(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077735
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】電動駐車制動装置
(51)【国際特許分類】
B60T 17/22 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
B60T17/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189862
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】村田 俊介
【テーマコード(参考)】
3D049
【Fターム(参考)】
3D049BB02
3D049CC07
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH52
3D049KK08
3D049KK18
3D049RR01
3D049RR13
(57)【要約】
【課題】検出した異常を通知するように構成した電動駐車制動装置に関して、車両のスタートスイッチがオフにされている間の電力消費を軽減する。
【解決手段】電動駐車制動装置10は、スイッチ装置30と、アクチュエータ11と、EPB制御装置20と、を備えている。EPB制御装置20は、スイッチ装置30の異常を検出する検出部M2と、通知装置92を制御するための指示を出力する通知指示部M3と、を備えている。EPB制御装置20は、スイッチ装置30に異常が生じていることを車両90のスタートスイッチ94がオフである間に通知する際の処理としてオフ状態処理を実行する。オフ状態処理において、通知指示部M3は、検出部M2が検出する異常の態様に応じて異常の通知を継続する時間である通知時間を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者による操作部材の操作によって状態が切り換えられるスイッチ装置と、前記車両に制動力を発生させるアクチュエータと、前記スイッチ装置の状態に応じて前記アクチュエータを制御する制御装置と、を有する電動駐車制動装置であって、
前記制御装置は、
前記スイッチ装置の異常を検出する検出部と、
前記スイッチ装置に異常が生じていることを通知する通知装置を制御するための指示を出力する通知指示部と、を備え、
前記スイッチ装置に異常が生じていることを前記車両のスタートスイッチがオフである間に通知する際の処理としてオフ状態処理を実行するものであり、
前記オフ状態処理において、前記通知指示部は、前記検出部が検出する異常の態様に応じて異常の通知を継続する時間である通知時間を調整する
電動駐車制動装置。
【請求項2】
前記オフ状態処理において、前記通知指示部は、前記スイッチ装置の異常が復帰不可能な異常である場合には、前記スイッチ装置の異常が復帰可能な異常である場合と比較して前記通知時間を短くする
請求項1に記載の電動駐車制動装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記スイッチ装置を介して入力される信号に基づいて異常を検出するものであり、
前記オフ状態処理において、前記通知指示部は、異常を示すパターンの信号が入力された期間が規定時間以下の長さである場合には、前記通知時間を基準時間以上の長さとして、異常を示すパターンの信号が入力された期間が前記規定時間よりも長い場合には、前記通知時間を前記基準時間よりも短くする
請求項1に記載の電動駐車制動装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記スタートスイッチがオフにされてから次に前記スタートスイッチがオンにされるまでの間に行う通知の回数を最大で一回に制限する
請求項1~3のいずれか一項に記載の電動駐車制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駐車制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の駐車ブレーキ装置が開示されている。駐車ブレーキ装置は、車両の運転者に異常を警告する警告手段を備えている。駐車ブレーキ装置は、駐車ブレーキ装置を作動させる操作部材を運転者が操作した際に、操作に応じて接続が切り換えられるスイッチ装置を備えている。駐車ブレーキ装置は、スイッチ装置に異常があると、運転者に異常を警告するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転者が駐車ブレーキ装置の操作部材を操作する状況としては、たとえば、運転者が車両から降りようとしている状況がある。このような状況では、車両のスタートスイッチがオフにされることがある。一般的に、スタートスイッチがオフにされている状態の車両では、車両が備える発電装置が発電を行うことはない。これは、車両が備える駆動源の種類にかかわらず同様である。このため、車両のスタートスイッチがオフにされている状況で異常の警告が行われると、警告に要する電力が車載バッテリから消費される。これによって、車両のスタートスイッチがオフにされている状況で警告が行われると、警告の頻度および警告が継続する長さによっては車載バッテリからの電力消費が多くなることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための電動駐車制動装置は、車両の運転者による操作部材の操作によって状態が切り換えられるスイッチ装置と、前記車両に制動力を発生させるアクチュエータと、前記スイッチ装置の状態に応じて前記アクチュエータを制御する制御装置と、を有する電動駐車制動装置であって、前記制御装置は、前記スイッチ装置の異常を検出する検出部と、前記スイッチ装置に異常が生じていることを通知する通知装置を制御するための指示を出力する通知指示部と、を備え、前記スイッチ装置に異常が生じていることを前記車両のスタートスイッチがオフである間に通知する際の処理としてオフ状態処理を実行するものであり、前記オフ状態処理において、前記通知指示部は、前記検出部が検出する異常の態様に応じて異常の通知を継続する時間である通知時間を調整することをその要旨とする。
【0006】
スイッチ装置の異常を通知する目的の一例として、運転者に操作部材の操作を促すことが挙げられる。スイッチ装置の異常としては、異常を認識した運転者によって異常から復帰できる場合もあれば、異常を認識した運転者が手を尽くしても異常からの復帰に至らない場合もある。運転者によって復帰できる異常としては、たとえば、スイッチ装置の接点が固着することによる異常が挙げられる。たとえば運転者が操作部材の操作を繰り返すことで接点の固着が解消される場合がある。これに対して運転者によって復帰できない異常としては、たとえば、スイッチ装置の配線が断線していることによる異常が挙げられる。この場合には、異常を通知したとしても通知に要する電力が消費されるだけで異常からの復帰を期待できない。すなわち、不要に電力を消費することがある。
【0007】
上記構成によれば、異常の通知を継続する時間である通知時間を異常の態様に合わせて調整することができる。これによって、車両のスタートスイッチがオフである場合において、異常を検出した際に異常の発生を一律に通知するような場合と比較して、不要に電力が消費されることの抑制を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、電動駐車制動装置の一実施形態と、同電動駐車制動装置を備える車両と、を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1の電動駐車制動装置が備える制御装置の実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図1の電動駐車制動装置が備える制御装置によって行われる通知の調整を説明する図である。
【
図4】
図4は、
図1の電動駐車制動装置によって異常が通知される際のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、電動駐車制動装置の一実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、電動駐車制動装置10と、電動駐車制動装置10を備える車両90と、を示す。
【0010】
<電動駐車制動装置>
電動駐車制動装置10は、アクチュエータ11と、アクチュエータ11を制御する制御装置であるEPB制御装置20と、スイッチ装置30とを備えている。
【0011】
アクチュエータ11は、一例として電気モータを備えている。たとえば電気モータの駆動によって、車輪と一体に回転する回転体に摩擦材を押し付けることで、電動駐車制動装置10は、制動力を発生させることができる。またたとえば、電気モータの駆動によって、回転体に摩擦材を押し付ける力を解消させることで、電動駐車制動装置10は、制動力を解消させることができる。
【0012】
EPB制御装置20は、アクチュエータ11を制御する処理回路である。EPB制御装置20は、スイッチ装置30の切り換え状態に応じてアクチュエータ11を制御する。
EPB制御装置20は、検出処理を実行することによってスイッチ装置30の状態を検出することができる。検出処理では、スイッチ装置30の異常を検出することもできる。検出処理は、所定の周期毎に繰り返し実行される。なお、EPB制御装置20は、スイッチ装置30の異常を検出した場合には、アクチュエータ11を作動させて制動力を解消するように構成されていることが好ましい。
【0013】
EPB制御装置20は、スイッチ装置30の異常を検出した場合には、異常が発生したことを車両90の運転者に通知する処理を実行する。
EPB制御装置20およびスイッチ装置30の詳細は後述する。
【0014】
<車両>
車両90は、操作部材91を備えている。操作部材91は、車両90の運転者によって操作が可能な部材である。操作部材91を操作することでスイッチ装置30が備える可動接点を駆動させることができる。すなわち、操作部材91は、運転者が電動駐車制動装置10を作動させるためのスイッチである。
【0015】
操作部材91の操作位置としては、アプライ位置と、リリース位置と、ニュートラル位置とが設定されている。アプライ位置は、アクチュエータ11の作動によって制動力を発生させる場合に操作部材91が操作される位置である。リリース位置は、アクチュエータ11の作動によって制動力を解消させる場合に操作部材91が操作される位置である。ニュートラル位置は、アクチュエータ11の作動を要求していない場合に操作部材91が操作される位置である。たとえばニュートラル位置は、アプライ位置およびリリース位置の間にある。操作部材91の初期位置は、ニュートラル位置である。運転者は、ニュートラル位置からアプライ位置またはリリース位置に操作部材91を操作することができる。
【0016】
操作部材91は、たとえば操作ノブである。操作部材91をアプライ位置に操作する場合には、操作部材91を第1方向に操作する。操作部材91をリリース位置に操作する場合には、操作部材91を第1方向とは異なる第2方向に操作する。その他、操作部材91としては、シーソースイッチでもよいし、ボタンスイッチでもよい。以下では、操作部材91を操作することをEPB操作ということもある。
【0017】
車両90は、車載バッテリ99を備えている。車載バッテリ99の負極99aは、ボディアース、たとえば車両90のフレームに接続されている。車載バッテリ99の正極99bは、車両90が備える各装置に接続されている。
図1では、車載バッテリ99と各装置とを接続する配線については図示を省略している。車載バッテリ99は、たとえば、車両90が備える発電装置が発生させた電力を蓄電することができる。発電装置は、車両90が備える駆動源の作動に応じて発電を行うことができる。発電装置の一例は、駆動源に連動して回転されるオルタネータである。発電装置の他の例として、駆動源を兼ねるモータジェネレータが挙げられる。車載バッテリ99は、たとえば、車両90が備える各装置に電力を供給することができる。
【0018】
車両90は、スタートスイッチ94を備えている。スタートスイッチ94は、車両90の運転者によって操作が可能な部材である。スタートスイッチ94は、車両90の駆動源を始動させるためのスイッチである。スタートスイッチ94がオンにされると、車両90の駆動源が始動するように構成されている。スタートスイッチ94がオフにされると、車両90の駆動源が停止するように構成されている。スタートスイッチ94は、イグニッションスイッチ、パワースイッチ、起動スイッチ等と呼称されることもある。
【0019】
車両90は、通知装置92を備えている。通知装置92の一例は、表示灯である。この場合には、通知装置92を点灯または点滅させることによって通知を行うことができる。通知装置92の他の例は、たとえば、ブザーである。
【0020】
車両90は、EPB制御装置20に加えてさらに各種の処理回路を備えている。
図1には、車両90が備える処理回路の一例として、通知制御装置93と、駆動制御装置95と、を示している。さらに車両90は、一つ以上の他の制御装置97を備えていてもよい。
【0021】
通知制御装置93は、通知装置92を制御する機能を備えている。
駆動制御装置95は、車両90の駆動源を制御する機能を備えている。
車両90は、各種センサを備えていてもよい。各種センサの一例として車輪速度センサが挙げられる。
【0022】
車両90は、車載ネットワーク98を備えていてもよい。車載ネットワーク98には、たとえば、車両90が備える各処理回路、車両90が備える各種センサ、および車両90が備える各装置等が接続されている。車載ネットワーク98に接続されている各構成要素は、互いに通信することができる。たとえば、通知制御装置93は、車載ネットワーク98を介して通知指示信号を受信した場合に、通知装置92を作動させて通知を行うことができる。
【0023】
<各制御装置が備える省電力機能>
EPB制御装置20、通知制御装置93、駆動制御装置95および他の制御装置97等の各制御装置は、省電力機能を備えていてもよい。
【0024】
省電力機能の一例として、各制御装置は、起動状態とスリープ状態とを切り換えることができる。起動状態とは、制御装置が備える機能の全てを実行できる状態である。スリープ状態とは、制御装置が起動状態である場合と比較して制御装置の電力消費を抑制する状態である。スリープ状態にある制御装置は、一部の処理を除いて、演算処理等の処理を実行することができない。一部の処理としては、たとえば、当該制御装置をスリープ状態から起動状態に移行するための処理等がある。
【0025】
起動状態とスリープ状態とは、たとえば次のように切り換えられる。
各制御装置は、起動状態である際にスリープ条件が成立すると、起動状態からスリープ状態に移行することができる。たとえば、スリープ条件は、スタートスイッチ94がオフにされた時点から規定の休止許可時間が経過した場合に成立する。その他、スリープ条件は、スリープ許可信号を制御装置が受信した場合に成立するように構成してもよい。またたとえば、スリープ条件は、車載ネットワーク98で信号が送受信されている間は成立しないように構成してもよい。
【0026】
各制御装置は、スリープ状態である間にウェイクアップ条件が成立すると、スリープ状態から起動状態に移行する。たとえば、ウェイクアップ条件は、車載ネットワーク98を介して特定の信号を制御装置が受信した場合に成立する。特定の信号の例としては、車両90の駆動源が始動したことを示す信号、車両90に異常が生じたことを示す信号等が挙げられる。本実施形態においてEPB制御装置20が異常を検出した場合に通知制御装置93に通知を指示する信号は、上記「異常が生じたことを示す信号」の一例である。
【0027】
各制御装置は、ウェイクアップ条件として特有の条件が設定されていてもよい。たとえば、EPB制御装置20は、操作部材91が操作された場合にウェイクアップ条件が成立するように設定されていてもよい。すなわちEPB制御装置20は、スリープ状態である間もスイッチ装置30の切り換え状態を検出することができる。
【0028】
<EPB制御装置>
処理回路であるEPB制御装置20の一例を説明する。
EPB制御装置20は、たとえば、プロセッサ25を備えている。プロセッサ25は、CPU等の処理装置を備えている。プロセッサ25は、記憶装置を備えている。たとえば記憶装置は、処理装置によって実行される制御プログラムを格納している。プロセッサ25は、車載ネットワーク98に接続されていてもよい。
【0029】
プロセッサ25は、処理装置が制御プログラムを実行することによって、各種の機能部として機能する。
図1には、機能部として、制御部M1、検出部M2および通知指示部M3を例示している。
【0030】
制御部M1は、アクチュエータ11を作動させることができる。
検出部M2は、スイッチ装置30の状態を検出することができる。
通知指示部M3は、通知装置92を制御するための指示を出力することができる。たとえば、当該指示を受信した通知制御装置93によって通知装置92が制御されることで、スイッチ装置30に異常が生じていることが通知される。
【0031】
EPB制御装置20は、スイッチ装置30に異常が生じていることを車両90のスタートスイッチ94がオンである間に通知する際の処理としてオン状態処理を実行する。たとえば、オン状態処理では、通知が開始されると、スタートスイッチ94がオフにされるまで通知が継続される。
【0032】
EPB制御装置20は、スイッチ装置30に異常が生じていることを車両90のスタートスイッチ94がオフである間に通知する際の処理としてオフ状態処理を実行する。
通知指示部M3は、オフ状態処理において、通知指示の出力を開始してから基準時間Ti3が経過した場合に通知指示を終了することができる。すなわち、スタートスイッチ94がオフである場合に異常の通知を継続する時間として、基準時間Ti3が設定されている。基準時間Ti3の長さは、予め算出された値に設定されている。さらに、通知指示部M3は、オフ状態処理において、検出部M2が検出する異常の態様に応じて異常の通知を継続する時間である通知時間を調整する。たとえば、通知指示部M3は、通知指示の出力を開始してから通知指示を終了するまでの時間を調整することによって、通知を継続する時間である通知時間を調整することができる。通知指示部M3は、通知時間を基準時間Ti3よりも短くすることもできるし、通知時間を基準時間Ti3よりも長くすることもできる。
【0033】
EPB制御装置20は、第1出力回路21、第1入力回路23、第2出力回路22および第2入力回路24を備えている。
プロセッサ25は、回路21~24のそれぞれに一対一で対応する四つのポートを備えている。各回路21~24は、対応するポートに接続されている。
【0034】
EPB制御装置20は、第1出力端子Out1、第1入力端子In1、第2出力端子Out2および第2入力端子In2を備えている。第1出力端子Out1は、第1出力回路21に接続されている。第1入力端子In1は、第1入力回路23に接続されている。第2出力端子Out2は、第2出力回路22に接続されている。第2入力端子In2は、第2入力回路24に接続されている。第1出力端子Out1、第1入力端子In1、第2出力端子Out2および第2入力端子In2には、スイッチ装置30が接続されている。
【0035】
EPB制御装置20では、第1出力回路21から出力した信号がスイッチ装置30を介して第1入力回路23または第2入力回路24、または、第1入力回路23および第2入力回路24に入力される。
【0036】
EPB制御装置20では、第2出力回路22から出力した信号がスイッチ装置30を介して第1入力回路23または第2入力回路24、または、第1入力回路23および第2入力回路24に入力される。
【0037】
EPB制御装置20は、第1出力回路21および第2出力回路22から出力する出力信号、および、スイッチ装置30を介して第1入力回路23および第2入力回路24に入力される入力信号に基づいて、スイッチ装置30の切り換え状態を検出できる。スイッチ装置30の切り換え状態を検出することで、操作部材91の操作位置を検出できる。
【0038】
<スイッチ装置>
スイッチ装置30の一例を説明する。
スイッチ装置30は、操作部材91がアプライ位置に操作された際に作動するロックスイッチ30aを備えている。ロックスイッチ30aは、第1ロックスイッチSWL1と第2ロックスイッチSWL2とによって構成されている。
【0039】
第1ロックスイッチSWL1は、常開型のスイッチである。第2ロックスイッチSWL2は、常閉型のスイッチである。第1ロックスイッチSWL1および第2ロックスイッチSWL2は、並列に接続されている。
【0040】
スイッチ装置30は、操作部材91がリリース位置に操作された際に作動するリリーススイッチ30bを備えている。リリーススイッチ30bは、第1リリーススイッチSWR1と第2リリーススイッチSWR2とによって構成されている。
【0041】
第1リリーススイッチSWR1は、常閉型のスイッチである。第2リリーススイッチSWR2は、常開型のスイッチである。第1リリーススイッチSWR1および第2リリーススイッチSWR2は、並列に接続されている。
【0042】
第1ロックスイッチSWL1、第2ロックスイッチSWL2、第1リリーススイッチSWR1および第2リリーススイッチSWR2の各スイッチは、可動接点と固定接点とが接触している状態がオン状態である。第1ロックスイッチSWL1、第2ロックスイッチSWL2、第1リリーススイッチSWR1および第2リリーススイッチSWR2の各スイッチは、可動接点と固定接点とが離れている状態がオフ状態である。
【0043】
ロックスイッチ30aについてさらに説明する。
ロックスイッチ30aでは、操作部材91の操作位置に応じて、第1ロックスイッチSWL1と第2ロックスイッチSWL2とが機械的に連動して動作する。ロックスイッチ30aは、操作部材91がアプライ位置に操作された際の作動時には、第1ロックスイッチSWL1がオン状態になり且つ第2ロックスイッチSWL2がオフ状態になる。一方で、ロックスイッチ30aは、非作動時には第1ロックスイッチSWL1がオフ状態になり且つ第2ロックスイッチSWL2がオン状態になる。すなわち、ロックスイッチ30aは、第1ロックスイッチSWL1および第2ロックスイッチSWL2のうち一方が択一的にオン状態になる構造になっている。
【0044】
リリーススイッチ30bについてさらに説明する。リリーススイッチ30bでは、操作部材91の操作位置に応じて、第1リリーススイッチSWR1と第2リリーススイッチSWR2とが機械的に連動して動作する。リリーススイッチ30bは、操作部材91がリリース位置に操作された際の作動時には、第1リリーススイッチSWR1がオフ状態になり且つ第2リリーススイッチSWR2がオン状態になる。一方で、リリーススイッチ30bは、非作動時には第1リリーススイッチSWR1がオン状態になり且つ第2リリーススイッチSWR2がオフ状態になる。すなわち、リリーススイッチ30bは、第1リリーススイッチSWR1および第2リリーススイッチSWR2のうち一方が択一的にオン状態になる構造になっている。
【0045】
上記のようにスイッチ装置30は、ロックスイッチ30aおよびリリーススイッチ30bを、それぞれ一対のスイッチによって冗長化した構成を備えている。
スイッチ装置30の回路構成を説明する。
【0046】
スイッチ装置30では、ロックスイッチ30aとリリーススイッチ30bとが直列に接続されている。具体的には、第1ロックスイッチSWL1と第1リリーススイッチSWR1とが直列に接続されている。第2ロックスイッチSWL2と第2リリーススイッチSWR2とが直列に接続されている。
【0047】
スイッチ装置30は、第1配線31、第2配線32、第3配線33および第4配線34を備えている。第1配線31は、第1出力端子Out1と、第1ロックスイッチSWL1と第1リリーススイッチSWR1との間とを接続している。第2配線32は、第2出力端子Out2と、第2ロックスイッチSWL2と第2リリーススイッチSWR2との間とを接続している。第3配線33は、第1入力端子In1と、第1ロックスイッチSWL1および第2ロックスイッチSWL2とを接続している。第4配線34は、第2入力端子In2と、第1リリーススイッチSWR1および第2リリーススイッチSWR2とを接続している。
【0048】
<異常の検出方法>
検出処理としてEPB制御装置20が異常を検出する方法の一例について説明する。
EPB制御装置20は、出力信号と入力信号とを比較する公知の方法によってスイッチ装置30を診断することができる。たとえば、EPB制御装置20は、スイッチ装置30に異常が発生していない状態における出力信号と入力信号との関係を規定のパターンとして記憶している。規定のパターンには、操作部材91がアプライ位置にある場合のパターン、操作部材91がリリース位置にある場合のパターン、および操作部材91がニュートラル位置にある場合のパターンが含まれる。このため、出力信号と入力信号との関係が規定のパターンに整合していない場合には、EPB制御装置20は、スイッチ装置30に異常が生じていることを検出できる。このとき、スイッチ装置30に生じている異常の種類に応じて、出力信号の波形に対する入力信号の波形が変わる。これは、異常の種類によってスイッチ装置30内の回路構成が変わることで信号の経路が変わるためである。たとえば、各配線31~34の断線、および各スイッチSWL1、SWL2、SWR1、SWR2における接点の固着では、それぞれが特有のパターンを示す。EPB制御装置20は、断線および接点の固着に加えて、さらに、地絡および天絡を含む短絡を判定することもできる。すなわち、EPB制御装置20は、スイッチ装置30に生じている異常を分けて検出することができる。
【0049】
以下では、出力信号および入力信号を診断信号という。規定のパターンに整合している診断信号をまとめて「正常信号」という。すなわち正常信号は、スイッチ装置30に異常が発生していない状態における信号である。また、診断信号が正常信号であることを「正常」という。規定のパターンに整合していない診断信号をまとめて「不定信号」という。すなわち不定信号は、スイッチ装置30に異常が発生している状態における信号である。また、診断信号が不定信号であることを「不定」という。
【0050】
たとえば、検出部M2は、不定信号の受信を開始した時点から、当該不定信号が規定の判定時間Ti2以上継続している場合に、異常の発生を検出するように構成することができる。
【0051】
たとえば、検出部M2は、異常を検出した場合に、異常フラグをオンにする。異常フラグは、異常フラグがオンである場合にはスイッチ装置30に異常が発生していることを示すフラグである。また、検出部M2は、検出した異常の種類を特定する情報を記憶することもできる。
【0052】
<オフ状態処理>
図2は、EPB制御装置20が実行するオフ状態処理の流れを示す。
本処理ルーチンは、スタートスイッチ94がオフである間にEPB制御装置20によって所定の周期毎に繰り返し実行される。より詳しくいえば、本処理ルーチンは、スタートスイッチ94がオフである間であって、EPB制御装置20が起動状態である場合に、所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0053】
本処理ルーチンが開始されると、まず、ステップS101では、検出部M2は、異常の通知履歴があるか否かを判定する。検出部M2は、後述するように異常の通知を指示する際に通知履歴を更新して通知が行われたことを記録する。通知履歴は、スタートスイッチ94がオンにされることで初期化、すなわち削除される。すなわち、通知履歴があることは、スタートスイッチ94がオフにされてから次にスタートスイッチ94がオンにされるまでの間に異常の通知が一回以上行われたことを示している。
【0054】
通知履歴がある場合には(S101:YES)、検出部M2は、処理をステップS110に移行する。検出部M2がステップS110の処理を実行することで、EPB制御装置20は、通知を指示することなく本処理ルーチンを一旦終了する。この結果、検出部M2によって、スタートスイッチ94がオフにされてから次にスタートスイッチ94がオンにされるまでの間に行う通知の回数が最大で一回に制限される。
【0055】
一方で、通知履歴がない場合には(S101:NO)、検出部M2は、処理をステップS102に移行する。
ステップS102では、検出部M2は、スイッチ装置30に異常が発生しているか否かを判定する。異常がない、すなわち異常フラグがオフにされている場合には(S102:NO)、検出部M2は、処理をステップS110に移行する。その後、検出部M2は、通知を指示することなく本処理ルーチンを一旦終了する。
【0056】
一方で、異常がある、すなわち異常フラグがオンにされている場合には(S102:YES)、検出部M2は、処理をステップS103に移行する。
ステップS103では、検出部M2は、発生している異常が復帰可能な異常であるか否かを判定する。復帰可能な異常の一例は、接点の固着である。復帰不可能な異常の一例は、断線である。検出されている異常が復帰不可能な異常である場合には(S103:NO)、検出部M2は、処理をステップS111に移行する。
【0057】
ステップS111では、検出部M2は、通知指示部M3に通知を指示する。このとき検出部M2は、通知履歴を更新する。さらに、検出部M2は、通知指示部M3に通知時間を調整させる。具体的には、通知指示部M3は、通知時間が短くなるように通知の指示を早期に終了する。たとえば、通知指示部M3は、通知時間が基準時間Ti3よりも短くなるように通知指示を終了する。この結果、スイッチ装置30の異常が復帰不可能な異常である場合には、スイッチ装置30の異常が復帰可能な異常である場合と比較して通知時間が短くされる。検出部M2は、通知時間を調整させると、本処理ルーチンを終了する。
【0058】
一方で、復帰可能な異常である場合には(S103:YES)、検出部M2は、処理をステップS104に移行する。
ステップS104では、検出部M2は、操作部材91の操作があるか否かを判定する。ステップS104の処理を実行している時点において操作部材91がアプライ位置またはリリース位置にある場合には、検出部M2は、操作があると判定する。一方、ステップS104の処理を実行している時点において操作部材91がニュートラル位置にある場合には、検出部M2は、操作がないと判定する。
【0059】
操作がある場合には(S104:YES)、検出部M2は、処理をステップS105に移行する。
ステップS105では、検出部M2は、操作部材91の状態とアクチュエータ11の作動状態とが正しく対応しているか否か、すなわち双方の状態が一致しているか否かを判定する。たとえば操作部材91がリリース位置にあり且つアクチュエータ11が制動力を発生させていない場合には、検出部M2は、双方の状態が一致していると判定する。一方、操作部材91がアプライ位置にあり且つアクチュエータ11が制動力を発生させていない場合には、検出部M2は、双方の状態が一致していないと判定する。
【0060】
双方の状態が一致している場合には(S105:YES)、検出部M2は、処理をステップS110に移行する。その後、検出部M2は、通知を指示することなく本処理ルーチンを一旦終了する。
【0061】
一方で、双方の状態が一致していない場合には(S105:NO)、検出部M2は、処理をステップS106に移行する。
また、ステップS104の処理において、操作がない場合には(S104:NO)、検出部M2は、処理をステップS106に移行する。
【0062】
ステップS106では、検出部M2は、不定信号を継続して受信している期間を取得するための判定処理を開始する。判定処理は、判定処理の結果に応じて、すなわち不定信号の受信時間に応じて、通知指示部M3に通知時間を調整させるために実行する処理である。
【0063】
受信時間の判定処理を開始すると、検出部M2は、処理をステップS112に移行する。ステップS112では、検出部M2は、通知指示部M3に通知を指示する。このとき検出部M2は、通知履歴を更新する。さらに、検出部M2は、ステップS106において開始した判定処理の結果に応じて、通知を終了させるタイミングを通知指示部M3に調整させる。詳細は後述するが、検出部M2は、受信時間が長い、すなわち不定信号が長く続いている場合には通知時間を短くさせる。検出部M2は、受信時間が短い、すなわち不定信号が早く終了した場合には通知時間を長くさせる。検出部M2は、通知時間を調整させると、本処理ルーチンを終了する。
【0064】
<通知時間の調整>
図3を用いて、
図2におけるステップS106の処理で開始される判定処理と、当該判定処理の結果として調整される通知時間と、の関係を説明する。
【0065】
たとえば、
図3の(a)に実線で示すように、不定信号が検出された時点から規定時間Ti1が経過したタイミングで不定信号が終了したとする。検出部M2は、不定信号が検出された時点から判定時間Ti2の経過後に異常を検出する。この結果、
図3の(b)に示すように、異常フラグがオンになる。異常フラグがオンになると、
図3の(c)に実線で示すように、通知指示部M3によって通知指示が出力されることで通知が開始される。このとき、通知指示部M3は、通知を開始してから、すなわち異常が検出されてから基準時間Ti3の経過後に通知を終了させる。規定時間Ti1は、通知時間を基準時間Ti3とする場合の受信時間の長さとして設定されている。
【0066】
なお、不定信号が継続している時間である受信時間の長さは、異常からの復帰しやすさを推測する指標にできる。たとえば、受信時間が長い場合には、異常からは復帰しにくいと推測できる。たとえば、受信時間が短い場合には、異常からは比較的復帰しやすいと推測できる。
【0067】
次に、
図3の(a)に二点鎖線で示すように、不定信号が検出された時点から規定時間Ti1が経過するよりも前に不定信号が終了した場合の例を説明する。この場合には、判定処理によって不定信号の受信時間が規定時間Ti1よりも短いと判定されることになる。
【0068】
検出部M2は、不定信号の受信時間が規定時間Ti1よりも短い場合には、
図3の(c)に二点鎖線で示すように、通知時間を基準時間Ti3よりも長くさせる。具体的には、検出部M2は、通知時間が基準時間Ti3よりも長くなるように、通知指示部M3が通知指示を終了するタイミングを遅くさせる。このように通知指示部M3は、異常を示すパターンの信号が入力された期間が規定時間Ti1以下の長さである場合には、通知時間を基準時間Ti3以上の長さとする。たとえば、検出部M2は、不定信号の受信時間が規定時間Ti1よりも短いほど通知時間が長くなるようにしてもよい。
【0069】
続いて、
図3の(a)に破線で示すように、不定信号が検出された時点から規定時間Ti1が経過してからも不定信号が継続した場合の例を説明する。この場合には、判定処理によって不定信号の受信時間が規定時間Ti1よりも長いと判定されることになる。
【0070】
検出部M2は、不定信号の受信時間が規定時間Ti1よりも長い場合には、
図3の(c)に破線で示すように、通知時間を基準時間Ti3よりも短くさせる。具体的には、検出部M2は、通知時間が基準時間Ti3よりも短くなるように、通知指示部M3が通知指示を終了するタイミングを早くさせる。このように通知指示部M3は、異常を示すパターンの信号が入力された期間が規定時間Ti1よりも長い場合には、通知時間を基準時間Ti3よりも短くする。たとえば、通知指示部M3は、通知時間が基準時間Ti3から短縮時間Ti4を引いた時間となるように、通知指示の出力を終了することができる。たとえば、短縮時間Ti4は、
図2に示すステップS111で行われる処理の結果として短くされる通知時間と比較して、より長い通知時間が算出されるように予め設定されている。たとえば、通知指示部M3は、不定信号の受信時間が、基準時間Ti3から短縮時間Ti4を引いた時間と判定時間Ti2との合計に等しくなった場合には、その時点で通知指示の出力を終了するようにしてもよい。短縮時間Ti4は、受信時間の長さに基づいて算出される値でもよい。
【0071】
<作用および効果>
本実施形態の作用および効果について説明する。
スイッチ装置30の異常を通知する目的の一例として、運転者に操作部材91の操作を促すことが挙げられる。スイッチ装置30の異常としては、異常を認識した運転者によって異常から復帰できる場合もあれば、異常を認識した運転者が手を尽くしても異常からの復帰に至らない場合もある。運転者によって復帰できる異常としては、たとえば、スイッチ装置30の接点が固着することによる異常が挙げられる。たとえば運転者が操作部材91の操作を繰り返すことで接点の固着が解消される場合がある。これに対して運転者によって復帰できない異常としては、たとえば、スイッチ装置30の配線が断線していることによる異常が挙げられる。この場合には、異常を通知したとしても通知に要する電力が消費されるだけで異常からの復帰を期待できない。すなわち、不要に電力を消費することがある。
【0072】
電動駐車制動装置10によれば、異常の通知を継続する時間である通知時間を異常の態様に合わせて調整することができる。これによって、車両90のスタートスイッチ94がオフである場合において、異常を検出した際に異常の発生を一律に通知するような場合と比較して、不要に電力が消費されることの抑制を期待できる。スタートスイッチ94がオフである間の電力消費を軽減することで、スタートスイッチ94がオフである間に車載バッテリ99が過度に放電することを抑制できる。ひいては車載バッテリ99の劣化を抑制できる。
【0073】
図4を用いて、スタートスイッチ94がオフである間に本実施形態の電動駐車制動装置10が通知を行う一例を説明する。
図4の(a)に示すように、タイミングt11以降ではスタートスイッチ94がオフにされている。
【0074】
図4の(b)に示すように、タイミングt13からタイミングt14の期間において操作部材91がアプライ位置に操作されている。たとえば、電動駐車制動装置10による制動力を発生させ忘れていることに、スタートスイッチ94をオフにしてから運転者が気付いたような場合に、このタイミングでEPB操作が行われることがある。
【0075】
図4の(c)に示すように、EPB制御装置20は、スタートスイッチ94がオフにされたタイミングt11から休止許可時間が経過したタイミングt12において、起動状態からスリープ状態に移行している。EPB制御装置20は、タイミングt13において操作部材91が操作されたことでスリープ状態から起動状態に移行している。
【0076】
図4の(d)に示すように、EPB操作が行われたタイミングt13において、不定信号が検出されている。なお、このとき検出されている不定信号は、復帰可能な異常のパターンを示しているものとする。不定信号は、タイミングt16まで継続している。タイミングt13からタイミングt16までの期間は、規定時間Ti1よりも長い。このことから、検出されている異常は復帰不可能ではないものの異常からは復帰しにくい状態であると推測できる。
【0077】
図4の(e)に示すように、タイミングt13において不定信号が検出されてから判定時間Ti2が経過したタイミングt15において、異常フラグがオンにされている。異常フラグは、タイミングt15以降においてオンが維持される。
【0078】
タイミングt15において異常フラグがオンにされていることで、
図4の(f)に示すように、タイミングt15から異常の通知が開始されている。
異常の通知を終了させるタイミングは、EPB制御装置20によって調整される。
【0079】
図4の(e)に示すように異常フラグがオンにされている、すなわち異常が検出されていることで、アクチュエータ11は、制動力を解消させている。このとき、
図4の(b)に示すように、操作部材91はニュートラル位置にある。このため、操作部材91の操作がないとEPB制御装置20によって判定される(S104:NO)。これによって、不定信号の受信時間が判定される(S106)。受信時間が規定時間Ti1よりも長いことで、通知時間が基準時間Ti3よりも短くされる(S112)。この結果として、通知が開始されてから基準時間Ti3が経過するよりも早いタイミングt17において通知が終了される。
【0080】
タイミングt17において異常の通知が早期に終了することで、EPB制御装置20は、タイミングt17以降ではスリープ状態に移行している。これによって、電力消費を軽減することができる。
【0081】
図4の(g)は、車載ネットワーク98の通信状態を示す。
図4の(g)に示すように、EPB制御装置20が起動状態である間は、車載ネットワーク98では通信が行われている。具体的には、タイミングt12よりも前の期間、およびタイミングt13からタイミングt17までの期間では通信が行われている。車載ネットワーク98において通信が行われている期間では、EPB制御装置20以外の制御装置、たとえば通知制御装置93も起動状態にある。タイミングt17において通知が終了することで、タイミングt17以降において各制御装置は、スリープ状態に移行できる。これによって、電力消費を軽減することができる。
【0082】
このように、電動駐車制動装置10によれば、異常から復帰しにくい場合には通知時間を短くすることによって電力消費を抑制することができる。
電動駐車制動装置10では、スイッチ装置30が異常から復帰しやすい場合には通知時間を長くすることもできる。通知時間を長くするほど、運転者が通知に気が付きやすくなる。通知に気が付いた運転者が操作部材91を操作することによって、たとえば接点の固着が解消することがある。このように、電動駐車制動装置10によれば、異常から復帰しやすい場合には、異常からの復帰を試みる機会を多く確保することができる。
【0083】
電動駐車制動装置10では、スイッチ装置30の異常が復帰不可能な異常である場合には、通知時間を短くするように構成している。異常からの復帰を期待できない場合に、通知時間を相対的に短くすることによって、通知に要する電力消費を軽減できる。一方で、異常からの復帰が可能である場合には、通知時間を相対的に長くすることによって運転者に認識されやすいように通知を行うことができる。
【0084】
ところで、スタートスイッチ94がオフにされてから既に通知が行われている状況で未だ異常から復帰できていないとすると、再び通知を行ったとしても異常からの復帰には至らない場合がある。
【0085】
そこで電動駐車制動装置10によれば、スタートスイッチ94がオフにされてから次にスタートスイッチ94がオンにされるまでの間に行う通知の回数が最大で一回に制限される。これによって、異常からの復帰を期待できない場合に通知が行われることを抑制できる。この結果として、スタートスイッチ94がオフにされている間の電力消費を軽減することができる。
【0086】
電動駐車制動装置10は、操作部材91の状態とアクチュエータ11の作動状態との双方の状態が一致している場合には、通知を行わないように構成している。上記双方の状態が不一致であるとすると、通知を行うことによって次の効果を期待できる。すなわち、運転者に操作部材91の操作を促すことで、上記双方の状態が一致するように誘導することができる。一方で、仮にスイッチ装置30に異常が発生しているとしても、上記双方の状態が一致している場合には運転者にとっては異常が発生していない場合との違いを感じ取ることが難しい。このため、双方の状態が一致、すなわち操作部材91の操作位置に対応した動作をアクチュエータ11が行っている場合には、通知を行わないようにすることで電力消費を軽減できる。このように、電動駐車制動装置10によれば、重要度の低い通知が行われる機会を減らすことによって、電力消費を軽減することができる。
【0087】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0088】
・上記実施形態におけるスイッチ装置30の構成は一例である。スイッチ装置30の構成は、スイッチ装置30に発生する異常をEPB制御装置20によって分けて検出できる構成であればよい。
【0089】
・上記実施形態における検出処理は一例である。検出処理は、スイッチ装置30に発生する異常を分けて検出できる処理であればよい。
・上記実施形態では、各制御装置が省電力機能を備えている例を示した。各制御装置が省電力機能を備えていることは必須ではない。スイッチ装置30に生じている異常の態様に応じて通知時間を調整するようにEPB制御装置20が構成されていれば、通知に要する電力消費の軽減につながる。
【0090】
・上記実施形態のオフ状態処理では、通知履歴がある場合には通知を行わないように構成した。すなわち、スタートスイッチ94がオフにされてから次にスタートスイッチ94がオンにされるまでの間に行われる通知の回数を最大で一回に制限するように構成した。これに替えて、通知履歴がある場合でも通知を行ってもよい。
【0091】
・上記実施形態のオフ状態処理では、不定信号の受信時間が規定時間Ti1よりも短い場合には、通知時間を基準時間Ti3よりも長くするように構成した。これに替えて、不定信号の受信時間が規定時間Ti1よりも短い場合でも、通知時間を基準時間Ti3としてもよい。
【0092】
・上記実施形態のオフ状態処理では、受信時間の判定処理を行うように構成したが、判定処理を行うことは必須ではない。
この場合に異常の態様に応じて通知時間を調整する構成の一例を説明する。たとえば、スイッチ装置30の異常が復帰可能な異常である場合に通知を行う際には、通知時間を第1時間に設定する。そして、スイッチ装置30の異常が復帰不可能な異常である場合に通知を行う際には、通知時間を第1時間よりも短い第2時間に設定する。
【0093】
・EPB制御装置20および車両90が備える各制御装置は、以下[a]~[c]のいずれかの構成であればよい。[a]コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備える回路。プロセッサは、処理装置を備える。処理装置の例は、CPU、DSPおよびGPU等である。プロセッサは、メモリを備える。メモリの例は、RAM、ROMおよびフラッシュメモリ等である。メモリは、処理を処理装置に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。[b]各種処理を実行する一つ以上のハードウェア回路を備える回路。ハードウェア回路の例は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)等である。[c]各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうち残りの処理を実行するハードウェア回路と、を備える回路。
【0094】
・通知制御装置93が実現する機能の一部または全部は、EPB制御装置20によって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10…電動駐車制動装置
11…アクチュエータ
20…EPB制御装置
30…スイッチ装置
30a…ロックスイッチ
30b…リリーススイッチ
90…車両
91…操作部材
92…通知装置
94…スタートスイッチ
98…車載ネットワーク
99…車載バッテリ
M1…制御部
M2…検出部
M3…通知指示部