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特開2024-77825病変検出方法および病変検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077825
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】病変検出方法および病変検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240603BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
A61B6/03 360T
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190010
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武部 浩明
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 信浩
(72)【発明者】
【氏名】馬場 幸三
(72)【発明者】
【氏名】馬場 孝之
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA35
4C093FD09
4C093FF17
4C093FF42
4C096AB44
4C096AD14
4C096AD24
4C096DC20
4C096DC21
4C096DC28
4C096DC35
4C096DC36
(57)【要約】
【課題】断層画像からの病変領域の検出精度を向上させる。
【解決手段】病変検出装置は、人体の内部を撮影した複数の断層画像を基に生成された三次元のボリュームデータから特定の病変の領域を検出する第1の病変検出処理を利用して、複数の断層画像のそれぞれに含まれる単位画像領域ごとに特定の病変の領域である確率を算出する。病変検出装置は、複数の断層画像のうち一の断層画像と、一の断層画像に含まれる単位画像領域ごとに算出された確率とに基づいて、一の断層画像から特定の病変の領域を検出する第2の病変検出処理を実行する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
人体の内部を撮影した複数の断層画像を基に生成された三次元のボリュームデータから特定の病変の領域を検出する第1の病変検出処理を利用して、前記複数の断層画像のそれぞれに含まれる単位画像領域ごとに前記特定の病変の領域である確率を算出し、
前記複数の断層画像のうち一の断層画像と、前記一の断層画像に含まれる前記単位画像領域ごとに算出された前記確率とに基づいて、前記一の断層画像から前記特定の病変の領域を検出する第2の病変検出処理を実行する、
病変検出方法。
【請求項2】
前記算出では、前記単位画像領域ごとの前記確率を、前記病変検出処理の途中で出力される処理結果から取得する、
請求項1記載の病変検出方法。
【請求項3】
前記算出では、三次元空間の画像データを有する入力ボリュームデータから前記特定の病変の領域を検出する第1の機械学習モデルに対して、前記生成されたボリュームデータを入力することで、前記単位画像領域ごとに前記確率を算出する、
請求項1記載の病変検出方法。
【請求項4】
前記第1の機械学習モデルはニューラルネットワークを含み、
前記単位画像領域ごとの前記確率は、前記ニューラルネットワークの出力層から出力される、
請求項3記載の病変検出方法。
【請求項5】
前記第2の病変検出処理では、
二次元空間の画像データを有する入力画像と、前記入力画像に含まれる前記単位画像領域のそれぞれに対応する、前記特定の病変の領域である前記確率とが入力されると、前記入力画像に含まれる前記単位画像領域のそれぞれが前記特定の病変の領域であるか否かを示す情報を出力する第2の機械学習モデルを用いて、前記一の断層画像から前記特定の病変の領域を検出する、
請求項1記載の病変検出方法。
【請求項6】
コンピュータに、
人体の内部を撮影した複数の断層画像を基に生成された三次元のボリュームデータから特定の病変の領域を検出する第1の病変検出処理を利用して、前記複数の断層画像のそれぞれに含まれる単位画像領域ごとに前記特定の病変の領域である確率を算出し、
前記複数の断層画像のうち一の断層画像と、前記一の断層画像に含まれる前記単位画像領域ごとに算出された前記確率とに基づいて、前記一の断層画像から前記特定の病変の領域を検出する第2の病変検出処理を実行する、
処理を実行させる病変検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病変検出方法および病変検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種疾患の診断には、CT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic Resonance Imaging)などによる医用画像が広く用いられている。医用画像を用いた画像診断では、医師は多数の画像を読影しなければならず、医師の負担が大きい。そのため、医師の診断作業をコンピュータによって何らかの形で支援する技術が求められている。
【0003】
そのような技術の例として、機械学習によって生成された学習済みモデルを用いて、医用画像から病変領域を検出する技術がある。例えば、複数の異なる断面方向の断層画像を取得し、各断層画像について各画素の病変の種類を特定する一次分類処理を、機械学習によって生成された判別器を用いて実行し、各断層画像で共通する画素について一次分類処理の結果を評価する画像処理装置が提案されている。また、3D画像ボリュームのN個の異なる平面にしたがってN個の異なるCNN(Convolutional Neural Network)を結合する複合計算システムにおいて、2D画像を解析してセグメント化するために、知られているCNNの使用を3D画像に拡張することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-175217号公報
【特許文献2】国際公開第2019/137997号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二次元の断層画像を入力として、断層画像上の単位画像領域ごとに特定の病変か否かを判定して病変領域を検出する処理では、病変の形状によっては病変領域を正しく検出できない場合がある。例えば、検出対象の病変の断層画像における像の形状が、検出対象でない他の病変の断層画像における像の形状と類似している場合に、前者の像の領域が病変領域として正しく検出されない場合がある。
【0006】
1つの側面では、本発明は、断層画像からの病変領域の検出精度を向上させることが可能な病変検出方法および病変検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの案では、コンピュータが、人体の内部を撮影した複数の断層画像を基に生成された三次元のボリュームデータから特定の病変の領域を検出する第1の病変検出処理を利用して、複数の断層画像のそれぞれに含まれる単位画像領域ごとに特定の病変の領域である確率を算出し、複数の断層画像のうち一の断層画像と、一の断層画像に含まれる単位画像領域ごとに算出された確率とに基づいて、一の断層画像から特定の病変の領域を検出する第2の病変検出処理を実行する、病変検出方法が提供される。
【0008】
また、1つの案では、上記の病変検出方法と同様の処理をコンピュータに実行させる病変検出プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面では、断層画像からの病変領域の検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係る病変検出装置の構成例および処理例を示す図である。
図2】第2の実施の形態に係る診断支援システムの構成例を示す図である。
図3】病変検出装置のハードウェア構成例を示す図である。
図4】病変領域の検出のための機械学習モデルの第1の例を示す図である。
図5】病変形状の例を示す図である。
図6】断層画像上の病変形状の例を示す図である。
図7】病変領域の検出のための機械学習モデルの第2の例を示す図である。
図8】第2の実施の形態における病変検出処理の概要を示す図である。
図9】第2の実施の形態における2Dセグメンテーションモデルの学習処理の概要を示す図である。
図10】学習処理装置および病変検出装置が備える処理機能の構成例を示す図である。
図11】学習処理装置の処理手順を示すフローチャートの例である。
図12】病変検出装置の処理手順を示すフローチャートの例である。
図13】病変領域の検出結果を示す表示画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る病変検出装置の構成例および処理例を示す図である。図1に示す病変検出装置1は、医用画像から特定の病変の領域(病変領域)を検出する装置である。この病変検出装置1は、処理部2を有する。処理部2は、例えばプロセッサである。この場合、処理部2による以下の処理は、例えば、プロセッサが所定のプログラムを実行することで実現される。
【0012】
処理部2は、医用画像として、人体の内部を撮影した複数の断層画像3a,3b,3c,・・・を取得する。断層画像3a,3b,3c,・・・は、例えば、CTやMRIによる断層画像である。また、断層画像3a,3b,3c,・・・は、例えば、所定の臓器を含む人体の内部領域における同じ方向の断面(スライス面)に沿った画像であり、その断面に垂直な方向に対する位置を所定の間隔(スライス間隔)で変えながら撮影することで得られる。
【0013】
処理部2は、断層画像3a,3b,3c,・・・に基づいて三次元のボリュームデータ4を生成する。処理部2は、ボリュームデータ4から上記の病変領域を検出する病変検出処理5aを利用して、断層画像3a,3b,3c,・・・のそれぞれに含まれる単位画像領域ごとに病変領域である確率を算出する。病変検出処理5aは、三次元空間の画像データを有するボリュームデータから病変領域を検出する、いわゆる「3Dセグメンテーション」である。なお、単位画像領域とは、断層画像3a,3b,3c,・・・のそれぞれにおける病変領域の検出単位であり、例えば画素である。
【0014】
単位画像領域ごとの確率は、例えば、病変検出処理5aの途中で出力される処理結果から取得される。例えば、病変検出処理5aは、ニューラルネットワークを用いた機械学習モデルによって実行される。この場合、ニューラルネットワークの最終層(出力層)から、単位画像領域ごとに病変領域である確率と病変領域でない確率とが出力される。処理部2aは、前者の確率を取得することができる。
【0015】
次に、処理部2は、断層画像3a,3b,3c,・・・のそれぞれを処理単位として、断層画像3a,3b,3c,・・・のそれぞれから病変領域を検出する病変検出処理5bを実行する。病変検出処理5bは、処理対象の断層画像と、この断層画像に含まれる単位画像領域ごとの確率とが入力されることで実行される。
【0016】
図1では例として、病変検出処理5aを用いて確率マップ6a,6b,6c,・・・が生成されるものとする。確率マップ6a,6b,6c,・・・は、それぞれ断層画像3a,3b,3c,・・・に対応しており、1つの確率マップには、対応する断層画像の単位画像領域ごとに確率がマッピングされている。
【0017】
例えば断層画像3aから病変領域を検出する場合、処理部2は、断層画像3aと、この断層画像3aに対応する確率マップ6aとに基づいて病変検出処理5bを実行する。これにより、断層画像3aに含まれる単位画像領域を単位として、断層画像3aから病変領域が検出される。
【0018】
ここで、二次元の断層画像を入力として、この断層画像から病変領域を検出する処理(いわゆる「2Dセグメンテーション」)では、病変の形状によっては病変領域を正しく検出できない場合がある。例えば、検出対象の病変の断層画像における像の形状が、検出対象でない他の病変の断層画像における像の形状と類似している場合に、前者の像の領域が病変領域として正しく検出されない場合がある。
【0019】
一方、3Dセグメンテーションでは、2Dセグメンテーションと比較して、病変領域の三次元空間上での形状を正確に捉えた病変検出を行うことが可能となる。このため、上記のように二次元の断層画像上で複数種類の病変の像の形状が類似する場合でも、病変の三次元形状が異なれば病変領域の誤検出は発生しにくい。
【0020】
しかし、3Dセグメンテーションでは、ボリュームデータの生成元となる断層画像3a,3b,3c,・・・のスライス間隔が、病変検出の精度に影響を与え得る。すなわち、スライス間隔が大きいほど、生成されたボリュームデータにおける病変領域の形状信頼性が低くなり、ボリュームデータが病変領域の三次元形状を正確に維持できなくなる。その結果、病変検出の精度が低下する。
【0021】
実際の医療現場では、一度に撮影される断層画像数を多くできず、その結果としてスライス間隔を小さくできない場合がある。そのため、3Dセグメンテーションによる病変検出の精度は、2Dセグメンテーションによる病変検出の精度より高いとはいえない。
【0022】
これに対して、上記の病変検出処理5bでは、入力データとして二次元の断層画像に加えて、3Dセグメンテーションである病変検出処理5aによって判定された、病変領域である確率が用いられる。これにより、病変検出処理5bでは、断層画像における病変領域の二次元形状だけでなく、病変領域の三次元形状も考慮した2Dセグメンテーションが実行されることになる。このため、病変検出処理5bでは、例えば複数種類の病変の像の二次元形状が類似している場合でも、像の領域が特定の病変の領域か否かを精度よく判定できる。したがって、断層画像からの病変領域の検出精度を向上させることができる。
【0023】
〔第2の実施の形態〕
次に、CT画像から肝臓の病変領域を検出可能なシステムについて説明する。
図2は、第2の実施の形態に係る診断支援システムの構成例を示す図である。図2に示す診断支援システムは、CT撮影による画像診断作業を支援するシステムであり、CT装置11,21、学習処理装置12および病変検出装置22を含む。なお、病変検出装置22は、図1に示した病変検出装置1の一例である。
【0024】
CT装置11,21は、人体のX線CT画像を撮影する。本実施の形態において、CT装置11,21は、肝臓を含む腹部領域におけるアキシャル面の断層画像を、人体の高さ方向(アキシャル面に垂直な方向)に対する位置(スライス位置)を所定間隔で変えながら所定枚数撮影する。
【0025】
病変検出装置22は、CT装置21によって撮影された各断層画像から病変領域を検出する。本実施の形態では、病変領域として、肝内胆管の拡張が検出されるものとする。また、病変検出装置22は、機械学習によって生成された病変識別モデルを用いて病変領域を検出する。また、病変検出装置22は、例えば、病変領域の検出結果を示す情報を表示装置に表示させる。これにより病変検出装置22は、ユーザ(例えば読影医)の画像診断作業を支援する。
【0026】
学習処理装置12は、病変検出装置22で利用される病変識別モデルを、機械学習によって生成する。このモデル生成処理のために、学習処理装置12は、CT装置11によって撮影された各断層画像から学習用データを生成し、生成された学習用データを用いて機械学習を実行する。学習処理装置12によって生成された病変識別モデルを示すデータ(モデルパラメータ)は、例えばネットワークを介して、あるいは可搬型の記録媒体を介して病変検出装置22に読み込まれる。
【0027】
なお、学習処理装置12と病変検出装置22とに対しては、同一のCT装置から撮影画像が入力されてもよい。また、学習処理装置12は、CT装置から撮影画像を直接的に取得するのではなく、記録媒体などを介して取得してもよい。さらに、学習処理装置12と病変検出装置22は、同一の情報処理装置であってもよい。
【0028】
図3は、病変検出装置のハードウェア構成例を示す図である。病変検出装置22は、例えば、図3に示すようなコンピュータとして実現される。図2に示すように、病変検出装置22は、プロセッサ201、RAM(Random Access Memory)202、HDD(Hard Disk Drive)203、GPU(Graphics Processing Unit)204、入力インタフェース(I/F)205、読み取り装置206および通信インタフェース(I/F)207を備える。
【0029】
プロセッサ201は、病変検出装置22全体を統括的に制御する。プロセッサ201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはPLD(Programmable Logic Device)である。また、プロセッサ201は、CPU、MPU、DSP、ASIC、PLDのうちの2以上の要素の組み合わせであってもよい。なお、プロセッサ201は、図1に示した処理部2の一例である。
【0030】
RAM202は、病変検出装置22の主記憶装置として使用される。RAM202には、プロセッサ201に実行させるOS(Operating System)プログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM202には、プロセッサ201による処理に必要な各種データが格納される。
【0031】
HDD203は、病変検出装置22の補助記憶装置として使用される。HDD203には、OSプログラム、アプリケーションプログラム、および各種データが格納される。なお、補助記憶装置としては、SSD(Solid State Drive)などの他の種類の不揮発性記憶装置を使用することもできる。
【0032】
GPU204には、表示装置204aが接続されている。GPU204は、プロセッサ201からの命令にしたがって、画像を表示装置204aに表示させる。表示装置204aとしては、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどがある。
【0033】
入力インタフェース205には、入力装置205aが接続されている。入力インタフェース205は、入力装置205aから出力される信号をプロセッサ201に送信する。入力装置205aとしては、キーボードやポインティングデバイスなどがある。ポインティングデバイスとしては、マウス、タッチパネル、タブレット、タッチパッド、トラックボールなどがある。
【0034】
読み取り装置206には、可搬型記録媒体206aが脱着される。読み取り装置206は、可搬型記録媒体206aに記録されたデータを読み取ってプロセッサ201に送信する。可搬型記録媒体206aとしては、光ディスク、半導体メモリなどがある。
【0035】
通信インタフェース207は、ネットワークを介して、CT装置21などの他の装置との間でデータの送受信を行う。
以上のようなハードウェア構成によって、病変検出装置22の処理機能を実現することができる。なお、学習処理装置12も、図3に示すようなハードウェア構成のコンピュータとして実現可能である。
【0036】
ところで、医用画像からの病変領域の検出処理は、例えば、機械学習モデルを用いて実行可能である。
図4は、病変領域の検出のための機械学習モデルの第1の例を示す図である。図4に示す2Dセグメンテーションモデル30は、断層画像32が入力されると、断層画像32の画素ごとに特定の病変領域か否かを分類する学習済みモデルである。ここでは、断層画像32はアキシャル面の断層画像であるとする。なお、図4の2Dセグメンテーションモデル30は、入力データが二次元画像であることから、その名称に「2D」を付加して示している。
【0037】
この2Dセグメンテーションモデル30は、同じくアキシャル面の断層画像31a,31b,31c,・・・を教師データとして用いた機械学習(例えば深層学習)によって生成される。これらの断層画像31a,31b,31c,・・・には、画素ごとに病変領域か否かを示すラベルが付加されており、機械学習の際にはこれらのラベルが正解データとして用いられる。
【0038】
このような2Dセグメンテーションモデル30を用いた病変検出では、断層画像の面に沿った形状の病変を比較的精度よく検出可能であるが、三次元的に断層画像の面に沿っていない形状の病変の検出精度が低いという問題がある。例えば、肝内胆管の拡張などの管状の病変が断層画像の面に沿っていない場合、その病変は断層画像上で円形または楕円形に投影されるので、腫瘤などの球状の病変と区別することが難しい。
【0039】
すなわち、管状の病変を検出するための2Dセグメンテーションモデル30の学習時には、断層画像上で円形や楕円形に写る病変が不正解(Not)と学習される。このため、その2Dセグメンテーションモデル30を用いた推論時には、三次元的には管状の病変であっても、断層画像上で円形や楕円形に写っている場合には病変でないと判定される可能性がある。
【0040】
図5は、病変形状の例を示す図である。また、図6は、断層画像上の病変形状の例を示す図である。
図5の例では、斜視図41に示すように、X軸、Y軸、Z軸による三次元空間に管状の病変領域40が存在している。また、画像42は、病変領域40を人体の上側から見た(Z軸方向に見た)場合の画像である。画像43は、病変領域40を人体の左側から見た(X軸方向に見た)場合の画像である。画像44は、病変領域40を人体の前側から見た(Y軸方向に対する反対方向に見た)場合の画像である。
【0041】
図6に示す断層画像51,52,53は、病変領域40における三次元位置45を通るアキシャル面、サジタル面、コロナル面の断層画像をそれぞれ示している。三次元位置45において、病変領域40はアキシャル面、サジタル面、コロナル面のいずれにも沿っていない。このため、断層画像51~53のいずれにおいても、病変の領域は管状の形状には写っておらず、円形または楕円形に写っている。
【0042】
上記の2Dセグメンテーションモデル30については、アキシャル面の断層画像で学習された場合、アキシャル面の断層画像を用いて推論が行われる。同様に、サジタル面の断層画像で学習された場合、サジタル面の断層画像を用いて推論が行われ、コロナル面の断層画像で学習された場合、コロナル面の断層画像を用いて推論が行われる。しかし、上記の三次元位置45の領域は、アキシャル面、サジタル面、コロナル面のいずれの断層画像からも管状の病変と判定されない可能性が高い。
【0043】
また、病変領域がアキシャル面、サジタル面、コロナル面のうち1つの断層画像に沿っていた場合でも、他の2つの断層画像上では病変が円形または楕円形に写る。このため、学習および推論時にアキシャル面、サジタル面、コロナル面のいずれの断層画像を用いたとしても、管状の病変の領域が病変であると正しく判定されないことが生じ得る。
【0044】
このような問題を解決するための方法の例として、次の図7に示す方法が考えられる。 図7は、病変領域の検出のための機械学習モデルの第2の例を示す図である。病変検出装置22は、CT装置21によってスライス位置を変えながら撮影された複数の断層画像(断層画像セット)を基に、三次元のボリュームデータを生成可能である。図7に示す3Dセグメンテーションモデル60は、このようなボリュームデータ62の入力を受けると、ボリュームデータ62のボクセルごとに特定の病変領域か否かを分類する学習済みモデルである。なお、図7の3Dセグメンテーションモデル60は、入力データが三次元空間の画像データであることから、その名称に「3D」を付加して示している。
【0045】
この3Dセグメンテーションモデル60は、ボリュームデータ61a,61b,61c,・・・を教師データとして用いた機械学習(例えば深層学習)によって生成される。これらのボリュームデータ61a,61b,61c,・・・には、ボクセルごとに病変領域か否かを示すラベルが付加されており、機械学習の際にはこれらのラベルが正解データとして用いられる。
【0046】
このような3Dセグメンテーションモデル60を用いることで、前述の2Dセグメンテーションモデル30を用いた場合と比較して、病変領域40の三次元空間上の形状を正確に捉えた病変検出を行うことが可能となる。このため、管状の病変の領域だけを検出できる可能性が高く、球状などの他の形状の病変の領域を誤検出する可能性は低い。
【0047】
しかし、3Dセグメンテーションモデル60を用いた場合、学習時や推論時に用いるボリュームデータの生成元となる断層画像セットのスライス間隔が、病変検出の精度に影響を与え得る。例えば、断層画像セットに含まれる各断層画像の画素の大きさより、断層画像間のスライス間隔の方が大きい場合、ボリュームデータの生成時においては断層画像間のボクセルのデータが補間演算によって算出される。一例としてアキシャル面(X-Y平面)の断層画像が用いられる場合、上下方向(Z軸方向)に対する補間演算が実行される。このため、スライス間隔が大きいほど、ボリュームデータにおけるZ軸方向への病変領域の形状信頼性が低くなり、ボリュームデータが病変領域の三次元形状を正確に保持できなくなる。
【0048】
したがって、3Dセグメンテーションモデル60の学習時においては、教師データとしてスライス間隔が小さい断層画像セットに基づくボリュームデータを用いるほど、病変検出精度の高い3Dセグメンテーションモデル60を生成可能となる。一方、3Dセグメンテーションモデル60を用いた推論時においては、学習時よりスライス間隔が大きい断層画像セットに基づくボリュームデータを3Dセグメンテーションモデル60に入力すると、病変検出精度が低下する可能性がある。
【0049】
実際の医療現場では、一度に撮影される断層画像数を多くできない場合がある。このため、3Dセグメンテーションモデル60を用いた推論時に用いる断層画像セットのスライス間隔が、3Dセグメンテーションモデル60の学習時に用いられた断層画像セットのスライス間隔より大きくなる場合がある。この場合、3Dセグメンテーションモデル60を用いた推論精度が低下してしまう。このような観点から、3Dセグメンテーションモデル60による病変検出精度は、2Dセグメンテーションモデル30より高いとはいえない。
【0050】
そこで、本実施の形態の病変検出装置22は、二次元画像を用いたセグメンテーション処理に対して、3Dセグメンテーションモデル60を用いた処理結果を補助的に用いることで、病変検出精度を向上させる。
【0051】
図8は、第2の実施の形態における病変検出処理の概要を示す図である。
病変検出装置22は、まず、CT装置21によって撮影された複数の断層画像を含む断層画像セット71に基づいて、三次元のボリュームデータを生成し、生成されたボリュームデータを3Dセグメンテーションモデル60に入力する。ここで、3Dセグメンテーションモデル60は、ニューラルネットワーク層と閾値判定部64とを含む。図8では、ニューラルネットワーク層の一例としてCNN層63を示している。
【0052】
CNN層63は、ボリュームデータが入力されると、CNN層63の最終層である出力層65から、各断層画像の画素ごとに、病変領域である確率と、病変領域でない確率とを出力する。閾値判定部64は、例えば、出力層65から出力された病変領域である確率を所定の閾値と比較し、確率が閾値以上である場合に、対応する画素が病変領域であると判定する。
【0053】
病変検出装置22は、出力層65から出力された病変領域である確率を取得する。取得される確率は、0以上1以下の値をとる。病変検出装置22は、断層画像セット71に含まれる各断層画像と、各断層画像の画素ごとの確率とに基づいて、各断層画像に対応する2チャネル画像を生成する。2チャネル画像は、対応する断層画像の各画素に対して、断層画像の画素値(例えば輝度値)と確率とが対応付けられたデータである。
【0054】
図8では、断層画像セット71に含まれる断層画像のうち、n番目のスライス面に対応する断層画像72aに関する処理を例示している。この断層画像72aは、画素ごとに輝度値を有している。また、図8では、出力層65から取得された確率は「確率マップ」として取り扱われるものとする。図8に示す確率マップ72bは、断層画像72aの画素ごとに確率がマッピングされたデータである。図8の例では、病変検出装置22は、断層画像72aと確率マップ72とを結合することで、n番目のスライス面に対応する2チャネル画像72を生成する。
【0055】
病変検出装置22は、このような2チャネル画像72を2Dセグメンテーションモデル73に入力する。2Dセグメンテーションモデル73は、断層画像の画素ごとに輝度値と確率とが対応付けられた2チャネル画像が入力されると、断層画像の画素ごとに病変領域か否かを判定してどの断層画像のセグメンテーション結果を出力するように学習された機械学習モデルである。したがって、2Dセグメンテーションモデル73に2チャネル画像72が入力されると、n番目のスライス面に対応する断層画像から病変領域が検出される。
【0056】
上記の2Dセグメンテーションモデル73による病変検出処理では、入力データとして二次元の断層画像に加えて、3Dセグメンテーションモデル60を用いて判定された、病変領域である確率が用いられる。これにより、この病変検出処理では、断層画像における病変領域の二次元形状だけでなく、病変領域の三次元形状も考慮した2Dセグメンテーションが実行されることになる。
【0057】
このため、入力データとして二次元の断層画像のみを用いた場合と比較して、管状の病変の領域を球状などの他の形状の病変の領域とは区別して検出できる可能性が高くなる。すなわち、腫瘤などの球状の病変の領域を、肝内胆管の拡張などの管状の病変の領域であると誤検出する可能性が低減される。したがって、断層画像からの病変領域の検出精度を向上させることができる。
【0058】
なお、上記のように、3Dセグメンテーションモデル60に関しては、閾値判定部64の出力データは利用されず、CNN層63の出力層65の出力データのみが利用される。このため、3Dセグメンテーションモデル60を用いた処理では、少なくともCNN層63での演算処理が実行されればよい。
【0059】
図9は、第2の実施の形態における2Dセグメンテーションモデルの学習処理の概要を示す図である。図8に示した2Dセグメンテーションモデル73は、例えば、次のような学習処理によって生成される。
【0060】
学習処理では、CT装置11によって撮影された複数の断層画像(断層画像セット)が、学習用データとして用意される。各断層画像はアノテーション済みの画像となっており、画素ごとに病変領域か否かを示す正解ラベルが対応付けられている。図9に例示した学習用データ80は、断層画像セット81と正解画像セット82を含んでいる。正解画像セット82は、複数の正解画像を含み、各正解画像は断層画像セット81に含まれる各断層画像に対応付けられている。正解画像には、画素ごとに正解ラベルがマッピングされている。なお、実際には、断層画像セット81および正解画像セット82を含む学習用データ80が、複数組用意されて学習処理が実行される。
【0061】
学習処理装置12は、断層画像セット81に基づいて三次元のボリュームデータを生成し、生成されたボリュームデータを3Dセグメンテーションモデル60に入力する。学習処理装置12は、3Dセグメンテーションモデル60の出力層65から、断層画像セット81に含まれる各断層画像の画素ごとに確率を取得する。そして、学習処理装置12は、断層画像セット81に含まれる各断層画像と、各断層画像の画素ごとの確率とに基づいて、各断層画像に対応する2チャネル画像を生成する。図9では例として、図8と同様に、n番目のスライス面に対応する断層画像82aおよび確率マップ82bを結合することで、このスライス面に対応する2チャネル画像82が生成されている。
【0062】
このようにして、学習用データ80に含まれる各断層画像に対応する2チャネル画像が生成される。学習処理装置12は、各2チャネル画像を学習用の入力データとし、各2チャネル画像に対応する正解画像を正解データとして用いた機械学習を実行し、入力された2チャネル画像から病変領域を検出する2Dセグメンテーションモデル73(図8参照)を生成する。実際には、2Dセグメンテーションモデル73を形成するためのデータである2Dモデルパラメータ112が生成される。2Dモデルパラメータ112には、ニューラルネットワーク上のノード間の重み係数が含まれる。
【0063】
図10は、学習処理装置および病変検出装置が備える処理機能の構成例を示す図である。
学習処理装置12は、記憶部110、3Dセグメンテーション処理部121、2チャネル画像生成部122および2Dセグメンテーション学習部123を備える。
【0064】
記憶部110は、学習処理装置12が備える記憶装置に確保される記憶領域である。記憶部110には、3Dモデルパラメータ111と2Dモデルパラメータ112が記憶される。3Dモデルパラメータ111は、3Dセグメンテーションモデル60を形成するためのデータであり、主として重み係数を含む。2Dモデルパラメータ112は、2Dセグメンテーションモデル73を形成するためのデータであり、主として重み係数を含む。2Dモデルパラメータ112は、2Dセグメンテーション学習部123によって生成されて、記憶部110に格納される。
【0065】
3Dセグメンテーション処理部121、2チャネル画像生成部122および2Dセグメンテーション学習部123の処理は、例えば、学習処理装置12が備えるプロセッサがアプリケーションプログラムを実行することで実現される。
【0066】
3Dセグメンテーション処理部121は、学習用データとして用意された断層画像セットを基にボリュームデータを生成する。3Dセグメンテーション処理部121は、3Dモデルパラメータ111に基づく3Dセグメンテーションモデル60に対してボリュームデータを入力して病変検出処理を実行する。3Dセグメンテーション処理部121は、3Dセグメンテーションモデル60に含まれるニューラルネットワークの出力層から、病変領域である確率を各断層画像の画素ごとに出力する。
【0067】
2チャネル画像生成部122は、断層画像の各画素の画素値(輝度値)と、3Dセグメンテーション処理部121から出力された各画素の確率とを用いて2チャネル画像を生成する。以上の3Dセグメンテーション処理部121および2チャネル画像生成部122の処理により、2Dセグメンテーションモデル73を機械学習によって生成するための入力データが生成される。
【0068】
2Dセグメンテーション学習部123は、学習用データに含まれる各断層画像に対応する2チャネル画像を入力データとして用い、各2チャネル画像に対応する正解画像を正解データとして用いて機械学習を実行する。この機械学習によって2Dセグメンテーションモデル73が生成され、2Dセグメンテーション学習部123は、生成された2Dセグメンテーションモデル73に対応する2Dモデルパラメータ112を記憶部110に格納する。
【0069】
病変検出装置22は、記憶部210、3Dセグメンテーション処理部221、2チャネル画像生成部222、2Dセグメンテーション処理部223および表示処理部224を備える。
【0070】
記憶部210は、RAM202、HDD203など、病変検出装置22が備える記憶装置に確保される記憶領域である。記憶部210には、3Dモデルパラメータ111と2Dモデルパラメータ112が記憶される。3Dモデルパラメータ111は、3Dセグメンテーションモデル60を形成するためのデータであり、学習処理装置12の記憶部110に記憶された3Dモデルパラメータ111と同一である。2Dモデルパラメータ112は、2Dセグメンテーションモデル73を形成するためのデータであり、学習処理装置12からネットワークや可搬型記録媒体などを介して病変検出装置22に入力され、記憶部210に格納される。
【0071】
3Dセグメンテーション処理部221、2チャネル画像生成部222、2Dセグメンテーション処理部223および表示処理部224の処理は、例えば、プロセッサ201がアプリケーションプログラムを実行することで実現される。
【0072】
3Dセグメンテーション処理部221は、CT装置21によって撮影された複数の断層画像を含む断層画像セットを基にボリュームデータを生成する。3Dセグメンテーション処理部221は、3Dモデルパラメータ111に基づく3Dセグメンテーションモデル60に対してボリュームデータを入力して病変検出処理を実行する。3Dセグメンテーション処理部221は、3Dセグメンテーションモデル60に含まれるニューラルネットワークの出力層から、病変領域である確率を各断層画像の画素ごとに出力する。
【0073】
2チャネル画像生成部222は、断層画像の各画素の画素値(輝度値)と、3Dセグメンテーション処理部121から出力された各画素の確率とを用いて2チャネル画像を生成する。
【0074】
2Dセグメンテーション処理部223は、生成された2チャネル画像を、2Dモデルパラメータ112に基づく2Dセグメンテーションモデル73に対して入力することで、病変検出処理を実行する。
【0075】
表示処理部224は、2Dセグメンテーション処理部223による病変検出結果を示す表示画像を生成し、表示画像を表示装置204aに表示させる。
次に、学習処理装置12および病変検出装置22の処理について、フローチャートを用いて説明する。
【0076】
図11は、学習処理装置の処理手順を示すフローチャートの例である。
[ステップS11]3Dセグメンテーション処理部121は、学習用データとして用意された断層画像セットを1つ選択する。
【0077】
[ステップS12]3Dセグメンテーション処理部121は、選択した断層画像セットを基にボリュームデータを生成する。
[ステップS13]3Dセグメンテーション処理部121は、3Dモデルパラメータ111に基づく3Dセグメンテーションモデル60を用いて、ボリュームデータからの病変領域の検出処理を実行する。3Dセグメンテーション処理部121は、3Dセグメンテーションモデル60に含まれるニューラルネットワークの出力層から、病変領域である確率を各断層画像の画素ごとに出力し、各断層画像に対応する確率マップを生成してRAMなどの記憶領域に格納する。
【0078】
[ステップS14]2チャネル画像生成部122は、スライス面を1つ選択する。
[ステップS15]2チャネル画像生成部122は、ステップS13で記憶領域に格納された確率マップの中から、選択されたスライス面に対応する確率マップを取得する。2チャネル画像生成部122は、選択されたスライス面に対応する断層画像(輝度値の画像)と、取得した確率マップとを結合して、選択されたスライス面に対応する2チャネル画像を生成する。
【0079】
[ステップS16]2チャネル画像生成部122は、すべてのスライス面を選択済みかを判定する。未選択のスライス面がある場合、処理がステップS14に進められ、未選択スライス面の中から1つが選択される。一方、すべてのスライス面を選択済みの場合、処理がステップS17に進められる。
【0080】
[ステップS17]3Dセグメンテーション処理部121は、学習用データとして用意されたすべての断層画像セットを選択済みかを判定する。未選択の断層画像セットがある場合、処理がステップS11に進められ、未選択の断層画像セットの中から1つが選択される。一方、すべての断層画像セットを選択済みの場合、処理がステップS18に進められる。
【0081】
[ステップS18]2Dセグメンテーション学習部123は、生成された各2チャネル画像を入力データとして用い、各2チャネル画像に対応する正解画像を正解データとして用いて機械学習を実行する。この機械学習によって2Dセグメンテーションモデル73が生成され、2Dセグメンテーション学習部123は、生成された2Dセグメンテーションモデル73に対応する2Dモデルパラメータ112を記憶部110に格納する。
【0082】
図12は、病変検出装置の処理手順を示すフローチャートの例である。
[ステップS21]3Dセグメンテーション処理部221は、CT装置21によって撮影された複数の断層画像を含む断層画像セットを基にボリュームデータを生成する。
【0083】
[ステップS22]3Dセグメンテーション処理部221は、3Dモデルパラメータ111に基づく3Dセグメンテーションモデル60を用いて、ボリュームデータからの病変領域の検出処理を実行する。3Dセグメンテーション処理部221は、3Dセグメンテーションモデル60に含まれるニューラルネットワークの出力層から、病変領域である確率を各断層画像の画素ごとに出力し、各断層画像に対応する確率マップを生成してRAM202などの記憶領域に格納する。
【0084】
[ステップS23]2チャネル画像生成部222は、スライス面を1つ選択する。
[ステップS24]2チャネル画像生成部222は、ステップS22で記憶領域に格納された確率マップの中から、選択されたスライス面に対応する確率マップを取得する。2チャネル画像生成部222は、選択されたスライス面に対応する断層画像(輝度値の画像)と、取得した確率マップとを結合して、選択されたスライス面に対応する2チャネル画像を生成する。
【0085】
[ステップS25]2Dセグメンテーション処理部223は、生成された2チャネル画像を、2Dモデルパラメータ112に基づく2Dセグメンテーションモデル73に対して入力することで、2チャネル画像に対応する断層画像からの病変領域の検出処理を実行する。これにより、2チャネル画像に対応する断層画像の各画素について、病変領域か否かが判定される。
【0086】
[ステップS26]2チャネル画像生成部222は、すべてのスライス面を選択済みかを判定する。未選択のスライス面がある場合、処理がステップS23に進められ、未選択スライス面の中から1つが選択される。一方、すべてのスライス面を選択済みの場合、処理がステップS27に進められる。
【0087】
[ステップS27]表示処理部224は、2Dセグメンテーション処理部223による病変領域の検出結果を示す表示画像を生成し、表示画像を表示装置204aに表示させる。
【0088】
図13は、病変領域の検出結果を示す表示画像の例を示す図である。病変検出装置22は、2Dセグメンテーション処理部223の処理結果に基づいて、病変領域の検出結果を示す情報を出力することができる。例えば、表示処理部224は、図13に示すような結果表示画像90を生成して表示装置204aに表示させることができる。結果表示画像90は、スライス選択部91、病変領域表示部92および確率マップ表示部93を含む。
【0089】
スライス選択部91では、スライダ上のハンド91aを移動させることで、病変領域表示部92に表示させる断層画像のスライス面を選択できるようになっている。病変領域表示部92には、スライス選択部91で選択されたスライス面に対応する断層画像が表示される。この断層画像には、同じスライス面に対する2Dセグメンテーション処理部223の処理結果に基づいて、病変領域92aが重畳表示される。
【0090】
確率マップ表示部93には、病変領域表示部92と同じ断層画像が表示される。また、この断層画像における病変領域93aには、選択されたスライス面に対応する確率マップの情報が重畳表示される。例えば、病変領域93a内の各画素は、断層画像とは異なる色を用いて、確率マップ上の確率の値に応じた明るさで表示される。
【0091】
ユーザ(読影医)は、上記のような結果表示画像90を視認することで、最終的な病変領域の検出結果と、検出された病変領域における確率とを対比して確認できる。これによってユーザは、例えば、病変領域の検出結果の信頼性を判断することが可能となる。
【0092】
なお、以上の第2の実施の形態では、確率は0以上1以下の値であったが、他の例として、確率値は0または1であってもよい。この場合、病変検出装置22は例えば、3Dセグメンテーションモデル60の閾値判定部64による画素ごとのセグメンテーション結果を基に確率を取得してもよい。すなわち、画素が病変領域であると判定された場合、確率は1となり、画素が病変領域でないと判定された場合、確率は0となる。このような確率を用いた場合でも、2Dセグメンテーションモデル73を用いた病変検出処理において病変の三次元形状が考慮されるので、病変検出精度を向上させる効果が得られる。
【0093】
しかし、上記の第2の実施の形態のように確率として0と1以外の値も利用されることで、2Dセグメンテーションモデル73を用いた病変検出処理に対して、病変の三次元形状に基づく判定結果を細かく反映させることが可能となる。その結果、確率として0と1以外の値も利用されることで、病変検出精度を高めることが可能となる。
【0094】
また、上記の第2の実施の形態では、断層画像と、その断層画像の各画素の確率とが2Dセグメンテーションモデル73に入力された。しかし、他の例として、断層画像のみが入力される、図4に示した2Dセグメンテーションモデル30が用いられ、2Dセグメンテーションモデル30による判定結果が確率によって補正されてもよい。例えば、2Dセグメンテーションモデル30に含まれるニューラルネットワークの出力層から出力される、画素が病変領域である確率が、3Dセグメンテーションモデル60から取得された、その画素に対応する確率によって補正される。前者の確率は、後者の確率が高いほど高い値に補正される。そして、2Dセグメンテーションモデル30では、補正後の確率を用いて閾値判定が行われ、補正後の確率が所定の閾値以上の場合に対応する画素が病変領域であると判定される。
【0095】
このような方法では、2Dセグメンテーションモデル30による病変検出結果が、3Dセグメンテーションモデル60による、病変の三次元形状が考慮された病変検出結果によって補正される。このため、病変検出精度を向上させる効果が得られる。ただし、上記の第2の実施の形態のように、断層画像の画素ごとの画素値と確率の両方を入力として学習された2Dセグメンテーションモデル73を用いた方が、病変の三次元形状に基づく判定結果を適切に反映させた病変検出を実行できるようなる。このため、2Dセグメンテーションモデル73を用いた方が病変検出精度を高めることが可能となる。
【0096】
なお、上記の各実施の形態に示した装置(例えば、病変検出装置1,22、学習処理装置12)の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、各装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供され、そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記憶装置、光ディスク、半導体メモリなどがある。磁気記憶装置には、ハードディスク装置(HDD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc:BD、登録商標)などがある。
【0097】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CDなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0098】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムまたはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムにしたがった処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムにしたがった処理を実行することもできる。また、コンピュータは、ネットワークを介して接続されたサーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムにしたがった処理を実行することもできる。
【符号の説明】
【0099】
1 病変検出装置
2 処理部
3a~3c 断層画像
4 ボリュームデータ
5a,5b 病変検出処理
6a~6c 確率マップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13