IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-増幅装置及び増幅方法 図1
  • 特開-増幅装置及び増幅方法 図2
  • 特開-増幅装置及び増幅方法 図3
  • 特開-増幅装置及び増幅方法 図4
  • 特開-増幅装置及び増幅方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077912
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】増幅装置及び増幅方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20240603BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20240603BHJP
   H03F 3/20 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
H03F1/02 188
H04B1/04 P
H04B1/04 A
H03F3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190146
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】車古 英治
【テーマコード(参考)】
5J500
5K060
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC36
5J500AF17
5J500AK34
5J500AK68
5J500AM19
5J500AT01
5J500RG07
5K060CC04
5K060HH06
5K060LL01
5K060LL04
5K060LL11
(57)【要約】
【課題】消費電力を低減する増幅装置及び増幅方法を提供することを目的とする。
【解決手段】増幅装置は、互いに独立した信号路にそれぞれ配置されたピークアンプ及びキャリアアンプと、前記ピークアンプ及び前記キャリアアンプの各出力信号を合成した無線信号の送信に要する送信電力を測定する測定手段と、前記送信電力の低下を検出した場合、前記ピークアンプの第1電源をオフに制御する制御手段と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立した信号路にそれぞれ配置されたピークアンプ及びキャリアアンプと、
前記ピークアンプ及び前記キャリアアンプの各出力信号を合成した無線信号の送信に要する送信電力を測定する測定手段と、
前記送信電力の低下を検出した場合、前記ピークアンプの第1電源をオフに制御する制御手段と、
を有する増幅装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記送信電力の前記低下を閾値時間にわたって検出した場合、前記第1電源をオフに制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の増幅装置。
【請求項3】
前記ピークアンプの前段と前記キャリアアンプの前段にはそれぞれデジタルアナログコンバータと前記デジタルアナログコンバータから出力された信号を処理する処理回路とが配置され、
前記制御手段は、前記ピークアンプ側の前記デジタルアナログコンバータの第2電源及び前記ピークアンプ側の前記処理回路の第3電源を前記第1電源と共にオフに制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の増幅装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記無線信号を受信する第1端末装置が前記無線信号を受信しない第2端末装置より前記無線信号を送信する無線装置の近くにあると判断した場合、前記無線信号を送信する際に使用するリソースブロックの数を低減せずに前記送信電力を前記第1電源をオフに制御する前の通常時送信電力から低減する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の増幅装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記無線信号を受信する第1端末装置が前記無線信号を受信しない第2端末装置より前記無線信号を送信する無線装置の遠くにあり、前記第1端末装置の数が前記第2端末装置の数より少ないと判断した場合、前記送信電力を低減せずに前記無線信号を送信する際に使用するリソースブロックの数を前記第1電源をオフに制御する前の通常時のリソースブロックの数から低減する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の増幅装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記無線信号を受信する第1端末装置が前記無線信号を受信しない第2端末装置より前記無線信号を送信する無線装置の遠くにあり、前記第1端末装置の数が前記第2端末装置の数より少ないと判断した場合、前記無線信号を送信する際に使用するアンテナ素子の数を前記第1電源をオフに制御する前の通常時のアンテナ素子の数から低減する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の増幅装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記無線信号を受信する第1端末装置が前記無線信号を受信しない第2端末装置より前記無線信号を送信する無線装置の遠くにあり、前記第1端末装置の数が前記第2端末装置の数より多いと判断した場合、前記無線装置の第1変調方式を前記第1変調方式より多値度が低い第2変調方式に変更する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の増幅装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記無線信号を送信する無線装置と前記無線装置を制御する制御装置のいずれか一方に含まれている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の増幅装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記無線信号を受信する端末装置から発信された発信信号を受信する期間に、前記第1電源をオフに制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の増幅装置。
【請求項10】
互いに独立した信号路にそれぞれ配置されたピークアンプ及びキャリアアンプの各出力信号を合成した無線信号の送信に要する送信電力を測定し、
前記送信電力の低下を検出した場合、前記ピークアンプの電源をオフに制御する、
増幅方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、増幅装置及び増幅方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線基地局の消費電力を低減する様々な技術が提案されている(例えば特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-249885号公報
【特許文献2】特開2014-179737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無線基地局で利用される無線装置では、送信電力を増幅する増幅装置が用いられている。増幅装置の効率は、出力飽和状態(非線形状態)において、最も高いことが知られている。無線装置では、出力飽和状態において最も高い効率を実現する増幅装置として、ドハティ型の増幅回路を含む増幅装置が用いられる場合がある。ドハティ型の増幅回路は並列に接続されたピークアンプ(PA:Peak Amplifier)とキャリアアンプ(CA:Carrier Amplifier)とを含んでいる。
【0005】
近年、通信事業者からモバイル通信規格「5G(5th Generation)」(具体的には「キャリア5G」)と呼ばれる通信サービスが提案されている。また、通信事業者以外の事業者(例えばメーカーや自治体など)から5Gのネットワーク環境と同等のネットワーク環境を自社で運用できるローカル5Gと呼ばれる通信サービスが提案されている。ローカル5Gにおいても5Gの場合と同様にドハティ型の増幅回路を含む増幅装置が利用される。
【0006】
例えばローカル5Gは通信事業者が提供する通信サービスの利用者より少ない特定の利用者しか通信サービスを利用しないので、利用頻度が少ない場合においては、計画的に消費電力を低減することが可能である。すなわち、ローカル5Gを含む5Gの通信サービスを提供する際に利用される増幅装置においては、さらなる消費電力低減の余地がある。
【0007】
そこで、1つの側面では、消費電力を低減する増幅装置及び増幅方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施態様では、増幅装置は、互いに独立した信号路にそれぞれ配置されたピークアンプ及びキャリアアンプと、前記ピークアンプ及び前記キャリアアンプの各出力信号を合成した無線信号の送信に要する送信電力を測定する測定手段と、前記送信電力の低下を検出した場合、前記ピークアンプの第1電源をオフに制御する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】無線基地局の一例を示すブロック図である。
図2】増幅装置の一例を示すブロック図である。
図3】消費電力の低減例を説明する図である。
図4】制御装置と無線装置の動作の一例を示す処理シーケンス図である。
図5】低減手法の一例を説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本件を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、無線基地局10は制御装置11と無線装置12とを有する。キャリア5Gやローカル5Gにおいて、制御装置11はCU(Centralized Unit)と呼ばれることがあり、無線装置12はRU(Radio Unit)と呼ばれることがある。制御装置11と無線装置12は例えば光ファイバによって接続されている。制御装置11には通信ネットワークNWから送信データが入力される。通信ネットワークNWは例えばLAN(Local Area Network)やCN(Core Network)、インターネットなどを含んでいる。
【0013】
制御装置11は送信データの符号化といった所定のベースバンド処理を実行してベースバンドの送信信号(以下、ベースバンド信号という。)を生成する。制御装置11は生成したベースバンド信号を無線装置12へ出力する。無線装置12は、制御装置11から入力されたベースバンド信号を無線通信用の送信信号(以下、無線送信信号という)に変換する。
【0014】
無線装置12は、ベースバンド信号を無線送信信号に変換すると、無線送信信号に対し、変調、アップコンバート、増幅といった様々な処理を実行する。無線装置12は、このような処理を実行した後の無線送信信号を複数のアンテナ素子(以下、単にアンテナという)13の少なくとも1つを介して無線WLにより送信する。無線装置12は増幅装置50を有する。増幅装置50が無線送信信号を増幅する。増幅装置50は入力端子121を介して制御装置11と接続されている。増幅装置50は出力端子122を介して複数のアンテナ13と接続されている。
【0015】
通信端末21はアンテナ13から送信された無線送信信号を受信する端末装置である。通信端末22はアンテナ13から送信された無線送信信号を受信しない端末装置である。通信端末21は第1端末装置の一例であって、通信端末22は第2端末装置の一例である。図1では、通信端末21,22の一例として携帯端末(具体的にはスマートフォン)が示されているが、通信端末21,22はタブレット端末やPC(Personal Computer)のワイヤレスアダプタなどであってもよい。
【0016】
図2を参照して、増幅装置50の詳細について説明する。
【0017】
増幅装置50は、第1増幅回路51と、第2増幅回路52と、ADC(Analogue Digital Converter)53と、デジタル処理回路54とを有する。第1増幅回路51と第2増幅回路52の各一端はデジタル処理回路54に接続されている。第1増幅回路51と第2増幅回路52の各他端は出力端子122に接続されている。
【0018】
デジタル処理回路54は、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びメモリといったハードウェア回路を含んでいる。デジタル処理回路54はFPGAに代えて、ASIC(Application Specified Integrated Circuit)やCPU(Central Processing Unit)といったハードウェア回路であってもよい。
【0019】
デジタル処理回路54は、インターフェース(図2においてI/Fと記載)541と、生成部542と、クリップ部543と、調整部544とを有する。また、デジタル処理回路54は、送信電力測定部545と、電力監視部546と、電源制御部547とを有する。なお、電力監視部546及び電源制御部547は制御装置11に設けられてもよい。送信電力測定部545は測定手段の一例である。電力監視部546と電源制御部547は制御手段の一例である。
【0020】
インターフェース541は入力端子121から出力されたベースバンド信号を受信する。インターフェース541は制御装置11の動作を制御する第1制御信号を入力端子121に送信してもよい。インターフェース541は無線装置12の動作を制御する第2制御信号を入力端子121から受信してもよい。インターフェース541は通信端末21から無線WLで発信されて無線装置12が受信した発信信号を入力端子121に送信してもよい。
【0021】
生成部542はベースバンド信号を無線送信信号に変換する。クリップ部543は、後述する低消費電力モード番号に基づいて、無線送信信号の振幅の上限をクリップ(規制)する。調整部544は無線送信信号から後述するピークアンプ(以下、PAと記載)513に用いる第1入力信号と後述するキャリアアンプ(以下、CAと記載)523に用いる第2入力信号を生成する。調整部544は、無線送信信号の振幅及び位相、遅延を調整することにより、第1入力信号と第2入力信号を個別に生成する。調整部544は第1入力信号を第1増幅回路51に入力する。調整部544は第2入力信号を第2増幅回路52に入力する。
【0022】
第1増幅回路51と第2増幅回路52は並列に配置されている。第1増幅回路51と第2増幅回路52は互いに独立した信号路(パス)に接続されて二重化されている。第1増幅回路51と第2増幅回路52によってドハティ型(より詳しくはデジタルドハティ型)の増幅回路を実現することができる。なお、ドハティ型の増幅回路にデジタル処理回路54を含めてもよい。
【0023】
第1増幅回路51はDAC(Digital Analogue Converter)511とアナログ処理回路512とPA513とを含んでいる。アナログ処理回路512はDAC511とPA513の間に配置されている。PA513の前段にDAC511とアナログ処理回路512が配置されている。DAC511の入力端はデジタル処理回路54に接続されている。DAC511の出力端はアナログ処理回路512に接続されている。PA513は増幅装置50の電源から供給される電源電圧で動作する。
【0024】
DAC511は調整部544からの第1入力信号をデジタル形式からアナログ形式に変換し、アナログ処理回路512に出力する。アナログ処理回路512はアナログ形式の第1入力信号に対し、変調やアップコンバートといった処理を実行して、PA513に出力する。PA513はアナログ処理回路512から出力された第1入力信号の電力を増幅し、増幅後の第1入力信号を第1出力信号として出力する。クリップ部543によって無線送信信号の振幅の上限がクリップされているため、出力飽和点以上の振幅の第1入力信号のPA513への入力が回避される。
【0025】
第2増幅回路52はDAC521とアナログ処理回路522とCA523とを含んでいる。アナログ処理回路522はDAC521とCA523の間に配置されている。CA523の前段にDAC521とアナログ処理回路522が配置されている。DAC521の入力端はデジタル処理回路54に接続されている。DAC521の出力端はアナログ処理回路522に接続されている。CA523は増幅装置50の電源から供給される電源電圧で動作する。
【0026】
DAC521は調整部544からの第2入力信号をデジタル形式からアナログ形式に変換し、アナログ処理回路522に出力する。アナログ処理回路522はアナログ形式の第2入力信号に対し、変調やアップコンバートといった処理を実行して、CA523に出力する。CA523はアナログ処理回路522から出力された第2入力信号の電力を増幅し、増幅後の第2入力信号を第2出力信号として出力する。
【0027】
PA513の出力端とCA523の出力端は結合されている。2つの出力端の結合部55は出力端子122に接続されている。結合部55と出力端子122とを結ぶ信号路は2方向に分岐しており、信号路の一方が出力端子122に接続されており、信号路の他方がADC53に接続されている。
【0028】
これにより、PA513から出力された第1出力信号とCA523から出力された第2出力信号は結合部55で合成される。したがって、第1出力信号と第2出力信号を合成した信号である無線信号は出力端子122とADC53にそれぞれ入力される。出力端子122は入力された無線信号を無線送信信号として複数のアンテナ13のいずれかに出力する。ADC53は無線信号をアナログ形式からデジタル形式に変換して送信電力測定部545に出力する。
【0029】
送信電力測定部545は無線信号の送信の要する送信電力を測定する。電力監視部546は送信電力測定部545が測定した無線信号の送信電力を監視する。電力監視部546は無線信号の送信電力が一定時間にわたって閾値電力より低いことを検出した場合、インターフェース541を介して第1制御信号を制御装置11に送信する。第1制御信号は増幅装置50の消費電力を低減する電力低減要求を含んでいる。
【0030】
電力監視部546はインターフェース541を介して制御装置11から第2制御信号を受信する。第2制御信号は無線通信資源(例えば周波数やRB(Resource Block)など)の使用状況などに応じた低消費電力モード番号を含んでいる。詳細は後述するが、制御装置11は無線通信資源の使用状況などを管理し、使用状況などに応じた低消費電力モード番号を特定する。電力監視部546は第2制御信号を受信すると、第2制御信号に含まれる低消費電力モード番号に基づいて、クリップ部543がクリップする無線送信信号の振幅の上限を変更する。
【0031】
また、電力監視部546は第2制御信号を受信すると、電源制御部547に第1増幅回路51の電源のオフを指示する。これにより、電源制御部547は第1増幅回路51の電源をオフに制御する。具体的には、電源制御部547はPA513の電源である第1電源とDAC511の電源である第2電源とアナログ処理回路512の電源である第3電源の全てをオフに制御する。
【0032】
なお、電源制御部547はPA513の第1電源を単独でオフしてもよい。この場合、CA523の第4電源が単独でオンになっている状態で維持される。CA523の第4電源が単独でオンになっているため、図3に示すように、PA513の第1電源とCA523の第4電源の両方がオンである場合に比べて、増幅装置50の消費電力を低減することはできる。すなわち、第1電源を単独でオフしても、増幅装置50の消費電力を低減することは可能である。
【0033】
しかしながら、DAC511の第2電源とアナログ処理回路512の第3電源をオフしていないため、DAC511とアナログ処理回路512は動作不要であるにも関わらず電力を消費する。すなわち、電力消費をさらに低減できる余地がある。このため、電源制御部547はPA513の第1電源だけでなく、DAC511の第2電源とアナログ処理回路512の第3電源も併せてオフすることが望ましい。電源制御部547がPA513の第1電源とDAC511の第2電源とアナログ処理回路512の第3電源の全てをオフに制御しても、無線基地局10は通信サービスを維持することができる。
【0034】
続いて、図4及び図5を参照して、制御装置11と無線装置12の動作について説明する。
【0035】
まず、図4に示すように、無線装置12の電力監視部546は送信電力測定部545が測定する無線信号の送信電力を監視する(ステップS1)。電力監視部546は送信電力が閾値時間にわたって閾値電力より低いことを検出すると(ステップS2)、電力低減要求を含む第1制御信号を制御装置11に送信する(ステップS3)。
【0036】
制御装置11は第1制御信号を受信すると、低消費電力モード番号を選択する(ステップS4)。より詳しくは、図5に示すように、制御装置11は低消費電力モード番号(図5において単にモード番号と記載)として第1モードから第4モードを管理しており、第1モードから第4モードのいずれかを選択する。
【0037】
第1モードは、第1増幅回路51の電源をオフする前の通常時の送信電力に比べて、無線送信信号を送信する際に使用するRB30の数を低減せずに無線送信信号の送信電力を低減する電力低減モードである。第1モードによれば、通常時に比べて、無線基地局10の担当範囲を表すセルの半径(セル半径)が小さくなるが、通信容量は変わらない。第1モードでは、周波数と送信電力とによって表されるスペクトラムの面積が通常時に比べて小さくなるため、大きな電力低減効果が得られる。制御装置11は、無線通信資源の使用状況に基づいて、通信端末21が通信端末22より無線装置12の近くにあり、かつ、通信量が相対的に多いと判断した場合、第1モードを選択する。
【0038】
第2モードは、通常時に比べて、無線送信信号の送信電力を低減せずに、無線送信信号を送信する際に使用するRB30の数を通常時のRBの数から低減するRB数変更モードである。第2モードによれば、通常時に比べて、セル半径は変わらないが、通信容量は減る。第2モードでは、スペクトラムの面積が通常時に比べて小さくなるため、大きな電力低減効果が得られる。制御装置11は、無線通信資源の使用状況に基づいて、通信端末21が通信端末22より無線装置12の遠くにあり、無線送信信号の送信に要する通信量が相対的に少なく、かつ、通信端末21の数が通信端末22の数より少ないと判断した場合、第2モードを選択する。
【0039】
第3モードは、無線装置12の第1変調方式を第1変調方式より多値度が低い第2変調方式に変更する変調方式変更モードである。本実施形態では、一例として多値度「256値」の第1変調方式「256QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)」が多値度「16値」の第2変調方式「16QAM」に変更されている。第3モードによれば、通常時に比べて、セル半径は変わらないが、通信容量は減る。第3モードでは、スペクトラムの面積が通常時に比べて変わらないが、多値度が第1変調方式より低い第2変調方式に変更されるため、小さな電力低減効果が得られる。制御装置11は、無線通信資源の使用状況に基づいて、通信端末21が通信端末22より無線装置12の遠くにあり、無線送信信号の送信に要する通信量が相対的に少なく、かつ、通信端末21の数が通信端末22の数より多いと判断した場合、第3モードを選択する。
【0040】
第4モードは、無線送信信号を送信する際に使用するアンテナ13の数を通常時のアンテナ13の数から低減するMIMO(Multiple Input Multiple Output)数モードである。第4モードによれば、通常時に比べて、セル半径は変わらないが、通信容量は減る。第4モードでは、アンテナ13の稼働数が直接的に低減するため、大きな電力低減効果が得られる。制御装置11は、無線通信資源の使用状況に基づいて、通信端末21が通信端末22より無線装置12の遠くにあり、無線送信信号の送信に要する通信量が相対的に少なく、かつ、通信端末21の数が通信端末22の数より少ないと判断した場合、第4モードを選択する。
【0041】
図4に戻り、低消費電力モード番号を選択すると、制御装置11は低消費電力モード番号を無線装置12に通知する(ステップS5)。より詳しくは、制御装置11は選択した低消費電力モード番号を含む第2制御信号を無線装置12に送信する。これにより、無線装置12の電力監視部546はインターフェース541を介して第2制御信号を受信する。
【0042】
低消費電力モード番号が通知されると、電力監視部546は電源制御部547を通常モードから低消費電力モードに切り替える(ステップS6)。より詳しくは、電力監視部546が第2制御信号を受信すると、電源制御部547に第1増幅回路51の電源のオフを指示する。これにより、電源制御部547はPA513の第1電源をオフに制御する。上述したように、電源制御部547はDAC511の第2電源及びアナログ処理回路512の第3電源も第1電源と共にオフに制御してもよい。なお、通常モードは例えば多くの無線通信資源が要求される日中に利用される。一方、低消費電力モードは例えば少ない無線通信資源で運用可能な夜間に利用される。
【0043】
また、第1増幅回路51の電源のオフと併せて、電力監視部546は、受信した第2制御信号に含まれる低消費電力モード番号に基づいて、クリップ部543を通常モードから第1モードから第4モードのいずれかに切り替える。これにより、第1増幅回路51が消費する電力の低減と併せて、無線送信信号の送信電力が低減する。このように、第1増幅回路51の電源を単独でオフする場合に比べて、無線装置12の消費電力を大きく低減することができる。
【0044】
なお、電力監視部546は、5Gで利用されるTDD(Time Division Duplex)方式において通信端末21が無線基地局10に向けて上り信号として発信する発信信号の受信期間に、電源制御部547を通常モードから低消費電力モードに切り替える。無線基地局10が通信端末21に向けて下り信号として送信する無線送信信号の送信期間に電源制御部547を通常モードから低消費電力モードに切り替えると、PA513の負荷が変動する。これにより、無線送信信号の波形が歪む可能性がある。受信期間においては、無線送信信号の送信を切り替える送信スイッチの制御がオフになるので、増幅装置50への電気的な負担が少ない。このような状況で通信サービスの維持を図りながら、少なくともPA513の第1電源がオフになる。
【0045】
通常モードから低消費電力モードへの切り替えが完了すると、電力監視部546は切替完了通知を制御装置11に送信する(ステップS7)。電力監視部546はインターフェース541を介して切替完了通知を送信する。切替完了通知を送信すると、電力監視部546は再び電力を監視する(ステップS8)。電力監視部546は電力を監視し、閾値電力以上の送信電力を高頻度で検出した場合、低消費電力モードを解除する。
【0046】
この場合、電力監視部546は低消費電力モードの解除要求を含む第1制御信号を制御装置11に送信し、制御装置11から通常モードへの移行指示を含む第2制御信号を受信する。電力監視部546はこの第2制御信号を受信すると、電源制御部547に通常モードへの移行を指示する。これにより、第1増幅回路51がオンになる。また、電力監視部546はこの第2制御信号を受信すると、クリップ部543を第1モードから第4モードのいずれかから通常モードに切り替える。これにより、多くの無線通信資源を利用することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る増幅装置50はPA513及びCA523と、送信電力測定部545と、電力監視部546及び電源制御部547とを有する。PA513及びCA523は互いに独立した信号路にそれぞれ配置されている。送信電力測定部545はPA513からの第1出力信号とCA523からの第2出力信号を合成した無線信号の送信に要する送信電力を測定する。電力監視部546が送信電力の低下を検出すると、電源制御部547は少なくともPA513の第1電源をオフに制御する。これにより、増幅装置50の消費電力を低減することができ、結果的に無線装置12の消費電力を低減することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、PA513を含む第1増幅回路51とCA523を含む第2増幅回路52は互いに独立した信号路にそれぞれ配置されて二重化されている。このように、増幅回路が二重化されているためPA513とCA523の個別の調整が可能だが、増幅回路の二重化に起因して消費電力が増加すると想定される。ところが、本実施形態によれば、PA513による増幅が不要な際には第1増幅回路51の電源がオフになる。これにより、CA523が単独で消費する電力に抑えることができる。また、上述した第1モードや第2モードといった複数のモードを活用することにより、無線通信資源の使用状況に応じて、適応的な電力低減手法を選択することができる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 無線基地局
11 制御装置
12 無線装置
21,22 通信端末
50 増幅装置
51 第1増幅回路
52 第2増幅回路
511,521 DAC
512,522 アナログ処理回路
513 PA
523 CA
54 デジタル処理回路
545 送信電力測定部
546 電力監視部
547 電源制御部
図1
図2
図3
図4
図5