(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077773
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】シリコンオイル塗布装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/80 20180101AFI20240603BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B60N2/80
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189914
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 多喜男
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DD07
3B087DC05
(57)【要約】
【課題】ヘッドレストステーにおける下端部側の外径面に簡便な操作で必要量のシリコンオイルを塗布することが可能なシリコンオイル塗布装置を提供する。
【解決手段】ヘッドレスト5の一対のステー52の外径面にシリコンオイルSを塗布するシリコンオイル塗布装置1は、シリコンオイル槽2と、ヘッドレスト5を保持してシリコンオイル槽2の開口部2aからステー52の下端部53側部分を上方から出し入れする昇降部材3と、開口部2aに設置されステー52を圧接状態で通すステー通し孔21b1が設けられた可撓性のあるゴム板21bが取付けられた蓋体21と、蓋体21の下方において昇降部材3の上下動に連動して上下方向に延びる軸を中心に回動可能に配置されるとともに、シリコンオイルSを含んでステー52のいずれかに接触して回動することによってステー52の外径面にシリコンオイルSを塗布可能な複数のローラ23と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストの本体部から突出する一対のステーにおける先端部の側の部分の外径面にシリコンオイルを塗布するシリコンオイル塗布装置であって、
シリコンオイルを収容し上方に開口部を有するシリコンオイル槽と、
前記ヘッドレストを保持して前記シリコンオイル槽の前記開口部から前記ヘッドレストの前記一対のステーの前記先端部の側の部分を前記シリコンオイル槽の内部に上方から出し入れ操作する昇降部材と、
前記開口部に設置され前記一対のステーを圧接状態で通すステー通し孔が設けられた可撓性のある圧接部材が取付けられた蓋体と、
前記シリコンオイル槽の内部における前記蓋体の下方において前記昇降部材の上下動に連動して上下方向に延びる軸を中心に回動可能に配置されるとともに、前記シリコンオイルを含んで前記一対のステーのいずれかに接触して回動することによって前記一対のステーの前記外径面に前記シリコンオイルを塗布可能な複数のローラと、を有するシリコンオイル塗布装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記シリコンオイル槽の内部には前記昇降部材の昇降動作によって作動し前記シリコンオイル槽の内部に貯留された前記シリコンオイルを所定量汲み上げて複数の前記ローラにおける前記一対のステーのいずれかに接触するローラ群の中の少なくとも1つの前記ローラの上部に供給するポンプを有しているシリコンオイル塗布装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記蓋体には、一端部が前記ポンプの側に開口し、他端部が前記ローラ群の中の少なくとも1つの前記ローラの上部に開口するオイル供給路がもうけられており、
前記ポンプのオイル吐出口と前記オイル供給路の前記一端部とはフレキシブルホースで連結されているシリコンオイル塗布装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3において、
前記複数のローラにはそれぞれ下部に前記軸と同軸のピニオンギアが配設されており、
前記ローラ群の中の一つの前記ローラである起動ローラの前記ピニオンギアは、前記昇降部材の上下動によって水平方向に移動するラックギアと噛み合うとともに、各前記ローラ群における前記起動ローラ以外の前記ローラの前記ピニオンギアは前記起動ローラの前記ピニオンギアの回動とともに回動するように噛み合わされており、
前記ラックギアは、水平方向の一方向に向けて付勢されており、
前記昇降部材が上昇すると付勢力に抗して他方向に移動し、前記昇降部材が下降すると付勢力によって前記一方向に移動するように前記昇降部材と紐状体で連結されているシリコンオイル塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンオイル塗布装置に関する。詳しくは、ヘッドレストのステー表面にシリコンオイルを塗布するシリコンオイル塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に装備される車両用シートにおいて、シートバックの上部側に配設された一対の筒状部材であるヘッドレストサポートに、一対のヘッドレストステーがそれぞれ挿入されてヘッドレストが取付けられることがある。このとき、車両用シートの製造工程において、一対のヘッドレストサポートの内径部の中に一対のヘッドレストステーを挿入する際、摺動性を高めて挿入し易くするため各ヘッドレストステーの外径面にシリコンオイルを塗布してから挿入していた。シリコンオイルの塗布に当たっては、特許文献1に記載されているように、各ヘッドレストステーの下側部分をシリコンオイルを収容した槽内に浸漬するディッピングが適用されることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載されたディッピングによるシリコンオイルのヘッドレストステーへの塗布においては、ヘッドレストステーの外径面及び内径面に付着した余分なシリコンオイルが滴下して床を汚染する等の不具合を生じるおそれがあった。また、塗布が不要な内径面にもシリコンオイルが塗布されることによりシリコンオイルの無駄な消費が生じるという問題があった。そこで、ヘッドレストの外径面のみに必要な量のシリコンオイルを塗布できる装置の提供が望まれていた。
【0005】
このような要請に鑑み本発明の課題は、ヘッドレストステーにおける下端部側の外径面に簡便な操作で必要量のシリコンオイルを塗布することが可能なシリコンオイル塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、ヘッドレストの本体部から突出する一対のステーにおける先端部の側の部分の外径面にシリコンオイルを塗布するシリコンオイル塗布装置であって、シリコンオイルを収容し上方に開口部を有するシリコンオイル槽と、前記ヘッドレストを保持して前記シリコンオイル槽の前記開口部から前記ヘッドレストの前記一対のステーの前記先端部の側の部分を前記シリコンオイル槽の内部に上方から出し入れ操作する昇降部材と、前記開口部に設置され前記一対のステーを圧接状態で通すステー通し孔が設けられた可撓性のある圧接部材が取付けられた蓋体と、前記シリコンオイル槽の内部における前記蓋体の下方において前記昇降部材の上下動に連動して上下方向に延びる軸を中心に回動可能に配置されるとともに、前記シリコンオイルを含んで前記一対のステーのいずれかに接触して回動することによって前記一対のステーの前記外径面に前記シリコンオイルを塗布可能な複数のローラと、を有することを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、昇降部材に保持されたヘッドレストがシリコンオイル槽に対して下降し、一対のステーの先端部側部分がそれぞれ蓋体に取付けられた圧接部材のステー通し孔を押し拡げながらシリコンオイル槽の内部に挿入されると、シリコンオイルを含んだ複数のローラが一対のステーのいずれかに接触して回動する。これによって、一対のステーの先端部側部分の外径面にシリコンオイルが塗布される。そして、昇降部材に保持されたヘッドレストを上方に移動させると一対のステーの先端部側部分がそれぞれ蓋体に取付けられた圧接部材のステー通し孔の周りの圧接部材によって押圧された状態で引き抜かれるので余分に付着したシリコンオイルがあっても削ぎ落されて適量なものとなる。これによって、シリコンオイル塗布装置は、昇降部材に保持されたヘッドレストをシリコンオイル槽に対して昇降させるという簡便な操作で必要量のシリコンオイルを一対のステーの先端部側部分に塗布することを可能とする。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記シリコンオイル槽の内部には前記昇降部材の昇降動作によって作動し前記シリコンオイル槽の内部に貯留された前記シリコンオイルを所定量汲み上げて複数の前記ローラにおける前記一対のステーのいずれかに接触するローラ群の中の少なくとも1つの前記ローラの上部に供給するポンプを有していることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、昇降部材の昇降動作によって作動するポンプによってシリコンオイル槽の内部に貯留されたシリコンオイルが、複数のローラにおける一対のステーのいずれかに接触するローラ群の中の少なくとも1つのローラの上部に供給されるので、シリコンオイル槽の内部に貯留されたシリコンオイルを手で汲み上げて複数のローラに供給する等の手間を省くことができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記蓋体には、一端部が前記ポンプの側に開口し、他端部が前記ローラ群の中の少なくとも1つの前記ローラの上部に開口するオイル供給路がもうけられており、前記ポンプのオイル吐出口と前記オイル供給路の前記一端部とはフレキシブルホースで連結されていることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、シリコンオイルは蓋体に設けられたオイル供給路を通って、複数のローラにおける一対のステーのいずれかに接触するローラ群の中の少なくとも1つのローラの上部に供給されるので、シリコンオイルを供給する配管等を蓋体の外部に配設する必要がなく構造が簡潔となる。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第2発明又は上記第3発明において、前記複数のローラにはそれぞれ下部に前記軸と同軸のピニオンギアが配設されており、前記ローラ群の中の一つの前記ローラである起動ローラの前記ピニオンギアは、前記昇降部材の上下動によって水平方向に移動するラックギアと噛み合うとともに、各前記ローラ群における前記起動ローラ以外の前記ローラの前記ピニオンギアは前記起動ローラの前記ピニオンギアの回動とともに回動するように噛み合わされており、前記ラックギアは、水平方向の一方向に向けて付勢されており、前記昇降部材が上昇すると付勢力に抗して他方向に移動し、前記昇降部材が下降すると付勢力によって前記一方向に移動するように前記昇降部材と紐状体で連結されていることを特徴とする。
【0013】
第4発明によれば、昇降部材を下降させるとラックギアが付勢力によって水平方向の一方向に移動し、各ローラ群における起動ローラのピニオンギアを回動させる。それにともなって、各ローラ群における起動ローラ以外のローラのピニオンギアが回動し、各ローラ群のローラがすべて回動して一対のステーのそれぞれにシリコンオイルを塗布する。そこから、昇降部材を上昇させると下降の時とは反対方向に各ローラ群のローラがすべて回動して一対のステーのそれぞれにシリコンオイルを塗布する。このように、動力を使用しない簡潔な機構で一対のステーの先端部側部分の外径面にシリコンオイルを塗布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態のシリコンオイル塗布装置を説明する正面から見た模式図である。
【
図2】上記実施形態のシリコンオイル槽を上方から見た図である。
【
図3】上記実施形態におけるローラの作動機構を説明する上方から見た図である。
【
図4】上記実施形態のシリコンオイル槽の中にヘッドレストのステーを挿入した状態を示す
図1に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図4に基づき、本発明の一実施形態に係るシリコンオイル塗布装置1について説明する。以下の説明において、方向に関する説明は、各図に示される上下前後左右の方向に基いて行うものとする。ここで、上下前後左右の各方向は、シリコンオイル塗布装置1に向かい合って操作する作業者を基準に定めたものである。
【0016】
まず、シリコンオイルを塗布する対象のヘッドレスト5について説明する。
図1に示すように、ヘッドレスト5は、骨格を構成するフレーム体をクッション体で覆いさらにその上からカバー体を被せつけた構造を有する本体部51と、本体部51の下面側から下方に向かって延びるように配設された左右一対のステー52と、を有する。本体部51は、着座乗員の頭部に当接してそれを弾性的に支持する部材である。ステー52は、表面にメッキを施された円筒状の金属製パイプから形成されており、本体部51と反対側の端部である下端部53は先細り状態に加工されている。ヘッドレスト5は、シートバック上部の内部に配設された左右一対の円筒状をしたヘッドレストサポート(図示せず)の内径部の中に各ステー52が下端部53の側から挿し込まれることによってシートバック上部に取付けられる。ここで、シートの製造工程において、左右一対のヘッドレストサポートの内径部の中に各ステー52を挿し込みやすくするために各ステー52における下端部53の側の外径部にシリコンオイルを塗布するのにシリコンオイル塗布装置1が利用される。シリコンオイルとは、シリコンのうちで分子量が比較的小さく、常温で油状のものを言い、機械類の減摩剤、潤滑油として多く使用されているものである。ここで、下端部53が、特許請求の範囲の「先端部」に相当する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、シリコンオイル塗布装置1は、上方が開口したシリコンオイル槽2と、シリコンオイル槽2に対して昇降する板状の昇降部材3と、シリコンオイル槽2に対し昇降部材3を上下動可能に連結する連結部材4と、を有する。
【0018】
図1及び
図2に示すように、シリコンオイル槽2は、上方に長軸方向を左右方向とする矩形状の開口部2aを有する直方体ボックス形状をしている。開口部2aに対向する下側には、開口部2aと同形状の底面部2bが形成されている。シリコンオイル槽2の内側における底面部2bの上にはシリコンオイルSが溜められるようになっている。
【0019】
シリコンオイル槽2の上部である開口部2aにおける左右方向中央部の内側には、厚板樹脂製の蓋体21が取付けられている。蓋体21の上面は、シリコンオイル槽2の開口部2aの面と一致している。蓋体21には、上下方向に貫通する左右一対の断面が円形の丸孔21aが形成されている。丸孔21aの内径部には、中心にステー52の外径より若干小さい内径のステー通し孔21b1が形成された可撓性があり弾性変形可能なゴム板21bが配設されている。左右のステー通し孔21b1の中心間の左右方向寸法は、左右一対のステー52の中心軸間の左右方向寸法と一致している。蓋体21における前側の内部には、左右方向に延びる円柱状の横供給孔21cが形成されている。蓋体21における左側の内部と右側の内部には、横供給孔21cと連通して下方に延び蓋体21の下面に開口する縦供給孔21dが形成されている。蓋体21の左側側面に開口する横供給孔21cの注入口21c1からシリコンオイルSを注入すると、シリコンオイルSは横供給孔21cを通って左右の縦供給孔21dから蓋体21の下方に向かって吐出されるようになっている。ここで、ゴム板21bと注入口21c1が、それぞれ特許請求の範囲の「圧接部材」と「一端部」に相当する。また、横供給孔21cと縦供給孔21dは、特許請求の範囲の「オイル供給路」に相当する。
【0020】
シリコンオイル槽2の内部における蓋体21の左側には、ポンプ22が配設されている。ポンプ22は、ヘッド部22aが上方から押圧されると内部に貯えられたシリコンオイルSを吐出口22cから吐出し、ヘッド部22aの押圧が解除されるとヘッド部22aが付勢力によって上方に復帰する際、シリコンオイル槽2の内側に溜められたシリコンオイルSを内部に吸引して貯える働きをする。ヘッド部22aの押圧は、昇降部材3の下降時に後述するポンプ押圧部33の下端面によって行われる。ヘッド部22aの吐出口22cと蓋体21の注入口21c1とは、フレキシブルホース22dで連結されており、ヘッド部22aの押圧によって、シリコンオイルSが蓋体21の注入口21c1に供給されるようになっている。ここで、吐出口22cが、特許請求の範囲の「オイル吐出口」に相当する。
【0021】
図1~
図3に示すように、シリコンオイル槽2の内部における左側と右側には、それぞれ3つずつのローラ23が配設されている。ローラ23は、円柱状をしており外径面が短毛のブラシ状に形成された塗装用ローラである。左側の3つのローラ23は、ヘッドレスト5の左側のステー52にシリコンオイルSを塗布するためのものであり、右側の3つのローラ23は、ヘッドレスト5の右側のステー52にシリコンオイルSを塗布するためのものである。いずれも同一の構造をしているので、代表として左側の3つのローラ23について説明する。ここで、左側の3つのローラ23と右側の3つのローラ23が、それぞれ特許請求の範囲の「ローラ群」に相当する。
【0022】
図1~
図3に示すように、後側の後ローラ23aは、シリコンオイル槽2の底面部2bに固定されて配設された上下方向に延びる軸23a1を中心に回動可能とされている。そして、後ローラ23aの下部分に固定されたピニオンギア23a2が左右方向に延びる歯面が前方向を向いたラックギア24に噛み合わされている。前側の前ローラ23cは、シリコンオイル槽2の底面部2bに固定されて配設された上下方向に延びる軸23c1を中心に回動可能とされている。そして、下部分に固定されたピニオンギア23c2が後ローラ23aのピニオンギア23a2に噛み合わされている。前後方向中央の中ローラ23bは、シリコンオイル槽2の底面部2bに固定されて配設された上下方向に延びる軸23b1を中心に回動可能とされている。そして、下部分に固定されたピニオンギア23b2が後ローラ23aのピニオンギア23a2に噛み合わされている。これによって、ラックギア24が右方向に移動すると後ローラ23aは、
図3において軸23a1を中心に反時計回りに回動し、それに伴って前ローラ23cは、軸23c1を中心に時計回りに回動し、中ローラ23bは、軸23b1を中心に時計回りに回動する。ラックギア24が左方向に移動すると、後ローラ23aは、
図3において軸23a1を中心に時計回りに回動し、それに伴って前ローラ23cは、軸23c1を中心に反時計回りに回動し、中ローラ23bは、軸23b1を中心に反時計回りに回動する。
図3において、軸23a1、軸23b1、軸23c1で形作られる三角形の中央部分にヘッドレスト5の左側のステー52が配置されたとき、ステー52の外径面に後ローラ23a、中ローラ23b、前ローラ23cの外径部分は圧接するように、軸23a1、軸23b1、軸23c1は配置されている。また、後ローラ23aの外径部分に対し、中ローラ23bと前ローラ23cの外径部分は、圧接するように軸23a1、軸23b1、軸23c1は配置されている。ラックギア24は、左側と右側の後ローラ23aのピニオンギア23a2に噛み合わされた状態で底面部2bと平行に左右方向に移動可能に配設されるとともに、ラックギア24の右端部とシリコンオイル槽2の右壁面の内側との間に配設された引張コイルばね24aによって、右方向に付勢されている。一端部がラックギア24の左端部に固定された紐状体24bは、前後方向に延びる軸を中心にシリコンオイル槽2に回動可能に取付けられた定滑車24cに下側から掛け回されてその他端部が昇降部材3の下面に固定されている。これによって、昇降部材3を下降させるとラックギア24が引張コイルばね24aの付勢力で右方に移動し、各ローラ23を回動させる。このとき、各ローラ23は、の外径部分は、シリコンオイルSを含んだ状態でステー52の外径面に圧着して回動するのでステー52の下側部分の外径面にシリコンオイルSを塗布することができる。ここで、後ローラ23aが、特許請求の範囲の「起動ローラ」に相当し、中ローラ23bと前ローラ23cが、それぞれ特許請求の範囲の「起動ローラ以外のローラ」に相当する。
【0023】
図1に示すように、昇降部材3には、左右方向の中央部にシリコンオイル槽2に取付けられた蓋体21の左右一対のステー通し孔21b1に対応する位置にヘッドレスト5の左右一対のステー52を通してヘッドレスト5を昇降部材3上に保持する左右一対のステー孔31が形成されている。また、昇降部材3には、左端部側と右端部側に棒状部材41を通す左右一対の棒状部材孔32が形成されている。さらに、昇降部材3には、下面におけるポンプ22のヘッド部22aに対応する位置に下方に向かって延びる円柱状のポンプ押圧部33が配設されている。ポンプ押圧部33の下端面の昇降部材3の下面からの上下方向の寸法は、昇降部材3が下降してその下面が蓋体21の上面に当接したとき、ポンプ押圧部33の下端面がポンプ22のヘッド部22aを押圧して吐出口22cから所定量のシリコンオイルSを吐出できる寸法とされている。
【0024】
図1に示すように、連結部材4は、左右一対の円柱状の棒状部材41と、棒状部材41と同一軸で配設された左右一対の圧縮コイルばね42と、を有する。棒状部材41は、その下端部がシリコンオイル槽2の左右の側面部から外側方向に向かって延びるように配設されたブラケット43に上方に延びるように立設されている。各棒状部材41は、同軸状に各圧縮コイルばね42を配置した状態で、雄ねじの切られた上端部側が、昇降部材3の各棒状部材孔32に通されてナット44を締めることで圧縮コイルばね42を若干圧縮した状態で配設されている。この状態で、昇降部材3は上方に向けて付勢された状態で所定の高さに位置決めされている。
【0025】
以上のように構成される本実施形態は、以下のように作動する。まず、
図1に示すように、昇降部材3の各ステー孔31にヘッドレスト5の各ステー52を上方から下端部53の側から挿入して本体部51の下面を昇降部材3の上面に当接させる。この状態でヘッドレスト5の本体部51を下方向に向けて押さえ込んでいくとステー52は、下端部53の側から蓋体21におけるゴム板21bの各ステー通し孔21b1の中に各ステー通し孔21b1を押し拡げながら侵入していく。そして、
図3に示すように、ステー52は、下端部53の側から後ローラ23a、中ローラ23b、前ローラ23cの間の部分に侵入していき、昇降部材3の下面が蓋体21の上面に当接すると下降を停止して
図4に実線で示す状態となる。このとき、ラックギア24は、紐状体24bによる左方向への牽引が徐々に解除させていくに伴って、引張コイルばね24aの付勢力によって徐々に右方向に移動していく。ラックギア24の右方向への移動に伴って各後ローラ23aが
図3において各軸23a1を中心に反時計回りに回動し、それに連動して各中ローラ23bが各軸23b1を中心に時計回りに回動し、各前ローラ23cが各軸23c1を中心に時計回りに回動する。このとき、各ローラ23にはシリコンオイルSがしみ込んでいるので、各ローラ23が各ステー52の外径面に圧接して回動することにより、各ステー52の外径面にシリコンオイルSが塗布される。同時に、ポンプ22のヘッド部22aが昇降部材3のポンプ押圧部33の下端面によって押圧されることによって、ポンプ22内に貯留されているシリコンオイルSが各前ローラ23cに横供給孔21cと各縦供給孔21dを通って供給される。次に、ヘッドレスト5の本体部51を下方向に向けて押さえ込む力を除去すると、昇降部材3は、圧縮コイルばね42の働きによって上昇し
図1に示す状態(
図4において二点鎖線で示す状態)に復帰する。このとき、ラックギア24は、紐状体24bによる左方向への牽引によって、引張コイルばね24aの付勢力に抗して徐々に左方向に移動していく。ラックギア24の左方向への移動に伴って各後ローラ23aが
図3において各軸23a1を中心に時計回りに回動し、それに連動して各中ローラ23bが各軸23b1を中心に反時計回りに回動し、各前ローラ23cが各軸23c1を中心に反時計回りに回動する。このとき、各ローラ23にはシリコンオイルSがしみ込んでいるので、各ローラ23が各ステー52の外径面に圧接して回動することにより、各ステー52の外径面にシリコンオイルSが塗布される。そして、各ステー52が、ゴム板21bの各ステー通し孔21b1から上方に引き抜かれるとき、各ステー通し孔21b1の周りのゴム板21bは各ステー52の外径面に対し圧接状態となっているので、各ステー52の外径面に付着した余分なシリコンオイルSが削ぎ落とされてシリコンオイル槽2の中に回収される。昇降部材3の昇降による各ローラ23の回動によって、各前ローラ23cと各後ローラ23aは外径面が圧接状態で回動するので各前ローラ23cにしみ込んだシリコンオイルSは、各後ローラ23aにも伝えられる。さらに、各後ローラ23aと各中ローラ23bは外径面が圧接状態で回動するので各後ローラ23aにしみ込んだシリコンオイルSは、各中ローラ23bにも伝えられる。そして、各後ローラ23a、各中ローラ23b、各前ローラ23cとも昇降部材3の昇降の繰り返しによってシリコンオイルSがしみ込んだ状態に維持される。
【0026】
以上のように構成される本実施形態は、以下のように作用効果を奏する。昇降部材3に保持されたヘッドレスト5がシリコンオイル槽2に対して下降し、一対のステー52の下端部53の側の部分が、ゴム板21bの各ステー通し孔21b1を押し拡げながらシリコンオイル槽2の内部に挿入されると、シリコンオイルSを含んだ複数のローラ23が一対のステー52のいずれかに接触して回動する。これによって、一対のステー52の下端部53の側の部分の外径面にシリコンオイルSが塗布される。そして、昇降部材3に保持されたヘッドレスト5を上方に移動させると一対のステー52の下端部53の側の部分がそれぞれゴム板21bの各ステー通し孔21b1の周りのゴム板21bによって押圧された状態で引き抜かれるので余分に付着したシリコンオイルSがあっても削ぎ落されて適量なものとなる。これによって、シリコンオイル塗布装置1は、昇降部材3に保持されたヘッドレスト5をシリコンオイル槽2に対して昇降させるという簡便な操作で必要量のシリコンオイルSを一対のステー52の下端部53の側の部分に塗布することを可能とする。
【0027】
また、昇降部材3の昇降動作によって作動するポンプ22によってシリコンオイル槽2の内部に貯留されたシリコンオイルSが、各前ローラ23cに供給されるので、シリコンオイル槽2の内部に貯留されたシリコンオイルSを手で汲み上げて各ローラ23に供給する等の手間を省くことができる。
【0028】
さらに、シリコンオイルSは、蓋体21に設けられた横供給孔21cと各縦供給孔21dを通って、各前ローラ23cに供給されるので、シリコンオイルSを供給する配管等を蓋体21の外部に配設する必要がなく構造が簡潔となる。
【0029】
加えて、昇降部材3を下降させるとラックギア24が引張コイルばね24aの付勢力によって右方向に移動し、各後ローラ23aのピニオンギア23a2を回動させる。それにともなって、各中ローラ23bのピニオンギア23b2と各前ローラ23のピニオンギア23c2が回動して一対のステー52のそれぞれにシリコンオイルSを塗布する。そこから、昇降部材3を上昇させると下降の時とは反対方向に各ローラ23がすべて回動して一対のステー52のそれぞれにシリコンオイルSを塗布する。このように、動力を使用しない簡潔な機構で一対のステー52の下端部53の側の部分の外径面にシリコンオイルSを塗布することが可能となる。
【0030】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0031】
1.上記実施形態においては、昇降部材3の下降を昇降部材3の下面が、蓋体21の上面に当接したときとして構成した。しかし、これに限らず、昇降部材3の下面と蓋体21の上面との間にスペーサを配置して昇降部材3の下降距離を調整することもできる。
【0032】
2.上記実施形態においては、ヘッドレスト5を一つずつ昇降部材3の各ステー孔31に各ステー52を挿入してセットするように構成した。しかし、これに限らず、各ステー孔31を長孔として長孔の延びる方向に傾斜する斜面にヘッドレスト5をステー52を下方にして並べて配置し、重力作用で各ステー孔31にヘッドレスト5の各ステー52が順次挿入されていくように構成して、ヘッドレスト5の昇降部材3への取り付けを容易にすることもできる。
【符号の説明】
【0033】
1 シリコンオイル塗布装置
2 シリコンオイル槽
2a 開口部
3 昇降部材
4 連結部材
5 ヘッドレスト
21 蓋体
21b ゴム板(圧接部材)
21b1 ステー通し孔
21c 横供給孔(オイル供給路)
21c1 注入口(一端部)
21d 縦供給孔(オイル供給路)
22d フレキシブルホース
22 ポンプ
22c 吐出口(オイル吐出口)
23 ローラ
23a 後ローラ(起動ローラ)
23a1 軸
23a2 ピニオンギア
23b 中ローラ
23b1 軸
23b2 ピニオンギア
23c 前ローラ
23c1 軸
23c2 ピニオンギア
24 ラックギア
24a 引張コイルばね
24b 紐状体
51 本体部
52 ステー
53 下端部(先端部)
S シリコンオイル