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特開2024-77796蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077796
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/126 20210101AFI20240603BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20240603BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240603BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20240603BHJP
【FI】
H01M50/126
H01M50/131
H01G11/78
H01M50/121
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189956
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】今元 惇哉
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AB02
5E078AB12
5E078HA02
5E078HA12
5E078HA13
5E078HA14
5H011AA01
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011KK00
(57)【要約】
【課題】優れた耐傷性を有することが可能な蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】蓄電デバイスに用いられる蓄電デバイス用外装材であって、少なくとも、基材層と、バリア層と、シーラント層とをこの順に備え、シーラント層の100℃における酸素透過率が1.0×10-15~1.0×10-13[(mol・m)/(m・s・Pa)]である、蓄電デバイス用外装材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスに用いられる蓄電デバイス用外装材であって、
少なくとも、基材層と、バリア層と、シーラント層とをこの順に備え、
前記シーラント層の100℃における酸素透過率が1.0×10-15~1.0×10-13[(mol・m)/(m・s・Pa)]である、蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記シーラント層が、ポリプロピレン系樹脂からなるベース樹脂(A)を含み、
前記ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレン及びブロックポリプロピレンのうちの少なくとも一方を含み、
前記ポリプロピレン系樹脂の結晶化温度が100~120℃であり、前記ポリプロピレン系樹脂の融解温度が155~168℃である、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記シーラント層が、ポリプロピレン系樹脂からなるベース樹脂(A)を含み、
前記ポリプロピレン系樹脂が、15~40g/10minのMFRを有する第1ポリプロピレン系樹脂と、1~10g/10minのMFRを有する第2ポリプロピレン系樹脂とを含む、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
前記シーラント層が、ポリプロピレン系樹脂からなるベース樹脂(A)と、添加剤(B)とを含み、
前記添加剤(B)が、結晶化温度が50~90℃で且つ融解温度が50~120℃である成分を含み、
前記成分が、前記ベース樹脂(A)に対して相溶である相溶系エラストマー成分(B1)、前記ベース樹脂に対して非相溶である非相溶系エラストマー成分(B2)、ポリプロピレンとポリエチレンのブロック共重合体又はグラフト共重合体(B3)、及び、ポリエチレンとエチレンブチレンのブロック共重合体(B4)のうちの少なくともいずれか1つを含む、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記成分が、前記非相溶系エラストマー成分(B2)と、ポリプロピレンとポリエチレンのブロック共重合体(B3)、又は、ポリエチレンとエチレンブチレンのブロック共重合体(B4)とを含み、
前記非相溶系エラストマー成分(B2)がポリエチレン系エラストマー成分である、請求項4に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項6】
前記蓄電デバイスが全固体電池である、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項7】
蓄電素子と、
前記蓄電素子を収容する外装袋とを備え、
前記外装袋が、請求項1~5のいずれか一項に記載の外装材を有する、蓄電デバイス。
【請求項8】
全固体電池である、請求項7に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスとして、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電デバイスの更なる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材として、従来は金属製の缶が用いられていたが、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルムが用いられるようになっている。
【0003】
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池は、ラミネート型リチウムイオン電池と称される。ラミネート型リチウムイオン電池は、正極、液体電解質及び負極を備えた蓄電素子と、蓄電素子を収容する外装袋とを備えており、内部への水分の浸入を防止している。外装袋は外装材を有しており、外装材は、基材層、バリア層及びシーラント層をこの順に備えている。そして、外装材は、シーラント層を内側に、基材層を外側に向けて、蓄電素子を覆っている。ラミネート型のリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に蓄電素子を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止することによって製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-101765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リチウムイオン電池の次世代電池として、全固体電池と称される蓄電デバイスの研究開発がなされている。全固体電池は、蓄電素子における伝導率を上げるため、全固体電池を拘束し、外装材を介して蓄電素子を加圧しながら作動させる。効率よく全固体電池を作動させるためには、蓄電素子に対して均一に圧力を掛ける必要がある。
【0006】
しかし、電池の製造工程では、外装材をロール搬送するときにシーラント層に搬送方向に沿った傷がつくことがある。シーラント層にこのような傷があると、蓄電素子の被加圧面に均一に圧力が掛からず電池の作動効率が低下するおそれがある。
また、全固体電池以外の蓄電デバイスにおいても、蓄電デバイスの性能向上の観点からは、シーラント層に傷がつかないことが望ましい。
したがって、優れた耐傷性を有することが可能な蓄電デバイス用外装材が求められていた。
【0007】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、優れた耐傷性を有することが可能な蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、意外なことに、シーラント層の酸素透過度を特定の範囲にすることで、外装材の耐傷性が改善されることを突き止め、本開示に至ったものである。
すなわち、本開示の一側面は、蓄電デバイスに用いられる蓄電デバイス用外装材であって、少なくとも、基材層と、バリア層と、シーラント層とをこの順に備え、前記シーラント層の100℃における酸素透過率が1.0×10-15~1.0×10-13[(mol・m)/(m・s・Pa)]である、蓄電デバイス用外装材を提供する。
【0009】
上記外装材は優れた耐傷性を有することが可能となる。
このような効果が奏される理由について、本開示の発明者らは以下のように推察している。
すなわち、まず、シーラント層において、酸素は非晶領域が多いほど透過し易くなり、非晶領域が少ないほど透過しにくくなると考えられる。そのため、シーラント層の結晶性が高いと、酸素がシーラント層を透過しにくくなりシーラント層は固くなる一方、シーラント層の結晶性が低いと、酸素がシーラント層を透過し易くなりシーラント層は柔らかくなると考えられる。
したがって、シーラント層の酸素透過率が低すぎる場合に、外装材がロール搬送され、ロールからシーラント層に応力が加えられると、シーラント層が柔らかいため、ロールからバリア層に向かう応力がシーラント層の内部に伝わりやすくなる。しかし、応力のバリア層側からの跳ね返りが起こるため、このバリア層側からの跳ね返りの応力によってロールからの応力が打ち消され、シーラント層の内部においては、全体として応力が加わりにくい状態となる。その結果、ロールからバリア層に向かう応力が緩和されにくくなり、シーラント層のうちロール側の表面に集中し、シーラント層の表面が傷つきやすくなる。
一方、シーラント層の酸素透過率が高すぎる場合に、外装材がロール搬送され、ロールからシーラント層に応力が加えられると、シーラント層が固いため、ロールからバリア層に向かう応力がシーラント層の内部に伝わりにくくなる。その結果、ロールからバリア層に向かう応力が緩和されにくくなり、シーラント層のうちロール側の表面に集中し、シーラント層の表面が傷つきやすくなる。
これに対し、本開示の外装材では、シーラント層の酸素透過率が適度な範囲となっており、シーラント層が柔らかすぎず固すぎないこととされるため、ロールからバリア層に向かう応力が、シーラント層の内部にも適度に伝えられ、その分、シーラント層の表面への応力の集中が抑制される。すなわち、ロールからバリア層に向かう応力が適度に緩和される。その結果、シーラント層の表面が傷つきにくくなり、外装材が優れた耐傷性を有することが可能となる。
【0010】
上記蓄電デバイス用外装材において、シーラント層が、ポリプロピレン系樹脂からなるベース樹脂(A)を含み、前記ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレン及びブロックポリプロピレンのうちの少なくとも一方を含み、前記ポリプロピレン系樹脂の結晶化温度が100~120℃であり、前記ポリプロピレン系樹脂の融解温度が155~168℃であってよい。
この外装材では、ベース樹脂に含まれるポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレン及びブロックポリプロピレンのうちの少なくとも一方を含み、ポリプロピレン系樹脂の結晶化温度が100~120℃であり、ポリプロピレン系樹脂の融解温度が155~168℃であることで、外装材が十分な固さを有することが可能となり、ポリプロプレンがランダムポリプロピレンのみで構成される場合、ポリプロピレン系樹脂の結晶化温度又は融解温度が上記範囲を外れる場合に比べて、外装材の耐傷性がより向上する。
【0011】
上記蓄電デバイス用外装材において、前記シーラント層が、ポリプロピレン系樹脂からなるベース樹脂(A)を含み、前記ポリプロピレン系樹脂が、15~40g/10minのMFRを有する第1ポリプロピレン系樹脂と、1~10g/10minのMFRを有する第2ポリプロピレン系樹脂とを含んでよい。
高いMFRを有する第1ポリプロピレン系樹脂は、分子が動きやすく結晶化が進行し易いため、比較的固くなりやすいのに対して、低いMFRを有する第2ポリプロピレン系樹脂は、結晶化が進行し難いため、比較的柔らかくなりやすい。そのため、ポリプロピレン系樹脂がMFRの高い第1ポリプロピレン系樹脂と、MFRの低い第2ポリプロピレン系樹脂とを含むことで、シーラント層に適度な応力緩和性が付与され、外装材は、より優れた耐傷性を有することが可能となる。
【0012】
上記蓄電デバイス用外装材において、前記シーラント層が、ポリプロピレン系樹脂からなるベース樹脂(A)と、添加剤(B)とを含み、前記添加剤(B)が、結晶化温度が50~90℃で且つ融解温度が50~120℃である成分を含み、前記成分が、前記ベース樹脂(A)に対して相溶である相溶系エラストマー成分(B1)、前記ベース樹脂(A)に対して非相溶である非相溶系エラストマー成分(B2)、ポリプロピレンとポリエチレンのブロック共重合体又はグラフト共重合体(B3)、及び、ポリエチレンとエチレンブチレンのブロック共重合体(B4)のうちの少なくともいずれか1つを含んでよい。
この場合、シーラント層が、ベース樹脂に加えて、上記添加剤を含むことで、応力緩和性がより効果的にシーラント層に付与され、外装材は、より一層優れた耐傷性を有することが可能となる。
【0013】
上記蓄電デバイス用外装材において、前記成分が、前記非相溶系エラストマー成分(B2)と、ポリプロピレンとポリエチレンのブロック共重合体(B3)又はポリエチレンとエチレンブチレンのブロック共重合体(B4)とを含み、前記非相溶系エラストマー成分(B2)がポリエチレン系エラストマー成分であってよい。
添加剤が上記成分を含むと、応力緩和性が効果的にシーラント層に付与されるとともに、添加剤の分散性がより向上する。その結果、外装材の耐傷性がより向上する。
【0014】
上記蓄電デバイス用外装材において、前記蓄電デバイスが全固体電池であってよい。
上記蓄電デバイス用外装材は、優れた耐傷性を有することが可能であるため、シーラント層の表面に凹凸が形成されにくくなる。そのため、上記蓄電デバイス用外装材が、蓄電素子を備える全固体電池の外装材として用いられて、外装材を介して蓄電素子が加圧される場合、蓄電素子の被加圧面に対して、圧力が大きくなる箇所と圧力が小さくなる箇所が存在することが抑制され、蓄電素子の被加圧面が均一に加圧されることになる。その結果、蓄電デバイスとしての全固体電池を効率よく作動させることができる。
【0015】
本開示の他の一側面は、蓄電素子と、前記蓄電素子を収容する外装袋とを備え、前記外装袋が、上述した外装材を有する、蓄電デバイスを提供する。
上記蓄電デバイスによれば、上記蓄電デバイス用外装材が優れた耐傷性を有することが可能となるため、シーラント層の表面に凹凸が形成されにくくなる。そのため、上記蓄電デバイス用外装材が、蓄電素子を備える蓄電デバイスの外装材として用いられて、外装材を介して蓄電素子が加圧される場合、蓄電素子の被加圧面に対して、圧力が大きくなる箇所と圧力が小さくなる箇所が存在することが抑制され、蓄電素子の被加圧面が均一に加圧されることになる。その結果、蓄電デバイスの性能を向上させることができる。
上記蓄電デバイスは全固体電池であってよい。
この場合、蓄電素子の被加圧面が均一に加圧されるため、蓄電デバイスとしての全固体電池を効率よく作動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、優れた耐傷性を有することが可能な蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一実施形態に係る外装材の概略断面図である。
図2図1の外装材の変形例を示す概略断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る蓄電デバイスを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0019】
[蓄電デバイス用外装材]
図1は、本開示の一実施形態に係る蓄電デバイス用外装材を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態の蓄電デバイス用外装材(以下、単に「外装材」ともいう)10は、蓄電デバイスに用いられる外装材であり、基材層11と、第1の接着剤層12aと、バリア層13と、接着性樹脂層15、シーラント層16とをこの順に備える。ここで、シーラント層16の100℃における酸素透過率は、1.0×10-15~1.0×10-13[(mol・m)/(m・s・Pa)]である。
この外装材10によれば、優れた耐傷性を有することが可能となる。
【0020】
なお、バリア層13は、基材層11側に第1の腐食防止処理層14aを有し、シーラント層16側に第2の腐食防止処理層14bを有している。外装材10において、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電デバイスの外側、シーラント層16を蓄電デバイスの内側に向けて使用される。
【0021】
以下、外装材10を構成する各層について具体的に説明する。
【0022】
<基材層>
基材層11は、蓄電デバイスを製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途の蓄電デバイスの外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
【0023】
基材層11は、絶縁性を有する樹脂により形成された層であることが好ましい。樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、アセチルセルロース樹脂等を使用することができる。
【0024】
これらの樹脂の中でも、基材層11としては、成型性に優れることから、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,ナイロン9T、ナイロン10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
【0025】
基材層11は、延伸又は未延伸のフィルム形態でも、コーティング被膜としての形態のどちらでも構わない。また、基材層11は単層でも多層でもよく、基材層11が多層である場合は、異なる樹脂からなる層を積層して構成される。基材層11がフィルムの形態であれば共押し出ししたもの、もしくは接着剤を介して積層したものが使用できる。基材層11がコーティング被膜である場合は、コーティング被膜としては、コーティング被膜形成用組成物を複数回コーティングして得られるコーティング被膜が使用できる。基材層11は、フィルムとコーティング被膜を組み合わせて多層とすることもできる。
【0026】
上述した樹脂をフィルム形態で使用する場合は、基材層11は二軸延伸フィルムであることが好ましい。この場合、外装材10の成型性が良好となる。二軸延伸フィルムにおける延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、チューブラー二軸延伸法、同時二軸延伸法等が挙げられる。二軸延伸フィルムは、より優れた深絞り成型性が得られる観点から、チューブラー二軸延伸法により延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0027】
基材層11の厚さは、6~100μmであることが好ましく、10~75μmであることがより好ましく、10~50μmであることが更に好ましい。基材層11の厚さが6μm以上であることにより、外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性を向上できる傾向がある。基材層11の厚さが100μm以下であると、外装材10の総厚を小さくできる。
【0028】
また、基材層11は、シーラント層16の融解温度よりも高い融解温度を有することが好ましい。シーラント層16が多層構造である場合、シーラント層16の融解温度は最も融解温度が高い層の融解温度を意味する。基材層11がシーラント層16の融解温度よりも高い融解温度を有することで、ヒートシール時に基材層11(外側の層)が融解することに起因して外装材10の外観が悪くなることを抑制できる。
【0029】
基材層11の融解温度は、好ましくは290℃以上である。但し、基材層11の融解温度は350℃以下であることが好ましい。基材層11として使用でき且つ上記範囲の融解温度を有する樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム、PETフィルム等のポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリフェニレンスルファイドフィルム(PPSフィルム)などが挙げられる。基材層11は、市販のフィルムを使用してもよいし、コーティング(塗工液の塗布及び乾燥)によって形成してもよい。
なお、基材層11は、熱硬化性樹脂を塗工することによって形成してもよい。
また、基材層11は、例えば、各種添加剤(例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでもよい。
【0030】
基材層11の融解温度T11とシーラント層16の融解温度T16の差(T11-T16)は、好ましくは20℃以上である。この温度差が20℃以上であることで、ヒートシールに起因する外装材10の外観の悪化をより一層十分に抑制できる。
【0031】
<第1の接着剤層12a>
第1の接着剤層12aは、基材層11とバリア層13とを接着する層である。第1の接着剤層12aを構成する材料としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)を硬化剤として作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。上述した各種ポリオールは、外装材10に求められる機能や性能に応じて、単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、第1の接着剤層12aを構成する材料としては、上記以外にもエポキシ樹脂を主剤として、硬化剤を配合したものなども使用可能である。
【0032】
第1の接着剤層12aは、上述した主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物を用いて形成される。また、第1の接着剤層12aは、接着剤層に求められる性能に応じて、上述した接着剤組成物に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
【0033】
接着剤組成物は、硬化剤として、脂環式イソシアネート多量体及び分子構造内に芳香環を含むイソシアネート多量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の多官能イソシアネート化合物を含むことが好ましい。多官能イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体及びヌレート体、トリレンジイソシアネートのビウレット体及びヌレート体、ジフェニルメタンジイソシアネートのアダクト体、ビウレット体及びヌレート体、並びに、キシリレンジイソシアネートのアダクト体、ビウレット体及びヌレート体が挙げられる。
【0034】
硬化剤としては、脂環式イソシアネート多量体と、分子構造内に芳香環を含むイソシアネート多量体とを併用してもよい。これらを併用することで、耐熱性がより向上する傾向がある。
【0035】
接着剤組成物は、耐熱性がより向上する観点から、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールを含むことが好ましい。これらの中でも、耐熱性が更に向上する観点から、ポリエステルポリオールがより好ましい。
【0036】
接着剤組成物において、ポリオールに含まれる水酸基数に対する、多官能イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基数の比率(NCO/OH)は、1.5~40.0であってもよく、15.0~30.0であってもよい。この比率が1.5以上であると、硬化剤同士が反応し、ウレア樹脂やビウレット樹脂といった副生成物が生成し易くなる。これらの副生成物には活性水素基が含まれているため、隣接する層の極性基と相互作用を起こし、第1の接着剤層12aと基材層11及びバリア層13との界面密着力がより向上する。このため、外装材10の耐熱性が向上する傾向がある。一方、上記比率が40.0以下であると、室温環境下及び高温環境下での外装材10のラミネート強度をより向上させることができる。
【0037】
第1の接着剤層12aの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmであることが好ましく、2~7μmであることがより好ましい。
【0038】
第1の接着剤層12aの単位面積当たりの質量は、室温環境下及び高温環境下の両方でより優れたラミネート強度を確保できると共に、より優れた深絞り成型性を得る観点から、2.0~6.0g/mであってよく、2.5~5.0g/mであってもよく、3.0~4.0g/mであってもよい。
【0039】
<バリア層>
バリア層13は、水分が蓄電デバイスの内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、バリア層13は、深絞り成型をするために延展性を有していてもよい。
バリア層13としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔、あるいは、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどを用いることができる。
蒸着膜を設けたフィルムとしては、例えば、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムを使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
バリア層13としては、質量(比重)、防湿性等のバリア性、加工性及びコストの面から、金属箔が好ましく、アルミニウム箔又はステンレス箔がより好ましい。
【0040】
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができる。さらなる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させるためには、鉄を含むアルミニウム箔を用いることがより好ましい。
アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1~9.0質量%であることが好ましく、0.5~2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。
アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐腐食性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いることが好ましい。
アルミニウム箔に脱脂処理を施す場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。
【0041】
バリア層13の厚さは、特に限定されるものではないが、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9~200μmであることが好ましく、15~100μmであることがより好ましい。
【0042】
<第1及び第2の腐食防止処理層>
第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bは、バリア層13を構成する金属箔(金属箔層)等の腐食を防止するために設けられる層である。また、第1の腐食防止処理層14aは、バリア層13と第1の接着剤層12aとの密着力を高める役割を果たす。また、第2の腐食防止処理層14bは、バリア層13と接着性樹脂層15との密着力を高める役割を果たす。
第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。
第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b(以下、単に「腐食防止処理層14a,14b」とも言う)としては、例えば、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらの処理の組み合わせにより形成される。
【0043】
脱脂処理としては、酸脱脂及びアルカリ脱脂が挙げられる。
酸脱脂としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸の単独、又はこれらの混合液を使用する方法などが挙げられる。また、酸脱脂において、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることが好ましい。この場合、特にバリア層13にアルミニウム箔を用いた場合に、アルミニウムの脱脂効果が得られる。さらに酸脱脂剤は、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成させることができ、耐腐食性という点で有効である。
アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを使用する方法が挙げられる。
【0044】
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理するベーマイト処理が挙げられる。
陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
【0045】
化成処理としては、浸漬型、塗布型が挙げられる。
浸漬型の化成処理としては、例えばクロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。
一方、塗布型の化成処理としては、腐食防止性能を有するコーティング剤をバリア層13上に塗布する方法が挙げられる。
【0046】
これら腐食防止処理のうち、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理のいずれかで腐食防止処理層の少なくとも一部を形成する場合は、事前に上述した脱脂処理を行うことが好ましい。なお、バリア層13として焼鈍工程を通した金属箔など脱脂処理済みの金属箔を用いる場合は、腐食防止処理層14a,14bの形成において改めて脱脂処理する必要はない。
【0047】
塗布型の化成処理に用いられるコーティング剤は、好ましくは3価クロムを含有する。また、コーティング剤には、後述するカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが含まれていてもよい。
【0048】
また、上記処理のうち、特に熱水変成処理、陽極酸化処理は、処理剤によってアルミニウム箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れるアルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト)を形成させる。そのため、アルミニウム箔を用いたバリア層13から腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成した形態が得られるので、上記処理は化成処理の定義に包含される。
一方、後述するように化成処理の定義に含まれない、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14a,14bを形成することも可能である。この方法としては、例えば、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、且つ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも、アルミニウム箔などの金属箔に腐食防止効果を付与することが可能となる。
【0049】
上記希土類元素酸化物のゾルとしては、例えば、水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系などの各種溶媒を用いたゾルが挙げられる。中でも、水系のゾルが好ましい。
【0050】
上記希土類元素酸化物のゾルには、通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸又はその塩、酢酸、りんご酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸が分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸には、外装材10において、以下の(1)~(4)の効果が期待される。
(1)ゾルの分散安定化
(2)リン酸のアルミキレート能力を利用したバリア層13との密着性の向上
(3)アルミニウムイオンを捕獲(不動態形成)することよる腐食耐性の付与
(4)低温でもリン酸の脱水縮合を起こしやすいことによる腐食防止処理層(酸化物層)14a,14bの凝集力の向上
【0051】
上記希土類元素酸化物ゾルにより形成される腐食防止処理層14a,14bは、無機粒子の集合体であるため、乾燥キュアの工程を経ても層自身の凝集力が低くなるおそれがある。そこで、この場合の腐食防止処理層14a,14bは、凝集力を補うために、アニオン性ポリマー、又はカチオン性ポリマーにより複合化されていることが好ましい。
【0052】
腐食防止処理層14a,14bは、前述した層には限定されない。例えば、公知技術である塗布型クロメートのように、樹脂バインダー(アミノフェノールなど)にリン酸とクロム化合物を配合した処理剤を用いて形成してもよい。この処理剤を用いれば、腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。また、塗液の安定性を考慮する必要があるものの、希土類元素酸化物ゾルとポリカチオン性ポリマーあるいはポリアニオン性ポリマーとを事前に一液化したコーティング剤を使用して腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。
【0053】
腐食防止処理層14a,14bの単位面積当たりの質量は、多層構造、単層構造いずれであっても、0.005~0.200g/mであることが好ましく、0.010~0.100g/mであることがより好ましい。上記単位面積当たりの質量が0.005g/m以上であれば、バリア層13に腐食防止機能を付与しやすい。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/mを超えても、腐食防止機能はあまり変らない。一方、希土類元素酸化物ゾルを用いた場合には、塗膜が厚いと乾燥時の熱によるキュアが不十分となり、凝集力の低下を伴うおそれがある。なお、腐食防止処理層14a,14bの厚さについては、その比重から換算できる。
【0054】
腐食防止処理層14a,14bは、シーラント層16とバリア層13との密着性を保持しやすくなる観点から、例えば、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1~100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されている態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含む態様であってもよい。
【0055】
<シーラント層>
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層であり、蓄電デバイスの組み立て時に内側に配置されてヒートシール(熱融着)される層である。
シーラント層16の100℃における酸素透過率は、1.0×10-15~1.0×10-13[(mol・m)/(m・s・Pa)]であればよい。
シーラント層16の100℃における酸素透過率は、好ましくは7.0×10-15~5.0×10-14[(mol・m)/(m・s・Pa)]であり、より好ましくは9.0×10-15~3.0×10-14[(mol・m)/(m・s・Pa)]である。
酸素透過率が7.0×10-15[(mol・m)/(m・s・Pa)]以上であると、シーラント層16が比較的固くなるため、外装材10がロール搬送され、ロールからシーラント層16に応力が加えられる際に、ロールからバリア層13に向かう応力のバリア層13側からの跳ね返りが抑制される。このため、ロールからバリア層13に向かう応力が緩和されやすくなり、シーラント層の表面が傷つきにくくなる。一方、酸素透過率が5.0×10-14[(mol・m)/(m・s・Pa)]以下であると、シーラント層が比較的柔らかくなるため、外装材10がロール搬送され、ロールからシーラント層16に応力が加えられる場合に、ロールからバリア層13に向かう応力が緩和されやすくなり、シーラント層16の表面が傷つきにくくなる。
【0056】
シーラント層16は、ポリプロピレン系樹脂からなるベース樹脂(A)を含む。シーラント層16は、添加剤(B)をさらに含んでもよく、添加剤(B)をさらに含まなくてもよい。
【0057】
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを含む重合単量体から得られる樹脂である。ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン及びランダムポリプロピレン等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリプロピレン系樹脂は、ホモポリプロピレン及びブロックポリプロピレンのうちの少なくとも一方を含むことが好ましい。ポリプロピレンがホモポリプロピレン及びブロックポリプロピレンのうちの少なくとも一方を含むことで、外装材10が十分な固さを有することが可能となり、ポリプロプレンがランダムポリプロピレンのみで構成される場合に比べて、外装材10の耐傷性がより向上する。ここで、ポリプロピレン系樹脂は、ブロックポリプロピレンを含むことが好ましい。
【0058】
ポリプロピレン系樹脂の結晶化温度は、特に制限されるものではないが、100~120℃であることが好ましい。
この場合、外装材10が十分な固さを有することが可能となり、ポリプロプレン系樹脂の結晶化温度が上記範囲を外れる場合に比べて、外装材10の耐傷性がより向上する。ポリプロピレン系樹脂の結晶化温度は、外装材10の耐傷性をより向上させる観点からは、好ましくは102~120℃であり、より105~115℃である。
【0059】
ポリプロピレン系樹脂の融解温度は、特に制限されるものではないが、155~168℃であることが好ましい。
この場合、外装材10が十分な固さを有することが可能となり、ポリプロプレン系樹脂の融解温度が上記範囲を外れる場合に比べて、外装材10の耐傷性がより向上する。ポリプロピレン系樹脂の融解温度は、外装材10の耐傷性をより向上させる観点からは、好ましくは157~167℃であり、より160~166℃である。
【0060】
融解温度-結晶化温度は特に制限されるものではなく、例えば30~70℃であってよい。融解温度-結晶化温度は40~65℃であることが好ましく、50~60℃であることがより好ましい。この場合、シーラント層16において固さと柔らかさがバランス良く発現する。
【0061】
ポリプロピレン系樹脂は、15~40g/10minのMFRを有する第1ポリプロピレン系樹脂と、1~10g/10minのMFRを有する第2ポリプロピレン系樹脂とを含むことが好ましい。
高いMFRを有する第1ポリプロピレン系樹脂は、分子が動きやすく結晶化が進行し易いため、比較的固くなりやすいのに対して、低いMFRを有する第2ポリプロピレン系樹脂は、結晶化が進行し難いため、比較的柔らかくなりやすい。そのため、ポリプロピレン系樹脂がMFRの高い第1ポリプロピレン系樹脂と、MFRの低い第2ポリプロピレン系樹脂とを含むことで、シーラント層16に適度な応力緩和性が付与され、外装材10は、より優れた耐傷性を有することが可能となる。
【0062】
第1ポリプロピレン系樹脂のMFRは、好ましくは20~35g/10minであり、より好ましくは23~30g/10minである。
第2ポリプロピレン系樹脂のMFRは、好ましくは2~8g/10minであり、より好ましくは3~5g/10minである。
【0063】
第2ポリプロピレン系樹脂のMFRに対する第1ポリプロピレン系樹脂のMFRの比Rは、0より大きいことが好ましい。
この場合、シーラント層16が比較的固くなるため、外装材10がロール搬送され、ロールからシーラント層16に応力が加えられる際に、ロールからバリア層13に向かう応力のバリア層13側からの跳ね返りが抑制される。このため、ロールからバリア層13に向かう応力が緩和されやすくなり、シーラント層の表面が傷つきにくくなる。
MFRの比Rは、好ましくは3以上であり、より好ましくは5以上である。
MFRの比Rは、5以上であることが好ましい。この場合、シーラント層16が比較的柔らかくなるため、外装材10がロール搬送され、ロールからシーラント層16に応力が加えられる場合に、ロールからバリア層13に向かう応力が緩和されやすくなり、シーラント層16の表面が傷つきにくくなる。
MFRの比Rは、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下である。
【0064】
添加剤(B)は、特に制限されるものではないが、結晶化温度が50~90℃で且つ融解温度が50~120℃である成分を含むことが好ましい。
上記成分の結晶化温度及び融解温度が50℃以上であると、シーラント層16に適度な柔らかさを付与できるため、外装材10がロール搬送され、ロールからシーラント層16に応力が加えられる場合に、ロールからバリア層13に向かう応力が緩和されやすくなり、シーラント層16の表面が傷つきにくくなる。上記成分の結晶化温度が90℃以下又は融解温度が120℃以下であると、シーラント層16が比較的固くなるため、外装材10がロール搬送され、ロールからシーラント層16に応力が加えられる際に、ロールからバリア層13に向かう応力のバリア層13側からの跳ね返りが抑制される。このため、ロールからバリア層13に向かう応力が緩和されやすくなり、シーラント層の表面が傷つきにくくなる。
【0065】
上記成分の結晶化温度は、外装材10の耐傷性をより向上させる観点からは、好ましくは55~85℃であり、より好ましくは60~80℃である。
【0066】
上記成分の融解温度は、外装材10の耐傷性をより向上させる観点からは、好ましくは55~115℃であり、より好ましくは65~110℃である。
【0067】
添加剤(B)は、特に制限されるものではないが、結晶化温度が50~90℃で且つ融解温度が50~120℃である成分を含むことが好ましい。
【0068】
融解温度-結晶化温度は特に制限されるものではないが、応力緩和の観点からは、10~45℃であることが好ましく、15~40℃であることがより好ましく、20~35℃であることが特に好ましい。
【0069】
上記成分は、ベース樹脂(A)に対して相溶である相溶系エラストマー成分(B1)、ベース樹脂(A)に対して非相溶である非相溶系エラストマー成分(B2)、ポリプロピレンとポリエチレンのブロック共重合体又はグラフト共重合体(B3)、及び、ポリエチレンとエチレンブチレンのブロック共重合体(B4)のうちの少なくともいずれか1つを含んでよい。
この場合、シーラント層16が、ベース樹脂に加えて上記添加剤(B)を含むことで、シーラント層16に応力緩和性がより効果的に付与され、外装材10は、より一層優れた耐傷性を有することが可能となる。
【0070】
相溶系エラストマー成分(B1)とは、ベース樹脂(A)と溶融混合した場合にベース樹脂(A)中に分散する分散相のサイズが500nm未満である成分を意味する。
相溶系エラストマー成分(B1)としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー成分が挙げられる。ポリオレフィン系エラストマー成分とは、オレフィンに由来する構造を有するエラストマー成分である。ポリオレフィン系成分としては、例えば、ポリプロピレン系エラストマー成分が挙げられる。ポリプロピレン系エラストマー成分は、プロピレンに由来する構造を有するエラストマーである。ポリプロピレン系エラストマー成分としては、具体的には、プロピレンとαオレフィンとの共重合体が挙げられる。αオレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。共重合体としては、ランダム共重合体及びブロック共重合体等が挙げられる。
【0071】
非相溶系エラストマー成分(B2)とは、ベース樹脂(A)と溶融混合した場合にベース樹脂(A)中に分散する分散相のサイズが500nm以上500μm未満で分散する成分を意味する。
非相溶系エラストマー成分(B2)としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー成分が挙げられる。ポリオレフィン系エラストマー成分とは、オレフィンに由来する構造を有するエラストマー成分である。ポリオレフィン系エラストマー成分としては、例えば、ポリエチレン系エラストマー成分、ポリブテン系エラストマー成分及びポリメチルペンテン系エラストマー成分が挙げられる。
ポリエチレン系エラストマー成分は、エチレンに由来する構造を有するエラストマー成分である。ポリブテン系成分は、ブテンに由来する構造を有するエラストマー成分である。ポリメチルペンテン系成分は、メチルペンテンに由来する構造を有するエラストマー成分である。
【0072】
ポリオレフィン系エラストマー成分としては、応力の緩和性の観点からは、ポリエチレン系エラストマー成分が好ましい。
ポリエチレン系エラストマー成分としては、エチレンとαオレフィンとの共重合体が好ましい。αオレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。共重合体としては、ランダム共重合体及びブロック共重合体等が挙げられる。
【0073】
ポリエチレン系エラストマー成分におけるエチレンに由来する構造の含有量は、ポリエチレン系成分の全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。
【0074】
非相溶系エラストマー成分(B2)におけるポリオレフィン系エラストマー成分の含有量は、(B1)成分の全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。
【0075】
上記成分は、非相溶系エラストマー成分(B2)としてのポリエチレン系エラストマー成分と、ポリプロピレンとポリエチレンのブロック共重合体(B3)又はポリエチレンとエチレンブチレンのブロック共重合体(B4)とを含んでよい。
添加剤(B)が上記成分を含むと、応力緩和性が効果的にシーラント層16に付与されるとともに、添加剤(B)の分散性がより向上する。その結果、外装材10の耐傷性がより向上する。
【0076】
ポリプロピレンとポリエチレンのブロック共重合体(B3)又はポリエチレンとエチレンブチレンのブロック共重合体(B4)に対する非相溶系エラストマー成分(B2)の質量比は、0.1以上20未満であってよく、0.3~10であることが好ましく、0.4~5であることがより好ましい。
【0077】
シーラント層16中の添加剤(B)の含有率は、2.5質量%以上であってよい。シーラント層16中の添加剤(B)の含有率は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
シーラント層16中の添加剤(B)の含有率が2.5質量%以上であると、外装材10の耐傷性がより向上する。
シーラント層16中の添加剤(B)の含有率は、50質量%未満であってよい。シーラント層16中の添加剤(B)の含有率は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
シーラント層16中の添加剤(B)の含有率が50質量%未満であると、シーラント層16に対して適度な固さを付与できる。
【0078】
シーラント層16中のベース樹脂(A)及び添加剤(B)の合計含有率は、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。
【0079】
ベース樹脂(A)及び添加剤(B)の合計質量に占めるベース樹脂(A)の割合は、例えば、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよく、93質量%以下、95質量%以下、又は97質量%以下であってよい。
【0080】
シーラント層16は、上記ベース樹脂(A)及び添加剤(B)に加え、必要に応じて他の添加成分として、例えば、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、難燃剤等を含んでいてもよい。
これらの添加成分の含有量は、シーラント層16の全質量を100質量%とした場合、5質量%以下であることが好ましい。
【0081】
シーラント層16の厚さの接着性樹脂層15の厚さに対する比率(シーラント層16の厚さ/接着性樹脂層15の厚さ)は、外装材10の耐傷性を向上させる観点から、1以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましく、1.5以上であることが特に好ましい。
シーラント層16の厚さの接着性樹脂層15の厚さに対する比率(シーラント層16の厚さ/接着性樹脂層15の厚さ)は、外装材10の耐傷性を向上させる観点から、10以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
【0082】
シーラント層16及び接着性樹脂層15の厚さの合計は、15~300μmであってよく、封止性や水蒸気バリア性の観点から、25~150μmであることが好ましく、50~100μmであることがより好ましい。
【0083】
<接着性樹脂層>
接着性樹脂層15は、シーラント層16とバリア層13とを接着する層であり、接着性樹脂を含む。
接着性樹脂層15の100℃における酸素透過率は、特に制限されるものではないが、外装材10の耐傷性をより向上させる観点からは、シーラント層16と同様、1.0×10-15~1.0×10-13[(mol・m)/(m・s・Pa)]であることが好ましい。
また、接着性樹脂層15の100℃における酸素透過率は、好ましくは7.0×10-15~5.0×10-14[(mol・m)/(m・s・Pa)]であり、より好ましくは9.0×10-15~3.0×10-14[(mol・m)/(m・s・Pa)]である。
【0084】
接着性樹脂層15の結晶化温度も特に制限されるものではないが、100~120℃であることが好ましい。
この場合、外装材10が十分な固さを有することが可能となり、ポリプロプレン系樹脂の結晶化温度が上記範囲を外れる場合に比べて、外装材10の耐傷性がより向上する。
ポリプロピレン系樹脂の結晶化温度は、外装材10の耐傷性をより向上させる観点からは、好ましくは102~120℃であり、より105~115℃である。
【0085】
接着性樹脂層15は、シーラント層16とバリア層13とを接着する樹脂を含んでいれば特に制限されるものではないが、このような樹脂としては、酸変性ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0086】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸、カルボン酸及びスルホン酸並びにそれらの誘導体により変性されたポリオレフィン樹脂であってよい。酸変性ポリオレフィン樹脂は、例えば、グラフト共重合体、ブロック共重合体及びランダム共重合体であってよい。酸変性ポリオレフィン樹脂は、バリア層13との接着性の観点から、無水マレイン酸によりグラフト変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0087】
接着性樹脂層15は、必要に応じて、例えば、各種相溶系及び非相溶系の、エラストマー、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、並びに粘着付与剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0088】
外装材10のように外装材が接着性樹脂層15及びシーラント層16を含む場合、各層を形成するための樹脂組成物をそれぞれ調製してTダイ法やインフレーション法により積層してもよく、1層を製膜した後、その上にもう1層を押し出すことで積層してもよく、各層をTダイ法やインフレーション法にて作製した後に接着剤にて貼り合わせて積層してもよい。使用する接着剤としては、界面密着性の観点から、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤(例えばイソシアネート等)を含む接着剤を用いることができる。
【0089】
接着性樹脂層15及びシーラント層16中の樹脂の分析は、IR、NMR、各種質量(mass)分析法、X線分析、ラマン分光法、GPC、DSC、DMAなどの公知の分析方法にて分析することができる。
【0090】
以上、本実施形態の蓄電デバイス用外装材の好ましい実施形態について詳述したが、本開示は上記の特定の実施形態に限定されるものではない。
【0091】
例えば、図1では、バリア層13の両面に腐食防止処理層14a,14bを有する外装材が示されているが、外装材は、腐食防止処理層14a,14bのいずれか一方のみを有していてもよく、腐食防止処理層14a,14bを有していなくてもよい。
【0092】
図1では、接着性樹脂層15を用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されている場合を示したが、図2に示す蓄電デバイス用外装材20のように、第2の接着剤層12bを用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されていてもよい。
【0093】
<第2の接着剤層>
ここで、第2の接着剤層12bについて説明する。
第2の接着剤層12bは、バリア層13とシーラント層16とを接着する層である。第2の接着剤層12bには、バリア層13とシーラント層16とを接着するための一般的な接着剤を用いることができる。
【0094】
バリア層13上に腐食防止処理層14bが設けられており、且つ、第2の腐食防止処理層14bが上述したカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含む層を有する場合、第2の接着剤層12bは、第2の腐食防止処理層14bに含まれる上記ポリマーと反応性を有する化合物(以下、「反応性化合物」とも言う)を含む層であることが好ましい。
【0095】
例えば、第2の腐食防止処理層14bがカチオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含むことが好ましい。
第2の腐食防止処理層14bがアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはアニオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含むことが好ましい。
また、第2の腐食防止処理層14bがカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物と、アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物とを含むことが好ましい。ただし、第2の接着剤層12bは必ずしも上記2種類の化合物を含む必要はなく、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの両方と反応性を有する化合物を含んでいてもよい。ここで、「反応性を有する」とは、カチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーと共有結合を形成することである。また、第2の接着剤層12bは、酸変性ポリオレフィン樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0096】
カチオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、及び、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0097】
これら多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示した多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、カチオン性ポリマーとの反応性が高く、架橋構造を形成しやすい点で、多官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0098】
アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、グリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
これらグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示したグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、アニオン性ポリマーとの反応性が高い点で、グリシジル化合物が好ましい。
【0099】
第2の接着剤層12bが酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、反応性化合物は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基とも反応性を有する(すなわち、酸性基と共有結合を形成する)ことが好ましい。
これにより、第2の腐食防止処理層14bとの接着性がより高まる。加えて、酸変性ポリオレフィン樹脂が架橋構造となり、外装材20の耐溶剤性がより向上する。
【0100】
反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基に対し、等量から10倍等量であることが好ましい。
等量以上であれば、反応性化合物が酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基と十分に反応する。一方、10倍等量を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂との架橋反応としては十分飽和に達しているため、未反応物が存在し、各種性能の低下が懸念される。したがって、例えば、反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5~20質量部(固形分比)であることが好ましい。
【0101】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸性基をポリオレフィン樹脂に導入したものである。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、酸無水物基などが挙げられ、無水マレイン酸基や(メタ)アクリル酸基などが特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、シーラント層16に用いる変性ポリオレフィン樹脂と同様のものを用いることができる。
【0102】
第2の接着剤層12bには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0103】
第2の接着剤層12bは、硫化水素等の腐食性ガスや電解液が関与する場合のヒートシール強度の低下を抑制する観点及び絶縁性の低下をさらに抑制する観点から、例えば、酸変性ポリオレフィンと、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びカルボジイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の硬化剤と、を含むものであってもよい。
なお、カルボジイミド化合物としては、例えば、N,N’-ジ-o-トルイルカルボジイミド、N,N’-ジフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ジオクチルデシルカルボジイミド、N-トリイル-N’-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,2-ジ-t-ブチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。
【0104】
また、第2の接着剤層12bを形成する接着剤として、例えば、水添ダイマー脂肪酸及びジオールからなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとを配合したポリウレタン系接着剤を用いることもできる。接着剤として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、二官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂や、エポキシ基を有する主剤にアミン化合物などを作用させたエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは耐熱性の観点から好ましい。
【0105】
第2の接着剤層12bの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、及び加工性等を得る観点から、1~10μmであることが好ましく、2~7μmであることがより好ましい。
【0106】
[外装材の製造方法]
次に、図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0107】
本実施形態の外装材10の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、第1の接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、バリア層13の腐食防止処理層14b側の面上に接着性樹脂層15及びシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。
【0108】
(バリア層への腐食防止処理層の積層工程)
本工程は、バリア層13に対して、腐食防止処理層14a,14bを形成する工程である。その方法としては、上述したように、バリア層13に脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗布したりする方法などが挙げられる。
【0109】
また、腐食防止処理層14a,14bが多層の場合は、例えば、下層側(バリア層13側)の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)をバリア層13に塗布し、焼き付けて第一層を形成した後、上層側の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)を第一層に塗布し、焼き付けて第二層を形成すればよい。
【0110】
脱脂処理についてはスプレー法又は浸漬法にて行えばよい。熱水変成処理や陽極酸化処理については浸漬法にて行えばよい。化成処理については化成処理のタイプに応じ、浸漬法、スプレー法、コート法などを適宜選択して行えばよい。
【0111】
腐食防止性能を有するコーティング剤のコート法については、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコートなど各種方法を用いることが可能である。
【0112】
上述したように、バリア層13に対する各種処理は金属箔の両面又は片面のどちらでも構わないが、片面処理の場合、その処理面はシーラント層16を積層する側に施すことが好ましい。なお、要求に応じて、基材層11の表面にも上記処理を施してもよい。
【0113】
また、第一層及び第二層を形成するためのコーティング剤の塗布量はいずれも、0.005~0.200g/mであることが好ましく、0.010~0.100g/mであることがより好ましい。
【0114】
また、乾燥キュアが必要な場合は、用いる腐食防止処理層14a,14bの乾燥条件に応じて、母材温度として60~300℃の範囲で行うことができる。
【0115】
(基材層とバリア層との貼り合わせ工程)
本工程は、腐食防止処理層14a,14bを設けたバリア層13と、基材層11とを、第1の接着剤層12aを介して貼り合わせる工程である。基材層11は、バリア層13の腐食防止処理層14a側の面に貼り合わせる。
貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーションなどの手法を用い、上述した第1の接着剤層12aを構成する材料にて両者を貼り合わせる。
第1の接着剤層12aは、ドライ塗布量として好ましくは1~10g/mの範囲、より好ましくは2~7g/mの範囲で設ける。
【0116】
(接着性樹脂層及びシーラント層の積層工程)
接着性樹脂層及びシーラント層の積層工程は、バリア層13の腐食防止処理層14b側の面上に接着性樹脂層15及びシーラント層16を形成する工程である。
その方法としては、押出ラミネート機を用いて接着性樹脂層15をシーラント層16とともにサンドラミネーションする方法が挙げられる。
さらには、接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、共押出法でも積層可能である。
接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成では、例えば、上述した接着性樹脂層15及びシーラント層16の構成を満たすように、各成分が配合される。
接着性樹脂層15の形成には、上述した接着性樹脂層15の構成成分を含有する接着性樹脂層形成用樹脂組成物が用いられる。
シーラント層16の形成には、上述したシーラント層16の構成成分を含有するシーラント層形成用樹脂組成物が用いられる。このとき、シーラント層16は、100℃における酸素透過率が1.0×10-15~1.0×10-13[(mol・m)/(m・s・Pa)]となるように形成する。そのためには、例えばシーラント層16に含まれるベース樹脂(A)及び添加剤(B)の種類を適宜組合せ、ベース樹脂(A)及び添加剤(B)の含有率などを適宜選択し、シーラント層16の結晶化温度、融解温度、MFRなどを調節すればよい。
【0117】
接着性樹脂層及びシーラント層の積層工程により、図1に示すような、基材層11/第1の接着剤層12a/第1の腐食防止処理層14a/バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16の順で各層が積層された積層体が得られる。
【0118】
なお、接着性樹脂層15は、上述した材料配合組成になるように、ドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押し出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒した造粒物を、押出ラミネート機を用いて押出すことで積層させてもよい。
【0119】
シーラント層16は、シーラント層形成用樹脂組成物の構成成分をドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押し出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15及びシーラント層16は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒物を用いて、押出ラミネート機で接着性樹脂層15とシーラント層16とを押し出すタンデムラミネート法、又は共押出法で積層させてもよい。
また、接着性樹脂層15及びシーラント層16は、シーラント層形成用樹脂組成物を用いて、事前にキャストフィルムとしてシーラント層を製膜し、このシーラント層を接着性樹脂とともにサンドラミネーションする方法により積層させてもよい。
接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成速度(加工速度)は、生産性の観点から、例えば、80m/分以上であることができる。
【0120】
(エージング処理工程)
エージング処理工程は、積層体をエージング(養生)処理する工程である。積層体をエージング処理することで、基材層11/第1の接着剤層12a/第1の腐食防止処理層14a/バリア層13間の接着、及び、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/第2の接着剤層12b/シーラント層16間の接着を促進させることができる。
エージング温度は、80℃以上、100℃以上、又は120℃以上であってよく、140℃以下、150℃以下、又は160℃以下であってよい。
エージング時間は、1時間以上、2時間以上又は3時間以上であってよく、24時間以下、48時間以下、又は72時間以下であってよい。
【0121】
以上のようにして、図1に示すような、本実施形態の外装材10を製造することができる。
【0122】
次に、図2に示す外装材20の製造方法の一例について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0123】
本実施形態の外装材20の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、第1の接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、バリア層13の腐食防止処理層14b側に、第2の接着剤層12bを介してシーラント層16を貼り合わせて積層体を得る工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。
第1の接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程までは、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。得られた積層体をエージング処理する工程は、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。
【0124】
(第2の接着剤層及びシーラント層の積層工程)
第2の接着剤層及びシーラント層の積層工程は、バリア層13の腐食防止処理層14b側に、第2の接着剤層12bを介してシーラント層16を貼り合わせて積層体を得る工程である。
貼り合わせの方法としては、ウェットプロセス及びドライラミネーション等が挙げられる。
【0125】
ウェットプロセスの場合は、第2の接着剤層12bを構成する接着剤の溶液又は分散液を、腐食防止処理層14b上に塗工し、所定の温度で溶媒を飛ばし乾燥造膜、又は乾燥造膜後に必要に応じて焼き付け処理を行う。
その後、シーラント層16を積層し、外装材20を製造する。
塗工方法としては、先に例示した各種塗工方法が挙げられる。第2の接着剤層12bの好ましいドライ塗布量は、第1の接着剤層12aと同様である。
【0126】
この場合、シーラント層16は、例えば、上述したベース樹脂(A)及び添加剤(B)を含有するシーラント層形成用樹脂組成物を用いて、溶融押出成形機により製造することができる。溶融押出成形機では、生産性の観点から、加工速度を80m/分以上とすることができる。
【0127】
本開示の蓄電デバイス用外装材は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタなどの蓄電デバイス用の外装材として用いることもできるが、本開示の蓄電デバイス用外装材は、全固体電池からなる蓄電デバイスに用いられる外装材として特に好適に用いることができる。
上記蓄電デバイス用外装材は、優れた耐傷性を有することが可能であるため、シーラント層の表面に凹凸が形成されにくくなる。そのため、上記蓄電デバイス用外装材が、蓄電素子を備える全固体電池の外装材として用いられて、外装材を介して蓄電素子が加圧される場合、蓄電素子の被加圧面に対して、圧力が大きくなる箇所と圧力が小さくなる箇所が存在することが抑制され、蓄電素子の被加圧面が均一に加圧されることになる。その結果、全固体電池を効率よく作動させることができる。
【0128】
[蓄電デバイス]
次に、本開示の蓄電デバイスの実施形態について説明する。
図3は、本開示の一実施形態に係る蓄電デバイスを示す斜視図である。図3に示されるように、蓄電デバイスとしての全固体電池50は、蓄電素子52と、蓄電素子52から電流を外部に取り出すための2つの金属端子(電流取出し端子)53と、蓄電素子52を気密状態で収容する外装袋54とを含んで構成される。
外装袋54は、上述した本実施形態に係る外装材10を有しており、蓄電素子52を収容する容器として用いられる。外装材10では、基材層11が最外層であり、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装袋54は、基材層11を全固体電池50の外側、シーラント層16を全固体電池50の内側となるように、1つの外装材10を2つ折りにして周縁部を熱融着することにより、又は、2つの外装材10を重ねて周縁部を熱融着することにより、内部に蓄電素子52を収容することができる。
金属端子53は、シーラント層16を内側とする外装袋54によって挟持されている。金属端子53は、タブシーラントを介して、外装袋54によって挟持されていてもよい。金属端子53は、集電体の一部が外装材10の外部に取り出されたものであり、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなる。
【0129】
蓄電素子52は、一対の電極と、一対の電極の間に挟まれる固体電解質とを有する。一対の電極の一方は正極であり、他方は負極である。固体電解質としては、例えば硫化物系固体電解質及び酸化物系固体電解質などが挙げられる。
【0130】
全固体電池50によれば、外装材10が優れた耐傷性を有することが可能となるため、シーラント層16の表面に凹凸が形成されにくくなる。そのため、外装材10が、蓄電素子52を備える全固体電池50の外装材10として用いられて、外装材10を介して蓄電素子52が加圧される場合、蓄電素子52の被加圧面に対して、圧力が大きくなる箇所と圧力が小さくなる箇所が存在することが抑制され、蓄電素子52の被加圧面が均一に加圧されることになる。このため、全固体電池50は、蓄電素子52において、電極と固体電解質との界面における抵抗の均一性を向上させることができる。その結果、全固体電池50を効率よく作動させることができる。
【0131】
なお、全固体電池50では、外装袋54は、外装材10に代えて外装材20を有してもよい。
【0132】
さらに、蓄電デバイスとしては、全固体電池50に代えて、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタ、半固体電池などを用いることも可能である。
【実施例0133】
以下に、本開示を実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0134】
[使用材料]
基材層、第1の接着剤層、第2の接着剤層、第1の腐食防止処理層形成用材料、第2の腐食防止処理層形成用材料及びバリア層として使用した材料は以下のとおりである。
【0135】
<基材層>
PET:一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)
【0136】
<第1の接着剤層(単位面積当たりの質量4.0g/m)を形成するための接着剤>
ポリエステルポリオール(昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名:テスラック2505-63、水酸基価:7~11mgKOH/g)と、イソホロンジイソシアネートのヌレート体(三井化学株式会社製、商品名:タケネート600)とを、NCO/OH比が20.0となるように配合し、酢酸エチルで固形分26質量%に希釈した接着剤(第1接着剤)
【0137】
<第2の接着剤層(単位面積当たりの質量3.0g/m)を形成するための接着剤>
トルエンに溶解させた酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、イソシアヌレート構造のポリイソシアネート化合物を10質量部(固形分比)で配合した接着剤(第2接着剤)
【0138】
<第1の腐食防止処理層形成用材料及び第2の腐食防止処理層形成用材料>
第1の腐食防止処理層形成用材料(基材層側)及び第2の腐食防止処理層形成用材料(シーラント層側)は、以下の(CL-1)及び(CL-2)のとおりである。
(CL-1):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度10質量%に調整したポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル
なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対してリン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
(CL-2):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度が5質量%になるように調整した組成物
なお、上記組成物においては、ポリアリルアミン(日東紡社製)」:「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」を90:10(質量比)とした。
【0139】
<バリア層(厚さ40μm)>
AL:焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)
【0140】
<接着性樹脂層>
無水マレイン酸変性されたホモポリプロピレン
(100℃における酸素透過率:1.8×10-14[(mol・m)/(m・s・Pa)]、結晶化温度:120℃、融解温度:162℃)
【0141】
<シーラント層>
シーラント層に用いたベース樹脂(A)、添加剤(B)及びフィルムは下記表1に示すとおりである。なお、下記表1において、「PP」は「ポリプロピレン」であり、「PE」は「ポリエチレン」である。
【0142】
【表1】
【0143】
[外装材の作製]
(実施例1)
まず、バリア層に、第1及び第2の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。
すなわち、バリア層の両方の面に(CL-1)を、ドライ塗布量として70mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗布し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL-2)を、ドライ塗布量として20mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗布することで、(CL-1)と(CL-2)からなる複合層を第1及び第2の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL-1)と(CL-2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
【0144】
次に、第1の腐食防止処理層及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層の第1の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、第1の接着剤層を形成するための第1接着剤を用いて基材層に貼りつけ、第1積層体(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層)を得た。具体的には、バリア層の第1の腐食防止処理層側の面上に第1接着剤を、硬化後の厚さが5μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、基材層とラミネートし、80℃で120時間エージングすることで第1積層体を得た。
【0145】
次いで、第1積層体を押出ラミネート機の巻出部にセットした。第1積層体の第2の腐食防止処理層上に、270℃、80m/分の加工条件でTダイから共押出しすることで接着性樹脂層及びシーラント層をこの順で積層し、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/シーラント層の積層体)を得た。このとき、接着性樹脂層及びシーラント層の厚さはそれぞれ25μm、55μmとした。
このとき、シーラント層については、表2に示したベース樹脂(A)及び添加剤(B)を、表2に示す含有率を有するように事前にドライブレンドしてなるシーラント層形成用樹脂組成物を用意しておき、この樹脂組成物を使用した。
【0146】
(実施例2~16及び比較例1~2)
シーラント層の酸素透過率及び組成を表2に示すとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして外装材を作製した。
【0147】
(実施例17)
実施例1と同様にして第1積層体(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層)を得た。
次に、ドライラミネート手法により、第2の接着剤層を形成するための第2接着剤を用いて、第1積層体の第2の腐食防止処理層上に、表2に示す酸素透過率及び組成を有するシーラント層を貼り付けた。
このとき、第1積層体とシーラント層との積層は、第2の腐食防止処理層上に第2接着剤を、乾燥後の厚さが3μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、シーラント層とラミネートし、120℃で3時間エージングすることで行った。
以上のようにして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
【0148】
(比較例3)
実施例1と同様にして第1積層体(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層)を得た。
次に、ドライラミネート手法により、第2の接着剤層を形成するための第2接着剤を用いて、第1積層体の第2の腐食防止処理層上に、表2に示すPETフィルムをシーラント層として貼り付けた。
このとき、第1積層体とシーラント層との積層は、第2の腐食防止処理層上に第2の接着剤層を形成するための接着剤を、乾燥後の厚さが3μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、シーラント層とラミネートし、120℃で3時間エージングすることで行った。
以上のようにして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層)を作製した。
【0149】
[測定方法]
<酸素透過率>
シーラント層の酸素透過率は、以下のようにして測定した。
まず、シーラント層形成用樹脂組成物を200℃で加熱溶融して厚さ80μmの測定用シートを作製した。
次に、差圧式ガス透過率測定装置を用意した。差圧式ガス透過率測定装置としては、バルブ及び圧力センサーが取り付けられた第1ガス管及び第2ガス管と、加熱ヒータを有するセラミックス電気管状炉(型式:ARF-50K、株式会社アサヒ理化製作所製)とを備える装置を用いた。そして、この差圧式ガス透過率測定装置を用いて、差圧法により、測定用シートの酸素透過率を測定した。具体的には、測定用シートを、第1ガス管の端面と第2ガス管の端面との間に挟むように配置し、セラミックス電気管状炉内で100℃に保温し、測定用シートの片面側の第1ガス管に、第1ガス管と第2ガス管との差圧が0.1MPaとなるように酸素ガス(純度:99.7%以上)を供給し、測定用シートを透過する第2ガス管内の酸素ガスの圧力の経時変化を測定することで、酸素透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0150】
<結晶化温度及び融解温度>
ベース樹脂(A)、添加剤(B)及びフィルムの結晶化温度及び融解温度は以下のようにして測定した。
まず、ベース樹脂(A)、添加剤(B)又はフィルムと同一材料からなる試料を5mg用意した。次に、試料を測定用容器に入れ、示差走査熱量(DSC)測定装置にセットし、JIS K7121-1987に準拠して結晶化温度及び融解温度を測定した。
測定は、23℃から210℃まで10℃/minの速度で昇温させた後、210℃から23℃まで10℃/minの速度で降温させる操作を2回行った。
そして、1回目の操作で降温時の結晶化ピークのピークトップの温度を結晶化温度とし、2回目の操作で昇温時の融解ピークのピークトップの温度を融解温度とした。結果を表1に示す。
なお、融解温度については、1回目の操作では測定時の結晶状態に左右されてしまうため、一度結晶性をリセットした後の2回目の操作で測定を行った。
【0151】
<MFR>
ベース樹脂(A)、添加剤(B)及びフィルムのMFR(メルトフローレート)は以下のようにして測定した。
まず、ベース樹脂(A)、添加剤(B)又はフィルムと同一材料からなる試料を用意した。
この試料について、JIS K7210に準拠して、230℃、2.16kg荷重の条件下にMFR(単位:g/10min)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0152】
[耐傷性の評価]
実施例1~17及び比較例1~3で得られた外装材に対して、鉛筆硬度試験を行った。具体的には、JIS K 5600に規定される鉛筆硬度試験器を用いて外装材のシーラント層への傷の付き方を確認し、鉛筆硬度を測定した。そして、鉛筆硬度の結果に応じて、以下の評価基準に基づいて耐傷性の評価を行った。結果を表2に示す。
〔評価基準〕
S:鉛筆硬度が5H以上である場合
A:鉛筆硬度が3H以上5H未満である場合
B:鉛筆硬度が2H以上3H未満である場合
C:鉛筆硬度がH以上2H未満である場合
D:鉛筆硬度がH未満である場合
【0153】
【表2】
【0154】
表2に示す結果より、実施例1~17の外装材についてはいずれも、耐傷性の評価が、「S」、「A」、「B」又は「C」であった。これに対し、比較例1~3の外装材については、いずれも、耐傷性の評価が、「D」であった。
以上のことから、本開示の外装材によれば、優れた耐傷性を有することが可能となることが確認された。
【符号の説明】
【0155】
10,20…外装材、11…基材層、13…バリア層、15…接着性樹脂層、16…シーラント層、50…全固体電池(蓄電デバイス)、52…蓄電素子、54…外装袋。
図1
図2
図3