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特開2024-77916期間設定システム、期間設定方法および期間設定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077916
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】期間設定システム、期間設定方法および期間設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240603BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20240603BHJP
   G06Q 30/0645 20230101ALI20240603BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/20
G06Q30/0645
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190154
(22)【出願日】2022-11-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 伸弥
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭介
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB68
5L049BB68
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】電動車両に対するユーザの運行計画に応じた適切なリース期間を設定することが可能な期間設定システム、期間設定方法および期間設定プログラムを提供する。
【解決手段】期間設定システムは、電動車両のリース期間を設定する期間設定システムであって、電動車両に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得する取得部と、ユーザ情報と電動車両に搭載される車両走行用のバッテリの劣化度との関係を示す劣化情報を記憶する記憶部と、ユーザ情報および劣化情報に基づいて、リース期間を設定するために特定される特定期間を算出する算出部と、特定期間を出力する出力部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両のリース期間を設定する期間設定システムであって、
前記電動車両に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得する取得部と、
前記ユーザ情報と前記電動車両に搭載される車両走行用のバッテリの劣化度との関係を示す劣化情報を記憶する記憶部と、
前記ユーザ情報および前記劣化情報に基づいて、前記リース期間を設定するために特定される特定期間を算出する算出部と、
前記特定期間を出力する出力部と、
を備える、
期間設定システム。
【請求項2】
前記バッテリの劣化度は、前記バッテリの充放電量に対する前記バッテリの劣化度を含む、
請求項1に記載の期間設定システム。
【請求項3】
前記バッテリの劣化度は、前記電動車両の電費に関する前記バッテリの劣化度を含む、
請求項1に記載の期間設定システム。
【請求項4】
前記バッテリの劣化度は、時間に応じた前記バッテリの劣化度を含む、
請求項1に記載の期間設定システム。
【請求項5】
前記バッテリの劣化度は、前記バッテリの充電モードに関する前記バッテリの劣化度を含む、
請求項1に記載の期間設定システム。
【請求項6】
前記バッテリの劣化度は、前記電動車両が備える設備に関する前記バッテリの劣化度を含む、
請求項1に記載の期間設定システム。
【請求項7】
前記算出部は、前記バッテリが満充電された場合に前記電動車両を1運行させることが可能な距離である1運行当たりの走行可能距離を算出し、当該算出した前記1運行当たりの走行可能距離に基づいて、前記特定期間を算出する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の期間設定システム。
【請求項8】
前記運行計画は、1運行当たりのユーザ走行距離を含み、
前記算出部は、前記1運行当たりの走行可能距離と前記1運行当たりのユーザ走行距離とを比較した比較結果に基づいて、前記特定期間を算出する、
請求項7に記載の期間設定システム。
【請求項9】
電動車両のリース期間を設定する期間設定方法であって、
前記電動車両に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得する工程と、
前記ユーザ情報と前記電動車両に搭載される車両走行用のバッテリの劣化度との関係を示す劣化情報と、前記ユーザ情報とに基づいて、前記リース期間を設定するために特定される特定期間を取得する工程と、
前記特定期間を出力する工程と、
を備える、
期間設定方法。
【請求項10】
電動車両のリース期間を設定する期間設定プログラムであって、
前記電動車両に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得するステップと、
前記ユーザ情報と前記電動車両に搭載される車両走行用のバッテリの劣化度との関係を示す劣化情報、および、前記ユーザ情報に基づいて、前記リース期間を設定するために特定される特定期間を取得するステップと、
前記特定期間を出力するステップと、
をコンピュータを用いて実行する、
期間設定プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、期間設定システム、期間設定方法および期間設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
商用車の提供方法において、ユーザに車両を販売する方式の他、期間もしくは走行距離とそれらに対する費用とが設定されたリース条件のもとユーザに車両を貸与するいわゆるリース提供が行われることがある。なお、フルメンテナンスリース契約の場合、リース費用は、車両の代金にユーザの車両に対する走行距離に対して発生し得る部品交換を含むメンテナンス費用を加味した金額を契約期間で割った金額から設定される。一方で、近年、バッテリに貯蔵された電力を利用して駆動する電動車両(Electric Vehicle:EV)の利用が拡大している。
【0003】
例えば、特許文献1には、電動車両(EV)の走行情報およびバッテリの充電回数に基づいて、バッテリの劣化状態を報知するバッテリ容量報知装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-031588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動車両(EV)において、従来のディーゼル車両と同様にリース期間を設定した場合、当該リース期間に達した時点でバッテリの劣化が進んでしまうことがあり、ユーザの所望の走行距離を走行できないケースが発生し得る。具体的には、例えばリース期間5年としても電動車両に対する年間の走行距離10万kmであった場合に、リース期間を経過した時点で、1回の運行で所望の走行距離を走行できないほど劣化が進行することがある。逆に、年間の走行距離が短い場合、リース期間を経過してもバッテリの能力に余力があることもある。
【0006】
年間の走行距離を含むユーザの運行計画によって、バッテリの劣化が進行する場合や、バッテリの劣化が進行していない場合がある。したがって、リース期間を設定時にバッテリの劣化状態を予測することができれば、適切なリース期間を設定することが可能となる。
【0007】
なお、上記特許文献1に記載のバッテリ容量報知装置は、バッテリの劣化状態を予測するものではない。したがって、このバッテリ容量報知装置をリース期間の設定時に用いても、電動車両に対するユーザの運行計画に応じた適切なリース期間を設定することは困難である。
【0008】
本開示の目的は、電動車両に対するユーザの運行計画に応じた適切なリース期間を設定することが可能な期間設定システム、期間設定方法および期間設定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本開示における期間設定システムは、
電動車両のリース期間を設定する期間設定システムであって、
前記電動車両に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得する取得部と、
前記ユーザ情報と前記電動車両に搭載される車両走行用のバッテリの劣化度との関係を示す劣化情報を記憶する記憶部と、
前記ユーザ情報および前記劣化情報に基づいて、前記リース期間を設定するために特定される特定期間を算出する算出部と、
前記特定期間を出力する出力部と、
を備える。
【0010】
本開示における期間設定方法は、
電動車両のリース期間を設定する期間設定方法であって、
前記電動車両に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得する工程と、
前記ユーザ情報と前記電動車両に搭載される車両走行用のバッテリの劣化度との関係を示す劣化情報と、前記ユーザ情報とに基づいて、前記リース期間を設定するために特定される特定期間を取得する工程と、
前記特定期間を出力する工程と、
を備える。
【0011】
本開示における期間設定プログラムは、
電動車両のリース期間を設定する期間設定プログラムであって、
前記電動車両に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得するステップと、
前記ユーザ情報と前記電動車両に搭載される車両走行用のバッテリの劣化度との関係を示す劣化情報、および、前記ユーザ情報に基づいて、前記リース期間を設定するために特定される特定期間を取得するステップと、
前記特定期間を出力するステップと、
をコンピュータを用いて実行する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、電動車両に対するユーザの運行計画に応じた適切なリース期間を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の実施の形態における期間設定システムの機能構成を模式的に示すブロック図である。
図2図2は、SOHと経過年数との関係の一例を示す図である。
図3図3は、バッテリの充電モードに応じた劣化特性の一例を示す図である。
図4図4は、SOHと走行可能距離の関係の一例を示す図である。
図5図5は、ユーザAの運行計画に基づく1運行当たりの走行可能距離を示す図である。
図6図6は、ユーザBの運行計画に基づく1運行当たりの走行可能距離を示す図である。
図7図7は、本実施の形態における特定期間を算出する処理の一例を示す図である。
図8図8は、設備の電力消費が小さい場合の走行可能距離と設備の電力消費が大きい場合の走行可能距離とを対比して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の実施の形態における期間設定システムの機能構成を模式的に示すブロック図である。本実施の形態における期間設定システムは、リース車両に対するリース期間を設定する場合に適用される。本実施の形態において、リース車両は、バッテリに貯蔵された電力を利用して駆動する電動車両(EV)である。
【0015】
期間設定システム1は、コンピュータや、コンピュータ内蔵のデジタル機器、およびその周辺機器、例えば、パソコン、スマートフォン、タブレット端末、ディスプレイ(モニタ)、プリンタ、サーバコンピュータ、ネットワーク機器などの情報機器を用いて実現され、リース車両を利用するユーザ情報およびリース車両に搭載されるバッテリの劣化情報(後述する)に基づいて、リース期間を設定するための特定期間を算出する機能を有する。
【0016】
期間設定システム1は、機能ブロックとしての記憶部2と制御部3と表示部4を備える。図1において、矢印は主なデータの流れを示しており、図1に示していないデータの流れがあってもよい。図1において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図1に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、コントローラエリアネットワーク(CANバス)等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0017】
記憶部2は、期間設定システム1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や期間設定システム1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報、バッテリの劣化情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。
【0018】
制御部3は、期間設定システム1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部2に記憶されたプログラムを実行することによって取得部30、算出部31及び出力部32として機能する。
【0019】
なお、図1は、期間設定システム1が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、期間設定システム1は、例えば複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。この場合、制御部3を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0020】
(取得部30、ユーザ情報)
取得部30は、電動車両(EV)に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得する。ユーザ情報は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルなどの入力装置を用いて入力される。運行計画は、例えば、1年目、2年目、・・・、N年目(Nは自然数)のそれぞれにおける、稼働日数、1日の運行数、1運行当たりの走行距離などを含む。これにより、各年の1年間当たりのユーザ走行距離が分かる。また、運行計画は、EVが走行する走行地域(寒冷地、温暖な地域)を含む。また、運行計画は、EVが走行する時期(寒冷期、温暖期)を含む。また、運行計画は、EVが走行する走行道路(高速道路、一般道路)を含む。
【0021】
(バッテリの劣化情報)
バッテリの劣化情報は、ユーザ情報とバッテリの劣化度との関係を示す1または複数の関数(劣化関数)や、ユーザ情報とバッテリの劣化度との関係を表す1または複数のテーブルを有する。劣化関数や、テーブルは実験やシミュレーションにより予め定められる。バッテリの健全度や劣化状態を表す指標の一つとしてSOH(State Of health)がある。SOHは、バッテリの初期における満充電容量に対するバッテリの劣化時における満充電容量の割合で表される。換言すれば、バッテリ劣化時の満充電容量は、初期における満充電容量にSOHを乗算した乗算値で表される。
【0022】
バッテリの劣化度は、時間に応じたバッテリの劣化度を含む。例えば、SOHは、時間に応じて低下する。図2は、SOHと経過年数との関係の一例を示す図である。図2の横軸に初期からの経過年数を示し、縦軸にSOH(%)を示す。図2に示すように、SOHは、経過年数に応じて低下する。ここで、1年目の初頭のSOHを100%とする。
【0023】
また、バッテリの劣化度は、充電サイクル数に応じたバッテリの劣化度を含む。ここで、充電サイクル数は、充放電量(kWh)を満充電容量(kWh)で除算した数値である。また、1年間当たりの充電サイクル数は、1年間当たりの充放電量(kWh)を満充電量(kWh)で除算した数値である。したがって、SOHは、充電サイクル数に応じて低下する。充電サイクルは、バッテリの充放電量に対応するパラメータであり、実際の充電回数とは異なる。例えば、バッテリを満充電まで充電した状態から、半分程度まで使用したあと、満充電になるまで充電をしたとする。このとき、充電回数としては1回であるが、充放電量は満充電の半分であるので充電サイクル数は0.5となる。
【0024】
また、バッテリの劣化度は、電動車両(EV)の電費に関するバッテリの劣化度を含む。電費は、温暖な地域よりも寒冷地において低下する。また、電費は、温暖期よりも寒冷期において低下する。また、電費は、高速道路よりも一般道路において低下する。電費は、走行地域等の運行計画に基づいて推定される。
【0025】
また、バッテリの劣化度は、バッテリの充電モードに応じたバッテリの劣化度を含む。バッテリは、充電モードが普通充電である場合よりも充電モードが急速充電である場合の方が劣化する。
【0026】
図3を参照して、バッテリの充電モードに応じたバッテリの劣化について説明する。図3は、バッテリの充電モードに応じた劣化特性の一例を示す図である。図3の横軸に充電回数を示し、縦軸にSOHを示す。図3に、充電モードが普通充電である場合のSOHを実線で示し、充電モードが急速充電である場合のSOHを破線で示す。図3に示す「Th」は、リース終了の目安となるSOHの残存率であって、ユーザの1回の運行当たりのユーザ走行距離を走行可能なSOHより高い残存率である。また、「Ca」は、急速充電を繰り返した場合に、SOHがTh(%)に劣化する充電回数である。「Cb」は、普通充電を繰り返した場合に、SOHがTh(%)に劣化する充電回数である。図3に示すように、普通充電よりも急速充電を繰り返す方がSOHの低下の程度が高い(劣化特性)。ユーザ情報として、利用する充電種別(普通充電、急速充電)を取得し、充電種別に応じて劣化特性を切り替えることで、より正確なSOHを算出することが可能となる。以上のように、SOHは、充電モードに応じて低下する。
【0027】
(算出部31)
算出部31は、ユーザ情報および劣化情報に基づいて、電動車両に対するリース期間を設定するために特定される特定期間を算出する。算出部31は、ユーザ情報および劣化情報に基づいて、電動車両に対するリース期間を設定するために特定される特定期間を取得する取得部であるともいえる。なお、劣化情報として、劣化関数や、テーブルが用いられる。また、特定期間は、リース期間と同じ期間でもよく、また、リース期間を設定するために参照される期間でもよい。本実施の形態では、特定期間をリース期間と同じ期間とし、特定期間(リース期間)として示す。
【0028】
例えば、N年目がリース期間に組み込まれるか否かの判定は、1年目からN年目までのユーザ情報および劣化情報に基づいて算出された特定期間を参照して行われる。以下、特定期間(リース期間)を算出する場合の一例について説明する。ユーザ情報として、稼働日数、1日の運行数、1運行当たりの走行距離が用いられる。
【0029】
算出部31は、ユーザ情報に基づいて、N年目の1年間当たりのユーザ走行距離を算出する。さらに、算出部31は、N年目の初頭の電費を推定する。さらに、算出部31は、N年目の1年間当たりのユーザ走行距離を電費で除算することで、N年目の1年間当たりの充放電量(kWh)を算出する。さらに、算出部31は、N年目の1年間当たりの充放電量(kWh)を新品の状態での最大充電量で除算し、除算値にN年目の初頭のSOHを乗算することで、N年目の1年間当たりの充電サイクル数を算出する。さらに、算出部31は、N年目の1年間当たりの充電サイクル数および経過年数に基づいて、(N+1)年目の初頭のSOHを算出する。以上によって、バッテリが満充電された場合にEVを1運行させることが可能な距離であるN年目の1運行当たりの走行可能距離を導き出す。
【0030】
さらに、算出部31は、N年目の1運行当たりの走行可能距離とN年目の1運行当たりのユーザ走行距離とを比較する。例えば、N年目の1運行当たりの走行可能距離がN年目の1運行当たりのユーザ走行距離よりも長い場合、N年目をリース期間に組み込むことが可能となる。つまり、1年目からN年目が特定期間(リース期間)となる。一方、N年目の1運行当たりの走行可能距離がN年目の1運行当たりのユーザ走行距離よりも短い場合、N年目をリース期間に組み込むことができない。この場合、例えば、(N-1)年目の1運行当たりの走行可能距離が(N-1)年目の1運行当たりのユーザ走行距離よりも長い場合、1年目から(N-1)年目が特定期間(リース期間)となる。
【0031】
(出力部32)
出力部32は、特定期間を出力する。本実施の形態では、出力部32は、特定期間(リース期間)を表示部4に出力する。
【0032】
次に、SOHと走行可能距離との関係について図4を参照して説明する。図4は、SOHと走行可能距離の関係の一例を示す図である。図4の横軸にSOHを示し、縦軸に走行可能距離(km)を示す。図4に示す走行可能距離は、バッテリを満充電したときの走行可能距離である。図4に、1日当たりのユーザ走行距離Duserを点線で示し、1日当たりのユーザ走行距離に所定のマージンを上乗せした閾値Dthを破線で示す。所定のマージンは運行上の安全余裕度の観点から設定される。
【0033】
図4に示すように、バッテリが新品である場合のSOHを100%とする。また、SOHが100%である場合の走行可能距離を100kmとする。SOHと走行可能距離との関係を実線で示す。実線と1日当たりのユーザ走行距離Duserとが交わる交点で示すSOHが最小値minとなる。SOHが最小値min未満である場合、バッテリの劣化特性の観点から、EVの運行が困難となる。実線と閾値Dthとが交わる交点で示すSOHがSOHの閾値Thとなる。SOHが閾値Th未満である場合、運行上の安全余裕度の観点から、EVの運行が困難となる。一方、SOHが閾値Th以上である場合、EVの運行が可能となる。走行可能距離が閾値Th以上である状態を維持できる期間を、EVの運行が可能な特定期間(リース期間)とする。リース条件を設定する場合、特定期間より短い期間では、バッテリ交換費用を見込まずにリース費用を設定可能となる。特定期間を超える場合、バッテリ交換費用を見込んだリース費用を設定可能となる。ユーザのニーズに合わせて適切な期間、費用体系でのリース条件をユーザに提案することが可能となる。
【0034】
図5は、ユーザAの運行計画に基づく1運行当たりの走行可能距離を示す図である。図5の横軸に利用期間を示し、縦軸に1運行当たりの走行可能距離を示す。1運行当たりの走行可能距離と利用期間(バッテリの利用可能期間)との関係を実線で示す。
【0035】
ユーザAの運行計画には、「1日1運行」、「普通充電」、「1運行当たりのユーザ走行距離50km」が含まれる。図5に、1運行当たりのユーザ走行距離を点線で示す。また、1運行当たりのユーザ走行距離に所定のマージンを上乗せした閾値を破線で示す。なお、マージンは、運行上の安全余裕度の観点から設定される。そして、図5における実線と閾値とが交わる交点で示される利用期間をリース期間とすることが可能となる。
【0036】
次に、図6は、ユーザBの運行計画に基づく1運行当たりの走行可能距離を示す図である。図6の横軸に利用期間を示し、縦軸に1運行当たりの走行可能距離を示す。1運行当たりの走行可能距離と利用期間(バッテリの利用可能期間)との関係を実線で示す。
【0037】
ユーザBの運行計画には、「1日3運行」、「急速充電」、「1運行当たりのユーザ走行距離70km」が含まれる。図6に、1運行当たりのユーザ走行距離を点線で示す。また、1運行当たりのユーザ走行距離に所定のマージンを上乗せした閾値を破線で示す。そして、図6における実線と閾値とが交わる交点で示される利用期間をリース期間とすることが可能となる。
【0038】
図5および図6からわかるように、ユーザAの運行計画の方がユーザBの運行計画よりもバッテリの劣化度が抑えられるため、その分、長いリース期間を設定することが可能となる。
【0039】
次に、本実施の形態における特定期間を算出する処理の一例について図7を参照して説明する。図7は、本実施の形態における特定期間を算出する処理の一例を示すフローチャートである。本フローは、ユーザの運用計画を含むユーザ情報の入力により開始される。記憶部にはバッテリの劣化情報が記憶されている。なお、本フローに示す処理は、期間設定システム1の制御部3の各機能が実行するものであるが、ここではCPUが実行するものとして説明する。また、N年目がリース期間に組み込まれるか否かの判定を、特定期間の算出結果に基づいて行う場合について説明する。バッテリが新品の状態である場合のSOHを100%とする。
【0040】
先ず、ステップS100において、CPUは、N年目の1年間当たりのユーザ走行距離を取得する。
【0041】
次に、ステップS110において、CPUは、N年目の1年間当たりのユーザ走行距離を電費で除算することで、N年目の1年間当たりの充放電量を算出する。
【0042】
次に、ステップS120において、CPUは、N年目の1年間当たりの充放電量をバッテリが新品の状態である場合の最大充電量で除算し、除算値にN年目の初頭のSOHを乗算することで、N年目までの1年間当たりの充電サイクル数を算出する。
【0043】
次に、ステップS130において、CPUは、N年目までの充電サイクル数および経過年数(N年)に基づいて(N+1)年目の初頭のSOHを算出する。
【0044】
次に、ステップS140において、CPUは、N年目の1運行当たりの走行可能距離を算出する。
【0045】
次に、ステップS150において、CPUは、N年目の1運行当たりの走行可能距離およびN年目の1運行当たりのユーザ走行距離に基づいて、特定期間を算出する。具体的には、CPUは、N年目の1運行当たりの走行可能距離がN年目の1運行当たりのユーザ走行距離よりも長い場合、特定期間(リース期間)をN年目までとし、N年目の1運行当たりの走行可能距離がN年目の1運行当たりのユーザ走行距離よりも短く、かつ、(N-1)年目の1運行当たりの走行可能距離が(N-1)年目の1運行当たりのユーザ走行距離よりも長い場合、特定期間(リース期間)を(N-1)年目までとする。
【0046】
上記実施の形態における期間設定システム1は、電動車両(EV)のリース期間を設定する期間設定システムであって、電動車両に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得する取得部30と、ユーザ情報と電動車両に搭載される車両走行用のバッテリの劣化度との関係を示す劣化情報を記憶する記憶部2と、ユーザ情報および劣化情報に基づいて、リース期間を設定するために特定される特定期間を算出する算出部31と、特定期間を出力する出力部32と、を備える。
【0047】
上記構成によれば、ユーザ情報および劣化情報に基づいて算出された特定期間が出力され、出力された特定期間に基づいてリース期間が設定されるため、電動車両に対するユーザの運行計画に応じた適切なリース期間を設定することが可能となる。
【0048】
また、上記実施の形態における期間設定システム1では、算出部31は、バッテリが満充電された場合に電動車両を1運行させることが可能な距離である1運行当たりの走行可能距離を算出し、当該算出した前記1運行当たりの走行可能距離に基づいて、特定期間を算出する。これにより、特定期間を的確に算出することが可能となる。
【0049】
また、上記実施の形態における期間設定システム1では、運行計画は、1運行当たりのユーザ走行距離を含み、算出部31は、1運行当たりの走行可能距離と1運行当たりのユーザ走行距離とを比較した比較結果に基づいて、特定期間を算出する。これにより、N年目の1運行当たりの走行可能距離がN年目の1運行当たりのユーザ走行距離よりも長い場合にN年目までが特定期間となるため、特定期間に基づいて、適切なリース期間をユーザに簡明に提供することが可能となる。
【0050】
なお、上記実施の形態における期間設定システム1では、バッテリの劣化度は電動車両が備える設備(架装物、電装系)に関する前記バッテリの劣化度を含んでもよい。以下の説明で、架装物、電装系などの稼働によってバッテリを劣化させる対象物を「設備」と総称する場合がある。設備の稼働でバッテリが劣化する。これにより、バッテリ残量があっても、ほぼ走行不可となる場合がある。
【0051】
バッテリの劣化度が設備に関するバッテリの劣化度を含む場合について図8を参照して説明する。図8は、設備の電力消費が小さい場合の走行可能距離と設備の電力消費が大きい場合の走行可能距離とを対比して示す図である。図8の横軸にSOH(%)を示し、縦軸に走行可能距離(km)を示す。図8に、設備の電力消費が小さい場合の走行可能距離とSOHとの関係を実線で示し、設備の電力消費が大きい場合の走行可能距離とSOHとの関係を破線で示す。ここで、走行可能距離は、バッテリを満充電した場合の走行可能距離である。
【0052】
図8に示すように、同一のSOHにおいて、設備の電力消費が大きい場合の走行可能距離は、設備の電力消費が小さい場合の走行可能距離よりも短い。換言すれば、同一の走行可能距離において、設備の電力消費が大きい場合に必要となるSOHは、設備の電力消費が小さい場合に必要となるSOHよりも大きくなる。1日当たりのユーザ走行距離Dthと設備の電力消費が小さい場合の走行可能距離とが交わる交点が示すSOHの閾値Thは、1日当たりのユーザ走行距離Dthと設備の電力消費が大きい場合の走行可能距離とが交わる交点が示すSOHの閾値Th2よりも小さい。
【0053】
例えば、設備が空調機能を持たない荷室のみである場合、エアコンの利用率が低いため、設備の電力消費が小さい。一方、設備が冷蔵機能を有する架装物などである場合、電力消費が大きい。SOHと走行可能距離との関係性は、リース車両の設備の種類(例えば、冷蔵庫、ごみ収集車)によって異なる。設備の種類により、稼働中に消費する電力が異なるため、設備の稼働電力を引いた電力が車両の走行可能距離となる。本実施の形態では、ユーザ情報は、設備の種類や、走行環境(平均温度、寒暖差)を示す情報を含み、期間設定システム1は、ユーザ情報に基づいて、SOHに対する走行可能距離の特性データを切り替えるようにしてもよい。
【0054】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示は、電動車両に対するユーザの運行計画に応じた適切なリース期間を設定することが要求される期間設定システムを備えた情報機器に好適に利用される。
【符号の説明】
【0056】
1 期間設定システム
2 記憶部
3 制御部
30 取得部
31 算出部
32 出力部
4 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両のリース期間を設定する期間設定システムであって、
前記電動車両に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得する取得部と、
前記ユーザ情報と前記電動車両に搭載される車両走行用のバッテリの劣化度との関係を示す劣化情報を記憶する記憶部と、
前記ユーザ情報および前記劣化情報に基づいて、前記リース期間を設定するために特定される特定期間を算出する算出部と、
前記特定期間を出力する出力部と、
を備える、
期間設定システム。
【請求項2】
前記バッテリの劣化度は、前記バッテリの充放電量に対する前記バッテリの劣化度を含む、
請求項1に記載の期間設定システム。
【請求項3】
前記バッテリの劣化度は、前記電動車両の電費に関する前記バッテリの劣化度を含む、
請求項1に記載の期間設定システム。
【請求項4】
前記バッテリの劣化度は、時間に応じた前記バッテリの劣化度を含む、
請求項1に記載の期間設定システム。
【請求項5】
前記バッテリの劣化度は、前記バッテリの充電モードに関する前記バッテリの劣化度を含む、
請求項1に記載の期間設定システム。
【請求項6】
前記バッテリの劣化度は、前記電動車両が備える設備に関する前記バッテリの劣化度を含む、
請求項1に記載の期間設定システム。
【請求項7】
前記算出部は、前記バッテリが満充電された場合に前記電動車両を1運行させることが可能な距離である1運行当たりの走行可能距離を算出し、当該算出した前記1運行当たりの走行可能距離に基づいて、前記特定期間を算出する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の期間設定システム。
【請求項8】
前記運行計画は、1運行当たりのユーザ走行距離を含み、
前記算出部は、前記1運行当たりの走行可能距離と前記1運行当たりのユーザ走行距離とを比較した比較結果に基づいて、前記特定期間を算出する、
請求項7に記載の期間設定システム。
【請求項9】
電動車両のリース期間を設定する期間設定方法であって、
前記電動車両に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得する工程と、
前記ユーザ情報と前記電動車両に搭載される車両走行用のバッテリの劣化度との関係を示す劣化情報と、前記ユーザ情報とに基づいて、前記リース期間を設定するために特定される特定期間を取得する工程と、
前記特定期間を出力する工程と、
を備える、
期間設定方法。
【請求項10】
電動車両のリース期間を設定する期間設定プログラムであって、
前記電動車両に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得するステップと、
前記ユーザ情報と前記電動車両に搭載される車両走行用のバッテリの劣化度との関係を示す劣化情報、および、前記ユーザ情報に基づいて、前記リース期間を設定するために特定される特定期間を取得するステップと、
前記特定期間を出力するステップと、
をコンピュータに実行させるための
期間設定プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本開示における期間設定プログラムは、
電動車両のリース期間を設定する期間設定プログラムであって、
前記電動車両に対するユーザの運行計画を含むユーザ情報を取得するステップと、
前記ユーザ情報と前記電動車両に搭載される車両走行用のバッテリの劣化度との関係を示す劣化情報、および、前記ユーザ情報に基づいて、前記リース期間を設定するために特定される特定期間を取得するステップと、
前記特定期間を出力するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラムである