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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007784
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】波動歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
F16H1/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109110
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦彦
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA36
3J027FB40
3J027FC14
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC08
3J027GC13
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE14
(57)【要約】
【課題】中空構造化及び薄型化を図りながら、30以下の減速比を実現可能であり、簡単な構造で、ラチェッティングの発生を防止可能な波動歯車装置を提供すること。
【解決手段】本発明の波動歯車装置100a,100bは、サーキュラスプライン110と、ウェーブジェネレータ120と、出力部材130と、チェーン140とを備え、チェーン140が、サーキュラスプライン110の歯数より少ないリンク数のチェーンユニット141a,141bが回転軸方向に並列配置され相互に連結された2列以上のローラチェーンまたは2列以上のブシュチェーンからなり、ウェーブジェネレータ120の回転により一のチェーンユニット141aがサーキュラスプライン110と部分的に噛み合うと共に他のチェーンユニット141bが出力部材130と部分的に噛み合うように構成される。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力する回転運動を減速して出力する波動歯車装置であって、
サーキュラスプラインと、
前記サーキュラスプラインの内側において前記サーキュラスプラインと同軸に相対回転可能に配置されたウェーブジェネレータと、
前記サーキュラスプラインと同軸に相対回転可能に配置され前記サーキュラスプラインと異なる歯数の歯を有する出力部材と、
前記ウェーブジェネレータの外側に配置されたチェーンと
を備え、
前記チェーンは、前記サーキュラスプラインの歯数より少ないリンク数のチェーンユニットが回転軸方向に並列配置され相互に連結された2列以上のローラチェーンまたは2列以上のブシュチェーンからなり、前記ウェーブジェネレータの回転により一のチェーンユニットが前記サーキュラスプラインと部分的に噛み合うと共に他のチェーンユニットが前記出力部材と部分的に噛み合うように構成されることを特徴とする波動歯車装置。
【請求項2】
前記ウェーブジェネレータは、前記チェーンにおける少なくとも一のチェーンユニットを前記サーキュラスプラインまたは前記出力部材に押し付けるカム板を備え、
前記カム板は、前記チェーンを前記サーキュラスプライン及び前記出力部材に対し2か所以上の位置で噛み合わせるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の波動歯車装置。
【請求項3】
前記出力部材は、内周面に歯が形成された円環板部と、前記円環板部の外周縁から回転軸方向に延びるよう形成され前記サーキュラスプラインの周囲を囲む筒状部とを有し、
前記カム板は、回転軸方向において前記出力部材の円環板部と同一軸平面上に位置されていることを特徴とする請求項2に記載の波動歯車装置。
【請求項4】
前記ウェーブジェネレータが、前記カム板と、前記カム板と回転軸方向に対向して位置され前記カム板を回転させる駆動用モータに対し固定される固定板と、前記カム板と前記固定板とを連結する筒状の周壁とを有し、
前記カム板は、中央部に貫通孔を有し、
前記ウェーブジェネレータは、前記駆動用モータを内部に収容可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の波動歯車装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波動歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波動歯車装置は、大きな減速比が得られること及びバックラッシが小さいという特徴から、例えば産業ロボットや工作機械あるいは搬送装置の減速機として広く用いられている。
波動歯車装置は、主として、内周に歯が刻まれた環状の剛体からなるサーキュラスプライン(C/S)と、楕円形状のカムを備え波動運動を発生させるウェーブジェネレータ(W/G)と、外周に歯が刻まれ柔軟に撓む薄肉の金属弾性体からなるフレクスプライン(F/S)とにより構成される。
波動歯車装置においては、例えば、サーキュラスプラインを固定し、ウェーブジェネレータを入力として回転させると、ウェーブジェネレータの回転によりフレクスプラインとサーキュラスプラインとの噛み合い位置が順次移動し、これにより、サーキュラスプラインの歯とフレクスプラインの歯との歯数に応じた減速回転出力をフレクスプラインから得ることが可能となっている。サーキュラスプラインの歯数は、通常、フレクスプラインの歯数より2歯以上多くなるように設定される。
【0003】
波動歯車装置としては、フレクスプラインが薄肉のカップ形状をなす「カップ型」と称される波動歯車装置、フレクスプラインがシルクハット形状をなす「シルクハット型」と称される波動歯車装置、あるいは、フレクスプラインがフラット形状をなす「パンケーキ型」と称される波動歯車装置など、種々の構成のものが提案されている(例えば特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-065727号公報
【特許文献2】特開2018-076887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、波動歯車装置においては、フレクスプラインを撓ませながらフレクスプラインをサーキュラスプラインに対し部分的に噛み合わせる構造上、運転中に過度なトルクがかかったとき、フレクスプライン等が破損しないで、フレクスプラインの歯とサーキュラスプラインの歯の噛み合いが瞬間的にずれる歯飛び(ラチェッティング)が発生することがある、という問題がある。また、フレクスプラインを撓ませる量には限界があるため、小さい減速比を実現することが困難である。
さらにまた、高精度の回転伝達を実現するために、フレクスプライン、サーキュラスプライン及びウェーブジェネレータのすべてを高精度に作製することが必要となり、高度な加工技術が要求され加工負担が増加する、という問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、中空構造化及び薄型化を図りながら、30以下の減速比を実現可能であり、簡単な構造で、ラチェッティングの発生を防止可能な波動歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、入力する回転運動を減速して出力する波動歯車装置であって、サーキュラスプラインと、前記サーキュラスプラインの内側において前記サーキュラスプラインと同軸に相対回転可能に配置されたウェーブジェネレータと、前記サーキュラスプラインと同軸に相対回転可能に配置され前記サーキュラスプラインと異なる歯数の歯を有する出力部材と、前記ウェーブジェネレータの外側に配置されたチェーンとを備え、前記チェーンは、前記サーキュラスプラインの歯数より少ないリンク数のチェーンユニットが回転軸方向に並列配置され相互に連結された2列以上のローラチェーンまたは2列以上のブシュチェーンからなり、前記ウェーブジェネレータの回転により一のチェーンユニットが前記サーキュラスプラインと部分的に噛み合うと共に他のチェーンユニットが前記出力部材と部分的に噛み合うように構成されることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本請求項1に係る発明によれば、ローラチェーンまたはブシュチェーンの多角形運動によって、ローラチェーンまたはブシュチェーンをサーキュラスプライン及び出力部材に対し部分的に噛み合わせることでウェーブジェネレータを介して入力される回転運動が減速されて出力部材に伝達されるため、簡単な構造で、30以下の減速比が実現可能となると共にラチェッティングの発生を防止することが可能となる。
また、ローラチェーンまたはブシュチェーンを用いることで、波動歯車装置の強度が向上し、許容伝達トルクの向上を図ることができると共に、アライメントを吸収することが可能となるため、サーキュラスプライン及び出力部材に対して高い寸法精度が要求されず、精密な調整が不要となり、加工負担の軽減及び組立性の向上を図ることができる。
しかも、2列以上のローラチェーンまたは2列以上のブシュチェーンを用いることで、サーキュラスプラインと出力部材とを回転軸方向において互いに異なる軸平面に配置することが可能となるため、チェーンからの力をラジアル方向にて受け取り伝達することができる。これにより、波動歯車装置の中空構造化及び薄型化を図ることが可能となると共に減速比の設計を容易に行うことが可能となる。
【0009】
本請求項2に係る構成、本請求項3に係る構成及び本請求項4に係る構成のいずれか一の構成もしくはこれらを組み合わせた構成によれば、出力部材をサーキュラスプラインの外側に配置してインホイールモータ化することで、波動歯車装置を薄型化し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る波動歯車装置の一構成例を示す図である。
図2図1に示す波動歯車装置の構成を概略的に示す、回転軸に沿った断面図である。
図3】サーキュラスプラインの構成を示す斜視図である。
図4】ウェーブジェネレータの構成を示す斜視図である。
図5】出力部材の構成を示す斜視図である。
図6】チェーンの一構成例を概略的に示す斜視図である。
図7図1に示す波動歯車装置の動作説明図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る波動歯車装置の一構成例を示す図である。
図9図8に示す波動歯車装置の構成を概略的に示す、回転軸に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る波動歯車装置について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る波動歯車装置の一構成例を示す図、図2は、図1に示す波動歯車装置の構成を概略的に示す、回転軸に沿った断面図である。
この波動歯車装置100aは、回転軸Oに沿って延びるよう配置されたサーキュラスプライン110と、サーキュラスプライン110の内側においてサーキュラスプライン110と同軸に回転可能に配置されたウェーブジェネレータ120と、サーキュラスプライン110と同軸にサーキュラスプライン110に対し相対回転可能に配置された出力部材130と、ウェーブジェネレータ120の外側に配置されウェーブジェネレータ120の回転によりサーキュラスプライン110及び出力部材130の各々と部分的に噛み合うチェーン140と、ウェーブジェネレータ120を回転駆動させる駆動用モータ150とを備える。
【0012】
サーキュラスプライン110は、図3にも示すように、内周面に歯112が形成された円環板部111と、円環板部111の外周縁から回転軸方向に延びる筒状部113と、筒状部113の内周面における開口端部に一体に設けられた平面視十字状の底板部114とを有する。
【0013】
本実施形態におけるウェーブジェネレータ120は、チェーン140を周方向において等角度間隔の2か所の位置でサーキュラスプライン110及び出力部材130の各々と噛み合わせるよう構成されている。
具体的には、ウェーブジェネレータ120は、図4にも示すように、中央部に貫通孔122を有する楕円形状のカム板121と、カム板121と回転軸方向に対向して位置され駆動用モータ150に対し固定される固定板124と、カム板121と固定板124とを連結する筒状の周壁123とを有し、駆動用モータ150を内部に収容可能に構成されている。
本実施形態においては、ウェーブジェネレータ120は、カム板121が回転軸方向においてサーキュラスプライン110の円環板部111と異なる軸平面上に位置されるように、配置される。
【0014】
出力部材130は、図5にも示すように、内周面に歯132が形成された円環板部131と、円環板部131の外周縁から回転軸方向に延びるよう形成されサーキュラスプライン110の周囲を囲む筒状部133とを有する。
出力部材130の歯132は、サーキュラスプライン110の歯112の歯数と異なる歯数で形成され、例えば、サーキュラスプライン110の歯112の歯数より少なくとも2歯数以上少ない歯数で形成される。
本実施形態における出力部材130は、円環板部131が回転軸方向においてカム板121と同一軸平面上に位置されるよう配置されている。
出力部材130における筒状部133の内周面と、サーキュラスプライン110の筒状部113の外周面との間にはベアリング135が配置されており、出力部材130は、サーキュラスプライン110に対し相対回転可能に設けられている。
【0015】
チェーン140は、例えば図6に示すように、2つのチェーンユニット141a,141bが回転軸方向に並列配置され相互に連結された2列のローラチェーンからなり、ウェーブジェネレータ120の回転により一方のチェーンユニット141aがサーキュラスプライン110と部分的に噛み合うと共に他方のチェーンユニット141bが出力部材130と部分的に噛み合うように構成される。なお、図2においては、一方のチェーンユニット141aの中心線C1、他方のチェーンユニット141bの中心線C2のみが示してある。
【0016】
一方のチェーンユニット141a及び他方のチェーンユニット141bの各々は、サーキュラスプライン110の歯数より2以上少ないリンク数となるよう構成されており、サーキュラスプライン110の歯数と一方のチェーンユニット141a及び他方のチェーンユニット141bのリンク数との差に応じた減速比が得られるようになっている。本実施形態では、一方のチェーンユニット141a及び他方のチェーンユニット141bは、出力部材130の歯数と同じリンク数で構成されているが、一方のチェーンユニット141a及び他方のチェーンユニット141bのリンク数は、出力部材130の歯数と異なっていてもよい。
【0017】
以下、本実施形態に係る波動歯車装置100aの動作を図7に基づいて説明する。
図7は、サーキュラスプライン110を固定し、ウェーブジェネレータ120を周方向半時計方向に回転させたときの、サーキュラスプライン110と一方のチェーンユニット141aとの噛み合い位置の経時的変化を(a)から(f)の順で示しており、理解を容易にするために、一方のチェーンユニット141aの所定位置にマーカMを付してある。なお、図7においては、サーキュラスプライン110の歯数及び一方のチェーンユニット141aのリンク数を図1に示すものより少なくし、波動歯車装置100aの要部の構成を簡略化して示してある。
本実施形態の波動歯車装置100aにおいては、サーキュラスプライン110を固定し、ウェーブジェネレータ120を周方向半時計方向に回転させると、サーキュラスプライン110と一方のチェーンユニット141aとの噛み合い位置が周方向半時計方向に順次に移動する。
図7(g)に示すように、ウェーブジェネレータ120が周方向に半回転した状態では、一方のチェーンユニット141aは、サーキュラスプライン110に対しサーキュラスプライン110の1歯分、周方向時計方向に移動した状態となる。
【0018】
従って、他方のチェーンユニット141bは、一方のチェーンユニット141aと一体に移動するので、他方のチェーンユニット141bと周方向に等角度間隔の2か所の位置で噛み合う出力部材130は、他方のチェーンユニット141bからの力を受けてサーキュラスプライン110の歯数と一方のチェーンユニット141a及び他方のチェーンユニット141bのリンク数との差に応じた減速比で周方向時計方向に回転することとなる。図7に示した例においては、サーキュラスプライン110の歯数が12であり、一方のチェーンユニット141a及び他方のチェーンユニット141bのリンク数が10であることから、波動歯車装置100aの減速比は5となる。
【0019】
而して、上記構成の波動歯車装置100aによれば、ローラチェーンの多角形運動によって、ローラチェーンをサーキュラスプライン110及び出力部材130に対し部分的に噛み合わせることでウェーブジェネレータ120を介して入力される回転運動が減速されて出力部材130に伝達されるため、簡単な構造で、30以下の低減速比を実現可能となると共にラチェッティングが発生することを防止することが可能となる。
【0020】
また、ローラチェーンを用いることで、波動歯車装置100aの強度が向上し、許容伝達トルクの向上を図ることができると共に、アライメントを吸収することが可能となるため、サーキュラスプライン110及び出力部材130に対して高い寸法精度が要求されず、精密な調整が不要となり、加工負担の軽減及び組立性の向上を図ることが可能となる。
【0021】
しかも、2列のローラチェーンを用いることで、サーキュラスプライン110と出力部材130とを回転軸方向において互いに異なる軸平面上に配置することが可能となるため、チェーン140からの力をラジアル方向にて受け取り伝達することができる。これにより、波動歯車装置100aの中空構造化及び薄型化を図ることが可能となると共に減速比の設計を容易に行うことが可能となる。
【0022】
以上、本発明の一実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
例えば、上記の実施形態においては、入力する回転動力を所定の減速比に減速して出力として取り出す出力部材130が、サーキュラスプライン110の外側に配置された構成(外輪出力モデル)のものについて説明したが、出力部材130がチェーン140の内側に配置された構成(内輪出力モデル)であってもよい。
【0023】
図8は、本発明の他の実施形態に係る波動歯車装置の一構成例を示す図、図9は、図8に示す波動歯車装置の構成を概略的に示す、回転軸に沿った断面図である。
この波動歯車装置100bにおいては、カム板121が回転軸方向においてサーキュラスプライン110の円環板部111と同一軸平面上に位置されるようにウェーブジェネレータ120が配置されている。
本実施形態における出力部材130は、外歯車により構成され、回転軸方向においてカム板121と異なる軸平面上に位置されるように、ウェーブジェネレータ120に対しベアリング135を介して相対回転可能に配置されている。出力部材130の歯132は、サーキュラスプライン110の歯112より少なくとも2つ以上少ない歯数で形成されている。
チェーン140は、例えば2列のローラチェーンからなり、ウェーブジェネレータ120の回転により一方のチェーンユニットがサーキュラスプライン110と部分的に噛み合うと共に他方のチェーンユニットが出力部材130と部分的に噛み合うように構成されている。図9におけるC1は、一方のチェーンユニットの中心線、C2は他方のチェーンユニットの中心線である。
【0024】
本実施形態の波動歯車装置100bにおいては、ウェーブジェネレータ120を介して入力される回転動力が所定の減速比で減速されてチェーン140の内側に配置された出力部材130により取り出される。
このような構成の波動歯車装置100bにおいても、上記実施形態に係る波動歯車装置100aと同様の効果を得ることができる。
【0025】
また、上記の実施形態においては、チェーンとして2列のローラチェーンを用いた構成について説明したが、チェーンはローラチェーンに限定されず、ブシュチェーンであってもよい。また、チェーンは、3つ以上のチェーンユニットが回転軸方向に並列配置され相互に連結された3列以上のローラチェーンまたは3列以上のブシュチェーンであってもよい。
さらにまた、上記の実施形態においては、ウェーブジェネレータがチェーンをサーキュラスプライン及び出力部材に対し2か所の位置で噛み合わせるよう楕円形状のカム板を備えた構成とされたものについて説明したが、ウェーブジェネレータは、チェーンをサーキュラスプライン及び出力部材に対し周方向において等角度間隔の3か所以上の位置で噛み合わせるよう構成されていてもよい。また、上記の実施形態においては、ウェーブジェネレータのカム板が一方のチェーンユニットのみを押し付けるよう配置された構成のものについて説明したが、カム板は、楕円状カム板が2つのチェーンユニットの各々を押し付けるよう配置された構成とされていてもよい。
【0026】
以上のように、本発明に係る波動歯車装置は、中空構造化及び薄型化が図られたものであり、他の回転体との同心配置が可能であるので、例えば減速機付インホイールモータを構成する場合にはホイール内部の空間を効率よく利用することが可能である。また、例えば、遊星歯車機構と組み合わせることで2段階の減速機として構成することが可能となる。
また、本発明に係る波動歯車装置は、バックドライブしないため、例えばテニスポールのハンドル部分といった動力なしの滑車に代えて利用される場合や、昇降体向けのパワードライブなどに利用される場合に、極めて有用である。本発明に係る波動歯車装置を例えば昇降体向けのパワードライブに利用した場合には、電源消失時にブレーキされ昇降体の落下を防ぐことが可能となり、昇降体の駆動モータに電磁ブレーキを設けることが不要となる。
【符号の説明】
【0027】
100a ・・・ 波動歯車装置
100b ・・・ 波動歯車装置
110 ・・・ サーキュラスプライン
111 ・・・ 円環板部
112 ・・・ 歯
113 ・・・ 筒状部
114 ・・・ 底板部
120 ・・・ ウェーブジェネレータ
121 ・・・ カム板
122 ・・・ 貫通孔
123 ・・・ 周壁
124 ・・・ 固定板
130 ・・・ 出力部材
131 ・・・ 円環板部
132 ・・・ 歯
133 ・・・ 筒状部
135 ・・・ ベアリング
140 ・・・ チェーン
141a ・・・ 一方のチェーンユニット
141b ・・・ 他方のチェーンユニット
150 ・・・ 駆動用モータ
C1 ・・・ 一方のチェーンユニットの中心線
C2 ・・・ 他方のチェーンユニットの中心線
O ・・・ 回転軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9