IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077790
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】タップ選択器の可動接点駆動機構
(51)【国際特許分類】
   H01F 29/04 20060101AFI20240603BHJP
   H01H 19/54 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
H01F29/04 502K
H01F29/04 502C
H01H19/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189947
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 直紀
(72)【発明者】
【氏名】石川 拓
(72)【発明者】
【氏名】片山 洋子
【テーマコード(参考)】
5G219
【Fターム(参考)】
5G219GS35
5G219HT02
5G219KS03
5G219KS13
5G219KW23
(57)【要約】
【課題】切換時の負荷を抑制し、耐久性に優れ、かつ、部品点数の増加を抑制できるタップ選択器の可動接点駆動機構を提供することである。
【解決手段】実施形態のタップ選択器の可動接点駆動機構は、可動接点組立を持つ。可動接点組立は、基準軸の周りの周方向に回転する。可動接点組立は、駆動スライダと、昇降アームと、可動接点と、を備える。駆動スライダは、前記基準軸に沿う軸方向と直交する径方向に摺動する。昇降アームは、前記駆動スライダの摺動動作に連動して回転する。可動接点は、前記昇降アームの回転動作に連動して移動する。可動接点は、前記可動接点組立の回転停止時は集電リングと固定接点との間で接点接触状態を保持する。可動接点は、前記可動接点組立の回転駆動時は前記集電リングと前記固定接点との間で接点非接触状態を保持する。前記可動接点組立の回転停止及び回転駆動の切換動作は、前記接点非接触状態で行われる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準軸の周りの周方向に回転する可動接点組立を備え、
前記可動接点組立は、
前記基準軸に沿う軸方向と直交する径方向に摺動する駆動スライダと、
前記駆動スライダの摺動動作に連動して回転する昇降アームと、
前記昇降アームの回転動作に連動して移動し、前記可動接点組立の回転停止時は集電リングと固定接点との間で接点接触状態を保持し、前記可動接点組立の回転駆動時は前記集電リングと前記固定接点との間で接点非接触状態を保持する可動接点と、を備え、
前記可動接点組立の回転停止及び回転駆動の切換動作は、前記接点非接触状態で行われる、
タップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項2】
前記集電リングは、前記基準軸と同心環状に形成されるガイド溝を有し、
前記可動接点組立は、
前記駆動スライダに対して回転可能に支持され、前記ガイド溝に案内される駆動ローラと、
前記駆動スライダ、前記昇降アーム及び前記可動接点を覆うカバーと、
前記カバーと前記可動接点との間に配置され、前記可動接点を付勢する付勢部材と、を備える、
請求項1に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項3】
前記ガイド溝は、
前記径方向の定位置で前記駆動ローラを前記周方向に案内する定常半径部と、
前記駆動ローラを前記周方向に交差する方向に案内するくびれ部と、を備え、
前記くびれ部は、前記軸方向から見て、前記定常半径部に対して前記径方向の内側に向かって湾曲する、
請求項2に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項4】
前記可動接点組立は、前記軸方向に沿って複数配置され、
前記可動接点駆動機構は、前記軸方向に沿って延び、複数の前記可動接点組立を支持することで前記周方向に回転駆動させる駆動支柱を更に備える、
請求項2又は3に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項5】
前記可動接点駆動機構は、前記基準軸と同心環状に形成され、前記固定接点を支持する固定リングを更に備え、
前記可動接点組立は、前記軸方向において前記集電リング及び前記固定リングの両側から前記可動接点組立において互いに同じ種類の構成部品を裏返して順番に積層した状態で組み立てられる、
請求項1又は2に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項6】
前記駆動スライダは、前記軸方向に互いに対向するように一対設けられ、前記集電リングと前記固定接点との間で前記接点非接触状態を保持する開極保持力が前記軸方向に作用するように構成され、
一対の前記駆動スライダは、前記開極保持力を相殺させるように互いに当接する当接部を備える、
請求項1又は2に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項7】
前記可動接点組立は、前記駆動スライダの前記当接部を前記軸方向に沿って案内するガイドホルダを更に備える、
請求項6に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項8】
前記可動接点駆動機構は、前記基準軸と同心環状に形成され、前記固定接点を支持する固定リングを更に備え、
前記可動接点組立は、
前記駆動スライダ、前記昇降アーム及び前記可動接点を覆うカバーと、
前記駆動スライダに対して回転可能に支持され、前記カバーの内側壁面に沿うように前記駆動スライダの前記径方向の摺動動作を案内する複数の水平ガイドローラと、
前記駆動スライダに対して回転可能に支持され、前記集電リング及び前記固定リングの各表面に対して転がり接触する複数の垂直ガイドローラと、を更に備える、
請求項1又は2に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項9】
前記駆動スライダは、前記軸方向から見て矩形状に形成され、
前記水平ガイドローラは、前記軸方向から見て前記駆動スライダの4隅部に1つずつ合計4つ配置され、
前記垂直ガイドローラは、前記駆動スライダにおいて前記集電リング及び前記固定リングに対向する部分に1つずつ合計2個配置される、
請求項8に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項10】
前記可動接点組立は、
前記駆動スライダ、前記昇降アーム及び前記可動接点を覆い、前記昇降アームを回転可能に支持するカバーと、
前記昇降アームに対して回転可能に支持される昇降ローラと、を備え、
前記駆動スライダは、前記駆動スライダの摺動動作により前記昇降ローラに当接することで前記昇降アームを回転させる昇降押圧部を備える、
請求項1又は2に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項11】
前記可動接点は、複数設けられ、
前記昇降アームは、
複数の前記可動接点を同時に昇降させる複数のアーム突起と、
前記可動接点を仕切る複数の仕切り部と、を備える、
請求項1又は2に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項12】
前記複数の仕切り部は、前記可動接点組立の前記周方向への回転動作時に前記可動接点が前記周方向に対して斜め方向に動作可能に、互いに間隔をあけて配置される、
請求項11に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項13】
前記昇降アームは、前記径方向に対向するように一対設けられ、
前記可動接点は、一対の前記昇降アームに挟まれるように前記可動接点の前記径方向の中央部から突出する中央凸部を備える、
請求項1又は2に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【請求項14】
前記可動接点組立は、前記可動接点を付勢する付勢部材を更に備え、
前記可動接点は、前記軸方向から見て前記中央凸部と重なる位置に、前記付勢部材が配置される中央凹部を備える、
請求項13に記載のタップ選択器の可動接点駆動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タップ選択器の可動接点駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷時タップ切換器は、変圧器運転中(負荷時)にタップを切り換える装置である。一般に、負荷時タップ切換器は、タップ選択器と、切換開閉器と、を備える。タップ選択器は、変圧器タップ巻線において運転するタップを選択する。切換開閉器は、選択されたタップに回路を切り換える。タップ選択器は、固定接点に向けて移動可能な可動接点を備える。運転するタップの選択時には、固定接点に可動接点を接続する。タップ選択器は、ゼネバドライバの回転に連動して回転するゼネバギアを備える。可動接点は、ゼネバギアの回転に連動して移動することにより、固定接点との接触と離反とを繰り返す。
例えば、タップ選択器は、ローラを用いた転がり接触形の接点(ローラ接点)を備える。ローラ接点の場合は、ローラに対する接触状態によっては、切換時の負荷及び摩耗等により、接触耐用性(耐久性)が劣ることになる。
一方、接点の開閉を行うために、専用のゼネバ駆動機構を新たに追加する場合がある。専用のゼネバ駆動機構を新たに追加する場合は、部品点数が増加し、スペース増加及びコスト増加を招くことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4231866号公報
【特許文献2】特公平6-52688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、切換時の負荷を抑制し、耐久性に優れ、かつ、部品点数の増加を抑制できるタップ選択器の可動接点駆動機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のタップ選択器の可動接点駆動機構は、可動接点組立を持つ。可動接点組立は、基準軸の周りの周方向に回転する。可動接点組立は、駆動スライダと、昇降アームと、可動接点と、を備える。駆動スライダは、前記基準軸に沿う軸方向と直交する径方向に摺動する。昇降アームは、前記駆動スライダの摺動動作に連動して回転する。可動接点は、前記昇降アームの回転動作に連動して移動する。可動接点は、前記可動接点組立の回転停止時は集電リングと固定接点との間で接点接触状態を保持する。可動接点は、前記可動接点組立の回転駆動時は前記集電リングと前記固定接点との間で接点非接触状態を保持する。前記可動接点組立の回転停止及び回転駆動の切換動作は、前記接点非接触状態で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の負荷時タップ切換器の斜視図。
図2】実施形態のタップ選択器の斜視図。
図3】実施形態の可動接点組立の斜視図。
図4図3においてカバー等を外した状態の拡大斜視図。
図5】実施形態の可動接点組立と集電リングとの接触部の斜視図。
図6】実施形態の可動接点組立と固定リングとの接触部の斜視図。
図7】実施形態の可動接点組立を上側から見た分解斜視図。
図8】実施形態の可動接点組立を上側から見た他の分解斜視図。
図9】実施形態の可動接点、昇降アーム及び駆動スライダを含む斜視図。
図10】実施形態の可動接点、昇降アーム及び駆動スライダの関係の説明図。
図11】実施形態の可動接点及び昇降アームを含む斜視図。
図12】実施形態の可動接点組立、集電リング及び固定リングを含む平面図。
図13】実施形態の可動接点組立の配置の説明図。
図14】実施形態の可動接点組立による切換動作の説明図であって閉極時の平面図。
図15】実施形態の閉極時の可動接点、昇降アーム及び駆動スライダの関係の説明図。
図16】実施形態の閉極時の駆動ローラ及びガイド溝の関係の説明図。
図17】実施形態の閉極時の可動接点組立の配置の説明図。
図18図14に続く、実施形態の開極動作時の平面図。
図19図15に続く、実施形態の開極動作時の可動接点、昇降アーム及び駆動スライダの関係の説明図。
図20図16に続く、実施形態の開極動作時の駆動ローラ及びガイド溝の関係の説明図。
図21図17に続く、実施形態の開極動作時の可動接点組立の配置の説明図。
図22図18に続く、実施形態の開極完了時の平面図。
図23図19に続く、実施形態の開極完了時の可動接点、昇降アーム及び駆動スライダの関係の説明図。
図24図20に続く、実施形態の開極完了時の駆動ローラ及びガイド溝の関係の説明図。
図25図21に続く、実施形態の開極完了時の可動接点組立の配置の説明図。
図26】実施形態の可動接点組立による切換動作のトルクを説明するための平面図。
図27】実施形態の可動接点組立による切換動作のトルクを説明するための側面図。
図28】比較例1のタップ選択器の斜視図。
図29】比較例1の可動接点組立構造の斜視図。
図30】比較例1の可動接点組立構造の平面図。
図31】比較例1の可動接点組立構造の一部拡大図。
図32】比較例1の製品器の説明図。
図33】比較例2のタップ選択器の斜視図。
図34】比較例2の開閉駆動凹凸カム部の斜視図。
図35】比較例2の開極動作時の説明図。
図36】比較例2の閉極時の説明図。
図37】比較例3のタップ選択器の断面図。
図38】比較例3の可動接点部構成図。
図39】比較例3のタップ選択器の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のタップ選択器の可動接点駆動機構を、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態の負荷時タップ切換器1の斜視図である。図2は、実施形態のタップ選択器2の斜視図である。
負荷時タップ切換器1は、運転状態において変圧器の巻数比(変圧比)を変えることで電圧を調整する装置である。図1及び図2に示すように、負荷時タップ切換器1は、タップ選択器2と、駆動機構3と、減速機構4と、切換開閉器5と、油槽6と、を備える。
【0009】
タップ選択器2は、変圧器タップ巻線において運転するタップを選択する。
駆動機構3は、電動操作装置(不図示)から駆動軸7を介して伝達される駆動力により、タップ選択器2を駆動する。
減速機構4は、電動操作装置(不図示)から駆動軸7に伝達される回転動作の回転数を減速する。
【0010】
切換開閉器5は、選択されたタップに回路を切り換える。切換開閉器5は、油槽6の内部に配置される。切換開閉器5は、油槽6の内部で絶縁油に浸漬される。切換開閉器5は、複数のタップ端子(不図示)を備える。複数のタップ端子は、タップ選択器2に対して配線8により接続される。配線8により、両者に電流が伝達される。切換開閉器5は、取付脚10により、タップ選択器2の上部に取り付けられる。駆動機構3に対して駆動軸7により回転駆動力が伝達されて、タップ切換が行われる。
【0011】
駆動軸7の下部には駆動継手11が取り付けられる。駆動軸7を介して伝達される駆動力は、駆動継手11を介して駆動伝達歯車列及び駆動カップリング等(不図示)が回転駆動する。駆動カップリング等の回転により、ゼネバドライバ25が回転駆動する。ゼネバドライバ25の回転により、ゼネバギア26(基準部材の一例)が回転駆動する。
【0012】
ゼネバギア26は、基準軸G(絶縁支持筒27の中心軸)と同心に配置される。以下、基準軸Gに沿う方向を「軸方向」、軸方向と直交する方向を「径方向」、基準軸Gの周りの方向を「周方向」ともいう。実施形態では、軸方向は、水平方向に対して直交する方向(上下方向)である。実施形態では、ゼネバギア26の周方向は、ゼネバギア26の回転方向と一致する。
【0013】
一般に、タップ選択器の切換方式は、単一切換方式と並列切換方式とがある。単一切換方式は、2つの可動接点を同時に動作させ、一方の可動接点を無電流で他方の可動接点を通電状態のまま切り換える方式である。並列切換方式は、2つの可動接点の両方を無電流でのみ動作させ、奇数タップ及び偶数タップを交互に並列に切り換える方式である。実施形態では、1枚のゼネバギアにより並列切換ができるタップ選択器について説明する。
【0014】
ゼネバギア26は、絶縁支持筒27により支持される。絶縁支持筒27には、U相、V相及びW相の三相に対応した3相ユニット111U,111V,111Wが設けられる。3相ユニット111U,111V,111Wは、U相に対応したU相ユニット111Uと、V相に対応したV相ユニット111Vと、W相に対応したW相ユニット111Wと、である。3相ユニット111U,111V,111Wは、上段側からU相ユニット111U、V相ユニット111V、W相ユニット111Wの順に配置される。例えば、各相ユニット111U,111V,111Wの上段側は、奇数タップ側に対応する。例えば、各相ユニット111U,111V,111Wの下段側は、偶数タップ側に対応する。
【0015】
実施形態のタップ選択器2は、上板20と、下板21と、支柱22A,22Bと、を備える。
上板20及び下板21は、それぞれ水平方向に延びる。上板20は、タップ選択器2の上部を支持する。下板21は、タップ選択器2の下部(底部)を支持する。
支柱22A,22Bは、上下方向に延びる。支柱22A,22Bは、上板20と下板21とを連結する。支柱22A,22Bは、複数設けられる。
【0016】
タップ選択器2は、接点を切り換えるための複数の切換器110,120を備える。複数の切換器110,120は、主切換器110と、ゼネバドライバ25を介して主切換器110に連結された副切換器120と、を含む。例えば、主切換器110でタップを順次切換し、副切換器120でタップ巻線の接続切換を行う。複数の支柱22A,22Bには、主切換器110を支持する主支柱22Aと、副切換器120を支持する副支柱22Bと、が含まれる。
【0017】
本実施形態では、主切換器110及び副切換器120における駆動支柱40は、対応する可動接点組立50を保持する。各可動接点組立50は、ゼネバギア26の回転に連動することで、互いに独立して駆動するように構成される。
【0018】
本実施形態において、主切換器110の各相ユニット111U,111V,111Wの上段側(奇数タップ側)及び下段側(偶数タップ側)、並びに、副切換器120における可動接点組立50は、互いに同じ部品である。これにより、同じ部品を多数用いることによる部品コスト低減、組立性改善を実現することができる。
【0019】
以下、タップ選択器2において主切換器110の構成(可動接点駆動機構100)について詳しく説明する。副切換器120は、主切換器110と同様の構成を有するため詳細説明は省略する。
図3は、実施形態の可動接点組立50の斜視図である。図4は、図3においてカバー80等を外した状態の拡大斜視図である。図5は、実施形態の可動接点組立50と集電リング30との接触部の斜視図である。図6は、実施形態の可動接点組立50と固定リング35との接触部の斜視図である。
【0020】
図3から図6を併せて参照し、可動接点駆動機構100は、可動接点組立50、集電リング30、固定リング35及び駆動支柱40を備える。可動接点組立50は、基準軸Gの周りの周方向に回転する。
【0021】
集電リング30は、軸方向から見て円環状に形成される。集電リング30は、配線8につながっている。集電リング30は、各相ユニット111U,111V,111Wの上段側(奇数タップ側)と下段側(偶数タップ側)とに対応して配置される。
【0022】
集電リング30は、基準軸Gと同心環状に形成されるガイド溝31を有する。ガイド溝31は、定常半径部32及びくびれ部33を備える。定常半径部32は、径方向の定位置で駆動ローラ52を周方向に案内する。くびれ部33は、駆動ローラ52を周方向に交差する方向に案内する。くびれ部33は、軸方向から見て、定常半径部32に対して径方向の内側に向かって湾曲する。
【0023】
固定リング35は、固定接点36を支持する。固定リング35は、基準軸Gと同心環状に形成される。固定接点36は、変圧器タップ巻線から引き出された配線(不図示)に接続される。固定リング35は、各相ユニット111U,111V,111Wの上段側(奇数タップ側)と下段側(偶数タップ側)とに対応して配置される。
【0024】
固定リング35は、軸方向から見て円環状に形成される固定板37を備える。例えば、固定板37は、絶縁性を有する樹脂等の絶縁体で形成される。固定接点36は、固定板37の周方向に間隔をあけて複数設けられる。
【0025】
駆動支柱40には、基準軸G回りに回転する切換アーム41が取り付けられる。駆動支柱40は、基準軸Gに沿う上下方向に延びる。駆動支柱40は、複数の可動接点組立50を支持することで周方向に回転駆動させる。駆動支柱40は、各相ユニット111U,111V,111Wの上段側(奇数タップ側)の可動接点組立50と、下段側(偶数タップ側)の可動接点組立50とに対応して配置される。
【0026】
以下、上段側(奇数タップ側)の可動接点組立50の構成について説明する。下段側(偶数タップ側)の可動接点組立50は、上段側(奇数タップ側)の可動接点組立50と同様の構成を有するため詳細説明は省略する。
図7は、実施形態の可動接点組立50を上側から見た分解斜視図である。図8は、実施形態の可動接点組立50を上側から見た他の分解斜視図である。図9は、実施形態の可動接点70、昇降アーム60及び駆動スライダ51を含む斜視図である。図10は、実施形態の可動接点70、昇降アーム60及び駆動スライダ51の関係の説明図である。図11は、実施形態の可動接点70及び昇降アーム60を含む斜視図である。
【0027】
図7から図11を併せて参照し、可動接点組立50は、駆動スライダ51、駆動ローラ52、水平ガイドローラ53、垂直ガイドローラ54A,54B、ガイドホルダ58、昇降アーム60、昇降ローラ61、可動接点70、付勢部材75、カバー80及び支持ホルダ90を備える。
【0028】
可動接点組立50の構成部品は、集電リング30と、固定リング35と、を介して軸方向に一対設けられる。可動接点組立50の構成部品は、集電リング30及び固定リング35を中心として同じ部品を裏返して対向させた一対構成である。可動接点組立50は、軸方向において集電リング30及び固定リング35の両側から可動接点組立50において互いに同じ種類の構成部品を裏返して順番に積層した状態で組み立てられている。
【0029】
まず、駆動スライダ51側の構成について説明する。
駆動スライダ51は、ゼネバギア26に対して径方向に摺動可能に支持される。駆動スライダ51は、板金で形成される。例えば、駆動スライダ51は、板金に対してブランク加工及び曲げ加工等を施した部品である。駆動スライダ51は、軸方向から見て全体的に矩形状に形成される。駆動スライダ51は、軸方向と直交する方向に長手を有する平面視矩形状である。
【0030】
駆動スライダ51には、駆動ローラ52が取り付けられる。駆動ローラ52は、駆動スライダ51に対して回転可能に支持される。駆動ローラ52は、軸方向に沿う方向(上下方向)の軸回りに回転可能である。駆動ローラ52は、駆動スライダ51において集電リング30に対向する部分に配置される。駆動ローラ52は、集電リング30のガイド溝31に案内される。
【0031】
駆動スライダ51は、曲げ突起55を備える。曲げ突起55は、駆動スライダ51の短手方向の中央部分に設けられる。曲げ突起55は、軸方向に沿う方向において一対の駆動スライダ51が互いに対向する方向に向かって曲げられる。曲げ突起55は、駆動スライダ51の長手方向に離間して一対設けられる。
【0032】
曲げ突起55の根元部は、昇降アーム60を押圧して回転させる昇降押圧部56として機能する。昇降押圧部56は、駆動スライダ51の摺動動作により昇降ローラ61に当接することで昇降アーム60を回転させる。昇降押圧部56は、駆動スライダ51に一体に設けられる。昇降押圧部56は、集電リング30側及び固定リング35側の2箇所に設けられる。
【0033】
駆動スライダ51には、水平ガイドローラ53が取り付けられる。水平ガイドローラ53は、駆動スライダ51に対して回転可能に支持される。水平ガイドローラ53は、軸方向に沿う方向(上下方向)の軸回りに回転可能である。水平ガイドローラ53は、カバー80の内側壁面に沿うように駆動スライダ51の径方向の摺動動作を案内する。水平ガイドローラ53は、駆動スライダ51の4隅寄り(4隅部に相当)に1つずつ合計4つ(複数の一例)配置される。4つの水平ガイドローラ53は、軸方向に沿う方向において一対の駆動スライダ51が互いに対向する面に配置される。
【0034】
駆動スライダ51には、垂直ガイドローラ54A,54Bが取り付けられる。垂直ガイドローラ54A,54Bは、駆動スライダ51に対して回転可能に支持される。垂直ガイドローラ54A,54Bは、駆動スライダ51の長手方向の軸回りに回転可能である。垂直ガイドローラ54A,54Bは、集電リング30及び固定リング35の各表面に対して転がり接触する。垂直ガイドローラ54A,54Bは、駆動スライダ51において集電リング30及び固定リング35に対向する部分に1つずつ合計2つ(複数の一例)配置される。2つの垂直ガイドローラ54A,54Bは、集電リング30側に配置される集電側垂直ガイドローラ54Aと、固定リング35側に配置される固定側垂直ガイドローラ54Bと、である。
【0035】
駆動スライダ51は、平面方向(水平方向)においては、水平ガイドローラ53を介して、カバー80の両側の内側壁面にガイドされる。駆動スライダ51は、可動接点組立50においては、駆動スライダ51の長手方向(タップ選択器2から見た径方向)に摺動動作を行う。
【0036】
駆動スライダ51は、垂直方向(軸方向に沿う方向)においては、垂直ガイドローラ54A,54Bを介して、集電リング30及び固定リング35の各ガイド部34,38にガイドされる。駆動スライダ51は、タップ切換時に可動接点組立50を基準軸G回りに回転(周方向に移動)させる。
【0037】
次に、昇降アーム60側の構成について説明する。
昇降アーム60は、駆動スライダ51の摺動動作に連動して回転する。昇降アーム60は、駆動スライダ51の長手方向(タップ選択器2から見た径方向)に対向するように一対設けられる。昇降アーム60は、絶縁性を有する樹脂等の絶縁体で形成される。
【0038】
昇降アーム60には、ローラ支持軸62を介して昇降ローラ61が取り付けられている。ローラ支持軸62は、駆動スライダ51の短手方向に沿う方向に延びる。昇降ローラ61は、昇降アーム60に対して回転可能に支持される。昇降ローラ61は、ローラ支持軸62回りに回転可能である。昇降ローラ61は、昇降押圧部56に当接する。
【0039】
昇降アーム60は、アーム支点軸63を介してカバー80の両壁面に形成された軸孔85に取り付けられている。アーム支点軸63は、ローラ支持軸62と平行に延びる。昇降アーム60は、アーム支点軸63回りに回転可能である。昇降アーム60は、駆動スライダ51の摺動動作により、アーム支点軸63回りに回転する。
【0040】
本実施形態では、複数(図の例では3つ)の可動接点70が設けられる。昇降アーム60は、複数の可動接点70を同時に昇降させる複数のアーム突起64を備える。昇降アーム60は、可動接点70を仕切る複数の仕切り部65を備える。昇降アーム60は、可動接点70の数に対応した複数(図の例では4つ)の仕切り部65を一体に備える。アーム突起64は、各仕切り部65の間に配置される。複数の仕切り部65は、可動接点組立50の周方向への回動動作時に可動接点70が周方向に対して斜め方向に動作可能に、互いに間隔をあけて配置される。
【0041】
次に、可動接点70について説明する。
可動接点70は、昇降アーム60の回転動作に連動して移動する。可動接点70は、可動接点組立50の回転停止時は集電リング30と固定接点36との間で接点接触状態CSを保持する。接点接触状態CSは、可動接点70と固定接点36とが互いに通電している閉極状態に相当する。可動接点70は、可動接点組立50の回転駆動時は集電リング30と固定接点36との間で接点非接触状態NCを保持する。接点非接触状態NCは、可動接点70と固定接点36とが互いに通電していない開極状態に相当する。本実施形態では、可動接点組立50の回転停止及び回転駆動の切換動作は、接点非接触状態NCで行われる。
【0042】
可動接点70は、軸方向と直交する方向に長手を有する。可動接点70は、接点切欠部71A,71Bを備える。接点切欠部71A,71Bは、可動接点70において集電リング30に対向する部分と固定リング35に対向する部分とに形成される。2つの接点切欠部71A,71Bは、集電リング30側に形成される集電側切欠部71Aと、固定リング35側に形成される固定側切欠部71Bと、である。
【0043】
可動接点70は、一対の昇降アーム60に挟まれるように可動接点70の径方向の中央部から突出する中央凸部72を備える。中央凸部72は、可動接点70の径方向の中央部から駆動スライダ51の長手方向中央部に向かって突出する。可動接点70は、軸方向から見て中央凸部72と重なる位置に、付勢部材75が配置される中央凹部73を備える。中央凸部72は、中央凹部73に配置される付勢部材75の中心軸上に配置される。
【0044】
本実施形態では、昇降アーム60及び関連部品(昇降アーム60を駆動する昇降押圧部56等)は、集電リング30側及び固定リング35側の2箇所に設けられる。付勢部材75は、可動接点70とカバー80との間に配置される。付勢部材75は、可動接点70を付勢する。例えば、付勢部材75は、コイルばねである。可動接点70は、付勢部材75により、集電側切欠部71A及び固定側切欠部71Bにおいて、集電リング30側及び固定リング35側の各昇降アーム60のアーム突起64上に付勢される。可動接点70は、一対の昇降アーム60の同期した回転動作により、昇降動作を行う。
【0045】
本実施形態では、一対の昇降アーム60の各々が複数の可動接点70に対応した仕切り部65及びアーム突起64を備えるため、複数の可動接点70は同時に昇降動作を行う。したがって、可動接点組立50は、駆動スライダ51の可動接点組立50内での摺動動作により、複数の可動接点70が同時に昇降動作を行うように構成される。
【0046】
次に、カバー80及び支持ホルダ90について説明する。
カバー80は、駆動スライダ51、昇降アーム60及び可動接点70を覆う。カバー80は、昇降アーム60を回転可能に支持する。支持ホルダ90は、カバー80を支持する。支持ホルダ90は、複数の係合突起91を備える。カバー80は、係合突起91の数に対応する複数の係合切欠部81を備える。カバー80は、係合突起91及び係合切欠部81により、支持ホルダ90に対して平面方向(水平方向)の移動が制限される。
【0047】
支持ホルダ90は、複数の係合フック92を備える。カバー80は、複数の係合凸部82を備える。カバー80は、係合凸部82の数に対応する複数の係合孔部83を備える。支持ホルダ90及びカバー80は、付勢部材75、可動接点70、昇降アーム60及び駆動スライダ51と同様に、集電リング30及び固定リング35を中心として同じ部品を裏返して対向させた一対構成である。
【0048】
一対の支持ホルダ90及びカバー80は、集電リング30及び固定リング35を挟むように構成される。一対の支持ホルダ90及びカバー80は、複数の係合フック92同士の係合、並びに、複数の係合凸部82及び係合孔部83の係合により、可動接点組立50を組み立てるように構成される。可動接点組立50の構成部品の各係合部及び部品取り付け部は、一対構成となる各部品(同じ部品)を裏返して使用できるように形成される。
【0049】
互いに対向する一対の駆動スライダ51は、曲げ突起55の対向する端部(当接部57に相当)において互いに当接される。一対の駆動スライダ51は、支持ホルダ90によって平面方向(水平方向)が固定されることにより、一体構造を形成する。
【0050】
支持ホルダ90は、軸方向に沿う方向に開口する開口部93を備える。駆動支柱40は、支持ホルダ90の開口部93に挿入される。ゼネバギア26の回転により、駆動支柱40が駆動される。これにより、可動接点組立50を基準軸G回り(タップ選択器2の中心軸回り)に回転させる。
【0051】
次に、駆動スライダ51の摺動動作の仕組みについて説明する。
図12は、実施形態の可動接点組立50、集電リング30及び固定リング35を含む平面図である。図13は、実施形態の可動接点組立50の配置の説明図である。
上述の通り、集電リング30は、駆動ローラ52が係合するガイド溝31を備える。ガイド溝31は、集電リング30の外周部に形成される。ガイド溝31は、くびれ部33及び定常半径部32を備える。
【0052】
くびれ部33は、固定接点36の位相角度に対応して形成される。図の例では、くびれ部33は、平面視で周方向に等間隔で配置された6つの固定接点36の位相角度(中心角60度に相当)に対応して形成される。定常半径部32は、タップ切換中間点に対応して形成される。定常半径部32は、ガイド溝31の周方向において各くびれ部33の間に形成される。
【0053】
タップ切換中間点では、定常半径部32の作用により、可動接点70が開極状態(接点非接触状態NCに相当)で保持される。固定接点36近傍位置では、くびれ部33の作用により、可動接点70が集電リング30及び固定接点36に対して接触又は離反するように、駆動スライダ51の摺動動作が制御される。
【0054】
固定リング35は、複数の固定接点36を備える。固定接点36は、固定リング35の周方向において等間隔に配置される。基準軸G回りに回転する切換アーム41には、駆動支柱40が取り付けられる。切換アーム41の回転動作により、駆動支柱40介して可動接点組立50が基準軸G回りに回転する。
【0055】
上述の通り、互いに対向する一対の集電側垂直ガイドローラ54Aは、集電リング30のガイド部34を挟むように配置される。互いに対向する一対の固定側垂直ガイドローラ54Bは、固定リング35のガイド部38を挟むように配置される。これにより、可動接点組立50は、集電リング30及び固定リング35の両方のガイド部34,38にガイドされながら回転動作を行う。
【0056】
互いに対向する一対の駆動ローラ52は、集電リング30の両側のガイド溝31に各々係合する。可動接点組立50は、支持ホルダ90によって合体された一対の駆動スライダ51を備える。可動接点組立50は、一対の駆動スライダ51の各駆動ローラ52がガイド溝31に導かれることで摺動動作を行うように構成される。
【0057】
上述の通り、本実施形態の駆動スライダ51は、軸方向に互いに対向するように一対設けられる。駆動スライダ51は、集電リング30と固定接点36との間で接点非接触状態NCを保持する開極保持力が軸方向に作用するように構成される。一対の駆動スライダ51は、開極保持力を相殺させるように互いに当接する当接部57を備える。本実施形態の当接部57は、曲げ突起55の先端部(根元部とは反対側の部分)に相当する。
【0058】
ガイドホルダ58は、駆動スライダ51の当接部57を軸方向に沿って案内する。ガイドホルダ58は、軸方向に沿って延びる矩形筒状に形成される。ガイドホルダ58は、駆動スライダ51の長手方向(タップ選択器2から見た径方向)に間隔をあけて一対設けられる。ガイドホルダ58には、上下一対の駆動スライダ51の曲げ突起55が半分ずつ入ることで、曲げ突起55の先端部(当接部57に相当)が互いに当接する。
【0059】
以下、可動接点組立50の動作について、閉極時から開極動作を経て開極完了に至る流れを説明する。
図14は、実施形態の可動接点組立50による切換動作の説明図であって閉極時の平面図である。図15は、実施形態の閉極時の可動接点70、昇降アーム60及び駆動スライダ51の関係の説明図である。図16は、実施形態の閉極時の駆動ローラ52及びガイド溝31の関係の説明図である。図17は、実施形態の閉極時の可動接点組立50の配置の説明図である。
【0060】
閉極時は、常時通電時である。閉極時においては、可動接点組立50は、固定接点36の位置で停止する。閉極時においては、駆動ローラ52は、くびれ部33に配置される。閉極時においては、駆動スライダ51は、最内周部に配置される。閉極時においては、昇降ローラ61は、昇降押圧部56に当接することで停止する。閉極時においては、アーム突起64は、最下限位置にある。閉極時においては、付勢部材75の付勢力により、可動接点70における集電側接触部及び集電リング30並びに固定側接触部及び固定接点36が先に接触する。
【0061】
したがって、閉極時においては、アーム突起64と接点切欠部71A,71Bとの間には、図15の矢印間に示すように隙間Sが生じる。そのため、次の接点切換時の負荷が抑制される。
【0062】
次に、開極動作時について説明する。
図18は、図14に続く、実施形態の開極動作時の平面図である。図19は、図15に続く、実施形態の開極動作時の可動接点70、昇降アーム60及び駆動スライダ51の関係の説明図である。図20は、図16に続く、実施形態の開極動作時の駆動ローラ52及びガイド溝31の関係の説明図である。図21は、図17に続く、実施形態の開極動作時の可動接点組立50の配置の説明図である。
【0063】
開極動作時は、切換動作開始時である。開極動作時は、上面視で反時計回り(矢印R方向)に回転する際の位置関係になる。開極動作時においては、駆動ローラ52は、くびれ部33の作用により、集電リング30の外周方向(径方向外側)に押圧される。これにより、駆動スライダ51は、集電リング30の外周方向(径方向外側)に摺動する。すると、昇降押圧部56が昇降ローラ61を押す。これにより、昇降アーム60が回転する。すると、アーム突起64が接点切欠部71A,71Bに接触することで、可動接点70を持ち上げる。これにより、可動接点70における集電側接触部及び集電リング30並びに固定側接触部及び固定接点36の間の接触が解除される。
【0064】
したがって、開極動作時においては、集電リング30と固定接点36との間が非接触となり、図21の矢印間(細線矢印間)に示すように隙間Sが生じる。すなわち、接点開極状態(開極完了時)に移行する。
【0065】
次に、開極完了時について説明する。
図22は、図18に続く、実施形態の開極完了時の平面図である。図23は、図19に続く、実施形態の開極完了時の可動接点70、昇降アーム60及び駆動スライダ51の関係の説明図である。図24は、図20に続く、実施形態の開極完了時の駆動ローラ52及びガイド溝31の関係の説明図である。図25は、図21に続く、実施形態の開極完了時の可動接点組立50の配置の説明図である。
【0066】
開極完了時は、開極動作後において接点が完全に開極した時である。開極完了時は、開極動作時よりも、上面視で反時計回り(矢印R方向)に更に回転が進んだ位置関係になる。開極完了時においては、駆動ローラ52は、定常半径部32に配置される。開極完了時においては、駆動スライダ51は、最外周部に配置される。開極完了時においては、昇降ローラ61は、平面押圧部(駆動スライダ51の平面部に相当)に当接する。開極完了時においては、可動接点70は、昇降アーム60を介して同じ高さを維持した状態にある。開極完了時においては、集電リング30と固定接点36との間が非接触に保持され、図25の矢印間(細線矢印間)に示すように隙間Sも保持される。
【0067】
したがって、開極完了時においては、駆動スライダ51への摺動方向への反力は発生しない。開極完了時においては、垂直方向に働く接触圧は、互いに対向する一対の曲げ突起55の端部(当接部57)において相殺する。そのため、極めて低負荷で可動接点組立50が駆動される。
【0068】
開極完了時よりも更に回転が進むと、可動接点組立50は、タップ切換先の角度近傍に侵入する。すると、図18から図21の可逆動作により、集電リング30と固定接点36との間が接触し、閉極状態に復帰する。
【0069】
本実施形態では、可動接点組立50の回転停止と回転駆動との切換動作は、集電リング30と固定接点36との間が非接触となる接点非接触状態NCで行われる。そのため、集電リング30と固定接点36との間が接触した状態で切換動作を行う場合と比較して、切換時の負荷トルクを大幅に低減することができる。加えて、摺動による接点消耗を抑制することができる。加えて、開極後は、開極保持力を可動接点組立50側で負担することなく、回転動作を行うことができる。そのため、低負荷で耐久信頼性の向上が見込まれる。加えて、可動接点組立50の停止位置から切換動作が始まり、開極する際の負荷トルクも低く抑えることができる。
【0070】
次に、負荷トルクを低減するための工夫について説明する。
図26は、実施形態の可動接点組立50による切換動作のトルクを説明するための平面図である。図27は、実施形態の可動接点組立50による切換動作のトルクを説明するための側面図である。
【0071】
図26及び図27に示すP0からP4は、荷重を表す。
Pは、駆動ローラ52に作用する荷重である。P0は、付勢部材75の付勢力である。P1は、駆動ローラ52に作用する荷重の接線方向分力である。P2は、駆動ローラ52に作用する荷重の径方向分力である。P3は、昇降押圧部56に作用する開極反力の水平方向分力である。P4は、駆動支柱40に作用する切換時負荷荷重である。
【0072】
P0の反力として、昇降押圧部56の接触角度に従い、P3が決定される。P3に対応するP2は、P3の4倍(P3×4)に相当する。このP2に対してくびれ部33の当接壁面角度によって決まる分力P1が、可動接点組立50に作用する接線方向の外力となる。
【0073】
本実施形態では、くびれ部33は、軸方向から見て、定常半径部32に対して径方向の内側に向かって湾曲する。これにより、P1作用点の中心軸からの距離L1は、比較的小さく設定することができる。そのため、負荷トルク(P1×L1)は、低減可能となる。
【0074】
さらに、P1に抗して可動接点組立50を回転させる負荷P4は、関係式P4×L2=P1×L1によって決まる。本実施形態では、L2はL1に対して非常に長い(L2>>L1)。そのため、駆動支柱40と可動接点組立50との間に作用するP4は、P1よりも小さな荷重となる。これにより、関連部品の耐久信頼性の向上、部品の小型化及び薄肉化、並びに、樹脂化が可能となる。したがって、コスト削減及び省スペース化を実現可能となる。
【0075】
以上に説明されたように、本実施形態のタップ選択器2の可動接点駆動機構100は、可動接点組立50を持つ。可動接点組立50は、基準軸Gの周りの周方向に回転する。可動接点組立50は、駆動スライダ51と、昇降アーム60と、可動接点70と、を備える。駆動スライダ51は、基準軸Gに沿う軸方向と直交する径方向に摺動する。昇降アーム60は、駆動スライダ51の摺動動作に連動して回転する。可動接点70は、昇降アーム60の回転動作に連動して移動する。可動接点70は、可動接点組立50の回転停止時は集電リング30と固定接点36との間で接点接触状態CSを保持する。可動接点70は、可動接点組立50の回転駆動時は集電リング30と固定接点36との間で接点非接触状態NCを保持する。可動接点組立50の回転停止及び回転駆動の切換動作は、接点非接触状態NCで行われる。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
切換動作が接点非接触状態NCで行われることにより、切換動作時に転がり接触及び摺動接触等は生じないため、接触耐用性(耐久性)が劣ることはない。加えて、接点の開閉を行うために、専用のゼネバ駆動機構を新たに追加する必要もない。すなわち、可動接点組立50内に設けた簡単な構成により、転がり接触及び摺動接触等が無い形で切換動作を実現することができる。したがって、切換時の負荷を抑制し、耐久性に優れ、かつ、部品点数の増加を抑制することができる。
【0076】
本実施形態の集電リング30は、基準軸Gと同心環状に形成されるガイド溝31を有する。可動接点組立50は、駆動スライダ51に対して回転可能に支持され、ガイド溝31に案内される駆動ローラ52と、駆動スライダ51、昇降アーム60及び可動接点70を覆うカバー80と、カバー80と可動接点70との間に配置され、可動接点70を付勢する付勢部材75と、を更に備える。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
付勢部材75の付勢により、集電リング30に対する駆動スライダ51、駆動ローラ52、昇降アーム60及び可動接点70の位置決めを行うことができる。したがって、可動接点組立50内の構成の動作をより安定かつ円滑に行うことができる。
【0077】
本実施形態のガイド溝31は、径方向の定位置で駆動ローラ52を周方向に案内する定常半径部32と、駆動ローラ52を周方向に交差する方向に案内するくびれ部33と、を備える。くびれ部33は、軸方向から見て、定常半径部32に対して径方向の内側に向かって湾曲する。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
くびれ部33が軸方向から見て定常半径部32に対して径方向の外側に向かって湾曲する場合と比較して、切換時に駆動ローラ52に作用する荷重の作用点から基準軸Gまでの距離を小さくすることができる。そのため、切換時の負荷トルクを低減することができる。したがって、関連部品の耐久信頼性向上、部品の小型化及び薄肉化又は樹脂化、並びに、コスト削減及び省スペース化が可能となる。
【0078】
本実施形態の可動接点組立50は、軸方向に沿って複数配置される。可動接点駆動機構100は、軸方向に沿って延び、複数の可動接点組立50を支持することで周方向に回転駆動させる駆動支柱40を更に備える。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
駆動支柱40によって複数の可動接点組立50を同時に回転駆動させることができる。したがって、複数の可動接点70に対応する駆動部材を別個に設ける場合と比較して、構成を簡素化しつつ、部品点数の増加を抑制することができる。
【0079】
本実施形態の可動接点駆動機構100は、基準軸Gと同心環状に形成され、固定接点36を支持する固定リング35を更に備える。可動接点組立50は、軸方向において集電リング30及び固定リング35の両側から可動接点組立50において互いに同じ種類の構成部品を裏返して順番に積層した状態で組み立てられる。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
軸方向において集電リング30及び固定リング35の両側から可動接点組立50を組み立てる場合でも、共通の構成部品を用いることができる。したがって、部品点数の増加を抑制することができる。
【0080】
本実施形態の駆動スライダ51は、軸方向に互いに対向するように一対設けられる。駆動スライダ51は、集電リング30と固定接点36との間で接点非接触状態NCを保持する開極保持力が軸方向に作用するように構成される。一対の駆動スライダ51は、開極保持力を相殺させるように互いに当接する当接部57を備える。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
一対の駆動スライダ51の当接部57によって開極保持力が相殺されることで、切換駆動負荷(切換時に駆動ローラ52に作用する荷重等)を可及的に小さくすることができる。したがって、関連部品の耐久信頼性向上、部品の小型化及び薄肉化又は樹脂化、並びに、コスト削減及び省スペース化が可能となる。
【0081】
本実施形態の可動接点組立50は、駆動スライダ51の当接部57を軸方向に沿って案内するガイドホルダ58を更に備える。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
ガイドホルダ58によって駆動スライダ51の当接部57が軸方向に沿って案内されることで、開極保持力が軸方向以外の他の方向に及ぶことを抑制することができる。そのため、一対の駆動スライダ51の当接部57によって開極保持力をより安定して相殺させることができる。したがって、切換駆動負荷(切換時に駆動ローラ52に作用する荷重等)を極めて小さくすることができる。
【0082】
本実施形態の可動接点組立50は、駆動スライダ51、昇降アーム60及び可動接点70を覆うカバー80と、駆動スライダ51に対して回転可能に支持され、カバー80の内側壁面に沿うように駆動スライダ51の径方向の摺動動作を案内する複数の水平ガイドローラ53と、駆動スライダ51に対して回転可能に支持され、集電リング30及び固定リング35の各表面に対して転がり接触する複数の垂直ガイドローラ54A,54Bと、を更に備える。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
カバー80により、駆動スライダ51、昇降アーム60及び可動接点70を外的要因から保護することができる。加えて、複数の水平ガイドローラ53により、カバー80の内側壁面に沿う駆動スライダ51の径方向移動を円滑に案内することができる。加えて、複数の垂直ガイドローラ54A,54Bにより、可動接点組立50の高さ方向(軸方向)の位置を制限することができる。
【0083】
本実施形態の駆動スライダ51は、軸方向から見て矩形状に形成される。水平ガイドローラ53は、軸方向から見て駆動スライダ51の4隅部に1つずつ合計4つ配置される。垂直ガイドローラ54A,54Bは、駆動スライダ51において集電リング30及び固定リング35に対向する部分に1つずつ合計2個配置される。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
4つの水平ガイドローラ53により、カバー80の内側壁面に沿う駆動スライダ51の径方向移動を円滑に案内することができる。加えて、2個の垂直ガイドローラ54A,54Bにより、可動接点組立50の高さ方向(軸方向)の位置を制限することができる。したがって、必要最小限の水平ガイドローラ53及び垂直ガイドローラ54A,54Bにより、駆動スライダ51の安定した摺動動作を実現することができる。
【0084】
本実施形態の可動接点組立50は、駆動スライダ51、昇降アーム60及び可動接点70を覆い、昇降アーム60を回転可能に支持するカバー80と、昇降アーム60に対して回転可能に支持される昇降ローラ61と、を備える。駆動スライダ51は、駆動スライダ51の摺動動作により昇降ローラ61に当接することで昇降アーム60を回転させる昇降押圧部56を備える。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
駆動スライダ51の昇降押圧部56の当接によって昇降アーム60を回転させることができる。したがって、昇降アーム60を回転させるための部材を別個に設ける場合と比較して、構成を簡素化しつつ、部品点数の増加を抑制することができる。
【0085】
本実施形態の可動接点70は、複数設けられる。昇降アーム60は、複数の可動接点70を同時に昇降させる複数のアーム突起64と、可動接点70を仕切る複数の仕切り部65と、を備える。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
複数の可動接点70により、接触面積を確保することができるため、通電容量を大きくすることができる。したがって、大電流化に対応することが可能となる。例えば、複数の可動接点70を別々に設けることで、板金で製造可能となるため、低コスト化も可能となる。加えて、昇降アーム60の複数のアーム突起64によって、複数の可動接点70を同時に昇降させることができる。したがって、複数の可動接点70を昇降させるための部材を別個に設ける場合と比較して、構成を簡素化しつつ、部品点数の増加を抑制することができる。加えて、仕切り部65によって可動接点70が仕切られることで、可動接点70の昇降動作をより安定かつ円滑に行うことができる。
【0086】
本実施形態の複数の仕切り部65は、可動接点組立50の周方向への回転動作時に可動接点70が周方向に対して斜め方向に動作可能に、互いに間隔をあけて配置される。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
可動接点70の動作に対して自由度を持たせることができる。そのため、切換時の可動接点70が周方向に対して斜め方向に動くことにより、可動接点70の接触圧を可及的に低減することができる。
【0087】
本実施形態の昇降アーム60は、径方向に対向するように一対設けられる。可動接点70は、一対の昇降アーム60に挟まれるように可動接点70の径方向の中央部から突出する中央凸部72を備える。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
一対の昇降アーム60によって可動接点70の中央凸部72が挟まれることで、可動接点70の径方向の位置を制限することができる。したがって、可動接点70の昇降動作をより安定かつ円滑に行うことができる。
【0088】
本実施形態の可動接点組立50は、可動接点70を付勢する付勢部材75を更に備える。可動接点70は、軸方向から見て中央凸部72と重なる位置に、付勢部材75が配置される中央凹部73を備える。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
付勢部材75の付勢力が可動接点70の中央凹部73に作用することで、可動接点70の径方向両側に対して付勢力をバランスよく作用させることができる。したがって、可動接点組立50の回転停止及び回転駆動の切換動作をより安定かつ円滑に行うことができる。
【0089】
ところで、従来、ガス用の負荷時タップ切換器のタップ選択器可動接点は、絶縁油による潤滑機能が無いため、ローラを用いた転がり接触形の接点(ローラ接点)を備える。ローラ接点の場合は、ローラに対する接触状態によっては、切換時の負荷及び摩耗等により、接触耐用性(耐久性)が劣ることになる。例えば、ローラ接点の場合は、接触面積を確保するために接触圧を大きくする必要があり、通電容量に限界がある。加えて、接触部の半径により周速が異なることから、ローラ径を調整して転がり接触させる配慮が必要となる。
【0090】
一方、接点の開閉を行うために、専用のゼネバ駆動機構を新たに追加する場合がある。専用のゼネバ駆動機構を新たに追加する場合は、部品点数が増加し、スペース増加及びコスト増加を招くことになる。
【0091】
なお、油用の負荷時タップ切換器のタップ選択器可動接点は、絶縁油の潤滑性能を活用する。例えば、回転中心側に配置される集電リング側を常に接触状態として摺動させることで、タップ切換を行う。しかし、摩擦消耗量を抑制するために接触圧を抑える必要があり、大電流化の障害となる可能性が高い。
【0092】
本実施形態によれば、従来の問題点に対して以下のように改善される。
まず、従来例として比較例1から比較例3を挙げ、各例の問題点について説明する。
【0093】
図28は、比較例1のタップ選択器1000の斜視図である。図29は、比較例1の可動接点組立構造の斜視図である。図30は、比較例1の可動接点組立構造の平面図である。図31は、比較例1の可動接点組立構造の一部拡大図である。図32は、比較例1の製品器の説明図である。
【0094】
図28から図32を併せて参照し、比較例1のタップ選択器1000は、ローラ可動接点組立1001と、ゼネバ機構1002と、切換駆動支柱1003と、可動接点組立支え1004と、固定接点支柱1005と、を備える。ローラ可動接点組立1001は、上下に対向する複数(図の例では3本ずつ)のローラ通電軸組立1006を備える。複数のローラ通電軸組立1006は、付勢圧縮バネ1007で中心方向に付勢される。複数のローラ通電軸組立1006は、可動接点ホルダ1008に収納される。可動接点ホルダ1008は、可動接点組立支え1004に取り付けられる。可動接点組立支え1004は、切換駆動支柱1003に支持される。切換駆動支柱1003は、ゼネバ機構1002の動作により、タップ選択器1000の中心軸周りに回転する。これにより、ローラ可動接点組立1001が同軸周りに回転することで、タップ切換が行われる。
【0095】
ローラ通電軸組立1006の中心側には、集電側ローラ通電部1009が形成される。通電軸組立1006の外周側には、固定側ローラ通電部1010が形成される。両ローラ通電部1009,1010が集電リング組立1011と固定接点片1012とを挟むように接触することで、通電が行われる。タップ切換時は、集電側ローラ通電部1009は転がり接触状態を保持する。一方、固定側ローラ通電部1010は、固定接点片1012からいったん離れ、隣の固定接点片1012に接近する。ローラ通電軸組立1006を開極方向に押し広げながら、対向するローラ通電軸組立1006の間に固定接点片1012の端部が侵入することで、接触状態が復帰する。
【0096】
比較例1においては、集電リング組立1011側は常に転がり接触状態にある。そのため、切換時の負荷トルクが継続して生じる。したがって、切換繰り返し時の摩耗粉による接触抵抗の増大が懸念される。
例えば、切換時の負荷増大を抑制するためには、対向する固定側ローラ通電部1010に挟まれた隙間のできるだけ中央部に固定接点片1012を配置する必要がある。そのため、固定接点側及び可動接点側の高さ管理及び調整が必要となる。したがって、部品コスト及び組立コストが上昇する要因となる。
基本的に、ローラ状の接点(ローラ接点)における接触面積は小さい。接触面積を大きくするための接点付勢力の増大化には、耐摩耗性、負荷トルクの観点から限界がある。そのため、大電流化は困難である。
【0097】
次に、比較例2について説明する。
図33は、比較例2のタップ選択器2000の斜視図である。図34は、比較例2の開閉駆動凹凸カム部2001の斜視図である。図35は、比較例2の開極動作時の説明図である。図36は、比較例2の閉極時の説明図である。
【0098】
比較例2のタップ選択器2000は、集電部2002に一体に形成した開閉駆動カム部2001を備える。開閉駆動カム部2001は、タップ選択器2000の中心軸周りに同心円状に配置される。開閉駆動カム部2001によって、タップ切換時は可動接触子組立2003が開極状態となり固定接点2004から離れる。移動終了時(停止位置)は、可動接触子組立2003が閉極状態となり固定接点2004に接触する。これにより、比較例2は、移動終了時(停止位置)は通電するように構成される。
【0099】
しかし、比較例2の構成では、切換動作時の集電部2002との接触は継続される。そのため、耐久性及び負荷の問題、並びに、ローラ接点の通電能力限界を解消することは困難である。
【0100】
次に、比較例3について説明する。
図37は、比較例3のタップ選択器3000の断面図である。図38は、比較例3の可動接点部構成図である。図39は、比較例3のタップ選択器3000の分解斜視図である。
【0101】
比較例3のタップ選択器3000は、開閉式可動接点組立3001に組み込まれた通電接触片3002を備える。通電接触片3002は、タップ切換動作時に開極し、集電リング部3003及び固定接点部3004から離れる。通電接触片3002は、タップ切換後に閉極し、通電状態に復帰するように構成される。接点間の転がり接触が無いため、通電接触片3002は長方形断面の形状である。通電能力の問題及び集電リング部3003の耐摩耗懸念は解消されうる。
【0102】
しかし、比較例3の構成では、2枚の可動接点開閉ゼネバ3005と複雑な可動接点開閉機構3006とが必要となる。これらの追加機構部品は、部品コスト及び組立コスト増大、並びに、構造の複雑化による耐久性能への影響、タップ選択器3000の大型化等の要因となる。すなわち、上記の追加機構部品は、今後の負荷時タップ切換器に求められる要求仕様に逆行するものである。
【0103】
これに対し本実施形態のタップ選択器2は、ゼネバギアの回転動作に連動する可動接点組立50を備える。可動接点組立50は、駆動スライダ51、昇降アーム60及び可動接点70を備える。集電リング30の接点接触部の外側(上下面)には、ガイド溝31が形成される。駆動スライダ51は、ガイド溝31に係合する駆動ローラ52を介して、径方向に摺動する。駆動スライダ51には、昇降押圧部56が一体に形成される。昇降アーム60は、駆動スライダ51の内周部(集電リング30側)及び外周部(固定リング35側)に対応するように設けられる。昇降アーム60には、昇降ローラ61が取り付けられる。昇降ローラ61が駆動スライダ51の摺動動作により昇降押圧部56に押圧されることで、昇降アーム60が回転する。可動接点70は、内周側の集電リング30と外周側の固定接点36との間を短絡させる。可動接点70は、昇降アーム60により平面方向の移動が制限される。可動接点70とカバー80との間には、付勢部材75が設けられる。可動接点70は、付勢部材75により、昇降アーム60に対して付勢される。昇降アーム60の回転により、可動接点70の両端部において同時に昇降することで、開極動作及び閉極動作が行われる。昇降アーム60は、カバー80に対して回転可能に支持される。カバー80は、ホルダを介して駆動支柱40に支持される。駆動スライダ51において平面方向の4隅には、水平ガイドローラ53が取り付けられる。駆動スライダ51は、水平ガイドローラ53により、カバー80の両側の内壁面に対して摺動可能に支持される。駆動スライダ51の内周部(集電リング30側)及び外周部(固定リング35側)には、垂直ガイドローラ54A,54Bが取り付けられる。駆動スライダ51は、各垂直ガイドローラ54A,54Bにより、集電リング30及び固定リング35に対して高さ方向の移動を制限された状態で、基準軸G周りを回転する。可動接点組立50の構成部品一式は、上下一対に配置される。可動接点組立50は、昇降自由に支持される一対の複数の可動接点70が集電リング30及び固定リング35(固定リング35に装着される固定接点36)を挟むように構成される。タップ選択器2のゼネバ機構が駆動すると、駆動支柱40を介して可動接点組立50が基準軸G周りに回転する。すると、集電リング30のガイド溝31に従い、駆動スライダ51が径方向に摺動する。可動接点組立50が移動する際は、集電リング30側及び固定リング35側の両接点が開極する。可動接点組立50の停止時は、両接点が閉極する。
【0104】
本実施形態によれば、上記の動作を、可動接点組立50内に設けた簡単な機構により、転がり接触及び摺動接触が無い形で実現することができる。したがって、切換時の負荷が小さい耐久性の高い、安価なタップ選択器2の可動接点駆動機構100を提供することができる。
【0105】
なお、開極時は、接点付勢力の反力が集電リング30のガイド溝31と駆動ローラ52との間に作用する。この作用点は、可動接点組立50よりも径方向内側の位置にあり、中心から比較的距離が小さい位置となる。そのため、開極動作時の駆動負荷トルクを低く抑えることができる。加えて、可動接点70の開極後は、上下一対の駆動スライダ51を中央部で当接させることにより、開極反力が相殺される。したがって、開極後の切換駆動負荷を極めて小さく抑えることができる。
【0106】
次に、実施形態の変形例について説明する。
実施形態の可動接点組立は、駆動スライダに対して回転可能に支持され、ガイド溝に案内される駆動ローラを備える。これに対して、可動接点組立は、駆動ローラを備えなくてもよい。例えば、駆動スライダは、ガイド溝に案内される球面状の凸部(例えば湾曲部)を備えてもよい。例えば、駆動ローラの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0107】
実施形態のくびれ部は、軸方向から見て、定常半径部に対して径方向の内側に向かって湾曲する。これに対して、くびれ部は、軸方向から見て定常半径部に対して径方向の外側に向かって湾曲してもよい。例えば、くびれ部の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0108】
実施形態の駆動支柱は、複数の可動接点組立を同時に回転駆動させる。これに対して、可動接点駆動機構は、複数の可動接点に対応する駆動部材を別個に備えてもよい。例えば、複数の可動接点組立の駆動態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0109】
実施形態の可動接点組立は、軸方向において集電リング及び固定リングの両側から可動接点組立において互いに同じ種類の構成部品を裏返して順番に積層した状態で組み立てられる。これに対して、可動接点組立は、軸方向において集電リング及び固定リングの両側から互いに異なる種類の構成部品を積層することで組み立てられてもよい。例えば、可動接点組立の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0110】
実施形態の一対の駆動スライダは、開極保持力を相殺させるように互いに当接する当接部を備える。これに対して、一対の駆動スライダは、当接部を備えなくてもよい。例えば、開極保持力を相殺するための部材の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0111】
実施形態の可動接点組立は、駆動スライダの当接部を軸方向に沿って案内するガイドホルダを更に備える。これに対して、可動接点組立は、ガイドホルダを備えなくてもよい。例えば、ガイドホルダの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0112】
実施形態の可動接点組立は、駆動スライダ、昇降アーム及び可動接点を覆うカバーを更に備える。これに対し、可動接点組立は、カバーを備えなくてもよい。例えば、カバーの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0113】
実施形態の可動接点組立は、駆動スライダに対して回転可能に支持され、カバーの内側壁面に沿うように駆動スライダの径方向の摺動動作を案内する複数の水平ガイドローラを更に備える。これに対し、可動接点組立は、水平ガイドローラを備えなくてもよい。例えば、水平ガイドローラの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0114】
実施形態の可動接点組立は、駆動スライダに対して回転可能に支持され、集電リング及び固定リングの各表面に対して転がり接触する複数の垂直ガイドローラを更に備える。これに対し、可動接点組立は、垂直ガイドローラを備えなくてもよい。例えば、垂直ガイドローラの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0115】
実施形態の水平ガイドローラは、軸方向から見て駆動スライダの4隅部に1つずつ合計4つ配置される。これに対し、水平ガイドローラは、駆動スライダの4隅部以外の場所に配置されてもよい。例えば、水平ガイドローラの数は、3個以下又は5個以上であってもよい。例えば、水平ガイドローラの配置場所及び数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0116】
実施形態の垂直ガイドローラは、駆動スライダにおいて集電リング及び固定リングに対向する部分に1つずつ合計2個配置される。これに対し、垂直ガイドローラは、駆動スライダにおいて集電リング及び固定リングに対向する部分以外の場所に配置されてもよい。例えば、垂直ガイドローラの数は、1個又は3個以上であってもよい。例えば、垂直ガイドローラの配置場所及び数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0117】
実施形態の駆動スライダは、駆動スライダの摺動動作により昇降ローラに当接することで昇降アームを回転させる昇降押圧部を備える。これに対し、駆動スライダは、昇降押圧部を備えなくてもよい。例えば、昇降アームを回転させるための部材を駆動スライダとは別個に設けてもよい。例えば、昇降押圧部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0118】
実施形態の可動接点は、複数設けられる。これに対し、可動接点は、1つのみ設けられてもよい。例えば、可動接点の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0119】
実施形態の昇降アームは、複数の可動接点を同時に昇降させる複数のアーム突起を備える。これに対し、昇降アームは、アーム突起を備えなくてもよい。例えば、複数の可動接点を昇降させるための部材を別個に設けてもよい。例えば、アーム突起の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0120】
実施形態の昇降アームは、可動接点を仕切る複数の仕切り部を備える。これに対し、昇降アームは、仕切り部を備えなくてもよい。例えば、複数の可動接点を互いに接触することなく昇降させるための部材を別個に設けてもよい。例えば、仕切り部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0121】
実施形態の複数の仕切り部は、可動接点組立の周方向への回転動作時に可動接点が周方向に対して斜め方向に動作可能に、互いに間隔をあけて配置される。これに対して、複数の仕切り部は、可動接点が斜め動作不能に配置されてもよい。例えば、複数の仕切り部は、可動接点の厚みと同じ程度に互いに間隔をあけて配置されてもよい。例えば、複数の仕切り部の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0122】
実施形態の可動接点は、一対の昇降アームに挟まれるように可動接点の径方向の中央部から突出する中央凸部を備える。これに対し、可動接点は、中央凸部を備えなくてもよい。例えば、可動接点は、中央凸部以外の部分で位置を制限されてもよい。例えば、中央凸部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0123】
実施形態の可動接点は、軸方向から見て中央凸部と重なる位置に、付勢部材が配置される中央凹部を備える。これに対し、可動接点は、中央凹部を備えなくてもよい。例えば、付勢部材は、可動接点において中央凹部以外の部分に配置されてもよい。例えば、中央凹部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0124】
実施形態の可動接点組立は、可動接点を付勢する付勢部材を更に備える。これに対し、可動接点組立は、付勢部材を備えなくてもよい。例えば、可動接点は、付勢部材とは別に、可動接点に対して力を作用させる部材、機構及び装置等を備えてもよい。例えば、付勢部材の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0125】
実施形態の基準部材は、ゼネバドライバの回転に連動して回転するゼネバギアである。これに対して、基準部材は、ゼネバギアでなくてもよい。例えば、基準部材は、駆動モータの駆動により回転する回転体であってもよい。例えば、基準部材は、基準軸を中心に回転可能であればよい。例えば、基準部材の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0126】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、可動接点組立の回転停止及び回転駆動の切換動作は、接点非接触状態で行われる。これにより、切換時の負荷を抑制し、耐久性に優れ、かつ、部品点数の増加を抑制することができる。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0128】
2…タップ選択器、30…通電リング、31…ガイド溝、32…定常半径部、33…くびれ部、35…固定リング、36…固定接点、40…駆動支柱、50…可動接点組立、51…駆動スライダ、52…駆動ローラ、53…水平ガイドローラ、54A,54B…垂直ガイドローラ、56…昇降押圧部、57…当接部、58…ガイドホルダ、60…昇降アーム、61…昇降ローラ、64…アーム突起、65…仕切り部、70…可動接点、72…中央凸部、73…中央凹部、75…付勢部材、80…カバー、100…可動接点駆動機構、G…基準軸、CS…接点接触状態、NC…接点非接触状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39