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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007783
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】船舶推進装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 1/30 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B63H1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109104
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】522271915
【氏名又は名称】安田 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】安田 秀一
(57)【要約】
【課題】キャビテーションを発生させるスクリューを用いることなく、かつ強い推進力を発揮することのできる船舶推進装置を提供する。
【解決手段】上方から下方に延びる棒状で、少なくとも下部は水面Lより下位に入れられ上部の位置に設けられた支点Cを中心として船舶1の推進方向に直角に交差する方向に、時計回り方向と反時計回り方向に揺動可能な揺動棒11と、揺動棒11を、時計回り方向と反時計回り方向に交互に揺動させる揺動機構12と、揺動棒11の下部に設けられ、船舶1の推進方向と逆の方向に開口する凹部13aを有する推進体13とを備える。揺動棒11を揺動させ、水中で凹部13aが発生する推進力によって船舶1を推進させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に取付けられて、前記船舶を推進させる装置であって、
上方から下方に延びる棒状で、少なくとも下部は水面下に入れられ上部の位置に設けられた支点を中心として前記船舶の推進方向に直角に交差する方向に、時計回り方向と反時計回り方向に揺動可能な揺動棒と、
前記搖動棒を、前記時計回り方向と反時計回り方向に交互に揺動させる揺動機構と、
前記揺動棒の下部に設けられ、前記船舶の推進方向と逆の方向に開口する凹部を有する推進体とを備え、
前記揺動棒の揺動に対応して水中で前記凹部が発生する推進力によって前記船舶を推進させることを特徴とする船舶推進装置。
【請求項2】
前記推進体の揺動の振幅幅が、前記推進体の振幅幅方向の径よりも小さいことを特徴する請求項1に記載の船舶用推進装置。
【請求項3】
船舶に取付けられて、前記船舶を推進させる装置であって、
支点を中心として前記船舶の推進方向に直角に交差する方向に複数延びる棒状で、前記支点を中心として前記船舶の推進方向に直角に交差する方向に、時計回り方向と反時計回り方向に回動可能な回動棒と、
前記回動棒を、前記時計回り方向と反時計回り方向に交互に回動させる回動機構と、
前記回動棒の端部に水中に位置するように設けられ、前記船舶の推進方向と逆の方向に開口する凹部を有する推進体とを備え、
前記回動棒の回動に対応して水中で前記凹部が発生する推進力によって前記船舶を推進させることを特徴とする船舶推進装置。
【請求項4】
前記推進体の回動の回動幅が、前記推進体の回動幅方向の径よりも小さいことを特徴する請求項3に記載の船舶用推進装置。
【請求項5】
前記推進体は、前記凹部の正面形状が真円である半球殻形状であることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の船舶用推進装置。
【請求項6】
前記推進体は、前記凹部の正面形状が真円である半球殻形状であり、前記真円の半径をRとした場合、前記真円の中心からの奥行きの距離Xを、R/2以上かつR以下としたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の船舶用推進装置。
【請求項7】
前記推進体は、前記凹部の正面形状が真円である半球殻形状であり、前記真円の半径をRとした場合、前記真円の中心からの奥行きの距離Xを、2R/3としたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の船舶用推進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型船舶、小型船舶、玩具の船などのあらゆる種類の船舶を推進させることのできる船舶推進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的なスクリューを使用した船舶の推進装置はキャビテーション(空洞現象)が発生し易く、それが振動や騒音の原因となって羽根やポンプの損傷を招くといった問題がある。そうした点に鑑み、スクリューを使用しない船舶推進装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この船舶推進装置は、回転軸と共に回転する本体の前部の中心部分に吸入口を設けるとともに後部の周端部分に吐出口を設け、回転軸と本体を回転させることによって吸入口から吸入した水に吐出口で遠心力を生じさせて吐出し、推進力を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-162473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の船舶推進装置によれば、それまでのスクリューを使用した装置のようなキャビテーションを発生させないといった効果を有する。
【0006】
しかしながら、この船舶推進装置は、回転軸と本体を回転させて、本体の吸入口から吸入した水に遠心力を生じさせて吐出し、推進力を得るという構造であり、スクリューのような水を掻く部材を備えていないので、推進力が弱いといった問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、キャビテーションを発生させるスクリューを用いることなく、かつ強い推進力を発揮することのできる船舶推進装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の船舶推進装置(10)は、船舶(1)に取付けられて、前記船舶(1)を推進させる装置であって、
上方から下方に延びる棒状で、少なくとも下部は水面下に入れられ上部の位置に設けられた支点(C)を中心として前記船舶(1)の推進方向に直角に交差する方向に、時計回り方向と反時計回り方向に揺動可能な揺動棒(11)と、
前記揺動棒(11)を、前記時計回り方向と反時計回り方向に交互に揺動させる揺動機構(12)と、
前記揺動棒(11)の下部に設けられ、前記船舶(1)の推進方向と逆の方向に開口する凹部(13a)を有する推進体(13)とを備え、
前記揺動棒(11)の揺動に対応して水中で前記凹部(13a)が発生する推進力によって前記船舶(1)を推進させることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記推進体(13)の揺動の振幅幅(W1)が、前記推進体(13)の振幅幅方向の径(D1)よりも小さいことを特徴する。
ここで、振幅幅(W1)とは、一般的に定義される、振幅の2倍を意味する。
【0010】
また本発明の船舶推進装置(10)は、船舶(1)に取付けられて、前記船舶(1)を推進させる装置であって、
支点(C)を中心として前記船舶(1)の推進方向に直角に交差する方向に複数延びる棒状で、前記支点(C)を中心として前記船舶(1)の推進方向に直角に交差する方向に、時計回り方向と反時計回り方向に回動可能な回動棒(14)と、
前記回動棒(14)を、前記時計回り方向と反時計回り方向に交互に回動させる回動機構(15)と、
前記回動棒(14)の端部に水中に位置するように設けられ、前記船舶(1)の推進方向と逆の方向に開口する凹部(13a)を有する推進体(13)とを備え、
前記回動棒(14)の回動に対応して水中で前記凹部(13a)が発生する推進力によって前記船舶(1)を推進させることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記推進体(13)の回動の回動幅(W2)が、前記推進体(13)の回動幅方向の径(D2)よりも小さいことを特徴する。
【0012】
また本発明は、前記推進体(13)の前記凹部(13a)の正面形状が真円である半球殻形状であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記推進体(13)の前記凹部(13a)の正面形状が真円である半球殻形状であり、前記真円の半径をRとした場合、前記真円の中心からの奥行きの距離Xを、R/2以上かつR以下としたことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記推進体(13)の前記凹部(13a)の正面形状が真円である半球殻形状であり、前記真円の半径をRとした場合、前記真円の中心からの奥行きの距離Xを、2R/3(R×(2/3))としたことを特徴とする。
【0015】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明の船舶推進装置によれば、揺動棒の揺動に対応して、水中で推進体の凹部が発生する推進力によって船舶を推進させるので、スクリューを用いることなく強い推進力を得ることができる。
【0017】
すなわち、これは、推進体の凹部が水を掻いて逆カルマン渦(カルマン渦の向きと逆の渦)を発生させるものであり、原理的には魚の尾鰭によって発生する推進力と同じである。従って、マグロやカツオなどの魚と同じような強い推進力を簡易な構成によって発生させることができる。
【0018】
また本発明によれば、推進体の揺動の振幅幅が、推進体の振幅幅方向の径よりも小さいので、さらに強い推進力を発生させることができる。
これは、図9に示すように、推進体の揺動の振幅幅が、推進体の振幅幅方向の径よりも小さいときは、往復する毎に2列状となり後方に連続的に渦が形成され、新しい渦によってその前に形成された渦が順次、後方に押し出される。こうした現象が繰り返されることにより、推進体の揺動の中央部分において、後方に流れる一方向流が形成され、強い推進力となる。
【0019】
ちなみに、この一方向流の発生は、海洋環境学における潮流が潮汐残差流という定常流を生み出すことと類似している。一方向流が渦によるものであることからその生成は効率的で、この原理を船舶推進装置に適用したことで、スクリューを使用した装置よりも省エネルギー効果を期待することができ、二酸化炭素問題の解決にも貢献できるといった利点もある。
【0020】
また本発明の船舶推進装置によれば、回動棒の揺動に対応して、水中で推進体の凹部が発生する推進力によって船舶を推進させるので、強い推進力を得ることができる。すなわち、推進体の凹部が逆カルマン渦を発生させて一方向流による推進力を発生させるので、強い推進力を発生させることができる。
【0021】
また本発明によれば、推進体の回動の回動幅が、推進体の回動幅方向の径よりも小さいので、さらに強い推進力を発生させることができる。
【0022】
また本発明によれば、推進体が、凹部の正面形状が真円である半球殻形状であるので、後方の左右二箇所において形成される渦の強さを均等にすることができる。これにより形成される一方向流により安定した推進力を得ることができる。
またこの推進体は半球殻形状であり、その外面が滑らかな円弧形状であるため、外面が受ける水の抵抗を小さくすることができる。従って、推進体の動きを妨げず、十分な推進力を得ることができる。
【0023】
また本発明によれば、推進体は、凹部の正面形状が真円である半球殻形状であり、真円の半径をRとした場合、真円の中心からの奥行きの距離Xを、R/2以上かつR以下にすることが、凹部内にできた渦を容易に押し出すことができ、その結果、強い逆カルマン渦およびそれに伴い高い推進力を発生させる点で好ましく、真円の中心からの奥行きの距離Xを、2R/3とすることがさらに好ましい。
【0024】
このように揺動棒の揺動に対応して水中で凹部が発生する推進力によって船舶を推進させることは、上述した特許文献にも一切記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第一実施形態に係る船舶推進装置を備えた船舶を示す側面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る船舶推進装置を示す正面図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る船舶推進装置を示す正面図である。
図4図3のX-X線拡大断面図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る船舶推進装置の他の態様を示す正面図である。
図6図5のY-Y線拡大断面図である。
図7】本発明の第一および第二実施形態における推進体の様々な形状をしたもので、(a)~(c)は断面図であり、(d),(e)は正面図である。
図8】本発明の第一および第二実施形態に係る船舶推進装置における推進体の振幅幅方向の径(回動幅方向の径)とその振幅幅(回動幅)との関係を示す説明図である。
図9】本発明の第一および第二実施形態に係る船舶推進装置の作用を示す平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1及び図2を参照して、本発明の第一実施形態に係る船舶推進装置10を説明する。図1は、船舶推進装置10を取付けた船舶1の側面図であり、図2は、前記船舶推進装置10の正面図で船舶1の後方からみた図である。
【0027】
本発明の第一実施形態に係る船舶推進装置10は、船舶1の後部に取付けられて、この船舶1を推進させる装置である。対象となる船舶1は、大型船、小型船、あるいは玩具の船などであり、特に限定されるものではない。
また、本実施形態の船舶推進装置10は船舶1を前進させるように取付けているが、これに限定されず、例えば、船舶1の前部に取付けてこの船舶1を後進させるように取付けることもできる。さらには、船舶1の側部に取付けて船舶を横方向あるいは斜め方向に進めることも可能である。
【0028】
この船舶推進装置10は、揺動棒11、揺動機構12および推進体13を備える。
揺動棒11は、上方から下方に延びる棒状で、そのほぼ下半部が水面Lより下位に配置され、その水面Lより上位の上部位置には支点Cが設けられる。なお、この支点Cは水面Lより下位に設けることもできる。揺動棒11は、支点Cを中心として船舶1の推進方向に直角に交差する方向に、(船舶1の推進方向を軸として場合にその軸を中心に)時計回り方向と反時計回り方向に交互に揺動する。
【0029】
揺動機構12は揺動棒11の上部に連結され、揺動棒11を、支点Cを中心として時計回り方向と反時計回り方向に交互に揺動させる。揺動機構12の構成は特に限定されず、モータ、減速機および回転部材などで構成することができる。
【0030】
推進体13は、揺動棒11の下端部に設けられ、船舶1の推進方向(前方)と逆の方向(後方)に開口する凹部13aを有する。この推進体13は、その凹部13aの正面(背面)形状が真円の半球殻形状である。また、推進体13の揺動の振幅幅W1は、図8に示すように、推進体13の振幅幅方向の径D1よりも小さく設定されている(より詳しくは、凹部13aの揺動の振幅幅W1は、凹部13aの振幅幅方向の径D1よりも小さく設定されている)。
【0031】
本実施形態に係る船舶推進装置10は次のように作動させることができる。
すなわち、揺動機構12を駆動すると、その上端部に連結されている揺動棒11が支点Cを中心にして時計回り方向と反時計回り方向に交互に揺動する。これに伴い、揺動棒11の下端部に設けられている推進体13が支点Cを中心として時計回り方向と反時計回り方向へ交互に揺動する。推進体13が揺動することにより、その凹部13aが水を掻いて水中に逆カルマン渦を発生させ、これにより一方向流による推進力を発生させて船舶1を推進(前進)させることができる。
【0032】
ここで、推進体13は半球殻形状であり、その凹部13aの正面形状が真円であるので、推進体13の揺動によって後方の左右二箇所において形成される渦の強さを均等にすることができる。これにより形成される一方向流により安定した推進力を得ることができる(図9参照)。
【0033】
また、半球殻形状の推進体13の外面13bは円滑な円弧面を形成するので、外面13bが受ける水の抵抗は小さく、推進体13の揺動を妨げない。従って、推進体13は十分な推進力を発生させることができる。
【0034】
また、推進体13の揺動の振幅幅W1は、推進体13の振幅幅方向の径D1よりも小さく設定されているので、より強い推進力を発生させることができる。これは、図9を参照して前述したように、推進体13の揺動の振幅幅W1が、推進体13の振幅幅方向の径D1よりも小さいと、往復する毎に2列状となり後方に連続的に渦が形成され、新しい渦によってその前に形成された渦が順次、後方に押し出される。こうした現象が繰り返されることにより、推進体の揺動の中央部分において、後方に流れる一方向流が形成され、強い推進力となる。従って、本実施形態に係る船舶推進装置10によれば、スクリューを用いることなく強い推進力を得ることができる。
【0035】
次に、図3および図4を参照して本発明の第二実施形態に係る船舶推進装置10を説明する。図3は、第二実施形態に係る船舶推進装置10の正面図であり、図4は、図3のX―X線断面図である。
【0036】
この船舶推進装置10も船舶1の後部に取付けられて、前記船舶1を推進(前進)させる装置であり、回動棒14、回転機構および推進体13を備える。なお、船舶1は大型船、小型船あるいは玩具の船であっても良い。また、この船舶推進装置10は、船舶1を後進させるものであっても良いし、横方向あるいは斜め方向に進めるものであっても良い。
【0037】
回動棒14は、支点Cを中心として船舶1の推進方向に直角に交差する方向に複数(本実施形態では四つ)等間隔で延びる棒状である。なお、支点Cは、船舶1の推進方向に延びる支点部材16の中心に形成される。従って、四つの回動棒14は、それぞれその基部が支点部材16の外周に等間隔で固定され、支点部材16(支点C)を中心として船舶1の推進方向に直角に交差する方向に、時計回り方向と反時計回り方向に回動する。
【0038】
回動機構15は、四つの回動棒14を時計回り方向と反時計回り方向に交互に回動させる機構を備える。従って、例えば、モータおよび減速機の他に、推進方向と直角に交差する方向に、回転板18によって往復移動する往復棒17を設け、その往復棒17と支点部材16とをラック/ピニオン(ピニオンラック)機構で係合させることができる。これにより、往復棒17を往復移動させることにより支点部材16(支点C)を中心として、四つの回動棒14を時計回り方向と反時計回り方向へ交互に回動させることができる。なお、往復棒17は、例えば、回動機構15を構成する回転体18、連結棒19およびシリンダ機構部20を介して往復移動させることができる。
【0039】
推進体13は、四つの回動棒14のそれぞれの先端部で水中に位置するように設けられ、船舶1の推進方向と逆の方向に開口する凹部13aを有する。この推進体13は、半球殻形状であり、その凹部13aの正面形状は真円である。また、推進体13(凹部13a)の回動の回動幅W2は、図8に示すように、推進体13(凹部13a)の回動幅方向の径D2よりも小さく設定している。
【0040】
本実施形態に係る船舶推進装置10は次のように作動することができる。
すなわち、モータを駆動して往復棒17を左右方向(推進方向と直角に交差する方向)に往復移動させる。これにより、往復棒17とラック/ピニオン機構を介して係合する支点部材16および支点部材16に固定された四つの回動棒14が時計回り方向と反時計回り方向へ交互に回動する。これにより、四つの回動棒14に固定された四つの推進体13も同様に交互に回動する。
【0041】
四つの推進体13が時計回り方向と反時計回り方向に交互に回動することにより、第一実施形態において推進体13を揺動させた場合と同じ原理により、各推進体13が水を掻いて水中に逆カルマン渦を発生させ、一方向流による推進力を生じさせて船舶1を前進させる。
【0042】
なお、各推進体13はその凹部13aの正面形状が真円の半球殻形状としているので、第一実施形態の場合と同様に、各推進体13の回動によってその後方の左右二箇所において形成される渦の強さを均等にすることができる。これにより形成される一方向流により安定した推進力を得ることができる。また、各推進体13の外面13bは円滑な円弧面を形成するので、水の抵抗が少なく、従って、各推進体13の回動を阻害しない。
【0043】
また、各推進体13の回動の回動幅W2を、推進体13の回動幅方向の径D2よりも小さく設定しているので、第一実施形態の場合と同様に、推進体13が回動する毎に、2列状となり後方に連続的に渦が形成され、新しい渦によってその前に形成された渦が順次、後方に押し出される。こうした現象が繰り返されることにより、推進体の揺動の中央部分において、後方に流れる一方向流が形成され、強い推進力となる。従って、本実施形態に係る船舶推進装置10によれば、スクリューを用いることなく強い推進力を発生させることができる。
【0044】
次に、図5および図6に第二実施形態に係る船舶推進装置10の他の態様を示す。この船舶推進装置10の特徴は、回動棒14を、推進体13を支点部材16の外周面に接触させた状態で、推進体13の裏側に直接設けたことである。これにより、船舶推進装置10の正面形状を小さくして小型化を図ることができる。
【0045】
なお、第一実施形態における推進体13の数は一つに限定されず、複数であっても良い。また、第二実施形態の推進体13の数は四つに限定されず、二つ、三つあるいは五つ以上であっても良い。また、第一および第二実施形態における推進体13の形状も、基本的には、水を掻いて一方向流による推進力を発生させることのできる凹部13aを備えていれば良く、従って、半球殻に限定されない。
【0046】
また、本実施形態に係る推進体13は、図7(a)に示すように、凹部13aの正面形状が真円である半球殻形状であり、真円の半径をRとした場合、真円の中心からの奥行きの距離Xを、真円の半径Rと同じRとしたが、図7(b)に示すように、真円の中心からの奥行きの距離XをR/2にしたり、図7(c)に示すように、真円の中心からの奥行きの距離Xを2R/3(R×(2/3))にしたりすることもできる。推進体13の搖動または回動により、凹部内にできた渦を容易に押し出すことができ、その結果、逆カルマン渦を効率的に発生させるには、図7(b)に示したように、真円の中心からの奥行きの距離Xを、R/2以上かつR以下にすることが好ましく、さらに、図7(c)に示したように、真円の中心からの奥行きの距離Xを、2R/3(R×(2/3))とすることがより好ましい。
また、図7(d),図7(e)に示すように、凹部13aの正面形状を真円ではなく楕円にした半球殻形状にすることもできるが、逆カルマン渦を効率的に発生させるには真円の方がよく、また同じ楕円であっても、横長(図7(d))の方が、縦長(図7(e))のものより水中における抵抗が少なく好ましい。
【0047】
本実施形態に係る発明の船舶推進装置は、大型、中型および小型の貨物船舶および旅客船舶や、玩具の船に適用することができる。また、水中を移動するいわゆる潜水艦にも適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 船舶
10 船舶推進装置
11 揺動棒
12 揺動機構
13 推進体
13a 凹部
13b 外面
14 回動棒
15 回動機構
16 支点部材
17 往復棒
18 回転体
19 シリンダ機構部
C 支点
D1 振幅幅方向の径
D2 回動幅方向の径
W1 振幅幅
W2 回動幅
L 水面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9