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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007786
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】床梁の高さ調整方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20240112BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240112BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
E02D27/00 B
E02D27/00 C
E04B1/58 510A
E04B1/24 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109112
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】馬場 峰雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 沙帆
(72)【発明者】
【氏名】藤山 晴司
【テーマコード(参考)】
2D046
2E125
【Fターム(参考)】
2D046AA03
2D046AA12
2E125AA13
2E125AA52
2E125AB01
2E125AC15
2E125AE04
2E125AG03
2E125AG08
2E125AG12
2E125AG13
2E125BA12
2E125BA24
2E125BA26
2E125BB15
2E125BB22
2E125BB36
2E125BD01
2E125BE02
2E125BE04
2E125BF08
2E125CA05
2E125CA14
2E125CA31
2E125CA44
2E125EA05
(57)【要約】
【課題】床梁の高さ調整を可能にした、床梁の高さ調整方法を提供すること。
【解決手段】床梁の高さ調整方法であり、床梁受け材30は基礎10の側面12に当接される当接片31と、基礎10の天端11に係止される係止片32とを有し、係止片32には、天端11に反力を取って床梁受け材30を昇降させる高さ調整ボルト43が取り付けられ、当接片31と側面12が第1ボルト41により固定され、支持片33と床梁50が第2ボルト42により固定されている、接続構造80を仮に形成するA工程と、第1ボルト41を緩め、高さ調整ボルト43を締め込んで天端11と係止片32の間に第1クリアランスC1を設けて高さ調整プレート70を差し込み、高さ調整ボルト43を緩めて係止片32を高さ調整プレート70に当接させることにより床梁50の高さ調整を行い、第1ボルト41を締めて接続構造90を形成するB工程とを有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に対して床梁受け材が接続され、該床梁受け材が鉄骨造の床梁を支持する、床梁と基礎の接続構造において、該床梁の高さを調整する、床梁の高さ調整方法であって、
前記床梁受け材は、
前記基礎の側面に当接される、当接片と、
前記当接片の背面から基礎側に延びて前記基礎の天端に係止される、係止片と、
前記当接片の前面から基礎と反対側に延びて前記床梁を支持する、支持片とを有し、
前記係止片には、前記基礎の天端に反力を取って該床梁受け材を昇降させる高さ調整ボルトが取り付けられ、前記当接片と前記基礎の側面が第1ボルトにより固定され、前記支持片と前記床梁が第2ボルトにより固定されている、前記接続構造を仮に形成する、A工程と、
前記第1ボルトを緩め、高さ調整ボルトを締め込んで前記基礎の天端と前記係止片の間に第1クリアランスを設け、該第1クリアランスに高さ調整プレートを差し込み、該高さ調整ボルトを緩めて該係止片を該高さ調整プレートに当接させることにより床梁の高さ調整を行い、前記第1ボルトを締めて前記接続構造を形成する、B工程とを有することを特徴とする、床梁の高さ調整方法。
【請求項2】
前記A工程において、前記当接片と前記床梁の端部との間に第2クリアランスがある場合に、前記B工程では、前記高さ調整ボルトを締め込む前に、該第2クリアランスに楔を差し込むことを特徴とする、請求項1に記載の床梁の高さ調整方法。
【請求項3】
前記当接片には、縦方向に延びている長孔の第1ボルト孔が開設されており、
前記B工程において、前記係止片を上げて前記第1クリアランスを設ける際に、緩められた前記第1ボルトに対して前記第1ボルト孔が上方に移動することを特徴とする、請求項1又は2に記載の床梁の高さ調整方法。
【請求項4】
前記B工程では、厚みの異なる複数種の前記高さ調整プレートから、調整すべき高さに相当する厚みの該高さ調整プレートを選定して使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の床梁の高さ調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床梁の高さ調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
布基礎等の基礎に対して、取り付け治具(床梁受け材)を介して床梁を接続し、複数の床梁により床材(床面材や、床パネル材等)を支持する構造においては、様々な態様の床梁受け材が適用されて床梁と基礎の接続が図られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、作業のための床下空間を確保できる床梁支持構造が提案されている。この床梁支持構造において、床梁は、ウェブと、ウェブの上縁に接合された上部フランジと、ウェブの下縁に接合された下部フランジと、梁端部の端面を覆う端板部と、上部フランジと下部フランジとの間に設けられたスチフナとを備え、ウェブの梁端部は、下端部が切り欠かかれて形成され、床梁の上部フランジから下部フランジまでの長さ(梁成)は、長手方向の両側に位置する梁端部が梁中央部より低くなっている。
【0004】
床梁支持構造はさらに、梁端部の一部を受けるとともに建物躯体に取り付けられたブラケットと、ブラケットと梁端部とを接合する接合部材とを備え、接合部材は、下部フランジの接合片部に予め接合されたナットと、ナットに螺合されるボルトとを備えており、接合片部におけるナットに対応する位置には、ボルト挿通孔が形成されている。ブラケットは取付片部を備え、建物躯体の側面に当接する平板部と、平板部の上端縁に接合され、建物躯体の上面に係止される係止片部とを備えている。ブラケットの取付片部を建物躯体に取り付けておき、その後、ブラケットの本体部に床梁の梁端部が支持されることにより、床梁支持構造が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-209705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の床梁支持構造によれば、建物躯体に取り付けられているブラケットと接合部材とにより、長手方向の両側に位置する梁端部の梁成が梁中央部より低くなっている床梁を建物躯体に接続することができ、作業のための床下空間を確保することができる。
【0007】
ところで、基礎の天端は、建物の各種高さ制限遵守等の観点から、基本的には設計レベル通り、もしくは設計レベルに対して若干低めに施工するのが一般的であり、そのために、基礎に床梁を取り付ける際には、床梁の高さを設計レベルに上げる高さ調整が一般に行われる。しかしながら、特許文献1に記載のブラケットや接合部材には、床梁の高さを調整する手段の開示はない。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、基礎に対して床梁受け材を介して床梁を接続するに当たり、床梁の高さ調整を可能にした、床梁の高さ調整方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による床梁の高さ調整方法の一態様は、
基礎に対して床梁受け材が接続され、該床梁受け材が鉄骨造の床梁を支持する、床梁と基礎の接続構造において、該床梁の高さを調整する、床梁の高さ調整方法であって、
前記床梁受け材は、
前記基礎の側面に当接される、当接片と、
前記当接片の背面から基礎側に延びて前記基礎の天端に係止される、係止片と、
前記当接片の前面から基礎と反対側に延びて前記床梁を支持する、支持片とを有し、
前記係止片には、前記基礎の天端に反力を取って該床梁受け材を昇降させる高さ調整ボルトが取り付けられ、前記当接片と前記基礎の側面が第1ボルトにより固定され、前記支持片と前記床梁が第2ボルトにより固定されている、前記接続構造を仮に形成する、A工程と、
前記第1ボルトを緩め、高さ調整ボルトを締め込んで前記基礎の天端と前記係止片の間に第1クリアランスを設け、該第1クリアランスに高さ調整プレートを差し込み、該高さ調整ボルトを緩めて該係止片を該高さ調整プレートに当接させることにより床梁の高さ調整を行い、前記第1ボルトを締めて前記接続構造を形成する、B工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、床梁受け材が、基礎の天端に反力を取って自身を昇降させる高さ調整ボルトを備え、A工程において、床梁受け材を形成する当接片と基礎の側面が第1ボルトにより固定され、床梁受け材を形成する支持片と床梁が第2ボルトにより固定されている接続構造を仮に形成した後、B工程において、第1ボルトを緩め、高さ調整ボルトを締め込んで基礎の天端と係止片の間に第1クリアランスを設けて高さ調整プレートを差し込み、高さ調整ボルトを緩めて係止片を高さ調整プレートに当接させることにより、床梁の高さ調整を行った後に接続構造を形成することができる。
【0011】
また、床梁の高さ調整方法において上記構成の床梁受け材を適用することにより、基礎の天端に対して床梁や柱を固定するボルト(アンカーボルト)が集中することを解消できる。従来の床梁受け材は、基礎や土台の天端にアンカーボルトが集中する傾向にあり、鉄骨柱を固定するアンカーボルトを含めるとさらにアンカーボルトが天端に集中するといった課題がある。
【0012】
ここで、基礎には、鉄筋コンクリート造の布基礎や鉄骨造の基礎(土台)など、様々な形態の基礎が含まれる。また、床梁には、H形鋼や角形鋼管等からなる鉄骨梁の他、鉄筋コンクリート製のプレキャスト梁等が含まれる。
【0013】
また、本発明による床梁の高さ調整方法の他の態様は、
前記A工程において、前記当接片と前記床梁の端部との間に第2クリアランスがある場合に、前記B工程では、前記高さ調整ボルトを締め込む前に、該第2クリアランスに楔を差し込むことを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、当接片と床梁の端部との間に第2クリアランスがある場合に、高さ調整ボルトを締め込む前に第2クリアランスに楔を差し込んで当接片と床梁のがたつきを解消することにより、床梁受け材と床梁の全体をスムーズに上昇させることが可能になる。
【0015】
床梁は、対向する基礎内に納める関係から、対向する基礎の間の長さよりも若干短めに加工されているのが一般的であり、そのため、基礎の側面に当接するようにして配設された床梁受け材の当接片と床梁の端部との間には、僅かなクリアランス(第2クリアランス)が生じる。この第2クリアランスがあるまま、床梁受け材と床梁の全体の高さを上げる調整を行おうとすると、床梁受け材が第2クリアランス分だけ床梁側に倒れ込んでしまい、床梁受け材と床梁の全体をスムーズに上昇させることができない。また、床梁の高さ調整を行い、第1クリアランスに対して調整プレートを挿入した後に、床梁受け材と床梁の全体を降下させる場合も、第2クリアランスによって床梁受け材と床梁の全体が斜め姿勢となり、ボルト孔に高さ調整ボルトがかんでしまい、降下し難くなってしまう。そこで、第2クリアランスに楔を差し込んで当接片と床梁のがたつきを解消し、床梁受け材と床梁の一体化を図ることにより、これらの課題を簡易かつ効果的に解消することが可能になる。
【0016】
また、本発明による床梁の高さ調整方法の他の態様において、
前記当接片には、縦方向に延びている長孔の第1ボルト孔が開設されており、
前記B工程において、前記係止片を上げて前記第1クリアランスを設ける際に、緩められた前記第1ボルトに対して前記第1ボルト孔が上方に移動することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、当接片に開設されている第1ボルト孔が長孔であり、当該長孔が基礎に対する当接片の縦方向の位置調整手段を形成していることにより、当接片を含む床梁受け材の全体の縦方向(例えば鉛直方向)の現地における高さ調整が可能になる。
【0018】
例えば、基礎の側面にインサートナットが埋設され、床梁受け材の当接片が側面に当接され、第1ボルト孔とインサートナットが位置合わせされ、第1ボルトにてボルト接合される。基礎の側面に対して床梁受け材が上昇する際には、緩んだ状態でインサートナットに係止されている第1ボルトに対して長孔が上方にスライドし、床梁受け材の高さ調整が最終的に行われた後に、第1ボルト孔を介してインサートナットに対して第1ボルトを締め付けることにより、基礎に対する床梁受け材の位置が設定されることから、長孔である第1ボルト孔は床梁受け材の位置調整手段となる。
【0019】
また、本発明による床梁の高さ調整方法の他の態様において、
前記B工程では、厚みの異なる複数種の前記高さ調整プレートから、調整すべき高さに相当する厚みの該高さ調整プレートを選定して使用することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、厚みの異なる複数種の高さ調整プレートが用意されていることにより、様々な調整高さに床梁受け材と床梁を調整した後に、床梁を支持する床梁受け材を基礎に対して安定的に接続することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明から理解できるように、本発明の床梁の高さ調整方法によれば、基礎に対して床梁受け材を介して床梁を接続するに当たり、床梁の高さ調整を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る床梁の高さ調整方法に適用される、床梁受け材の一例の分解斜視図を、床梁受け材が取り付けられる基礎とともに示す図である。
図2】床梁受け材の一例が基礎に取り付けられている状態を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る床梁の高さ調整方法の一例のA工程を説明する図である。
図4】A工程にて仮に形成された、床梁と基礎の接続構造の一例の斜視図である。
図5】実施形態に係る床梁の高さ調整方法の一例のB工程を説明する図である。
図6図5に続いて、床梁の高さ調整方法の一例のB工程を説明する図である。
図7図6に続いて、床梁の高さ調整方法の一例のB工程を説明する図である。
図8図7に続いて、床梁の高さ調整方法の一例のB工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態に係る床梁の高さ調整方法の一例を、当該高さ調整方法に適用される床梁受け材と、当該高さ調整方法により形成される床梁と基礎の接続構造の一例とともに、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0024】
[実施形態に係る床梁の高さ調整方法]
図1乃至図8を参照して、実施形態に係る床梁の高さ調整方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る床梁の高さ調整方法に適用される、床梁受け材の一例の分解斜視図を、床梁受け材が取り付けられる基礎とともに示す図であり、図2は、床梁受け材の一例が基礎に取り付けられている状態を示す斜視図である。また、図3乃至図8は順に、実施形態に係る床梁の高さ調整方法の一例の工程図であり、詳細には、図3は、実施形態に係る床梁の高さ調整方法の一例のA工程を説明する図であり、図4は、A工程にて仮に形成された、床梁と基礎の接続構造の一例の斜視図である。また、図5乃至図8は順に、実施形態に係る床梁の高さ調整方法の一例のB工程を説明する図である。
【0025】
図1では、一定の方向に所定の長さを有する布基礎10(基礎の一例)の一部を切断して示しており、コンクリート内に埋設されている主筋やあばら筋等の図示を省略している。例えば、平面視矩形枠状に布基礎10が設けられ、矩形の長手方向に延びる一対の布基礎10に対して、複数の床梁50が架設されることにより、1階の床を支持する床梁支持枠が形成されるが、その全体構造の図示は省略し、ここでは、床梁受け材30を介して接続される布基礎10と床梁50の接続構造について説明する。尚、図1を含めて以下の説明では、例えば鉄骨柱20の長手方向に沿う方向を縦方向とし、布基礎10の長手方向を横方向とする。縦方向は例えば鉛直方向であり、横方向は例えば水平方向である。
【0026】
布基礎10は長手方向に長い直方体状を呈し、その天端面11には、取り付け金具21を介して鉄骨柱20が固定される。鉄骨柱20は、角形鋼管やH形鋼等の形鋼材により形成されるが、図示例の鉄骨柱20は角形鋼管により形成される。
【0027】
取り付け金具21は、複数の鋼板がブロック状に溶接されることにより形成され、中央を隔てる縦の鋼板の左右にそれぞれアンカーボルト25が配設され(図1では、その一方のアンカーボルト25を図示)、下方の鋼板にある不図示のボルト孔を介してアンカーボルト25が布基礎10の内部に固定されている。
【0028】
鉄骨柱20の下端と取り付け金具21の上方の鋼板は、溶接により接合されている。ここで、図示例の取り付け金具21に代わり、鋼板(ベースプレート)が鉄骨柱20の下端に溶接接合され、ベースプレートに開設されているボルト孔にアンカーボルトが挿通される形態であってもよい。
【0029】
床梁受け材30は、基礎10の側面12に当接される当接片31と、当接片31の背面(基礎10側の面)から基礎10側に延びて、基礎10の天端11に係止される係止片32と、当接片31の前面(床梁50側の面)から基礎10と反対側に延びて床梁50を支持する支持片33とを有しており、全体の側面視形状は略Z形を呈している。
【0030】
図示例は、当接片31の背面の上方のうち、基礎10の側面12に当接片31が当接された際に鉄骨柱20を挟む位置に、2つの係止片32が配設されている。ここで、係止片32は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0031】
また、支持片33は、当接片31の前面の下方の中央位置に取り付けられており、床梁50を支持するのに必要十分な長さを有している。
【0032】
当接片31の左右には2つの第1ボルト孔34が開設されており、第1ボルト孔34は縦方向に延びている長孔である。
【0033】
基礎10の側面12には、2つのインサートナット15が埋設されてその開口が側面12に臨んでおり、2つの第1ボルト孔34は、当接片31において各インサートナット15の開口に対応する位置に設けられている。
【0034】
基礎10の側面12に対して当接片31が当接するようにX3方向に当接片31を近接させ、同時に基礎の天端面11に2つの係止片32を係止させた際に、各インサートナット15の開口と第1ボルト孔34が位置合わせされ、当接片31の前方から第1ボルト41をX4方向に挿通してインサートナット15に螺合することにより、当接片31を含む床梁受け材30が基礎10の側面12に固定される。
【0035】
このように、床梁受け材30は基礎10の天端面11でなく、側面12にボルト固定されることから、基礎10の天端面11に複数のアンカーボルトやボルトが集中(錯綜)することが解消される。
【0036】
支持片33には、2つの第2ボルト孔35が開設されており、図4に示すようにH形鋼により形成される床梁50の下フランジ51に開設されている第3ボルト孔52(図3参照)に位置合わせされ、第2ボルト42を介して支持片33と床梁50が固定されるようになっている。
【0037】
第2ボルト42は、床梁50の下フランジ51の第3ボルト孔52に挿通された後、図1に示すように介在片37の第4ボルト孔38をX2方向に挿通され、次いで支持片33の第2ボルト孔35をX1方向に挿通されることになる。
【0038】
ここで、第2ボルト孔35と第3ボルト孔52は、挿通される第2ボルト42が螺合する孔径を有している。例えば、第2ボルト孔35と第3ボルト孔52に製作上もしくは施工上の公差がある場合に、第2ボルト孔35と第3ボルト孔52に第2ボルト42を挿通することができない。
【0039】
そこで、第2ボルト孔35と第3ボルト孔52よりも大径の第4ボルト孔38が開設されている介在片37が、支持片33の上面に例えば溶接により予め固定されている。より詳細には、2つの第2ボルト孔35に対して、対応する2つの第4ボルト孔38が双方の円心を合わせた状態で支持片33と介在片37が固定される。
【0040】
相対的に大径の第4ボルト孔38が第2ボルト孔35と第3ボルト孔52の間に介在することにより、第2ボルト42を斜め方向に挿入して、第2ボルト42の先端を第3ボルト孔52に案内した後、第2ボルト42を締め付けることにより、例えば床梁50がその長手方向にスライドされ、図3に示すように、第2ボルト42にて床梁50と支持片33を介在片37を介して接続することが可能になる。従って、第4ボルト孔38を備えた介在片37は、第2ボルト42と第3ボルト孔52の間に公差がある際に、第2ボルト42の挿通を案内して双方のボルト接合を可能にする、交差時ボルト案内手段となる。
【0041】
図2に戻り、係止片32には、第5ボルト孔36が開設されており、第5ボルト孔36には、基礎10に対する係止片32を含む床梁受け材30の高さ調整用の高さ調整ボルト43が螺合されている。
【0042】
図2に示すように、基礎10に対して床梁受け材30を上下方向(縦方向)に移動自在に第1ボルト41を緩めに締め付けて仮固定した後、高さ調整ボルト43を締め付けたり緩めたりすることにより、高さ調整ボルト43の先端が基礎10の天端11に反力を取って、係止片32を含む床梁受け材30の全体を上下へY1方向に昇降させることができる。
【0043】
この高さ調整の際に、当接片31に開設されている第1ボルト孔34が縦方向に延びている長孔であることにより、長孔の範囲内で当接片31を上下に昇降させることが可能になる。従って、第1ボルト孔34は、床梁受け材30の縦方向の位置調整手段となる。
【0044】
床梁受け材30の高さ調整は、実際には床梁50の高さ調整を目的とするものであることから、実際には、支持片33に対して床梁50がボルト接合された状態で、高さ調整ボルト43にて床梁受け材30と床梁50を上下に昇降することにより、床梁50の天端が所定の設計レベルに調整される。
【0045】
図2に示すように、基礎10の側面12に固定されている床梁受け材30に床梁50が固定されることにより形成される、図8に示す接続構造90は、基礎10に対して床梁50の高さ調整や水平調整(横方向の調整)が現場にて容易に行われた後に形成される。また、既に説明したように、基礎10の天端面11において、鉄骨柱20を固定するアンカーボルト25をはじめとして、多数のアンカーボルトやボルトが集中することも解消される。
【0046】
基礎10の天端は、建物の各種高さ制限遵守等の観点から、設計レベルに対して若干低めに施工されている。そのため、基礎10に床梁50を取り付ける際には、床梁50の高さを設計レベルに上げる高さ調整が行われる。
【0047】
そこで、床梁の高さ調整方法では、まず、図4に示すように、床梁50の天端が設計レベルに設定されていない状態である、床梁と基礎の仮接続構造80を形成する(以上、接続構造を仮に形成する、A工程)。
【0048】
図5に示すように、仮接続構造80では、当接片31と床梁50の端部53との間に第2クリアランスC2がある。床梁50は、図示する基礎10と不図示の対向する別途の基礎との間に収容される関係から、これら一対の基礎の間の長さに対して若干短めに加工されているのが一般的である。そのため、床梁受け材30の当接片31と床梁50の端部53との間には、図示例のように僅かな第2クリアランスC2が一般に生じる。
【0049】
この第2クリアランスC2があるまま、床梁受け材30と床梁50の全体の高さを上げる調整を行おうとすると、床梁受け材30が第2クリアランスC2分だけ床梁50側に倒れ込んでしまい、床梁受け材30と床梁50の全体をスムーズに上昇させることができない。
【0050】
そこで、図5に示すように、第2クリアランスC2に楔60を差し込んで(打ち込んで)当接片31と床梁50のがたつきを解消し、双方の一体化を図る。ここで、仮に当接片31と床梁50の端部53との間に第2クリアランスC2がない場合は、楔60の差し込みは不要となる。
【0051】
次に、図6に示すように、第1ボルト41をY2方向に緩めた後、高さ調整ボルト43をY3方向に締め込むことにより、基礎10の天端11に反力を取って、床梁50を支持する床梁受け材30を上方へY4方向に移動(上昇)させる。
【0052】
床梁受け材30が上方へ移動することにより、係止片32と基礎10の天端11との間に第1クリアランスC1が形成される。
【0053】
次に、図7に示すように、第1クリアランスC1に対して、床梁50を所定の設計レベルに設置する厚みを備えた高さ調整プレート70を差し込む。高さ調整プレート70は、平面視形状が矩形で矩形の内部に凹部を備えており、もしくは、凹部を備えた平面視形状がコの字状もしくはUの字状を呈している。ここで、現場には、様々な厚みの高さ調整プレート70が用意されており、形成された第1クリアランスC1の厚みに応じた厚さの高さ調整プレート70が選定され、第1クリアランスC1に差し込まれるとともに、高さ調整プレート70の凹部に高さ調整ボルト43が遊嵌される。
【0054】
次に、図8に示すように、高さ調整ボルト43をY5方向に緩めて床梁受け材30と床梁50の全体をY6方向に下げ、係止片32を高さ調整プレート70に当接させることにより、床梁50の高さが設計レベルに調整された状態で、床梁50を床梁受け材30を介して基礎10に設置する。
【0055】
その後、第1ボルト41をY7方向に締め付けることにより、床梁受け材30を介して床梁50と基礎10の接続構造90を形成する(以上、B工程)。
【0056】
図示する床梁の高さ調整方法によれば、基礎10に対して、床梁受け材30を介して床梁50を簡易かつスムーズに高さ調整しながら接続することが可能になる。
【0057】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0058】
10:基礎(布基礎)
11:天端面(天端)
12:側面
15:インサートナット
20:鉄骨柱
21:取り付け金具
25:アンカーボルト
30:床梁受け材
31:当接片
32:係止片
33:支持片
34:第1ボルト孔(長孔)
35:第2ボルト孔
36:第5ボルト孔
37:介在片
38:第4ボルト孔(大径孔)
41:第1ボルト
42:第2ボルト
43:高さ調整ボルト
44:ナット
50:床梁
51:下フランジ
52:第3ボルト孔
53:端部
60:楔
70:高さ調整プレート
80:床梁と基礎の仮接続構造(仮接続構造)
90:床梁と基礎の接続構造(接続構造)
C1:第1クリアランス(クリアランス)
C2:第2クリアランス(クリアランス)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8