(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077896
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】錠装置
(51)【国際特許分類】
E05B 3/00 20060101AFI20240603BHJP
E05B 15/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
E05B3/00 Z
E05B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190112
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】玉井 久範
(57)【要約】
【課題】レバーの周囲の気密性を向上させることを目的とする。
【解決手段】錠装置1は、開口部13aを有する筐体(上室内側台座13)と、開口部13aから一端部(突起片23a)を突出させて筐体に設けられ、他端部に設けられた軸(ラッチ回転軸17c)周りに揺動するレバー(室内側ラッチレバー23)と、レバーが嵌合する孔部64を有し、開口部13aを塞ぎ、レバーの揺動に伴って変形するパッキン60と、を備える。パッキン60は、孔部64の周囲からレバーの長手方向に突出し、レバーが嵌合するスリーブを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する筐体と、
前記開口部から一端部を突出させて前記筐体に設けられ、他端部に設けられた軸周りに揺動するレバーと、
前記レバーが嵌合する孔部を有し、前記開口部を塞ぎ、前記レバーの揺動に伴って変形するパッキンと、を備えることを特徴とする錠装置。
【請求項2】
前記パッキンは、前記孔部の周囲から前記レバーの長手方向に突出し、前記レバーが嵌合するスリーブを備えることを特徴とする請求項1に記載の錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
扉枠に設けられたストライクに係合するラッチボルトを備えた錠装置が知られている。一般に、ラッチボルトは、扉の木口から突出する方向に付勢されており、室内側及び室外側に設けられたレバーが操作されない場合には、木口から突出した状態にロックされ、レバーが操作された場合には、ロックが解除されて木口の内部に退避可能となる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1で開示された錠装置は、室内側及び室外側から扉の内部に向かって突出したラッチレバーを備えている。ラッチレバーは、レバーの操作によって所定方向に揺動し、ラッチレバーの姿勢を変えることでラッチボルトがロックされた状態とロック解除された状態とに切り替えられる。従って、ラッチレバーの周囲には、ラッチレバーの揺動が妨害されない空間が設けられていることが必要である。
【0005】
ところが、この空間を通じて室内に外気が流入することで結露が発生する場合がある。例えば、冷房の使用により室内が室外に対して低温低湿な場合、流入した外気が扉やその周囲の壁等に触れて結露する。一方、暖房の使用により室内が室外に対して高温高湿な場合、流入した外気によって冷やされた扉や壁等に室内の空気が触れて結露する。
【0006】
そこで、ラッチレバーの周囲をパッキンで塞ぐことが考えられる。その場合、ラッチレバーの揺動を可能とするには、例えば、ラッチレバーの揺動方向に沿って形成されたスリットからラッチレバーを露出させた構成が考えられる。しかし、そのように構成したとしても、スリットの両端部とラッチレバーとの間には間隙が形成されてしまう。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮し、レバーの周囲の気密性を向上させることのできる錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る錠装置は、開口部を有する筐体と、前記開口部から一端部を突出させて前記筐体に設けられ、他端部に設けられた軸周りに揺動するレバーと、前記レバーが嵌合する孔部を有し、前記開口部を塞ぎ、前記レバーの揺動に伴って変形するパッキンと、を備える。
【0009】
前記パッキンは、前記孔部の周囲から前記レバーの長手方向に突出し、前記レバーが嵌合するスリーブを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レバーの周囲の気密性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る錠装置を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る錠装置を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るラッチ錠を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るパッキンを示す背面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るパッキンを示す正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るパッキンの孔部を示す断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るパッキンとラッチレバーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る錠装置1について説明する。
【0013】
最初に、錠装置1の全体の構成について説明する。
図1は、錠装置1を模式的に示す図である。
図2は、錠装置1を示す断面図である。
図3は、ラッチ錠7を示す断面図である。以下、室外側を前側(正面側)、室内側を後側(背面側)とし、左右の向きは、錠装置1を前側から見た場合を基準とする。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0014】
錠装置1(
図1、2参照)は、扉2の室内側壁面2bに固定された室内側ハンドル3と、室内側ハンドル3の後側に設けられた室内側レバー4と、扉2の室外側壁面2cに固定された室外側ハンドル5と、室外側ハンドル5の後側に設けられた室外側レバー6と、室内側レバー4又は室外側レバー6の操作に応じて扉2の木口2aに対してラッチボルト7aを進退させるラッチ錠7と、室外側ハンドル5に内蔵された施解錠操作装置8と、施解錠操作装置8に対する操作に応じて施解錠される主電気錠9及び副電気錠10と、主電気錠9及び副電気錠10の電源となる電池(図示省略)を収容し、室内側ハンドル3に内蔵された電池収容装置11と、を備えている。
【0015】
[室内側ハンドル]
図2に示すように、室内側ハンドル3は、扉2の室内側壁面2bに上下方向に離間して固定される上室内側台座13および下室内側台座14と、上下一対の室内側台座13,14の間に連結される固定グリップとしての室内側グリップ15と、を有し、全体として後方(室内側)に僅かに湾曲したアーチ形状に構成されている。また、室内側ハンドル3には、室内側グリップ15の後側(扉2とは反対側)に室内側開口部16aを有する室内側レバー挿入部16が凹設されている。室内側レバー挿入部16は、上室内側台座13の下側から室内側グリップ15の上下方向略中央に亘って形成されている。
【0016】
上室内側台座13の下側内部には、室内側レバー挿入部16に連なる内側配設空間S1が形成されている。上室内側台座13の前側には、開口部13aが設けられており、開口部13aの一部を塞ぐように、室内側ブラケット17が複数の固定ネジB1によって固定されている。室内側ブラケット17の上下方向略中央には、ブラケット挿通孔17aが穿設されている。室内側ブラケット17の一部は、内側配設空間S1内に配設されている。内側配設空間S1内の室内側ブラケット17には、上下方向に離間してレバー回転軸17bとラッチ回転軸17cとが左右方向に架設されている。
【0017】
室内側ブラケット17と室内側壁面2bとの間に配設される室内側裏板18は、複数の固定ネジB2によって扉2に固定されると共に、複数のネジ(図示せず)によって上室内側台座13に固定されている。室内側裏板18には、室内側ブラケット17のブラケット挿通孔17aと対応する位置に裏板挿通孔18aが穿設されている。
【0018】
室内側レバー4は、上下方向に長く形成されており、室内側開口部16aから室内側レバー挿入部16に挿入されている。室内側レバー4の上部には、レバー側取付部20が設けられている。レバー側取付部20の上部には、レバー回転軸17bが貫挿されている。レバー回転軸17bには、付勢手段としての捩りコイルバネ22が巻回している。室内側レバー4は、捩りコイルバネ22によって後側に向けて付勢される状態でレバー回転軸17bを中心として前後方向に回動可能に支持されている。なお、レバー側取付部20には、各回転軸17b,17cとの間に軸状部20aが挿着されている。
【0019】
また、室内側レバー4の下部には、ユーザによって操作される操作部21が設けられている。操作部21は、室内側レバー4が後方(室内側)に回動した状態で、室内側グリップ15の外側(表面よりも後方)に突出するように設けられている。
【0020】
室内側ラッチレバー23は、側面視で略L字状に形成されている。室内側ラッチレバー23の下部にはラッチ回転軸17cが貫挿され、室内側ラッチレバー23の上部には軸状部20aが遊挿されている。これにより、室内側ラッチレバー23は、ラッチ回転軸17cを中心として前後方向に回動可能に支持されている。室内側ラッチレバー23の突起片23aは、ブラケット挿通孔17aおよび裏板挿通孔18aを通って扉2の内部に挿入されている。
【0021】
下室内側台座14の上側には、後面側を開放する電源凹部14aが凹設されている。電源凹部14aには、カバー25が着脱可能に取り付けられている。下室内側台座14は、カバー25を取り付けた状態で、上室内側台座13を上下反転させたような外観を成している。下室内側台座14と室内側壁面2bとの間に配設される室内側裏板24は、複数の固定ネジB3によって扉2に固定されると共に、複数の固定ネジB4によって下室内側台座14に固定されている。
【0022】
上室内側台座13の上部および下室内側台座14の下部には、それぞれ、各電気錠9,10に取り付けられたサムターン9b,10bを室内側に露出させるためのサムターン開口部3a,3bが貫通形成されている。サムターン開口部3bの下側には、扉2の内部に連通する室内側配線孔14bが開口しており、ハーネスカバー14cによって覆われて接続空間S2が形成されている。
【0023】
[室外側ハンドル]
次に、
図2に示すように、室外側ハンドル5は、扉2の室外側壁面2cに上下に離間して固定される上室外側台座30および下室外側台座31と、上下一対の室外側台座30,31の間に連結される固定グリップとしての室外側グリップ32と、を有し、全体として前方(室外側)に僅かに湾曲したアーチ形状に構成されている。また、室外側ハンドル5には、室外側グリップ32の前側(扉2に対向する側)に室外側開口部33aを有する室外側レバー挿入部33が凹設されている。室外側レバー挿入部33は、上室外側台座30の下側から室外側グリップ32の上下方向略中央に亘って形成されている
【0024】
上室外側台座30の下側内部には、室外側レバー挿入部33に連なる上台座空間S3が形成されている。上室外側台座30の後側(扉2側)には、室外側ブラケット34がネジ留め固定されている。室外側ブラケット34の上下方向略中央には、ブラケット挿通孔34aが穿設されている。室外側ブラケット34の一部は、上台座空間S3内に配設されている。上台座空間S3内の室外側ブラケット34には、上下方向略中央にラッチ回転軸34bが左右方向に架設され、上部にレバー回転軸34cが左右方向に架設されている。
【0025】
室外側レバー6は、上下方向に長く形成されており、室外側開口部33aから室外側レバー挿入部33に挿入されている。室外側レバー6の上部には、レバー側取付部35が設けられている。レバー側取付部35の上部には、レバー回転軸34cが貫挿されている。レバー側取付部35の上下方向略中央部には、ラッチ回転軸34bの一端部が遊嵌する横長孔35aが穿設されている。レバー側取付部35の下部には、軸状部35bが挿着されている。ラッチ回転軸34bには、付勢手段としての捩りコイルバネ38が巻回している。室外側レバー6は、捩りコイルバネ38によって後側に向けて付勢される状態でレバー回転軸34cを中心として前後方向に回動可能に支持されている。
【0026】
また、室外側レバー6の下部には、ユーザによって操作される操作部36が設けられている。操作部36は、室外側レバー6が後側に回動した状態で、室外側グリップ32の外側(後面よりも後方)に突出するように設けられている。
【0027】
室外側ラッチレバー37は、側面視で略L字状に形成されている。室外側ラッチレバー37の上部にはラッチ回転軸34bが貫挿され、室外側ラッチレバー37の下部には軸状部35bが遊挿されている。これにより、室外側ラッチレバー37は、ラッチ回転軸34bを中心として前後方向に回転可能な状態で支持されている。室外側ラッチレバー37の突起片37aは、ブラケット挿通孔34aを通って扉2の内部に挿入されている。
【0028】
下室外側台座31の上側内部には下台座空間S4が形成されている。上室外側台座30の上部および下室外側台座31の下部には、それぞれ、各電気錠9,10に取り付けられたシリンダ9c,10cを室外側に露出させるためのシリンダ開口部5a,5bが貫通形成されている。上室外側台座30および下室外側台座31には、それぞれ、各シリンダ9c,10cを覆うようにシリンダカバー30a,31aが着脱可能に設けられている。上室外側台座30の上端部および下室外側台座31の下端部には、それぞれ、扉2の内部に連通する上室外側配線孔30bおよび下室外側配線孔31bが開口している。
【0029】
室外側グリップ32は、配線空間S5を構成するグリップ凹部32aが凹設されるグリップ本体39aと、グリップ凹部32aを覆うようにグリップ本体39aに設けられるグリップカバー39bと、を含んで構成されている。
【0030】
グリップ凹部32aは、上室外側台座30から下室外側台座31に亘って形成され、配線空間S5は、上台座空間S3と下台座空間S4とを連通させている。グリップカバー39bは、上室外側台座30および下室外側台座31の内側から固定ネジB5によって着脱可能に固定されている。グリップ凹部32aの底部は、配線空間S5と室外側レバー挿入部33とを仕切る隔壁32bを構成している。
【0031】
[ラッチ錠]
図3に示すように、ラッチ錠7は、扉2に内設される錠ケース40と、錠ケース40の内部に配置されるラッチボルト7aと、上下一対の係止片41,42と、一対の作動片43,44と、を有している。
【0032】
錠ケース40は、錠ケース取付板40aを介して扉2の木口2aにネジ留め固定されている。ラッチボルト7aは、コイルバネ7bによって木口2aから突出するように付勢され、扉枠2dに凹設されるストライク2eに進入し、扉2の閉止状態(仮閉り状態)が保持されている。
【0033】
上側の係止片41は、第1支点41aに回動可能に支持されている。係止片41の木口2a側には、ラッチボルト7aの鍔部7cに係合する係止突起41bが下方に向かって突設されている。係止片41の吊元側(木口2aの反対側)には、被押圧部41cが上方に向かって突設されている。係止片41の左右方向略中央には、連結腕部41dが下方に延出し、連結腕部41dの下端部には係合突起41eが設けられている。
【0034】
下側の係止片42は、上記した係止片41を上下反転させたような形状であり、係止突起42b、被押圧部42cおよび連結腕部42dを有し、第2支点42aに回動可能に支持されている。連結腕部42dの上端部には、係合穴42eが設けられ、この係合穴42eに係合突起41eが係合することでリンク45が形成される。第2支点42aの周りには、ラッチボルト7aを係止姿勢(
図3の実線参照)とするように各係止片41,42を付勢する付勢バネ46が巻回されている。
【0035】
各作動片43,44は、それぞれ、上下動可能に構成されている。一方の作動片43の上部には、係止片41の被押圧部41cと当接する押圧部43aが設けられている。作動片43の下部には、各ラッチレバー23,37と当接する当接部43bが設けられている。同様に、他方の作動片44の下部には係止片42の被押圧部42cと当接する押圧部44aが設けられ、その上部には当接部44bが設けられている。
【0036】
次に、
図2および
図3を参照して、ラッチ錠7の作用について説明する。扉2が閉止された状態では、室内側レバー4は捩りコイルバネ22によって後方に付勢され、室外側レバー6は捩りコイルバネ38によって後方に付勢されている。また、付勢バネ46によって各係止突起41b、42bがラッチボルト7aの鍔部7cを係止しており、扉2の木口2aからのラッチボルト7aの退避が規制されている(
図3の実線参照)。
【0037】
この状態で、室内側から扉2を開放する場合、ユーザは、室内側ハンドル3(室内側グリップ15)の押し出しに連動して室内側レバー4の操作部21を前方に押圧する。すると、室内側レバー4がレバー回転軸17bを中心に前方に回動し、室内側レバー4の軸状部20aが室内側ラッチレバー23を前方に押圧する。これにより、室内側ラッチレバー23は、ラッチ回転軸17cを中心に回動し、突起片23aが下方に移動する。
【0038】
突起片23aは作動片43の当接部43bを下方に押圧し、作動片43が下方に移動する。これに伴って、作動片43の押圧部43aが被押圧部41cを押下げ、付勢バネ46の付勢力に抗して係止片41が回動する。同様に、リンク45を介して接続された係止片42も回動する(
図3の二点鎖線参照)。これにより、係止突起41bおよび係止突起42bによるラッチボルト7aの係止が解除され、ラッチボルト7aが扉2の木口2aから退避可能となる。
【0039】
一方、室外側から扉2を開放する動作も上記と同様である。すなわち、ユーザは、室外側ハンドル5(室外側グリップ32)の引き寄せに連動して室外側レバー6の操作部36を前方に牽引する。すると、室外側レバー6がレバー回転軸34cを中心に前方に回動し、室外側レバー6の軸状部35bが室外側ラッチレバー37を前方に押圧する。これにより、室外側ラッチレバー37はラッチ回転軸34bを中心に回動し、その突起片37aが下方に移動する。なお、突起片37aの移動に伴うラッチ錠7の動作は、室内側から扉2を開放する場合と同様であるため、その説明は省略する。
【0040】
以上のように、各レバー4,6の回動に伴ってラッチボルト7aを進退させる構成であるため、例えば、各ハンドルを回動させる構成に比して、ラッチボルト7aの進退移動に必要な力を小さくすることができる。これにより、ユーザの操作感を向上させることができる。また、室内側グリップ15を押圧して扉2を開放する場合、または、室外側グリップ32を牽引して扉2を開放する場合、扉2を開放する動作に連動して、レバー4,6を回動させることができる。これにより、ユーザは、ラッチボルト7aの解除を意識することなく容易に扉2を開放することができる。
【0041】
図2に示すように、施解錠操作装置8は、外部の通信媒体との間で通信を行う通信ユニット50と、室外側グリップ32の室外側に露出するプッシュボタン51と、を含んで構成されている。通信ユニット50は、非接触型のICカード100の情報を読み取るリーダ基板52と、携帯型キー101との間で無線通信を行うアンテナ基板53と、を含んで構成されている。
【0042】
なお、リーダ基板52には、制御回路(図示せず)が組み込まれており、この制御回路は、例えば、読み取った認証情報が正しい認証情報であるか否かを判別する機能等を有している。また、例えば、制御回路は、主電気錠9を施錠した場合に副電気錠10も同時に施錠する施錠追従機能や、2つの電気錠9,10のうち一方のみを解錠し、一定時間内に他方の電気錠を解錠しない場合に解錠した一方の電気錠を再び自動で施錠する施錠復帰機能を有している。
【0043】
図1および
図2に示すように、主電気錠9および副電気錠10は、各ハンドル3,5を上下方向両端から挟むような位置で扉2に内設されている。
【0044】
主電気錠9は、上室内側台座13と上室外側台座30との間に挟まれるように扉2の内部に設けられ、木口2aに対してデッドボルト9aを進退させるモータやソレノイド等の駆動手段を制御する電気基板(いずれも図示せず)等を備えている。主電気錠9の室内側には、手動でデッドボルト9aを進退操作するためのサムターン9bが設けられている。主電気錠9の室外側には、機械的キー(図示せず)を挿入して施解錠操作を行うシリンダ9cが設けられている。
【0045】
副電気錠10は、主電気錠9と同様に、下室内側台座14と下室外側台座31との間に挟まれるように扉2の内部に設けられ、デッドボルト10a、サムターン10bおよびシリンダ10cが設けられている。
【0046】
次に、
図2を参照して、錠装置1の動作について説明する。なお、施解錠操作装置8および各電気錠9,10には、電池収容装置11から電力が供給されているものとする。
【0047】
室外側から入室しようとする者(ユーザ)は、プッシュボタン51を押した後にICカード100をリーダ基板52にかざす。すると、ICカード100とリーダ基板52との間で通信が行われ、ICカード100の認証情報がリーダ基板52によって読み取られる。リーダ基板52の制御回路は、読み取った認証情報が予め記憶された特定の認証情報と合致するか否かを判別する。この結果、合致すると判別された場合、リーダ基板52(制御回路)から主電気錠9に解錠信号が出力され、主電気錠9が解錠される。また、主電気錠9の解錠に連動して、リーダ基板52から解錠信号が出力され、副電気錠10が解錠される。一方、合致せずと判別された場合には、リーダ基板52からの解錠信号が送信されず、主電気錠9の解錠は行われない。
【0048】
また、他の解錠方法として、室外側から入室しようとする者が携帯型キー101を所持している場合、プッシュボタン51を押すことによって、各電気錠9,10の解錠が行われる。詳細には、プッシュボタン51の押下情報がリーダ基板52の制御回路に送信されると共に、携帯型キー101とアンテナ基板53との間の無線通信の結果がリーダ基板52の制御回路に送信される。制御回路は、携帯型キー101との通信情報(認証情報)が予め記憶された特定の認証情報と合致するか否かを判別し、判別結果に応じて、上記と同様に各電気錠9,10の解錠が行われる(または解錠が行われない)。
【0049】
以上のように、施解錠操作装置8が室外側グリップ32に内装されているため、ユーザは施解錠操作装置8に対する施解錠操作を簡単に行うことができる。なお、例えば、電池の電力不足で施解錠操作装置8が動作しない場合、ユーザは、上下一対のシリンダカバー30a,31aを取り外して各シリンダ9c,10cを露出させることで、機械的キーを用いて各電気錠9,10の施解錠を行うことができる。
【0050】
次に、パッキン60の構成について説明する。
図4は、パッキン60を示す背面図である。
図5は、パッキン60を示す正面図である。
図6は、パッキン60の孔部64を示す断面図である。
図7は、パッキン60の孔部64に室内側ラッチレバー23の突起片23aが嵌合している様子を示す斜視図である。
【0051】
本実施形態に係る錠装置1は、開口部13aを有する筐体(上室内側台座13)と、開口部13aから一端部(突起片23a)を突出させて筐体に設けられ、他端部に設けられた軸(ラッチ回転軸17c)周りに揺動するレバー(室内側ラッチレバー23)と、レバーが嵌合する孔部(ラッチレバー孔部64)を有し、開口部13aを塞ぎ、レバーの揺動に伴って変形するパッキン60と、を備える。具体的には、以下のとおりである。
【0052】
パッキン60(
図4、5参照)は、上室内側台座13の開口部13aを塞ぐ板状の部材である。パッキン60は、シリコーンゴム等のエラストマーを用いて形成されている。パッキン60は、平板状の本体部61を有する。本体部61は、全体として上下方向に細長い矩形状をなし、上下方向の中央やや下側から下端部に向かって幅が減少するようにテーパーが付けられている。なお、この形状は一例に過ぎず、本体部61の形状は、上室内側台座13の前部の形状に応じて設定される。
【0053】
パッキン60(
図2参照)は、室内側ブラケット17と室内側裏板18との間に設けられている。パッキン60の背面(後側の面)と室内側ブラケット17との間には、間隙が設けられている。パッキン60は、正面(前側の面)が室内側裏板18に接触するように配置され、室内側裏板18とともに固定ネジB2によって扉2に共締めされている。
【0054】
本体部61の縁部62(
図2、5、7参照)は、全周にわたって前方に突出している。室内側壁面2bの室内側裏板18の周囲には、縁部62に対応する溝部2f(
図2参照)が設けられている。パッキン60が扉2に取り付けられると、縁部62が溝部2fに収容される。全周にわたって縁部62の先端部が溝部2fの底部に押圧されて、気密性が向上する。
【0055】
本体部61の背面(
図4参照)には、本体部61の上縁部、左縁部、右縁部からそれぞれ若干中央寄りの位置に上縁部、左縁部、右縁部に沿う補強リブ63が設けられている。本体部61には、サムターン9bが挿入されるサムターン孔部67と、固定ネジB2が挿入されるネジ孔部66と、が設けられている。
【0056】
本体部61には、ブラケット挿通孔17aと裏板挿通孔18aとに対向する部位に、ラッチレバー孔部64(
図2、4乃至7参照)が設けられている。ラッチレバー孔部64の左右方向の幅は、室内側ラッチレバー23の突起片23aの左右方向の厚みに等しくてもよく、突起片23aの左右方向の厚みよりも若干狭くてもよい。ラッチレバー孔部64の上下方向の幅は、突起片23aの上下方向の幅に等しくてもよく、突起片23aの上下方向の幅よりも若干狭くてもよい。パッキン60は、シリコーンゴム等のエラストマーを用いて形成されているため、ラッチレバー孔部64が突起片23aよりも若干小さくても、突起片23aをラッチレバー孔部64に圧入することが可能である。つまり、ラッチレバー孔部64は、突起片23aが嵌合するように形成されている。
【0057】
パッキン60は、シリコーンゴム等のエラストマーを用いて形成されているため、突起片23aの揺動に伴って変形する。例えば、突起片23aが下方に揺動した場合には、パッキン60の突起片23aの周囲の部位が突起片23aと密着したまま突起片23aに追従して下方に移動する。このとき、パッキン60のラッチレバー孔部64よりも上方の部分が下方に引き伸ばされ、パッキン60のラッチレバー孔部64より下方の部分に弛みが生じる。突起片23aが上方に揺動した場合には、パッキン60の各部は上記と逆方向の挙動を示す。パッキン60がこのように構成されているため、突起片23aを揺動させても、パッキン60と突起片23aとの間に隙間が生じない。
【0058】
室内側ラッチレバー23の周囲の気密性を向上させるには、突起片23aとラッチレバー孔部64の縁部との接触面積が広い方がよい。しかし、接触面積を大きくするためにパッキン60を厚肉化すると、パッキン60の柔軟性が低下するため、突起片23aの揺動に対するパッキン60の追従性が低下し、パッキン60と突起片23aとの間に隙間が生じるおそれがある。そこで、パッキン60は、スリーブ65を備えている。スリーブ65は、ラッチレバー孔部64の周囲から前方に突出している。スリーブ65の内面には、前方ほどスリーブ65内の空間が狭くなるようにテーパーが付けられており、スリーブ65の前端部の内部空間は、上下左右両方向に突起片23aよりも若干狭くなっている。パッキン60はエラストマーで形成されているため、突起片23aをスリーブ65に圧入することが可能である。つまり、スリーブ65も、突起片23aが嵌合するように構成されている。
【0059】
以上説明した本実施形態に係る錠装置1によれば、開口部13aを有する筐体(上室内側台座13)と、開口部13aから一端部(突起片23a)を突出させて筐体に設けられ、他端部に設けられた軸(ラッチ回転軸17c)周りに揺動するレバー(室内側ラッチレバー23)と、レバーが嵌合する孔部(ラッチレバー孔部64)を有し、開口部13aを塞ぎ、レバーの揺動に伴って変形するパッキン60と、を備える。この構成によれば、突起片23aを揺動させても、パッキン60と突起片23aとの間に隙間が生じないから、レバーの周囲の気密性を向上させることができる。その結果、室内と室外とで温度や湿度に差がある場合でも、外気の流入による結露を抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る錠装置1によれば、パッキン60は、孔部64の周囲からレバーの長手方向に突出し、レバーが嵌合するスリーブ65を備える。この構成によれば、スリーブ65を備えない場合と比べてパッキン60とレバーとの接触面積が増え、且つ、パッキン60の柔軟性が低下しにくいから、レバーの周囲の気密性をさらに向上させることができる。
【0061】
上記実施形態は以下のように変形されてもよい。
【0062】
上記実施形態では、スリーブ65がラッチレバー孔部64の周囲から前方に突出している例が示されたが、スリーブ65は、後方に突出していてもよく、前方と後方に突出していてもよい。
【0063】
上記実施形態では、レバー(室内側ラッチレバー23)が上下方向に揺動する装置に発明が適用された例が示されたが、レバーが上下方向以外の方向(例えば、左右方向、前後方向等)に揺動する装置に本発明が適用されてもよい。
【0064】
上記実施形態では、室内側ラッチレバー23に本発明が適用された例が示されたが、室外側ラッチレバー37に本発明が適用されてもよい。また、ラッチレバーのみならず、いかなるレバーを有する装置に対しても本発明は適用可能である。
【0065】
上記実施形態では、室内側ハンドル3および室外側ハンドル5が固定グリップとしての室内側グリップ15に本発明が適用された例が示されたが、グリップが前後方向に可動し、該可動に連動してレバーが揺動するハンドル装置に本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 錠装置
13 上室内側台座(筐体)
13a 開口部
17c ラッチ回転軸(軸)
23 室内側ラッチレバー(レバー)
23a 突起片(一端部)
60 パッキン
64 ラッチレバー孔部(孔部)
65 スリーブ