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特開2024-77877印刷画像を撮像する機能を有する印刷装置および印刷画像の撮像方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077877
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】印刷画像を撮像する機能を有する印刷装置および印刷画像の撮像方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20240603BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240603BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20240603BHJP
   H04N 1/12 20060101ALI20240603BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
H04N1/00 002A
B41J2/01 207
H04N1/04 105
H04N1/12
B41J29/393 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190088
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】市岡 義和
(72)【発明者】
【氏名】林 真司
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
5C062
5C072
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB27
2C056EB36
2C056EC79
2C056FA13
2C056HA58
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AS06
2C061KK04
2C061KK13
2C061KK18
2C061KK25
5C062AA05
5C062AA35
5C062AB05
5C062AB20
5C062AB22
5C062AB25
5C062AB30
5C062AB32
5C062AB33
5C062AB41
5C062AB42
5C062AB46
5C062AC04
5C062AC05
5C062AC07
5C062AC15
5C062AC61
5C062AC66
5C062AE01
5C062AF14
5C062BA06
5C062BD01
5C072AA05
5C072BA13
5C072DA25
5C072EA07
5C072FA05
5C072FB03
5C072FB25
5C072NA01
5C072NA08
5C072RA18
5C072SA03
5C072SA06
5C072UA07
5C072UA11
5C072UA13
5C072XA03
(57)【要約】
【課題】テストチャート等の印刷画像を撮像したときにラインセンサの不感エリアに対する補間処理の問題を回避しつつ良好な撮像画像を取得できる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置において、印刷画像を撮像するための撮像部は、ラインセンサとしてCIS30と、これを用紙幅方向に移動させる移動機構とを有している。この移動機構によってCISを用紙幅方向の互いに異なる位置Ps1,Ps2,Ps3に移動させて、用紙5に形成される印刷画像50を撮像することにより、複数の撮像画像50a1,50a2,50a3を取得する。これらの撮像画像0a1,50a2,50a3に基づくマージ処理により、CIS30の不感エリアに起因する画像欠落の無い修正撮像画像50cを印刷画像を表す画像として生成する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷画像を撮像する機能を有する印刷装置であって、
基材を搬送する搬送機構と、
前記基材に対して印刷を行う印刷ユニットと、
前記基材の幅以上の長さを有し前記基材の搬送方向と直交する前記基材の幅方向に配置されたラインセンサを含み、前記基材に形成される印刷画像を当該ラインセンサによって撮像する撮像部と、
前記ラインセンサを前記幅方向に前記基材に対し相対的に移動させる移動機構と、
前記基材に形成される前記印刷画像を前記幅方向における互いに異なる位置で撮像することにより複数の撮像画像が取得されるように、前記搬送機構、前記撮像部、および、前記移動機構を制御する制御部と
を備え、
前記ラインセンサは、それぞれが複数の撮像素子を含む複数のユニットを直線状に並べて構成され、互いに隣接するユニットのつなぎ目を含む領域に、撮像素子のない不感エリアを有しており、
前記制御部は、前記複数の撮像画像に基づき、前記ラインセンサにおける前記不感エリアに起因して前記複数の撮像画像において生じる画像欠落が解消された修正撮像画像を生成する、印刷装置。
【請求項2】
前記ラインセンサは密着型のイメージセンサである、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記印刷画像が撮像される前記互いに異なる位置の間隔が前記不感エリアの前記幅方向のサイズよりも大きくなるように、前記搬送機構、前記撮像部、および、前記移動機構を制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷ユニットは、それぞれが複数のノズルを含む複数の印刷ヘッドを前記基材の幅を覆うように配列され、前記複数の印刷ヘッドから前記基材に対してインクが吐出されるように構成されている、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記印刷ユニットにおける吐出不良を検出し吐出不良状態のノズルを特定するためのテストチャートが前記印刷画像として前記基材に形成され、前記印刷画像を前記互いに異なる位置で撮像することにより前記複数の撮像画像が取得されるように、前記印刷ユニット、前記搬送機構、前記撮像部、および、前記移動機構を制御し、
前記複数の撮像画像に基づき前記修正撮像画像を生成し、
前記修正撮像画像に基づき前記印刷ユニットにおける吐出不良を検出して吐出不良状態のノズルを特定する、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記ラインセンサにおける前記不感エリアに起因して前記複数の撮像画像において生じる画像欠落の領域を不感画像エリアとして特定し、
前記複数の撮像画像における前記不感画像エリアに含まれる画素に“0”または“0”近傍の正値を重み係数として割り当て、前記印刷画像の各画素につき、前記複数の撮像画像において当該各画素に対応する画素の濃度の加重平均値を求めることにより、前記修正撮像画像を生成する、請求項1から5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記複数の撮像画像において、前記ラインセンサにおける前記不感エリアに起因して前記複数の撮像画像において生じる画像欠落の領域を不感画像エリアとして特定し、
前記印刷画像の各画素につき、前記複数の撮像画像において当該各画素に対応する画素のうち前記不感画像エリアに含まれない画素の濃度の平均値を求めることにより、前記修正撮像画像を生成する、請求項1から5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、
濃度が均一である濃度均一パターン画像が前記基材に印刷画像として形成され、当該濃度均一パターン画像を撮像することにより濃度均一パターン撮像画像が取得されるように、前記印刷ユニット、前記搬送機構、前記撮像部、および、前記移動機構を制御し、
前記濃度均一パターン撮像画像の濃度に基づき前記不感画像エリアを特定する、請求項1から5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記移動機構は、前記ラインセンサの前記基材に対する前記幅方向の相対的な移動量または相対的な位置を計測する計測部を含み、
前記制御部は、前記計測部による計測結果に基づき前記複数の撮像画像の撮像位置の相違による前記複数の撮像画像間の位置ずれを補正する位置合わせを行い、当該位置合わせ後の前記複数の撮像画像に基づき前記修正撮像画像を生成する、請求項1から5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記印刷画像の位置基準となる基準マークが前記印刷画像とともに前記基材に形成され、前記複数の撮像画像のそれぞれに当該基準マークの画像が含まれるように、前記印刷ユニット、前記搬送機構、前記撮像部、および、前記移動機構を制御し、
前記複数の撮像画像における前記基準マークの画像に基づき前記複数の撮像画像の撮像位置の相違による前記複数の撮像画像間の位置ずれを補正する位置合わせを行い、当該位置合わせ後の前記複数の撮像画像に基づき前記修正撮像画像を生成する、請求項1から5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項11】
印刷画像を撮像する機能を有する印刷装置であって、
基材を搬送する搬送機構と、
前記基材に対して印刷を行う印刷ユニットと、
それぞれが前記基材の幅以上の長さを有し前記基材の搬送方向と直交する前記基材の幅方向の互いに異なる位置に当該幅方向にそれぞれ配置された複数のラインセンサを含み、前記基材に形成される印刷画像を当該複数のラインセンサによって撮像する撮像部と、
前記基材に形成される印刷画像を前記複数のラインセンサのそれぞれで撮像することにより複数の撮像画像が取得されるように、前記印刷ユニット、前記搬送機構、および、前記撮像部を制御する制御部と
を備え、
前記複数のラインセンサのそれぞれは、それぞれが複数の撮像素子を含む複数のユニットを直線状に並べて構成され、互いに隣接するユニットのつなぎ目を含む領域に、撮像素子のない不感エリアを有しており、
前記制御部は、前記複数の撮像画像に基づき、前記複数のラインセンサにおける前記不感エリアに起因して前記複数の撮像画像において生じる画像欠落が解消された修正撮像画像を生成する、印刷装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記複数のラインセンサにおける前記不感エリアに起因して前記複数の撮像画像において生じる画像欠落の領域を不感画像エリアとして特定し、
前記複数の撮像画像における前記不感画像エリアに含まれる画素に“0”または“0”近傍の正値を重み係数として割り当て、前記印刷画像の各画素につき、前記複数の撮像画像において当該各画素に対応する画素の濃度の加重平均値を求めることにより、前記修正撮像画像を生成する、請求項11に記載の印刷装置。
【請求項13】
搬送される基材に形成される印刷画像を撮像する撮像方法であって、
前記基材の幅以上の長さを有し前記基材の搬送方向と直交する前記基材の幅方向に配置された少なくとも1つのラインセンサによって、前記幅方向の互いに異なる位置で前記印刷画像を撮像することにより、複数の撮像画像を取得する撮像ステップと、
前記複数の撮像画像に基づき、前記印刷画像を表す修正撮像画像を生成するマージ処理ステップとを備え、
前記少なくとも1つラインセンサのそれぞれは、それぞれが複数の撮像素子を含む複数のユニットを直線状に並べて構成され、互いに隣接するユニットのつなぎ目を含む領域に、撮像素子のない不感エリアを有しており、
前記マージ処理ステップでは、前記複数の撮像画像に基づき、前記少なくとも1つのラインセンサにおける前記不感エリアに起因して前記複数の撮像画像において生じる画像欠落が解消された画像が前記修正撮像画像として生成される、撮像方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのラインセンサは、1つのラインセンサを含み、
前記撮像ステップは、前記1つのラインセンサを前記幅方向に前記基材に対し相対的に移動させる移動ステップを含み、
前記移動ステップでは、前記基材に形成される前記印刷画像が前記幅方向の前記互いに異なる位置で前記1つのラインセンサによって撮像されるように前記1つのラインセンサが移動する、請求項13に記載の撮像方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのラインセンサは、前記幅方向の互いに異なる位置にそれぞれ配置された複数のラインセンサを含み、
前記撮像ステップでは、前記複数のラインセンサによって前記幅方向の互いに異なる位置で前記印刷画像を撮像することにより前記複数の撮像画像が取得される、請求項13に記載の撮像方法。
【請求項16】
前記マージ処理ステップは、
前記不感エリアに起因して前記複数の撮像画像において生じる画像欠落の領域を不感画像エリアとして特定する不感画像エリア検出ステップと、
前記複数の撮像画像における前記不感画像エリアに含まれる画素に“0”または“0”近傍の正値を重み係数として割り当て、前記印刷画像の各画素につき、前記複数の撮像画像において当該各画素に対応する画素の濃度の加重平均値を求めることにより、前記修正撮像画像を生成する加重平均ステップとを含む、請求項13に記載の撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷画像を撮像する機能を有する印刷装置に関し、更に詳しくは、ラインセンサを用いて印刷画像を撮像する機能を有するインクジェット印刷装置等の印刷装置、および、ラインセンサを用いて印刷画像を撮像するための撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷ヘッドからインクを吐出して印刷用紙やフィルム等の印刷基材(以下、単に「基材」という)に画像を形成するインクジェット印刷装置では、印刷ヘッドにおけるインクの吐出口面の汚れ(ノズル面の汚れ)や、インク流路での気泡発生または空気混入(エア噛み)等により、印刷ヘッドにおいてノズルからインクが吐出されなくなったり、ノズルから吐出されたインク滴の着地点にずれが生じたりすることがある。このようなインクの吐出不良が生じると、基材に形成される印刷画像において、吐出不良状態のノズル(以下「吐出不良ノズル」という)に対応するスジが発生することがある。印刷の高速化のために基材の幅方向にノズルを多数並べて基材幅と略同じ長さを有するフルラインの印刷ユニットを備えたワンパス方式のインクジェット印刷装置では、このような吐出不良によるスジの発生を抑制することが重要な課題となっている。なお、本明細書において、基材とは、インクジェット印刷装置等の印刷装置において印刷画像が形成される紙やフィルム等のシート材をいう。
【0003】
上記のような吐出不良によるスジの発生は、吐出不良ノズルの機能を回復するためのメンテナンス処理(ワイプ、パージ、または、フラッシング)や印刷データの補正処理により解消することができる。しかし、そのためには、吐出不良を検出するとともに印刷ヘッドにおける吐出不良ノズルを特定する必要がある。ワンパス方式のインクジェット装置では、印刷ヘッドに多数のノズルが含まれていることから、テストチャートを印刷して撮像することにより得られる画像から吐出不良ノズルを特定するという処理が自動化されている場合が多い。
【0004】
このようなテストチャートの撮像装置として、以前はラインカメラが使用されていたが、近年は、大きな設置面積が不要で調整が容易な長尺の密着型イメージセンサ(以下「CIS」という)が使用されることがある。このようにインクジェット印刷装置で使用されるラインセンサとしてのCIS(Contact Image Sensor)は、印字の有無に関わらず基材上の汚れや不良も検出する要望があることから、基材幅以上の撮像範囲を有する必要がある。このため、CISの撮像範囲は、通常、数百mm程度である。
【0005】
一般にCISでは、それに含まれる撮像素子の配置間隔が撮像解像度に大きく影響するので、高密度に撮像素子が配置される。このため、インクジェット印刷装置で使用されるCISのように一定以上の長さを必要とするCISは、生産性やコストの観点から、通常、直線状に配置された複数個の撮像素子を含むユニットを複数個レイアウトすることで長尺化される。このような構成のCISでは、ユニット間に微量な隙間が空き、撮像素子が存在しない不感エリアが発生する。
【0006】
本願で開示される印刷装置が有する撮像機能に関連して、原画像における欠落画素を補間する補間処理を行う装置や方法が下記の特許文献1~3に記載されている。例えば特許文献3には、複数の撮像素子が直線状に配列されたセンサICチップが複数個直線状に配列された密着イメージセンサにおいてセンサICのつなぎ目部分(不感エリア)に画素を補間するのに用い得る画像補間装置が開示されている。この画像補間装置は、直線状に配列された複数の画素のうちの欠落画素を補間するために、欠落画素以外の上記複数の画素の値を表すデータに対して補間処理を行う。この補間処理では、カットオフ周波数より低い周期的なデータを良好に補間すべく、カットオフ周波数の高い低域通過フィルタを改良した補間方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-117291号公報
【特許文献2】特開2005-141611号公報
【特許文献3】特開2009-005208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
印刷装置に搭載される撮像装置は、テストチャートの撮像だけではなく、通常印刷の欠陥検査(スジや、汚れ、欠落等の検出)のための印刷画像の撮像にも利用されることがある。通常印刷の絵柄は、一様なものや、繰り返し性を持つもの、高精細なもの等、多岐にわたるので、撮像画像に対する補間方法には汎用的な手法が使用される。その結果、通常印刷と傾向の異なるテストチャートの撮像画像に対する補間処理では、適正な補間結果が得られないことがある。
【0009】
テストチャートは多数の短い線状パターンから構成されており、このようなテストチャートの印刷画像をCISで撮像して得られる撮像画像に対し補間処理を行うと、図6に示すように、補間処理後の撮像画像において、当該テストチャートには見られない濃いムラDf1や白ヌケDf2という不良が生じることがある。また、特許文献1においても「画像の内容、形状等により、回路毎にそれぞれ、小さな誤差で補間処理ができる画像、すなわち得意な画像と、補間誤差が大きくなってしまう画像、すなわち不得意な画像とが存在する。」との記載がある。
【0010】
そこで、インクジェット印刷装置においてテストチャート等の印刷画像を撮像したときに上記の補間処理の問題を回避しつつ良好な撮像画像を取得できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の局面は、印刷画像を撮像する機能を有する印刷装置であって、
基材を搬送する搬送機構と、
前記基材に対して印刷を行う印刷ユニットと、
前記基材の幅以上の長さを有し前記基材の搬送方向と直交する前記基材の幅方向に配置されたラインセンサを含み、前記基材に形成される印刷画像を当該ラインセンサによって撮像する撮像部と、
前記ラインセンサを前記幅方向に前記基材に対し相対的に移動させる移動機構と、
前記基材に形成される前記印刷画像を前記幅方向における互いに異なる位置で撮像することにより複数の撮像画像が取得されるように、前記搬送機構、前記撮像部、および、前記移動機構を制御する制御部と
を備え、
前記ラインセンサは、それぞれが複数の撮像素子を含む複数のユニットを直線状に並べて構成され、互いに隣接するユニットのつなぎ目を含む領域に、撮像素子のない不感エリアを有しており、
前記制御部は、前記複数の撮像画像に基づき、前記ラインセンサにおける前記不感エリアに起因して前記複数の撮像画像のそれぞれに生じる画像欠落が解消された修正撮像画像を生成する。
【0012】
本発明の第2の局面は、印刷画像を撮像する機能を有する印刷装置であって、
基材を搬送する搬送機構と、
前記基材に対して印刷を行う印刷ユニットと、
それぞれが前記基材の幅以上の長さを有し前記基材の搬送方向と直交する前記基材の幅方向の互いに異なる位置に当該幅方向にそれぞれ配置された複数のラインセンサを含み、前記基材に形成される印刷画像を当該複数のラインセンサのそれぞれによって撮像する撮像部と、
前記基材に形成される印刷画像を前記複数のラインセンサのそれぞれで撮像することにより複数の撮像画像が取得されるように、前記印刷ユニット、前記搬送機構、および、前記撮像部を制御する制御部と
を備え、
前記複数のラインセンサのそれぞれは、それぞれが複数の撮像素子を含む複数のユニットを直線状に並べて構成され、互いに隣接するユニットのつなぎ目を含む領域に、撮像素子のない不感エリアを有しており、
前記制御部は、前記複数の撮像画像に基づき、前記複数のラインセンサにおける前記不感エリアに起因して前記複数の撮像画像のそれぞれに生じる画像欠落が解消された修正撮像画像を生成する。
【0013】
本発明の第3の局面は、搬送される基材に形成される印刷画像を撮像する撮像方法であって、
前記基材の幅以上の長さを有し前記基材の搬送方向と直交する前記基材の幅方向に配置された少なくとも1つのラインセンサによって、前記幅方向の互いに異なる位置で前記印刷画像を撮像することにより、複数の撮像画像を取得する撮像ステップと、
前記複数の撮像画像に基づき、前記印刷画像を表す修正撮像画像を生成するマージ処理ステップとを備え、
前記少なくとも1つラインセンサのそれぞれは、それぞれが複数の撮像素子を含む複数のユニットを直線状に並べて構成され、互いに隣接するユニットのつなぎ目を含む領域に、撮像素子のない不感エリアを有しており、
前記マージ処理ステップでは、前記複数の撮像画像に基づき、前記少なくとも1つのラインセンサにおける前記不感エリアに起因して前記複数の撮像画像のそれぞれに生じる画像欠落が解消された画像が前記修正撮像画像として生成される。
【0014】
本発明の他の局面は、本発明の上記局面ならびに後述の実施形態およびその変形例に関する説明から明らかであるので、その説明を省略する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の局面では、ラインセンサが基材の幅方向に基材に対し相対的に移動し、基材に形成される印刷画像が当該幅方向の互いに異なる位置で撮像されることにより複数の撮像画像が取得される。ラインセンサは、それぞれが複数の撮像素子を含む複数のユニットを直線状に並べて構成され、互いに隣接するユニットのつなぎ目を含む領域に、撮像素子のない不感エリアを有している。この不感エリアに起因して上記複数の撮像画像のそれぞれには画像欠落が生じるが、上記複数の撮像画像は、上記幅方向の互いに異なる位置での撮像により取得されたものであるので、画像欠落の上記幅方向の位置は上記複数の撮像画像の間で異なっている。このような複数の撮像画像に基づき、基材に形成された印刷画像を表す撮像画像として、上記複数の撮像画像のそれぞれに生じる画像欠落が解消された修正撮像画像が生成される。このため、この修正撮像画像を用いることにより、通常印刷の欠陥検査を正確に行うことができる。また、インクジェット印刷装置において印刷ユニットにおける吐出不良の検出および吐出不良ノズルの特定を行うためにテストチャートを基材に印刷して撮像する場合においても、テストチャートの印刷画像に対する良好な撮像画像が修正撮像画像として生成される。したがって、この修正撮像画像を用いることにより、インクジェット印刷装置において、吐出不良ノズルを正確に特定し、吐出不良ノズルの機能を回復するためのメンテナンス処理(ワイプ、パージ、または、フラッシング)や、吐出不良による印字不良を補償するための印刷データの補正処理を効果的に行うことができる。
【0016】
本発明の第2の局面では、基材の幅方向の互いに異なる位置に当該幅方向にそれぞれ配置された複数のラインセンサにより、基材に形成された印刷画像が撮像される。これにより、当該印刷画像を当該幅方向の互いに異なる位置で撮像した複数の撮像画像が取得される。このような複数の撮像画像に基づき、上記印刷画像を表す撮像画像として、上記複数の撮像画像のそれぞれに生じる画像欠落が解消された修正撮像画像が生成される。したがって、この修正撮像画像を用いることにより、本発明の上記第1の局面と同様の効果が得られる。
【0017】
本発明の第3の局面では、少なくとも1つのラインセンサによって、基材の幅方向の互いに異なる位置で、基材に形成された印刷画像を撮像することにより、複数の撮像画像が取得される。このような複数の撮像画像に基づき、上記印刷画像を表す撮像画像として、上記複数の撮像画像のそれぞれに生じる画像欠落が解消された修正撮像画像が生成される。したがって、本発明の第3の局面においても、本発明の上記第1の局面と同様の効果が得られる。
【0018】
本発明の他の局面の効果については、本発明の上記局面の効果ならびに下記実施形態およびその変形例の効果についての説明から明らかであるので、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の構成を示す模式図である。
図2】上記第1の実施形態における制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】上記実施形態における印刷ユニットの構成を示す模式図(A)および当該印刷ユニットに含まれる印刷ヘッドの構成を示す模式図(B)である。
図4】上記第1の実施形態における撮像部で使用されるCISの構成を説明するための図である。
図5】上記撮像部において隣接センサユニットのつなぎ目部分に生じる不感エリアを説明するための図である。
図6】上記不感エリアを有するCISによって吐出不良検出用のテストチャートを撮像することにより得られるテストチャート画像に対し補間処理を行った場合の問題を説明するための図である。
図7】上記第1の実施形態における撮像部の第1の構成例を示す図である。
図8】上記第1の実施形態における撮像部の第2の構成例を示す図である。
図9】上記第1の実施形態における撮像部の第3の構成例を示す図である。
図10】上記第1の実施形態において上記不感エリアに起因する欠落画像を補償するための撮像画像処理の概要を説明するための図である。
図11】上記第1の実施形態における撮像画像処理を示すフローチャートである。
図12】上記第1の実施形態における上記撮像画像処理に含まれる不感画像エリア検出処理を示すフローチャートである。
図13】上記不感画像エリア検出処理のために撮像すべき印刷画像を説明するための図である。
図14】上記不感画像エリア検出処理における不感画像エリアの特定方法を説明するための図である。
図15】上記第1の実施形態における吐出不良検出処理を示すフローチャートである。
図16】上記第1の実施形態におけるテストパターンを説明するための図である。
図17】本発明の第2の実施形態に係る印刷装置における撮像部の構成を説明するための模式図である。
図18】上記第2の実施形態における撮像画像処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0021】
<1.第1の実施形態>
<1.1 全体構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る印刷装置10の構成を示す模式図である。この印刷装置10は、ワンパス方式のインクジェット印刷装置であって、それぞれが多数のノズルを含む多数の印刷ヘッドが基材としての印刷用紙の幅を覆うように配列されたフルラインの印刷ユニットを備えている。すなわち、この印刷装置10の印刷ユニットは、基材としての印刷用紙の幅方向に並べた多数のノズルを含む印刷ヘッドを多数並べて構成され、印刷用紙の幅と略同じ長さを有している。図1に示すように、この印刷装置10は、ロール状の基材としての巻取紙から長尺状の基材としての印刷用紙(以下、単に「用紙」という)5を巻き出して供給する用紙送出部202と、用紙5を印刷機構200の内部へと搬送するための第1の駆動ローラ203と、印刷機構200の内部で用紙5を搬送するための複数個の支持ローラ204と、用紙5にインクを吐出して印刷を行う印刷ユニット205と、印刷後の用紙5を乾燥させる乾燥部206と、用紙5を印刷機構200の内部から出力するための第2の駆動ローラ207と、印刷後の用紙5を巻き取る用紙巻取部208とを備えている。第1の駆動ローラ203と支持ローラ204と第2の駆動ローラ207とは、用紙5を移動させるための搬送機構を構成する。
【0022】
印刷ユニット205には、Y色(Yellow:黄)、M色(Magenta:マゼンタ)、C色(Cyan:シアン)、およびK色(Black:黒)のインクをそれぞれ吐出する第1から第4印刷ヘッド列205y,205m,205c,および205kが含まれている。また、印刷機構200の内部には、ラインセンサを用いて構成された撮像部301が含まれている。撮像部301は印刷済みの用紙5を撮像し、撮像によって得られたデータは制御部100へと送られる。なお、インクジェット印刷装置10は、ネットワーク3を介して受け取る入稿データまたは印刷データの表す画像の印刷を行う通常モードの他、吐出不良を検出するための検査モードを有している。
【0023】
<1.2 制御部の構成>
図2は、上記インクジェット印刷装置10における制御部100のハードウェア構成を示すブロック図である。この制御部100は、本体11、補助記憶装置12、表示部14、および、操作部15を備えている。本体11は、CPU111、メモリ112、ディスクインタフェース部113、表示制御部115、入力インタフェース部116、画像処理部117、印刷実行制御部118、撮像制御部119、および、ネットワークインタフェース部120を含んでいる。CPU111、メモリ112、ディスクインタフェース部113、表示制御部115、入力インタフェース部116、画像処理部117、印刷実行制御部118、撮像制御部119、および、ネットワークインタフェース部120は、システムバスを介して互いに接続されている。ディスクインタフェース部113には補助記憶装置12が接続されている。表示制御部115には表示部14が接続されている。入力インタフェース部116には、キーボードやマウス等を含む操作部15が接続されている。ネットワークインタフェース部120にはネットワーク3が接続され、本制御部100は、このネットワーク3を介してホスト装置等に接続されている。補助記憶装置12は磁気ディスク装置等である。表示部14は液晶ディスプレイ等である。表示部14は、作業者が所望する情報を表示するために使用される。操作部15は、インクジェット印刷装置10に対して作業者が指示を入力するために使用される。
【0024】
補助記憶装置12には、通常モードにおいて、ネットワーク3を介して受け取る入稿データから印刷データを生成し当該印刷データの表す画像を印刷機構200に印刷させるための制御プログラム17が格納されている。既述のように印刷機構200には、用紙5に形成された印刷画像を撮像する撮像部301が設けられている。CPU111が補助記憶装置12内の制御プログラム17をメモリ112に読み出して実行することにより、通常モードにおいて、上記のように印刷データを生成して印刷機構200に画像を印刷させる印刷制御処理18aに加えて、当該印刷画像を撮像部301により撮像して得られる撮像画像から当該印刷画像をより正確に表す画像(以下「修正撮像画像」という)を生成するための撮像画像処理18bが行われる。また、このようなCPU111による制御プログラム17の実行により、検査モードでは、印刷ユニット205における吐出不良の検出および吐出不良位置の特定(吐出不良ノズルの特定)を行うためのテストチャートを印刷機構200により用紙5に印刷するための処理も印刷制御処理18aとして行われ、これによりテストチャート画像が印刷画像として用紙5に形成される。このテストチャート画像を撮像して得られる撮像画像から当該テストチャート画像をより正確に表す修正撮像画像を生成するための処理も撮像画像処理18bとして行われる。
【0025】
画像処理部117は、制御プログラム17を実行するCPU111による制御の下、ページ記述言語で記述された入稿データに対しラスタライズ処理を施すことによりビットマップ形式の印刷データを生成する。印刷実行制御部118は、制御プログラム17を実行するCPU111が印刷機構200の各部を制御するためのインタフェースとして機能する。撮像制御部119は、制御プログラム17を実行するCPU111が、用紙5に形成された印刷画像に対して撮像を行う撮像部301を制御するためのインタフェースとして機能する。
【0026】
<1.3 印刷ユニットの構成>
図3(A)は、本実施形態における印刷ユニット205の構成を示す模式図であり、図3(B)は、この印刷ユニット205に含まれる印刷ヘッド210の構成を示す模式図である。
【0027】
図3(A)に示すように、印刷ユニット205は、用紙5の搬送方向に列置されたC色(シアン)、M色(マゼンタ)、Y色(黄)、およびK色(黒)の印刷ヘッド列205y、205m、205c、および205kから構成されている。各印刷ヘッド列205x(x=y,m,c,k)は、2列に千鳥状に配置されたN個の印刷ヘッド210により構成されており、用紙5の搬送方向に直交する方向(以下「用紙幅方向」という)に延びている。これらN個の印刷ヘッド210は、用紙5の幅全体に亘って配列されている。
【0028】
図3(B)に示すように、各印刷ヘッド210は、用紙幅方向に並ぶ多数のノズル(インク吐出部)21を含む。Y色の印刷ヘッド列205yにおける各印刷ヘッド210の各ノズル21はY色のインクを吐出し、M色の印刷ヘッド列205mにおける各印刷ヘッド210の各ノズル21はM色のインクを吐出し、C色の印刷ヘッド列205cにおける各印刷ヘッド210の各ノズル21はC色のインクを吐出し、K色の印刷ヘッド列205kにおける各印刷ヘッド210の各ノズル21はK色のインクを吐出する。
【0029】
<1.4 撮像部の構成>
<1.4.1 撮像部で使用されるCISの構成と問題点>
図4は、本実施形態における撮像部301でラインセンサとして使用されるCIS(Contact Image Sensor)30の構成を説明するための図である。このCIS30は、用紙5の幅(基材幅)Wmよりも若干大きい幅を有する長尺状である。この長尺のCIS30は、直線状に配置された複数の撮像素子すなわち撮像素子IE1~IEmを含むセンサユニット(「センサチップ」とも呼ばれる)SUを複数個(n個)直線状に並べて構成されている。例えば、用紙幅Wmが300mmの場合、CIS30は、直線状に並ぶ数個から10数個程度のセンサユニットSU1~SUnから構成される。
【0030】
図5は、隣接するセンサユニットのつなぎ目部分の拡大図であり、第1センサユニットSU1と第2センサユニットSU2とのつなぎ目部分を示している。図5に示すように、第1および第2センサユニットSU1,SU2のそれぞれでは、m個の撮像素子IE1~IEmが間隔(「ユニット内素子間隔」という)dsで等間隔に配置されているが、先行ユニットである第1センサユニットSU1における最後尾の撮像素子IEmと後続ユニットである第2センサユニットSU2における先頭の撮像素子IE1との間隔(「つなぎ目部分素子間隔」という)dxは、ユニット内素子間隔dsよりも大きく、第1センサユニットSU1と第2センサユニットSU2とのつなぎ目を含むつなぎ目近傍の領域(以下「つなぎ目領域」という)において不感エリアAsxが存在する。すなわち、つなぎ目部分素子間隔dxは、当該つなぎ目が無く上記間隔dsで撮像素子が配置される場合に比べ少なくとも1つの撮像素子IExが欠落する程度の大きさである。以下では、説明の便宜上、つなぎ目部分素子間隔dxは、隣接するセンサユニットSUk-1,SUk間のつなぎ目領域(k=2~n)において1つの撮像素子IExが欠落する程度の大きさであるものとする。
【0031】
上記のような長尺のCIS30により印刷画像を撮像すると、CIS30はつなぎ目領域に不感エリアAsx(欠落撮像素子IEx)を有することから、撮像画像において画素欠落が生じる。従来、このような画素欠落を含む撮像画像に対して補間処理を行われていた。しかし、検査モードにおいて、既述のテストチャートの印刷により用紙5に形成されるテストチャート画像を撮像することにより得られる撮像画像に対して補間処理を行うと、適正な補間結果が得られないことがある。すなわち、テストチャートは、多数の短い線状パターンから構成されており、このようなテストチャートの印刷画像をCIS30で撮像して得られる撮像画像に対し補間処理を行うと、図6に示すように、補間処理後の撮像画像において、当該テストチャートには見られない濃いムラDf1や白ヌケDf2のような画像不良が生じることがある。
【0032】
<1.4.2 撮像部におけるCISの移動機構>
次に、本実施形態における撮像部301においてCIS30を移動させるための構成について説明する。本実施形態では、CIS30におけるつなぎ目領域の不感エリアAsx(欠落撮像素子IEx)に起因する撮像画像の欠落画像を補償するために、撮像部301は、ラインセンサとしてのCIS30を用紙幅方向に移動させて用紙幅方向の互いに異なる位置で印刷画像を撮像するように構成されている。
【0033】
図7は、本実施形態における撮像部301の第1の構成例を示す図である。図7に示すように、本構成例による撮像部301は、CIS30がガイド311a,311bによって用紙幅方向Yに案内されるように構成されており、CIS30に固定されたラック312と、ラック312に噛み合うピニオン313と、当該ピニオン313を回転させるモータ315および減速機314と、当該モータ315の回転量を検出するエンコーダ316を備えている。このような構成によれば、モータ315を回転させることにより減速機314およびラック・ピニオン機構(312,313)を介してCIS30が用紙幅方向Yに移動し、その移動量をエンコーダ316の出力信号から求めることができる。図7に示すCIS30の移動機構において、エンコーダ316はCIS30の用紙幅方向Yの移動量または位置の計測部として機能する。
【0034】
図8は、本実施形態における撮像部301の第2の構成例を示す図である。本構成例による撮像部301も、CIS30がガイド311a,311bによって用紙幅方向Yに案内されるように構成されている。しかし本構成例では、上記第1の構成例とは異なり、図8に示すように、CIS30の一端側にカム機構320が設けられ、CIS30の他端側がバネ323によって当該一端側に向かう方向に付勢される構成となっている。このような構成によれば、カム機構320におけるカム321をモータ(不図示)によって回転させることによりCIS30を用紙幅方向Yに移動させることができる。
【0035】
図9は、本実施形態における撮像部301の第3の構成例を示す図である。本構成例による撮像部301も、上記第1の構成例と同様、CIS30がガイド311a,311bによって用紙幅方向Yに案内されるように構成されている。しかし本構成例では、上記第1の構成例とは異なり、図9に示すように、CIS30の一端側にボールねじ330が取り付けられ、このボールねじを回転させるためのモータ332および減速機331と、当該モータ332の回転量を検出するエンコーダ333とが設けられている。このような構成によれば、モータ332を回転させることでボールねじ330によりCIS30を用紙幅方向Yに移動させ、その移動量をエンコーダ333の出力信号から求めることができる。また、CIS30の他端側にレーザ変位計等の変位測定機335を設け、これによりCIS30の移動量を求めるようにしてもよい。図9に示すCIS30の移動機構において、エンコーダ333および変位測定機335は、CIS30の用紙幅方向Yの移動量または位置の計測部として機能する。
【0036】
<1.5 撮像画像処理>
図10は、CIS30における既述の不感エリアに起因する欠落画像を補償するための撮像画像処理の概要を説明するための図である。図10では、CIS30における不感エリアAsxは、説明の便宜上、隣接する一対のセンサユニットSUk-1,SUk間の空隙として表現されている。以下では、上記第1から第3の構成例のいずれかの構成によりCIS30が用紙幅方向Yに移動し、用紙幅方向Yにおける3つの位置Ps1,Ps2,Ps3(以下、「第1撮像位置Ps1」、「第2撮像位置Ps2」、「第3撮像位置Ps3」という)のそれぞれにおいて印刷画像が撮像されるものとする。これら第1から第3撮像位置Ps1~Ps3は、用紙幅方向Yの相互のずれ量が不感エリアAsxの用紙幅方向Yのサイズよりも大きくなるように設定されている。また以下では、用紙5に形成される印刷画像50の位置基準となる基準マークとしてのトンボ51が、用紙5に印刷画像と同時に形成されるものとする。
【0037】
図10(A)は、 用紙5に形成された印刷画像50およびトンボ51を第1、第2、および第3撮像位置Ps1,Ps2,Ps3のそれぞれで撮像する場合のCIS30の位置を示している。図10(A)では、CIS30の位置を明確化すべく、第1撮像位置Ps1で撮像を行うCISを符号“30(Ps1)”で示し、第2撮像位置Ps2で撮像を行うCISを符号“30(Ps2)”で示し、第3撮像位置Ps3で撮像を行うCISを符号“30(Ps3)”で示しており、符号“Asx”はCISにおける不感エリアを示し、符号“Wm”は用紙幅を示している。この点は、以下に述べる図10(B)および図10(C)においても同様である。
【0038】
図10(B)は、第1、第2、および第3撮像位置Ps1,Ps2,Ps3のそれぞれで印刷画像50およびトンボ51を撮像することにより得られる撮像画像50a1,50a2,50a3を示している。図10(B)において、実線の矩形は用紙5を示し、点線の矩形は撮像範囲を示し、符号“Wi”は撮像全幅を示している。図10(B)に示すように、撮像画像50a1,50a2,50a3において、第1、第2、および第3撮像位置Ps1,Ps2,Ps3での不感エリアAsxに対応する画像欠落50x1,50x2,50x3がそれぞれ生じている。ここで、1、第2、および第3撮像位置Ps1,Ps2,Ps3は、図7に示す移動機構におけるエンコーダ316、図9に示す移動機構におけるエンコーダ333、変位測定機335のいずれかにより求めることができる。
【0039】
図10(C)は、第1、第2、および第3撮像位置Ps1,Ps2,Ps3にそれぞれ対応する撮像画像50a1,50a2,50a3を基準マークとしてのトンボ51を用いて位置合わせをした後の撮像画像50b1,50b2,50b3を示し、更に、これらの位置合わせ後の撮像画像50b1,50b2,50b3を用いてマージ処理を行うことにより得られる修正撮像画像50cを示している。図10(C)に示すように、不感エリアAsxに起因する欠落画像(10(B)に示す画像領域50x1,50x2,50x3参照)がマージ処理により補償されることで、修正撮像画像50cでは、不感エリアAsxに起因する画像欠落が解消されている。このマージ処理の内容については後述する。なお、上記の画像50b1,50b2,50b3における欠落画像の位置は、点線の矩形で示される撮像範囲の端部(撮像端)から欠落画像までの距離Dxにより特定される。この距離Dxは、CIS30における不感エリアAsxの位置に対応している。
【0040】
本実施形態に係る印刷装置10では、通常モードおよび検査モードのいずれにおいても、制御部100におけるCPU111が制御プログラム17を補助記憶装置12からメモリ112に読み出して実行することにより、印刷制御処理18aおよび撮像画像処理18bが実現される。印刷制御処理18aでは、制御部100が印刷機構200ならびに用紙送出部202および用紙巻取部208を制御することにより、入稿データから生成される印刷データに基づく印刷画像または予め用意されたテストチャートの印刷画像が用紙5に形成される。撮像画像処理18bでは、このようにして用紙5に形成される印刷画像が撮像部301によって複数の互いに異なる位置で撮像されることにより複数の撮像画像が生成され、これら複数の撮像画像を用いたマージ処理により修正撮像画像が生成される。以下、このような撮像画像処理の詳細を説明する。
【0041】
図11は、本実施形態において修正撮像画像を生成するための撮像画像処理、すなわち、図10(A)~図10(C)に示す上記撮像画像処理の詳細を示すフローチャートである。この撮像画像処理では、CPU111は、制御プログラム17に基づき下記のように動作する。
【0042】
まず、1つの印刷データまたは1つのテストチャートに対応する印刷画像の撮像回数NIを受け取る(ステップS10)。具体的には、操作部15に対する入力操作に基づき撮像回数NIが入力されるようにしてもよいし、撮像回数NIを示す数値を予め補助記憶装置12等に格納しておき、その数値を読み出すようにしてもよい。撮像回数NIは、2以上の自然数であり、図10に示す例では“3”である。また、ステップS10では、後続のステップで参照する変数kを“1”に初期化するとともに、CIS30の用紙幅方向の位置(より一般的にはCIS30の用紙に対する相対位置)が予め決められた初期位置となるように撮像部301の移動機構(図7図9にそれぞれ示すピニオン・ラック、カム機構、または、ボールねじ)を制御する。
【0043】
次に、撮像部301の移動機構およびCIS30を制御することにより、印刷制御処理18aにより基材としての用紙5に形成される印刷画像を第k相対位置(図10に示す例では、第1、第2、および第3撮像位置Ps1,Ps2,Ps3のうち第k相対位置に相当する位置)において撮像し、これにより生成される撮像画像のデータを第k撮像画像のデータDIkとして取得する(ステップS12)。
【0044】
次に、第k撮像画像の一端を基準にして第k撮像画像内の不感画像エリアを特定する(ステップS14)。ここで、不感画像エリアとは、印刷画像の撮像により得られる撮影画像においてCIS30の不感エリアに起因して当該印刷画像の一部に対応する画像が欠落している領域をいう。図10に示す例では、不感画像エリアは、図10(B)に示す撮像画像50a1,50a2,50a3において図10(A)に示す印刷画像50の一部に対応する画像が不感エリアAsxに起因して欠落している領域50x1,50x2,50x3(図10(B)では濃度の極めて低い画像部分として示されている領域)である。なお、不感画像エリアの位置は、CIS30における不感エリアAsxの位置に基づき読み取った用紙5の一端の位置からの距離として特定できるが、用紙5の収縮も想定される。そこで本実施形態では、下記のような不感画像エリア検出処理により不感画像エリアを特定する。ただし、不感画像エリアの特定に際し用紙5の収縮が問題にならない場合には、CIS30における不感エリアAsxの位置に基づき不感画像エリアを特定してもよい。
【0045】
図12は、本実施形態において撮像画像処理18bに含まれる不感画像エリア検出処理を示すフローチャートである。この不感画像エリア検出処理では、CPU111は下記のように動作する。なお、この不感画像エリア特定処理では、前提として、図13に示すように、印刷制御処理18aにおいて、用紙5に撮像対象としての印刷画像50が形成される直前に均一な濃度の印刷画像(以下「均一濃度パターン画像」という)52が用紙5に形成されるものとする。
【0046】
不感画像エリア検出処理では、まず、基材としての用紙5の一端(基材端)を基準とする不感画像エリアの推定位置をCIS30における不感エリアAsxの位置および第k相対位置に基づき求める(ステップS30)。
【0047】
次に、用紙5に形成された均一濃度パターン画像52を撮像して得られる均一濃度パターン撮像画像に基づき濃度分析を行う(ステップS32)。図14は、この濃度分析の結果を示すグラフであり、用紙幅方向における均一濃度パターン撮像画像の濃度レベルの変化を示している。もしCIS30に不感エリアAsxがなければ、この濃度分析により得られる濃度レベルは、用紙幅方向の位置に関わらず一定である。しかし、実際にはCIS30は不感エリアAsxを有しているので(図4図5参照)、図14に示すように、用紙幅方向において濃度レベルが大きく低下する区間が生じる。そこで、この区間を上記濃度分析結果に基づき不感画像エリアApxとして検出する(ステップS34)。この不感画像エリアApxは、図10(B)に示す例における画像領域50x1,50x2,50x3に相当する。
【0048】
次に、ステップS30で求められた不感画像エリアの推定位置とステップS32での濃度分析により検出された不感画像エリアApxに基づき不感画像エリアを特定する(ステップS34)。具体的には、濃度分析により検出された不感画像エリアApxが、当該不感画像エリアの推定位置と所定の誤差範囲で整合していれば、当該不感画像エリアApxを第k撮像画像における不感画像エリアとして決定し、不感画像エリア検出処理を終了する(正常終了)。なお、当該不感画像エリアの推定位置と当該検出された不感画像エリアApxとが整合しない場合は、第k撮像画像における不感画像エリアを特定できない異常が発生したとして不感画像エリア検出処理を終了する(異常終了)。
【0049】
上記の不感画像エリア検出処理が正常に終了すると、図11に示す撮像画像処理に戻り、第k撮像画像内の不感画像エリアに含まれる画素に“0”または“0”近傍の正値を重み係数として割り当て、他の画素に重み係数として“1”を割り当てることにより、第k前処理画像データDpkを生成する(ステップS16)。この第k前処理画像データDpkは、第k撮像画像における各画素についての濃度値と重み係数とを含む。なお、上記の不感画像エリア検出処理が異常終了した場合には、第k撮像画像において不感画像エリアを特定できない異常が発生したとして撮像画像処理を強制的に終了する。
【0050】
上記のようにして第k前処理画像データDpkが生成されると、次に、変数kが撮像回数NIよりも小さいか否かを判定する(ステップS18)。その判定の結果、撮像回数NIよりも小さければステップS20へ進み、変数kの値を1だけ増加させる。その後、CIS30の用紙5に対する相対位置が変更されるように撮像部301の移動機構を制御し、移動後のCIS30の用紙幅方向の位置を第k相対位置とする(ステップS22)。このときの撮像部301におけるCIS30の移動距離は、CIS30における不感エリアAsxの用紙幅方向の長さより長いことが好ましい。ただし、検査モードにおいて用紙5に印刷画像として形成されるテストチャートの画像を撮像する場合には、このときのCIS30の移動距離は、テストチャートにおける短い線状パターン(後述の図16参照)の幅に対応する画素数よりも1だけ多い画素数に相当する長さであることがより好ましい。
【0051】
ステップS22による相対位置の変更後はステップS12へ戻る。以降、ステップS18において変数kが撮像回数NIよりも小さいと判定されている間、ステップS12~S22を繰り返し実行し、ステップS18において変数kが撮像回数NI以上であると判定されると、ステップS24へ進む。
【0052】
ステップS24では、第1から第NI撮像画像につき基準マークに基づき位置合わせを行う。図10に示す例では、第1、第2,および、第2撮像画像50a1,50a2,50a3における基準マークとしてのトンボ51の用紙幅方向の位置が互いに一致するように、第1、第2,および、第3撮像画像50a1,50a2,50a3の用紙幅方向の位置が調整される(図10(B)、図10(C)参照)。これは、第1から第NI撮像画像の撮像位置の相違による第1から第NI撮像画像の間での位置ずれを補正する位置合わせに相当する。具体的には、この位置合わせでは、印刷画像50における各画素につき、当該各画素に対応する第1から第NI撮像画像における画素を互いに対応づけるように、第1から第NI前処理画像データDp1~DpNIを修正する。例えば、各前処理画像データDpk(k=1~NI)を配列データとして、印刷画像50における当該各画素に対応する第1から第NI撮像画像の画素の濃度値と重み係数が、各前処理画像データDpkとしての配列データにおける同じ位置の要素データして格納されるようにすればよい。
【0053】
なお、撮像位置の異なる複数の撮像画像の位置合わせを上記のようにトンボ51等の基準マークに基づき行う代わりに、図7等に示されるCIS30の移動機構のように、CIS30の用紙幅方向Yの移動量または位置の測定部(エンコーダ等)が当該移動機構に含まれている場合には、当該測定部による測定結果に基づき当該複数の撮像画像の位置合わせを行うようにしてもよい。
【0054】
その後、このような修正後の第1から第NI前処理画像データDp1~DpNIに基づき、位置合わせ後の第1から第NI撮像画像(図10(C)に示す例では撮像画像50b1,50b2,50b3)に対してマージ処理を行う(ステップS26)。具体的には、印刷画像50の各画素につき、当該各画素に対応する第1から第NI撮像画像の画素の濃度値と重み係数を修正後の第1から第NI前処理画像データDp1~DpNIから取り出し、取り出されたNI個の濃度値およびNI個の重み係数用いて当該NI個の濃度値の加重平均値を求め、その加重平均値を修正撮像画像(図10(C)に示す例では修正撮像画像50c)において当該各画素に対応する画素の濃度値とする。例えば、印刷画像50のいずれか1つの画素に対応する第1から第NI撮像画像の画素Px1~PxNIの濃度値をそれぞれd1~dNIとし、当該画素Px1~PxNIに割り当てられた重み係数をそれぞれw1~wNIとすると、修正撮像画像において当該いずれか1つの画素に対応する画素の濃度値dcは、次の式で与えられる。
dc=(w1・d1+w2・d2+…+wNI・dNI)/(w1+w2+…+wNI) …(1)
ここで、当該画素Px1~PxNIのうち不感画像エリアに含まれる画素Pxqに割り当てられた重み係数wqを“0”とし、当該画素Px1~PxNIのうち不感画像エリアに含まれない画素Pxpに割り当てられた重み係数wpを“1”とすると、修正撮像画像において当該いずれか1つの画素に対応する画素の濃度値dcは、当該画素Px1~PxNIのうち不感画像エリアに含まれない画素Pxpの濃度値dp(pはp≠qかつ1≦p≦NIなる整数)の平均値となる。
【0055】
上記のようにして、印刷画像の各画素につき、修正撮像画像において当該各画素に対応する画素の濃度値dcを求めることで、修正撮像画像を表す画像データとして修正撮像画像データが得られる。この修正撮像画像データが得られると、撮像画像処理を終了する。
【0056】
<1.6 撮像画像処理に基づく通常印刷の欠陥検査>
通常モードにおいて、印刷制御処理18aにより、入稿データから生成された印刷データの表す画像を用紙5に印刷画像として形成しつつ、図11に示す上記の撮像画像処理18bにより、当該印刷画像を撮像して修正撮像画像データを生成することができる。この修正撮像画像データを用いて通常印刷における欠陥検査を行うことができる。この欠陥検査には公知または周知の手法のいずれかを使用すればよい。例えば、上記印刷データの表す画像と当該修正撮像画像データの表す画像(修正撮像画像)とを照合することにより、用紙5に形成された印刷画像におけるスジや、汚れ、欠落等の欠陥を検出することができる。
【0057】
<1.7 撮像画像処理に基づく吐出不良ノズルの特定>
本実施形態に係るインクジェット印刷装置は、検査モードにおいて、吐出不良ノズルを特定する吐出不良位置情報を生成するために吐出不良検出処理を行う。図15は、この吐出不良検出処理の手順を示すフローチャートである。本実施形態では、図2に示す制御部100における補助記憶装置12内の制御プログラム17に吐出不良検出プログラムが含まれている。検査モードでは、制御部100におけるCPU111は、この吐出不良検出プログラムを補助記憶装置12からメモリ112に読み出して実行することにより、図15に示すように動作する。
【0058】
検査モードでは、予め用意されたテストチャートを用紙5に印刷機構200により印刷するための処理が印刷制御処理18aとして行われ、これと並行して実行される撮像画像処理が図15の吐出不良検出処理に含まれている。
【0059】
検査モードにおける印刷制御処理18aでは、CPU111は、印刷機構200の各部を制御することにより、印刷ユニット205における全ての印刷ヘッド210に対するテストパターン(以下「全ヘッドテストパターン」または「テストチャート」という)の画像(以下「テストチャート画像」という)が印刷画像として用紙5に形成されるように、搬送される用紙5に対し印刷ユニット205にインクを吐出させる。図16は、用紙5に形成されるテストチャート画像の一例を示している。
【0060】
図16に示すテストチャート画像では、各印刷ヘッド210につき互いに平行な2つパターンTP1,TP2が対応する。このうち第1のパターンTP1は、対応する印刷ヘッド210における奇数番目のノズルから吐出されるインクによって形成されるべき多数の短い線状パターンから構成され、第2のパターンTP2は、対応する印刷ヘッド210における偶数番目のノズルから吐出されるインクによって形成されるべき多数の短い線状パターンから構成されている。このように、1つの印刷ヘッド210につき2つのパターンTP1,TP2がテストパターンに含まれるように構成されているのは、用紙5に形成されたテストパターンの画像を撮像部301で撮像する際の読み取り精度を高めるためである。撮像部301の解像度によっては(解像度が十分に高い場合には)、各印刷ヘッド210につき、上記2つのパターンTP1,TP2に代えて、当該印刷ヘッド210における全てのノズルから吐出されるインクによって形成される1つのパターンのみが対応する構成であってもよい。
【0061】
本実施形態では、検査モードにおける撮像画像処理18bにおいて、用紙5に印刷画像として形成されるテストチャート画像が複数回(NI回)撮像される。このため、検査モードにおける印刷制御処理18aにおいて、この撮像回数NIと同じ回数、テストチャート画像が繰り返し用紙5に形成される。
【0062】
検査モードでは、上記のような印刷制御処理18aと並行して、図15に示す吐出不良検出処理が実行される。この吐出不良検出処理においてCPU111は下記のように動作する。
【0063】
まず、図11に示した撮像画像処理18bを実行する。これにより、用紙5に印刷画像として形成されるテストチャート画像に対するNI回の撮像により得られる第1から第NI撮像画像を用いた既述のマージ処理により、テストチャート画像の撮像画像を表す修正撮像画像データが生成される(ステップS100)(図11参照)。この修正撮像画像データが表すテストチャート画像(以下「修正テストチャート画像」という)では、CIS30の不感エリアAsxに起因する画像欠落が解消されている(図10(C)参照)。
【0064】
次に、撮像画像処理により得られた修正撮像画像データに基づき、修正テストチャート画像において吐出不良を起こした箇所(ドット抜けの箇所)を検出する(ステップS102)。
【0065】
次にCPU111は、上記の吐出不良の検出結果に基づき吐出不良ノズル検出処理を実行する(ステップS104)。この吐出不良ノズル検出処理は、印刷ユニット205における吐出不良ノズルを特定して吐出不良位置を求める処理であり、公知または周知のいずれの手法による処理であってもよい。
【0066】
上記の吐出不良ノズル検出処理により、修正テストチャート画像から吐出不良ノズルが特定されると、吐出不良ノズルを特定する情報を吐出不良位置情報としてメモリ112に保存する(ステップS106)。これにより、吐出不良検出処理を終了する。
【0067】
本実施形態における通常モードにおいて、印刷処理が行われる場合には、メモリ112に格納された吐出不良位置情報で特定される吐出不良ノズルを含むノズル群において、吐出不良のノズルの機能を回復するためのメンテナンス処理(インクを勢いよく吐出させるフラッシング処理、ノズル面を吸引する吸引パージ処理、または、ヘッド面を清掃してヘッド面から異物を除去するワイプ処理)が行われる。また、これに代えて、吐出不良位置情報に基づき吐出不良補正を印刷データに施してもよい。吐出不良補正とは、印刷ユニット205に吐出不良ノズルが含まれている場合に、用紙5に印刷すべき画像においてその吐出不良ノズルによるドット抜け(インクの打滴抜け)が他のノズルからのインクの打滴によって補償されるように濃度データとしての印刷データを補正することである。
【0068】
<1.8 効果>
インクジェット印刷装置において長尺のCISを用いて印刷画像を撮像すると、撮像画像において、CISの不感エリアに起因する画像欠落が生じる。これに対し本実施形態では、上記のように、用紙幅方向YにCIS30を移動させて印刷画像を複数の位置で撮像することにより複数の撮像画像(第1から第NI撮像画像)が取得され、これら複数の撮像画像を用いた上記マージ処理により修正撮像画像データが生成される(図10(C)、既述の式(1)参照)。これにより、不感エリアAsxに起因する画像欠落が解消され不感画像エリアApxを含まない修正撮像画像が得られる。したがって、この修正撮像画像データを用いることにより、通常印刷の欠陥検査を正確に行うことができる。
【0069】
また、ワンパス方式のインクジェット印刷装置において印刷ユニット205における吐出不良の検出および吐出不良ノズルの特定を行うために、例えば図16に示すようなテストチャートが印刷画像として用紙5に形成され長尺のCISで撮像される。このテストチャート画像の撮像により得られる撮像画像につき、CISの不感エリアに起因する画像欠落を補償すべく補間処理を行うと、補間誤差が大きく、印刷画像としてテストチャート画像には含まれない濃いムラや白ヌケが撮像画像に生じることがある。このため、印刷画像としてのテストチャート画像につき良好な撮像画像を得ることができなかった。これに対し本実施形態では、互いに異なる撮像位置でのテストチャート画像の撮像により複数の撮像画像が取得され、これらの複数の撮像画像を用いた上記マージ処理によって修正撮像画像データが生成される。このため本実施形態によれば、撮像画像に対して補間処理を行う従来技術とは異なり、印刷画像としてのテストチャート画像を忠実に表現する撮像画像データ(修正撮像画像データ)が得られる。したがって、この修正撮像画像データを用いることにより、ワンパス方式のインクジェット印刷装置において、吐出不良ノズルを正確に特定し、吐出不良ノズルの機能を回復するためのメンテナンス処理(ワイプ、パージ、または、フラッシング)や、吐出不良による印字不良を補償するための印刷データの補正処理を効果的に行うことができる。
【0070】
<2.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る印刷装置について説明する。本実施形態に係る印刷装置も、第1の実施形態と同様、ワンパス方式のインクジェット印刷装置であって、基材としての用紙の幅方向に並べた多数のノズルを含む印刷ヘッドを用紙幅(基材幅)を覆うように多数並べて構成されたフルラインの印刷ユニットを備えている(図3参照)。しかし、本実施形態における撮像部は、CIS30の移動機構(図7図9)を備える上記第1の実施形態における撮像部301とは異なり、位置が固定された第1および第2CISからなる2つのCISを有している。これに応じて、本実施形態では、上記第1の実施形態における撮像画像処理とは多少異なる撮像画像処理が行われる。本実施形態に係る印刷装置は、これらの点以外については上記第1の実施形態に係る印刷装置10と同様の構成を備えている。そこで以下では、本実施形態に係る印刷装置の構成のうち上記第1の実施形態と同一または対応する部分には同一の参照符号を付して詳しい説明を省略する。
【0071】
図17は、本実施形態に係る印刷装置における撮像部301の構成を説明するための模式図である。図17に示すように、この撮像部301は、第1CIS31と第2CIS32とからなる2個のCISを有しており、これら2個のCIS31,32は、それぞれにおける不感エリアAsxの範囲が重ならないように用紙幅方向に互いに位置をずらして配置されている。
【0072】
図18は、本実施形態において修正撮像画像を生成するための撮像画像処理を示すフローチャートである。この撮像画像処理では、CPU111は、制御プログラム17に基づき下記のように動作する。
【0073】
まず、印刷制御処理18aにより用紙5に形成される印刷画像を第1CIS31により撮像して第1撮像画像データを生成するとともに、当該印刷画像を第2CIS32により撮像して第2撮像画像データを生成する(ステップS50)。
【0074】
次に、第1撮像画像の一端を基準にして第1撮像画像内の不感画像エリアを特定し、第2撮像画像の一端を基準にして第2撮像画像内の不感画像エリアを特定する(ステップS52)。ここでの不感画像エリア特定のための処理は上記第1の実施形態における撮像画像処理と同様であるので、その詳細は省略する(図11のステップS14、図12図14参照)。
【0075】
第1および第2撮像画像において不感画像エリアが検出されると、次に、第1および第2撮像画像内の不感画像エリアに含まれる画素に“0”または“0”近傍の正値を重み係数として割り当て、他の画素に重み係数として“1”を割り当てることにより、第1および第2前処理画像データDp1,Dp2を生成する(ステップS54)。
【0076】
次に、第1および第2撮像画像につき基準マークに基づき位置合わせを行う(ステップS56)。この位置合わせにより、第1および第2前処理画像データDp1,Dp2が修正される。この位置合わせ処理の詳細については上記第1の実施形態における撮像画像処理と同様であるので、その詳細は省略する(図11のステップS24、図10(C)参照)。なお本実施形態では、第1CIS31と第2CIS32との用紙幅方向の位置ずれ量は固定的であって予めわかるので、当該位置ずれ量に基づいて第1および第2撮像画像につき位置合わせを行ってもよい。
【0077】
その後、このような修正後の第1および第2前処理画像データDp1,Dp2に基づき、位置合わせ後の第1および第2撮像画像に対してマージ処理を行うことにより、修正撮像画像を生成する(ステップS58)。このマージ処理の詳細は、上記第1の実施形態における撮像画像処理と同様である(図11のステップS26、図10(C)参照)。具体的には、撮像すべき印刷画像のいずれか1つの画素に対応する第1および第2撮像画像の画素Px1,Px2の濃度値をそれぞれd1,d2とし、当該画素Px1,Px2に割り当てられた重み係数をそれぞれw1,w2とすると、修正撮像画像において当該いずれか1つの画素に対応する画素の濃度値dcは、次の式で与えられる。
dc=(w1・d1+w2・d2)/(w1+w2) …(2)
上記式(2)は、上記第1の実施形態における撮像画像処理における既述の式(1)において撮像回数NIを“2”とした場合に相当する。
【0078】
上記のようにして、印刷画像の各画素につき、修正撮像画像において当該各画素に対応する画素の濃度値dcを求めることで、修正撮像画像を表す画像データとして修正撮像画像データが得られる。この修正撮像画像データが得られると、撮像画像処理を終了する。
【0079】
上記からわかるように、本実施形態における撮像画像処理(図18)は、第1および第2CIS31,32により第1および第2撮像画像をそれぞれ取得する点で(図17参照)、1つのCIS31を用紙幅方向に移動させて互いに異なる位置での撮像により第1から第NI撮像画像を取得する上記第1の実施形態における撮像画像処理(図11)と相違する(図7図9図10(A)、図10(B)参照)。しかし、その他の点では、本実施形態における撮像画像処理は、上記第1の実施形態における撮像画像処理において撮像回数NI=2とした場合と同様である。
【0080】
上記のような本実施形態によれば、上記第1の実施形態において生成される修正撮像画像データと同様の修正撮像画像データが生成されるので、上記第1の実施形態と同様、インクジェット印刷装置において通常印刷の欠陥検査を正確に行うことができる。また、第1の実施形態と同様、印刷画像としてのテストチャート画像を忠実に表現する撮像画像のデータを修正撮像画像データとして生成し、これを用いることにより、ワンパス方式のインクジェット印刷装置において、吐出不良ノズルを正確に特定し、吐出不良ノズルの機能を回復するためのメンテナンス処理や吐出不良による印字不良を補償するための印刷データの補正処理を効果的に行うことができる。
【0081】
<3.変形例>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいてさらに種々の変形を施すことができる。
【0082】
例えば、上記実施形態はインクジェット印刷装置に本発明を適用したものであるが、インクジェット方式以外の方式の印刷装置についても、必要に応じて上記実施形態の構成を適宜修正すること本発明の適用が可能である。
【0083】
また、上記第1の実施形態では、撮像部301は、CIS30を用紙幅方向に移動させる移動機構を備え(図7図9)、用紙幅方向における互いに異なる位置で用紙5における印刷画像が撮像されるが、CIS30の移動機構に代えて、用紙5を用紙幅方向に移動させてCIS30の用紙5に対する相対位置を変更する構成を備えていてもよい。このような構成においても、用紙幅方向の異なる相対位置での撮像により複数の撮像画像を取得し、これら複数の撮像画像に基づき上記第1の実施形態における撮像画像処理と同様に修正撮像画像を生成することができ、これにより上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。なお、用紙の幅方向の位置の補正(蛇行補正)を行う補正機構を備えた印刷装置が従来より知られており(例えば特開2014-189337号公報参照)、CIS30の用紙5に対する相対位置を変更するためにこの補正機構を利用してもよい。
【0084】
また、上記第2の実施形態では、撮像部301は、第1CIS31と第2CIS32とからなる2個のCISを有しているが(図17)、これに代えて、3個以上のCISを有し、これら3個以上のCISが用紙幅方向に互いに位置をずらして配置される構成であってもよい。このような構成では、撮像部301に含まれるNI個(NI≧3)のCISにより得られる第1から第NI撮像画像につき、各画素に割り当てられた重み係数を用いて、対応する画素毎に加重平均を求めることにより、修正撮像画像が生成され、上記第1および第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0085】
5 …用紙(基材)
10 …インクジェット印刷装置
17 …制御プログラム
18a …印刷制御処理
18b …撮像画像処理
30,31,32 …CIS(ラインセンサ)
301 …撮像部
50 …印刷画像
50a1,50a2,50a3 …撮像画像
50x1,50x2,50x3 …不感画像エリア(画像欠落)
50c …修正撮像画像
51 …トンボ(基準マーク)
52 …濃度均一パターン画像
100 …制御部
111 …CPU
200 …印刷機構
205 …印刷ユニット
SU1~SUn …センサユニット
IE1~IEm …撮像素子
Asx …不感エリア
Apx …不感画像エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図18