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  • 特開-定着部材付き鉄筋及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007775
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】定着部材付き鉄筋及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/12 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
E04C5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109085
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】391037803
【氏名又は名称】株式会社伊藤製鐵所
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】相河 美香
(72)【発明者】
【氏名】林 順三
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
2E164BA02
2E164BA12
2E164BA22
2E164BA24
(57)【要約】
【課題】作業性に優れ、短時間で組立可能な定着部材付き鉄筋及びその製造方法を提供する。
【解決手段】鉄筋4の端部に定着部材3が設けられた定着部材付き鉄筋1であって、少なくとも一方端が露出した状態で他方端側が定着部材3に鋳包みされて固着され、一方端が鉄筋4の端部に接合された中間軸部材2を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋の端部に定着部材が設けられた定着部材付き鉄筋であって、
少なくとも一方端が露出した状態で他方端側が前記定着部材に鋳包みされて固着され、前記一方端が前記鉄筋の端部に接合された中間軸部材を備えていることを特徴とする定着部材付き鉄筋。
【請求項2】
前記中間軸部材は、前記定着部材の中心から偏心した位置で前記定着部材に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の定着部材付き鉄筋。
【請求項3】
前記中間軸部材は、外周面に突起が形成された異形棒鋼であることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着部材付き鉄筋。
【請求項4】
鉄筋の端部に定着部材が設けられた定着部材付き鉄筋の製造方法であって、
中間軸部材の少なくとも一方端を露出させた状態で前記中間軸部材の他方端側を前記定着部材に鋳包みして固着する工程と、
前記鉄筋の端部を前記中間軸部材の一方端に接合する工程と、
を含むことを特徴とする定着部材付き鉄筋の製造方法。
【請求項5】
前記中間軸部材は、前記定着部材の中心から偏心した位置で前記定着部材に固着されていることを特徴とする請求項4に記載の定着部材付き鉄筋の製造方法。
【請求項6】
前記中間軸部材は、外周面に突起が形成された異形棒鋼であることを特徴とする請求項4又は5に記載の定着部材付き鉄筋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着部材付き鉄筋及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄筋を拘束して構造物のせん断耐力を増加させる機械式定着工法が知られている。
【0003】
特許文献1は、主筋に摩擦圧接等により連結されたねじ鉄筋の端部を螺合可能な雌ねじが形成された筒部と、筒部から径方向外側に延出される鍔部と、を備えている定着部材を用いて、ねじ鉄筋が筒部に螺合された状態でねじ鉄筋と雌ねじとの間のクリアランスにグラウトを充填したり、ねじ鉄筋にロックナットを螺合することにより、定着部材とねじ鉄筋との螺合強度を向上させる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-132164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような定着部材を用いた機械式定着工法では、ねじ鉄筋と雌ねじとの間のクリアランスにグラウトを充填する専用工具が必要な上に充填作業が煩雑であり、さらにグラウトが固化するまで定着金物及びねじ鉄筋を静置させる必要があった。また、ロックナットの締め付けは、広い作業環境を確保して専用工具を用いて行う必要があり、ロックナットの締付作業が煩雑であった。
【0006】
そこで、作業性に優れ、短時間で組立可能な定着部材付き鉄筋及びその製造方法を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る定着部材付き鉄筋は、鉄筋の端部に定着部材が設けられた定着部材付き鉄筋であって、少なくとも一方端が露出した状態で他方端側が前記定着部材に鋳包みされて固着され、前記一方端が前記鉄筋の端部に接合された中間軸部材を備えている。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る定着部材付き鉄筋の製造方法は、鉄筋の端部に定着部材が設けられた定着部材付き鉄筋の製造方法であって、中間軸部材の少なくとも一方端を露出させた状態で前記中間軸部材の他方端側を前記定着部材に鋳包みして固着する工程と、前記鉄筋の端部を前記中間軸部材の一方端に接合する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、定着部材付き鉄筋を簡便に且つ短時間で組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る定着部材付き鉄筋の製造方法の手順を示す模式図。
図2】定着部材付き鉄筋が被拘束鉄筋を拘束している状態を示す模式図。
図3】定着部材の各種変形例を示す右側面図。
図4】定着部材付き鉄筋の一変形例を示す左側面図及び正面図。
図5】定着部材付き鉄筋の他の変形例を示す左側面図及び正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0012】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0013】
また、図面は、特徴を分かり易くするために、特徴的な部分を拡大する等して誇張したり構成要素を一部省略することがある。
【0014】
また、本実施形態を構成する各ステップは、特に明示した場合及び原理的に明らかな場合を除き、先後順序は以下の順序に限定されるものではなく、また、複数のステップが並列に実行されても構わない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る定着部材付き鉄筋1を製造する手順を示す模式図である。
【0016】
まず、図1(a)の正面図、図1(b)の右側面図に示すように、中間軸部材2の一方端側を一部露出させた状態で、定着部材3を中間軸部材2の他方端側に固着させる。
【0017】
中間軸部材2は、表面に凹凸が形成された鋼材であって、例えば表面に竹節やねじ節等の突起21が軸方向に沿って形成された異形棒鋼である。中間軸部材2の突起21が定着部材3に係合することにより、中間軸部材2を定着部材3から引き抜く外力に抗することができる。中間軸部材2は、後述する鉄筋4と同種の鋼材が好ましい。中間軸部材2は、鉄筋4に比べて短い鉄筋であり、鉄筋4を切断する際に生じた端材であっても構わない。
【0018】
定着部材3は、比較的安価な鋳鉄又は鋳鋼等から成る鋳物であり、中間軸部材2の他方端側を鋳包みしている。鋳物製の定着部材3は、任意の形状を低コストで制作することができる。ここで、「鋳包み」とは、鋳物製の定着部材3を制作するにあたって、鋳型内の所定位置に中間軸部材2を配置した状態で鋳型と中間軸部材2との間の隙間に溶鉄を充填し、溶鉄を凝固・冷却させた後に鋳型を破壊して定着部材3を取り出すことにより、中間軸部材2が定着部材3に一体化されることをいう。
【0019】
定着部材3は、全面に亘って略均一な厚みの四角板状に形成されている。また、定着部材3の中心から上方に偏心した位置、具体的には中間軸部材2から定着部材3の下端までの掛止距離Dが後述する被拘束鉄筋6の外径の3/4以上になる位置に中間軸部材2が配置されている。なお、定着部材3の表面において中間軸部材2の他方端が露出していても構わないし、定着部材3の表面と中間軸部材2の他方端との間に僅かな隙間があっても構わない。
【0020】
次に、図1(c)に示すように、中間軸部材2の一方端を鉄筋4の端部に摩擦圧接により接合させる。鉄筋4は、表面に竹節やねじ節等の突起41が軸方向に沿って形成された異形棒鋼である。鉄筋4は、JISG3112で規定されている異形棒鋼等の鋼材から成る。なお、中間軸部材2と鉄筋4との接合方式は、摩擦圧接に限定されるものではない。
【0021】
中間軸部材2と鉄筋4との摩擦圧接は、公知の方法により行われ、例えば、定着部材3の外周を回転可能に把持し、高速で回転する中間軸部材2の一方端に中間軸部材2と略同軸上に配置された鉄筋4の先端を接触させ、中間軸部材2と鉄筋4との摩擦による摩擦熱で鉄筋4の先端が加熱されて塑性変形抵抗が著しく減少する。そして、摩擦熱で加熱された鉄筋4の先端を中間軸部材2に押し付けることにより、中間軸部材2と鉄筋4との間に接合部5が形成されて鉄筋4が中間軸部材2に接合される。
【0022】
このようにして、同種の鋼材から成る中間軸部材2と鉄筋4とが摩擦接合されることにより、中間軸部材2と鉄筋4とを短時間で簡便に接合できるとともに、異素材同士を接合させる場合と比べて高い接合強度を示す。
【0023】
そして、このような定着部材付き鉄筋1をコンクリート構造物に適用すると、図2に示すように、鉄筋4の先端側において定着部材3の下部が被拘束鉄筋6に掛けられ、定着部材付き鉄筋1とコンクリートとが定着される。
【0024】
このようにして、本実施形態に係る定着部材付き鉄筋1は、鉄筋4の端部に定着部材3が設けられた定着部材付き鉄筋1であって、少なくとも一方端が露出した状態で他方端側が定着部材3に鋳包みされて固着され、一方端が鉄筋4の端部に接合された中間軸部材2を備えている構成とした。
【0025】
このような構成により、定着部材3が中間軸部材2を鋳包みして固着することにより、従来のようなねじ鉄筋と定着金物との螺合強度を向上させるためのグラウト充填作業やロックナット締付作業等の煩雑な作業が不要となるため、定着部材付き鉄筋1を短時間で簡便に組み立てることができる。
【0026】
また、本実施形態に係る定着部材付き鉄筋1は、中間軸部材2が、定着部材3の中心から偏心した位置で定着部材3に固着されている構成とした。
【0027】
このような構成により、定着部材3のうち中間軸部材2から定着部材3の下端までの掛止距離Dが長く確保されるため、定着部材3が被拘束鉄筋6から掛け外れることを抑制できる。
【0028】
また、本実施形態に係る定着部材付き鉄筋1の製造方法は、鉄筋4の端部に定着部材3が設けられた定着部材付き鉄筋1の製造方法であって、中間軸部材2の少なくとも一方端を露出させた状態で中間軸部材2の他方端側を定着部材3に鋳包みして固着する工程と、鉄筋4の端部を中間軸部材2の一方端に接合する工程と、を含む構成とした。
【0029】
このような構成により、定着部材3が中間軸部材2を鋳包みして固着することにより、従来のようなねじ鉄筋と定着金物との螺合強度を向上させるためのグラウト充填作業やロックナット締付作業等の煩雑な作業が不要となるため、定着部材付き鉄筋1を短時間で簡便に組み立てることができる。
【0030】
また、本実施形態に係る定着部材付き鉄筋1の製造方法は、中間軸部材2が、定着部材3の中心から偏心した位置で定着部材3に固着されている構成した。
【0031】
このような構成により、定着部材3のうち中間軸部材2から定着部材3の下端までの掛止距離Dが長く確保されるため、定着部材3が被拘束鉄筋6から掛け外れることを抑制できる。
【0032】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変や組み合わせを成すことができ、そして、本発明が該改変や該組み合わせされたものに及ぶことは当然である。
【0033】
定着部材3の側面から視た形状は、上述した四角形状に限定されるものではなく、例えば、図3(a)に示すように、定着部材3の四隅が丸く面取りされた角丸四角形状、図3(b)に示すように、定着部材3の上方から下方に向かって徐々に幅狭に形成された略三角形状、または、図3(c)に示すように、定着部材3の上方から下方に向かって徐々に幅広に形成された略台形状等であっても構わない。
【0034】
また、定着部材付き鉄筋1は、上述したように全面に亘って略均一な厚みの板状の定着部材3を備えているものに限定されず、例えば、図4(a)の左側面図、図4(b)の正面図に示すように、局所的に厚みを変化させた略L字状に形成された定着部材3を備えていても構わない。
【0035】
図4に示す定着部材付き鉄筋1は、中間軸部材2を鋳包みして固定する基部31と、基部31から下方に延伸されて被拘束鉄筋6に掛かる掛止部32と、を備えている定着部材3を備えている。基部31は、掛止部32よりも中間軸部材2の軸方向に長く延伸されており、中間軸部材2と広範囲で接触可能で中間軸部材2の抜け止めがさらに抑制される。
【0036】
また、定着部材付き鉄筋1は、上述したように定着部材3内において中間軸部材2が偏心した位置に配置されたものに限定されず、例えば、図5(a)の左側面図、図5(b)の正面図に示すように、定着部材3の略中央に中間軸部材2が配置されても構わない。
【符号の説明】
【0037】
1 :定着部材付き鉄筋
2 :中間軸部材
21:(中間軸部材の)突起
3 :定着部材
31:基部
32:掛止部
4 :鉄筋
41:(鉄筋の)突起
5 :接合部
6 :被拘束鉄筋
D :掛止距離
図1
図2
図3
図4
図5