(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077897
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】生地のピックアップ装置
(51)【国際特許分類】
A41H 43/02 20060101AFI20240603BHJP
A41H 43/00 20060101ALI20240603BHJP
D05B 33/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
A41H43/02
A41H43/00 Z
D05B33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190114
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000113229
【氏名又は名称】株式会社PEGASUS
(72)【発明者】
【氏名】高田 隆
(72)【発明者】
【氏名】中田 健一
(72)【発明者】
【氏名】南雲 由紀子
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CE23
3B150EH09
3B150EH14
3B150EH17
(57)【要約】
【課題】
複数の生地が積まれた生地の束から生地を取り出すことができる生地のピックアップ装置を提供する。
【解決手段】
ピックアップ装置2はローラ部材1を備える。ローラ部材1は芯材11,軸部材12,ブラシ毛材13,軸受部材14を備える。芯材11は棒状または筒状の部品であり、軸部材12は芯材11の長手方向の端部に設置される軸部であり、ブラシ毛材13は芯材11の周りに放射状に複数設置される毛材である。軸受部材14は軸部材12を挿通して回動可能にて案内支持する。ブラシ毛材13は軸受部材14に対して回動可能となる。ブラシ毛材13は、材質の線径を編み物の生地の網目の隙間に入り込む程度に小さいものとすることで、外周で生地に刺さることで結合する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地のピックアップ装置において、ピックアップ装置はローラ部材を備えており、ローラ部材は芯材と、芯材の端部に形成される軸部材と、芯材の周りに放射状に形成される複数のブラシ毛材と、軸受部材とを備えており、前記ブラシ毛材は外周で生地と結合し、前記軸受部材に対して前記ブラシ毛材が回動すること、を特徴とする生地のピックアップ装置。
【請求項2】
前記生地のピックアップ装置は、前記ブラシ毛材が複数箇所で縦に裂けている毛先を有していること、を特徴とする請求項1に記載の生地のピックアップ装置。
【請求項3】
前記生地のピックアップ装置は、前記軸部材に連結される軸継手と、軸継手に連結される駆動機器とを備えること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の生地のピックアップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地のピックアップ装置に関するものである。本発明において、ピックアップ装置は複数の生地が積まれた生地の束から1枚の生地を取り出す機能を持つ装置の事を言う。また上下方向は一般の重力に対する方向をいい、前後方向は平面状に置かれた生地を掴む側を前として対称側を後ろとする方向をいう。
【背景技術】
【0002】
ミシンによる縫製作業では1回の縫製工程毎に、複数の生地が積まれた生地の束から縫製に用いる1枚の生地を取り出すこといわゆるピックアップが必要である。そのために作業者は通常、生地の束の最も上にある生地を目視で確認して、生地端の指でつまみ易い箇所を探して、最も上にある生地とそのすぐ下の生地の間を狙って指を入れて、指でつまんで1枚の生地を取り上げるといった作業を行う。これは生地の束が生地裁断機で作られたものでは、さながらビニール袋の袋口のように生地端が精密に整っているため、滑りやすく正確に1枚を狙って指を入れずらいものであった。また生地の素材の特性や湿度等の条件で生地同士が微かな力で引っ付く、生地の表面が滑りやすい、生地の束が少なくなり机と生地の間の隙間が小さく指を入れづらいなどの条件によって、1枚の生地を取り上げたい所で2枚の生地を取り上げてしまい作業時間をロスしたり、思ったように1枚の生地を取り上げられず作業者が不快感を感じるなどといった問題があった。
【0003】
前述のような複数の生地が積まれた生地の束から縫製に用いる1枚の生地を取り出す目的のために、生地のピックアップ装置として粘着テープを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のピックアップ装置では、ロール状の粘着テープを少しづつ引き出して用いるため、粘着テープが消耗して運用経費が嵩む、という問題があった。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたものでありその目的は、運用経費が嵩む粘着テープを用いずに、また作業者が作業時間をロスすることなく且つ快適に、複数の生地が積まれた生地の束から縫製に用いる1枚の生地を取り出す生地のピックアップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、生地のピックアップ装置において、ピックアップ装置はローラ部材を備えており、ローラ部材は芯材と、芯材の端部に形成される軸部材と、芯材の周りに放射状に形成される複数のブラシ毛材と、軸受部材とを備えており、前記ブラシ毛材は外周で生地と結合し、前記軸受部材に対して前記ブラシ毛材が回動すること、を特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の生地のピックアップ装置であって、前記ブラシ毛材が複数箇所で縦に裂けている毛先を有していること、を特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の生地のピックアップ装置であって、前記軸部材に連結される軸継手と、軸継手に連結される駆動機器とを備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生地のピックアップ装置によれば、運用経費が嵩む粘着テープを用いずに、また作業者が作業時間をロスすることなく且つ快適に、複数の生地が積まれた生地の束から縫製に用いる1枚の生地を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に適用されるローラ部材の斜視図である。
【
図2】本発明に適用されるブラシ毛材の先端部の正面視図である。
【
図3】本発明に適用されるブラシ毛材の先端部と生地の結合の様子を示す図である。
【
図4】本発明に適用されるローラ部材の動作の段階を示す図である。
【
図5】本発明に適用される生地のピックアップ装置の斜視図である。
【
図6】本発明に適用される生地のピックアップ装置の動作の段階を示す図である。
【
図7】本発明に適用される生地のピックアップ装置の動作前の様子を示す斜視図である。
【
図8】本発明に適用される生地のピックアップ装置の動作後の様子を示す斜視図である。
【
図9】本発明に適用される生地のピックアップ装置の2個のローラ部材を使用時の動作後の様子を示す斜視図である。
【
図10】本発明に適用されるテーブルセットの斜視図である。
【
図11】本発明に適用されるテーブルセットの動作の段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下
図1から
図10に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明に適用されるローラ部材の斜視図である。以下、ピックアップ装置2について説明する。ピックアップ装置2はローラ部材1を備える。ローラ部材1は芯材11,軸部材12,ブラシ毛材13,軸受部材14を備える。芯材11は棒状または筒状の部品であり、軸部材12は芯材11の長手方向の端部に設置される軸部であり、ブラシ毛材13は芯材11の周りに放射状に複数設置される毛材である。芯材11,軸部材12,ブラシ毛材13はそれぞれ、例えばねじりブラシにおける芯線,芯線の端部に設置される軸,ブラシの毛材である。また例えばチャンネルロールブラシにおけるコイル状に成型されたチャンネル,チャンネル内側に設置され端部が露出する軸,ブラシの毛材である。また例えば植込みロールブラシにおける植毛穴がある筒状の軸,植毛穴がある筒状の軸の内側に設置され端部が露出する軸,ブラシの毛材である。軸受部材14は軸部材12を挿通して回動可能にて案内支持する。軸受部材14は軸部材12を両端支持または片端支持する。これらによりブラシ毛材13は軸受部材14に対して回動可能となる。
【0013】
ブラシ毛材13は、例えば材質の線径を編み物の生地の網目の隙間に入り込む程度に小さいものにして、外周で生地に刺さることで結合する。ブラシ毛材13の材質は例えば化学繊維である。化学繊維のひとつであるポリプロピレンはナイロン等と比較して毛腰いわゆる剛性があり、ねじりブラシ等のブラシの毛材として用いられる。ブラシ毛材13の材質は毛腰のある棕櫚のような天然繊維または真鍮線のような金属線でもよい。本実施形態のブラシ毛材13では線径1mmよりも小さいポリプロピレンの毛材を用いて、外周の直径が50mmの円筒状のブラシを形成している。本実施形態の生地16はTシャツ等で用いられる厚みが1mm以下のフライス生地である。ブラシ毛材13と生地16が結合する状態で軸受部材14を前後動作させることで、生地16がブラシ毛材13の外周に結合しピックアップが可能となる。本発明に適用されるローラ部材1はブラシ毛材13の材質,線径,対象の生地16の種類,厚み等を本実施形態の様態に限定しない。
【0014】
図2は本発明に適用されるブラシ毛材の先端部の正面視図である。本発明に適用される生地のピックアップ装置では、上述の第一実施形態に以下の構成を加えた第二実施形態をとることができる。ブラシ毛材13は複数箇所で縦に裂けている毛先15を有する。ブラシ毛材13の材質は例えばポリプロピレンであり、ポリプロピレンの毛材は先端部に研磨加工等を施すと、加工条件により複数箇所で毛材の線径よりも小さくまばらな間隔で、不均一な方向と長さに毛材が枝分かれする縦裂けを生じる。本実施形態のブラシ毛材13では線径1mmよりも小さいポリプロピレンの毛材を用いて、外周の直径が50mmの円筒状のブラシを形成し、ブラシを回転させて外周を研磨材に接触させることで前述の縦裂けを形成している。これは例えばチャンネルロールブラシをコイル状に成型する前の直線状の状態で研磨を施して縦裂けを形成してもよい。本発明に適用されるローラ部材1のブラシ毛材13の毛先15の縦裂けの形成方法は、精密研削加工やショットブラスト等の表面処理、熱成形、化学処理等でもよく、本実施形態の方法に限定しない。
【0015】
図3は本発明に適用されるブラシ毛材の先端部と生地の結合の様子を示す図である。本実施形態の生地16は厚みが1mm以下のフライス生地であり、ブラシ毛材13の縦に裂けている複数の毛先15は、その幾つかが生地16の網目や繊維の隙間に浅く入り込む。これは複数の毛先15の大部分が生地16の厚みを超えない程度であり、これにより生地16が束状に重なっていても、1枚の生地16のみがブラシ毛材13との結合の力の大部分を共有する。1本のブラシ毛材13と生地16では結合の力が小さいが、放射状のブラシ毛材13を生地16に押し当てることで、複数のブラシ毛材13が撓んで生地16と複数の毛先15が接触して結合する。また筒状のブラシの長手方向にある複数の毛材が同様に結合することも相まって、ブラシ毛材13と生地16の結合の力が大きくなる。この状態からさらにブラシ毛材13を回転させて生地16との接触する部分の面積を増やし結合する毛材の数を増やすことで、生地16を取り上げるために十分な結合の力が得られる。
【0016】
図4は本発明に適用されるローラ部材の動作の段階を示す図である。
図4(a)はローラ部材1がテーブルなどに設置された生地16の上方より下降してブラシ毛材13が接触する様子を示す。ローラ部材1は動作前に生地16の上方で待機しており、下降は人力または駆動機器を原動力として為される。ブラシ毛材13と生地16の接触の量はローラ部材1の下降の量を調節して行い、毛先15が生地16の厚みに満たない位置まで入り込む程度から、ここから更に押し当てて複数のブラシ毛材13が撓んで生地16と複数の毛先15が接触する程度など、必要とする結合の度合により選択する。
図4(b)はブラシ毛材13が生地16に接触する状態でローラ部材1が前後動作する様子を示す。ローラ部材1の前後動作は人力または駆動機器を原動力として為される。これによりブラシ毛材13と生地16の接触する部分の面積を増やし結合する毛材の数を増やす。
図4(c)はローラ部材1が前後動作の後に上昇を始める様子を示す。ローラ部材1の上昇は人力またはバネ等の機械的な復元力または駆動機器を原動力として為される。
図4(d)はローラ部材1が一定距離を上昇した様子を示す。生地16が持ち上がっている状態であり、作業者はこれを掴んでブラシ毛材13より取り外すことで容易に1枚の生地16を得られる。
【0017】
図5は本発明に適用されるピックアップ装置の斜視図である。本発明に適用される生地のピックアップ装置では、上述の第一実施形態または第二実施形態のいずれかに以下の構成を加えた第三実施形態をとることができる。上述の生地のピックアップ装置は、軸部材12に連結される軸継手21と、軸継手21に連結される駆動機器22とを備える構成とできる。駆動機器22は例えばステッピングモーターや空圧によるロータリーアクチュエータなどの回転駆動機器、またリンク機構等を介したエアシリンダなどの直動駆動機器である。これにより前述のローラ部材1の前後動作を行わずに駆動機器22を操作することで、次のようにして1枚の生地16を得ることができる。
【0018】
図6は本発明に適用される生地のピックアップ装置の動作の段階を示す図である。
図6(a)はローラ部材1がテーブルなどに設置された生地16の上方より下降してブラシ毛材13が接触する様子を示す。ローラ部材1は動作前に生地16の上方で待機しており、下降は人力または駆動機器を原動力として為される。ブラシ毛材13と生地16の接触の量はローラ部材1の下降の量を調節して行い、毛先15が生地16の厚みに満たない位置まで入り込む程度から、ここから更に押し当てて複数のブラシ毛材13が撓んで生地16と複数の毛先15が接触する程度など、必要とする結合の度合により調節して選択する。
図6(b)はブラシ毛材13が生地16に接触する状態で回転動作する様子を示す。回転動作は駆動機器22にて下側のブラシ毛材13が前側へ動く向きに為される。これによりブラシ毛材13と生地16の接触する部分の面積を増やし結合する毛材の数を増やす。本実施形態ではブラシ毛材13を90度から180度の間程度で回転動作させている。これは必要とする結合の度合により駆動機器22の回転角を調節している。
図6(c)はブラシ毛材13の回転動作の後にローラ部材1が上昇を始める様子を示す。ローラ部材1の上昇は人力またはバネ等の機械的な復元力または駆動機器を原動力として為される。
図6(d)はローラ部材1が一定距離を上昇した様子を示す。生地16が持ち上がっている状態であり、作業者はこれを掴んでブラシ毛材13より取り外すことで容易に1枚の生地16を得られる。
【0019】
図7は本発明に適用される生地のピックアップ装置の動作前の様子を示す斜視図である。生地16は長方形に近いシャツの後身頃等のイメージであり、複数枚を重ねて生地16の束として配置している。上方でローラ部材1が待機している。
【0020】
図8は本発明に適用される生地のピックアップ装置の動作後の様子を示す斜視図である。ローラ部材1は前述の一連の動作により1枚の生地16を取り上げる。ローラ部材1は生地16の前端または少し後ろで前述の一連の動作を行い上昇して生地16を取り上げている。回転動作は駆動機器22にて下側のブラシ毛材13が前側へ動く向きに為される。ブラシ毛材13と生地16が接触しなかった生地16の前と後ろはローラ部材1の前と下で垂れ下がる。作業者は生地16のどちらかの垂れ下がった部分を掴んでブラシ毛材13から取り外すことで容易に1枚の生地16を得られる。
【0021】
図9は本発明に適用される生地のピックアップ装置の2個のローラ部材を使用時の動作後の様子を示す斜視図である。丸胴のTシャツ等に用いる筒状の生地16にはローラ部材1を並列に2個設置して使用することができる。本実施形態では袋口を前向きにして重なる筒状の生地16の束に対して、長手方向を前後方向にして生地16の束の左右幅の内側に2台のローラ部材1を並列に設置する。前方から見て左側のローラ部材1はブラシ毛材13を時計回りに回転させ、右側は反時計回りに回転させる。これにより前述の一連の動作で2台のローラ部材1は生地16の袋口の上側の左端と上側の右端を掴まえて上昇し、袋口の上側を持ち上げる。作業者は生地16の袋口の左右の垂れ下がった部分を掴んでブラシ毛材13から取り外すことで容易に1枚の筒状の生地16を得られる。
【0022】
図10は本発明に適用されるテーブルセットの斜視図である。ピックアップ装置は、上述の第一実施形態から第三実施形態のいずれかであって、テーブルセット3を備えており、テーブルセット3はローラ部材1の下方向に配置される生地供給台31と、生地供給台31を支持する転動体32と、生地供給台31と転動体32を保持する可動土台33と、可動土台33を支持する支柱部材34と、可動土台33に連結される上下動部材35とを備えており、生地供給台31は外力により前後動作または上下動作して外力が除かれれば位置が復元されることを特徴とする構成としてもよい。
【0023】
テーブルセット3は生地供給台31,転動体32,可動土台33,支柱部材34,上下動部材35で構成される。支柱部材34はテーブルセット3の基礎となる部材であり地面に固定して設置される。可動土台33は後方で支柱部材34と連結し上下方向に動作可能にて配置される。上下動部材35は支柱部材34に設置され可動土台33と連結して、可動土台33が外力により下方向へ動作した後に、外力が除かれた時に上方向へ動作させる。本実施例では上下動部材35は、支柱部材34に設置される滑車36と、滑車36を定滑車にして可動土台33と紐で連結する錘37を備える。可動土台33の前方には台座が形成されており、台座の上部に転動体32が設置される。転動体32は直線状の保持器に複数の針状ころが並列に組込まれたいわゆるフラットローラであり台座の上部の左右に設置される。これにより生地供給台31は転動体32の上部で外力により前後方向に動作可能にて配置される。転動体32は前方が高い位置で後方が低い位置になるように設置されており、生地供給台31は外力が働かない状態では転動体32により滑って後方へ移動し、可動土台33の台座の後方にある車止めにて静止して待機する。これはバネを用いて後ろ方向への復元力としてもよい。
【0024】
図11は本発明に適用されるテーブルセットの動作の段階を示す図である。
図11(a)はローラ部材1が生地供給台31に設置された生地16の上方より下降してブラシ毛材13が接触する様子を示す。上述のようにブラシ毛材13と生地16の接触の量はローラ部材1の下降の量を調節して行い、毛先15が生地16の厚みに満たない位置まで入り込む程度から、ここから更に押し当てて複数のブラシ毛材13が撓んで生地16と複数の毛先15が接触する程度など、必要とする結合の度合により調節して選択する。後者の複数のブラシ毛材13が撓んで生地16と複数の毛先15が接触する程度の調節を選択した場合、複数のブラシ毛材13が撓んで生じる復元力が生地16を下方向へ押す力になる。このとき生地供給台31は上下動部材35の錘37により上方向に戻す力が働いている。生地16を下方向へ押す力が錘37による上方向に戻す力より大きくなれば生地供給台31は下方向へ移動する。生地供給台31が下方向へ移動することで複数のブラシ毛材13は撓む量が一定のまま、生地16を下方向へ押す力が錘37による上方向に戻す力と釣り合う。これによりローラ部材1の下降の量が必要以上に大きくなっても、生地16を下方向へ押す力を一定に保つことができる。生地16は束状に設置されており1枚の生地16をピックアップするとその束の高さが減少する。ブラシ毛材13と新たな生地16が同じ結合の度合になるためには、ローラ部材1の下降の量を、束の高さをセンサーで確認する等して都度調節する必要がある。しかし上述のような生地供給台31を用いてローラ部材1の下降の量を生地16の束の最も底の位置に合わせて調節することで、束の高低に係わらず、束の最も底の生地16から最も上の生地16まで生地16を下方向へ押す力を一定にできて、複数のブラシ毛材13の撓む量を一定にできて、しいてはブラシ毛材13と生地16の結合の度合を一定とできる。
【0025】
図11(b)はローラ部材1が一定距離を上昇した様子を示す。ローラ部材1が下降し、生地16の前端または少し後ろでブラシ毛材13が回転動作して、ブラシ毛材13の外周の下側から前側まで生地16が結合するときに生地16は後ろ部分が前方に引っ張られる。この後ローラ部材1が上昇することで生地16はさらに後ろ部分が前方に引っ張られる。生地16の束の上の生地16についてこれを行うと、すぐ下の生地16が摩擦の程度により引き摺られることがある。生地16同士の摩擦が小さい場合は1枚の生地16をピックアップしてもすぐ下の生地16は位置が変わらず、次回以降のピックアップも同様に行う事ができる。生地16同士の摩擦が大きい場合はすぐ下の生地16が引き摺られ、その後端部がローラ部材1の下部まで捲り上げられると、次回のピックアップは生地16の後端部付近で行われて、生地16の前後方向が逆転してピックアップされることになる。しかし上述のような生地供給台31を用いて前後方向に動作可能とすることで、生地16同士の摩擦が大きい場合でも、生地供給台31が前方に動くためすぐ下の生地16は引き摺られない。ピックアップの後には生地供給台31は後方へ戻り次回以降のピックアップを同様に行うことができる。
【0026】
以上説明した生地のピックアップ装置によれば、ピックアップ装置はローラ部材を備えており、ローラ部材は芯材と、芯材の端部に形成される軸部材と、芯材の周りに放射状に形成される複数のブラシ毛材と、軸受部材とを備えており、ブラシ毛材は外周で生地と結合し、軸受部材に対してブラシ毛材が回動する構成としたので、生地の束から縫製に用いる1枚の生地を取り出す際に、従来技術のようにロール状の粘着テープを少しづつ引き出して用いるため粘着テープが消耗して運用経費が嵩むという問題や、作業時間をロスしたり作業者が不快感を感じるなどといった問題について改善されている。
【0027】
本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施例に種々の変更を付加して実施することができ、本発明はそれらの変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0028】
1 ローラ部材
2 ピックアップ装置
3 テーブルセット
11 芯材
12 軸部材
13 ブラシ毛材
14 軸受部材
15 毛先
16 生地
21 軸継手
22 駆動機器
31 生地供給台
32 転動体
33 可動土台
34 支柱部材
35 上下動部材
36 滑車
37 錘