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特開2024-77865栽培支援装置及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077865
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】栽培支援装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240603BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190071
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】390010814
【氏名又は名称】株式会社誠和
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】中山 里実
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】 少ない負担で簡易に取り扱うことができ、農業技術の早期習得に適した栽培支援装置を提供する。
【解決手段】 評価対象の判定期間における栽培環境を作物にとって良好に形成するために有効なアドバイス情報が、自動的に得られる農業用ハウス内の所定の環境データを用いて判定される。この環境データがハウス栽培にとって重要な所定のデータに限定されており、好ましくは、農業用ハウス内の気温、積算日射量、二酸化炭素濃度及び飽差に限定されているため、それらを基づいて作成されたアドバイス情報を参照することで適切な栽培環境を作ることができると共に、経験の浅い農業従事者等が身につけるべき、環境データと栽培環境との関係を学習しやすい。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが管理する農業用ハウスにおける作物の種類及び定植日を含む作物情報、並びに、前記農業用ハウスに付設された各種設備に関する設備情報を含む栽培基本情報を取得する栽培基本情報取得手段と、
前記農業用ハウス内に設置された環境測定装置から、予め設定した所定の判定期間毎に、所定の環境データを取得する環境データ取得手段と、
評価対象の判定期間における前記所定の環境データが、前記作物の生育に適していたか否かに基づいて栽培環境を評価する栽培環境評価手段と、
前記栽培環境評価手段の評価に基づき、前記作物にとって良好な栽培環境を形成するためのアドバイス情報を作成するアドバイス情報作成手段と
前記アドバイス情報を出力する出力手段と
を有することを特徴とする栽培支援装置。
【請求項2】
前記ユーザにより判断される前記作物の樹勢情報を取得する樹勢情報取得手段を備え、
前記アドバイス情報作成手段は、前記樹勢情報を加味してたアドバイス情報を作成する請求項1記載の栽培支援装置。
【請求項3】
前記作物の樹勢情報は、前記評価対象の判定期間の経過後に前記ユーザにより観察されて判断された情報である請求項2記載の栽培支援装置。
【請求項4】
前記所定の環境データが、前記農業用ハウス内の気温、積算日射量、二酸化炭素濃度及び飽差である請求項1記載の栽培支援装置。
【請求項5】
前記所定の環境データとして前記気温と前記積算日射量が用いられ、
前記栽培環境評価手段が、評価対象の判定期間における前記気温及び前記積算日射量を、評価対象の判定期間に対応する前年以前の同時期の期間における前記気温及び前記積算日射量と比較して評価する請求項4記載の栽培支援装置。
【請求項6】
前記環境データとして前記二酸化炭素濃度が用いられ、
前記栽培環境評価手段が、評価対象の判定期間において、光合成の活発な時間帯における前記二酸化炭素濃度の1日あたりの平均値が予め設定した所定値以上であるか否かにより、前記二酸化炭素の過不足を評価する請求項4記載の栽培支援装置。
【請求項7】
前記環境データとして前記飽差が用いられ、
前記栽培環境評価手段が、評価対象の判定期間における、前記飽差が予め設定した基準値飽差以下となる低飽差の合計時間が、予め設定した基準時間以上となるか否かにより、低飽差状態か否かを評価する請求項4記載の栽培支援装置。
【請求項8】
コンピュータを栽培支援装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
ユーザが管理する農業用ハウスにおける作物の種類及び定植日を含む作物情報、並びに、前記農業用ハウスに付設された各種設備に関する設備情報を含む栽培基本情報を取得する手順と、
前記農業用ハウス内に設置された環境測定装置から、予め設定した所定の判定期間毎に、所定の環境データを取得する手順と、
評価対象の判定期間における前記所定の環境データが、前記作物の生育に適していたか否かに基づいて栽培環境を評価する手順と、
前記栽培環の評価に基づき、前記作物にとって良好な栽培環境を形成するためのアドバイス情報を作成する手順と
前記アドバイス情報を出力する手順と
を前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記ユーザにより判断される前記作物の樹勢情報を取得し、
前記樹勢情報を加味したアドバイス情報を作成する請求項8記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記作物の樹勢情報は、前記評価対象の判定期間の経過後に前記ユーザにより観察されて判断された情報である請求項9記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記所定の環境データが、前記農業用ハウス内の気温、積算日射量、二酸化炭素濃度及び飽差である請求項8記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物の栽培を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、植物を含む生体の育成を支援するためのアドバイス情報をユーザに提供する育成支援システムが開示されている。この育成支援システムには育成レシピ情報が記憶されており、ユーザの育成対象が植物の場合、当該植物自体あるいはその収穫物の品質を高めることができる所定の育成レシピ情報に基づいて、現在の育成状況との比較で所定の栽培アドバイス情報をユーザに提供する。ユーザは栽培アドバイス情報を端末で受信し、そのメッセージ(例えば、「日向に移動させてください」、「水分を控えてください」)に従って、鉢の位置を移動したり、水やり回数を減らしたりする等、育成環境を調整する。このメッセージに従って育成していけば、専門書を読んだり、専門店の店員等にアドバイスを受けたりしなくても、所定の品質の植物を育成できる。
【0003】
特許文献2には、過去の栽培実績データとの関係で将来の栽培状況情報を予測する栽培状況予測式を用いた栽培支援装置が開示されている。栽培実績データとして、植物の生育環境に関する環境測定値データと、植物の生育状況に関する生育調査値データを用いて上記の栽培状況予測式を構築することで、植物の所定の成長段階の時期(開花時期、収穫時期)、その成長段階に応じた管理作業の内容(例えば、摘葉数、摘果数)、開花数、着果数、収穫量などを含む将来の栽培状況情報を高い精度で予測することができる。
【0004】
特許文献3は、ハウス内に設置される栽培環境要素測定装置に関する発明であり、温度センサ、湿度センサ、COセンサなどの各種センサを備え、それらのデータを自動的に測定することが記載されている。また、それらの測定データを用いて、平均気温、積算温度、絶対湿度、飽差、露点などを計算し、また、それらを過去のデータ等と比較したりすることも開示されている。さらに、それらのデータをホスト側のコンピュータに送り、例えば、平均値が高い場合に栽培対象の植物に起こり得る症状やその対処方法等の栽培情報をユーザ側に送信することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-83986号公報
【特許文献2】特開2019-30253号公報
【特許文献3】特開2012-239407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の育成システムは、植物の育成に関する専門知識をほとんど有していない者、例えば家庭菜園をこれから始める者といった農業従事者でない栽培に関する素人を主として対象としている。育成レシピ情報には、ユーザの状況に適したアドバイス情報を作成するために、当該ユーザが実施した水やり、追肥、間引き、収穫等の作業種別、発芽開花等の植物の状態種別、使用した道具、肥料の種類等の詳細な事情情報を提供することが求められる。これらの事象情報は、温度や湿度等の環境情報のようにセンサから自動的に取り込む設定とすることはできないため、ユーザが端末装置を操作して入力しなければならない。しかし、より適切なアドバイス情報を作成するためには、ユーザは、アドバイスを受けようとするたびに、それまでの事象情報をより詳しくかつ正確に入力することが求められる。その結果、栽培に関する素人であっても、所定品質の植物の育成が可能であるという効果をもたらすものの、農業用ハウスを用いて栽培する農業従事者の場合、ベテランと言える者でなくてもベースとなる知識は上記の素人よりも上であることは当然であり、あまりに詳細な分析に基づくアドバイスは必ずしも必要ない。特に、植物の栽培数が圧倒的に多く、毎日の手入れ作業に費やす時間をできるだけ多く確保するめには、データ入力作業はできるだけ短くかつ簡易にできるシステムであることが望ましい。
【0007】
また、近年、農家の高齢化や後継者不足は深刻であり、新たに農業を志す者や経験の浅い農業従事者等に早期に農業技術を習得させることができるシステムの開発が望まれている。仮に、そのような目的で特許文献1のシステムを利用した場合、必要な時期に詳細なアドバイスを得られるものの、上記のような入力作業に手間がかかるということに加え、水やり、追肥、間引き等の作業の多くを、このシステムによって出力されるアドバイスに従って行うことになり、適切な水やりタイミング、散布量、追肥のタイミング等の判断を自ら行い、経験として農業技術を身につけるには不向きと考えられる。
【0008】
特許文献2の技術によれば、収穫時期等の予測精度が向上するため、栽培スケジュールの精度が高まり、作業員の割り当てや集荷調整等が効率的となって収益の増加を図ることができる。しかしながら、生育調査値データを得るために、所定期間ごとに、草丈増分の平均、葉長さの平均、葉幅の平均、着果数等の生育調査値を数株から数十株観察してサーバに送信する必要がある。特許文献2の技術は収益増加のための支援装置として有効であるが、栽培数が多いほど、生育調査値の測定作業が負担となる。ある程度のベテランの農業従事者であれば、それらの測定作業も速やかに実施でき、さらなる増益を追求するために有益である。しかしながら、上記のような経験の浅い農業従事者等への農業技術の習得用としては、生育調査値の測定作業が大きな負担となり、必ずしも適切とは言えない。
【0009】
特許文献3では、上記のように、自動的に得られた環境データを栽培環境要素測定装置からホスト側に送信し、それらの環境データに対応する栽培情報をデータベースから抽出し、ユーザ側に送信することが記載されているが、環境データの種類や送信する栽培情報の内容について例示はあるものの、それらに限定される内容ではない。経験の浅い農業従事者等は必ずしも測定された種々の環境データと栽培対象の作物の生育状況との関連について十分な知識を有しているわけではなく、得られる情報が多すぎる場合には有効活用されず、農業技術の習得に結びつかない可能性もある。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、少ない負担で簡易に取り扱うことができ、農業技術の早期習得に適した栽培支援装置及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の栽培支援装置は、
ユーザが管理する農業用ハウスにおける作物の種類及び定植日を含む作物情報、並びに、前記農業用ハウスに付設された各種設備に関する設備情報を含む栽培基本情報を取得する栽培基本情報取得手段と、
前記農業用ハウス内に設置された環境測定装置から、予め設定した所定の判定期間毎に、所定の環境データを取得する環境データ取得手段と、
評価対象の判定期間における前記所定の環境データが、前記作物の生育に適していたか否かに基づいて栽培環境を評価する栽培環境評価手段と、
前記栽培環境評価手段の評価に基づき、前記作物にとって良好な栽培環境を形成するためのアドバイス情報を作成するアドバイス情報作成手段と
前記アドバイス情報を出力する出力手段と
を有することを特徴とする。
【0012】
前記ユーザにより判断される前記作物の樹勢情報を取得する樹勢情報取得手段を備え、
前記アドバイス情報作成手段は、前記樹勢情報を加味してたアドバイス情報を作成する構成であることが好ましい。この場合、前記作物の樹勢情報は、前記評価対象の判定期間の経過後に前記ユーザにより観察されて判断された情報であることが好ましい。
【0013】
前記所定の環境データが、前記農業用ハウス内の気温、積算日射量、二酸化炭素濃度及び飽差であることが好ましい。
【0014】
前記所定の環境データとして前記気温と前記積算日射量が用いられる場合、
前記栽培環境評価手段が、評価対象の判定期間における前記気温及び前記積算日射量を、評価対象の判定期間に対応する前年以前の同時期の期間における前記気温及び前記積算日射量と比較して評価することが好ましい。
【0015】
前記環境データとして前記二酸化炭素濃度が用いられる場合、
前記栽培環境評価手段が、評価対象の判定期間において、光合成の活発な時間帯における前記二酸化炭素濃度の1日あたりの平均値が予め設定した所定値以上であるか否かにより、前記二酸化炭素の過不足を評価することが好ましい。
前記環境データとして前記飽差が用いられる場合、
前記栽培環境評価手段が、評価対象の判定期間における、前記飽差が予め設定した基準値飽差以下となる低飽差の合計時間が、予め設定した基準時間以上となるか否かにより、低飽差状態か否かを評価することが好ましい。
【0016】
また、本発明は、コンピュータを栽培支援装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
ユーザが管理する農業用ハウスにおける作物の種類及び定植日を含む作物情報、並びに、前記農業用ハウスに付設された各種設備に関する設備情報を含む栽培基本情報を取得する手順と、
前記農業用ハウス内に設置された環境測定装置から、予め設定した所定の判定期間毎に、所定の環境データを取得する手順と、
評価対象の判定期間における前記所定の環境データが、前記作物の生育に適していたか否かに基づいて栽培環境を評価する手順と、
前記栽培環の評価に基づき、前記作物にとって良好な栽培環境を形成するためのアドバイス情報を作成する手順と
前記アドバイス情報を出力する手順と
を前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラムを提供する。
【0017】
コンピュータプログラムは、前記ユーザにより判断される前記作物の樹勢情報を取得し、前記樹勢情報を加味したアドバイス情報を作成することが好ましい。この場合、前記作物の樹勢情報は、前記評価対象の判定期間の経過後に前記ユーザにより観察されて判断された情報であることが好ましい。また、前記所定の環境データが、前記農業用ハウス内の気温、積算日射量、二酸化炭素濃度及び飽差であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の栽培支援装置は、評価対象の判定期間における栽培環境を作物にとって良好に形成するために有効なアドバイス情報が、自動的に得られる農業用ハウス内の所定の環境データを用いて判定される。この環境データがハウス栽培にとって重要な所定のデータに限定されており、好ましくは、農業用ハウス内の気温、積算日射量、二酸化炭素濃度及び飽差に限定されているため、それらを基づいて作成されたアドバイス情報を参照することで適切な栽培環境を作ることができると共に、経験の浅い農業従事者等が身につけるべき、環境データと栽培環境との関係を学習しやすい。
【0019】
また、本発明では、この所定の環境データに加え、ユーザが作物の樹勢情報を入力できる構成となっていることが好ましい。樹勢情報を加味することで、より適切なアドバイス情報を出力できる。ユーザは、樹勢の状況によってどのような栽培環境が必要かを把握できる。樹勢情報は、特別な測定器具を用いることなく視覚的な観察を主として把握できる最も基本的な作物情報である。この基本的な作物情報である樹勢情報と栽培環境の評価とが関連づけられ、さらに良好な栽培環境とするためのアドバイス情報も得られる。よって、樹勢情報を用いることで、より早期に農業技術を習得するのに役立つ。例えば、翌年の栽培において、同様の樹勢の状態で同様の状況が生じた場合に、迅速な対応を期待できる。また、ユーザが入力する情報はこの樹勢情報のみであり、情報提供時の入力作業はきわめて簡単で作業負担が少ない。よって、ユーザは短時間で必要な入力作業を済ませ、速やかに他の作業に移行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一の実施形態に係る栽培支援装置の利用態様を示した図である。
図2図2は、上記一の実施形態に係る栽培支援装置の構成を模式的に示した図である。
図3図3は、上記一の実施形態に係る栽培支援装置を用いた栽培支援方法のうち、気温と日射量、二酸化炭素濃度に関するアドバイス情報を出力する工程を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、上記一の実施形態に係る栽培支援装置を用いた栽培支援方法のうち、飽差に関するアドバイス情報を出力する工程を説明するためのフローチャートである。
図5図5(a)は、気温と日射量の評価に関し、環境パターンの分類例を示し、図5(b)は、月パターンの分類例を示し、積算日射量、昼平均気温、夜平均気温の各日平均値を前年同期間の各日平均値と比較してA~Hの8つの環境パターンに分類して評価結果の例を示し、図5(c)はアドバイス情報の例を示した図である。
図6図6(a)は、二酸化炭素濃度を用いた評価に対応するアドバイス情報の例を示し、図6(b)は、飽差を用いた評価に対応するアドバイス情報の例を示した図である。
図7図7は、出力手段により端末装置に表示された気温及び日射、二酸化炭素濃度、夜飽差に関する各アドバイス情報の表示画面例を示した図である。
図8図8は、本発明の他の実施形態に係る栽培支援装置の構成を模式的に示した図である。
図9図9(a),(b)は、上記他の実施形態に係るWebサイトの表示画面の一例を示した図である。
図10図10は、上記他の実施形態において、「気温及び日射量」の評価に関するアドバイス情報の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、さらに詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る栽培支援装置1を用いて、ユーザへの栽培支援を実施する場合の概略構成を示した図である。この図に示したように、本実施形態の栽培支援装置1は、コンピュータから構成され、インターネット等の通信手段を介して接続されたユーザの端末装置2や環境測定装置3からの情報を受信し、栽培に関する支援情報を提供する。この場合、栽培支援装置1は、物理サーバーで構成されていてもよいし、クラウド環境におけるクラウドサーバーで構成されていてもよい。また、端末装置2には、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットやスマートフォンなどの携帯端末等を含む。ユーザは、本実施形態の栽培支援装置1による栽培支援を利用する場合、端末装置2を操作して、栽培支援装置1のWebサイトにアクセスするなどして、住所、氏名等の登録手続きを行う。なお、ユーザの氏名、住所等の登録手続きは、栽培支援装置1の運営者側において行ってもよいことはもちろんである。
【0022】
栽培支援装置1は、図2に示したように、その記憶部(当該コンピュータ(栽培支援装置1)の内蔵のハードディスク等の記録媒体のほか、リムーバブルの各種記録媒体、通信手段で接続された他のコンピュータの記録媒体等も含む)1aに、栽培基本情報取得手段110として機能する手順、環境データ取得手段120として機能する手順、栽培環境評価手段130として機能する手順、アドバイス情報作成手段140として機能する手順、出力手段150として機能する手順等を実行させるコンピュータプログラムが記憶されている。
【0023】
なお、コンピュータプログラムは、記録媒体に記憶させて提供することができる。コンピュータプログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体は特に限定されないが、例えば フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD-ROM、メモリカードなどの記録媒体が挙げられる。また、通信回線を通じてコンピュータプログラムをコンピュータに伝送してインストールすることも可能である。
【0024】
栽培基本情報取得手段110は、登録したユーザが管理する農業用ハウスにおける作物の種類及び定植日を含む作物情報、並びに、当該農業用ハウスに付設された各種設備に関する設備情報を含む栽培基本情報を取得する。栽培基本情報取得手段110は、ユーザが端末装置2を操作し、例えば、栽培支援装置1のWebサイトにアクセスしてこれらの情報を入力することにより取得する。作物情報としては、上記のほか、作物栽培面積、栽植密度、作物収穫量等を含む。設備情報としては、上記のほか、農業用ハウスの施設光遮光率、ハウス内カーテン装置の設置状況や運転状況、ハウス内カーテンの光透過率などを含む。
【0025】
環境データ取得手段120は、農業用ハウス内に設置された環境測定装置3から、予め設定した所定の判定期間毎に所定の環境データを取得する。所定の判定期間は、例えば栽培支援装置1側で設定した期間(例えば7日間)とすることができるが、一律ではなく、作物の種類情報等を参照して適宜に調整した期間としてもよい。また、ユーザがアドバイス情報を受けたいと決めた任意の期間とすることもできる。
【0026】
所定の環境データとしては、作物の生育に重要な指標を選択する。好ましくは、農業用ハウス内の気温、積算日射量、二酸化炭素濃度及び飽差である。これらの環境データは、環境測定装置3により得られるが、環境測定装置3は、環境データを所定時間毎に(例えば1分毎に)測定し、新たなデータを得るたびに、若しくは、所定時間毎に自動的に栽培支援装置1に通信回線を介して送信する。環境測定装置3はかかる機能を有する限りその構成は限定されるものではなく、上記の4つの環境データを個別に測定する温度センサ、湿度センサ、日射量センサ、COセンサなどを設置し、それらから個別にデータを得るようにすることもできるが、上記の特許文献3で開示されているようなこれらの環境データを一括して得られる栽培環境要素測定装置から取得することもできる。このような栽培環境要素測定装置としては、例えば、株式会社誠和製の商品名「プロファインダー(登録商標)」を挙げることができる。
【0027】
また、気温や二酸化炭素濃度は上記のような環境測定装置3の測定データをそのまま送信すればよいが、積算日射量や飽差は、例えば、これらのデータを用いて環境測定装置3に組み込まれたソフトウエアにより計算した後、栽培支援装置1に送信する。あるいは、積算日射量や飽差の計算を環境測定装置3側で行うのではなく、日射量や湿度等の測定データを用いて環境データ取得手段120側で計算して求める構成とすることももちろん可能である。
【0028】
栽培環境評価手段130は、評価対象の判定期間における上記の環境データが、作物の生育に適していたか否かに基づいて栽培環境を評価する。評価対象の判定期間とは、これから作物の栽培環境をどのようにすべきかのアドバイス情報を受信する前の判定期間である。環境データ取得手段120は、判定期間毎に所定の環境データを取得することから、評価対象の判定期間は、好ましくは直前の判定期間、例えば判定期間を日曜日から土曜日までの7日間とした場合であって、今週のアドバイス情報を受信する場合には、その前週の日曜日から土曜日までの7日間を指す。
【0029】
栽培環境の評価は、取得した環境データの中から、気温と積算日射量を用いた評価、二酸化炭素濃度を用いた評価、飽差を用いた評価の3種類を行う。
【0030】
気温と積算日射量を用いる場合には、評価対象の判定期間(例えば前週の7日間)における気温及び積算日射量を、評価対象の判定期間に対応する前年以前の同時期の期間(前年の同時期の期間又は前年以前の収穫量が優れた年度における同時期の期間等)を比較期間とし、その比較期間における気温及び積算日射量と比較して評価する。
【0031】
二酸化炭素濃度を用いる場合には、評価対象の判定期間において、光合成の活発な時間帯における二酸化炭素濃度の1日あたりの平均値が予め設定した所定値以上であるか否かにより、二酸化炭素の過不足を評価する。二酸化炭素は光合成による糖生産に不可欠であり、作物の生育にとって非常に重要である。評価に用いる測定データを光合成の活発な時間帯を規定することにより、二酸化炭素濃度の過不足の評価が適切になる。
【0032】
飽差を用いる場合には、評価対象の判定期間における、飽差が予め設定した基準飽差以下となる低飽差の合計時間が、予め設定した基準時間以上となるか否かにより、低飽差状態か否かを評価する。例えば、1日のうち、飽差が所定以下となる低飽差が作物の病害発生に与える影響が大きい所定の時間帯を定め、その所定の時間帯における飽差の1時間平均値を算出し、この1時間平均値が基準値以下となる時間を集計する。評価対象の判定期間(例えば前週の7日間)のうち、低飽差状態となった合計時間を集計し、評価対象の判定期間中の低飽差時間の合計時間が予め定めた基準時間以上となった場合に、低飽差状態であると評価する。飽差は、基準値以下となっている時間帯が短い場合には作物への影響が小さいため、合計時間に基づいて評価することが好ましい。
【0033】
アドバイス情報作成手段140は、栽培環境評価手段130の評価に基づき、作物にとって良好な栽培環境を形成するためのアドバイス情報を作成する。栽培環境評価手段130において評価対象の判定期間(例えば前週の7日間)の栽培環境について、例えば、比較期間より日平均値が高い又は低い、二酸化炭素濃度が基準以上又は基準値未満、飽差が基準時間以上又は基準時間未満等の評価結果が得られた場合、アドバイス情報作成手段140は、その評価結果に対応して、例えば今週のアドバイスとして、「気温を高めに管理」、「二酸化炭素濃度を高めに管理」、「夜間飽差の低下に注意」等のアドバイス情報を作成する(図5及び図6参照)。アドバイス情報は、栽培環境の評価結果と対応させて予めデータベースとして登録しておき、それを抽出するようにしてもよいし、アドバイス情報手段140が評価結果を機械学習してアドバイス情報を作成するようにしてもよい。
【0034】
出力手段150は、アドバイス情報作成手段140により作成されたアドバイス情報を出力するものであり、その手段は限定されるものではない。例えば、判定期間を7日間と設定している場合、前週の7日間の環境データに基づいて評価して作成されたアドバイス情報を次の評価対象の判定期間において生かすために、前週の7日間の経過後からその翌週(今週)できるだけ早めに、好ましくは、翌週(今週)に入って1-3日以内に、より好ましくは翌週(今週)に入って1-2日以内に、ユーザの端末装置2に送信して表示されるようにしたり、ユーザが栽培支援装置1にWebサイトにアクセスすれば、今週のアドバイス情報が最初に表示されるようにしたりして出力する構成とすることができる。
【0035】
次に、本実施形態の栽培支援装置1を用いた栽培支援方法を図3及び図4に基づいて説明する。栽培支援装置1は、支援対象のユーザの環境測定装置3から送信される所定の環境データを受信する(S1)。環境測定装置3は、上記のように、農業用ハウス内の温度、湿度、日射量、二酸化炭素濃度などの情報を例えば数分毎に測定し、栽培支援装置1に送信しており、環境データ取得手段120は、これらのデータより、当該農業用ハウス内の気温、積算日射量、二酸化炭素濃度及び飽差を取得する。
【0036】
(気温と日射量に関する評価)
気温と日射量に関して評価し、アドバイス情報を作成する場合、栽培環境評価手段130は、評価対象の判定期間(例えば前週の日曜日から土曜日の7日間)の積算日射量、昼平均気温、夜平均気温について、それぞれ日平均値を算出する(S2)。また、比較期間を前年における当該判定期間と同期間とし、その比較期間の積算日射量、昼平均気温、夜平均気温の各日平均値を得る(S3)。比較期間のこれらのデータは、環境測定装置3側で保持されている温度、湿度データ等を取得して、栽培環境評価手段130において算出してもよいし、栽培支援装置1に記憶されている比較期間のデータ(既に、同期間の積算日射量等についての日平均値が求められている場合にはそのデータ、積算日射量、昼平均気温、夜平均気温のみが保存されている場合には、それらのデータを読み出して計算した日平均値)を用いてもよい。
【0037】
次に、栽培環境評価手段130は、評価対象の判定期間における積算日射量、昼平均気温、夜平均気温の日平均値と、比較期間における積算日射量、昼平均気温、夜平均気温の日平均値との差を求める(S4)。S4により求めた差より、気温及び日射量に関する評価を分類する(S5)。分類基準は限定されるものではないが、例えば、図5(a)に示したように、評価対象の判定期間における積算日射量、昼平均気温、夜平均気温の各日平均値が前年同期間の各日平均値と比較した高低によりA~Hの8つの環境パターンに分類して評価結果とすることができる。
【0038】
アドバイス情報作成手段140は、栽培環境評価手段130が例えばこのA~Hの8パターンの分類を行った後、各評価結果に対応する8パターンのアドバイス情報を記憶部に記憶されたデータベースから読み出してアドバイス情報を作成することができるが、本実施形態では、その前に、栽培環境評価手段130が、評価対象の判定期間の属する月に合わせた月パターン分けも行う。月パターンは、例えば、図5(b)に示したように、気温や湿度の傾向を考慮して、「a:7~8月」、「b:9~11月」、「c:12~1月」、「d:2~4月」、「e:5~6月」と5つに分類できる。但し、若苗は、所定の規定された環境下で生育されているため、季節に対応させたパターン分けは必要ないが、定植後の週数に対応したアドバイス情報を提供する構成とすることが好ましい。定植後週数に対応した若苗用のアドバイス情報も、記憶部のデータベースに予め記憶させておくことが好ましい。
【0039】
上記に鑑み、本実施形態では、図3に示したように、栽培基本情報取得手段110により取得した栽培基本情報より定植日を読み出し、定植日からの経過日数を求め、定植後所定日数以下の若苗か否かを判定する(S6)。若苗と判定された場合には、さらに定植後週数を求める(S7)。アドバイス情報作成手段140は、A~Hの8パターンのうちの対応するアドバイス情報を読み出すと共に、定植後週数に応じて、それに対応したアドバイス情報をデータベースから抽出し、アドバイス情報を作成する(S8)。
【0040】
一方、S6において「Yes」と判定された場合には成熟苗となり、栽培環境評価手段130は、評価対象の判定期間を、図5(b)に示したa~eの5つに分類する(S9)。この結果、本実施形態では、アドバイス情報作成手段140は、8つの環境パターンと5つの月パターンの組み合わせで40種類のアドバイス情報を作成でき、その中から評価対象の判定期間に関するアドバイス情報を抽出する(S10)。
【0041】
これにより気温及び日射に関するアドバイス情報が作成されるが、作成されたアドバイス情報は、出力手段150により、ユーザの端末装置2に表示される(S60)。図5(c)は、環境パターン:A、月パターン:aの組み合わせの場合のアドバイス情報の例であり、昨年との比較で評価対象の判定期間における栽培環境の様子及び今後の管理の注意点といったアドバイスが示されている。栽培支援装置1は、栽培基本情報取得手段110を有し、ユーザが管理する農業用ハウスの設備状況も登録されている。よって、アドバイス情報作成手段130は、この栽培基本情報を参照し、当該農業用ハウスに例えば遮光カーテンが設置されされている場合には、遮光カーテンの有効利用を促すアドバイス情報を含めることができる。
【0042】
(二酸化炭素濃度に関する評価)
二酸化炭素濃度に関して評価し、アドバイス情報を作成する場合、図3に示したように、まず、栽培基本情報取得手段110により取得した栽培基本情報より定植日を読み出し、定植日からの経過日数を求め、定植後所定日数以下の若苗か否かを判定する(S21)。若苗の場合には、上記のように所定の生育環境が確保されているため、二酸化炭素濃度についても評価の必要がない。定植日から所定以上の日数が経過している場合には(S21において「Yes])、栽培環境評価手段130が評価対象の判定期間の二酸化炭素濃度を評価する。二酸化炭素濃度は、光合成の活発な時間帯である昼間に関して評価することが好ましい。本実施形態では、環境データ取得手段120により取得された日の出時刻の2時間後から日の入り時刻前1時間におけるデータを用いる。そして、栽培環境評価手段130は、判定期間(例えば前週の7日間)中の1日あたりの平均値を、昼平均CO濃度として算出する(S22)。この判定期間中の1日あたりの平均値である昼平均CO濃度が所定の基準値以上であるか否かを判定する(S23)。この基準値は、作物の種類、作物栽培面積、栽植密度等によっても異なり、栽培環境評価手段130は、栽培基本情報取得手段110により取得した栽培基本情報に基づき求められ、本実施形態では一例として420ppmを基準値として設定し評価する。
【0043】
栽培環境評価手段130により、420ppm以上と評価された場合(S23において「Yes」の場合)、アドバイス情報作成手段140は、図6(a)に示した「基準値以上」の項に対応するアドバイス情報を作成する(S24)。420ppm未満と評価された場合(S23において「No」の場合)、アドバイス情報作成手段140は、図6(a)に示した「基準値未満」の項に対応するアドバイス情報を作成する(S25)。
二酸化炭素濃度に関して作成されたアドバイス情報は、出力手段150により、ユーザの端末装置2に表示される(S60)。
【0044】
(飽差に関する評価)
飽差に関して評価し、アドバイス情報を作成する場合、上記のように、例えば、1日のうち、飽差が所定以下となる低飽差が作物の病害発生に与える影響が大きい所定の時間帯を定め、その所定の時間帯における飽差の1時間平均値を算出し、その1時間平均値が基準値以下となる時間を集計して評価する。本実施形態では、図4に示したように、低飽差の影響が大きい時間として、0時から日の出時刻までを設定し、その時間帯において環境データ取得手段120が取得した飽差(夜飽差)のデータに基づき1時間平均値を算出する(S41)。評価対象の判定期間(例えば前週の7日間)中、1時間平均値が基準飽差(例えば、1g/m)以下となる時間帯をカウントし(S42)、判定期間のうち、基準飽差以下となる時間帯の合計時間(低飽差継続時間)を算出する(S43)。次に、この低飽差合計時間が所定の基準時間(例えば、15時間)以上か否かを判定する(S44)。
【0045】
栽培環境評価手段130により、低飽差合計時間が15時間以上と評価された場合(S44において「Yes」の場合)、アドバイス情報作成手段140は、図6(b)に示した「基準時間以上」の項に対応するアドバイス情報を作成する(S45)。15時間未満と評価された場合(S44において「No」の場合)、アドバイス情報作成手段140は、図6(b)に示した「基準時間未満」の項に対応するアドバイス情報を作成する(S46)。
【0046】
飽差に関して作成されたアドバイス情報は、出力手段150により、ユーザの端末装置2に表示される(S60)。
【0047】
図7は、図3及び図4のS60において、出力手段150により端末装置2に表示された気温及び日射、二酸化炭素濃度、夜飽差に関する各アドバイス情報の表示画面例を示している。各アドバイス情報の下欄には、気温及び日射、二酸化炭素濃度、夜飽差に関するグラフを参考情報として表示している。
【0048】
本実施形態によれば、ユーザは、このようにして表示されたアドバイス情報を参照できるため、今後の栽培(例えば、毎週判定する場合には、次の判定期間の週)において適切な栽培環境を形成するために必要な措置をとることができる。アドバイス情報には、評価対象の判定期間の評価結果に基づくアドバイス(例えば、「昼・夜の気温を高めに管理できていた」、「二酸化炭素濃度が低かった」、「夜飽差が低かった」等)と、それを改善又は継続して今後の栽培(例えば、毎週判定する場合には、次の判定期間の週)において良好な栽培環境を形成するためのアドバイス(例えば、「換気設定の見直しを行いましょう」、「二酸化炭素の施用濃度・時間を見直しましょう」、「夜間の除湿運転を見直しましょう」)とが共に表示される。
【0049】
よって、ユーザは、今までの栽培環境の状態とその改善点を知ることができる。本実施形態の栽培支援装置1は、このように、作物への影響の大きい環境データを用い、それとの関係で、栽培環境の改善点をユーザに示すことができる。栽培支援装置1が詳細な数値等による設定を指示するのではなく、概念として適切な栽培のためのアドバイスを行うものであり、しかも、所定の判定期間毎にそのようなアドバイスを受けることができる。よって、ユーザは、自身が行っている栽培作業の欠点や改善点等を自ら認識し、確認して考えて行う余地があり、農業技術の新たな習得や向上に適している。
【0050】
図8は、本発明の他の実施形態に係る栽培支援装置1の構成を示す。本実施形態の栽培支援装置1は、作物の樹勢情報を取得する樹勢情報取得手段160を備えている。その他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0051】
樹勢情報とは、ユーザが育成している作物の樹勢であり、これは、ユーザが観察して判断し、端末装置2を操作して栽培支援装置1に提供する。例えば、上記実施形態と同様に、栽培支援装置1の運営するWebサイトにアクセスし、樹勢情報を入力する。図9(a),(b)はWebサイトの表示画面の一例を示したものであり、「樹勢が強い」、「樹勢が弱い」の2つの樹勢情報を選択入力可能となっている。樹勢情報取得手段160は、ここで入力された樹勢情報を取得する。
【0052】
上記実施形態では、栽培環境評価手段130は、環境データ取得手段120により取得した環境データを用いて評価し、その評価結果に基づいてアドバイス情報作成手段140がアドバイス情報を作成していたが、本実施形態では、アドバイス情報作成手段140が樹勢情報を加味してアドバイス情報を作成する。
【0053】
樹勢情報の入力画面は、所定のタイミングでユーザの端末装置2に表示される。栽培支援装置1から所定のタイミングで樹勢情報の入力画面をユーザの端末装置2に送信し、入力を促すようにしてもよいし、ユーザが例えば評価対象の判定期間(例えば前週の7日間)についての評価結果を参照しようとして上記Webサイトにアクセスすると表示され、そのタイミングで入力するようにしてもよい。樹勢情報を入力させるタイミングとしては、栽培環境評価手段130によって評価対象の判定期間における栽培環境が評価されたときの樹勢情報を入力できるように、評価対象の判定期間の終盤以降、次の判定期間に入ってからできるだけ早い時期であることが好ましい。より好ましくは、評価対象の判定期間における栽培環境の作物への影響の反映時間を考慮し、当該判定期間の経過後、次の判定期間に入ってできるだけ早い時期である。例えば、判定期間が1週間毎であれば、前週の7日間の経過後からその翌週(今週)できるだけ早めに、好ましくは、翌週(今週)に入って1-3日以内に、より好ましくは翌週(今週)に入って1-2日以内である。
【0054】
いずれにしても、アドバイス情報作成手段140は、樹勢情報が入力された場合には、その情報を読み込んでアドバイス情報を作成する。上記実施形態では、アドバイス情報作成手段140は、8つの環境パターンと5つの月パターンの組み合わせで40種類のアドバイス情報を作成する例を示したが、これに樹勢の強弱の2パターンを組み合わせると、本実施形態では80種類のアドバイス情報を作成できることになる。例えば、前週の7日間の経過後からその翌週(今週)の2日後に出力手段150から栽培環境評価手段130の評価に基づいたアドバイス情報が端末装置2に送信された場合、ユーザはその日の樹勢情報を入力する。アドバイス情報作成手段140は、新たに入力された樹勢情報に鑑みて、この樹勢情報を考慮したアドバイス情報を改めて作成し、出力手段150を介してユーザの端末装置2に表示させる。
【0055】
図10は、本実施形態において、「気温及び日射量」の評価に関するアドバイス情報の例を示している。(a)欄が、環境パターン:B、月パターン:bの組み合わせ、(b)欄が、環境パターン:C、月パターンcの組み合わせ、(c)欄が、環境パターン:D、月パターンdの組み合わせとなっている場合において、樹勢情報が(a)欄では「強い」、(b)欄では「弱い」、(c)欄では「強い」が対応している例である。
【0056】
アドバイス情報の内容として、例えば、(a)欄の場合、「昼平均気温が低く、夜平均気温が高い」という環境データに基づく評価結果に対して、「樹勢が強い」ということは、「早めにカーテンを閉めている可能性がある」という原因を示し、さらに、「換気設定の見直し」という改善方針を示している。(b)欄の場合、「昨年より日射量が多く、昼平均気温が高めに管理できていた」という評価結果に対し、「樹勢が弱い」ということは、「昼平均気温が高い可能性がある」という原因を示し、さらに、「日射量に応じた気温管理」という改善方針を示している。(c)欄の場合、「昨年より日射量が多かったが、昼・夜の気温管理が低めだった」という評価結果に対し、「樹勢が強い」ということは、「日平均気温が低い可能性がある」という原因を示し、さらに、「気温管理の見直し、昼の換気設定、夜間の暖房設定の見直し」という改善方針を示している。
【0057】
このように、ユーザからの情報として樹勢情報を提供可能とすることで、より詳細なアドバイス情報が得られる。ユーザは、栽培している作物について日々さまざまな観察を行っているが、本実施形態によれば、そのうち、樹勢情報のみを用いている。新規参入あるいは経験の浅い農業従事者にとって、作物の観察を様々な観点からしかも正確に行うことは負担であり、時間もかかる。この点、樹勢のレベルに関する評価は、視覚を中心として比較的容易に行うことができる。よって、経験の浅い農業従事者等であっても、その情報を把握することは比較的容易であり、しかも、本実施形態では、その入力についても、樹勢が「強い」か「弱い」かを選択するだけの設定となっている。よって、ユーザが観察した情報を入力する手間は非常に簡易でかつ短時間で済ますことができる。もちろんこの選択項目はこれに限定されるものではなく、時間がかからずに簡単に入力できる限り、例えば、「強い」、「弱い」の選択項目以外に「普通」、「やや強い」、「やや弱い」等の選択項目を設けることも可能である。しかしながら、経験の浅い農業従事者等にとっては、選択項目が多くなることによりそれに見合った樹勢判断が難しくなることも予想されることから、本実施形態の「強い」、「弱い」のような2つほどの選択項目とすることが好ましい。また、農業従事者等のレベルに応じ、これらの選択項目の表示数を増減させる構成とすることも可能である。
【0058】
また、ユーザに提供されるアドバイス情報には、上記のように、評価対象の判定期間における栽培環境の評価結果だけでなく、その栽培環境において、入力された樹勢となった原因を知ることができ、さらに、それを改善して良好な栽培環境を形成するための改善情報も含まれている。よって、ユーザは、栽培環境と自ら観察した樹勢との関連、及びそのような事態が生じた場合の改善点を知ることができる。経験の浅い農業従事者等にとって樹勢を判断するだけで、これらのアドバイス情報を得ることができることから、農業技術をより習得しやすい。従って、本実施形態の栽培支援装置1は、栽培支援に加え、農業技術を習得させるための教育ツールとして適している。
【符号の説明】
【0059】
1 栽培支援装置
1a 記憶部
110 栽培基本情報取得手段
120 環境データ取得手段
130 栽培環境評価手段
140 アドバイス情報作成手段
150 出力手段
160 樹勢情報取得手段
2 端末装置
3 環境測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10