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特開2024-77809減光機構、出力データの補正方法、及びレーザビーム計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077809
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】減光機構、出力データの補正方法、及びレーザビーム計測装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20240603BHJP
【FI】
B23K26/064 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189981
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小森 一範
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA24
4E168DA26
4E168DA28
4E168DA29
4E168DA38
4E168DA39
4E168EA02
4E168EA15
4E168EA17
(57)【要約】
【課題】レーザビームのエネルギー強度が高くても、画像データを取得する装置を破壊しない程度までレーザビームを減光し、レーザビームのスポットの像形状及びエネルギー強度分布を測定できる減光機構を提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、プレート型の第1ビームスプリッターと第2ビームスプリッターとを備え、レーザビーム照射用光学ユニットの光軸に垂直な面における原点が光軸にある任意の直交座標軸をX軸とY軸としたとき、第1ビームスプリッターはX軸を回転軸として光軸に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度αで傾けて配置し、第2ビームスプリッターはX軸と平行であり光軸を通るX’軸を回転軸として光軸に垂直な面に対して角度-αで傾けて配置することを特徴とする減光機構を採用した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを加工対象物にスポットを形成して照射しレーザ加工するためのレーザビーム照射用光学ユニットから照射される前記レーザビームを減光する減光機構であって、
プレート型の第1ビームスプリッターと第2ビームスプリッターとを備え、
前記レーザビーム照射用光学ユニットの光軸に垂直な面における原点が前記光軸にある任意の直交座標軸をX軸とY軸としたとき、前記第1ビームスプリッターは前記X軸を回転軸として前記光軸に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度αで傾けて配置し、前記第2ビームスプリッターは前記X軸と平行であり前記光軸を通るX’軸を回転軸として前記光軸に垂直な面に対して角度-αで傾けて配置することを特徴とする減光機構。
【請求項2】
前記第1ビームスプリッターと前記第2ビームスプリッターとにおいては、前記レーザビームの入射角度が45°における透過率が0.1%以上5.0%以下である、又は、前記レーザビームの入射角度が45°における反射率が0.1%以上5.0%以下である請求項1に記載の減光機構。
【請求項3】
前記スポットの位置に、結像する前記レーザビームのエネルギー強度分布の情報を読み取る観測装置と、
前記観測装置の出力データを数値演算して補正を行うための演算装置とを備える請求項1に記載の減光機構。
【請求項4】
前記レーザビームの入射角度が45°における透過率が1.0%以上50.0%以下のプレート型の合計厚ビームスプリッターを備え、
前記合計厚ビームスプリッターは前記Y軸と平行であり前記光軸を通るY’軸を回転軸として前記光軸に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度β、又は角度-βで傾けて配置し、
以下の条件を満足する請求項1に記載の減光機構。
【数1】

但し、
45:前記合計厚ビームスプリッターのプレートの厚さ
41:前記第1ビームスプリッターのプレートの厚さ
42:前記第2ビームスプリッターのプレートの厚さ
45:前記合計厚ビームスプリッターの光学材料の屈折率
41:前記第1ビームスプリッターの光学材料の屈折率
42:前記第2ビームスプリッターの光学材料の屈折率
【請求項5】
プレート型の第3ビームスプリッターと第4ビームスプリッターとを備え、
前記第3ビームスプリッターは前記Y軸と平行であり前記光軸を通るY’’軸を回転軸として前記光軸に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度βで傾けて配置し、前記第4ビームスプリッターは前記Y軸と平行であり前記光軸を通るY’’’軸を回転軸として前記光軸に垂直な面に対して角度-βで傾けて配置し、
以下の条件を満足する請求項1に記載の減光機構。
【数2】

但し、
46:前記第3ビームスプリッターのプレートの厚さ
47:前記第4ビームスプリッターのプレートの厚さ
41:前記第1ビームスプリッターのプレートの厚さ
42:前記第2ビームスプリッターのプレートの厚さ
46:前記第3ビームスプリッターの光学材料の屈折率
47:前記第4ビームスプリッターの光学材料の屈折率
41:前記第1ビームスプリッターの光学材料の屈折率
42:前記第2ビームスプリッターの光学材料の屈折率
【請求項6】
前記第3ビームスプリッターと前記第4ビームスプリッターとにおいては、前記レーザビームの入射角度が45°における透過率が0.1%以上5.0%以下である請求項5に記載の減光機構。
【請求項7】
前記レーザビーム照射用光学ユニットは、前記レーザビームを平行光にするためのコリメートレンズと、前記レーザビームを集光するための集光レンズとを備える請求項1に記載の減光機構。
【請求項8】
請求項3に記載の減光機構の観測装置の出力データを数値演算して補正を行う出力データの補正方法であって、
前記出力データのY軸方向について座標位置を補正する数値演算を行うことを特徴とする出力データの補正方法。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の減光機構を備えることを特徴とするレーザビーム計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、レーザビームを加工対象物にスポットを形成して照射しレーザ加工するためのレーザビーム照射用光学ユニットから照射されるレーザビームを減光する減光機構、出力データの補正方法、及びレーザビーム計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザビームが種々の製品の加工に広く用いられている。レーザビームは、1点に集光して被加工物に照射することによって被加工物の表面温度を急激に上昇させ、被加工物の被照射面を融解もしくは蒸発させる。このレーザビームを用いるレーザ加工装置は、このようにして、被加工物へ切断や穴開け、溶接といった加工を施す装置である。そして、レーザビームを1点に集光するため、ピンポイントで精密かつ微細な加工が可能である。また、より高エネルギーのレーザビームを用いることで、加工時間を短縮することができ、かつ、刃物での加工が困難な高硬度の被加工物の加工も可能である。
【0003】
ここで、レーザ加工装置はレーザビーム照射用光学ユニットを備えている。そして、このレーザビーム照射用光学ユニットは、レーザビームをスポットの1点に集光したり、スポットにおけるレーザビームの像形状を円形で、エネルギー強度分布がガウシアン状やトップハット状のものとして照射する機能を有するものが従来採用されてきた。しかしながら、この従来のスポットの像形状を採用したレーザ加工においては、被加工物の切断や溶接、穴開けの際、レーザビームによって溶融した被加工物が切断面や穴部に残存してしまい、加工品質が悪化する問題があった。そこで、近年、スポットにおけるレーザビームの像形状を環状にすることによって、溶融した被加工物を適切に飛ばして切断面や穴部に残存させないレーザ加工が提案されている。
【0004】
このように、スポットにおけるレーザビームの像形状とその像形状におけるエネルギー強度分布は、円形でガウシアン状のものから、被加工物の溶接、切断などの加工条件に応じて、環状の像形状などにしてレーザ加工を行うようになってきている。このとき、レーザ加工を行う前に、スポットにおけるレーザビームの像形状や、その像形状におけるエネルギー強度分布が所望の仕様になっていることを確認するために、レーザビーム計測装置が用いられる。このレーザビーム計測装置におけるレーザビームの減光手段として、フィルタでレーザビームを減光してCCDやCMOSなどのイメージセンサで観測する方法、ピンホールやスリット、ナイフエッジでレーザビームの一部を遮光しながら透過光強度を測定し、遮光位置と透過光強度の相関から計算により求める方法、先端に小さなミラーの付いた棒あるいは先端に小さな穴の開いた導光棒をレーザビーム内で二次的にスキャンして強度分布を測定する方法、レーザビームを散乱する板にレーザビームを照射し、その散乱光の像を後方からカメラで撮影する方法等が知られている。
【0005】
しかしながら、上述の方法では、フィルタがレーザビームの熱で変形したり、ピンホールやスリット、ナイフエッジではレーザボームの像形状が損なわれたり、小さなミラーでは微小な像形状の測定は困難であり、散乱光を用いる場合は像にボケが生じるなどの問題があった。そこで、特許文献1では、レーザビームを蛍光板に照射し、そこから発せられる蛍光の強度分布をカメラやイメージセンサを用いて測定する方法を開示している。
【0006】
このような、レーザビームを蛍光板に照射し、そこから発せられる蛍光の強度分布をカメラやイメージセンサを用いて測定する方法は、次のようなものである。蛍光板が入射したレーザビームの光子を吸収することにより蛍光板の分子を電子励起し、励起された分子が基底状態に戻る時に吸収された光子よりも長い波長に対応する低いエネルギーの光子を放出する。この長い波長の光子が入射したレーザビームに対応する蛍光であり、その蛍光のエネルギーは入射したレーザビームのエネルギーより低い。ここで、レーザビームの波長と蛍光の波長が異なることから、異なる波長の光を分離する光分離素子(プリズムもしくはミラー)を用いて、レーザビームと蛍光とを分離する。そして、この蛍光の強度分布を測定することでレーザビームのエネルギー強度分布を確認するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2019/021435号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この蛍光板を用いる方法においては、蛍光板の厚さを薄くしないと、蛍光による像がボケてしまう。そこで特許文献1では、蛍光板の厚さを0.2mmとしている。このように、蛍光板を用いる方法は蛍光板を薄くする必要があるが、そのことによって、入射するレーザビームのエネルギー強度が例えば100W以上と高いと、蛍光板が熱で損なわれたり、蛍光のエネルギー強度が飽和するなどして、レーザビームの像形状や強度分布を正しく測定することができない、という課題がある。
【0009】
本件発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本件発明は、入射するレーザビームのエネルギー強度が高くても、イメージセンサやカメラなどの画像データを取得する装置を破壊しない程度までレーザビームを減光し、レーザビームのスポットの像形状及びエネルギー強度分布を測定できるレーザビーム照射用光学ユニットから照射されるレーザビームを減光する減光機構、出力データの補正方法、及びレーザビーム計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、鋭意研究の結果、以下の減光機構、出力データの補正方法、及びレーザビーム計測装置に想到した。
【0011】
本件発明に係る減光機構は、レーザビームを加工対象物にスポットを形成して照射しレーザ加工するためのレーザビーム照射用光学ユニットから照射される前記レーザビームを減光する減光機構であって、プレート型の第1ビームスプリッターと第2ビームスプリッターとを備え、前記レーザビーム照射用光学ユニットの光軸に垂直な面における原点が前記光軸にある任意の直交座標軸をX軸とY軸としたとき、前記第1ビームスプリッターは前記X軸を回転軸として前記光軸に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度αで傾けて配置し、前記第2ビームスプリッターは前記X軸と平行であり前記光軸を通るX’軸を回転軸として前記光軸に垂直な面に対して角度-αで傾けて配置することを特徴とする減光機構を採用した。
【0012】
本件発明に係る出力データの補正方法は、上述の減光機構に、前記スポットの位置に結像する前記レーザビームのエネルギー分布の情報を読み取る観測装置と、前記観測装置の出力データを数値演算して補正を行うための演算装置とを備えた減光機構の前記出力データを数値演算して補正を行う出力データの補正方法であって、前記出力データのY軸方向について座標位置を補正する数値演算を行うことを特徴とする出力データの補正方法を採用した。
【0013】
本件発明に係るレーザビーム計測装置は、上述の減光機構を備えることを特徴とするレーザビーム計測装置を採用した。
【発明の効果】
【0014】
本件発明に係るレーザビーム照射用光学ユニットから照射されるレーザビームを減光する減光機構は、入射するレーザビームのエネルギー強度が高くても、イメージセンサやカメラなどの画像データを取得する装置を破壊しない程度までレーザビームを減光し、レーザビームのスポットの像形状及びエネルギー強度分布を測定することができる。本件発明に係る出力データの補正方法は、出力データの像形状を、適正な像形状に補正することができる。本件発明に係るレーザビーム計測装置は、レーザビームのエネルギー強度が高くても、レーザビームのスポットの像形状及びエネルギー強度分布を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態の減光機構の略図である。
図2】ビームスプリッターの入射角度に対する透過率特性の例である。
図3】第1ビームスプリッター及び第2ビームスプリッター部の拡大図である。
図4】第2の実施形態の減光機構の略図である。
図5】第1ビームスプリッター及び第2ビームスプリッター部の拡大図である。
図6】第3の実施形態の減光機構の略図である。
図7】ビームスプリッターの入射角度に対する透過率特性である。
図8】合計厚ビームスプリッター及び第1ビームスプリッター及び第2ビームスプリッター部の拡大図である。
図9】第4の実施形態の減光機構の略図である。
図10】実施例1のスポットにおける像のエネルギー強度分布を測定した結果である。
図11】実施例1のスポットにおける像形状の結果である。
図12】ビームスプリッターの入射角度に対する反射率特性である。
図13】実施例2のスポットにおける像のエネルギー強度分布を測定した結果である。
図14】実施例2のスポットにおける像形状の結果である。
図15】実施例3のスポットにおける像のエネルギー強度分布を測定した結果である。
図16】実施例3のスポットにおける像形状の結果である。
図17】実施例4のスポットにおける像のエネルギー強度分布を測定した結果である。
図18】実施例4のスポットにおける像形状の結果である。
図19】実施例5のスポットにおける像のエネルギー強度分布を測定した結果である。
図20】実施例5のスポットにおける像形状の結果である。
図21】比較例のスポットにおける像のエネルギー強度分布を測定した結果である。
図22】比較例のスポットにおける像形状の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本件発明に係るレーザビーム照射用光学ユニットから照射されるレーザビームを減光する減光機構、出力データの補正方法、及びレーザビーム計測装置の実施の形態に関して述べる。なお、以下に説明するものは、単に一態様を示したものであり、以下の記載内容に限定解釈されるものではない。
【0017】
1.レーザビーム照射用光学ユニットから照射されるレーザビームを減光する減光機構の実施の形態
本件発明に係る減光機構は、レーザビームを加工対象物にスポットを形成して照射しレーザ加工するためのレーザビーム照射用光学ユニットから照射されるレーザビームを減光する減光機構である。この減光機構とは、スポットにおけるレーザビームの像形状やレーザビームのエネルギー強度分布を観測装置を用いて計測する場合に、レーザビームの高いエネルギーによって観測装置を破損させないようにレーザビームを減光して観測装置に入射するためのものである。すなわち本件発明における減光機構とは、減光機構へ入射するレーザビームのエネルギー強度を減少させて減光機構から出力する光学系である。
【0018】
レーザビーム照射用光学ユニットは、レーザ加工に必要な光学系であり、スポットにおけるレーザビームの像形状やレーザビームのエネルギー強度分布を所望のものに形成して、スポットに集光するようレーザビームを照射する光学系である。ここで、本件発明に係る減光機構は、レーザビーム照射用光学ユニットとスポットとの間に取り付け、スポットにおけるレーザビームの像形状やレーザビームのエネルギー強度分布を計測するために、レーザビーム照射用光学ユニットから照射されるレーザビームを減光するものである。そして、スポットにおけるレーザビームの像形状やレーザビームのエネルギー強度分布を計測した後に、必要であればスポットにおけるレーザビームの像形状やレーザビームのエネルギー強度分布を調整して再度計測した後、減光機構をレーザビーム照射用光学ユニットから取り外しすることもできる。その後、スポットの位置に加工対象物を設置して、レーザ加工を行うことができる。また、レーザビーム照射用光学ユニット内においてレーザビームを分岐し、レーザ加工中にレーザビームの像形状やエネルギー強度分布を観測するためのレーザビームの減光機構として用いることもできる。なお、当該減光機構は、鏡筒等で覆うことによって、減光機構からレーザビームが漏れ出ないようにすることができる。
【0019】
なお、本件発明に係るレーザビーム照射用光学ユニットは、レーザ加工を行うことができる限りにおいて、どのような光学系を含むこともできる。例えば、ガルバノミラーを備えたガルバノ光学系を含んでも良い。
【0020】
図1に、本件発明に係る減光機構の第1の実施形態1の減光機構の配置構成とレーザビームの略照射軌道を示す。減光機構の第1の実施形態1は、レーザ発振器(図示していない)から出力されるレーザビームを導き出射する光ファイバ30と、光ファイバ30の出力端から拡散状に出力されたレーザビームを平行光にするためのコリメートレンズ21と、コリメートレンズ21で平行光にされたレーザビームを加工対象物表面のスポットに集光するための集光レンズ22と、レーザビームを減光するための減光機構40と、スポットにおけるレーザビームの像形状や強度分布を確認するための観測光を観測するための観測装置50とを、レーザビーム照射用光学ユニット31の照射軌道の光軸10に沿って、レーザ発振器側から順に配置している。そして、コリメートレンズ21の光学中心と、集光レンズ22の光学中心との位置は、光軸10に一致するよう配置され、レーザビーム照射用光学ユニット31内に設置されている。そして、レーザビームは照射軌道15に示す軌道でスポットに収束し結像する。
【0021】
レーザ発振器から光ファイバ30を介してレーザビーム照射用光学ユニット31に入射されるレーザビームは、レーザ加工用に用いることができるレーザビームであれば、いかなるレーザビームであっても用いることができる。特に、YAGレーザ(波長1064nm)、ファイバレーザ(波長1070nm)、ディスクレーザ(波長1030nm)、半導体レーザ(波長935nm、940nm、980nm、940~980nm、940~1025nm)に代表される発振波長が約920~1080nmの近赤外レーザビームであることが好ましい。そして、レーザ加工用に用いることができるレーザビームであれば、青、緑、紫外線域のレーザビームであっても良い。また、レーザビーム照射用光学ユニット31に入射されるレーザビームの光軸10に垂直な面におけるエネルギー分布は、中心部(光軸部分)のエネルギーが強いガウシアン状であっても、均一であっても良い。
【0022】
図1では、コリメートレンズ21と、集光レンズ22とは、それぞれの光学中心が光軸10に一致するようレーザビーム照射用光学ユニット31内に設置されている。すなわち、レーザビーム照射用光学ユニット31には、レーザ加工に必要な光学系が配置されている。そして、レーザビーム照射用光学ユニット31には減光機構40が接続され、減光機構40には観測装置50が接続されている。このとき、減光機構40は、減光機構40からレーザビームが漏れ出ないように鏡筒等で覆われている構造であっても良い。また、減光機構40は、レーザビーム照射用光学ユニット31に対して脱着可能な構造を備えても良い。レーザビームの照射軌道15の光軸10を構成するレーザビーム照射用光学ユニット31に、観測装置50を接続できる脱着可能な減光機構40を接続することによって、スポットにおけるレーザビームの像形状やレーザビームのエネルギー強度分布を計測することができる。そして、観測装置50による計測を行って、スポットにおけるレーザビームの像形状や強度分布を望ましいものに調整した後、減光機構40と観測装置50とを取り外し、観測装置50の撮像面があった位置に加工対象物の表面を位置させることによって、レーザ加工を精度良く行うことができる。
【0023】
ここで、スポットにおけるレーザビームの像形状は、レーザビームで加工対象物を加工できる限りにおいて、どのような像形状でも良い。例えば、レーザビーム照射用光学ユニット31のコリメートレンズ21と、集光レンズ22との少なくともいずれか1つは、スポットにおけるレーザビームの像形状を、少なくとも環状の周辺領域からなる環状形状となるよう変換する機能(以降、本明細書では環状変換機能と呼称する)を有することができる。スポットのエネルギー分布の形状が少なくとも環状の周辺領域からなる環状形状となることによって、加工対象物の表面において、スポットの中心領域からどの向きにも均一にレーザビームのエネルギーが照射される。そして、このことによって、溶融亜鉛鋼板の重ね溶接で、亜鉛のガスが抜け、きれいな溶接ができる。
【0024】
また、環状変換機能によるスポットの形状は特に限定されるものではなく、例えば、環状と環状の中心部における点状(点部分はガウシアン状)とからなるものであっても良いし、トップハット型の形状などであっても良い。このとき、環状の中心部における点状のスポットのエネルギー強度は、環状部のエネルギー強度よりも高いことが好ましい。光の反射率が高いアルミなどでは、エネルギー強度の弱い環状部で金属を溶融させて反射率を下げ、エネルギー強度の高い中心部で加工対象物を深く溶融させることなどができるため、レーザ加工がより容易になるからである。
【0025】
前述のスポットの像形状を形成するために、環状変換機能を備える光学素子の光学有効面の少なくとも1面は、回折レンズ、アキシコンレンズ、非球面レンズのいずれかであることが好ましい。レーザビームのスポット形状を、環状、もしくは、環状と環状の中心部における点状とからなるものにすることができるからである。
【0026】
なお、レーザビーム照射用光学ユニット31は、環状変換機能を必ずしも有している必要はなく、光ファイバ30から出射されるレーザビームの像形状が、少なくとも環状の周辺領域からなる環状形状となるレーザビームを用いても良い。
【0027】
また、レーザビーム照射用光学ユニット31は、光ファイバ30が接続されるコネクタ部と、コネクタ部を照射軌道の光軸10に対して固定するコネクタ受け部とからなるレーザビーム方向調整機構を備えても良い。レーザビーム方向調整機構は、レーザビーム出力端における光ファイバ30のコアの中央部を中心点として、コネクタ部とコネクタ受け部との少なくとも一方が円弧状に旋回することによって、レーザビームの照射軌道への入射方向を調整する。レーザ発振器から出力されるレーザビームは、光ファイバ30を用いてレーザ加工装置のレーザ加工ヘッドへ導かれるが、光ファイバ30の出力端から出力されるレーザビームの出射方向は、光軸10に対して一定の範囲の傾きを有している。具体的には、例えばレイカスファイバー社のCWファイバレーザでは、光ファイバの出力端の構造部及びコネクタの構造で決定される基準光軸に対して、光ファイバの出力端から出力されるレーザビームの光軸の角度が、30mrad(ミリラジアン)以下であるとされている。レーザビーム方向調整機構は、光ファイバ30の出力端から出力されるレーザビームの出射方向が、光軸10に対して一定の範囲の傾きを有している場合に用いて、レーザビームの照射軌道への入射方向を調整することができる。
【0028】
また、減光機構の第1の実施形態1は、スポットの位置に配置されスポットのレーザビームのエネルギー強度分布の情報を読み取る観測装置50から出力される出力データについて、数値演算して補正を行うための演算装置を備えるのも好ましい。レーザビーム照射用光学ユニット31に配置したコリメートレンズ21、集光レンズ22、減光機構40に配置した第1ビームスプリッター41、第2ビームスプリッター42の光学情報をもとに、光線追跡計算等を用いて事前に焦点距離データ情報を得ておくことによって、演算装置を用いて、観測装置50から出力される出力データについて、座標位置を補正する数値演算を行うことができる。出力データの座標位置の補正についての具体的な補正方法は後述する。
【0029】
なお、レーザビーム照射用光学ユニット31は、コリメートレンズ21と集光レンズ22とを配置する構成としているが、レーザ加工を行うことができる限りにおいてどのような構成でも良く、例えば、集光レンズ22のみであっても良い。
【0030】
〔減光機構の第1の実施形態〕
本件発明に係る減光機構の第1の実施形態は、図1に示す減光機構40の構成であって、レーザビーム照射用光学ユニット31よりもスポット側(観測装置50側)に、プレート型の第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とを備えている。第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とは、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との中心位置が光軸10に一致するように配置すれば良いが、少なくともレーザビームの照射軌道15が第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との光学有効面内となるよう配置すれば良い。そして、光軸10に垂直な面における原点が光軸10にある任意の直交座標軸をX軸とY軸としたとき、第1ビームスプリッター41はX軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度αで傾けて配置し、第2ビームスプリッター42はX軸と平行であり光軸10を通るX’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して角度-αで傾けて配置している。なお、図1における光軸10に垂直な面とは、光軸10上の1点のみを含む光軸10に垂直な面であり、X軸は光軸10を原点として図1の図を面として捉えた場合の平面を垂直に貫く前述の光軸10に垂直な面上の直線であり、Y軸は光軸10を原点として図1の図を面として捉えた場合の平面上においてX軸に直交する前述の光軸10に垂直な面上の直線である。そして、本件発明においては、他の図においても、X軸及びY軸は上述と同じに定義されるものである。
【0031】
第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とは、入射するレーザビームを透過光と反射光に分離する機能を有している。なお図1においては、レーザビームの照射軌道15は、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とへ入射するレーザビームの軌道と、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との透過光の軌道とを示しており、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との反射光は図示を省略している。このとき、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との、ビームスプリッターの光学面を基準とするビームスプリッターへのレーザビームの入射角度が45°におけるレーザビームの透過率は0.1%以上5.0%以下が好ましい。入射するレーザビームに対して、レーザビームの透過光成分のエネルギー強度が減少するからである。そして、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とは、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とのビームスプリッターの光学面を基準とするビームスプリッターへのレーザビームの入射角度が「45°以外における透過率」の「45°の透過率」に対する変化特性が同じものが好ましい。なお、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とが反射した不要な反射光は、レーザビームを吸収し易いように表面を黒色に加工した銅板などに照射して吸収放熱すれば良い。
【0032】
なお、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との厚さは、当該減光機構に用いることができる限りにおいて特に限定されず、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との厚さが同じであっても良いし、異なっても良い。
【0033】
また、プレート型のビームスプリッターにおいては、屈折によって透過光が光軸10に対してシフトする(図1図3において透過光のシフトは図示していない)。しかしながら、当該減光機構は、レーザビームのエネルギー強度分布および像形状を観測装置50で計測するためのものであることから、透過光の光軸10に対するシフトは問題にならない。
【0034】
ビームスプリッターは、ビームスプリッターの光学面を基準とするビームスプリッターへの入射角度が45°で所定の透過率又は反射率となるよう通常設計されている。そして、レーザビームのビームスプリッターへの入射角度が45°から異なる値に連続的に変化する場合、ビームスプリッターの透過率の値は異なる値に連続的に変化する。図2に、19層の光学薄膜を用いて透過率の入射角度依存性を低減したビームスプリッターの入射角度に対する透過率の設計例を示す。横軸はビームスプリッターへのレーザビームの入射角度(°)を示し、縦軸はレーザビームの透過率(%)を示している。ここで、入射角度40°の透過率は0.75%であり、入射角度50°の透過率は0.92%である。図1では、照射軌道15が示すように、集光レンズ22を介したレーザビームを第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とへ入射していることから、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42へのレーザビームの入射角度が、前述のY軸の方向において連続的に変化する。仮に、第1ビームスプリッター41の1枚だけを減光機構として用いた場合、第1ビームスプリッター41への入射角度が最小で40°、最大で50°だとすると、入射角度が最小と最大とにおける透過光の透過率比は0.92/0.75=1.2倍となる。この場合、スポットにおけるレーザビームのエネルギー強度分布を正しく測定できない。
【0035】
第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42の部分の拡大図を図3に示す。なお図3においては、レーザビームの照射軌道15は、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とへ入射するレーザビームの軌道と、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との透過光の軌道とを示しており、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との反射光は図示を省略している。ここで、第1ビームスプリッター41はX軸を回転軸として光軸10に垂直な面61に対する上述の範囲の角度αで傾けて配置しているのに対して、第2ビームスプリッター42は、X’軸を回転軸として光軸10に垂直な面61に対する角度-αで傾けて配置している。第1ビームスプリッター41の光軸10の位置のレーザビームのビームスプリッターの光学面を基準とする入射角度の値は、図3に示すように、90°より小さいほうの角度で表すと(90-α)となる。同様に、第2ビームスプリッター42の光軸10の位置のレーザビームのビームスプリッターの光学面を基準とする入射角度の値は、90°より小さいほうの角度で表すと(90-α)となる。例えば、第1ビームスプリッター41の照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームのビームスプリッターの光学面を基準とする入射角度は、光軸10の位置の入射角度の値を基準にすると、(90-α)-θで表される。角度θは、光軸10に平行な仮想線62に対する照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームの入射角度であり、すなわち、光軸10の位置の入射角度からの差分の角度である。
【0036】
このとき、(90-α)-θの角度で第1ビームスプリッター41に入射し透過した照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームの透過光は、(90-α)+θの角度で第2ビームスプリッター42へ入射する。すなわち、第1ビームスプリッター41の照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームは、光軸10の位置の入射角度に対して角度-θだけシフトした入射角度で第1ビームスプリッター41に入射し、第1ビームスプリッター41の照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームの透過光は、光軸10の位置の入射角度に対して角度θだけシフトした入射角度で第2ビームスプリッター42へ入射する。前述したように、レーザビームのビームスプリッターへの入射角度が45°から異なる値に連続的に変化する場合、ビームスプリッターの透過率の値は異なる値に連続的に変化する。したがって、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とを透過した照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームの透過光の合計の透過率は、光軸10の位置のレーザビームの透過光の合計の透過率とほぼ一致することになる。上述の内容は、例として第1ビームスプリッター41の照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームの透過光として説明したが、照射軌道15の任意の位置のレーザビームにおいて成立する。
【0037】
なお、第1ビームスプリッター41はX軸を回転軸として角度αで傾け、第2ビームスプリッター42はX’軸を回転軸として角度-αで傾けて、それぞれ配置していることから、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との光学面上におけるレーザビームの入射角度は、X軸の方向においては変化しない。
【0038】
図1に示す減光機構40の構成において、レーザビームのエネルギー強度が観測装置50に入射するには減光が不十分な場合は、第1ビームスプリッター41及び第2ビームスプリッター42のビームスプリッター群と観測装置50との間に、レーザビームの減光が可能なNDフィルタ等の光学素子を配置しても良い。
【0039】
以上説明したように、本件発明に係る減光機構の第1の実施形態は、レーザビーム照射用光学ユニット31よりもスポット側に第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とを備え、光軸10に垂直な面における原点が光軸10にある任意の直交座標軸をX軸とY軸としたとき、第1ビームスプリッター41はX軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度αで傾けて配置し、第2ビームスプリッター42はX軸と平行であり光軸10を通るX’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して角度-αで傾けて配置することによって、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とへ入射するレーザビームのエネルギー強度を減少させて当該減光機構から出力することができる。そして、当該減光機構は、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42への入射光が、入射位置によって入射角度が異なる集光光であっても、入射光に対して出射光のエネルギー強度分布を偏らせることなくレーザビームのエネルギー強度を減少させて当該減光機構から出力することができる。さらに、当該減光機構は、入射可能なレーザビームのパワーが通常でも1kWと大きい。したがって、当該減光機構は、レーザビームのエネルギー強度が高くても、イメージセンサやカメラなどの画像データを取得する観測装置50を破壊しない程度までレーザビームを減光し、レーザビームのスポットの像形状及びエネルギー強度分布を測定することができる。
【0040】
〔減光機構の第2の実施形態〕
本件発明に係る減光機構の第2の実施形態は、図4に示す減光機構の第2の実施形態2の減光機構40の構成であって、レーザビーム照射用光学ユニット31よりもスポット側(観測装置50側)に、プレート型の第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44とを備えている。第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44とは、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44との中心位置が光軸10に一致するように配置すれば良いが、少なくともレーザビームの照射軌道15が第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44との光学有効面内となるよう配置すれば良い。そして、光軸10に垂直な面における原点が光軸10にある任意の直交座標軸をX軸とY軸としたとき、第1ビームスプリッター43はX軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度αで傾けて配置し、第2ビームスプリッター44はX軸と平行であり光軸10を通るX’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して角度-αで傾けて配置している。なお、図4における光軸10に垂直な面とは、光軸10上の1点のみを含む光軸10に垂直な面であり、X軸は光軸10を原点として図4の図を面として捉えた場合の平面を垂直に貫く前述の光軸10に垂直な面上の直線であり、Y軸は光軸10を原点として図4の図を面として捉えた場合の平面上においてX軸に直交する前述の光軸10に垂直な面上の直線である。
【0041】
第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44とは、入射するレーザビームを透過光と反射光に分離する機能を有している。なお図4においては、レーザビームの照射軌道15は、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44とへ入射するレーザビームの軌道と、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44との反射光の軌道とを示しており、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター44との透過光は図示を省略している。このとき、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44との、ビームスプリッターの光学面を基準とするビームスプリッターへのレーザビームの入射角度が45°におけるレーザビームの反射率は0.1%以上5.0%以下が好ましい。入射するレーザビームに対して、レーザビームの反射光成分のエネルギー強度が減少するからである。そして、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44とは、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44とのビームスプリッターの光学面を基準とするビームスプリッターへのレーザビームの入射角度が「45°以外における反射率」の「45°の反射率」に対する変化特性が同じものが好ましい。なお、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44とを透過した不要な透過光は、レーザビームを吸収し易いように表面を黒色に加工した銅板などに照射して吸収放熱すれば良い。
【0042】
なお、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44との厚さは、当該減光機構に用いることができる限りにおいて特に限定されず、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44との厚さが同じであっても良いし、異なっても良い。
【0043】
ビームスプリッターは、ビームスプリッターの光学面を基準とするビームスプリッターへの入射角度が45°で所定の透過率又は反射率となるよう通常設計されている。そして、レーザビームのビームスプリッターへの入射角度が45°から異なる値に連続的に変化する場合、ビームスプリッターの反射率の値は異なる値に連続的に変化する。図4では、照射軌道15が示すように、集光レンズ22を介したレーザビームを第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44とへ入射していることから、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44へのレーザビームの入射角度が、前述のY軸の方向において連続的に変化する。したがって、第1ビームスプリッター43で反射したレーザビームの反射光のエネルギー強度分布は、入射光のエネルギー強度分布に対して、反射率の変化に応じてY軸の方向に変化する。したがって、減光機構の第1の実施形態において、図2を用いて説明したと同様に、仮に、第1ビームスプリッター43の1枚だけを減光機構として用いた場合、第1ビームスプリッター43への入射角度が最小と最大とにおける反射光の反射率比が大きくなって、スポットにおけるレーザビームのエネルギー強度分布を正しく測定できない。
【0044】
第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44の部分の拡大図を図5に示す。なお図5においては、レーザビームの照射軌道15は、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44とへ入射するレーザビームの軌道と、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44との反射光の軌道とを示しており、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44との透過光は図示を省略している。ここで、第1ビームスプリッター43はX軸を回転軸として上述の範囲の光軸10に垂直な面63に対する角度αで傾けて配置しているのに対して、第2ビームスプリッター44は、X’軸を回転軸として光軸10に垂直な面63に対する角度-αで傾けて配置している。第1ビームスプリッター43の光軸10の位置のレーザビームのビームスプリッターの光学面を基準とする入射角度の値は、図5に示すように、90°より小さいほうの角度で表すと(90-α)となる。同様に、第2ビームスプリッター44の光軸10の位置のレーザビームのビームスプリッターの光学面を基準とする入射角度の値は、90°より小さいほうの角度で表すと(90-α)となる。例えば、第1ビームスプリッター43の照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームのビームスプリッターの光学面を基準とする入射角度は、光軸10の位置の入射角度の値を基準にすると、(90-α)-θで表される。角度θは、光軸10に平行な仮想線64に対する照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームの入射角度であり、すなわち、光軸10の位置の入射角度からの差分の角度である。
【0045】
このとき、(90-α)-θの角度で第1ビームスプリッター43に入射し反射した照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームの反射光は、(90-α)+θの角度で第2ビームスプリッター44へ入射する。すなわち、第1ビームスプリッター43の照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームは、光軸10の位置の入射角度に対して角度-θだけシフトした入射角度で第1ビームスプリッター43に入射し、第1ビームスプリッター41の照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームの反射光は、光軸10の位置の入射角度に対して角度θだけシフトした入射角度で第2ビームスプリッター44に入射する。前述したように、レーザビームのビームスプリッターへの入射角度が45°から異なる値に連続的に変化する場合、ビームスプリッターの反射率の値は異なる値に連続的に変化する。したがって、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44とで反射した照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームの反射光の合計の反射率は、光軸10の位置のレーザビームの反射光の合計の反射率とほぼ一致することになる。上述の内容は、例として第1ビームスプリッター43の照射軌道15の上端の位置におけるレーザビームの反射光として説明したが、照射軌道15の任意の位置のレーザビームにおいて成立する。
【0046】
なお、第1ビームスプリッター43はX軸を回転軸として角度αで傾け、第2ビームスプリッター44はX’軸を回転軸として角度-αで傾けて、それぞれ配置していることから、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44との光学面上におけるレーザビームの入射角度は、X軸の方向においては変化しない。
【0047】
図4に示す減光機構40の構成において、レーザビームのエネルギー強度が観測装置50に入射するには減光が不十分な場合は、第1ビームスプリッター43及び第2ビームスプリッター44のビームスプリッター群と観測装置50との間に、レーザビームの減光が可能なNDフィルタ等の光学素子を配置しても良い。
【0048】
以上説明したように、本件発明に係る減光機構の第2の実施形態は、レーザビーム照射用光学ユニット31よりもスポット側に第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44とを備え、光軸10に垂直な面における原点が光軸10にある任意の直交座標軸をX軸とY軸としたとき、第1ビームスプリッター43はX軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度αで傾けて配置し、第2ビームスプリッター44はX軸と平行であり光軸10を通るX’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して角度-αで傾けて配置することによって、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44とへ入射するレーザビームのエネルギー強度を減少させて当該減光機構から出力することができる。そして、当該減光機構は、第1ビームスプリッター43と第2ビームスプリッター44への入射光が、入射位置によって入射角度が異なる集光光であっても、入射光に対して出射光のエネルギー強度分布を偏らせることなくレーザビームのエネルギー強度を減少させて当該減光機構から出力することができる。さらに、当該減光機構は、入射可能なレーザビームのパワーが通常でも1kWと大きい。したがって、当該減光機構は、レーザビームのエネルギー強度が高くても、イメージセンサやカメラなどの画像データを取得する観測装置50を破壊しない程度までレーザビームを減光し、レーザビームのスポットの像形状及びエネルギー強度分布を測定することができる。
【0049】
〔減光機構の第3の実施形態〕
本件発明に係る減光機構の第3の実施形態は、図6に示す減光機構の第3の実施形態3の減光機構40の構成であって、レーザビーム照射用光学ユニット31よりもスポット側であり第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42よりもレーザビームの光源側に、プレート型の合計厚ビームスプリッター45を備えている。そして、この合計厚ビームスプリッター45の配置位置は、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42よりもスポット側でも良いし、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との間でも良い。すなわち、減光機構の第3の実施形態3の減光機構40は、減光機構の第1の実施形態1の減光機構40に合計厚ビームスプリッター45を加えた構成である。合計厚ビームスプリッター45は、合計厚ビームスプリッター45の中心位置が光軸10に一致するように配置すれば良いが、少なくともレーザビームの照射軌道15が合計厚ビームスプリッター45の光学有効面内となるよう配置すれば良い。そして、光軸10に垂直な面における原点が光軸10にある任意の直交座標軸をX軸とY軸としたとき、合計厚ビームスプリッター45はY軸と平行であり光軸10を通るY’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度β、又は角度-βで傾けて配置している。なお、図6における光軸10に垂直な面とは、光軸10上の1点のみを含む光軸10に垂直な面であり、X軸は光軸10を原点として図6の図を面として捉えた場合の平面を垂直に貫く前述の光軸10に垂直な面上の直線であり、Y軸は光軸10を原点として図6の図を面として捉えた場合の平面上においてX軸に直交する前述の光軸10に垂直な面上の直線である。
【0050】
この合計厚ビームスプリッター45は、プレート型のビームスプリッターであり、合計厚ビームスプリッター45のプレートの厚さは、以下の数式1を満足する数値とすることが好ましい。
【0051】
【数1】
【0052】
但し、以下の通りである。
45:合計厚ビームスプリッター45のプレートの厚さ
41:第1ビームスプリッター41のプレートの厚さ
42:第2ビームスプリッター42のプレートの厚さ
45:合計厚ビームスプリッター45の光学材料の屈折率
41:第1ビームスプリッター41の光学材料の屈折率
42:第2ビームスプリッター42の光学材料の屈折率
【0053】
合計厚ビームスプリッター45は、入射するレーザビームを透過光と反射光に分離する機能を有している。なお図6においては、レーザビームの照射軌道15は、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42と合計厚ビームスプリッター45とへ入射するレーザビームの軌道と、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42と合計厚ビームスプリッター45との透過光の軌道とを示しており、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42と合計厚ビームスプリッター45との反射光は図示を省略している。このとき、合計厚ビームスプリッター45の、ビームスプリッターの光学面を基準とするビームスプリッターへのレーザビームの入射角度が45°におけるレーザビームの透過率は1.0%以上50.0%以下が好ましい。入射するレーザビームに対して、レーザビームの透過光成分のエネルギー強度が減少するからである。なお、合計厚ビームスプリッター45が反射した不要な反射光は、レーザビームを吸収し易いように表面を黒色に加工した銅板などに照射して吸収放熱すれば良い。
【0054】
なお、プレート型のビームスプリッターにおいては、屈折によって透過光が光軸10に対してシフトする(図6において透過光のシフトは図示していない)。しかしながら、当該減光機構は、レーザビームのエネルギー強度分布および像形状を観測装置50で計測するためのものであることから、透過光の光軸10に対するシフトは問題にならない。
【0055】
ビームスプリッターは、ビームスプリッターの光学面を基準とするビームスプリッターへの入射角度が45°で所定の透過率又は反射率となるよう通常設計されている。そして、レーザビームのビームスプリッターへの入射角度が45°から異なる値に連続的に変化する場合、ビームスプリッターの透過率の値は異なる値に連続的に変化する。図7に、10層の光学薄膜を用いて透過率の入射角度依存性を低減したビームスプリッターの入射角度に対する透過率の設計例を示す。横軸はビームスプリッターへのレーザビームの入射角度(°)を示し、縦軸はレーザビームの透過率(%)を示している。ここで、入射角度40°の透過率はほぼ50.0%であり、入射角度50°の透過率もほぼ50.0%である。仮に、合計厚ビームスプリッター45への入射角度が最小で40°、最大で50°だとすると、入射角度が最小と最大とにおける透過光の透過率比は50.0/50.0=1.0倍となる。つまり、図2のようなレーザビームの入射角度が45°における透過率が1%以下のような場合と比べて、透過率が50%程度である場合はレーザビームの入射角度が多少異なっても透過率の変化が無い、もしくは非常に少ない。すなわち、合計厚ビームスプリッター45を透過したレーザビームの透過光のエネルギー強度分布は、合計厚ビームスプリッター45への入射光のエネルギー強度分布と略一致する。
【0056】
なお、図7に示すように透過率の入射角度依存性を低減する場合、ビームスプリッターへのレーザビームの入射角度が45°におけるレーザビームの透過率が小さい値であるほど、必要とする光学薄膜の層数が増加し設計が困難となり、製造コストも増加する。したがって、合計厚ビームスプリッター45の、ビームスプリッターの光学面を基準とするビームスプリッターへのレーザビームの入射角度が45°におけるレーザビームの透過率は10.0%以上50.0%以下がより好ましい。
【0057】
ここで、図6に示したように、第1ビームスプリッター41はX軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度αで傾けて配置し、第2ビームスプリッター42はX軸と平行であり光軸10を通るX’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して角度-αで傾けて配置している。このようにプレート型のビームスプリッターを光軸10に垂直な面に対して傾けて配置したとき、ビームスプリッターに平行光を入射した場合は、ビームスプリッターの出射光は屈折によって入射光に対して軌道がシフトする。そして、ビームスプリッターに集束光を入射した場合は、軌道のシフトに加えて、出射光のX軸方向は同じ焦点距離で集束するが、出射光のY軸方向は異なる焦点距離で集束する非点収差が発生する。すなわち、X軸を回転軸とする第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とだけを透過したレーザビームの像は非点収差によってY軸方向に歪む。
【0058】
そこで、減光機構の第3の実施形態3の減光機構40では、上述の合計厚ビームスプリッター45を配置している。合計厚ビームスプリッター45は、図8に示すように、Y軸と平行であり光軸10を通るY’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度β、又は角度-βで傾けて配置している。なお、図8は、図6の減光機構の第3の実施形態3を光軸10を回転軸として90°回転させた状態の視点における合計厚ビームスプリッター45と第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との部分の拡大図である。また、図8においては、レーザビームの照射軌道15は、合計厚ビームスプリッター45と第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とへ入射するレーザビームの軌道と、合計厚ビームスプリッター45と第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との透過光の軌道とを示しており、合計厚ビームスプリッター45と第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との反射光は図示を省略している。そして、図8においては、Y軸は光軸10を原点として図8の図を面として捉えた場合の平面を垂直に貫く光軸10に垂直な面61上の直線であり、X軸は光軸10を原点として図8の図を面として捉えた場合の平面上においてY軸に直交する光軸10に垂直な面61上の直線である。
【0059】
このことによって、合計厚ビームスプリッター45の透過光成分の像形状は、上述の第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42の説明と同様の理由で、非点収差によってX軸方向に歪む。ここで、合計厚ビームスプリッター45と第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とのそれぞれのプレートの厚さは、上述した数式1を満足する数値が選択される。そして、数式1は、合計厚ビームスプリッター45の非点収差によって生じる焦点距離の差である非点隔差が、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とのそれぞれの非点収差によって生じる非点隔差の合計に等しいことを意味している。すなわち、合計厚ビームスプリッター45のX軸方向の像形状の歪み量は、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との合計のY軸方向の像形状の歪み量と同じになる。したがって、減光機構の第3の実施形態3の観測装置50で観測するレーザビームのスポットにおける像形状は、減光機構の第3の実施形態3の減光機構40に入射するレーザビームの像形状と相似の像形状となる。
【0060】
図6に示す減光機構40の構成において、レーザビームのエネルギー強度が観測装置50に入射するには減光が不十分な場合は、第1ビームスプリッター41及び第2ビームスプリッター42及び合計厚ビームスプリッター45のビームスプリッター群と観測装置50との間に、レーザビームの減光が可能なNDフィルタ等の光学素子を配置しても良い。
【0061】
以上説明したように、本件発明に係る減光機構の第3の実施形態は、レーザビーム照射用光学ユニット31よりもスポット側に、数式1を満足するプレートの厚さを有する合計厚ビームスプリッター45を備えており、減光機構の第1の実施形態である減光機構の第1の実施形態1の減光機構40に合計厚ビームスプリッター45を加えた構成である。そして、光軸10に垂直な面における原点が光軸10にある任意の直交座標軸をX軸とY軸としたとき、合計厚ビームスプリッター45はY軸と平行であり光軸10を通るY’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度β、又は角度-βで傾けて配置することによって、減光機構の第3の実施形態3の減光機構40に入射するレーザビームのエネルギー強度を減少させて減光機構40から出力することができる。そして、この減光機構40は、減光機構40への入射光が、入射位置によって入射角度が異なる集光光であっても、入射光に対して出射光のエネルギー強度分布を偏らせることなくレーザビームのエネルギー強度を減少させて減光機構40から出力することができる。また、減光機構の第3の実施形態3の観測装置50で観測するレーザビームのスポットにおける像形状は、減光機構40に入射するレーザビームの像形状と相似の像形状となる。さらに、当該減光機構は、入射可能なレーザビームのパワーが通常でも2kWと大きい。したがって、当該減光機構は、レーザビームのエネルギー強度が高くても、イメージセンサやカメラなどの画像データを取得する観測装置50を破壊しない程度までレーザビームを減光し、レーザビームのスポットの像形状及びエネルギー強度分布を測定することができる。
【0062】
〔減光機構の第4の実施形態〕
本件発明に係る減光機構の第4の実施形態は、図9に示す減光機構の第4の実施形態4の減光機構40の構成であって、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42よりもスポット側(観測装置50側)に第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とを備えている。そして、この第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47との配置位置は、レーザビーム照射用光学ユニット31よりもスポット側に配置されている限りにおいて、例えば、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との間に第3ビームスプリッター46を配置するというように、任意の位置とすることができる。すなわち、減光機構の第4の実施形態4の減光機構40は、減光機構の第1の実施形態1の減光機構40に第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とを加えた構成である。第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とは、第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47との中心位置が光軸10に一致するように配置すれば良いが、少なくともレーザビームの照射軌道15が第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47との光学有効面内となるよう配置すれば良い。そして、光軸10に垂直な面における原点が光軸10にある任意の直交座標軸をX軸とY軸としたとき、第3ビームスプリッター46はY軸と平行であり光軸10を通るY’’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度βで傾けて配置し、第4ビームスプリッター47はY軸と平行であり光軸10を通るY’’’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して角度-βで傾けて配置している。なお、図9における光軸10に垂直な面とは、光軸10上の1点のみを含む光軸10に垂直な面であり、X軸は光軸10を原点として図9の図を面として捉えた場合の平面を垂直に貫く前述の光軸10に垂直な面上の直線であり、Y軸は光軸10を原点として図9の図を面として捉えた場合の平面上においてX軸に直交する前述の光軸10に垂直な面上の直線である。
【0063】
この第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とは、プレート型のビームスプリッターであり、第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とのプレートの厚さは、以下の数式2を満たす数値とすることが好ましい。
【0064】
【数2】
【0065】
但し、以下の通りである。
46:第3ビームスプリッター46のプレートの厚さ
47:第4ビームスプリッター47のプレートの厚さ
41:第1ビームスプリッター41のプレートの厚さ
42:第2ビームスプリッター42のプレートの厚さ
46:第3ビームスプリッター46の光学材料の屈折率
47:第4ビームスプリッター47の光学材料の屈折率
41:第1ビームスプリッター41の光学材料の屈折率
42:第2ビームスプリッター42の光学材料の屈折率
【0066】
第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とは、入射するレーザビームを透過光と反射光に分離する機能を有している。なお図9においては、レーザビームの照射軌道15は、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42と第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とへ入射するレーザビームの軌道と、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42と第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47との透過光の軌道とを示しており、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42と第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47との反射光は図示を省略している。このとき、第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47との、ビームスプリッターの光学面を基準とするビームスプリッターへのレーザビームの入射角度が45°におけるレーザビームの透過率は0.1%以上5.0%以下が好ましい。入射するレーザビームに対して、レーザビームの透過光成分のエネルギー強度が減少するからである。そして、第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とは、第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とのビームスプリッターの光学面を基準とするビームスプリッターへのレーザビームの入射角度が「45°以外における透過率」の「45°の透過率」に対する変化特性が同じものが好ましい。なお、第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とが反射した不要な反射光は、レーザビームを吸収し易いように表面を黒色に加工した銅板などに照射して吸収放熱すれば良い。
【0067】
また、プレート型のビームスプリッターにおいては、屈折によって透過光が光軸10に対してシフトする(図9において透過光のシフトは図示していない)。しかしながら、当該減光機構は、レーザビームのエネルギー強度分布および像形状を観測装置50で計測するためのものであることから、透過光の光軸10に対するシフトは問題にならない。
【0068】
ここで、図9に示したように、第1ビームスプリッター41はX軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度αで傾けて配置し、第2ビームスプリッター42はX軸と平行であり光軸10を通るX’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して角度-αで傾けて配置している。このようにプレート型のビームスプリッターを光軸10に垂直な面に対して傾けて配置したとき、ビームスプリッターに平行光を入射した場合は、ビームスプリッターの出射光は屈折によって入射光に対して軌道がシフトする。そして、ビームスプリッターに集束光を入射した場合は、軌道のシフトに加えて、出射光のX軸方向は同じ焦点距離で集束するが、出射光のY軸方向は異なる焦点距離で集束する非点収差が発生する。すなわち、X軸を回転軸とする第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とだけを透過したレーザビームの像は非点収差によってY軸方向に歪む。
【0069】
そこで、減光機構の第4の実施形態4の減光機構40では、上述の第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とを配置している。上述のように、第3ビームスプリッター46はY’’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度βで傾けて配置し、第4ビームスプリッター47はY軸と平行であり光軸10を通るY’’’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して角度-βで傾けて配置している。このことによって、第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47の透過光成分の像形状は、上述の第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との説明と同様の理由で、非点収差によってX軸方向に歪む。ここで、第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47と第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とのそれぞれのプレートの厚さは、上述した数式2を満足する数値が選択される。そして、数式2は、第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とのそれぞれ非点収差によって生じる焦点距離の差である非点隔差の合計が、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とのそれぞれの非点収差によって生じる非点隔差の合計に等しいことを意味している。すなわち、第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47との合計のX軸方向の歪み量は、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との合計のY軸方向の歪み量と同じになる。したがって、減光機構の第4の実施形態4の観測装置50で観測するレーザビームのスポットにおける像形状は、減光機構の第4の実施形態4の減光機構40に入射するレーザビームの像形状と相似の像形状となる。
【0070】
図9に示す減光機構40の構成において、レーザビームのエネルギー強度が観測装置50に入射するには減光が不十分な場合は、第1ビームスプリッター41及び第2ビームスプリッター42及び第3ビームスプリッター46及び第4ビームスプリッター47のビームスプリッター群と観測装置50との間に、レーザビームの減光が可能なNDフィルタ等の光学素子を配置しても良い。
【0071】
以上説明したように、本件発明に係る減光機構の第4の実施形態は、レーザビーム照射用光学ユニット31よりもスポット側に、数式2を満足するプレートの厚さを有する第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とを備えており、減光機構の第1の実施形態である減光機構の第1の実施形態1の減光機構40に第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とを加えた構成である。そして、光軸10に垂直な面における原点が光軸10にある任意の直交座標軸をX軸とY軸としたとき、第3ビームスプリッター46はY軸と平行であり光軸10を通るY’’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度βで傾けて配置し、第4ビームスプリッター47はY軸と平行であり光軸10を通るY’’’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して角度-βで傾けて配置することによって、減光機構の第4の実施形態4の減光機構40に入射するレーザビームのエネルギー強度を減少させて減光機構40から出力することができる。そして、減光機構40は、減光機構40への入射光が、入射位置によって入射角度が異なる集光光であっても、入射光に対して出射光のエネルギー強度分布を偏らせることなくレーザビームのエネルギー強度を減少させて減光機構40から出力することができる。また、減光機構の第4の実施形態4の観測装置50で観測するレーザビームのスポットにおける像形状は、減光機構40に入射するレーザビームの像形状と相似の像形状となる。さらに、当該減光機構は、入射可能なレーザビームのパワーが通常でも4kWと大きい。したがって、当該減光機構は、レーザビームのエネルギー強度が高くても、イメージセンサやカメラなどの画像データを取得する観測装置50を破壊しない程度までレーザビームを減光し、レーザビームのスポットの像形状及びエネルギー強度分布を測定することができる。
【0072】
〔コリメートレンズ〕
コリメートレンズ21は、光ファイバ30の出力端から放射状に出力されるレーザビームを平行光にするための光学素子である。
【0073】
〔集光レンズ〕
集光レンズ22は、コリメートレンズ21で平行光に変換されたレーザビームを、スポットに集光するための光学素子である。
【0074】
〔ビームスプリッター〕
ビームスプリッターにはキューブ型とプレート型があるが、本件発明に係るビームスプリッターはプレート型が好ましい。そして、プレート型のビームスプリッターの形状は、本件発明に係る減光機構に用いることができる限りにおいて特に限定されず、四角形や多角形であっても良いし円形であっても良い。また、プレート型のビームスプリッターは、偏光型であっても良いし無偏光型であっても良い。キューブ型はレーザビームの入射方向に対して垂直な面が複数存在することから、レーザビームのレーザ発振器(光源)への戻り光が発生し、レーザの発振が不安定になることから好ましくない。また、キューブ型は、通常、2個のプリズムの斜面同士を接合樹脂を用いて接合した構造を有している。そして、キューブ型は、プレート型とくらべて体積が大きい。したがって、キューブ型は、レーザビームを入射したときに発生する熱で接合に用いた樹脂が変性しやすい、発生した熱がプレート型と比べて放熱しにくく破損しやすい、などから好ましくない。
【0075】
〔観測装置〕
観測装置50は、スポットにおけるレーザビームの照射位置や像形状、及びレーザビームのエネルギー強度分布を観測することができるものであれば、特に限定されるものではなく、CCDやCMOSなどのイメージセンサ等、いかなる観測装置も用いることができる。そして、観測装置50は、観測した結果をデータとして出力できることが好ましい。演算装置を用いて、観測装置50の出力データについて数値演算することができるからである。また、観測装置50が接続された減光機構40は、レーザビーム照射用光学ユニット31に対して脱着可能であることが好ましい。減光機構40をレーザビーム照射用光学ユニット31に接続した際の、観測装置50の撮像面(観測点)の位置は、レーザ加工時の、スポットを形成する加工対処物の表面と同じ場所に位置するのが好ましい。さらに、観測装置50の撮像面の中心の位置は、光軸10に位置するとともに、加工対象物の加工部分の中心であることが好ましい。スポットを形成する加工対処物の表面と同じ位置において、レーザビームの位置やレーザビームのエネルギー分布を観測することができるからである。
【0076】
〔演算装置〕
本件発明に係る演算装置は、プログラミングが可能であり、上述の観測装置50の出力データについて数値演算することができるものであれば、いかなる演算装置も用いることができるが、データを保存する記憶装置を備えているものが好ましい。減光機構の第1の実施形態1に配置した減光機構40より光源側の光学系の光学情報をもとに、光学計算を行って、事前に複数のスポット位置(焦点距離位置)におけるレーザビームの像形状データ(1次データ)を取得して記憶装置に保存しておくことができるからである。そして、減光機構40も含めた光学系、すなわち、減光機構の第1の実施形態1において、レーザビームを照射し、スポット位置として設定した任意の位置の観測装置50からレーザビームの像形状データ(2次データ)を取得した後、1次データから、2次データを取得したと同じスポット位置(焦点距離位置)の像形状データを選択し、演算装置において、2次データについてY軸方向について座標位置を補正することができるからである。
【0077】
2.観測装置の出力データを数値演算して補正を行う出力データの補正方法の実施の形態
減光機構の第1の実施形態である減光機構の第1の実施形態1においては、第1ビームスプリッター41はX軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して30°以上60°以下の範囲の角度αで傾けて配置し、第2ビームスプリッター42はX軸と平行であり光軸10を通るX’軸を回転軸として光軸10に垂直な面に対して角度-αで傾けて配置している。このようにプレート型のビームスプリッターを光軸10に垂直な面に対して傾けて配置したとき、ビームスプリッターに平行光を入射した場合は、ビームスプリッターの出射光は屈折によって入射光に対して軌道がシフトする。そして、ビームスプリッターに集束光を入射した場合は、軌道のシフトに加えて、出射光のX軸方向は同じ焦点距離で集束するが、出射光のY軸方向は異なる焦点距離で集束する非点収差が発生する。すなわち、X軸を回転軸とする第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とを透過したレーザビームの像は非点収差によってY軸方向に歪む。このことによって、減光機構の第1の実施形態1において、レーザビームのスポットにおける像形状はY軸方向に歪んで観測される。本件発明に係る補正方法は、減光機構の第1の実施形態1において、レーザビームのスポットにおける像形状が非点収差によってY軸方向に歪んで観測される観測装置50からの出力データを用いて、出力データのY軸方向について座標位置を補正する数値演算を行うことで、適正な像形状に補正する出力データの補正方法である。以下に、出力データのY軸方向について座標位置を補正する数値演算を行うことで、適正な像形状に補正する出力データの補正方法の実施形態を説明するが、出力データのY軸方向について座標位置を補正することができる限りにおいて、以下の記載内容に限定解釈されるものではない。
【0078】
〔補正方法の第1の実施形態〕
補正方法の第1の実施形態は、減光機構40に入射するレーザビームの光軸10に垂直な面における像形状の外周輪郭が円である場合に用いることができる出力データの補正方法である。この場合、減光機構40に入射するレーザビームの光軸10に垂直な面における像形状の外周輪郭が円であることから、減光機構40に入射するレーザビームの像形状の外周輪郭におけるX軸方向の大きさとY軸方向の大きさとの比は1:1である。このとき、減光機構40から出力されるレーザビームのスポットにおける像形状のX軸上の像は歪まないことから、X軸上の像の直径を基準としてY軸上の像の直径との比率を用いて、出力データのY軸位置を補正することができる。
【0079】
例えば、観測装置50の撮像面上において、X軸方向の像の直径値をa、Y軸方向の像の直径値をbとし、観測装置50からの出力データの任意の位置のX軸の座標値をx、Y軸の座標値をyとする。このとき、当該任意の位置の補正後のデータ位置は、X軸の座標値はxであり、Y軸の座標値は(a/b)・yで表すことができる。すなわち、観測装置50からの出力データについて、上述の通りY軸方向について座標位置を補正する数値演算を演算装置を用いて行うことによって、適正な像形状として補正後の出力データが得られる。この補正後の出力データを表示装置で表示することによって、スポットにおける像形状として観測することができる。
【0080】
〔補正方法の第2の実施形態〕
補正方法の第2の実施形態は、減光機構40に入射するレーザビームの光軸10に垂直な面における像形状の外周輪郭が円及び円以外である場合に用いることができる出力データの補正方法である。まず、減光機構40より光源側の光学系の光学情報、すなわち、減光機構の第1の実施形態1では、光源のレーザビームの像形状と、コリメートレンズ21、集光レンズ22の光学情報をもとに光学計算を行って、減光機構40を含めない場合の複数のスポット位置(焦点距離位置)におけるレーザビームの像形状データ(1次データ)を事前に取得し、演算装置の記憶装置に保存しておく。次に、減光機構40も含めた光学系、すなわち、減光機構の第1の実施形態1において、レーザビームを照射し、スポット位置として設定した任意の位置の観測装置50からレーザビームの像形状データ(2次データ)を取得する。
【0081】
そして、1次データから、2次データを取得したと同じスポット位置(焦点距離位置)の像形状データを選択し、像形状のX軸方向における最大の像の大きさの値をaとし、Y軸方向における最大の像の大きさの値をbとする。また、2次データから、像形状のX軸方向における最大の像の大きさの値をcとし、Y軸方向における最大の像の大きさの値をdとする。このとき、観測装置50からの出力データの任意の位置のX軸の座標値をx、Y軸の座標値をyとすると、当該任意の位置の補正後のデータ位置は、X軸の座標値はxであり、Y軸の座標値は((b・c)/(a・d))・yで表すことができる。すなわち、観測装置50からの出力データについて、上述の通りY軸方向について座標位置を補正する数値演算を演算装置を用いて行うことによって、適正な像形状として補正後の出力データが得られる。この補正後の出力データを表示装置で表示することによって、スポットにおける像形状として観測することができる。
【0082】
3.レーザビーム計測装置の実施の形態
本件発明に係るレーザビーム計測装置は、スポットにおけるレーザビームの像形状や、その像形状におけるエネルギー強度分布を確認するための装置であり、上述で説明した減光機構の第1の実施形態から減光機構の第4の実施形態のいずれかの減光機構40を備えるものである。そして、当該レーザビーム計測装置は上述で説明した観測装置50や演算装置を備えることが好ましい。このことによって、減光機構40に入射するレーザビームのエネルギー強度が高くても、イメージセンサやカメラなどの画像データを取得する観測装置50を破壊しない程度までレーザビームを減光し、レーザビームのスポットの像形状及びエネルギー強度分布を測定することができる。また、レーザビームのスポットの像形状及びエネルギー強度分布を視覚的に確認したり、データとして出力して非点収差によってY軸方向に歪んで観測される像形状を補正することができるからである。
【0083】
以上説明した本件発明に係る実施の形態は、本件発明の一態様であり、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、以下実施例を挙げて本件発明をより具体的に説明するが、本件発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0084】
実施例1では、減光機構の第1の実施形態である図1に示す減光機構の第1の実施形態1の減光機構40の構成を用いた。レーザビームは波長が1068nmのものを用いた。そして、集光レンズ22に環状変換機能を備えたものを使用して、スポットにおける像形状が環状となるようにした。また、プレート型の第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とには、厚さがそれぞれ3mmであり、図2に示す透過率特性のビームスプリッターを使用した。そして、第1ビームスプリッター41はX軸を回転軸として45°傾けて配置し、第2ビームスプリッター42はX’軸を回転軸として-45°傾けて配置した。
【0085】
この構成におけるスポットにおける像のエネルギー強度分布を測定した結果を図10に示す。図10(a)は、スポットにおける像のX軸上のエネルギー強度分布を示し、横軸はX軸の座標位置を示し、縦軸はエネルギー強度を示している。そして、図10(b)は、スポットにおける像のY軸上のエネルギー強度分布を示し、縦軸はY軸の座標位置を示し、横軸はエネルギー強度を示している。図10から、実施例1の減光機構から得られる像形状のエネルギー強度分布は、偏らない状態であることが明らかになった。
【0086】
次に、スポットにおける像形状を観測した結果を図11に示す。横方向の位置は、図の左側がアンダーフォーカス、図の右側がオーバーフォーカスに相当する焦点位置を示す。図11から、スポットにおける像形状が楕円状であることから、像形状がY軸方向に歪むことを確認できた。
【実施例0087】
実施例2では、減光機構の第2の実施形態である図4に示す減光機構の第2の実施形態2の減光機構40の構成を用いた。レーザビームは波長が1068nmのものを用いた。そして、集光レンズ22に環状変換機能を備えたものを使用して、スポットにおける像形状が環状となるようにした。また、プレート型の第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とには、厚さがそれぞれ3mmであり、プレートの表面に光学薄膜を形成しておらず入射角度依存性が比較的大きい図12に示す反射率特性のビームスプリッターを使用した。横軸はビームスプリッターへのレーザビームの入射角度(°)を示し、縦軸はレーザビームの反射率(%)を示している。そして、第1ビームスプリッター41はX軸を回転軸として45°傾けて配置し、第2ビームスプリッター42はX’軸を回転軸として-45°傾けて配置した。
【0088】
この構成におけるスポットにおける像のエネルギー強度分布を測定した結果を図13に示す。図13(a)は、スポットにおける像のX軸上のエネルギー強度分布を示し、横軸はX軸の座標位置を示し、縦軸はエネルギー強度を示している。そして、図13(b)は、スポットにおける像のY軸上のエネルギー強度分布を示し、縦軸はY軸の座標位置を示し、横軸はエネルギー強度を示している。図13から、実施例2の減光機構から得られる像形状のエネルギー強度分布は、偏らない状態であることが明らかになった。すなわち、反射率の入射角度依存性が比較的大きくても、減光機構の第2の実施形態の構成に使用できることが確認できた。
【0089】
次に、スポットにおける像形状を観測した結果を図14に示す。横方向の位置は、図の左側がアンダーフォーカス、図の右側がオーバーフォーカスに相当する焦点位置を示す。図14から、スポットにおける像形状が円状であり、像形状がY軸方向に歪まないことを確認できた。これは、減光機構の第2の実施形態が、ビームスプリッターの反射光を用いる構成であり、ビームスプリッターの透過光のような非点収差による非点隔差が生じないからである。
【実施例0090】
実施例3では、減光機構の第3の実施形態である図6に示す減光機構の第3の実施形態3の減光機構40の構成を用いた。レーザビームは波長が1068nmのものを用いた。そして、集光レンズ22に環状変換機能を備えたものを使用して、スポットにおける像形状が環状となるようにした。また、プレート型の第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とには、厚さがそれぞれ3mmであり、図2に示す透過率特性のビームスプリッターを使用した。そして、第1ビームスプリッター41はX軸を回転軸として45°傾けて配置し、第2ビームスプリッター42はX’軸を回転軸として-45°傾けて配置した。次に、プレート型の合計厚ビームスプリッター45は、厚さが6mmであり、図7に示す透過率特性のビームスプリッターを使用した。そして、合計厚ビームスプリッター45はY’軸を回転軸として45°傾けて配置した。
【0091】
なお、合計厚ビームスプリッター45の厚さ6mmは、前述の数式1を用いて、以下の条件で算出した。
41:3mm
42:3mm
45:1.44956(波長1068nm)
41:1.44956(波長1068nm)
42:1.44956(波長1068nm)
α :45°
β :45°
【0092】
この構成におけるスポットにおける像のエネルギー強度分布を測定した結果を図15に示す。図15(a)は、スポットにおける像のX軸上のエネルギー強度分布を示し、横軸はX軸の座標位置を示し、縦軸はエネルギー強度を示している。そして、図15(b)は、スポットにおける像のY軸上のエネルギー強度分布を示し、縦軸はY軸の座標位置を示し、横軸はエネルギー強度を示している。図15から、実施例3の減光機構から得られる像形状のエネルギー強度分布は、偏らない状態であることが明らかになった。
【0093】
次に、スポットにおける像形状を観測した結果を図16に示す。横方向の位置は、図の左側がアンダーフォーカス、図の右側がオーバーフォーカスに相当する焦点位置を示す。図16から、スポットにおける像形状が円状であり、像形状がY軸方向に歪まないことを確認できた。これは、合計厚ビームスプリッター45の非点収差によって生じる焦点距離の差である非点隔差が、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とのそれぞれの非点収差によって生じる非点隔差の合計に等しくなるからである。
【実施例0094】
実施例4では、厚さがそれぞれ7.459mmの第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とを使用し、第1ビームスプリッター41はX軸を回転軸として30°傾けて配置し、第2ビームスプリッター42はX’軸を回転軸として-30°傾けて配置した以外は、実施例3と同じ構成を用いた。
【0095】
なお、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42との厚さ7.459mmは、前述の数式1を用いて、d41=d42とし、以下の条件で算出した。
45:6mm
45:1.44956(波長1068nm)
41:1.44956(波長1068nm)
42:1.44956(波長1068nm)
α :30°
β :45°
【0096】
この構成におけるスポットにおける像のエネルギー強度分布を測定した結果を図17に示す。図17(a)は、スポットにおける像のX軸上のエネルギー強度分布を示し、横軸はX軸の座標位置を示し、縦軸はエネルギー強度を示している。そして、図17(b)は、スポットにおける像のY軸上のエネルギー強度分布を示し、縦軸はY軸の座標位置を示し、横軸はエネルギー強度を示している。図17から、実施例4の減光機構から得られる像形状のエネルギー強度分布は、偏らない状態であることが明らかになった。
【0097】
次に、スポットにおける像形状を観測した結果を図18に示す。横方向の位置は、図の左側がアンダーフォーカス、図の右側がオーバーフォーカスに相当する焦点位置を示す。図18から、スポットにおける像形状が円状であり、像形状がY軸方向に歪まないことを確認できた。これは、合計厚ビームスプリッター45の非点収差によって生じる焦点距離の差である非点隔差が、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とのそれぞれの非点収差によって生じる非点隔差の合計に等しくなるからである。
【実施例0098】
実施例5では、減光機構の第4の実施形態である図9に示す減光機構の第4の実施形態4の減光機構40の構成を用いた。レーザビームは波長が1068nmのものを用いた。そして、集光レンズ22に環状変換機能を備えたものを使用して、スポットにおける像形状が環状となるようにした。また、プレート型の第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42と第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47には、厚さがそれぞれ3mmであり、図2に示す透過率特性のビームスプリッターを使用した。そして、第1ビームスプリッター41はX軸を回転軸として45°傾けて配置し、第2ビームスプリッター42はX’軸を回転軸として-45°傾けて配置した。次に、第3ビームスプリッター46はY’’軸を回転軸として45°傾けて配置し、第4ビームスプリッター47はY’’’軸を回転軸として-45°傾けて配置した。
【0099】
なお、第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47との厚さ3mmは、d46=d47とし、前述の数式2を用いて、以下の条件で算出した。
41:3mm
42:3mm
46:1.44956(波長1068nm)
47:1.44956(波長1068nm)
41:1.44956(波長1068nm)
42:1.44956(波長1068nm)
α :45°
β :45°
【0100】
この構成におけるスポットにおける像のエネルギー強度分布を測定した結果を図19に示す。図19(a)は、スポットにおける像のX軸上のエネルギー強度分布を示し、横軸はX軸の座標位置を示し、縦軸はエネルギー強度を示している。そして、図19(b)は、スポットにおける像のY軸上のエネルギー強度分布を示し、縦軸はY軸の座標位置を示し、横軸はエネルギー強度を示している。図19から、実施例5の減光機構から得られる像形状のエネルギー強度分布は、偏らない状態であることが明らかになった。
【0101】
次に、スポットにおける像形状を観測した結果を図20に示す。横方向の位置は、図の左側がアンダーフォーカス、図の右側がオーバーフォーカスに相当する焦点位置を示す。図20から、スポットにおける像形状が円状であることを確認できた。これは、第3ビームスプリッター46と第4ビームスプリッター47とのそれぞれの非点収差によって生じる焦点距離の差である非点隔差の合計が、第1ビームスプリッター41と第2ビームスプリッター42とのそれぞれの非点収差によって生じる非点隔差の合計に等しくなるからである。
【比較例】
【0102】
比較例では、光源側から順に、コリメートレンズ、集光レンズと配置した構成のレーザビーム照射用光学ユニットと、プレート型のビームスプリッターという構成を用いた。レーザビームは波長が1068nmのものを用いた。そして、集光レンズに環状変換機能を備えたものを使用して、スポットにおける像形状が環状となるようにした。また、プレート型のビームスプリッターは比較例の減光機構であり、厚さが3mmであり、図2に示す透過率特性のビームスプリッターを使用した。そして、ビームスプリッターはX軸を回転軸として45°傾けて配置した。すなわち、比較例では、減光機構として用いるビームスプリッターは1枚のみの構成であり、透過光を観測するものである。
【0103】
この構成におけるスポットにおける像のエネルギー強度分布を測定した結果を図21に示す。図21(a)は、スポットにおける像のX軸上のエネルギー強度分布を示し、横軸はX軸の座標位置を示し、縦軸はエネルギー強度を示している。そして、図21(b)は、スポットにおける像のY軸上のエネルギー強度分布を示し、縦軸はY軸の座標位置を示し、横軸はエネルギー強度を示している。図21(b)から、比較例の減光機構から得られる像形状のエネルギー強度分布は、Y軸方向に大きく偏っている状態であることが明らかになった。
【0104】
次に、スポットにおける像形状を観測した結果を図22に示す。図22から、スポットにおける像形状が楕円状であることを確認できた。このことから、比較例は、像形状がY軸方向に歪むことも明らかになった。なお、図22における像形状の濃淡については、濃い部分はエネルギー強度が高く、淡い部分はエネルギー強度が低いことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本件発明に係るレーザビーム照射用光学ユニットから照射されるレーザビームを減光する減光機構は、レーザビームのエネルギー強度が高くても、イメージセンサやカメラなどの画像データを取得する装置を破壊しない程度までレーザビームを減光し、レーザビームのスポットの像形状及びエネルギー強度分布を測定することができる。そして、当該減光機構は、入射位置によって入射角度が異なる集光光であっても、入射光のエネルギー強度分布を偏らせることなくレーザビームのエネルギー強度を減少させて当該減光機構から出力することができる。すなわち、本件発明に係るレーザビーム照射用光学ユニットから照射されるレーザビームを減光する減光機構は、レーザビームを照射して加工対象物を加工するレーザ加工装置において、スポットにおけるレーザビームの像形状やレーザビームのエネルギー強度分布を観測装置を用いて計測する場合に好適である。
【符号の説明】
【0106】
1 減光機構の第1の実施形態
2 減光機構の第2の実施形態
3 減光機構の第3の実施形態
4 減光機構の第4の実施形態
10 光軸
15 照射軌道
21 コリメートレンズ
22 集光レンズ
30 光ファイバ
31 レーザビーム照射用光学ユニット
40 減光機構
41 第1ビームスプリッター
42 第2ビームスプリッター
43 第1ビームスプリッター
44 第2ビームスプリッター
45 合計厚ビームスプリッター
46 第3ビームスプリッター
47 第4ビームスプリッター
50 観測装置
61 光軸10に垂直な面
62 光軸10に平行な仮想線
63 光軸10に垂直な面
64 光軸10に平行な仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22