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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077781
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】液晶ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20240603BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240603BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240603BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20240603BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20240603BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C08L101/12
C08K3/013
C08K3/22
C08K7/00
C08L67/04
C08L79/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189927
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】林 元基
(72)【発明者】
【氏名】深澤 正寛
(72)【発明者】
【氏名】荒武 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 千晶
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 詩織
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002AA031
4J002CF181
4J002CM022
4J002DE137
4J002DE146
4J002FA016
4J002FA042
4J002FA047
4J002FD012
4J002FD016
4J002FD017
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】本発明は、液晶ポリマーが有する機械強度、耐熱性を維持しつつ、熱伝導性が向上した液晶ポリマー組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、液晶ポリマー100質量部、板状アルミナ系フィラー30~150質量部および酸化チタン3~70質量部を含有する、液晶ポリマー組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマー100質量部、板状アルミナ系フィラー30~150質量部および酸化チタン3~70質量部を含有する、液晶ポリマー組成物。
【請求項2】
液晶ポリマーは、
式[I]~[IV]:
【化1】
[式中、
p、q、rおよびsは、全繰返し単位中の各繰返し単位のモル%を示し、以下の条件を満たす:
60≦p≦80、
0.1≦q≦10、
10≦r≦20、および
10≦s≦20]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリマー(A)である、請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項3】
液晶ポリマーは、
式(V)~(IX):
【化2】
[式中、
t、u、v、wおよびxは、全繰返し単位中の各繰返し単位のモル%を示し、以下の条件を満たす:
25≦t≦45、
2≦u≦10、
10≦v≦20、
10≦w≦20、および
20≦x≦40]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリマー(B)である、請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項4】
液晶ポリマーは、
式(I)~(IV)
【化3】
[式中、
p、q、rおよびsは、全繰返し単位中の各繰返し単位のモル%を示し、以下の条件を満たす:
60≦p≦80、
0.1≦q≦10、
10≦r≦20、および
10≦s≦20]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリマー(A)と、
式(V)~(IX):
【化4】
[式中、
t、u、v、wおよびxは、全繰返し単位中の各繰返し単位のモル%を示し、以下の条件を満たす:
25≦t≦45、
2≦u≦10、
10≦v≦20、
10≦w≦20、および
20≦x≦40]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリマー(B)と、
を含有する、請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項5】
液晶ポリマー(A)と液晶ポリマー(B)の質量比[A/B]は、97/3~3/97である、請求項4に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項6】
板状アルミナ系フィラーは、板状ベーマイトである、請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項7】
板状ベーマイトの平均粒子径は、0.1~15μmである、請求項6に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項8】
酸化チタンの平均粒子径は、0.1~10μmである、請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項9】
酸化チタンの長軸方向の平均長さ(L)と短軸方向の平均長さ(D)との比(L/D)は、3以上である、請求項1に記載の液晶ポリマー。
【請求項10】
成形時の溶融樹脂組成物の流れ方向における熱伝導率は、2.3W/m・K以上である、請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項11】
ASTM D790に準拠して測定した曲げ強度は90MPa以上である、請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項12】
さらに、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維を含有する、請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物から構成される成形品。
【請求項14】
成形品は、コネクタ、スイッチ、リレー、コンデンサ、コイル、トランスおよびアンテナからなる群から選択される1種を構成する部品である、請求項13に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリマーが有する機械強度、耐熱性を維持しつつ、熱伝導性が向上した液晶ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子部品の小型化および高性能化に伴い、発熱量が増大し、性能が低下することが問題となっている。このような性能低下を抑制するため、電気・電子部品には、放熱性、すなわち高い熱伝導性が求められている。
【0003】
一方、液晶ポリマーは、耐熱性、剛性等の機械物性、耐薬品性、寸法精度等に優れているため、成形品用途のみならず、繊維やフィルムといった各種用途にその使用が拡大しつつある。特にパーソナル・コンピューターや携帯電話等の情報・通信分野においては、部品の高集積度化、小型化、薄肉化、低背化等が急速に進んでおり、液晶ポリマーの優れた成形性を活かして、その使用量が大幅に増大している。
【0004】
したがって、液晶ポリマーにおいても熱伝導性の向上が求められており、種々の検討がなされている。
【0005】
特許文献1には、液晶ポリマーに高熱伝導フィラーを配合した組成物が記載されているが、この組成物には、機械強度が低下するという課題があった。
【0006】
特許文献2には、液晶ポリマーに特定粒子径の板状フィラーと粉粒状フィラーを添加して熱伝導率を向上させる方法が記載されているが、この方法では、多量のタルクや窒化ホウ素を添加しているため、機械的強度が著しく低下し、耐熱性が損なわれ易くなるという問題があった。
【0007】
したがって、液晶ポリマーが有する機械強度、耐熱性を維持しつつ、熱伝導性が向上した液晶ポリマー組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62-100577号公報
【特許文献2】特開2009-127026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、液晶ポリマーが有する機械強度、耐熱性を維持しつつ、熱伝導性が向上した液晶ポリマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、液晶ポリマーに、特定のフィラーを特定の割合で、複数配合することにより、液晶ポリマーが有する特性を維持しつつ、熱伝導性が向上した液晶ポリマー組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕液晶ポリマー100質量部、板状アルミナ系フィラー30~150質量部および酸化チタン3~70質量部を含有する、液晶ポリマー組成物。
〔2〕液晶ポリマーは、
式[I]~[IV]:
【化1】
[式中、
p、q、rおよびsは、全繰返し単位中の各繰返し単位のモル%を示し、以下の条件を満たす:
60≦p≦80、
0.1≦q≦10、
10≦r≦20、および
10≦s≦20]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリマー(A)である、〔1〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔3〕液晶ポリマーは、
式(V)~(IX):
【化2】
[式中、
t、u、v、wおよびxは、全繰返し単位中の各繰返し単位のモル%を示し、以下の条件を満たす:
25≦t≦45、
2≦u≦10、
10≦v≦20、
10≦w≦20、および
20≦x≦40]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリマー(B)である、〔1〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔4〕液晶ポリマーは、
式(I)~(IV)
【化3】
[式中、
p、q、rおよびsは、全繰返し単位中の各繰返し単位のモル%を示し、以下の条件を満たす:
60≦p≦80、
0.1≦q≦10、
10≦r≦20、および
10≦s≦20]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリマー(A)と、
式(V)~(IX):
【化4】
[式中、
t、u、v、wおよびxは、全繰返し単位中の各繰返し単位のモル%を示し、以下の条件を満たす:
25≦t≦45、
2≦u≦10、
10≦v≦20、
10≦w≦20、および
20≦x≦40]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリマー(B)と、
を含有する、〔1〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔5〕液晶ポリマー(A)と液晶ポリマー(B)の質量比[A/B]は、97/3~3/97である、〔4〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔6〕板状アルミナ系フィラーは、板状ベーマイトである、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔7〕板状ベーマイトの平均粒子径は、0.1~15μmである、〔6〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔8〕酸化チタンの平均粒子径は、0.1~10μmである、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔9〕酸化チタンの長軸方向の平均長さ(L)と短軸方向の平均長さ(D)との比(L/D)は、3以上である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔10〕成形時の溶融樹脂組成物の流れ方向における熱伝導率は、2.5W/m・K以上である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔11〕ASTM D790に準拠して測定した曲げ強度は90MPa以上である、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔12〕さらに、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維を含有する、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔13〕〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物から構成される成形品。
〔14〕成形品は、コネクタ、スイッチ、リレー、コンデンサ、コイル、トランスおよびアンテナからなる群から選択される1種を構成する部品である、〔13〕に記載の成形品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液晶ポリマー組成物は、液晶ポリマーが有する機械強度、耐熱性を維持しつつ、向上した熱伝導性を備えるため、例えば、電気・電子部品等の発熱が課題となる様々な用途に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液晶ポリマー組成物に使用する液晶ポリマー(以下、LCPとも称する)は、異方性溶融相を形成するポリエステルまたはポリエステルアミドであり、当該技術分野においてサーモトロピック液晶ポリエステルまたはサーモトロピック液晶ポリエステルアミドと呼ばれるものであれば特に限定されない。
【0014】
異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージにのせた試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明における液晶ポリマーは光学的に異方性を示すもの、即ち、直交偏光子の間で検査したときに光を透過させるものである。試料が光学的に異方性であると、たとえ静止状態であっても偏光は透過する。
【0015】
本発明において用いる液晶ポリマーとしては、示差走査熱量計により測定される結晶融解温度が310~360℃であるものが好ましく、315~345℃であるものがより好ましく、320~343℃であるものがさらに好ましい。
【0016】
液晶ポリマーの結晶融解温度が310℃を下回ると、耐熱性が低下する傾向があり、360℃を上回ると、成形加工性が低下する傾向があるため好ましくない。
【0017】
尚、本明細書および特許請求の範囲において、「結晶融解温度」とは、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、以下DSCと略す)によって、昇温速度20℃/分で測定した際の結晶融解温度ピーク温度から求めたものである。より具体的には、液晶ポリマーの試料を、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より20~50℃高い温度で10分間保持し、次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を液晶ポリマーの結晶融解温度とする。測定機器としては、例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製Exstar6000等を用いることができる。
【0018】
本発明における液晶ポリマーの構成単位を構成する重合性単量体としては、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。このような重合性単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上の重合性単量体を組み合わせてもよい。好適には、少なくとも1種のヒドロキシ基およびカルボキシル基を有する重合性単量体が用いられる。
【0019】
液晶ポリマーの構成単位を構成する重合性単量体は、前記化合物の1種以上が結合してなるオリゴマー、つまり1種以上の前記化合物から構成されるオリゴマーであってもよい。
【0020】
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、7―ヒドロキシ―2―ナフトエ酸、3―ヒドロキシ―2―ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度ならびに融点を調節し易いという観点から、4-ヒドロキシ安息香酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましい。
【0021】
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、3,4’-ジカルボキシビフェニルおよび4,4”-ジカルボキシターフェニル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性を効果的に高められる観点から、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく、テレフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0022】
芳香族ジオールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテルおよび2,2’-ジヒドロキシビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、重合時の反応性に優れる観点から、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよび2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく、ハイドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよび2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上の化合物がより好ましい。
【0023】
芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、4-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、6-アミノ-2-ナフトエ酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0024】
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4-アミノフェノール、N-メチル-4-アミノフェノール、3-アミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、4-アミノ-1-ナフトール、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルエーテル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルメタン、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルスルフィドおよび2,2’-ジアミノビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度のバランスをとりやすい観点から、4-アミノフェノールが好ましい。
【0025】
芳香族ジアミンの具体例としては、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのアミド形成性誘導体が挙げられる。
【0026】
脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ならびにそれらのアシル化物が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの脂肪族ジオールを含有するポリマーを、前記の芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などと反応させてもよい。
【0027】
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸およびヘキサヒドロテレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、重合時の反応性に優れる観点から、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸が好ましい。
【0028】
本発明における液晶ポリマーの構成単位を形成する重合性単量体は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の共重合成分として、ジヒドロキシテレフタル酸、4-ヒドロキシイソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、トリメリット酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸またはこれらのアルキル、アルコキシもしくはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体を含んでいてよい。これらの重合性単量体の使用量は、液晶ポリマーを構成する全構成単位に対して10モル%以下となるような量であるのが好ましい。
【0029】
本発明において液晶ポリマーは、本発明の目的を損なわない範囲で、チオエステル結合を含むものであってもよい。このような結合を与える重合性単量体としては、メルカプト芳香族カルボン酸、および芳香族ジチオールおよびヒドロキシ芳香族チオールなどが挙げられる。これらの重合性単量体の含有量は、液晶ポリマーを構成する全構成単位に対して10モル%以下となるような量であるのが好ましい。
【0030】
これらの繰返し単位を組み合わせたポリマーは、単量体の構成や組成比、ポリマー中での各繰返し単位のシークエンス分布によって異方性溶融相を形成するものと異方性溶融相を形成しないものとが存在するが、本発明に用いる液晶ポリマーは異方性溶融相を形成するものに限られる。
【0031】
本発明に用いる液晶ポリマーの構成単位を形成する重合性単量体の組み合わせの具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。
1)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、
2)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
3)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
4)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル/ハイドロキノン、
5)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/ハイドロキノン、
6)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン、
7)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
8)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
9)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン、
10)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
11)4-ヒドロキシ安息香酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
12)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン、
13)4-ヒドロキシ安息香酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン、
14)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン、
15)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン/4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
16)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール、
17)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール、
18)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール、
19)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル /4-アミノフェノール、
20)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/エチレングリコール、
21)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル/エチレングリコール、
22)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/エチレングリコール、
23)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル/エチレングリコール、
24)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/4,4’-ジヒドロキシビフェニル。
【0032】
本発明に使用する液晶ポリマーとしては、機械強度、耐熱性および熱伝導性に優れる点で、式(I)~(IV)で表される繰返し単位を含むもの(以下、液晶ポリマー(A)と称する)、式(V)~(IX)で表される繰返し単位を含むもの(以下、液晶ポリマー(B)と称する)および液晶ポリマー(A)と液晶ポリマー(B)を含有するものが好適に使用される。
【化5】
[式中、
p、q、rおよびsは、全繰返し単位中の各繰返し単位のモル%を示し、以下の条件を満たす:
60≦p≦80、
0.1≦q≦10、
10≦r≦20、および
10≦s≦20]
【化6】
[式中、
t、u、v、wおよびxは、全繰返し単位中の各繰返し単位のモル%を示し、以下の条件を満たす:
25≦t≦45、
2≦u≦10、
10≦v≦20、
10≦w≦20、および
20≦x≦40]
【0033】
液晶ポリマー(A)と液晶ポリマー(B)を含有する液晶ポリマーを採用する場合、その質量比[A/B]は、97/3~3/97であるのが好ましく、95/5~5/95であるのがより好ましく、90/10~10/90であるのがさらに好ましい。質量比[A/B]が97/3よりも大きい場合、もしくは(A)/(B)が3/97より小さい場合は、流動性が十分に改善されないため好ましくない。
【0034】
液晶ポリマー(A)において、式(I)で表される繰返し単位の量[p]は、60~80モル%であり、好ましくは63~77モル%、より好ましくは65~75モル%である。
【0035】
液晶ポリマー(A)において、式(II)で表される繰返し単位の量[q]は、0.1~10モル%であり、好ましくは0.5~7モル%、より好ましくは1~5モル%である。
【0036】
液晶ポリマー(A)において、式(III)および式(IV)で表される繰返し単位の量[r]および[s]は、いずれも10~20モル%であり、好ましくは11~19モル%、より好ましくは12~18モル%である。式(III)および式(IV)で表される繰返し単位は、実質的に等モルであるのがさらに好ましい。
【0037】
液晶ポリマー(A)において、繰返し単位の組成比の合計[p+q+r+s]が100モル%であることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、他の繰返し単位をさらに含有してもよい。
【0038】
液晶ポリマー(B)において、式(V)で表される繰返し単位の量[t]は、25~45モル%であり、好ましくは28~42モル%、より好ましくは30~40モル%である。
【0039】
液晶ポリマー(B)において、式(VI)で表される繰返し単位の量[u]は、2~10モル%であり、好ましくは2.5~8モル%、より好ましくは3~7モル%である。
【0040】
液晶ポリマー(B)において、式(VII)で表される繰返し単位の量[v]は、10~20モル%であり、好ましくは11~19モル%、より好ましくは12~18モル%である。
【0041】
液晶ポリマー(B)において、式(VIIi)で表される繰返し単位の量[w]は、10~20モル%であり、好ましくは11~19モル%、より好ましくは12~18モル%である。
【0042】
液晶ポリマー(B)において、式(IX)で表される繰返し単位の量[x]は、20~40モル%であり、好ましくは23~37モル%、より好ましくは25~35モル%である。
【0043】
液晶ポリマー(B)において、繰返し単位の組成比の合計[t+u+v+w+x]が100モル%であることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、他の繰返し単位をさらに含有してもよい。
【0044】
以下、本発明に用いる液晶ポリマーの製造方法について説明する。
【0045】
本発明に用いる液晶ポリマーの製造方法に特に制限はなく、重合性単量体を、エステル結合またはアミド結合を形成させる公知の重縮合方法、たとえば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などに供することにより液晶ポリマーを得ることができる。
【0046】
溶融アシドリシス法は、本発明の液晶ポリマー組成物に用いる液晶ポリマーを製造するのに好ましい方法である。この方法は、最初に重合性単量体を加熱して反応物質の溶融溶液を形成し、次いで重縮合反応を続けて溶融ポリマーを得るものである。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(たとえば酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。
【0047】
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で重合性単量体を反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
【0048】
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法のいずれの場合においても、液晶ポリマーを製造する際に使用される重合性単量体は、常温において、ヒドロキシル基および/またはアミノ基をアシル化した変性形態、すなわち低級アシル化物として反応に供することもできる。
【0049】
低級アシル基は炭素原子数2~5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。本発明の好ましい実施態様において、前記重合性単量体のアセチル化物を反応に供する。
【0050】
重合性単量体の低級アシル化物は、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、液晶ポリマーの製造時に重合性単量体に無水酢酸等のアシル化剤を加えて反応系内で生成せしめることもできる。
【0051】
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法のいずれの場合においても、重縮合反応は、温度150~400℃、好ましくは250~370℃で、常圧および/または減圧下で行うのがよく、必要に応じて触媒を用いてもよい。
【0052】
触媒の具体例としては、ジアルキルスズオキシド(例えばジブチルスズオキシド)、ジアリールスズオキシドなどの有機スズ化合物;二酸化チタン;三酸化アンチモン;アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物;カルボン酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム);ルイス酸(例えば三フッ化硼素)、ハロゲン化水素(例えば塩化水素)などの気体状酸触媒などが挙げられる。
【0053】
触媒を使用する場合、該触媒の量は重合性単量体全量に対し、好ましくは1~1000ppm、より好ましくは2~100ppmである。
【0054】
このような重縮合反応によって得られた液晶ポリマーは、通常、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工され、他の成分と溶融混練に供される。
【0055】
ペレット状、フレーク状、または粉末状の液晶ポリマーは、分子量を高めて耐熱性を向上させる目的で、減圧下、真空下または不活性ガスである窒素やヘリウムなどの雰囲気下において、実質的に固相状態で熱処理を行ってもよい。
【0056】
液晶ポリマーとして2種以上の液晶ポリマーを使用する場合、上記のようにして得られた、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工された各液晶ポリマーを、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出し機などを用いて溶融混練し、液晶ポリマーブレンドとして使用してよい。
【0057】
本発明の液晶ポリマー組成物は、熱伝導性向上および機械強度ならびにコンパウンド性の観点から、上記のようにして得られた液晶ポリマーに、板状アルミナ系フィラーおよび酸化チタンを含有する。
【0058】
板状アルミナ系フィラーとしては、板状ベーマイト、板状アルミナ、板状水酸化アルミニウム等が挙げられる。その中でも成形機のシリンダーや金型の摩耗が抑えられる点から、さらにはコンパウンド性の観点から、板状ベーマイトが好ましい。板状アルミナ系フィラーは2種以上を併用してもよい。
【0059】
本発明において板状ベーマイトを使用する場合、板状ベーマイトの種類は特に限定されず、水酸化アルミニウムを水熱処理して得られたもの、アルミニウム塩等から合成して得られたもの、遷移アルミナを水熱処理して得られたもの、天然板状ベーマイトなど、いずれの板状ベーマイトであってもよい。また、板状ベーマイトは一般的に1~3個程度の水分子が付加されたものが知られているが、入手性等を考慮し、一水和物が好ましい。
【0060】
板状アルミナ系フィラーの平均粒子径は、0.1~7μmが好ましく、0.5~6μmがより好ましく、1~5μmがさらに好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法で測定した体積基準の中央値(メディアン径)をいう。
【0061】
板状アルミナ系フィラーは、粒子径と厚さのアスペクト比(平均粒子径/平均厚さ)が、1~15であるものが好ましく、2~12であるものがより好ましく、3~10であるものがさらに好ましい。
【0062】
上記板状アルミナ系フィラーは、公知の表面処理剤によって処理して用いてもよい。
【0063】
本発明の液晶ポリマー組成物において、板状アルミナ系フィラーの含有量は、液晶ポリマー100質量部に対して、30~150質量部であり、50~140質量部が好ましく、70~130質量部がより好ましく、90~120質量部がさらに好ましい。
【0064】
本発明に使用する酸化チタンの結晶構造は、特に限定されず、ルチル型、アナターゼ型、ブルサイト型等のいずれであってもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
酸化チタンの平均粒子径は、0.1~10μmであるのが好ましく、より好ましくは0.15~9μm、さらに好ましくは0.2~8μm、特に好ましくは0.25~5μm、最も好ましくは0.3~4.5μmである。酸化チタンの平均粒子径が0.1μmを下回ると、ハンドリングが悪化する傾向がある。
【0066】
酸化チタンとしては、短辺の平均が0.1~1μm、且つ長辺の平均が1.5~5μmであるものが好ましく、短辺の平均が0.15~0.8μm、且つ長辺の平均が1.7~4.8μmであるものがより好ましく、短辺の平均が0.2~0.6μm、且つ長辺の平均が1.8~4.5μmであるものがさらに好ましい。
【0067】
酸化チタンの長軸方向の平均長さ(L)と短軸方向の平均長さ(D)との比(L/D)は、3以上であるのが好ましく、3.2以上であるのがより好ましく、3.5以上であるのがさらに好ましい。酸化チタンのL/Dは、通常15以下であることが好ましい。
【0068】
酸化チタンの形状としては、棒状、板状、鱗片状、針状、球状、立方体状などが例示されるが、機械強度の観点から、棒状酸化チタンが好ましい。
【0069】
本発明に使用する酸化チタンは、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミ系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0070】
本発明の液晶ポリマー組成物におけて、酸化チタンの含有量は、液晶ポリマー100質量部に対して、3~70質量部であり、5~68質量部が好ましく、7~67質量部がより好ましく、10~65質量部がさらに好ましい。酸化チタンの含有量が3質量部未満であると機械強度やコンパウンド性が低下する傾向があり、70質量部を超えると流動性やコンパウンド性が不十分となるうえに、成形機のシリンダーや金型の磨耗が大きくなる。
【0071】
本発明の液晶ポリマー組成物には、さらに、繊維状充填材を含有させてもよい。
【0072】
本発明の液晶ポリマー組成物に配合してもよい、繊維状充填材としては、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、シリカアルミナ繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズイミダゾール繊維などの繊維状充填材が挙げられる。これらの中でも液晶ポリマー組成物の機械的特性および耐熱性の向上の観点から、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、炭素繊維が好ましく、絶縁性の観点から、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維がより好ましい。
【0073】
本発明の液晶ポリマー組成物において、繊維状充填材の含有量は、例えば、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維を配合する場合、液晶ポリマー100質量部に対して、3~25質量部が好ましく、5~20質量部がより好ましく、7~15質量部がさらに好ましい。
【0074】
繊維状充填材の平均繊維長は、例えば、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維であれば、0.1~10mmであるのが好ましく、より好ましくは0.2~8mm、さらに好ましくは0.3~7mm、特に好ましくは0.5~6mmである。ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維の平均繊維長が0.1mm未満である場合または10mmを上回る場合、ハンドリングが悪化する傾向がある。
【0075】
本発明の液晶ポリマー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でさらに、無機充填材および/または有機充填材を配合してもよい。
【0076】
本発明の液晶ポリマー組成物に配合してもよい、無機充填材および/または有機充填材としては、たとえばタルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイト、クレイ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭酸カルシウム、および硫酸バリウムからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0077】
本発明の液晶ポリマー組成物における、無機充填材および/または有機充填材の配合量は、液晶ポリマー100質量部に対して、0.1~200質量部、好ましくは1~100質量部であるのがよい。
【0078】
前記の無機充填材および/または有機充填材の配合量が200質量部を超える場合には、成形加工性が低下する傾向や、成形機のシリンダーや金型の磨耗が大きくなる傾向がある。
【0079】
本発明の液晶ポリマー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でさらに、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩(ここで高級脂肪酸とは炭素原子数10~25のものをいう)、ポリシロキサン、フッ素樹脂などの離型改良剤;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などから選ばれる1種または2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0080】
高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤などの外部滑剤効果を有するものについては、本発明の液晶ポリマー組成物を成形するに際して、予め、ペレットの表面に付着せしめてもよい。
【0081】
また、本発明の液晶ポリマー組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに、本発明に用いる液晶ポリマーと同様の温度域で成形加工可能である他の樹脂成分を配合してもよい。他の樹脂成分としては、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ならびにポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。他の樹脂成分は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。他の樹脂成分の配合量は特に限定的ではなく、液晶ポリマー組成物の用途や目的に応じて適宜定めればよい。典型的には、本発明の液晶ポリマー100質量部に対して、他の樹脂の合計配合量が0.1~100質量部、特に0.1~80質量部となる範囲で添加される。
【0082】
液晶ポリマーと、板状アルミナ系フィラーおよび酸化チタンは、所望により各種添加剤や他の樹脂成分などを組み合わせ、所定の組成で、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出し機などを用いて溶融混練することによって、本発明の液晶ポリマー組成物とすることができる。
【0083】
本発明の液晶ポリマー組成物は、これから構成される成形品について、レーザーフラッシュ法で測定した成形時の溶融樹脂組成物が金型に充填される際の流れ方向の熱伝導率が、好ましくは2.3W/m・K以上、より好ましくは2.4W/m・K以上、さらに好ましくは2.5~3.5W/m・Kであり、優れた熱伝導率を有する。
【0084】
本発明の液晶ポリマー組成物は、厚み3.2mmのASTM4号曲げ試験片を用いた曲げ試験において、曲げ強度は好ましくは90MPa以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは115MPa以上である。上記曲げ強度の上限値は、特に限定されないが、例えば200MPaである。
【0085】
本発明の液晶ポリマー組成物の曲げ弾性率は5~20GPaであるのが好ましく、より好ましくは7~18GPaであり、さらに好ましくは8~15GPaである。
【0086】
本発明の液晶ポリマー組成物は、後述する方法で測定される溶融粘度が、好ましくは20~120Pa・s、より好ましくは25~110Pa・s、さらに好ましくは30~100Pa・sである。
【0087】
本発明の液晶ポリマー組成物は、後述する方法で測定される荷重たわみ温度(荷重0.46MPa)が、好ましくは220℃以上、より好ましくは230℃以上、さらに好ましくは240℃以上であって、耐熱性が優れるという利点を有する。
【0088】
本発明の液晶ポリマー組成物は、曲げ強度等の機械的特性に優れるとともに、熱伝導率に優れるため、アンテナ、コネクタ、基板などの高周波用途で用いられる電子部品の材料として特に好適に用いられる。
【実施例0089】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中の熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率、溶融粘度、荷重たわみ温度(耐熱性)、結晶融解温度およびコンパウンド性の測定、評価は以下に記載の方法で行った。
【0090】
〈熱伝導率〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000-110)を用いて、シリンダー設定温度350℃、金型温度70℃で、12.7mm×127mm×3.2mm厚みのバーフロー試験片(サイドゲート、ゲート口125mm×0.5mm)を作製し、長軸方向に垂直の線[溶融樹脂組成物が金型に充填される際の流れ方向(MD)]をもってゲート側から切り出し、10mm×10mm×3.2mm厚みの短冊状曲げ試験片を得た。
この短冊状曲げ試験片を切削し、溶融樹脂組成物が金型に充填される際の流れ方向(MD)が上面になるように積層し、10mm×10mm×3mm厚みの平板を得た。この平板の10mm×10mm面の表面にレーザー光吸収用スプレ(ファインケミカルジャパン(株)製、ブラックガードスプレーFC-153)を塗布したものを熱伝導率評価用サンプルとして、レーザーフラッシュ法により熱拡散率を測定した(Netzsch社製、XeフラッシュアナライザーLFA467HyperFlash)。
比熱は示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製Exstar6000)、比重は電子比重計(ミラージュ貿易株式会社 SD-200L)により測定した。
熱伝導率は、熱拡散率と比熱と比重の積から求めた。
【0091】
〈曲げ強度、曲げ弾性率〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000-110)を用いて、結晶融解温度+20~40℃のシリンダー温度、金型温度70℃で射出成形し、短冊状曲げ試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を作製した。曲げ試験は、3点曲げ試験をINSTRON5567(インストロンジャパンカンパニイリミテッド社製万能試験機)を用いて、試験速度1.3mm/min、スパン間距離50mmの条件で、ASTM D790に準拠して測定した。
【0092】
〈溶融粘度〉
溶融粘度測定装置(東洋精機(株)製キャピログラフ1D)により、1.0mmφ×10mmのキャピラリーを用いて、320℃にて、せん断速度1000sec-1での値を
測定した。
【0093】
〈荷重たわみ温度(DTUL)〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000-110)を用いて、結晶融解温度+20~40℃のシリンダー温度、金型温度70℃で射出成形し、短冊状試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を作製した。これを用いてASTM D648に準拠し、荷重1.82MPa、昇温速度2℃/分で所定たわみ量(0.254mm)になる温度を測定した。
【0094】
〈コンパウンド性〉
二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α、Φ32mm)を用いて、シリンダー温度360℃、回転数350rpm、吐出量35kg/hで溶融混練した後、ペレタイズすることで、液晶性樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットについて、以下の評価基準に基づいてコンパウンド性を評価した。ここで、溶融混錬の安定性は、吐出量の安定性、ペレット形状の均一性を指標として判断した。
〇:溶融混練が安定し、液晶性樹脂ペレットの収率が80%以上であったもの。
△:溶融混練が安定せず、液晶性樹脂ペレットの収率が40%以上、80%未満であったもの。
×:溶融混練が安定せず、液晶性樹脂ペレットの収率が40%未満であったもの。
【0095】
〈結晶融解温度〉
示差走査熱量計としてセイコーインスツルメンツ株式会社製Exstar6000を用いて、試料を室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)を測定した後、Tm1より50℃高い温度で10分間保持する。次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却し、さらに再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を結晶融解温度(Tm)とした。
【0096】
以下、実施例および比較例において下記の略号は以下の化合物を表す。
〔液晶ポリマーモノマー〕
POB:パラヒドロキシ安息香酸
BON6:6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
BP:4,4-ジヒドロキシビフェニル
HQ:ハイドロキノン
TPA:テレフタル酸
NDA:2,6-ナフタレンジカルボン酸
【0097】
[合成例1(LCP-1:液晶ポリマー(A))]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB、BON6、HQおよびNDAを表1に示す組成比にて、総量6.5molとなるように仕込み、さらに全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0098】
【表1】

【0099】
窒素ガス雰囲気下に室温~150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去しながら350℃まで7時間かけ昇温した後、80分かけ
て5mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は321℃であった。
【0100】
[合成例2(LCP-2:液晶ポリマー(B))]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB、BON6、HQ、BPおよびTPAを表2に示す組成比にて、総量6.5molとなるように仕込み、さらに全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0101】
【表2】

【0102】
窒素ガス雰囲気下に室温~150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去しながら350℃まで7時間かけ昇温した後、80分かけて5mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は335℃であった。
【0103】
以下の実施例および比較例で使用した板状アルミナ系フィラー、酸化チタンおよびその他の充填材を示す。
板状アルミナ系フィラー(ベーマイト1):河合石灰工業株式会社製、板状ベーマイト「BMT-33」(平均粒子径:3μm、アスペクト比:5)
アルミナ系フィラー(ベーマイト2):河合石灰工業株式会社製、鱗片状ベーマイト「BMF-920」(平均粒子径:9μm、アスペクト比:20)
酸化チタン:石原産業株式会社製、棒状酸化チタン「PFR404」(径:短辺0.3~0.5μm、長辺2.0~4.0μm)
ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維:日東紡績株式会社製、PBO繊維「ZYLON HM」(平均繊維長:1mm)
アルミナ:大日精化工業株式会社製、粒状アルミナ「ダイピロキサイド#7330」(平均粒子径:8μm)
酸化マグネシウム:宇部マテリアルズ株式会社製、「RF-10C-AC-45μm」(平均粒子径:10μm)
ガラス繊維:日本電気硝子株式会社製、「747H」(平均繊維長:3000μm)
【0104】
実施例1~7および比較例1~8
合成例1および2にて合成したLCP、上記板状アルミナ系フィラー、酸化チタンおよびその他の充填材を表3~5に記載の含有量(質量部)となるように配合し、2軸押出機(日本製鋼(株)製TEX-30)を用いて、350℃にて溶融混練を行い、液晶ポリマー組成物のペレットを得た。上記の方法により、熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率、溶融粘度、荷重たわみ温度(耐熱性)およびコンパウンド性を測定、評価した。結果を表3~5に示す。尚、比較例8は、スクリューへの噛み込みが悪く、連続的な溶融混練ができず、ペレットが得られなかったため、コンパウンド性以外の測定、評価が出来なかった。
【0105】
表3~5に示すように、実施例1~7の液晶ポリマー組成物はいずれも、機械的特性を維持しつつ、熱伝導性に優れたものであった。
【0106】
これに対して、比較例1~8の液晶ポリマー組成物は、熱伝導性、機械的特性、コンパウンド性のいずれかが劣るものであった。
【表3】
【表4】
【表5】