端(図4では右側面扉50の後端側)に上中下3箇所に分けて配置された蝶番により、左側面扉50が開閉自在に取付け固定される。前面扉42及び右側面扉46と同様に左側面扉50も、蝶番が設けられた側端に相対する他方の側端(図4では左側面扉50の前端側)の裏面には、扉ハンドルにより操作されるロックバーが上下に分けて配置され、ロックバーが筐体フレーム60側に設けられた受け穴に係合することで左側面扉50を閉鎖位置でロックする。
【0061】
また、前面扉42、右側面扉46及び左側面扉50には、閉鎖状態のときに防水性を確保するため、例えば各扉の扉裏面側の内周面及び又は筐体フレーム60の扉接触面となるフレーム部材の領域にゴム製のシールパッキンを配置して各扉を取付け固定することで、閉鎖状態の各扉と筐体フレーム60の間を密閉している。また、筐体フレーム60に取付け固定した裏板64の前側には、各種の機器、装置、端子台等を取付固定するための想像線で示す金属基板68が取付け固定される。尚、防災受信盤10の筐体構造は、図4に示すようにアングル材を用いた筐体フレーム60を使用せず、天板62、裏板64及び底板66で構成される筐体40を板金加工で製造するようにしてもよい。
【0062】
このように、前面扉42に加えて右側面扉46と左側面扉50を備えた防災受信盤10にあっては、工場等での製造組立時には、前面扉42に加えて右側面扉46と左側面扉50を開放し、例えば各扉が閉鎖しないように適宜のストッパ部材を使用して各扉の開放状態に維持して製造を行う。このため、筐体40の内部に取付け固定された金属基板68に対する各種の機器、装置、端子台等の取付け固定や配線等の作業は、開放された前面扉開口に加え、右側面扉開口や左側扉開口からも体や手を入れて必要な作業を行うことが可能となり、筐体40の内部が狭くても製造組立作業を効率よく行うことを可能とする。
【0063】
また、筐体40内部の背面(後面)に近い位置に取付け固定されている金属基板68に対する機器の取付け固定や配線等の作業は、金属基板68の両側端に右側面扉開口や左側扉開口からアクセス可能であることから、右側面扉開口や左側扉開口から作業を行うことが可能となり、金属基板68と筐体40内部の左右側面との間に作業用スペースを確保する必要がなく、金属基板68の配置スペースを拡大可能として、金属基板68のサイズについても拡大を可能としている。
【0064】
また、工場で製造された防災受信盤10を電気室等に搬入して現場に設置した時にも、工場等での製造時と同様に、前面扉42に加えて右側面扉46と左側面扉50を開放し、例えば各扉が閉鎖しないようにストッパ部材を使用して各扉の開放状態に維持して作業を行う。このため、防災受信盤10の外部から電気室等にある配線ケーブルを筐体40の内部に引き込んで金属基板68に取付け固定している端子台等に接続する配線等の作業は、開放された前面扉開口に加え、右側面扉開口や左側扉開口からも体や手を入れて必要な作業を行うことが可能となり、筐体40の内部が狭くても製造組立作業を効率よく行うことを可能とする。
【0065】
また、これらの作業はトンネルの現場環境が整っていない工事中に行われることから、照明が十分でない現場環境となる場合があるが、前面扉開口に加え、右側面扉開口や左側扉開口が開放されることで、外部からの照明を筐体40内部に多く取り込むことができ、筐体40内部の作業環境を改善することを可能とする。
【0066】
更に、トンネル防災設備の運用中に定期的に行う点検の際にも、前面扉42に加えて右側面扉46と左側面扉50を開放することで、点検に伴う筐体40の内部に対する作業を容易に行うことを可能とする。
【0067】
(b3.側面扉の開閉パターン)
次に、防災受信盤の筐体の両側面に設けられた側面扉(右側面扉及び左側面扉)の開閉パターンについて説明する。当該説明にあっては、防災受信盤に設けた側面扉の開閉パターンを平面(上面)で示した図5を参照する。
【0068】
防災受信盤10に設けられた右側面扉46と左側面扉50の開閉パターンは、図2(C)に示したように、右側面扉46および左側面扉50の後端側を軸として後方へ横開きする開閉パターンを基本とするが、これ以外に、図5(A)~(C)に示す開閉パターンとすることが可能である。
【0069】
図5(A)の開閉パターンは、右側面扉46及び左側面扉50の前端側を軸として前方へ横開きする開閉パターンとする。この開閉パターンは、例えば防災受信盤10の設置現場で、筐体40の背面側(後面側)に作業の妨げとなる壁や柱等の構造物が障害物として存在する場合に、その障害物の影響を避けるための開閉パターンとして設けられる。
【0070】
また、図5(B)の開閉パターンは、右側面扉46については前端側を軸として前方へ横開きする開閉パターンとし、左側面扉50については後端側を軸として後方へ横開きする開閉パターンとする。また、図5(C)の開閉パターンは、図5(B)の開閉パターンの逆となり、右側面扉46については後端側を軸として後方へ横開きする開閉パターンとし、左側面扉50については前端側を軸として前方へ横開きする開閉パターンとする。これらの開閉パターンは、右側面扉46と左側面扉50の各々について個別に作業の妨げとなる障害物の影響を避けるための開閉パターンとして設けられる。
【0071】
(b4.取外し構造を備えた側面扉)
次に、取外し構造を備えた側面扉について説明する。当該説明にあっては、側面扉を取外し自在に設ける取外し型蝶番構造を示した図6を参照する。尚、図6は筐体と右側面扉を含む部分を切り出して説明するが、左側面扉についても同様である。
【0072】
図6に示すように、筐体40の右側面扉開口には、後端側を軸として右側面扉46が開閉自在に設けられ、更に右側面扉46の後端側を軸支する蝶番構造として、取外し型蝶番構造120が設けられている。
【0073】
取外し型蝶番構造120は、右側面扉46の裏面の後端側に扉側軸受124を取付け固定し、扉側軸受124の下に同軸となるように筐体側軸受126を筐体40側に取付け固定し、扉側軸受124を筐体側軸受126に軸合わせした状態で、L形の軸ピン128を扉側軸受124及び筐体側軸受126に挿入し、これにより右側面扉46を筐体40の右側面扉開口に開閉自在に設けている。
【0074】
このため、工場等の製造段階や現場設置の際に、右側面扉46及び左側面扉50は、軸ピン128を扉側軸受124及び筐体側軸受126から抜くことで筐体40から取り外すことが可能となり、右側面扉46及び又は左側面扉50を取り外すことで、筐体40の内部に対する側面扉開口からの作業を更に行い易くすることを可能とする。
【0075】
[c.消火栓装置]
続いて、トンネル防災設備に設けられた消火栓装置について説明する。当該説明にあっては、消火栓装置を取り出し、側面扉を開いた状態で示した図7、及び消火栓装置を正面(前面)から示した図8を参照する。
【0076】
ここで、図7及び図8の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、消火栓扉が設けられた消火栓装置の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。尚、図9乃至図11も同様となる。
【0077】
(c1.消火栓装置の概要)
まず、消火栓装置の概要について説明する。図7及び図8に示すように、消火栓装置16は、内部が消火栓収納部となる筐体70aと内部が消火器収納部となる筐体70bとに分割された構造であり、架台73の上に筐体70a、70bが取付け固定されて設置される。また、筐体70a,70bの前面には化粧枠71a,71bが装着されている。
【0078】
また、筐体70aの化粧枠71aの扉開口部は上下に分割され、扉開口部の下側にヒンジにより下向きに開く前傾式の消火栓扉72が設けられ、扉開口部の上側にヒンジにより上向きに開く保守扉74が設けられ、その内部である消火栓収納部に消火栓機器として消火用ホースと消火栓弁を含むバルブ類が収納されている。消火栓扉72には扉ハンドル7210が設けられ、道路利用者が扉ハンドル7210に手を入れて手前に引く操作を行うと、ロックが解除されて消火栓扉7210を開くことができる。
【0079】
また、筐体70bの化粧枠71bの扉開口部の左側には、ヒンジにより左向きに横開きする消火器扉76が設けられ、内部である消火器収納部に、例えば2本の消火器を収納可能としている。消火器扉76には扉ハンドル7610が設けられ、道路利用者が扉ハンドル7610に手を入れて手前に引く操作を行うと、ロックが解除されて消火器扉76を開くことができる。また、消火器扉76の下側には覗き窓7620が設けられ、外部から消火器の有無を確認可能としている。
【0080】
また、化粧枠71bの扉開口部の右側には、ヒンジにより右向きに横開きする電装扉78が設けられている。電装扉78には、電装機器として、例えば赤色表示灯80、発信機82及び応答ランプ84が設けられ、電装扉78の内面側(裏面側)には電話ジャックが設けられている。
【0081】
赤色表示灯80は常時点灯し、消火栓装置16の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災が発生した場合には、発信機82を押してその押釦スイッチがオンされると、火災通報信号が防災受信盤10に送信され、火災通報信号に基づき防災受信盤10から火災警報が出力され、これに伴い防災受信盤10から応答信号がR型の伝送制御により消火栓装置16側に送信されて、赤色表示灯80が点滅し、応答ランプ84が点灯する。
【0082】
また、筐体70bの左側面には扉開口が形成され、側面扉81が蝶番83を軸に後方へ横開きするように開閉自在に設けられている。側面扉81には埋込型の扉ハンドル8110が設けられ、ロックバー87の先端を筐体70b側の受け穴に係合して側面扉81を閉鎖位置でロックしており、扉ハンドル8110を開操作すると、ロックバー870の先端が筐体70b側の受け穴から引き出されて側面扉81のロックが解除される。
【0083】
消火栓装置16の筐体70b内には端子箱86、88が取付け固定されることから、消火栓装置16をトンネル内に設置した状態で端子箱86、88に対する配線作業等を行う場合に、消火器扉76に加えて側面扉81を開くことで、筐体70b内部に対する作業を行い易くすることを可能としている。
【0084】
なお、側面扉81は消火栓装置16をトンネル壁面に当接又は近接して監視員通路の路面上に露出して設置する場合に有効であり、消火栓装置16をトンネル壁面の刳り貫き部に埋込設置され、消火栓装置16の左側面側に作業スペースが確保できない場合等には側面扉81を設けない構造とする。
【0085】
(b2.消火栓装置の内部構造)
次に、消火栓装置16の内部構造について説明する。当該説明にあっては、消火栓扉、保守扉及び消火器扉を開放状態として消火栓装置の内部構造を正面(前面)から示した図9を参照する。
【0086】
図9に示すように、消火栓収納部75となる筐体70aの内部は、バルブ類収納部750とホース収納部752に分けられている。バルブ類収納部750には、外部から引き込まれた給水配管90に給水栓91が接続されると共に、給水配管90が下向きに分岐されて消火栓弁92及び自動調圧弁94を介して消火用ホース102に接続されている。
【0087】
ホース収納部750には、ホース収納フレーム108が設けられ、下側から引き込んだ消火用ホース102を右回り又は左回りに内巻きすることで収納しており、消火栓扉72の裏面側に設置されたホースガイド110を通して引き出された消火用ホース102の先端にノズル104が装着され、ノズル104は消火栓扉72の裏面側に設置されたノズルホルダー106に着脱自在に保持されている。
【0088】
消火栓弁92は、消火栓扉72の裏面側に設置された操作ボックス95に設けられた消火栓弁開閉レバー96により開閉操作されるものであり、操作ボックス95に対応して消火栓弁92に設けられた連動ボックス98との間に設けられた公知のワイヤーリンク機構により消火栓弁92が消火栓弁開閉レバー96の開閉操作に連動して開閉される。
【0089】
また、連動ボックス98の右側には、消火栓扉72を閉鎖する場合に、開位置にある消火栓弁開閉レバー96を閉位置に案内移動させるためのレバー案内板100が配置されている。
【0090】
また、連動ボックス98の内部に消火栓弁72の開閉に対応してオン・オフされ、オンすることでポンプ起動信号を送信するポンプ起動連動スイッチが設けられ、給水栓91の右上には消防隊が使用し、オンすることでポンプ起動信号を送信するポンプ起動スイッチ93が設けられている。
【0091】
また、筐体70bの内部(消火器扉側)は消火器収納部77であり、2本の消火器79が収納されている。消火器収納部77の後面には端子箱86,88が設置されている。端子箱86には、電装扉78に設けられた赤色表示灯80が配線用ケーブルを介して接続され、端子箱88には、電装扉78に設けられた発信機82、応答ランプ84、電話ジャック85、バルブ類収納部752に設けられたポンプ起動スイッチ93と連動ボックス98に内蔵したポンプ起動連動スイッチが配線用ケーブルを介して接続されている。
【0092】
また、筐体70a内のバルブ類収納部750の中央付近から消火栓収納部752にかけて上部にケーブルラック109が設置されている。ケ-ブルラック109は、外部からバルブ類収納部750に引き込まれた強電用ケーブルを端子箱86に接続するために強電用ケーブルが挿通され、外部からバルブ類収納部750に引き込まれた弱電用ケーブルを端子箱88に接続するために弱電用ケーブルが挿通され、更に、ポンプ起動スイッチ93と連動ボックス98に内蔵したポンプ起動連動スイッチからの配線用ケーブルを端子箱88に接続するために配線用ケーブルが挿通される。
【0093】
(c3.消火栓扉の閉鎖に伴うレバー案内板による消火栓弁開閉レバーの案内移動)
次に、消火栓扉の閉鎖に伴うレバー案内板による開位置に操作された消火栓弁開閉レバーの閉位置への案内移動について説明する。当該説明にあっては、レバー案内板を備えた消火栓弁の操作機構を左側面からの断面で示した図10、及び消火栓扉の閉鎖に伴うレバー案内板による消火栓弁開閉レバーの閉位置への案内移動を示した図11を参照する。
【0094】
図10に示すように、消火栓装置16を使用する場合に道路利用者は、消火栓扉72を前方下向きに傾斜した開放位置まで開放し、消火栓扉72の裏面側に設置されたノズルホルダーからノズルを取り出して消火用ホースを引き出す。続いて、消火栓扉72の裏面に設置された操作ボックス95の消火栓弁開閉レバー96のハンドル9610を握り、想像線で示す閉位置から図示の手前となる開位置に消火栓弁開閉レバー96を操作すると、ワイヤーリンク機構により連動ボックス98を介して消火栓弁が開放されることで消火用ホースに消火用水が供給され、ノズルから放水が開始される。
【0095】
消火栓装置16を使用した消火活動が終了した場合には、開位置にある消火栓弁開閉レバー96を想像線で示す閉位置に戻すことで消火栓弁72が閉操作され、ノズルからの放水が停止する。
【0096】
ところで、消火栓弁開閉レバー96を開位置に操作しても消火用水が供給されない工事段階等で消火栓弁開閉レバー96の開閉操作の確認や点検を行った際に、消火栓弁開閉レバー96を開位置に操作したまま作業を終え消火栓扉72を閉鎖してしまう場合があり、その後に消火栓弁開閉レバー96が開位置のまま消火用水を供給するための消火ポンプ設備の試験運転等を行った場合には、消火栓装置16内で放水が行われ水損被害を引き起こす問題がある。
【0097】
この問題を解決するため、消火栓扉72を閉鎖位置に移動させた場合に、開位置に操作された消火栓弁開閉レバー96を閉位置に案内移動させるためのレバー案内板100が連動ボックス98の横(消火栓弁開閉レバー96に対応した位置)に所定の案内軌跡に従った曲線となる案内面101を筐体70aの外側に向けて配置されている。
【0098】
これにより、消火栓弁開閉レバー96を開位置に操作したまま消火栓扉72を閉鎖位置に移動させた場合には、図11に示すように、消火栓扉72が閉鎖位置に近づくと、開位置にある消火栓弁開閉レバー96のハンドル9610がレバー案内板100における案内面101の上部に当接し、消火栓弁開閉レバー96を閉位置に向かわせる案内移動が開始される。そして、消火栓扉72の閉鎖位置に近づく更なる移動に伴い消火栓弁開閉レバー96は閉位置に向けて案内移動され、消火栓扉72の閉鎖が完了すると、消火栓弁開閉レバー96は閉位置への移動が完了する。
【0099】
このため、消火栓弁開閉レバー96を開位置に操作したまま誤って消火栓扉72を閉鎖してしまっても、消火栓弁開閉レバー72は消火栓扉72の閉鎖に伴い自動的に閉位置に案内移動され、その後、消火ポンプ設備から消火用水が供給されても消火栓装置16の内部で誤った放水が行われることを確実に防止される。
【0100】
[d.火災報知設備の火災受信盤]
続いて、ビル等の施設に設けられた火災報知設備の火災受信盤について説明する。当該説明にあっては、側面扉を備えた火災受信盤を示した図12を参照する。尚、図12(A)は正面(前面)を示し、図12(B)は右側面を示し、図12(C)は平面(上面)を示す。
【0101】
ここで、図12の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、前面扉が設けられた火災受信盤の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。
【0102】
図12(A)に示すように、火災受信盤130は、架台135の上に縦長の直方体(上下方向に長い直方体)の箱形となる筐体132が取付け固定されている。筐体132の前面の扉開口(前面扉開口)には、右側を軸に右方へ横開きするように前面扉134が開閉自在に設けられている。前面扉134には扉ハンドル136が設けられ、扉ハンドル136を操作すると筐体132に対する前面扉134のロックが解除され、前面扉134が開放可能となる。また、前面扉134の扉面には上部から警報表示部142、ディスプレイ144、操作表示部145及びプリンタ146が設けられ、火災検出に伴う火災警報の出力、火災発生場所の表示、火災に伴う各種の対処操作を可能としている。
【0103】
筐体132の右側面の扉開口(右側面扉開口)には、図12(B)、(C)に示すように、例えば後端側を軸に後方へ横開きするように右側面扉138が開閉自在に設けられている。また、右側面扉138には公知の埋込型の扉ハンドル140が設けられ、前述したトンネル防災設備の防災受信盤の扉ハンドル48と同様のものとしている。また、筐体132の左側面の扉開口(左側面扉開口)には、右側面扉138と同様に、例えば後端側を軸に後方へ横開きするように左側面扉148が開閉自在に設けられている。また、左側面扉148にも右側面扉138と同様に、公知の埋込型の扉ハンドルが設けられる。
【0104】
また、筐体132の筐体構造は、基本的に前述した防災受信盤の筐体構造と同様であるから、その説明は省略し、また、防災受信盤にて示した側面扉の開閉パターンや取外し構造を備えた側面扉についても、火災受信盤に適用し得るものである。
【0105】
このため、図2乃至図4に示したトンネル防災設備の防災受信盤10の場合と同様に、火災報知設備の火災受信盤130にあっても、工場での製造時や設置現場での作業時に前面扉134に加えて右側面扉138と左側面扉148を開放することで、開放された前面扉開口に加え、右側面扉開口や左側扉開口からも体や手を入れて必要な作業を行うことが可能となり、筐体132の内部が狭くても筐体内部に対する作業を効率よく行うこと、及び外部からの照明を筐体40内部に多く取り込み作業環境を改善することを可能とする。
【0106】
[e.本発明の変形例]
本発明による防災盤の筐体構造における変形例について説明する。本発明の防災盤の筐体構造は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0107】
(防災盤)
上記の実施形態では、防災盤としてトンネル防災設備の防災受信盤と火災報知設備の火災受信盤を例にとるものであったが、これに限定されず、防災設備で使用される各種の表示盤や制御盤に適用し得るものである。
【0108】
(筐体の箱形形状)
上記の実施形態では、筐体の箱形形状として直方体としたが、どのような箱形形状とするかは任意であり、例えば底面と天面を任意の多角形とした角柱としても良い。
【0109】
(側面扉)
上記の実施形態は、防災盤として例示した防災受信盤及び火災受信盤の筐体の左右側面に側面扉を設けた場合を例にとっているが、これに限定されず、左右側面の何れか一方に側面扉を設けるようにしてもよい。また、防災盤の左右一方の側面に側面扉を設ける筐体構造は、複数の防災盤を連設する場合に適用することが考えられ、例えば2台の防災盤を連接して設置した場合には、右側に設置された防災盤には右側面扉を設け、左側に設置された防災盤には左側面扉を設けるようにすることが考えられる。
【0110】
また、実施形態では、筐体の左側面及び右側面のほぼ全域に対して側面扉が設けられているが、各側面に対してどの程度の領域を側面扉の領域とするかは任意であり、複数の側面扉を設ける場合に必ずしも全ての側面扉のサイズを同じにする必要はない。
【0111】
(側面扉の機器実装)
また、上記の実施形態は、防災盤として例示した防災受信盤及び火災受信盤の筐体内部の後面の近くに配置した金属基板及び前面扉に、電装機器、装置、端子台等を取付け固定して配線しているが、側面扉の内面側に金属基板を配置して装置、端子台等の機器を取付け固定して配線するようにしてもよい。このように側面扉の内側に装置、端子台等の機器を設けることで、筐体内における機器の配置スペースを拡大可能とし、機器の配置の自由度が高まり、また、電気機器や電気部品の放熱性能も良好となり、更に、電気的な絶縁を確保するための沿面距離を十分にとることを可能とする。
【0112】
また、側面扉の内面側に金属基板を配置することで、筐体の後面に対しても側面扉を設けることが可能であり、筐体の後面に対して側面扉を設ける場合には後面の側面扉に金属基板を設けても良く、その他の側面に設けられた側面扉に金属基板を設けるようにしても良い。
【0113】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0114】
1:上り線トンネル
2:下り線トンネル
3:避難連絡坑
10:防災受信盤
12:伝送ケーブル
1210,1220:伝送回線
14:P型信号回線
16:消火栓装置
18:中継増幅盤
24:消火ポンプ設備
26:IG子局設備
28:換気設備
30:警報表示板設備
32:ラジオ再放送設備
34:テレビ監視設備
36:照明設備
40、132:筐体
42、134:前面扉
44、48、136、140、7210、7610、8110:扉ハンドル
45、73、135:架台
46、138:右側面扉
50、148:左側面扉
52、144:ディスプレイ
54、145:操作表示部
56、83:蝶番
58、87:ロックバー
60:筐体フレーム
62:天板
64:裏板
66:底板
68:金属基板
70a、70b:筐体
71a、71b:化粧枠
72:消火栓扉
7210、7610:扉ハンドル
74:保守扉
75:消火栓収納部
750:バルブ類収納部
752:消火栓収納部
76:消火器扉
7620:覗き窓
77:消火器収納部
78:電装扉
79:消火器
80:赤色表示灯
81:側面扉
82:発信機
84:応答ランプ
85:電話ジャック
86、88:端子箱
90:給水配管
91:給水栓
92:消火栓弁
93:ポンプ起動スイッチ
94:自動調圧弁
95:操作ボックス
96:消火栓弁開閉レバー
9610:ハンドル
98:連動ボックス
100:レバー案内板
101:案内面
102:消火用ホース
104:ノズル
106:ノズルホルダー
108:ホース収納フレーム
109:ケーブルラック
110:ホースガイド
120:取外し型蝶番構造
124:扉側軸受
126:筐体側軸受
128:軸ピン
130:火災受信盤
142:警報表示部
146:プリンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12