(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077820
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】回動機構及び風向調整装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/10 20060101AFI20240603BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20240603BHJP
F24F 13/15 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
F24F13/10 Z
B60H1/34 611Z
F24F13/15 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190003
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠士
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA02
3L081FA04
3L081FB01
3L081FC01
3L211BA52
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】潤滑油等の液体の過剰な塗布を生じさせ難くすることが可能な回動機構を提供する。
【解決手段】本発明の回動機構は、回転軸部(32)を備える少なくとも1つの回動体(30)と、回動体(30)を回動自在に保持する保持体(10)とを備えた回動機構において、保持体(10)は、回動体(30)の回転軸部(32)を保持する少なくとも1つの軸保持部(23)と、保持体(10)の外面に設けられる注入開口と、軸保持部(23)及び注入開口間を連通する連通部とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸部を備える少なくとも1つの回動体と、前記回動体を回動自在に保持する保持体とを備えた回動機構において、
前記保持体は、前記回動体の前記回転軸部を保持する少なくとも1つの軸保持部と、前記保持体の外面に設けられる注入開口と、前記軸保持部及び前記注入開口間を連通する連通部とを有する
ことを特徴とする回動機構。
【請求項2】
前記連通部は、前記注入開口から注入された液体を前記軸保持部に案内するように、前記連通部の断面積を前記軸保持部に向けて減少させるガイド形状を有する
請求項1記載の回動機構。
【請求項3】
前記保持体は、本体部と、前記本体部に取り付けられる軸受け部材とを有し、
前記軸受け部材は、前記軸受け部材の厚さ方向に貫通する貫通孔を有し、
前記軸保持部は、前記貫通孔の少なくとも一部に配され、
前記注入開口は、前記本体部に配され、
前記連通部は、少なくとも前記本体部に設けられている
請求項2記載の回動機構。
【請求項4】
前記連通部は、前記本体部と前記軸受け部材とに亘って設けられ、
前記ガイド形状は、前記軸受け部材の前記貫通孔に形成されている
請求項3記載の回動機構。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の前記回動機構を備え、前記回動体は、風向を調整するフィンであり、前記保持体は、前記フィンを空気吹出口側の端部に保持するケース体であることを特徴とする風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動機構と、その回動機構を備える風向調整装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネル等には、風向調整装置が設置されている。風向調整装置は、例えば自動車に設けられた空調装置等から温度調節された空気が供給されて、その空気を車室内に吹き出すことができる。更に、風向調整装置に回動可能に設けられたフィン(ルーバーと呼ばれることもある)の向きを変えることによって、風向調整装置から吹き出す空気の向きを調整することが可能である。
【0003】
風向調整装置は、回動体であるフィンを円滑に回動させるために、フィンの回転軸部に潤滑油(潤滑剤)を直接塗布して、フィンの回転軸部をケース体の軸保持部に嵌入することがある。或いは、例えば実開昭61-74042号公報(特許文献1)に記載されているように、フィンの回動機構を形成する1つの部品(クラッチディスク)に潤滑油を収容する収容凹部(グリス溜り)を設けておき、その部品の収容凹部に潤滑油を塗布した状態で風向調整装置を組み立てること等が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように潤滑油を塗布してフィンがケース体に回動可能に組み付けられる従来の回動機構の場合、潤滑油を塗布するときに作業者が誤って又は不注意等によって潤滑油の塗布量が多くなった場合、潤滑油が所定の位置又は部位からはみ出すこと、又は溢れ出すこと等によって、作業者の指や、風向調整装置のその他の部分(例えば、潤滑油が不要な部分)に潤滑油が付着すること等が生じることがあった。
【0006】
その結果、風向調整装置の組み立て作業が行い難くなることや、余分に付着した潤滑油を拭き取る作業が必要になることがあり、組み立て作業の作業性及び効率性の低下を招く原因の1つになっていた。更に、潤滑油がはみ出すこと又は溢れ出すことにより、風向調整装置の外観品質を低下させることもあった。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、潤滑油等の液体の過剰な塗布を生じさせ難くすることが可能な回動機構と、その回動機構を備える風向調整装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明により提供される回動機構は、回転軸部を備える少なくとも1つの回動体と、前記回動体を回動自在に保持する保持体とを備えた回動機構において、前記保持体は、前記回動体の前記回転軸部を保持する少なくとも1つの軸保持部と、前記保持体の外面に設けられる注入開口と、前記軸保持部及び前記注入開口間を連通する連通部とを有する回動機構である。
【0009】
本発明の回動機構において、前記連通部は、前記注入開口から注入された液体を前記軸保持部に案内するように、前記連通部の断面積を前記軸保持部に向けて減少させるガイド形状を有することが好ましい。
【0010】
また、前記保持体は、本体部と、前記本体部に取り付けられる軸受け部材とを有し、前記軸受け部材は、前記軸受け部材の厚さ方向に貫通する貫通孔を有し、前記軸保持部は、前記貫通孔の少なくとも一部に配され、前記注入開口は、前記本体部に配され、前記連通部は、少なくとも前記本体部に設けられていることが好ましい。
更に、前記連通部は、前記本体部と前記軸受け部材とに亘って設けられ、前記ガイド形状は、前記軸受け部材の前記貫通孔に形成されていることが好ましい。
【0011】
更に本発明によれば、上述したように構成される前記回動機構を備え、前記回動体は、風向を調整するフィンであり、前記保持体は、前記フィンを空気吹出口側の端部に保持するケース体である風向調整装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回動機構及び風向調整装置によれば、潤滑油等の液体の過剰な塗布を生じさせ難くして、風向調整装置を組み立てるときの組み立て作業性を向上させることができる。また、風向調整装置を効率的に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係る風向調整装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】風向調整装置を形成するケース体の本体部を模式的に示す斜視図である。
【
図3】風向調整装置を形成するケース体の軸受け部材を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図1に示したIV-IV線の位置における風向調整装置の上下方向に直交する断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】風向調整装置の要部の断面を拡大して模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施例に係る風向調整装置を模式的に示す斜視図である。
図2及び
図3は、風向調整装置を形成するケース体の本体部及び軸受け部材をそれぞれ模式的に示す斜視図である。
【0015】
本実施例の風向調整装置1は、自動車の車室内に配されるインストルメントパネル部やセンターコンソール等の内装部材に設置される。風向調整装置1は、自動車に備えられた図示しない空調装置に接続されることによって、その空調装置から供給される空気を、風向調整装置1の空気吹出口を介して車室内に吹き出すことができる。このような風向調整装置1は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタ等と呼ばれることもある。
【0016】
ここで、風向調整装置1に関して、前後方向とは、風向調整装置1のフィン30(ガイドフィン又はルーバーと言われることもある)がニュートラルの中央位置に保持されているときに風向調整装置1から吹き出される空気の吹き出し方向に沿った方向を言う(
図1を参照)。この場合、空気が流れる下流側の方向を前方とし、上流側の方向を後方とする。また、フィン30におけるニュートラルの中央位置とは、フィン30の第1主面(上面)及び第2主面(下面)が、風向調整装置1に供給された空気の流れ(前後方向)に沿うようにフィン30を保持する位置を言う。
【0017】
上下方向及び左右方向は、風向調整装置1を空気吹出口側から見たときの垂直方向(高さ方向)及び水平方向(幅方向)である(
図1を参照)。この場合、垂直方向及び水平方向は、前後方向に対してそれぞれ直交している。また、垂直方向と水平方向とは、互いに直交している。
【0018】
本実施例の風向調整装置1は、空気を流通させる流路を内部に備えるケース体10と、ケース体10の内部に回動(回転)可能に支持される複数のフィン30と、ケース体10の前端部に意匠部材として取り付けられるパネル部(不図示)とを有する。また、この風向調整装置1は、保持体であるケース体10に、回動体であるフィン30を回動自在に保持する回動機構を備えている。
【0019】
本実施例の風向調整装置1では、3つのフィン30がケース体10内に左右方向に沿って、上下方向に回動可能に配されている。なお本発明において、フィンの形状、設置数、及び回動方向は特に限定されるものではない。パネル部(不図示)は、フィニッシャ等と呼ばれる部材であり、風向調整装置1の前端部に配されている。なお本発明において、パネル部の形状及び大きさ等は特に限定されるものではなく、また、本発明の風向調整装置は、パネル部を設けずに形成されていてもよい。
【0020】
本実施例のケース体10には、ケース体10の後端縁に配されるとともに空気を供給するダクトが接続されるダクト接続口と、ケース体10の前端縁に配されるとともに空気を車室内に吹き出す空気吹出口とが設けられている。また、ケース体10の内部には、接続口及び空気吹出口に連通して空気を流通させる流路が前後方向に沿って形成されている。
【0021】
ケース体10は、角筒状に又は略角筒状に形成されているケース本体部11と、ケース本体部11に取り付けられる左右一対の軸受け部材20(スペーサーとも言う)とを有する。ケース本体部11は、硬質の合成樹脂により形成されており、また、互いに対向して配される一対の上壁部12及び下壁部13と、互いに対向して配される一対の左右側壁部14とを有する。
【0022】
ケース本体部11における左右の各側壁部14は、流路に面する内側壁面14aと、その反対側に配される外側壁面14bとを有する。また、左右の各側壁部14には、側壁部14の外側壁面14bから内側壁面14aまで側壁部14の厚さ方向(本実施例では、左右方向)に貫通する3つの第1貫通孔15がそれぞれ設けられている。
【0023】
第1貫通孔15は、風向調整装置1においてフィン30が設置される位置に対応して設けられている。例えば本実施例の場合、左右の各側壁部14の前端部(空気吹出口側の端部)に、3つの第1貫通孔15が上下方向に一定の間隔で設けられている。
【0024】
各第1貫通孔15は、左右方向に直交する断面が円形又は略円形となるように形成されている。また、第1貫通孔15は、側壁部14の外側壁面14bから内側壁面14aまで一定の内径を有する。本実施例の場合、各第1貫通孔15の外側壁面14bに形成される開口が、後述する潤滑油(潤滑剤)が注入される注入開口となり、内側壁面14a側に形成される開口の少なくとも一部は、軸受け部材20の後述する第2貫通孔22に接続される。
【0025】
左右の各軸受け部材20は、ケース本体部11の前端部に配されており、また、ケース本体部11の左右の側壁部14に内側から接触して固定されている。なお本実施例において、軸受け部材20をケース本体部11に固定する方法又は手段は特に限定されるものではない。例えば、軸受け部材20をケース本体部11の側壁部14に固定するために、軸受け部材20(又は、ケース本体部11)に係合爪部を設けるとともに、ケース本体部11(又は、軸受け部材20)に係合爪部を係合させる係合凹部を設けてもよい。また、軸受け部材20は、接着又は溶着によってケース本体部11に固定されてもよい。
【0026】
左右の各軸受け部材20は、上下方向に細長く形成された軸受け本体部21と、軸受け本体部21の厚さ方向に沿って軸受け本体部21を貫通する3つの第2貫通孔22とを有する。本実施例の軸受け本体部21は、上下方向に沿ってまっすぐに延びるとともに、上下方向に直交する断面が長方形を示す板状に形成されている。
【0027】
この場合、軸受け本体部21の左右方向における寸法(厚さ)は、フィン30に設けられる回転軸部32の左右方向における寸法よりも大きく設定されている。これにより、軸受け部材20の第2貫通孔22に、後述するガイド形状を安定して設けることができる。軸受け本体部21の左右方向における寸法は、ケース本体部11の側壁部14の左右方向における寸法の200%以下、特に150%以下であることが好ましい。
【0028】
軸受け部材20の各第2貫通孔22は、ケース本体部11に設けた第1貫通孔15の位置に対応して設けられており、また、左右方向に直交する断面が円形又は略円形となるように形成されている。各第2貫通孔22は、フィン30の回転軸部32が挿入されてその回転軸部32を回動可能に保持する軸保持部23と、左右方向に直交する断面の面積を軸保持部23に向けて漸次減少させるガイド形状を備えた液体ガイド部24とをそれぞれ有する。
【0029】
第2貫通孔22の軸保持部23は、第2貫通孔22における軸受け本体部21の左右方向の内側から、左右方向の外側に向けて、軸受け本体部21の左右方向における寸法の30%以上、好ましくは40%以上の範囲に亘って連続的に設けられている。また、軸保持部23は、軸保持部23の全体に亘って一定の内径を有する。この場合、軸保持部23の内径は、フィン30の回転軸部32の外径と実質的に同じ大きさである。
【0030】
第2貫通孔22の液体ガイド部24は、第2貫通孔22における軸受け本体部21の左右方向の外側から、軸保持部23に向けて設けられている。この液体ガイド部24のガイド形状は、例えば
図5に示すような第2貫通孔22を横切るような軸受け部材20の断面を見たときに、第2貫通孔22(液体ガイド部24)の内壁面が、第2貫通孔22の断面積(左右方向に直交する断面積)を軸保持部23に向けて減少させる方向に略円弧状に湾曲する曲面に形成されている。このような液体ガイド部24が第2貫通孔22に設けられていることにより、例えばケース体10の第1貫通孔15から供給される潤滑油等の液体を、第2貫通孔22内に流入し易くして、液体を第2貫通孔22の軸保持部23に円滑に案内できる。
【0031】
本実施例における3つのフィン30は、互いに同じ形状及び大きさで形成されている。各フィン30は、薄板状のフィン本体部31と、フィン本体部31の左右の側端部から左右方向の外側に向けて突出する左右一対の回転軸部32とを有する。各回転軸部32は、略円柱状に形成されているとともに、回転軸部32の先端部は、回転軸部32をケース体10の軸受け部材20に設けた軸保持部23に挿入させ易くするために、面取りが施されたような先細の形状を有する。
【0032】
各フィン30は、ケース体10の軸保持部23に左右の回転軸部32が挿入されて保持されることにより、ケース体10に上下方向に回動可能に支持されている。このような3つのフィン30の向きを上下方向に変えることによって、風向調整装置1から吹き出す空気の流れが上下に調整される。
【0033】
本実施例の3つのフィン30は、図示しないリンク部材によって、それぞれの回動が互いに連動するように連結されている。また、本実施例の1つのフィン30には、フィン30を回動操作するときに指で摘まむことが可能な操作ノブ(不図示)がフィン本体部31の前端部に設けられていてもよい。また本発明の風向調整装置は、例えばケース体に対して回動可能に取り付けられる操作ダイヤルによって、フィンを回動操作する構造を有していてもよい。
【0034】
本実施例の風向調整装置1を組み立てる場合、先ず、ケース本体部11、左右一対の軸受け部材20、及び3つのフィン30を少なくとも準備する準備工程を行う。
【0035】
続いて、3つのフィン30を左右の軸受け部材20に取り付ける第1取り付け工程を行う。この第1取り付け工程では、各フィン30に設けられた左右の回転軸部32を、軸受け部材20の第2貫通孔22に挿入することによって、左右の軸受け部材20に、3つのフィン30を上下方向に回動可能に保持する。このとき、各フィン30の回転軸部32は、軸受け部材20の軸保持部23に保持されるものの、各回転軸部32には、潤滑油がまだ塗布されていない。
【0036】
次に、フィン30を保持した左右の軸受け部材20をケース本体部11に取り付ける第2取り付け工程を行う。この第2取り付け工程では、フィン30が保持されている左右の軸受け部材20を、ケース本体部11の内部に前方側から挿入して、軸受け部材20をケース本体部11の側壁部14の内側壁面14aに接触させて固定する。
【0037】
このとき、軸受け部材20の第2貫通孔22を、ケース本体部11の側壁部14に設けた第1貫通孔15の位置に合わせて、軸受け部材20をケース本体部11に固定する。これにより、ケース本体部11の第1貫通孔15と軸受け部材20の第2貫通孔22とが接続する。またそれによって、第1貫通孔15の外側壁面14bに形成される注入開口と、軸受け部材20の第2貫通孔22に設けた軸保持部23とが連通部によって連通している。
【0038】
この場合、連通部は、第1貫通孔15と第2貫通孔22の一部とによって、ケース本体部11と軸受け部材20とに亘って形成されている。また、この連通部には、第2貫通孔22の第1貫通孔15に隣接する端部(外壁側端部)に配された液体ガイド部24が設けられている。更に本実施例では、軸受け部材20をケース本体部11内に固定した後に、ケース本体部11の前端部にパネル部(不図示)が取り付けられる。
【0039】
また、上述したように3つのフィン30が左右の軸受け部材20を介してケース本体部11に固定された後、潤滑油をフィン30の回転軸部32に塗布する塗布工程を行う。この塗布工程では、潤滑油をケース本体部11の外面に設けられた注入開口(第1貫通孔15の左右方向の外側に配される開口)から注入する。これにより、注入開口から注入された潤滑油を、連通部を介して第2貫通孔22の軸保持部23に流入させて、軸保持部23に保持されているフィン30の回転軸部32に塗布することができる。
【0040】
より具体的に説明すると、注入開口から注入された潤滑油は、ケース本体部11の第1貫通孔15を流れて、軸受け部材20の第2貫通孔22に到達する。更に、この第2貫通孔22の外壁側端部には、ガイド形状を有する液体ガイド部24が設けられているため、第2貫通孔22に流入した潤滑油は、この液体ガイド部24によって、第2貫通孔22の断面積が小さくなる方向、すなわち左右方向の内側に向けて移動するように案内される(促される)。なお、液体ガイド部24で潤滑油を案内できる理由は明確ではないものの、その理由の1つとして、表面張力又は毛細管現象が生じていることが考えられる。
【0041】
従って、本実施例では、潤滑油をケース本体部11の外側から第1貫通孔15の注入開口に注入することにより、第1貫通孔15に注入された潤滑油を、第2貫通孔22の液体ガイド部24によって第2貫通孔22の軸保持部23まで円滑に移動させることができるため、その軸保持部23内でフィン30の回転軸部32の外周面に潤滑油を安定して塗布できる。
【0042】
このような塗布工程が完了することによって、本実施例の風向調整装置1が製造される。なお本実施例において、潤滑油の塗布工程は、ケース本体部11にパネル部を取り付ける前に行われてもよいし、ケース本体部11にパネル部が取り付けられた後に行われてもよい。
【0043】
以上のように製造された本実施例の風向調整装置1では、上述したように、フィン30をケース本体部11に固定した後に、潤滑油をケース本体部11の外側から第1貫通孔15の注入開口を介して注入してフィン30の回転軸部32に塗布できる。このため、例えば作業者はフィン30を回動操作するときの操作力又は抵抗を確認しながら、潤滑油の注入量を調整できる。それにより、フィン30の回転軸部32に潤滑油を適切な塗布量で塗布し易くできるため、潤滑油の過剰な塗布を防止又は抑制できる。
【0044】
またその結果、第1貫通孔15及び第2貫通孔22内からの潤滑油のはみ出し及び溢れ出しを発生させ難くして、潤滑油が、作業者の指や、風向調整装置1の例えばケース本体部11の外面、軸受け部材20の内側側面、フィン30のフィン本体部31の外面等に余分に付着するといった不具合を防止できる。このため、風向調整装置1を効率的にまた円滑に組み立てることが可能となり、組み立て作業の作業性を向上させることができる。更に、潤滑油のはみ出し又は溢れ出しに起因して風向調整装置1の外観品質が低下することも防止できる。
【0045】
なお、上述した実施例の風向調整装置1において、軸受け部材20に設けた第2貫通孔22の液体ガイド部24は、
図5に示したように、第2貫通孔22の内壁面が略円弧状に湾曲する曲面によって形成されるガイド形状を有する。しかし本発明において、第2貫通孔に設けられる液体ガイド部のガイド形状は、例えば第2貫通孔の内径を軸保持部に向けて一定の割合で減少させるテーパ面、又は、第2貫通孔の左右方向に直交する断面積を軸保持部に向けて減少させるその他の形状を備える内壁面によって形成されていてもよい。
【0046】
更に、上述した実施例では、保持体に回動体を回動自在に保持する本発明の回動機構が、自動車の内装部材に装着される風向調整装置1のフィン30に適用される場合について説明している。しかし、本発明の回動機構は、例えば風向調整装置においてケース体の流路を開閉するシャットバルブに適用されてもよい。また、本発明の回動機構は、風向調整装置以外に、例えば、自動車のインストルメントパネル部に設けられる操作盤操作面や収納装置等を覆うとともにインストルメントパネル部等に回動可能に保持される蓋体等に適用されてもよい。
【0047】
また本発明において、風向調整装置に設けるフィンの設置数及び設置位置、第1貫通孔及び第2貫通孔の設置数及び設置位置は特に限定されない。更に、上述した実施例の風向調整装置1では、フィン30が上下方向に回動可能に形成されているが、本発明において、フィンの回動方向は限定されず、例えばフィンは、左右方向などの上下方向以外の方向に回動可能に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 風向調整装置
10 ケース体
11 ケース本体部
12 上壁部
13 下壁部
14 側壁部
14a 内側壁面
14b 外側壁面
15 第1貫通孔
20 軸受け部材
21 軸受け本体部
22 第2貫通孔
23 軸保持部
24 液体ガイド部
30 フィン
31 フィン本体部
32 回転軸部