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特開2024-77821情報提供装置、情報提供方法および情報提供プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077821
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】情報提供装置、情報提供方法および情報提供プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240603BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240603BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190005
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 真行
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA38
3C100AA56
3C100AA70
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB27
3C100BB33
3C100BB40
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】品質を推定する処理の導入の検討を支援できる仕組みを提供する。
【解決手段】加工工程および検査工程を含む生産ラインに対する品質推定処理の導入に係る情報を提供する情報提供装置は、加工工程のプロセスデータおよび検査工程の検査結果に基づいて、品質推定処理のための推定モジュールを構成する構成部と、推定モジュールによる推定結果と検査結果とに基づいて、検査工程を運用することにより生じる総コストと、推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストとを含む情報を生成する生成部とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工工程および検査工程を含む生産ラインに対する品質推定処理の導入に係る情報を提供する情報提供装置であって、
前記加工工程のプロセスデータおよび前記検査工程の検査結果に基づいて、前記品質推定処理のための推定モジュールを構成する構成部と、
前記推定モジュールによる推定結果と前記検査結果とに基づいて、前記検査工程を運用することにより生じる総コストと、前記推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストとを含む情報を生成する生成部とを備える、情報提供装置。
【請求項2】
前記構成部は、前記検査結果に含まれる不良品を可能な限り検知できるように、前記推定モジュールを構成する、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記検査結果と前記推定結果とが一致しないワークについて、前記検査結果の変更を受け付ける受付部をさらに備え、
前記生成部は、前記検査結果に含まれる不良品を良品と判断した割合に基づいて、前記検査工程を運用することにより生じる総コストを計算し、前記推定結果に含まれる良品を不良品と判断した割合に基づいて、前記推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストを計算する、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記検査結果および前記推定結果に基づいて、不良品のうち良品と判断された数、および、良品のうち不良品と判断された数を計算する、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記検査工程を運用することにより生じる総コストと、前記推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストとを含むレポートを生成する、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記レポートは、対象の生産ラインにおいて生じる固有のコストの入力が可能であり、
前記固有のコストは、不良品を良品と判断した場合に生じるコストと、良品を不良品と判断した場合に生じるコストとを含む、請求項5に記載の情報提供装置。
【請求項7】
前記推定モジュールは、機械学習により構成される学習済モデルと、ルールベースのロジックとのうち少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項8】
加工工程および検査工程を含む生産ラインに対する品質推定処理の導入に係る情報を提供するコンピュータによって実行される情報提供方法であって、
前記加工工程のプロセスデータおよび前記検査工程の検査結果に基づいて、前記品質推定処理のための推定モジュールを構成するステップと、
前記推定モジュールによる推定結果と前記検査結果とに基づいて、前記検査工程を運用することにより生じる総コストと、前記推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストとを含む情報を生成するステップとを備える、情報提供方法。
【請求項9】
加工工程および検査工程を含む生産ラインに対する品質推定処理の導入に係る情報を提供するための情報提供プログラムであって、コンピュータに、
前記加工工程のプロセスデータおよび前記検査工程の検査結果に基づいて、前記品質推定処理のための推定モジュールを構成するステップと、
前記推定モジュールによる推定結果と前記検査結果とに基づいて、前記検査工程を運用することにより生じる総コストと、前記推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストとを含む情報を生成するステップとを実行させる、情報提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供装置、情報提供方法および情報提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、何らかの設備を導入するにあたって、コストを含めた事前の検討が行われる。このような事前の検討を支援するための技術が提案されている。
【0003】
特許文献1(国際公開第2020/183667号)は、設備や機器の購入を検討する購入検討者に情報を提供する情報処理装置などを開示する。
【0004】
特許文献2(特開2005-258499号公報)は、機器導入による効果、即ち、機器導入前後の変化の度合いを定量化し、それを利用者へ提示することにより、利用者が費用対効果の高い機器導入サービスを選択するための構成を開示する。
【0005】
特許文献3(特開2008-303047号公報)は、荷物の3次元での移動が可能な荷役物運搬機を導入する際に、作業者の手作業のみによって運搬する場合と比較対照する形で、導入に伴う作業者の作業負担の軽減を表示することによって、導入機種の選定を客観的かつ迅速に行える荷役物運搬機の導入評価システムを開示する。
【0006】
特許文献4(特開2020-166514号公報)は、導入予定のシステムを事前に評価して、導入を検討可能とすることができる計算装置などを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2020/183667号
【特許文献2】特開2005-258499号公報
【特許文献3】特開2008-303047号公報
【特許文献4】特開2020-166514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的な生産ラインにおいては、組み立て、組み付け、ねじ締めといった複数の加工工程を経て目的の製品が完成する。通常、加工工程の後段に設けられた検査工程で、製品の良否が検査される。加工工程の途中で品質を推定して、不良品を予め排除できれば、続く加工工程での無駄な処理の発生を回避できる。一方、品質を推定する処理を導入するためにコストが発生する。
【0009】
そのため、品質を推定する処理の導入の検討を支援できる仕組みが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある実施の形態に従えば、加工工程および検査工程を含む生産ラインに対する品質推定処理の導入に係る情報を提供する情報提供装置が提供される。情報提供装置は、加工工程のプロセスデータおよび検査工程の検査結果に基づいて、品質推定処理のための推定モジュールを構成する構成部と、推定モジュールによる推定結果と検査結果とに基づいて、検査工程を運用することにより生じる総コストと、推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストとを含む情報を生成する生成部とを含む。
【0011】
この構成によれば、品質推定処理を導入する前段階において、情報提供装置が構成する推定モジュールによる推定結果と検査工程の検査結果とを反映したコストに関する情報が生成される。生成される情報を確認することで、少なくともコスト面から、品質推定処理の導入の是非、および、導入により得られる効果などを事前に把握できる。
【0012】
構成部は、検査結果に含まれる不良品を可能な限り検知できるように、推定モジュールを構成してもよい。この構成によれば、品質推定処理のための推定モジュールは、検知性能が可能な限り高くなるように構成されるので、検知性能および検知精度を事前に把握できる。
【0013】
情報提供装置は、検査結果と推定結果とが一致しないワークについて、検査結果の変更を受け付ける受付部をさらに含んでもよい。生成部は、検査結果に含まれる不良品を良品と判断した割合に基づいて、検査工程を運用することにより生じる総コストを計算し、推定結果に含まれる良品を不良品と判断した割合に基づいて、推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストを計算してもよい。この構成によれば、品質推定処理と既存の検査工程とについて、運用することにより生じる総コストの観点から比較できるので、コスト面から導入の是非を判断できる。
【0014】
生成部は、検査結果および推定結果に基づいて、不良品のうち良品と判断された数、および、良品のうち不良品と判断された数を計算してもよい。この構成によれば、良品および不良品の数が自動的に計算されて、総コストなどが自動的に計算される。
【0015】
生成部は、検査工程を運用することにより生じる総コストと、推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストとを含むレポートを生成してもよい。この構成によれば、総コストを含むレポートを確認できるので、比較を容易化できる。
【0016】
レポートは、対象の生産ラインにおいて生じる固有のコストの入力が可能であってもよい。固有のコストは、不良品を良品と判断した場合に生じるコストと、良品を不良品と判断した場合に生じるコストとを含んでもよい。この構成によれば、対象の生産ラインに応じたコストの計算を自在に行うことができる。
【0017】
推定モジュールは、機械学習により構成される学習済モデルと、ルールベースのロジックとのうち少なくとも一方を含んでもよい。この構成によれば、学習済モデルであっても、ルールベースのロジックであっても、品質推定処理を実現できる。
【0018】
本発明の別の実施の形態に従えば、加工工程および検査工程を含む生産ラインに対する品質推定処理の導入に係る情報を提供するコンピュータによって実行される情報提供方法が提供される。情報提供方法は、加工工程のプロセスデータおよび検査工程の検査結果に基づいて、品質推定処理のための推定モジュールを構成するステップと、推定モジュールによる推定結果と検査結果とに基づいて、検査工程を運用することにより生じる総コストと、推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストとを含む情報を生成するステップとを含む。
【0019】
本発明のさらに別の実施の形態に従えば、加工工程および検査工程を含む生産ラインに対する品質推定処理の導入に係る情報を提供するための情報提供プログラムが提供される。情報提供プログラムは、コンピュータに、加工工程のプロセスデータおよび検査工程の検査結果に基づいて、品質推定処理のための推定モジュールを構成するステップと、推定モジュールによる推定結果と検査結果とに基づいて、検査工程を運用することにより生じる総コストと、推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストとを含む情報を生成するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、品質を推定する処理の導入の検討を支援できる仕組みを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態に従う情報提供システムの適用例を示す模式図である。
図2】本実施の形態に従う情報提供装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】本実施の形態に従う制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4】本実施の形態に従う情報提供の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】本実施の形態に従う生産ラインにおいて処理されるワークの一例を示す模式図である。
図6図4に示すステップS14およびS16の処理を説明するための図である。
図7】本実施の形態に従う情報提供システムが提供するレポートの一例を示す模式図である。
図8】本実施の形態に従う情報提供装置の機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
<A.適用例>
まず、本実施の形態に従う情報提供システム1の適用例について説明する。
【0024】
本明細書において、「加工工程」との用語は、ワークに対して行われる任意の処理を包含する。また、「検査工程」との用語は、ワークに対して任意の処理が行われた結果が本来の状態になっているか否かを評価するための任意の処理を包含する。
【0025】
本明細書において、「ワーク」との用語は、加工工程の対象となる半製品または製品を包含する。すなわち、「ワーク」との用語は、加工工程において処理される前の半製品、加工工程中の半製品または製品、ならびに、加工工程後の半製品または製品を包含する。
【0026】
図1は、本実施の形態に従う情報提供システム1の適用例を示す模式図である。図1を参照して、情報提供システム1は、任意の生産ラインに適用される。説明の便宜上、図1には、生産ラインを含む情報提供システム1を示すが、情報提供システム1は、生産ラインそのものを含んでいなくてもよい。
【0027】
一例として、生産ラインは、ワーク12を搬送するためのワーク搬送経路10を含む。ワーク搬送経路10に沿って、加工装置20-1~20-4(以下、「加工装置20」とも総称する。)が配置されている。加工装置20は、ワーク12に対して任意の加工を行う装置である。加工装置20は、例えば、ねじ締め装置であってもよい。図1に示す生産ラインにおいては、ワーク12には4つのねじ穴が設けられており、加工装置20-1~20-4の各々は、予め指定されたねじ穴にねじを挿入し、所定のトルクまで締め付ける。加工装置20が担当する処理は、生産ラインの加工工程に相当する。なお、加工工程に配置される加工装置20の台数はいくつでもよい。
【0028】
加工装置20-1~20-4は、制御装置200-1~200-4(以下、「制御装置200」とも総称する。)によってそれぞれ制御される。制御装置200は、例えば、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)であり、制御プログラム(例えば、後述のユーザプログラム)に従って、加工装置20に対して指令を順次与える。
【0029】
本明細書において、「プロセスデータ」との用語は、加工工程において収集される任意のデータを包含する。例えば、「プロセスデータ」は、加工工程に直接的または間接的に設けられたセンサで計測されたデータ、加工工程に関連付けられた制御装置200が管理するデータ、および、加工工程に関連する任意のデータを含む。「プロセスデータ」は、固定周期または変動周期でサンプリングされる時系列データであってもよい。
【0030】
生産ラインの最終段には、ワーク12を撮像するカメラ30が配置されている。カメラ30により撮像された画像は、検査装置300へ出力される。検査装置300は、カメラ30からの画像に基づいて、ワーク12の良否を検査する。カメラ30および検査装置300が担当する処理は、生産ラインの検査工程に相当する。
【0031】
図1には、ワーク12の良否を視覚的に検査する検査工程の例を示すが、これに限らず、任意の検査方法を採用できる。また、検査方法は、全数検査であってもよいし、抜き取り検査であってもよい。また、非破壊検査であってもよいし、破壊検査であってもよい。
【0032】
不良であると判断されたワーク12(以下、「不良品」とも称す。)は、そのままでは出荷されずに、廃棄されるか、手直し工程に搬送される。
【0033】
生産ラインは、製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)400を有していてもよい。製造実行システム400は、制御装置200-1~200-4および検査装置300から生産に係るデータを収集するとともに、必要な指令を制御装置200-1~200-4および検査装置300へ提供する。
【0034】
図1に示す生産ラインにおいて、ワーク12はトラッキングされている。製造実行システム400は、ワーク12を特定するための識別番号(あるいは、シリアル番号)毎に生産時のデータを管理する。
【0035】
情報提供システム1は、一例として、情報提供装置100を含む。情報提供装置100は、加工工程および検査工程を含む生産ラインに対する品質推定処理の導入に係る情報を提供する。説明の便宜上、図1には、制御装置200および検査装置300とローカルネットワーク2を介して接続された情報提供装置100を例示するが、情報提供装置100は、必要なデータを収集できれば、生産ラインとネットワーク接続されていなくてもよい(すなわち、オフラインであってもよい)。また、複数の情報提供装置100を用意してもよいし、クラウドなどのネットワーク上のコンピューティングリソースを用いて処理を実行するようにしてもよい。
【0036】
情報提供装置100は、制御装置200、検査装置300、および/または、製造実行システム400から必要なデータを収集し、加工工程において、ワーク12の品質を推定する処理(以下、「品質推定処理」とも称す。)を導入した場合の有効性などを示す情報を提供する。品質推定処理は、検査工程に代えて導入されてもよいし、検査工程とともに導入されてもよい。以下の説明においては、検査工程に代えて品質推定処理が導入される場合を想定している。情報の提供形態の一例として、以下では「レポート」を出力する処理について説明する。
【0037】
生産ラインの管理者、および/または、生産ラインを有している組織の責任者は、情報提供装置100が提供する情報を参照して、品質推定処理の導入の要否、品質推定処理の導入先、品質推定処理の導入数などを決定する。
【0038】
このように、情報提供システム1(または、情報提供装置100)は、生産ラインへ品質推定処理を導入すべきかなどの判断を支援するための情報を提供する。
【0039】
<B.ハードウェア構成例>
次に、本実施の形態に従う情報提供システム1のハードウェア構成例を説明する。
【0040】
(b1:情報提供装置100)
図2は、本実施の形態に従う情報提供装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。図2を参照して、情報提供装置100は、コンピュータの一例であり、1または複数のプロセッサ102と、主メモリ104と、表示部106と、入力部108と、通信インターフェイス110と、ストレージ120とを含む。各コンポーネントは、バス112を介して電気的に接続されている。
【0041】
プロセッサ102は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)などで構成され、ストレージ120に格納された情報提供プログラム124を読み出して、主メモリ104に展開して実行することで、後述するような処理を実現する。すなわち、情報提供プログラム124は、コンピュータである情報提供装置100に本実施の形態に従う情報提供方法を実行させる。
【0042】
表示部106は、液晶ディスプレイなどで構成され、プロセッサ102による処理結果を表示する。入力部108は、キーボードおよびマウスなどで構成され、ユーザからの操作を受け付ける。通信インターフェイス110は、任意のデバイスとの間でデータをやり取りする。
【0043】
ストレージ120は、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)などで構成され、例えば、OS122と、情報提供プログラム124と、推定モジュール160とを格納する記憶部である。
【0044】
推定モジュール160は、導入予定の品質推定処理を模擬するモジュールである。プロセッサ102が情報提供プログラム124を実行することで、推定モジュール160が構成されてもよい。推定モジュール160は、品質推定処理を実現するための学習済モデルおよびパラメータを含んでいてもよい。
【0045】
図2には、プロセッサ102が情報提供プログラム124を実行することで必要な機能が提供される構成例を示したが、これらの提供される機能の一部または全部を、専用のハードワイヤード回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)など)を用いて実装してもよい。すなわち、情報提供装置100で実行される処理および提供する機能は、プロセッサ、ASIC、FPGAなどを含む処理回路(processing circuitry)で実装してもよい。
【0046】
(b2:制御装置200)
図3は、本実施の形態に従う制御装置200のハードウェア構成例を示すブロック図である。図3を参照して、制御装置200は、コンピュータの一例であり、1または複数のプロセッサ202と、主メモリ204と、通信インターフェイス206と、入出力ユニット208と、ストレージ220とを含む。各コンポーネントは、バス210を介して電気的に接続されている。
【0047】
プロセッサ202は、CPU、MPU、GPUなどで構成され、ストレージ220に格納された各種プログラムを読み出して、主メモリ204に展開して実行することで、制御装置200としての処理を実現する。
【0048】
通信インターフェイス206は、情報提供装置100とのデータ通信を担当する。
【0049】
入出力ユニット208は、加工装置20との間で信号のやり取りを担当する。
【0050】
ストレージ220には、典型的には、制御装置200の基本的な処理を実行するためのシステムプログラム222と、生産ライン(あるいは、加工装置20)を制御するためのユーザプログラム224とが格納される。
【0051】
さらに、品質推定処理が導入された場合には、推定モジュール260が格納される。推定モジュール260は、品質推定処理を実現するための学習済モデルおよびパラメータを含んでいてもよい。
【0052】
図3には、プロセッサ202がプログラムを実行することで必要な機能が提供される構成例を示したが、これらの提供される機能の一部または全部を、専用のハードワイヤード回路(例えば、ASICおよび/またはFPGA)を用いて実装してもよい。
【0053】
(b3:検査装置300)
本実施の形態に従う検査装置300についても、図2に示す情報提供装置100と同様に、汎用コンピュータを用いて実現することができる。
【0054】
(b4:製造実行システム400)
本実施の形態に従う製造実行システム400についても、図2に示す情報提供装置100と同様に、汎用コンピュータを用いて実現することができる。
【0055】
<C.品質推定処理>
次に、本実施の形態に従う情報提供システム1において導入される品質推定処理の一例について説明する。品質推定処理は、ワーク12の良否(良品であるか不良品であるか)を推定するものであってもよいし、ワーク12の品質の度合いを推定するものであってもよい。
【0056】
品質推定処理は、制御装置200により実現してもよいし、生産ラインに追加された品質推定用の専用装置により実現してもよい。あるいは、品質推定処理は、クラウドなどのネットワーク上のコンピューティングリソースを用いて実行してもよい。品質を推定するために必要な演算量および許容される処理時間などに応じて、実行形態が決定されてもよい。
【0057】
(c1:ねじ締め品質)
品質推定処理の一例として、ねじ締め装置によるねじ締め品質の推定が挙げられる。ねじ締め装置がねじを回転させることで、ねじがねじ穴に沿って進むことになる。ねじ締め装置によるねじ締め動作(回転動作)と、ねじ締め動作によって生じる押し込み動作とについてのプロセスデータ(回転位置、回転速度、トルク、ねじ移動量、ねじ深さなど)を収集して、ねじ締め品質(良品または不良品)を推定できる。
【0058】
ねじ締めにおいて生じ得る不良モードとしては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0059】
・ねじ山不良(ねじ山が適切に形成されていない)
・底付き(ねじ穴の長さに対してねじの方が長い)
・異物挟み込み(ねじとねじ穴との間に異物が存在)
・斜め締め(ねじ穴に対してねじが斜め)
・ねじ破壊(ねじまたはねじ穴が破損)
・カムアウト/リームアウト(ねじ頭部の変形または破損)
・ねじ締め位置ずれ(ねじ穴に対するねじの位置ずれ)
・ねじ無し(ねじ締め装置がねじをピックアップしていない)
これらの不良モードは、例えば、ねじ無し検知、空回り検知、回転負荷過大、ねじ変形検知、ねじ浮き検知といった5つの異常種別の組み合わせによって発生を推定できる。5つの異常種別は、収集した1または複数のデータによって発生を検知できる。
【0060】
このように、ねじ締め装置から収集されるデータに基づいて、ねじ締め品質を推定できる。
【0061】
(c2:超音波溶着品質)
品質推定処理の別の一例として、超音波溶着品質の推定が挙げられる。超音波溶着は、接合している物体間に超音波振動および荷重を与えることで、境界面に発生する熱で、当該物体同士を溶着する方法である。
【0062】
超音波溶着において、溶着による接合強度が十分であるか否かを推定することができる。具体的には、物体間に与えた超音波振動の統計量、超音波振動を与えるために振動子に印加した電流の統計量、超音波振動を与えるために振動子に印加した電流および電圧から計算されるインピーダンスの統計量などを用いて、接合強度の大きさを推定できる。
【0063】
接合強度の大きさの推定は、ニューラルネットワークなどのAI(Artificial Intelligence)を用いてもよいし、ルールベースの推定ロジックを用いてもよい。
【0064】
(c3:フローはんだ付け品質)
品質推定処理のさらに別の一例として、フローはんだ付け品質の推定が挙げられる。フローはんだ付けは、溶融はんだを噴出することで、はんだおよび熱を基板に供給する方法である。
【0065】
フローはんだ付けにおいて、溶融はんだの噴流状態によって、はんだ付け品質が左右される。そのため、噴流状態からはんだ付け品質を推定できる。具体的には、噴流形状を示す画像データから計算される特徴量、噴流形状を数値化した時系列データから計算される噴流形状のゆらぎを示す特徴量などを用いて、はんだ付け品質を推定できる。
【0066】
<D.情報提供の処理手順>
次に、本実施の形態に従う情報提供の処理手順について説明する。以下では、品質推定処理の一例として、ねじ締め品質の推定について説明する。すなわち、加工装置20は、ねじ締め装置を含む。ねじ締め品質は、ねじ締め装置の動作と、各動作におけるプロセスデータ(回転位置、回転速度、トルク、ねじ移動量、ねじ深さなど)とに基づいて、推定する。
【0067】
図4は、本実施の形態に従う情報提供の処理手順の一例を示すフローチャートである。図4に示す各ステップは、情報提供装置100のプロセッサ102が情報提供プログラム124(および、推定モジュール160)を実行することで実現される。
【0068】
説明の便宜上、情報提供装置100がすべての処理を実行することを前提としているが、処理の一部または全部をクラウドなどのネットワーク上のコンピューティングリソースを用いて実行してもよい。
【0069】
図4を参照して、情報提供装置100は、加工装置20の一例であるねじ締め装置によるねじ締め処理に関するデータを収集する(ステップS2)。収集されるデータは、例えば、対象のワーク12を特定するシリアル番号(識別番号)と、ねじ締め位置を示す位置番号と、ねじ締めにおいて計測されたプロセスデータ(例えば、回転位置、回転速度、トルク、ねじ移動量、ねじ深さなど)とを含む。
【0070】
図5は、本実施の形態に従う生産ラインにおいて処理されるワーク12の一例を示す模式図である。図5を参照して、一例として、ワーク12は、方形状の基板であり、四隅にねじ締め位置がそれぞれ設定されているとする。また、ワーク12毎にシリアル番号が付与される。そのため、ねじ締め品質は、シリアル番号毎、および、ねじ締め位置毎に管理されることになる。
【0071】
再度図4を参照して、情報提供装置100は、検査装置300による検査結果を収集する(ステップS4)。収集される検査結果は、例えば、対象のワーク12を特定するシリアル番号(識別番号)と、ねじ締めを行った位置(ねじ締め位置)を示す番号毎に良否を示す情報とを含む。
【0072】
情報提供装置100は、シリアル番号毎およびねじ締め位置毎に、ねじ締め処理に関するプロセスデータと、検査結果とを対応付ける(ステップS6)。すなわち、検査結果がラベルとして付与された一種の訓練データが生成される。
【0073】
そして、情報提供装置100は、ねじ締め品質を推定するために用いる推定モデルまたは推定ロジック(以下、「推定モジュール」とも称す。)の種類を選択する(ステップS8)。推定モジュールは、ねじ締め位置毎に異なるものを採用してもよいし、ねじ締め位置にかかわらず共通のものを採用してもよい。
【0074】
本明細書において、「推定モジュール」との用語は、品質推定処理を実現するための任意の推定エンジンを包含する。推定モジュールの一例である推定モデルは、公知の機械学習により構成される学習済モデルを含んでいてもよい。推定モジュールの別の一例である推定ロジックは、公知の法則および/または知見に基づく、ルールベースのロジック(例えば、関数および/またはテーブル)を含んでいてもよい。
【0075】
続いて、情報提供装置100は、プロセスデータを入力して、対応する検査結果が出力されるように、推定モジュールを構成する(ステップS10)。すなわち、情報提供装置100は、プロセスデータおよび検査結果に基づいて、品質推定処理のための推定モジュールを構成する。
【0076】
より具体的には、情報提供装置100は、構成した推定モジュールに応じて、プロセスデータから1または複数の特徴量を計算し、計算した1または複数の特徴量を推定モジュールに入力する。推定モジュールから出力される値が対応する検査結果と一致するように、推定モジュールのパラメータ、および/または、推定モジュールの出力を評価するためのしきい値を最適化する。
【0077】
このとき、見逃し率が最小化するように(すなわち、検査結果が「不良」を示すワーク12については、推定モジュールの出力が「不良」を示すように)、推定モジュールのパラメータおよび/またはしきい値を最適化するようにしてもよい。なお、見逃し率(false-negative rate)を最小化するように調整または最適化を行った場合には、見過ぎ率(false-positive rate)が無視できなくなる可能性がある。すなわち、検査結果が「良品」を示すワーク12であるにもかかわらず、推定モジュールの出力が「不良品」を示す場合がある。
【0078】
ステップS2およびS4に示すデータの収集は、ワーク12が処理される毎に都度実行されてもよいし、所定期間に亘るデータを一括で収集してもよい。また、データの収集先は、制御装置200、検査装置300、および、製造実行システム400のいずれであってもよい。さらに、生産ラインのデータを収集しているデータベースなどがある場合には、当該データベースからデータを収集してもよい。
【0079】
情報提供装置100は、推定モジュールの出力が見過ぎになっているワーク12を抽出し(ステップS12)、ユーザに対する確認および検査結果の変更を受け付ける(ステップS14)。そして、情報提供装置100は、生産ライン状況データを生成する(ステップS16)。
【0080】
すなわち、検査工程の検査結果がすべて正しいとは限らず、見逃し(本来は「不良品」と判断されるべきワーク12が「良品」と判断される状態)が発生している可能性もある。そのため、ユーザは、推定モジュールの出力が見過ぎになっているワーク12について、プロセスデータおよび検査結果に関連するデータを確認して、検査工程における見逃しではないことを確認する。もし、検査工程における見逃しであれば、対応するワーク12の検査結果を「良品」から「不良品」に変更する。
【0081】
図6は、図4に示すステップS14およびS16の処理を説明するための図である。図6を参照して、推定モジュールによる推定結果群50は、シリアル番号毎およびねじ締め位置毎に推定されたねじ締め品質を含む。より具体的には、推定結果群50は、ねじ締め品質を示すスコアを含む。スコアの値がしきい値52を上回るまたは下回るかによって、良品または不良品を決定してもよい。図6には、不良品である可能性が高いほど高い値を示すスコアを例示するが、良品である可能性が高いほど高い値を示すスコアを採用してもよい。
【0082】
例えば、推定結果54に対応するスコアは、しきい値52を超えており、「不良」を示す。
【0083】
ここで、推定結果54に対応するワーク12の品質が「良品」であれば、対応する検査結果が正しいことになる。この場合には、推定結果54は対応する検査結果と一致せず、品質推定処理の「見過ぎ」を意味する。
【0084】
一方、推定結果54に対応するワーク12の品質が実際には「不良」であれば、対応する検査結果が誤りであり、検査工程の「見逃し」を意味する。すなわち、推定結果54が正しい品質を示すことになる。
【0085】
ユーザは、推定結果54に対応するワーク12の品質を確認して、検査結果が間違っているものについては、本来の検査結果(品質)に変更する。このようなユーザの確認および変更によって、生産ライン状況データ60が生成される。
【0086】
生産ライン状況データ60は、例えば、シリアル番号62と、ねじ締め位置64と、ユーザ判断66と、最終結果68とを含む。ユーザ判断66は、ユーザが確認および/または変更した後の品質を意味する。最終結果68には、推定結果と、検査結果と、ユーザ判断66とに基づいて、品質推定処理の「見過ぎ」、検査工程の「見逃し」、品質推定処理の推定結果は正確といった結果が格納される。
【0087】
再度図4を参照して、情報提供装置100は、生産ライン状況データに基づいて、品質推定処理の見過ぎによる影響を計算する(ステップS18)とともに、検査工程の見逃しによる影響を計算する(ステップS20)。
【0088】
最終的に、情報提供装置100は、品質推定処理を導入した場合の有効性などを示すレポートを出力する(ステップS22)。これによって、処理は終了する。
【0089】
ユーザは、出力されたレポートに基づいて、品質推定処理を導入した場合の有効性を評価して、品質推定処理を導入すべきか否かを判断する。
【0090】
<E.レポート>
次に、情報提供システム1が提供する情報を含むレポートの具体例について説明する。
【0091】
図7は、本実施の形態に従う情報提供システム1が提供するレポート500の一例を示す模式図である。図7を参照して、レポート500は、指標欄510と、ユーザ入力欄520と、コスト計算欄530と、最終評価欄540とを含む。
【0092】
指標欄510は、品質推定処理の導入効果の評価に必要な指標が表示される。より具体的には、指標欄510は、項目として、生産数511と、正常数512と、不良数513と、良品率514と、不良率515と、見過ぎ数516と、見逃し数517と、見過ぎ率518と、見逃し率519とを含む。これらの項目に格納される値の一部または全部は、ユーザが実測することで設定されてもよいし、情報提供装置100が生産ライン状況データ60(図6)に基づいて設定してもよい。
【0093】
生産数511は、品質推定処理の導入効果を評価する対象期間において生産されたワーク12の数を示す。正常数512は、生産数511が示す数のうち良品と判断された数を示し、不良数513は、生産数511が示す数のうち不良と判断された数を示す。良品率514は、生産数511に対する正常数512の比率を示し、不良率515は、生産数511に対する不良数513の比率を示す。
【0094】
見過ぎ数516は、品質推定処理が見過ぎた(すなわち、良品を不良品と誤って判断した)数を意味する。見逃し数517は、既存の検査工程において見逃された(すなわち、不良品であるワーク12を良品と誤って判断した)数を意味する。見過ぎ率518は、生産数511に対する見過ぎ数516の比率を示し、不良率515は、生産数511に対する見逃し数517の比率を示す。
【0095】
生産数511、正常数512、不良数513、見過ぎ数516、および、見逃し数517の各々は、情報提供装置100が生産ライン状況データ(図6)に含まれるレコードに基づいて計算してもよい。
【0096】
ユーザ入力欄520は、対象の生産ラインで生じるコストなどが表示される。より具体的には、ユーザ入力欄520は、見過ぎコスト単価521と、見逃しコスト単価522と、既存検査イニシャルコスト523と、既存検査ランニングコスト単価524と、既存検査タイミングコスト単価525と、品質推定処理イニシャルコスト526と、品質推定処理ランニングコスト単価527と、総生産数528とを含む。これらの項目に格納される値(コスト)は、対象の生産ラインに応じた値となり、ユーザが予め入力することが想定されている。
【0097】
見過ぎコスト単価521は、不良品を廃棄するのに必要なコスト、および/または、不良品を目視検査するのに必要なコストを含む。見逃しコスト単価522は、クレーム対応コスト、リコール対応コスト、信用回復コストなどの、見逃しにより不良品が出荷されることにより発生するコストを含む。
【0098】
既存検査イニシャルコスト523は、既存の検査工程を導入する際に必要であったコストを含み、既存検査ランニングコスト単価524は、既存の検査工程を運用するのに必要なコストを含み、既存検査タイミングコスト単価525は、既存の検査工程が加工工程の直後に配置されていないことにより、不良品に対して余計な後工程を実施することで無駄に発生するコストを含む。
【0099】
品質推定処理イニシャルコスト526は、品質推定処理を導入する際に必要なコストを含み、品質推定処理ランニングコスト単価527は、品質推定処理を運用するのに必要なコストを含む。
【0100】
総生産数528は、対象の生産ラインで生産している、あるいは、生産が予定されているワーク12の数を示す。
【0101】
このように、レポート500は、対象の生産ラインにおいて生じる固有のコストの入力が可能になっている(ユーザ入力欄520)。このような固有のコストは、例えば、不良品を良品と判断した場合に生じるコスト(見逃しコスト単価522)と、良品を不良品と判断した場合に生じるコスト(見過ぎコスト単価521)とを含む。
【0102】
コスト計算欄530は、指標欄510に示される値、および、ユーザ入力欄520に示される値に基づいて計算されるコストを示す。より具体的には、コスト計算欄530は、既存検査ランニングコスト531と、品質推定処理ランニングコスト532と、既存検査見逃しコスト533と、品質推定処理見過ぎコスト534と、既存検査タイミングコスト535と、既存検査総コスト536と、品質推定処理総コスト537とを含む。
【0103】
既存検査ランニングコスト531は、既存の検査工程の運用に係るコストを意味し、総生産数528と既存検査ランニングコスト単価524との積となる。
【0104】
品質推定処理ランニングコスト532は、品質推定処理の運用に係るコストを意味し、総生産数528と品質推定処理ランニングコスト単価527との積となる。
【0105】
既存検査見逃しコスト533は、既存の検査工程の見逃しにより生じるコストを意味し、総生産数528と、不良率515と、見逃し率519と、見逃しコスト単価522との積となる。
【0106】
品質推定処理見過ぎコスト534は、品質推定処理の見過ぎにより生じるコストを意味し、総生産数528と、良品率514と、見過ぎ率518と、見過ぎコスト単価521との積となる。
【0107】
既存検査タイミングコスト535は、不良品に対して余計な後工程を実施することで無駄に発生するコストを意味し、総生産数528と、不良率515と、(1-見逃し率519)と、既存検査タイミングコスト単価525との積となる。
【0108】
既存検査総コスト536は、既存の検査工程を運用することにより生じる総コストを意味し、既存検査イニシャルコスト523と、既存検査ランニングコスト531と、既存検査見逃しコスト533と、既存検査タイミングコスト535との合計である。
【0109】
品質推定処理総コスト537は、品質推定処理を運用することにより生じる総コストを意味し、品質推定処理イニシャルコスト526と、品質推定処理ランニングコスト532と、品質推定処理見過ぎコスト534との合計である。
【0110】
最終評価欄540は、品質推定処理を導入することで得られるコスト面の効果を示す。より具体的には、最終評価欄540は、品質推定処理導入効果541を含む。品質推定処理導入効果541は、既存の検査工程を品質推定処理に置き換えた場合のコストの差に基づいて、導入効果の有無および大きさを定量的に示す。
【0111】
ユーザは、図7に示すようなレポート500を参照することで、品質推定処理の導入の是非、および、導入により得られる効果などを事前に把握できる。
【0112】
なお、レポート500は、静的なドキュメントとして出力されてもよいし、スプレッドシートとして出力されてもよい。スプレッドシートとして出力される場合には、必要な計算式または関数が予め組み込まれた形であってもよい。この場合には、ユーザが任意の値を入力することで、関係する値が自動的に更新されることになる。そのため、本実施の形態に従う情報提供システム1が提供する情報は、図7に示すレポート500のように必要なすべての値が決定されている形態だけではなく、一部の値がブランクまたは暫定値となっている形態も含み得る。また、情報提供システム1による情報の提供は、必要な計算式または関数が予め組み込まれたスプレッドシートの出力を含む。
【0113】
<F.機能構成>
図8は、本実施の形態に従う情報提供装置100の機能構成例を示すブロック図である。図8を参照して、情報提供装置100は、機能構成として、データ収集モジュール150と、構成モジュール152と、情報生成モジュール154と、変更受付モジュール156とを含む。図8に示す各モジュールは、情報提供装置100のプロセッサ102が情報提供プログラム124を実行することで実現される。
【0114】
データ収集モジュール150は、加工工程(制御装置200)、検査工程(検査装置300)、製造実行システム400などから必要なデータを収集する。より具体的には、データ収集モジュール150は、加工工程のプロセスデータ22、および、検査工程の検査結果32を収集する。
【0115】
構成モジュール152は、プロセスデータ22および検査結果32に基づいて、品質推定処理のための推定モジュール160を構成する。構成モジュール152は、検査結果32に含まれる不良品を可能な限り検知できるように、推定モジュール160を構成する。すなわち、構成モジュール152は、検査結果32に基づいて、不良品の見逃し率が最小化するように、推定モジュール160を構成する。
【0116】
推定モジュール160が学習済モデルである場合には、構成モジュール152は、検査結果32を教師データとして機械学習することで、推定モジュール160を構成する。推定モジュール160がルールベースのロジックである場合には、プロセスデータ22から計算される特徴量の入力に対して、検査結果32と同一の結果が出力されるように、しきい値を含むパラメータを最適化(調整)する。
【0117】
プロセスデータ22から計算される特徴量を推定モジュール160に入力することで、推定結果162が生成される。さらに、推定結果162および検査結果32から生産ライン状況データ60が生成される。推定結果162の生成および生産ライン状況データ60の生成は、構成モジュール152または情報生成モジュール154によって実行されてもよい。
【0118】
変更受付モジュール156は、検査結果32と推定結果162とが一致しないワークについて、検査結果32の変更を受け付ける(図6参照)。ユーザは、検査結果32と推定結果162とが一致しない場合などに、検査結果32が「見逃し」(不良品を良品と判断すること)であるか否かを判断し、「見逃し」であれば、検査結果32を変更する。
【0119】
情報生成モジュール154は、生産ライン状況データ60(推定モジュール160による推定結果162と検査結果32)に基づいて、検査工程を運用することにより生じる総コスト(図7に示す既存検査総コスト536)と、推定モジュール160に基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コスト(図7に示すと、品質推定処理総コスト537)とを含む情報を生成する。生成された情報は、レポート500として出力されてもよい。
【0120】
すなわち、情報生成モジュール154は、検査工程を運用することにより生じる総コストと、推定モジュール160に基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストとを含むレポート500を生成する。
【0121】
例えば、情報生成モジュール154は、検査結果32に含まれる不良品を良品と判断した割合(すなわち、「見逃し率」)に基づいて、検査工程を運用することにより生じる総コスト(図7に示す既存検査総コスト536)を計算する。また、情報生成モジュール154は、推定結果162に含まれる良品を不良品と判断した割合(すなわち、「見過ぎ率」)に基づいて、推定モジュール160に基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コスト(図7に示すと、品質推定処理総コスト537)を計算する。
【0122】
なお、情報生成モジュール154は、生産ライン状況データ60(推定モジュール160による推定結果162と検査結果32)に基づいて、不良品のうち良品と判断された数(見逃し数)、および、良品のうち不良品と判断された数(見過ぎ数)を計算してもよい。
【0123】
<G.付記>
上述したような本実施の形態は、以下のような技術思想を含む。
【0124】
[構成1]
加工工程および検査工程を含む生産ラインに対する品質推定処理の導入に係る情報を提供する情報提供装置(100)であって、
前記加工工程のプロセスデータ(22)および前記検査工程の検査結果(32)に基づいて、前記品質推定処理のための推定モジュール(160;260)を構成する構成部(152)と、
前記推定モジュールによる推定結果と前記検査結果とに基づいて、前記検査工程を運用することにより生じる総コスト(536)と、前記推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コスト(537)とを含む情報(500)を生成する生成部(154)とを備える、情報提供装置。
【0125】
[構成2]
前記構成部は、前記検査結果に含まれる不良品を可能な限り検知できるように、前記推定モジュールを構成する、構成1に記載の情報提供装置。
【0126】
[構成3]
前記検査結果と前記推定結果とが一致しないワークについて、前記検査結果の変更を受け付ける受付部(156)をさらに備え、
前記生成部は、前記検査結果に含まれる不良品を良品と判断した割合に基づいて、前記検査工程を運用することにより生じる総コストを計算し、前記推定結果に含まれる良品を不良品と判断した割合に基づいて、前記推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストを計算する、構成1または2に記載の情報提供装置。
【0127】
[構成4]
前記生成部は、前記検査結果および前記推定結果に基づいて、不良品のうち良品と判断された数、および、良品のうち不良品と判断された数を計算する、構成1~3のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【0128】
[構成5]
前記生成部は、前記検査工程を運用することにより生じる総コストと、前記推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コストとを含むレポート(500)を生成する、構成1~4のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【0129】
[構成6]
前記レポートは、対象の生産ラインにおいて生じる固有のコストの入力が可能であり、
前記固有のコストは、不良品を良品と判断した場合に生じるコスト(522)と、良品を不良品と判断した場合に生じるコスト(521)とを含む、構成5に記載の情報提供装置。
【0130】
[構成7]
前記推定モジュールは、機械学習により構成される学習済モデルと、ルールベースのロジックとのうち少なくとも一方を含む、構成1~6のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【0131】
[構成8]
加工工程および検査工程を含む生産ラインに対する品質推定処理の導入に係る情報を提供するコンピュータ(100)によって実行される情報提供方法であって、
前記加工工程のプロセスデータ(22)タおよび前記検査工程の検査結果(32)に基づいて、前記品質推定処理のための推定モジュール(160;260)を構成するステップ(S10)と、
前記推定モジュールによる推定結果と前記検査結果とに基づいて、前記検査工程を運用することにより生じる総コスト(536)と、前記推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コスト(537)とを含む情報(500)を生成するステップ(S12~S22)とを備える、情報提供方法。
【0132】
[構成9]
加工工程および検査工程を含む生産ラインに対する品質推定処理の導入に係る情報を提供するための情報提供プログラム(124)であって、コンピュータ(100)に、
前記加工工程のプロセスデータ(22)および前記検査工程の検査結果(32)に基づいて、前記品質推定処理のための推定モジュール(160;260)を構成するステップ(S10)と、
前記推定モジュールによる推定結果と前記検査結果とに基づいて、前記検査工程を運用することにより生じる総コスト(536)と、前記推定モジュールに基づく品質推定処理を運用することにより生じる総コスト(537)とを含む情報(500)を生成するステップ(S12~S22)とを実行させる、情報提供プログラム。
【0133】
<H.利点>
本実施の形態に係る情報提供システムにおいては、品質を推定する処理の導入の検討を支援できる。
【0134】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0135】
1 情報提供システム、2 ローカルネットワーク、10 ワーク搬送経路、12 ワーク、20 加工装置、22 プロセスデータ、30 カメラ、32 検査結果、50 推定結果群、52 しきい値、54,162 推定結果、60 生産ライン状況データ、62 シリアル番号、64 ねじ締め位置、66 ユーザ判断、68 最終結果、100 情報提供装置、102,202 プロセッサ、104,204 主メモリ、106 表示部、108 入力部、110,206 通信インターフェイス、112,210 バス、120,220 ストレージ、122 OS、124 情報提供プログラム、150 データ収集モジュール、152 構成モジュール、154 情報生成モジュール、156 変更受付モジュール、160,260 推定モジュール、200 制御装置、208 入出力ユニット、222 システムプログラム、224 ユーザプログラム、300 検査装置、400 製造実行システム、500 レポート、510 指標欄、511 生産数、512 正常数、513 不良数、514 良品率、515 不良率、516 見過ぎ数、517 見逃し数、518 見過ぎ率、519 見逃し率、520 ユーザ入力欄、521 コスト単価、522 見逃しコスト単価、523 既存検査イニシャルコスト、524 既存検査ランニングコスト単価、525 既存検査タイミングコスト単価、526 品質推定処理イニシャルコスト、527 品質推定処理ランニングコスト単価、528 総生産数、530 コスト計算欄、531 既存検査ランニングコスト、532 品質推定処理ランニングコスト、533 既存検査見逃しコスト、534 品質推定処理見過ぎコスト、535 既存検査タイミングコスト、536 既存検査総コスト、537 品質推定処理総コスト、540 最終評価欄、541 品質推定処理導入効果。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8