IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社青山製作所の特許一覧

特開2024-77818フードストライカとそのL字状フックのかしめ固定方法
<>
  • 特開-フードストライカとそのL字状フックのかしめ固定方法 図1
  • 特開-フードストライカとそのL字状フックのかしめ固定方法 図2
  • 特開-フードストライカとそのL字状フックのかしめ固定方法 図3
  • 特開-フードストライカとそのL字状フックのかしめ固定方法 図4
  • 特開-フードストライカとそのL字状フックのかしめ固定方法 図5
  • 特開-フードストライカとそのL字状フックのかしめ固定方法 図6
  • 特開-フードストライカとそのL字状フックのかしめ固定方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077818
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】フードストライカとそのL字状フックのかしめ固定方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/12 20060101AFI20240603BHJP
   F16B 1/02 20060101ALI20240603BHJP
   E05B 15/02 20060101ALI20240603BHJP
   E05B 83/24 20140101ALN20240603BHJP
【FI】
B62D25/12 N
F16B1/02 N
E05B15/02 G
E05B83/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189995
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】390038069
【氏名又は名称】株式会社青山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 靖
(72)【発明者】
【氏名】栗山 靖史
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 一輝
(72)【発明者】
【氏名】古井 秀弥
(72)【発明者】
【氏名】内出 真以
【テーマコード(参考)】
2E250
3D004
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250LL15
2E250PP10
3D004AA03
3D004AA12
3D004BA02
3D004CA41
(57)【要約】
【課題】高さ調整作業の安定性を高めたフードストライカと、その製造に適したL字状フックのかしめ固定方法を提供する。
【解決手段】本発明のフードストライカは、ベース10と、ベースに固定された縦長のナット16と、このナットに螺合されたフランジ付きのボルト19と、ベースの貫通孔14を貫通して昇降する第1脚部12を備えたL字状フック11とからなり、L字状フック11の第2脚部13の先端部21はボルト19の頭部に、ボルトの回転を許容する強度でかしめ固定されている。ボルト頭部は第2脚部13の先端部21をかしめる際に六角頭部27に同時成形される。かしめ固定した部分にはかしめの前工程でグリスGが塗布され、ボルトの回転トルクが所定範囲に調整されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、このベースにかしめ固定された縦長のナットと、このナットに螺合されたフランジ付きのボルトと、ベースの貫通孔を貫通して昇降する第1脚部及び横方向に延びる第2脚部を備えたL字状フックとからなり、
このL字状フックの第2脚部の先端部は、前記ボルトの頭部にボルトの回転を許容する強度でかしめ固定されていることを特徴とするフードストライカ。
【請求項2】
前記ボルトの頭部の最先端部は、L字状フックの第2脚部の先端をかしめる際に、ボルト操作用の駆動部に成形されていることを特徴とする請求項1に記載のフードストライカ。
【請求項3】
L字状フックの第2脚部の先端部を前記ボルトの頭部にかしめ固定する部分にグリスが塗布され、ボルトの回転トルクが所定範囲に調整されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフードストライカ。
【請求項4】
フードストライカのL字状フックの第2脚部の先端部をフランジ付きのボルトの頭部にかしめ固定する方法であって、
L字状フックの第2脚部の先端部の両面にグリスを塗布する工程と、
ボルトのフランジよりも先端側の部分に、L字状フックの第2脚部の先端部とワッシャとを挿入する工程と、
ボルトの最先端部を凹部を備えた金型を用いてかしめることにより、脱落防止用の拡径部とボルト操作用の駆動部とを同時成形するとともに、ボルトの回転トルクを所定範囲とする工程と、
ボルトにナットを組み付ける工程と、
を含むことを特徴とするフードストライカのL字状フックのかしめ固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のボンネットフードの裏面に取付けられるフードストライカと、そのL字状フックのかしめ固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のボンネットフードは、その裏面に取付けられるフードストライカを、ボディ側に取付けられたフードロックと呼ばれるラッチ装置に係合させることにより、ロックできるようになっている。ボディやフードの建付け誤差を吸収してフードストライカをフードロックに確実に係合させ、また走行中のノイズの発生をなくすために、フードストライカには特許文献1に示されるような高さ調整機構が組み込まれている。
【0003】
図7に特許文献1に記載されたフードストライカの構造を示す。1はボンネットフードに取付けられるベース、2は金属棒を折り曲げたL字状フックである。3はベース1に回転可能にかしめられたボルトであり、4はそのおねじ部である。L字状フック2の一端はベース1の貫通孔5を貫通しており、L字状フック2の他方の先端部6にはめねじが切られ、ボルト3のおねじ部4と螺合している。おねじ部4の先端は六角頭部7となっており、抜け止めリング8が設けられている。なお9はボルト3をベースに回転可能に保持させるための大径リングである。
【0004】
このような構造のフードストライカは、六角頭部7を利用してボルト3を回転させ、そのおねじ部4に螺合しているL字状フック2を昇降させるようになっている。しかし、ボルト3をベース1に対して回転可能に取付けている大径リング9と、ボルト3を回転させるための六角頭部7との間の距離が長いため、ボルト3を回転させようとして六角頭部7に外力を加えた際にボルト3がぐらついて振れてしまい、高さ調整作業が不安定になり易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-110608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、高さ調整作業の安定性を高めたフードストライカと、その製造に適したL字状フックのかしめ固定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明のフードストライカは、ベースと、このベースにかしめ固定された縦長のナットと、このナットに螺合されたフランジ付きのボルトと、ベースの貫通孔を貫通して昇降する第1脚部及び横方向に延びる第2脚部を備えたL字状フックとからなり、このL字状フックの第2脚部の先端部は、前記ボルトの頭部にボルトの回転を許容する強度でかしめ固定されていることを特徴とするものである。
【0008】
なお、前記ボルトの頭部の最先端部は、L字状フックの第2脚部の先端をかしめる際に、ボルト操作用の駆動部に成形されていることが好ましく、L字状フックの第2脚部の先端部を前記ボルトの頭部にかしめ固定する部分にグリスが塗布され、ボルトの回転トルクが所定範囲に調整されていることが好ましい。
【0009】
また本発明のフードストライカのL字状フックのかしめ固定方法は、フードストライカのL字状フックの第2脚部の先端部をフランジ付きのボルトの頭部にかしめ固定する方法であって、L字状フックの第2脚部の先端部の両面にグリスを塗布する工程と、ボルトのフランジよりも先端側の部分に、L字状フックの第2脚部の先端部とワッシャとを挿入する工程と、ボルトの最先端部を凹部を備えた金型を用いてかしめることにより、脱落防止用の拡径部とボルト操作用の駆動部とを同時成形するとともに、ボルトの回転トルクを所定範囲とする工程と、ボルトにナットを組み付ける工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフードストライカは、ベースに固定された縦長のナットにボルトを螺合させ、L字状フックの第2脚部の先端部をボルトの頭部に、ボルトの回転を許容する強度でかしめ固定した構造である。ボルトは縦長のナットに保持されており、ボルトを回転させて行う高さ調整作業の際に、外力が加えられるボルト頭部のボルト操作用の駆動部の位置と、ボルトがナットに保持されている位置との距離が短いため、ボルトがぐらつくことがなく、安定した作業が可能である。
【0011】
また、本発明のフードストライカのL字状フックのかしめ固定方法によれば、かしめ作業の際にボルトの最先端部をボルト操作用の駆動部に成形できるので、作業工程を減らしてコストダウンを図ることができる。またかしめ強度を調整するとともに、L字状フックの第2脚部の先端部の両面に予めグリスを塗布してかしめ後のボルトの回転トルクを所定範囲としているため、高さ調整作業を容易に行うことができるのみならず、フード開閉耐久性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態のフードストライカの斜視図である。
図2】実施形態のフードストライカの上面図と縦断面図である。
図3】L字状フックの第2脚部の先端部にグリスを塗布した状態の断面図である。
図4】かしめ前のフードストライカの上面図と縦断面図である。
図5】かしめ工程の説明図である。
図6】かしめ後のフードストライカの上面図と縦断面図である。
図7】従来のフードストライカを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1は実施形態のフードストライカの斜視図であり、図2はその縦断面図である。これらの図において、10はボンネットフードに取付けられるベース、11は金属棒を折り曲げ成形されたL字状フックであり、上下方向に延びる棒状の第1脚部12と、横方向に延びる第2脚部13とを備えている。第2脚部13の先端部21は扁平に加工されている。また第2脚部13の側面はフードロックとの係合面28に加工されている。ベース10には貫通孔14が形成されており、L字状フック11の第1脚部12の先端部15はこの貫通孔14を貫通している。
【0014】
16はベース10に対して垂直にかしめ固定された縦長のナットである。このナット16はその端部がベース10に強固に固定されている。図2に示すようにナット16の内面にはめねじ17が形成されており、これに対応するおねじ18を備えたボルト19がナット16と螺合している。
【0015】
ボルト19はおねじ18の端部にフランジ20を備えたフランジ付きのボルトであり、L字状フック11の第2脚部13の先端部21はボルト19の頭部にかしめ固定されている。一般に、2つの部材をかしめ固定した場合には、一方の部材を他方の部材に対して回転させたり摺動させたりすることはできないのが普通である。しかし本発明ではボルト19がL字状フック11の先端部21に対して回転できるように、かしめ部に予めグリスGが塗布されているとともに、かしめ強度が調整され、ボルトの回転トルクを所定範囲としている。
【0016】
このかしめは、次の手順で行われる。先ず図3に示すように、L字状フック11の第2脚部13の先端部21の両面にグリスGを塗布する。次に図4に示すように、ボルト19のフランジ20よりも先端側の部分に、L字状フック11の先端部21とワッシャ22とを挿入する。このときボルト19の最先端部は円柱部23となっている。L字状フック11の先端部21は扁平に加工されており、ボルト19の円柱部23に差し込むことができる貫通孔が形成されている。L字状フック11の先端部21はボルト19のフランジ20に接した状態となる。
【0017】
次に図5に示すように、ボルト19の最先端部である円柱部23を、凹部24を備えた金型25を用いてかしめる。これにより円柱部23は塑性変形し、ワッシャ22の上に脱落防止用の拡径部26が形成されるとともに、ボルト頭部にボルト操作用の駆動部27が同時成形される。ボルト操作用の駆動部27はこの実施形態ではソケットを用いて締める六角形であるがこれに限定されるものではなく、ビットを用いて締める六角穴、十字穴、ヘクサロビュラ穴など任意の形状とすることができ、タンパープルーフを考慮した形状とすることもできる。
【0018】
前記したようにこのかしめ工程におけるかしめ強度は、ボルト19の回転を許容する強度に調整されている。また本発明ではかしめ部分となるL字状フック11の第2脚部13の先端部の両面に前工程で予めグリスGを塗布しておき、これによりかしめ後のボルトの回転トルクを所定範囲とする。具体的には、ボルト19の回転トルクが2~30N・mとなるように、グリスGの塗布するとともに、かしめ強度を調整する。その後、図6に示すようにベース10にかしめ固定されている縦長のナット16とボルト19とを組付ける。このときL字状フック11の第1脚部12はベース10の貫通孔14を貫通させ、最後に第1脚部12の先端に適宜の抜け止め加工を施す。このようにして、図1図2に示したフードストライカとなる。
【0019】
本発明のフードストライカは従来と同様にボンネットフードの裏面に取付けられるものであり、高さ調整を行うためにはボルト操作用の駆動部27に工具を嵌めてボルト19を回転させる。その結果、ボルト19は縦長のナット16の内部を昇降し、それに連れてL字状フック11も昇降する。これによってベース10とL字状フック11の第2脚部13との間隔が変化し、高さ調整が行われることとなる。
【0020】
この高さ調整作業の際には、ボルト19の最先端のボルト操作用の駆動部27に外力が加えられるが、ボルト19はベース10に強固に固定された縦長のナット16の内部に保持されているため、図7に示した従来のボルトとは異なり、力点と支持点との距離が短い。従って、ボルト19がぐらつくことがなく、安定した作業が可能となる。
【0021】
また、本発明ではL字状フック11の第2脚部13の先端部21の両面にグリスGを塗布したうえでかしめ、ボルトの回転トルクを所定範囲とすることができるので、高さ調整作業を容易に行うことができる。また、フード開閉耐久性を向上させることができる。さらに、かしめ作業の際にボルトの最先端部をボルト操作用の駆動部27に成形できるので、作業工程を減らしてコストダウンを図ることができるなど、多くの利点がある。
【符号の説明】
【0022】
1 ベース(先行技術)
2 L字状フック
3 ボルト
4 おねじ部
5 貫通孔
6 L字状フック2の先端
7 六角頭部
8 抜け止めリング
9 大径リング
10 ベース(実施形態)
11 L字状フック
12 第1脚部
13 第2脚部
14 貫通孔
15 第1脚部の先端部
16 縦長のナット
17 めねじ
18 おねじ
19 ボルト
20 フランジ
21 第2脚部の先端部
22 ワッシャ
23 円柱部
24 凹部
25 金型
26 脱落防止用の拡径部
27 ボルト操作用の駆動部
28 フードロックとの係合面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7