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特開2024-77733電力遮断器およびこれを備えた電力遮断システム、電力遮断器の保護方法、保護プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077733
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】電力遮断器およびこれを備えた電力遮断システム、電力遮断器の保護方法、保護プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02H 5/04 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
H02H5/04 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189855
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】田畑 謙一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】祐源 英俊
(57)【要約】
【課題】別途、温度検出用の温度センサ等を用いることなく、リレーを含む電力遮断器の保護機能を向上させることが可能なおよびこれを備えた電力遮断システム、電力遮断器の保護方法、保護プログラムを提供する。
【解決手段】電力遮断器20は、パワーリレー21と、温度算出部22aと、判定部22bとを備える。パワーリレー21は、駆動コイル21aを含む。温度算出部22aは、パワーリレー21に含まれる駆動コイル21aを抵抗とみなした場合において温度変化によって変化する抵抗の抵抗値を算出して、駆動コイル21aの温度を算出する。判定部22bは、温度算出部22aにおいて算出された駆動コイル21aの温度に基づいて、電力供給を遮断するか否かを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に対する電力供給を遮断するリレーの温度を監視して、電力供給を遮断するか否かを判定する電力遮断器であって、
駆動コイルを含む前記リレーと、
前記リレーに含まれる前記駆動コイルを抵抗とみなした場合において、温度変化によって変化する前記抵抗の抵抗値を算出して、前記駆動コイルの温度を算出する温度算出部と、
前記温度算出部において算出された前記駆動コイルの温度に基づいて、前記電力供給を遮断するか否かを判定する判定部と、
を備えている電力遮断器。
【請求項2】
前記判定部は、所定時間内に第1閾値を超える温度上昇があった場合には、異常が発生したと判断して、前記電力供給を遮断すると判定する、
請求項1に記載の電力遮断器。
【請求項3】
前記判定部は、所定時間内に第1閾値を超える温度上昇がなかった場合には、正常状態と判断して、前記電力供給を遮断しないと判定する、
請求項1または2に記載の電力遮断器。
【請求項4】
前記判定部は、第2閾値を超える温度上昇があった場合には、異常が発生したと判断して、前記電力供給を遮断すると判定する、
請求項1または2に記載の電力遮断器。
【請求項5】
前記判定部において前記第2閾値を超える温度上昇があり前記電力供給を遮断すると判定された後、前記温度が動作復帰判定用の第3閾値未満になった場合には、前記リレーの動作を復帰させる動作復帰判定部を、さらに備えている、
請求項4に記載の電力遮断器。
【請求項6】
前記動作復帰判定部は、所定時間内に第1閾値を超える急激な温度上昇があった場合には、前記リレーの動作を復帰させないと判定する、
請求項5に記載の電力遮断器。
【請求項7】
前記温度算出部は、前記リレーが動作中に前記駆動コイルの温度を算出する第1抵抗と、前記リレーが動作していない時に前記駆動コイルの温度を算出する第2抵抗とを用いて、前記駆動コイルの温度を算出する、
請求項1または2に記載の電力遮断器。
【請求項8】
前記判定部における判定結果に関する情報を外部へ送信する通信部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の電力遮断器。
【請求項9】
前記通信部は、前記判定部における判定結果の内容に応じて、前記判定結果に関する情報を送信する送信先を変更する、
請求項8に記載の電力遮断器。
【請求項10】
前記判定部において第2閾値を超える温度上昇があり前記電力供給を遮断すると判定された後、前記温度が動作復帰判定用の第3閾値未満になった場合には、前記リレーの動作を復帰させる動作復帰判定部を、さらに備え、
前記通信部は、前記動作復帰判定部において前記リレーの動作を復帰させないと判定した場合には、前記電力供給の遮断に関する情報を、前記電気機器の管理業者へ送信する、
請求項9に記載の電力遮断器。
【請求項11】
前記判定部において第2閾値を超える温度上昇があり前記電力供給を遮断すると判定された後、前記温度が動作復帰判定用の第3閾値未満になった場合には、前記リレーの動作を復帰させる動作復帰判定部を、さらに備え、
前記通信部は、前記動作復帰判定部において前記リレーの動作を復帰させると判定した場合には、前記電力供給の遮断に関する情報を、少なくとも前記電気機器の使用者へ送信する、
請求項9に記載の電力遮断器。
【請求項12】
請求項1または2に記載の電力遮断器と、
前記判定部における判定結果に関する情報を外部へ送信する送信装置と、
インターネットを介して、前記電気機器の使用者と管理業者とに接続されており、前記送信装置から前記判定結果に関する情報が送信されるクラウドサーバと、
を備えた電飾遮断システム。
【請求項13】
電気機器に対する電力供給を遮断するリレーの温度を監視して、電力供給を遮断するか否かを判定する電力遮断システムであって、
電力遮断器と、前記電力遮断器との間で通信を行うクラウドサーバと、
を備えており、
前記電力遮断器は、
駆動コイルを含む前記リレーと、
前記クラウドサーバとの間で通信を行う通信部と、
を有しており、
前記クラウドサーバは、
前記通信部を介して受信した前記リレーに関する情報を取得し、前記リレーに含まれる前記駆動コイルを抵抗とみなした場合において、温度変化によって変化する前記抵抗の抵抗値を算出して、前記駆動コイルの温度を算出する温度算出部と、
前記温度算出部において算出された前記駆動コイルの温度に基づいて、前記電力供給を遮断するか否かを判定する判定部と、
を有している、
電力遮断システム。
【請求項14】
電気機器に対する電力供給を遮断するリレーの温度を監視して、電力供給を遮断するか否かを判定する電力遮断器の保護方法であって、
前記リレーに含まれる駆動コイルを抵抗とみなした場合において、温度変化によって変化する前記抵抗の抵抗値を算出して、前記駆動コイルの温度を算出する温度算出ステップと、
前記温度算出ステップにおいて算出された前記駆動コイルの温度に基づいて、前記電力供給を遮断するか否かを判定する判定ステップと、
を備えた電力遮断器の保護方法。
【請求項15】
電気機器に対する電力供給を遮断するリレーの温度を監視して、電力供給を遮断するか否かを判定する電力遮断器の保護プログラムであって、
前記リレーに含まれる駆動コイルを抵抗とみなした場合において、温度変化によって変化する前記抵抗の抵抗値を算出して、前記駆動コイルの温度を算出する温度算出ステップと、
前記温度算出ステップにおいて算出された前記駆動コイルの温度に基づいて、前記電力供給を遮断するか否かを判定する判定ステップと、
を備えた電力遮断器の保護方法をコンピュータに実行させる電力遮断器の保護プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーを含む電力遮断器およびこれを備えた電力遮断システム、電力遮断器の保護方法、保護プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リレー等の電気器具の温度上昇を監視して、異常の発生の有無に応じて、その動作を停止させるか否かを判定する装置やシステムが用いられている。
例えば、特許文献1には、ユーザのプライバシーを確保する所定場所モニタリング方法を提供するために、電気差込接続装置と、管理サーバと、によって実行され、且つ、(A)管理サーバにより、電気器具の行動特徴を導出し、行動特徴識別モデルを構築するステップと、(B)電気差込接続装置により、電気器具のイベントデータを生成し、管理サーバにイベントデータを送信するステップと、(C)管理サーバにより、行動特徴識別モデルで、イベントデータが複数の行動特徴とマッチングするか否かを判断するステップと、(D)管理サーバにより、いずれともマッチングしないと判断した場合に、ユーザに関連するユーザ端末装置に警告メッセージを送信するステップと、を含む方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-68855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の所定場所モニタリング方法では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された所定場所モニタリング方法では、電気器具の温度を測定する温度測定モジュールが設けられており、温度測定結果と電流測定結果とに基づいて、当該電気器具のイベント(異常)の発生の有無を判定している。
【0005】
このような構成では、リレー等の電気器具の周囲温度の異常な上昇を検知して動作を停止する際に、ある程度、安全寄りに許容範囲を設定して動作停止の判定をする必要がある。また、周囲温度の異常な上昇によって電気器具の動作を停止させた後、温度上昇の異常が解消されて動作復帰が可能な状態であるか否かを遠隔で判断することは難しいため、直接、現場において作業する必要がある。
【0006】
本発明の課題は、別途、温度検出用の温度センサ等を用いることなく、リレーを含む電力遮断器の保護機能を向上させることが可能なおよびこれを備えた電力遮断システム、電力遮断器の保護方法、保護プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る電力遮断器は、電気機器に対する電力供給を遮断するリレーの温度を監視して、電力供給を遮断するか否かを判定する電力遮断器であって、リレーと、温度算出部と、判定部と、を備えている。リレーは、駆動コイルを含む。温度算出部は、リレーに含まれる駆動コイルを抵抗とみなした場合において温度変化によって変化する抵抗の抵抗値を算出して、駆動コイルの温度を算出する。判定部は、温度算出部において算出された駆動コイルの温度に基づいて、電力供給を遮断するか否かを判定する。
【0008】
ここでは、必要に応じて電気機器に対する電力供給を遮断するリレーを含む電力遮断器において、リレーに含まれる駆動コイルを抵抗とみなした場合に、駆動コイルが温度変化によって抵抗値が変化することを利用して、その抵抗値に基づいて駆動コイルの温度を算出し、電力供給を遮断するか否かを判定する。
これにより、リレーが異常な高温状態になったことを、リレーに含まれる駆動コイルの抵抗値を算出することによって検出することで、電力供給を遮断するか否かを容易に判定することができる。
この結果、別途、温度検出用の温度センサ等を用いることなく、リレーを含む電力遮断器の保護機能を向上させることができる。
【0009】
第2の発明に係る電力遮断器は、第1の発明に係る電力遮断器であって、判定部は、所定時間内に第1閾値を超える温度上昇があった場合には、異常が発生したと判断して、電力供給を遮断すると判定する。
【0010】
ここで、所定時間とは、例えば、1~3秒程度の時間であって、第1閾値とは、例えば、20℃/秒、あるいは到達温度100℃が設定される。
これにより、所定時間内に第1閾値を超える温度上昇が検出された場合には、急激な温度上昇による異常が発生したと判断し、電力供給を遮断することで、安全性を確保することができる。
【0011】
第3の発明に係る電力遮断器は、第1または第2の発明に係る電力遮断器であって、判定部は、所定時間内に第1閾値を超える温度上昇がなかった場合には、正常状態と判断して、電力供給を遮断しないと判定する。
これにより、例えば、所定時間内に緩やかな温度上昇があった場合でも、急激な温度上昇ではないため正常状態と判断し、電力供給を遮断しないと判定することができる。
【0012】
第4の発明に係る電力遮断器は、第1または第2の発明に係る電力遮断器であって、判定部は、第2閾値を超える温度上昇があった場合には、異常が発生したと判断して、電力供給を遮断すると判定する。
ここで、所定時間とは、例えば、5秒程度の時間であって、第2閾値とは、例えば、100℃が設定される。
これにより、緩やかな温度上昇であっても第2閾値に達した場合には、異常が発生したおそれがあると判断して、電力供給を遮断することで、安全性を向上させることができる。
【0013】
第5の発明に係る電力遮断器は、第4の発明に係る電力遮断器であって、判定部において第2閾値を超える温度上昇があり電力供給を遮断すると判定された後、温度が動作復帰判定用の第3閾値未満になった場合には、リレーの動作を復帰させる動作復帰判定部を、さらに備えている。
【0014】
ここで、第3閾値とは、一旦、電力供給を遮断したリレーの動作を復帰させるために設定されており、例えば、70℃に設定される。
これにより、例えば、緩やかな温度上昇が第2閾値を超えたために電力供給が遮断された場合において、電力供給の遮断後に温度が第3閾値未満まで駆動コイルの温度が低下した場合には、再び、リレーの動作を復帰させることができる。
このため、急激な温度上昇に起因する電力供給遮断時とは異なり、緩やかな温度上昇に起因する電力供給遮断時には、自動的にリレーを動作復帰させることで、作業者を派遣する必要がないため、使用者の負担を軽減することができる。
【0015】
第6の発明に係る電力遮断器は、第5の発明に係る電力遮断器であって、動作復帰判定部は、所定時間内に第1閾値を超える急激な温度上昇があった場合には、リレーの動作を復帰させないと判定する。
これにより、例えば、急激な温度上昇が第1閾値を超えたために電力供給が遮断された場合には、自動復帰することにリスクが伴うと判断し、リレーの動作を復帰する処理を行わないことで、作業者を派遣する等の対応を採ることができる。
【0016】
第7の発明に係る電力遮断器は、第1または第2の発明に係る電力遮断器であって、温度算出部は、リレーが動作中に駆動コイルの温度を算出する第1抵抗と、リレーが動作していない時に駆動コイルの温度を算出する第2抵抗とを用いて、駆動コイルの温度を算出する。
これにより、リレーが動作中と、リレーが非動作中とで、それぞれ異なる抵抗(第1抵抗および第2抵抗)を用いて駆動コイルの温度を算出することで、駆動コイルを駆動させる駆動電流以下の電流を流しながら、リレーが非動作中における駆動コイルの温度も算出することができる。
【0017】
第8の発明に係る電力遮断器は、第1または第2の発明に係る電力遮断器であって、判定部における判定結果に関する情報を外部へ送信する通信部を、さらに備えている。
これにより、電力遮断器におけるリレーの温度上昇に関する判定結果について、例えば、電力遮断器の使用者や作業管理者等へ送信することで、その後、適切な措置を採るように促すことができる。
【0018】
第9の発明に係る電力遮断器は、第8の発明に係る電力遮断器であって、通信部は、判定部における判定結果の内容に応じて、判定結果に関する情報を送信する送信先を変更する。
これにより、例えば、動作復帰には専門の作業者による点検、復旧作業等が必要な場合と、自動的に動作復帰が可能な場合とで、必要な連絡先にのみ適切に連絡することができる。
【0019】
第10の発明に係る電力遮断器は、第9の発明に係る電力遮断器であって、判定部において第2閾値を超える温度上昇があり電力供給を遮断すると判定された後、温度が動作復帰判定用の第3閾値未満になった場合には、リレーの動作を復帰させる動作復帰判定部を、さらに備えている。通信部は、動作復帰判定部においてリレーの動作を復帰させないと判定した場合には、電力供給の遮断に関する情報を、電気機器の管理業者へ送信する。
これにより、急激な温度上昇に伴う電力供給の遮断時には、電力遮断器の作業管理業者に対して判定結果を連絡することができる。
【0020】
第11の発明に係る電力遮断器は、第9の発明に係る電力遮断器であって、判定部において第2閾値を超える温度上昇があり電力供給を遮断すると判定された後、温度が動作復帰判定用の第3閾値未満になった場合には、リレーの動作を復帰させる動作復帰判定部を、さらに備えている。通信部は、動作復帰判定部においてリレーの動作を復帰させると判定した場合には、電力供給の遮断に関する情報を、少なくとも電気機器の使用者へ送信する。
これにより、自動的に動作復帰が可能な緩やかな温度上昇に伴う電力供給の遮断時には、動作復帰のために作業が不要となるため、作業管理業者には連絡せず、使用者のみに連絡することができる。
【0021】
第12の発明に係る電力遮断システムは、第1または第2の発明に係る電力遮断器と、送信装置と、クラウドサーバと、を備えている。送信装置は、判定部における判定結果に関する情報を外部へ送信する。クラウドサーバは、インターネットを介して、電気機器の使用者と管理業者とに接続されており、送信装置から判定結果に関する情報が送信される。
これにより、電力遮断器から接続されたクラウドサーバに対して、リレーの電力供給の遮断に関する判定結果を送信することで、インターネットを介してクラウドサーバに接続された使用者および管理業者において判定結果に関する情報を共有することができる。
【0022】
第13の発明に係る電力遮断システムは、電気機器に対する電力供給を遮断するリレーの温度を監視して、電力供給を遮断するか否かを判定する電力遮断システムであって、電力遮断器と、電力遮断器との間で通信を行うクラウドサーバと、を備えている。電力遮断器は、駆動コイルを含むリレーと、クラウドサーバとの間で通信を行う通信部と、を有している。クラウドサーバは、温度算出部と、判定部と、を有している。温度算出部は、通信部を介して受信したリレーに関する情報を取得し、リレーに含まれる駆動コイルを抵抗とみなした場合において温度変化によって変化する抵抗の抵抗値を算出して、駆動コイルの温度を算出する。判定部は、温度算出部において算出された駆動コイルの温度に基づいて、電力供給を遮断するか否かを判定する。
【0023】
ここでは、必要に応じて電気機器に対する電力供給を遮断するリレーを含む電力遮断器とクラウドサーバとを備えた電力遮断システムにおいて、クラウドサーバが、リレーに含まれる駆動コイルを抵抗とみなした場合に、駆動コイルが温度変化によって抵抗値が変化することを利用して、その抵抗値に基づいて駆動コイルの温度を算出し、電力供給を遮断するか否かを判定する。
【0024】
これにより、リレーが異常な高温状態になったことを、リレーに含まれる駆動コイルの抵抗値を算出することによって検出することで、電力供給を遮断するか否かを容易に判定することができる。
この結果、別途、温度検出用の温度センサ等を用いることなく、リレーを含む電力遮断器の保護機能を向上させることができる。
【0025】
第14の発明に係る電力遮断器の保護方法は、電気機器に対する電力供給を遮断するリレーの温度を監視して、電力供給を遮断するか否かを判定する電力遮断器の保護方法であって、温度算出ステップと、判定ステップと、を備えている。温度算出ステップでは、リレーに含まれる駆動コイルを抵抗とみなした場合において温度変化によって変化する抵抗の抵抗値を算出して、駆動コイルの温度を算出する。判定ステップでは、温度算出ステップにおいて算出された駆動コイルの温度に基づいて、電力供給を遮断するか否かを判定する。
【0026】
ここでは、必要に応じて電気機器に対する電力供給を遮断するリレーを含む電力遮断器において、リレーに含まれる駆動コイルを抵抗とみなした場合に、駆動コイルが温度変化によって抵抗値が変化することを利用して、その抵抗値に基づいて駆動コイルの温度を算出し、電力供給を遮断するか否かを判定する。
これにより、リレーが異常な高温状態になったことを、リレーに含まれる駆動コイルの抵抗値を算出することによって検出することで、電力供給を遮断するか否かを容易に判定することができる。
この結果、別途、温度検出用の温度センサ等を用いることなく、リレーを含む電力遮断器の保護機能を向上させることができる。
【0027】
第15の発明に係る電力遮断器の保護プログラムは、電気機器に対する電力供給を遮断するリレーの温度を監視して、電力供給を遮断するか否かを判定する電力遮断器の保護プログラムであって、温度算出ステップと、判定ステップと、を備えた電力遮断器の保護方法をコンピュータに実行させる。温度算出ステップでは、リレーに含まれる駆動コイルを抵抗とみなした場合において温度変化によって変化する抵抗の抵抗値を算出して、駆動コイルの温度を算出する。判定ステップでは、温度算出ステップにおいて算出された駆動コイルの温度に基づいて、電力供給を遮断するか否かを判定する。
【0028】
ここでは、必要に応じて電気機器に対する電力供給を遮断するリレーを含む電力遮断器において、リレーに含まれる駆動コイルを抵抗とみなした場合に、駆動コイルが温度変化によって抵抗値が変化することを利用して、その抵抗値に基づいて駆動コイルの温度を算出し、電力供給を遮断するか否かを判定する。
これにより、リレーが異常な高温状態になったことを、リレーに含まれる駆動コイルの抵抗値を算出することによって検出することで、電力供給を遮断するか否かを容易に判定することができる。
【0029】
この結果、別途、温度検出用の温度センサ等を用いることなく、リレーを含む電力遮断器の保護機能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る電力遮断器によれば、別途、温度検出用の温度センサ等を用いることなく、リレーを含む電力遮断器の保護機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る電力遮断器を含む電力遮断システムの構成を示すブロック図。
図2図1の電力遮断器に含まれるパワーリレーが駆動中における駆動コイル周辺の構成を示す電気回路図。
図3図1の電力遮断器に含まれるパワーリレーの冷却時における駆動コイル周辺の構成を示す電気回路図。
図4図1の電力遮断器において動作復帰不能な異常発生時における経過時間に対する駆動コイルの温度変化を示すグラフ。
図5図1の電力遮断器において動作復帰が可能な異常発生時における経過時間に対する駆動コイルの温度変化を示すグラフ。
図6図1の電力遮断器の保護方法の処理の流れを示すフローチャート。
図7】本発明の他の実施形態に係る電力遮断システムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態に係る電力遮断器20およびこれを備えた電力遮断システム1について、図1図6を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態では、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
また、出願人は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0033】
(1)電力遮断システム1の構成
本実施形態に係る電力遮断システム1は、図1に示すように、送電網31から負荷(電気機器)32に対して供給される電力を、所定の条件に基づいて遮断するためのシステムであって、電力遮断モジュール10と、クラウドサーバ30と、を含む。
【0034】
電力遮断モジュール10は、図1に示すように、通信モジュール11と、電力遮断器20と、を備えている。
通信モジュール11は、図1に示すように、電力遮断器20と接続されており、通信部11aを有している。
通信部11aは、図1に示すように、クラウドサーバ30と無線通信を介して接続されており、クラウドサーバ30に対して、後述する電力遮断器20における判定結果等のデータを送信する。また、通信部11aは、使用者端末40aや管理業者端末40b等からの指示入力を受け付けて、電力遮断器20側へ送信する。さらに、通信部11aは、後述する電力遮断器20における判定結果の内容に応じて、判定結果等のデータを送信する送信先を選択的に変更する。
【0035】
電力遮断器20は、図1に示すように、送電網31と負荷32との間に設けられており、送電網31から供給される電力を、そのまま負荷32に対して供給するか否かを判定して、安全性を確保するために所定の条件を満たす場合には、負荷32に対する電力の供給を遮断する。
なお、電力遮断器20の詳細な構成については、後段にて詳述する。
【0036】
(2)電力遮断器20の構成
本実施形態に係る電力遮断器20は、負荷(電気機器等)32に対する電力供給を遮断するパワーリレー21の温度を監視して、電力供給を遮断するか否かを判定する装置であって、図1に示すように、パワーリレー21と、データ処理部22と、入力23aおよび出力23bとを備えている。
【0037】
パワーリレー21は、所定の閾値を超える温度上昇が検出された際に、負荷32に対する電力供給を遮断するために設けられた安全装置であって、図1に示すように、駆動コイル21aと、スイッチング部21b(図2参照)とを有している。
駆動コイル21aは、パワーリレー21を構成する部品の1つであって、主に、銅線によって形成されている。そして、駆動コイル21aは、電気回路における抵抗としてみなすと、温度変化に応じて抵抗値が変化する。
【0038】
本実施形態の電力遮断器20は、図2に示すように、駆動コイル21aを抵抗とみなした場合の抵抗値Rが温度の変化に応じて変化することを利用して、駆動コイル21aの抵抗値に基づいて温度変化を検出することで、例えば、異常な温度上昇があったことを検知して、負荷32に対する電力供給を遮断するか否かを判定する。
スイッチング部21bは、図2に示すように、パワーリレー21に設けられたスイッチング手段であって、負荷32に対する電力供給のON状態とOFF状態とを切り替える。
【0039】
データ処理部22は、図1に示すように、パワーリレー21のON/OFF制御、パワーリレー21(駆動コイル21a)の温度検知および電力検知を行う。そして、データ処理部22は、温度算出部22a、判定部22b、動作復帰判定部22cを有している。
温度算出部22aは、パワーリレー21に含まれる駆動コイル21aを抵抗とみなした場合において、温度変化によって変化する駆動コイル21aの抵抗値Rを算出して、駆動コイル21aの温度を算出する。
【0040】
また、温度算出部22aは、パワーリレー21が動作中に駆動コイル21aの温度を算出する抵抗(第1抵抗)R図2参照)と、パワーリレー21が動作していない時に駆動コイル21aの温度を算出する抵抗(第2抵抗)R、R図3参照)と、を用いて、駆動コイル21aの温度を算出する。
なお、駆動コイル21aの温度の算出処理については、後段にて詳述する。
【0041】
判定部22bは、温度算出部22aにおいて算出された駆動コイル21aの温度に基づいて、負荷32に対して電力供給を遮断するか否かを判定する。
より具体的には、判定部22bは、図4に示すように、所定時間(例えば、3秒)内に第1閾値(例えば、100℃)を超える急激な温度上昇があった場合には、異常が発生したと判断して、負荷32に対する電力供給を遮断する(パワーリレー21の動作停止)と判定する。
【0042】
このとき、急激な温度上昇に関する判定は、所定時間(例えば、3秒)内の温度上昇が所定の第1閾値(例えば、100℃)を超えたという条件の代わりに、単位時間当たりの温度上昇が所定の閾値(例えば、20℃/秒)を超えたことを条件として行われてもよい。
一方、判定部22bは、所定時間内に第1閾値を超える温度上昇がなかった場合には、正常状態と判断して、負荷32に対する電力供給を遮断しない(パワーリレー21の動作維持)と判定する。
【0043】
また、判定部22bは、上述した急激な温度上昇ではなく、図5に示すように、緩やかに第2閾値(例えば、100℃)を超える温度上昇があった場合には、異常が発生したと判断して、負荷32に対する電力供給を遮断する(パワーリレー21の動作停止)と判定する。
動作復帰判定部22cは、図5に示すように、判定部22bにおいて第2閾値(例えば、100℃)を超える温度上昇があり、かつ負荷32への電力供給を遮断すると判定された後、時間が経過してパワーリレー21が自然冷却され、駆動コイル21aの温度が動作復帰判定用の第3閾値(例えば、70℃)未満になった場合には、パワーリレー21の動作を再開(復帰)させる。
一方、動作復帰判定部22cは、図4に示す所定時間(例えば、1~3秒)内に第1閾値(例えば、100℃)を超える急激な温度上昇があった場合には、パワーリレー21の動作を復帰させないと判定する。
【0044】
<パワーリレー21(駆動コイル21a)の温度算出処理>
本実施形態の電力遮断器20は、以上のような構成により、パワーリレー21に含まれる駆動コイル21aの温度を算出することで、パワーリレー21(駆動コイル21a)が異常な高温になっているか否かを検出して、異常な高温状態にある場合には、負荷32に対する電力供給を遮断する。
【0045】
ここで、駆動コイル21aの温度を算出する方法について説明すれば以下の通りである。
すなわち、パワーリレー21の上限温度は、一般的に銅線を用いて作製される駆動コイル21aの温度に依存する。
ここで、コイル等の銅巻線の温度上昇は、以下の関係式(1)を用いた抵抗法によって求められる。
【0046】
【数1】
【0047】
なお、t:試験前のコイル温度(℃)、T:試験後のコイルの温度(℃)、Rt:温度tにおけるコイル抵抗(Ω)、RT:温度Tにおけるコイル抵抗(Ω)、234.5:銅の定数、である。
例えば、駆動コイル21aの抵抗値が23℃において47Ωであるパワーリレー21(製品A)の場合には、駆動コイル21aの温度が変化すると、温度変化後(120℃、-5℃)の抵抗値RTは、それぞれ以下の関係式(2),(3)を用いて算出される。
【0048】
なお、120℃は、パワーリレー21の一般的な最大定格温度であって、-5℃は、パワーリレー21の使用最低温度である。
【0049】
【数2】
【0050】
【数3】
【0051】
図2は、パワーリレー21が動作中における駆動コイル21aの温度を算出するために用いられる抵抗RXを用いた電気回路を示している。
ここで、図2に示すパワーリレー21の周辺の電気回路図において、過渡時を除きパワーリレー21の駆動コイル21aは、抵抗(抵抗値R)とみなすことができる。抵抗値Rは、以下の関係式(4)を用いて算出される。
【0052】
【数4】
【0053】
図2において、駆動コイル21aが動作中の温度を算出する場合に用いられる抵抗(第1抵抗)Rxの抵抗値は規定値であって、V/VRL/VCE1は、A/Dコンバータを用いて電圧値を取得することで、駆動コイル21aを抵抗とみなした場合の抵抗値Rを取得することができる。
なお、Iは、駆動コイル21aを抵抗とみなした場合に抵抗に流れる電流を意味している。Vは、パワーリレー21に掛かる電圧を意味している。VRLは、駆動コイル21aを抵抗とみなした場合にその両端に掛かる電圧を意味している。VRXは、駆動コイル21aが動作中の温度を算出する場合に用いられる抵抗(第1抵抗)Rxの両端に掛かる電圧を意味している。VCE1は、アースからB点の間(トランジスタ25)に掛かる電圧を意味している。
【0054】
ここで、上述した関係式(1)において、RT=Rとなるため、抵抗値がRの場合の駆動コイルの21a温度は、関係式(1)を変形させて、以下の関係式(5)で示される。
【0055】
【数5】
【0056】
例えば、上述した駆動コイル21aの抵抗値が23℃において47Ωであるパワーリレー21(製品A)の場合には、RT=47(Ω)であるため、駆動コイル21aの温度Tは、以下の関係式(6)を用いて算出される。
【0057】
【数6】
【0058】
これにより、温度センサ等を用いることなく、駆動コイル21a自身の抵抗値から温度Tを直接的に算出することで、パワーリレー21が異常な高温になっているか否かの判定を実施することができる。
なお、図2に示す電気回路図において、例えば、V=5V、A点の電圧Va=2.16V、B点の電圧Vb=0.05V、抵抗Rx=47Ωである場合には、以下の関係式(7)、(8)、(9)により、VRLは2.89(V)、I=0.045(A)、駆動コイル21aの抵抗値RLは、64.22(Ω)と算出される。
【0059】
【数7】
【0060】
【数8】
【0061】
【数9】
【0062】
よって、駆動コイル21aの温度Tは、以下の関係式(10)によって、約117(℃)と算出される。
【0063】
【数10】
【0064】
図3は、パワーリレー21が非動作中(冷却中)における駆動コイル21aの温度を算出するために用いられる抵抗RXを用いた電気回路を示している。
このとき、パワーリレー21を非駆動状態のまま、駆動コイル21aを抵抗とみなした場合の抵抗値Rを算出するために、パワーリレー21が駆動できない容量の抵抗(第2抵抗)R,Rを、駆動コイル21aに直列に接続し、駆動電流未満の検査電流を流して、駆動コイル21aの抵抗値Rを算出する。
【0065】
なお、上述した製品Aの場合には、駆動コイル21aの駆動電流は100mA以上に設定されているため、検査電流は、100mA未満に設定される。
そして、抵抗R、Rは規定値であるため、C点、D点における電圧値を特定することで、駆動コイル21aの抵抗値Rを算出することができる。
図3に示す電気回路図において、VRZ=V-V、VCE1=V、I=VRZ/R、VRy=I・R、VRL=V-VRy-VRz-VCE1であることから、駆動コイル21aを抵抗とみなした場合の抵抗値Rは、以下の関係式(11)によって示される。
【0066】
【数11】
【0067】
例えば、V=5V、C点の電圧V=2.4V、D点の電圧V=0.05V、抵抗R=470Ω、R=470Ωである場合には、以下の関係式(12)により、駆動コイル21aの抵抗値Rは、約50(Ω)と算出される。
【0068】
【数12】
【0069】
これにより、駆動コイル21aの温度Tは、以下の関係式(13)により、約39.43(℃)と算出される。
【0070】
【数13】
【0071】
<電力遮断器20の保護方法>
本実施形態のパワーリレー21の保護方法について、図6に示すフローチャートを用いて説明すれば以下の通りである。
すなわち、図6に示すように、ステップS11において、電力遮断システム1の使用者が、使用者端末40a等を用いて、電力遮断器20に対して動作指示を入力すると、ステップS12において、電力遮断器20は、パワーリレー21をON状態とし、負荷32に対して送電網31から電力の供給を開始する。
【0072】
次に、ステップS13では、電力遮断器20の温度算出部22aが、パワーリレー21の駆動コイル21aの抵抗値の変化から駆動コイル21aを算出して、急激な温度上昇(図4参照)が発生していないかを監視する。
次に、ステップS14では、電力遮断器20の判定部22bが、危険閾値温度(第1閾値)として設定された100℃に到達したか否かを判定する。
【0073】
ここで、算出された駆動コイル21aの温度が危険閾値温度(100℃)に到達している場合には、ステップS15へ進み、到達していない場合には、ステップS18へ進む。
次に、ステップS15では、ステップS14において危険閾値温度を超える急激な温度上昇ありと判定されたため、データ処理部22が、パワーリレー21(スイッチング部21b)をOFF状態とし、負荷32への電力供給を停止させる。
【0074】
次に、ステップS16では、通信モジュール11の通信部11aが、使用者が所有する使用者端末40aに対して、パワーリレー21の異常停止を通知するとともに、ステップS17において、管理業者が所有する管理業者端末40bに対して、異常の通知とともに点検を依頼する連絡を送信する。
一方、ステップS18では、ステップS14において、駆動コイル21aの温度が危険閾値温度(100℃)に到達していないと判定されたため、判定部22bは、緩やかな温度上昇であると判定する。
【0075】
次に、ステップS19では、緩やかな温度上昇の結果、危険閾値温度(100℃)に到達したか否かを判定する。
ここで、緩やかに温度が上昇している駆動コイル21aの温度が危険閾値温度(100℃)に到達している場合には、ステップS20,S21へ進み、到達していない場合には、ステップS28へ進む。なお、ステップS20およびステップS21の処理は、ほぼ同時に実施される。
【0076】
次に、ステップS20では、ステップS19において、緩やかな温度上昇であっても危険閾値温度(100℃)に到達したと判定されたため、使用者が所有する使用者端末40aに対してのみ、通信モジュール11の通信部11aが、異常停止の通知を送信する。
ここで、通信部11aから管理業者が所有する管理業者端末40bに対して異常停止等の通知を送信しない理由としては、緩やかな温度上昇によって危険閾値温度(100℃)に到達した場合には、パワーリレー21等の部品が短絡等によって破損している可能性が低く、管理業者による点検等の作業が不要と考えられるからである。
【0077】
次に、ステップS21では、ステップS19において、緩やかな温度上昇であっても危険閾値温度(100℃)に到達したと判定されたため、データ処理部22が、パワーリレー21(スイッチング部21b)をOFF状態とし、負荷32への電力供給を停止させる。
次に、ステップS22では、パワーリレー21をOFF状態のまま、所定時間(例えば、30~60分間)、放置して自然冷却させる。
【0078】
次に、ステップS23では、温度算出部22aが、パワーリレー21が非動作中における温度測定を実施して(図3参照)、動作復帰判定部22cが、所定の動作復帰温度(例えば、70℃)まで、駆動コイル21aの温度が低下したか否かを判定する。
ここで、動作復帰温度まで温度が低下している場合には、ステップS24へ進み、低下していない場合には、ステップS26,S27へ進む。
【0079】
次に、ステップS24では、ステップS23において、動作復帰温度まで駆動コイル21aの温度が低下していると判定されたため、データ処理部22が、スイッチング部21bをON状態とし、パワーリレー21を自動的に動作復帰させる。
次に、ステップS25では、通信モジュール11の通信部11aが、パワーリレー21を自動復帰させた旨の通知を、使用者が所有する使用者端末40aにのみ送信する。
【0080】
一方、ステップS26では、ステップS23において、動作復帰温度まで駆動コイル21aの温度が低下していないと判定されたため、環境要因等による別の異常が発生していると判断し、復帰不可能との通知を、使用者が所有する使用者端末40aへ送信するとともに、ステップS27において、異常の通知とともに点検を依頼する連絡を、管理業者が所有する管理業者端末40bへ送信する。
次に、ステップS28では、ステップS19において、緩やかな温度上昇の結果、危険閾値温度(100℃)に到達していないと判定されたため、異常な高温状態にはなっていないと判断し、パワーリレー21の動作を継続する。
【0081】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0082】
(A)
上記実施形態では、電力遮断器およびその保護方法として、本発明を実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上述した電力遮断器の保護方法をコンピュータに実行させる保護プログラムとして本発明を実現してもよい。
【0083】
この電力遮断器の保護プログラムは、電力遮断器に搭載されたメモリ(記憶部)に保存されており、CPUがメモリに保存された保護プログラムを読み込んで、ハードウェアに各ステップを実行させる。より具体的には、CPUが保護プログラムを読み込んで、上述した温度算出ステップと、判定ステップと、を実行することで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は、電力遮断器の保護プログラムを保存した記録媒体として実現されてもよい。
【0084】
(B)
上記実施形態では、電力遮断器20の内部に設けられた温度算出部22a、判定部22bにおいて、パワーリレー21に含まれる駆動コイル21aの温度を算出し、電力供給を遮断するか否かを判定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0085】
例えば、図7に示すように、パワーリレー21に含まれる駆動コイル21aの温度の算出、算出された温度に基づく電力供給を遮断するか否かの判定の主体は、クラウドサーバ130側に設けられた電力遮断システム101であってもよい。
すなわち、電力遮断システム101は、図7に示すように、電力遮断器120が、パワーリレー21に含まれる駆動コイル21aから抵抗値の変化に関するデータを取得するデータ取得部122を備えており、電力遮断モジュール110内の通信モジュール11の通信部11aを介して、クラウドサーバ130へデータを送信する構成であってもよい。
【0086】
この場合には、クラウドサーバ130に設けられた温度算出部130aが駆動コイル21aの温度を算出し、判定部130bが算出された温度に基づいて負荷32への電力供給を遮断するか否かを判定することで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、動作復帰判定部130cについても、クラウドサーバ130側に設けられていてもよい。
【0087】
(C)
上記実施形態では、急激な温度上昇の上限値としての危険閾値温度(第1閾値)と、緩やかな温度上昇の上限値としての危険閾値温度(第2閾値)とが、ともに100℃に設定された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、第1閾値と第2閾値とが異なる温度に設定されていてもよい。
また、第1閾値および第2閾値は、100℃よりも高い温度に設定されていてもよいし、低い温度に設定されていてもよい。
【0088】
(D)
上記実施形態では、緩やかな温度上昇時に所定の危険閾値温度に達した後、パワーリレー21をOFF状態とし、その後、所定時間経過後に、所定の動作復帰温度(70℃)まで駆動コイル21aの温度が低下すると、パワーリレー21の動作を復帰させる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、動作復帰温度としては、70℃に限らず、90℃等の70℃より高い温度であってもよいし、70℃よりも低い温度であってもよい。
【0089】
(E)
上記実施形態では、パワーリレー21が非動作状態において冷却された駆動コイル21aの温度を算出するために、パワーリレー21の駆動電流以下の温度を流して、2つの抵抗(第2抵抗)を含む電気回路において、駆動コイル21aの温度を算出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0090】
例えば、リレー非動作時における駆動コイルの温度を算出するための第2抵抗は、2つである必要はなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の電力遮断器は、別途、温度検出用の温度センサ等を用いることなく、リレーを含む電力遮断器の保護機能を向上させることができるという効果を奏することから、リレーを含む各種装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 電力遮断システム
10 電力遮断モジュール
11 通信モジュール(送信装置)
11a 通信部
20 電力遮断器
21 パワーリレー(リレー)
21a 駆動コイル
21b スイッチング部
22 データ処理部
22a 温度算出部
22b 判定部
22c 動作復帰判定部
23a 入力
23b 出力
25 トランジスタ
30 クラウドサーバ
31 送電網
32 負荷(電気機器)
40a 使用者端末
40b 管理者端末
101 電力遮断システム
110 電力遮断モジュール
120 電力遮断器
122 データ取得部
130 クラウドサーバ
130a 温度算出部
130b 判定部
130c 動作復帰判定部
抵抗(第1抵抗)
,R 抵抗(第2抵抗)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7