(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077870
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】濃縮湿し水組成物、湿し水組成物、それを用いた印刷物の製造方法、及び印刷物
(51)【国際特許分類】
B41N 3/08 20060101AFI20240603BHJP
B41M 1/06 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B41N3/08 101
B41M1/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190076
(22)【出願日】2022-11-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151183
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 康司
(72)【発明者】
【氏名】里山 正彦
【テーマコード(参考)】
2H113
2H114
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113AA04
2H113AA06
2H113BA05
2H114AA04
2H114DA04
2H114DA27
2H114DA28
2H114GA23
(57)【要約】
【課題】防腐性の観点から銀化合物を含みつつ、希釈時に用いる水に含まれる残留塩素による沈殿の発生を抑制できる濃縮湿し水組成物及びそれを希釈してなる湿し水組成物、並びにそれを用いた印刷物の製造方法及びそれにより得られる印刷物を提供すること。
【解決手段】水溶性銀含有錯体化合物を銀イオンとして0.002~0.014質量%含み、これが0.010質量%を超える場合には、さらに窒素含有環状化合物である化合物Bを質量ベースで上記銀イオンの10倍以上含有することを特徴とする濃縮湿し水組成物とする。窒素含有化合物としては、イミダゾール誘導体、イミダゾリノン誘導体又はイミダゾロン誘導体が好ましく挙げられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性銀含有錯体化合物を銀イオンとして0.002~0.014質量%含み、これが0.010質量%を超える場合には、さらに窒素含有環状化合物である化合物Bを質量ベースで前記銀イオンの10倍以上含有することを特徴とする濃縮湿し水組成物。
【請求項2】
前記水溶性銀含有錯体化合物が、アミノ酸、モノ又はジカルボン酸、及び窒素原子含有環状化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含む化合物(群)Aと銀との錯体化合物である請求項1記載の濃縮湿し水組成物。
【請求項3】
前記化合物(群)Aが、窒素原子含有環状化合物を含む請求項2記載の濃縮湿し水組成物。
【請求項4】
前記窒素原子含有環状化合物が、イミダゾール誘導体、イミダゾリノン誘導体又はイミダゾロン誘導体である請求項3記載の濃縮湿し水組成物。
【請求項5】
前記窒素原子含有環状化合物が、クレアチニンである請求項4記載の濃縮湿し水組成物。
【請求項6】
前記化合物Bが、イミダゾール誘導体、イミダゾリノン誘導体又はイミダゾロン誘導体である請求項1記載の濃縮湿し水組成物。
【請求項7】
前記化合物Bの含有量が0.15質量%以上である請求項1記載の濃縮湿し水組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の濃縮湿し水組成物の希釈物である湿し水組成物。
【請求項9】
請求項8記載の湿し水組成物を用いて印刷を行うことを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項10】
紙媒体上にインキ組成物による画像が形成され、前記紙媒体中に請求項8記載の湿し水組成物の水を除いた構成成分を含むことを特徴とする印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮湿し水組成物、湿し水組成物、それを用いた印刷物の製造方法、及び印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷は、油性であるオフセット印刷用インキ組成物(以下、「インキ組成物」又は「インキ」と適宜省略する。)が水に反発する性質を利用した印刷方式であり、凹凸を備えた印刷版を用いる凸版印刷方式とは異なり、凹凸のない印刷版を用いることを特徴とする。この印刷版は、凹凸の代わりに親油性の画像部と親水性の非画像部とを備える。そして印刷に際しては、まず、湿し水によって印刷版の非画像部が湿潤されてその表面に水膜が形成され、次いでインキ組成物が印刷版に供給される。このとき、供給されたインキ組成物は、水膜の形成された非画像部には反発して付着せず、親油性の画像部のみに付着する。こうして、印刷版の表面にインキ組成物による画像が形成され、次いでそれがブランケット及び紙に順次転移することにより印刷が行われる。
【0003】
このときに用いられる湿し水の最も簡単な構成は水のみであってもよいが、水のみでは湿し水に要求される機能を十分に満足できないことも多い。例えば、湿し水の供給量が適正でないと、画像部へ十分にインキ組成物が転移せずに画像濃度が低下したり、非画像部にインキ組成物が付着して印刷汚れを生じたりして印刷トラブルとなるが、湿し水の構成が水のみでは適正供給量の範囲が狭く(これは、いわゆる「水幅が狭い」状態である。)、印刷条件が少し変化しただけで良好な印刷物を得ることが難しくなる。そこで、通常は、酸や塩基及びその塩類、界面活性剤、湿潤性水溶性樹脂といった各種添加剤を配合することで、湿し水の粘度、表面張力、pH、インキ組成物に対する乳化特性等を調整し、湿し水の適正供給量の拡大を図るのが一般的である。なお、印刷の際に用いる湿し水は、通常、濃縮状態で販売及び流通されており、需要者である印刷会社は、こうした濃縮湿し水を水道水やイオン交換水等で希釈することで湿し水を調製し、それを印刷に用いるのが一般的である。こうした濃縮湿し水はH液(エッチ液)とも呼ばれる。
【0004】
ところで、近年では、特に新聞印刷の分野で中性湿し水の採用が盛んになっている。これまで、オフセット印刷に用いる湿し水としては、湿し水による整面性を高めるなどの観点から酸性やアルカリ性のものが採用されてきており、新聞印刷の分野ではアルカリ性の湿し水が広く用いられてきた。しかしながら、アルカリ性の湿し水は、使用後に不要になった湿し水を廃棄する際に排水基準を満足せず、中和処理などを施して廃棄する必要を生じる。このような背景から、上記のように新聞印刷の分野において中性湿し水の採用が拡がりつつある(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
ところが、中性湿し水を用いた場合はアルカリ性の湿し水を用いた場合と異なり、湿し水中で細菌や真菌などの微生物が繁殖しやすいという問題もある。湿し水中でこうした微生物が繁殖すると、湿し水を循環させるためのタンクや配管内等においてスライムやカビの発生を招き、印刷の不具合や腐敗臭の発生等といったトラブルに繋がることになる。このような問題を抑制するために、通常、中性湿し水組成物にはメチルイソチアゾリンやクロロメチルイソチアゾリノン等のような防腐剤が添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような防腐剤の添加により、中性湿し水においても細菌類の発生がかなり抑制される。しかしその一方で、こうした防腐剤は刺激性が強いため、人体にとって必ずしも良いものでない。特に、濃縮湿し水においては、防腐剤の濃度が通常の湿し水よりも高くなるので、その扱いに注意を必要とする場合もある。
【0008】
ところで、銀化合物が抗菌活性を備えることが広く知られており、例えばプラスチックに銀化合物を練り込んだものを加工することにより、抗菌性を備えたプラスチック製品とすること等が広く行われている。このような背景のもと、本発明者は、銀化合物を濃縮湿し水に適用することにより、湿し水に防腐性を付与できることを見出した。さらに、本発明者は、このように銀化合物を用いて湿し水に十分な防腐性を付与しようとする場合、湿し水組成物の原液ともいえる濃縮湿し水組成物中に銀イオンとして0.002質量%以上の銀化合物を添加する必要があることも見出した。銀化合物には、上記の防腐剤のような刺激性が無い一方で、十分な防腐性を備えるため、これを含む濃縮湿し水は、防腐性と安全性を両立できる点で非常に好ましいものといえる。
【0009】
しかしながら、このように銀化合物を含む濃縮湿し水にも問題が生じうる。上記のように印刷現場では、濃縮湿し水をイオン交換水等の軟水で希釈して湿し水としてから印刷に使用するが、希釈に用いる軟水には水道水に含まれていた塩素が残留塩素として含まれ、銀化合物に含まれる銀がこの残留塩素と反応して塩化銀の沈殿物を湿し水中に生じさせる。湿し水中に沈殿物が発生すると、湿し水供給設備におけるインラインフィルターやノズルでの詰まりを生じ、これが原因で印刷時における水の供給が不安定になって紙面汚れ等の印刷トラブルに繋がる可能性がある。
【0010】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、防腐性の観点から銀化合物の必要添加量である、銀イオンとして0.002質量%以上となる銀化合物を含みつつ、希釈時に用いる水に含まれる残留塩素による沈殿の発生を抑制できる濃縮湿し水組成物、及びそれを希釈してなる湿し水組成物を提供することを目的とする。また、この湿し水組成物を用いて印刷を行うことを特徴とする印刷物の製造方法、及びその製造方法により得られる印刷物を提供することもまた本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、銀化合物として水溶性銀含有錯体化合物を用いることで塩化銀の沈殿発生を相当抑制でき、かつ、その錯体化合物が所定濃度以上となる場合には、この錯体化合物に含まれる銀イオンに対して質量ベースで10倍以上の窒素含有環状化合物を添加することにより、残留塩素による沈殿の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0012】
(1)本発明は、水溶性銀含有錯体化合物を銀イオンとして0.002~0.014質量%含み、これが0.010質量%を超える場合には、さらに窒素含有環状化合物である化合物Bを質量ベースで上記銀イオンの10倍以上含有することを特徴とする濃縮湿し水組成物である。
【0013】
(2)また本発明は、上記水溶性銀含有錯体化合物が、アミノ酸、モノ又はジカルボン酸、及び窒素原子含有環状化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含む化合物(群)Aと銀との錯体化合物である(1)項記載の濃縮湿し水組成物である。
【0014】
(3)また本発明は、上記化合物(群)Aが、窒素原子含有環状化合物を含む(2)項記載の濃縮湿し水組成物である。
【0015】
(4)また本化合物は、上記窒素原子含有環状化合物が、イミダゾール誘導体、イミダゾリノン誘導体又はイミダゾロン誘導体である(2)項又は(3)項記載の濃縮湿し水組成物である。
【0016】
(5)また本発明は、上記窒素原子含有環状化合物が、クレアチニンである(2)項~(4)項のいずれか1項記載の濃縮湿し水組成物である。
【0017】
(6)また本発明は、上記化合物Bが、イミダゾール誘導体、イミダゾリノン誘導体又はイミダゾロン誘導体である(1)項~(5)項のいずれか1項記載の濃縮湿し水組成物である。
【0018】
(7)また本発明は、上記化合物Bの含有量が0.15質量%以上である(1)項~(6)項のいずれか1項記載の濃縮湿し水組成物である。
【0019】
(8)本発明は、(1)項~(7)項のいずれか1項記載の濃縮湿し水組成物の希釈物である湿し水組成物でもある。
【0020】
(9)本発明は、(8)項記載の湿し水組成物を用いて印刷を行うことを特徴とする印刷物の製造方法でもある。
【0021】
(10)本発明は、紙媒体上にインキ組成物による画像が形成され、その紙媒体中に(8)項記載の湿し水組成物の水を除いた構成成分を含むことを特徴とする印刷物。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、防腐性の観点から銀化合物の必要添加量である、銀イオンとして0.002質量%以上となる銀化合物を含みつつ、希釈時に用いる水に含まれる残留塩素による沈殿の発生を抑制できる濃縮湿し水組成物、及びそれを希釈してなる湿し水組成物が提供される。また、本発明によれば、この湿し水組成物を用いて印刷を行うことを特徴とする印刷物の製造方法、及びその製造方法により得られる印刷物もまた提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の濃縮湿し水組成物の一実施形態、本発明の湿し水組成物の一実施形態、本発明の印刷物の製造方法の一実施態様、及び本発明の印刷物の一実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものでなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することが可能である。
【0024】
まずは、本発明の濃縮湿し水組成物の一実施形態について説明する。本発明の濃縮湿し水組成物は、水溶性銀含有錯体化合物を銀イオンとして0.002~0.014質量%含み、これが0.010質量%を超える場合には、さらに窒素含有環状化合物である化合物Bを質量ベースで上記銀イオンの10倍以上含有することを特徴とする。また、本発明の濃縮湿し水組成物は、この他にも濃縮湿し水組成物で用いられる各種の成分を含んでもよい。以下、各成分について説明する。
【0025】
本発明の濃縮湿し水組成物は、水溶性銀含有錯体化合物を含む。もともと銀化合物が抗菌活性を備えることは広く知られており、例えばプラスチック製品に銀化合物を練り込む等して、その製品に抗菌性を付与することが広く行われている。しかしながら、既に述べたように、防腐性を期待して濃縮湿し水組成物に銀イオンとして0.002質量%以上となる銀化合物を適用する場合、湿し水の防腐性は得られるものの、濃縮湿し水組成物を希釈する際に用いる水に含まれる残留塩素と銀化合物とが反応して、塩化銀からなる沈殿を湿し水中に生じる問題が発生する。本発明者は、この問題を解決すべく検討を重ねた結果、銀化合物の中でも、水溶性を示す銀の錯体化合物が残留塩素に対して高い安定性を備え、これを用いることにより湿し水中での塩化銀の沈殿発生を相当抑制できることを見出した。なお、防腐性を特に高めるために銀の錯体化合物を高濃度に含む場合には、いくら銀の錯体化合物を用いる場合であっても塩化銀の沈殿発生が懸念されるが、このような場合であっても、所定量の窒素含有環状化合物を安定剤として銀の錯体化合物とともに添加することで、塩化銀の沈殿発生を抑制できることを本発明者は見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。以下、水溶性銀含有錯体化合物のことを、単に「銀錯体」と省略して呼ぶこともある。
【0026】
本発明で用いる銀錯体は、銀イオンと配位性化合物とが錯体化した化合物であり、水溶性を示すものである。配位性化合物としては、配位結合を形成して銀イオンと錯体化合物を形成し、その錯体化合物が濃縮湿し水中でも水溶性を維持することのできるものであれば特に限定されない。このような配位性化合物としては、アミノ酸、モノ又はジカルボン酸、及び窒素原子含有環状化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含む化合物(群)Aであることを好ましく挙げることができる。なお、「化合物(群)」とは、化合物又は化合物群を表す。
【0027】
アミノ酸としては、ヒスチジン、アルギニン等のような窒素原子含有アミノ酸が好ましく挙げられる。このようなアミノ酸は、窒素原子上の非共有電子対やカルボキシ基(又はカルボキシラートアニオン)が銀イオンに配位して銀錯体を形成する。
【0028】
モノ又はジカルボン酸は、カルボキシ基を1個又は2個含む化合物である。モノカルボン酸としては、炭素数1~12の1価の脂肪族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数6~18の1価の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数2~18の1価の芳香族複素環基と、1個のカルボキシ基と、を備えた化合物が挙げられる。なお、1個のカルボキシ基と炭素数1~12の1価の脂肪族炭化水素基との間に、酸素原子、-NH-、-(C=O)O-、-(C=O)NH-のような2価の基を含んでもよい。ジカルボン酸としては、2個のカルボキシ基と、これらカルボキシ基を連結する、炭素数1~12の2価の脂肪族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数2~18の2価の芳香族複素環基と、を備えた化合物が挙げられる。
【0029】
炭素数1~12の1価の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ビニル基、プロペニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。また、炭素数1~12の2価の脂肪族炭化水素基としては、上記の1価の脂肪族炭化水素基のうちの1つの炭素原子に結合した水素原子が失われて単結合となったものを挙げることができる。例えば、1価の脂肪族炭化水素基であるメチル基から1個の水素原子が失われたメチレン基が2価の脂肪族炭化水素基になる。
【0030】
炭素数6~18の1価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基等の単環芳香族炭化水素基、ナフチル基等の縮合環炭化水素基、ビフェニリル基等の環集合炭化水素基等が挙げられる。また、炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基としては、上記の1価の芳香族炭化水素基のうちの1つの炭素原子に結合した水素原子が失われて単結合となったものを挙げることができる。例えば、1価の芳香族炭化水素基であるフェニル基から1個の水素原子が失われたフェニレン基が2価の芳香族炭化水素基になる。
【0031】
炭素数2~18の1価の芳香族複素環基としては、トリアゾリル基、フラニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ピラジル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、チオフェニル基、ビピリジル基、オキサジアゾリル基等が挙げられる。また、炭素数6~18の2価の芳香族複素環基としては、上記の1価の芳香族複素環基のうちの1つの炭素原子に結合した水素原子が失われて単結合となったものを挙げることができる。例えば、1価の芳香族複素環基であるピラゾリル基から1個の水素原子が失われたピラゾリレン基が2価の芳香族複素環基になる。
【0032】
上記の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基に含まれる水素原子は、他の置換基で置換されてもよい。このような置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、オキソ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールチオ基、アリールスルホニル基等が挙げられる。
【0033】
好ましい例として、モノカルボン酸としては、アセチルグリシン、アセトキシ酢酸、メトキシ酢酸等が挙げられる。また、ジカルボン酸としては、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、グルタル酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0034】
窒素原子含有環状化合物としては、環中に窒素原子を含んだ環状化合物を挙げることができる。この環状化合物は、芳香族であっても脂肪族であってもよく、単環であっても縮合環であってもよい。このような窒素原子含有環状化合物としては、イミダゾール誘導体、イミダゾリノン誘導体又はイミダゾロン誘導体を好ましく挙げることができる。
【0035】
イミダゾール誘導体は、イミダゾール骨格を備えた化合物である。このような化合物の一例としては、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、イミダゾリン等を挙げることができる。イミダゾリノン誘導体は、イミダゾール環に含まれるC=Cが還元されてC-Cとなり、かつその環に含まれる1つのC-HがC=Oに置換された骨格を備えた化合物である。イミダゾロン誘導体は、イミダゾール環に含まれる1つのC-HがC=Oに置換された骨格を備えた化合物である。このような化合物の一例としては、クレアチニン等を挙げることができる。
【0036】
これら銀錯体の中でも、クレアチニン、フマル酸及びイミダゾリンからなる群より選択される少なくとも1つと銀との錯体化合物が好ましく例示され、クレアチニン及びフマル酸と銀との錯体がより好ましく例示される。このような銀錯体としては、例えば、株式会社MGCウッドケム製のCF-01やCF-04等の製品を挙げることができる。
【0037】
銀錯体、すなわち水溶性銀含有錯体化合物の濃縮湿し水中における含有量は、銀イオンとして0.002~0.014質量%である。なお、「銀イオンとして」とは、「銀錯体に含まれる銀イオンの質量として」という意味であり、銀錯体全体の実際の濃度がC質量%であったとき、C×(銀の原子量107.9/銀錯体の分子量)が「銀イオンとして」の濃度(質量%)である。なお、銀錯体の濃度が、銀イオンとして0.010質量%を超える場合には、本発明の濃縮湿し水組成物に下記化合物Bを添加する必要がある。
【0038】
化合物Bは、窒素含有環状化合物である。これは、濃縮湿し水組成物中の銀錯体の濃度が銀イオンとして0.010質量%を超える比較的高い濃度となった場合に、銀錯体に含まれる銀が希釈水中の残留塩素と反応して沈殿物を生じることを抑制するための安定剤となる。なお、この化合物Bは、既に述べた化合物(群)Aにおける窒素原子含有環状化合物と同様の化合物になるが、化合物(群)Aは、銀錯体を形成した状態で濃縮湿し水組成物に添加されるものであるのに対して、化合物Bは、そのまま濃縮湿し水組成物に添加されるものである点で異なる。また、上記の条件は、濃縮湿し水組成物中の銀錯体の濃度が銀イオンとして0.010質量%以下である場合に、化合物Bを添加することを妨げるものではない。
【0039】
化合物Bとしての窒素原子含有環状化合物としては、環中に窒素原子を含んだ環状化合物を挙げることができる。この環状化合物は、芳香族であっても脂肪族であってもよく、単環であっても縮合環であってもよい。このような窒素原子含有環状化合物としては、イミダゾール誘導体、イミダゾリノン誘導体又はイミダゾロン誘導体を好ましく挙げることができる。
【0040】
イミダゾール誘導体は、イミダゾール骨格を備えた化合物である。このような化合物の一例としては、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、イミダゾリン等を挙げることができる。イミダゾリノン誘導体は、イミダゾール環に含まれるC=Cが還元されてC-Cとなり、かつその環に含まれる1つのC-HがC=Oに置換された骨格を備えた化合物である。イミダゾロン誘導体は、イミダゾール環に含まれる1つのC-HがC=Oに置換された骨格を備えた化合物である。このような化合物の一例としては、クレアチニン等を挙げることができる。
【0041】
濃縮湿し水組成物における化合物Bの添加量は、上記銀錯体に含まれる銀イオンとしての質量に対して、質量ベースで10倍以上である。この添加量の上限は特に無いが、経済性の面から、上記銀錯体に含まれる銀イオンとしての質量に対して、質量ベースで32倍程度を上限として好ましく挙げられ、質量ベースで16倍程度を上限としてより好ましく挙げられる。また、濃縮湿し水組成物中の化合物Bの含有量としては、0.15質量%以上を好ましく挙げられる。
【0042】
本発明の濃縮湿し水組成物は、酸性、アルカリ性及び中性のいずれでもよい。しかしながら、既に述べたように、湿し水組成物の腐敗の問題は中性の湿し水にて顕著に発生するため、発明の効果という点からは、本発明の濃縮湿し水組成物は中性であることが好ましいといえる。中性湿し水組成物のpH範囲としては、5を超え9未満である範囲が好ましく挙げられ、5.8~8.6がより好ましく挙げられ、6.0~8.0がさらに好ましく挙げられるので、本発明の濃縮湿し水組成物は、希釈して湿し水組成物としたときのpHがこうした範囲となるようにpHを調整されることが好ましい。なお、pH調整を行うに際しては、酸や塩基をpH調整剤として添加すればよい。
【0043】
本発明の濃縮湿し水組成物には、上記の銀錯体や化合物Bの他に濃縮湿し水組成物として一般に用いられる化合物を含んでもよい。このような化合物としては、無機酸塩、有機酸塩、水溶性樹脂、キレート剤、湿潤剤、界面活性剤、消泡剤等が挙げられる。これらのうち、無機酸塩及び有機酸塩は、整面剤として機能する成分である。
【0044】
無機酸塩としては、硝酸塩、リン酸化合物の塩、ホウ酸塩、硫酸塩、アルミニウムミョウバン等を好ましく挙げることができる。これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等、及びこれらの混合した塩を好ましく挙げられる。例えば硝酸塩としては、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硝酸マグネシウム等が挙げられる。濃縮湿し水組成物中における無機酸塩の添加量としては、濃縮湿し水組成物全体に対して0.05~8質量%が好ましく挙げられ、0.1~5質量%がより好ましく挙げられ、0.5~3質量%がさらに好ましく挙げられる。この添加量が上記の範囲であることにより、湿し水組成物としたときの印刷適性が良好になる他、濃縮湿し水組成物としての安定性が良好なものになる。なお、これらの無機酸塩は、単独で用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0045】
リン酸化合物の塩としては、リン酸、ピロリン酸、ヘキサメタリン酸、オルトリン酸、ポリリン酸、トリポリリン酸等のナトリウム塩、カリウム塩等を挙げることができる。これらの中でも、カルシウムイオン封鎖作用と整面作用を備えるヘキサメタリン酸塩を好ましく挙げられ、ヘキサメタリン酸ナトリウムをより好ましく挙げられる。
【0046】
有機酸塩としては、印刷版の非画像部へのインキ付着汚れを抑制する働きをするヒドロキシカルボン酸塩や二塩基酸塩が好ましく挙げられ、例えば、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、アスパラギン酸等のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。これらの中でも、整面性とカルシウムイオンの封鎖作用に優れるクエン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩が好ましく挙げられ、リンゴ酸ナトリウムやクエン酸三ナトリウムをより好ましく挙げることができる。有機酸塩の添加量としては、濃縮湿し水組成物全体に対して0.25~5質量%が好ましく挙げられ、1~4質量%がより好ましく挙げられ、1~3質量%がさらに好ましく挙げられる。この添加量が上記の範囲であることにより、湿し水組成物としたときの良好な印刷適性が得られるばかりでなく、濃縮湿し水組成物としての安定性が良好なものになる。なお、これらの有機酸塩は、単独で用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0047】
水溶性樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸マレイン酸共重合樹脂等のポリアクリル酸系樹脂;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース樹脂等が挙げられる。なお、樹脂分子中に含まれるカルボキシ基がナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩を形成することで樹脂の水溶性が高まり、より好ましい。これらの中でも、良好な水溶性を示し、他の成分との相溶性に優れる点からポリアクリル酸ナトリウムが好ましく挙げられる。
【0048】
キレート剤は、カルシウムイオン等の金属イオンと配位結合して水溶性の錯体を形成することで金属イオンを封鎖する化合物である。キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸やニトリロ三酢酸に代表されるような、カルボキシ基を3個以上備えたものが好ましく挙げられ、このようなキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸塩、L-グルタミン酸二酢酸塩、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸塩等が挙げられる。
【0049】
湿潤剤としては、これまで濃縮湿し水組成物に用いられているものを特に限定されずに挙げることができる。このような湿潤剤の一例として、アルコール類、グリコール類又はグリセリン類等を挙げることができる。これらの湿潤剤は、単独で用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0050】
界面活性剤としては、これまで濃縮湿し水組成物に用いられているものを特に限定されずに挙げることができる。このような水溶性樹脂の一例として、グリセリン脂肪酸エステル系、ポリグリセリン脂肪酸エステル系、プロピレングリコール脂肪酸エステル系、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレン系(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー類等)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0051】
消泡剤としては、これまで濃縮湿し水組成物に用いられているものを特に限定されずに挙げることができる。このような消泡剤の一例として、シリコン系消泡剤等が挙げられる。これらの消泡剤は、単独で用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本発明の濃縮湿し水組成物を調製するには、通常、純水(イオン交換水、脱塩水)、軟水等の水に上記の銀錯体をはじめ、必要に応じて上記の各成分を添加して、撹拌機で撹拌混合すればよい。
【0053】
上記本発明の濃縮湿し水組成物の希釈物である湿し水組成物も本発明の一つである。この湿し水組成物は、本発明の濃縮湿し水組成物を100~250倍程度に希釈して得られるものであり、銀化合物を含むことによる防腐性を備えながら、希釈水中に含まれる残留塩素と銀との反応物である塩化銀の沈殿の発生を抑制する。このため、本発明の湿し水組成物を用いて印刷を行うことにより、沈殿物の生成による、湿し水供給設備におけるインラインフィルターやノズルでの詰まりといったトラブルが抑制される。
【0054】
上記本発明の湿し水組成物を用いて印刷を行うことを特徴とする印刷物の製造方法も本発明の一つである。本発明の湿し水組成物は、公知の手段により印刷版へと供給され、印刷版の非画像部を湿潤することにより、その非画像部にインキ組成物が付着するのを妨げて画像を形成させる。
【0055】
また、紙媒体上にインキ組成物による画像が形成され、その紙媒体中に上記湿し水組成物の水を除いた構成成分を含むことを特徴とする印刷物も本発明の一つである。印刷中に用いた湿し水組成物は、その一部が印刷版及びブランケットを介して印刷用紙へ転写され、その後、湿し水組成物に含まれていた水が蒸発して紙媒体中から除かれる。このため、本発明の湿し水組成物を用いて印刷された印刷物は、その湿し水組成物の水を除いた構成成分を含むことになる。
【実施例0056】
以下、実施例を示すことにより本発明の濃縮湿し水組成物及び湿し水組成物をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
[参考例、実施例1~6及び比較例1~5の濃縮湿し水組成物]
表1及び2に示す各材料を撹拌機で混合することで、参考例、実施例1~6及び比較例1~5の濃縮湿し水組成物を調製した。なお、表1及び2において、「界面活性剤」は、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテルであり、「整面剤1」は、ヘキサメタリン酸ナトリウムであり、「整面剤2」は、硝酸ナトリウムであり、「防腐剤」は、メチルイソチアゾリノンであり、「銀錯体水溶液1」は、クレアチニン及びフマル酸と銀との錯体の水溶液(銀イオン濃度2.5質量%、MGCウッドケム株式会社製、製品名:AGアルファCF-01)であり、「銀錯体水溶液2」は、クレアチニン及びフマル酸と銀との錯体であって、上記銀錯体水溶液1よりも配位子としてのクレアチニンをより多く含む錯体の水溶液(銀イオン濃度0.5質量%、MGCウッドケム株式会社製、製品名:AGアルファCF-04)であり、「化合物B」は、1-メチルイミダゾールである。これらのもののうち、「銀錯体水溶液1」及び「銀錯体水溶液2」が本発明における銀錯体に該当し、1-メチルイミダゾールが安定剤、すなわち本発明における化合物Bに該当する。
【0058】
[希釈時の安定性試験]
参考例、実施例1~6及び比較例1~5の濃縮湿し水組成物のそれぞれについて、軟水により100倍希釈して湿し水組成物を調製し、25℃で1日静置して沈殿の有無を観察した。なお、希釈のために使用した軟水は、水道水を軟水化装置で処理して得たものであり、全硬度値が0mg/L、残留塩素濃度0.1mg/L以上1.0mg/L未満のものである。評価基準は次の通りとし、その結果を表1及び2の「安定性」欄に示した。
○:沈殿の発生はない
△:僅かに沈殿が発生している
×:多量の沈殿が発生している
【0059】
[印刷適性試験]
東浜精機株式会社製2色タワー輪転印刷機N-750型を用いて印刷試験を行った。試験に際しては、参考例、実施例1~7及び比較例1~4の濃縮湿し水組成物のそれぞれについて軟水で250倍に希釈して湿し水組成物を調製し、これをBALDWIN社製スプレーダンプナーSD-C Ver.5を用いて水着けローラーに供給した。印刷条件は、下記の通りとした。
【0060】
印刷機:東浜2色タワー印刷機N-750(東浜精機株式会社社製)
印刷版:新聞用サーマルネガCTP版「HN-NV」(富士フイルム株式会社製)
湿し水装置:スプレーダンプナー「SD-C Ver.5」(BALDWIN社製)
ブランケット:NP90V(株式会社金陽社製)
軟水化装置:MK-6J型(株式会社丸山製作所製)
軟水全硬度値:0mg/L
インキ:NEWS WEBMASTER エコピュアLUCE(サカタインクス株式会社製)
印刷速度:500rpm
温度/湿度:25℃/50%
印刷用紙:SL紙(いわき大王製紙社株式会社製、超軽量紙)
印刷部数:3000部
水量値:標準水量0ポイントに対し、-7ポイントまで下げた時の紙面汚れ評価と+15ポイントまで上げた時の濃度安定性を確認
【0061】
評価基準は次の通りとし、その結果を表1及び2の「印刷適性」欄に示した。なお、比較例2については成分の析出が生じたので、この評価を行っていない。
○:紙面汚れがなく、かつ水量増加時にて従来の湿し水組成物よりも明らかに大きな濃度低下が観察されなかった
×:紙面汚れ、及び/又は水量増加時にて従来の湿し水組成物よりも明らかに大きな濃度低下が観察された
【0062】
【0063】
【0064】
表1及び表2を参照すると、本発明の濃縮湿し水組成物を希釈して得た湿し水組成物は、いずれも残留塩素による沈殿を生じず、良好な安定性を示した。一方、化合物Bの濃度が銀イオン濃度の10倍に満たない比較例1、2及び5は、残留塩素による沈殿が観察された。また、銀イオン濃度が0.030質量%を超える比較例3及び4もまた残留塩素による沈殿が観察され、銀イオン濃度がここまで高くなると化合物Bを銀イオン濃度の10倍以上添加しても沈殿が生成してしまうことがわかる。
水溶性銀含有錯体化合物を銀イオンとして0.002~0.014質量%含み、これが0.010質量%を超える場合には、さらに窒素含有環状化合物である化合物Bを質量ベースで前記銀イオンの10倍以上含有し、前記水溶性銀含有錯体化合物が、アミノ酸、モノ又はジカルボン酸、及びクレアチニンからなる群より選択される少なくとも1つを含む化合物(群)Aと銀との錯体化合物であることを特徴とする濃縮湿し水組成物。
(1)本発明は、水溶性銀含有錯体化合物を銀イオンとして0.002~0.014質量%含み、これが0.010質量%を超える場合には、さらに窒素含有環状化合物である化合物Bを質量ベースで上記銀イオンの10倍以上含有し、上記水溶性銀含有錯体化合物が、アミノ酸、モノ又はジカルボン酸、及びクレアチニンからなる群より選択される少なくとも1つを含む化合物(群)Aと銀との錯体化合物であることを特徴とする濃縮湿し水組成物である。