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特開2024-7793監視プログラム、監視装置及び監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007793
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】監視プログラム、監視装置及び監視方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240112BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109120
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 喜之
【テーマコード(参考)】
3C100
5E353
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA38
3C100AA56
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB33
3C100EE07
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC04
5E353CC21
5E353CC22
5E353DD19
5E353EE51
5E353EE54
5E353EE89
5E353GG01
5E353JJ21
5E353JJ44
5E353LL02
5E353LL03
5E353LL07
5E353QQ01
(57)【要約】
【課題】不要な警戒情報の報知を抑制しつつ、稼働状況の低下を警戒すべき場合にオペレータに警戒情報を報知できること。
【解決手段】基板Pに部品Eを実装する部品実装システム1の稼働状況を監視する監視プログラムであって、吸着率(部品実装システムの稼働状況が良好なほど大きくなる数値)が警戒閾値を下回った後、特定の変動をしたか否かを判定する第1の判定処理(S102)と、第1の判定処理で特定の変動をしたと判定した場合に、オペレータに警戒情報を報知する警戒処理(S103)と、を監視装置2に実行させる、監視プログラム。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を実装する部品実装システムの稼働状況を監視する監視プログラムであって、
前記部品実装システムの稼働状況が良好なほど大きくなる数値が警戒閾値を下回った後、又は、前記数値の移動平均が警戒閾値を下回った後、特定の変動をしたか否かを判定する第1の判定処理と、
前記第1の判定処理で前記特定の変動をしたと判定した場合に、オペレータに警戒情報を報知する警戒処理と、
をコンピュータに実行させる、監視プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視プログラムであって、
前記特定の変動は、前記数値が一定時間以上継続して下がり続けていることである、監視プログラム。
【請求項3】
請求項1に記載の監視プログラムであって、
前記特定の変動は、前記数値が一定時間以上継続して前記警戒閾値を下回ることである、監視プログラム。
【請求項4】
請求項1に記載の監視プログラムであって、
前記特定の変動は、前記数値の移動平均が一定時間以上継続して前記警戒閾値を下回ることである、監視プログラム。
【請求項5】
請求項1に記載の監視プログラムであって、
前記特定の変動は、前記数値が一定時間内に所定値以上低下したことである、監視プログラム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の監視プログラムであって、
前記数値が、前記警戒閾値より小さい警報閾値を下回ったか否かを判定する第2の判定処理と、
前記第2の判定処理で前記警報閾値を下回ったと判定した場合に、オペレータに警報情報を報知する警報処理と、
を前記コンピュータに実行させる、監視プログラム。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の監視プログラムであって、
稼働状況の種類によって前記警戒閾値が異なる、監視プログラム。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の監視プログラムであって、
前記特定の変動には複数の種類があり、
当該監視プログラムは、前記警戒処理において、前記特定の変動の種類に応じた形態で前記警戒情報を報知する、監視プログラム。
【請求項9】
基板に部品を実装する部品実装システムの稼働状況を監視する監視プログラムであって、
前記部品実装システムの稼働状況が良好なほど小さくなる数値が警戒閾値を上回った後、又は、前記数値の移動平均が警戒閾値を上回った後、特定の変動をしたか否かを判定する第1の判定処理と、
前記第1の判定処理で前記特定の変動をしたと判定した場合に、オペレータに警戒情報を報知する警戒処理と、
をコンピュータに実行させる、監視プログラム。
【請求項10】
基板に部品を実装する部品実装システムの稼働状況を監視する監視装置であって、
前記部品実装システムの稼働状況が良好なほど大きくなる数値を特定するための情報を取得する取得部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記取得部を介して前記情報を所定の時間間隔で取得する取得処理と、
前記情報によって特定される数値が警戒閾値を下回った後、又は、前記数値の移動平均が警戒閾値を下回った後、特定の変動をしたか否かを判定する第1の判定処理と、
前記第1の判定処理で前記特定の変動をしたと判定した場合に、オペレータに警戒情報を報知する警戒処理と、
を実行する、監視装置。
【請求項11】
基板に部品を実装する部品実装システムの稼働状況を監視する監視方法であって、
前記部品実装システムの稼働状況が良好なほど大きくなる数値が警戒閾値を下回った後、又は、前記数値の移動平均が警戒閾値を下回った後、特定の変動をしたか否かを判定する第1の判定工程と、
前記第1の判定工程で前記特定の変動をしたと判定した場合に、オペレータに警戒情報を報知する警戒工程と、
を含む、監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、基板に部品を実装する部品実装システムの稼働状況を監視する監視プログラム、監視装置及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に部品を実装する部品実装システムの稼働状況を監視することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、特許文献1に記載の実装ライン監視システムは、複数本の部品実装ラインを1台の実装ライン監視装置で監視する。実装ライン監視装置は少なくとも稼働率、吸着率、実装率の推移をリアルタイムに画面上に表示でき、さらに、少なくとも稼働率、吸着率、実装率についての基準値を指定でき、該基準値を下回った部品実装ラインについて、画面上に警告を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-251714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の実装ライン監視装置は、不要な警告を抑制する上で改善の余地があった。
本明細書では、不要な警戒情報の報知を抑制しつつ、稼働状況の低下を警戒すべき場合にオペレータに警戒情報を報知できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基板に部品を実装する部品実装システムの稼働状況を監視する監視プログラムであって、前記部品実装システムの稼働状況が良好なほど大きくなる数値が警戒閾値を下回った後、又は、前記数値の移動平均が警戒閾値を下回った後、特定の変動をしたか否かを判定する第1の判定処理と、前記第1の判定処理で前記特定の変動をしたと判定した場合に、オペレータに警戒情報を報知する警戒処理と、をコンピュータに実行させる、監視プログラム。
【発明の効果】
【0006】
上記の構成によれば、不要な警戒情報の報知を抑制しつつ、稼働状況の低下を警戒すべき場合にオペレータに警戒情報を報知できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る部品実装システムの模式図
図2】表面実装機の上面図
図3】ヘッドユニットの側面図
図4】監視装置のブロック図
図5】吸着率の時間的変化を示すグラフ
図6】警戒処理及び警報処理のフローチャート
図7】実施形態2に係る吸着率の時間的変化を示すグラフ
図8】実施形態3に係る吸着率の時間的変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本実施形態の概要)
(1)実施形態に係る監視プログラムは、基板に部品を実装する部品実装システムの稼働状況を監視する監視プログラムであって、前記部品実装システムの稼働状況が良好なほど大きくなる数値が警戒閾値を下回った後、又は、前記数値の移動平均が警戒閾値を下回った後、特定の変動をしたか否かを判定する第1の判定処理と、
前記第1の判定処理で前記特定の変動をしたと判定した場合に、オペレータに警戒情報を報知する警戒処理と、をコンピュータに実行させる。
【0009】
前述した特許文献1に記載の実装ライン監視装置は、稼働率、吸着率、実装率などの数値が基準値を下回った場合に警告を表示する。これらの数値は稼働状況が良好なほど大きくなる数値であるといえる。
これらの数値は外乱などによって一時的に基準値を下回ることがある。言い換えると、これらの数値は外乱などによって一時的に低下することがある。外乱などによる一時的な低下としては、部品実装システムを構成している機器に補給される補給品切れによる機器の一時的な停止や、補給品を補給する作業が行われている間の機器の一時的な停止などが例示される。
【0010】
外乱などによって数値が一時的に低下した場合にも警告を発すると、警告に対処するためにオペレータが部品実装ラインまで移動したとき、部品実装ラインは既に正常な状態に回復している可能性がある。この場合、オペレータは無駄に部品実装ラインまで移動することになり、オペレータの負担が無駄に高くなる。このため、不要な警告を抑制することが好ましい。
これに対し、外乱などによる一時的な低下ではない場合(言い換えると稼働状況の低下がある程度継続している場合)は、稼働状況の更なる低下を警戒すべきであるため、オペレータに警戒情報を報知することが好ましい。
【0011】
しかしながら、単に数値を閾値と比較するだけでは、数値の低下が一時的な低下であるか否かを判定することが難しい。これについて検討した本願発明者は、外乱などによる一時的な低下ではない場合(すなわち稼働状況の低下を警戒すべき場合)は、稼働状況が良好なほど大きくなる数値が警戒閾値を下回った後、特定の変動をすることを見出した。
上記(1)に記載の監視プログラムによると、稼働状況が良好なほど大きくなる数値が警戒閾値を下回った後又は数値の移動平均が警戒閾値を下回った後、特定の変動をした場合に警戒情報を報知するので、単に数値又はその移動平均が警戒閾値を下回っただけでは警戒情報は報知されない。このため不要な警戒情報の報知を抑制できる。一方、数値又はその移動平均が警戒閾値を下回った後、特定の変動をした場合は警戒情報を報知するので、外乱などによる一時的な低下ではない場合(すなわち稼働状況の低下を警戒すべき場合)にオペレータに警戒情報を報知できる。
【0012】
(2)前記特定の変動は、前記数値が一定時間以上継続して下がり続けていることであってもよい。
【0013】
数値が警戒閾値を下回った後、一定時間以上継続して下がり続けている場合は、稼働状況の更なる低下を警戒すべきである。
上記(2)に記載の監視プログラムによると、特定の変動は、数値が一定時間以上継続して下がり続けていることであるので、稼働状況の低下を警戒すべき場合にオペレータに警戒情報を報知できる。
【0014】
(3)前記特定の変動は、前記数値が一定時間以上継続して前記警戒閾値を下回ることであってもよい。
【0015】
本願発明者は、外乱などによる一時的な低下ではない場合(すなわち稼働状況の低下を警戒すべき場合)には、稼働状況が良好なほど大きくなる数値が一定時間以上継続して警戒閾値を下回ることを見出した。
上記(3)に記載の監視プログラムによると、特定の変動は、数値が一定時間以上継続して警戒閾値を下回ることであるので、稼働状況の低下を警戒すべき場合にオペレータに警戒情報を報知できる。
【0016】
(4)前記特定の変動は、前記数値の移動平均が一定時間以上継続して前記警戒閾値を下回ることであってもよい。
【0017】
数値が警戒閾値を下回った後、一定時間が経過するまでの間に何らかの理由で一時的に警戒閾値以上になることも考えられる。この場合、一定時間が経過するまでの間のほとんどの時間は数値が警戒閾値を下回っていても、一定時間以上継続していないことにより、警戒情報が報知されない。
上記(4)に記載の監視プログラムによると、数値の移動平均を用いるので、一定時間内に一時的に数値が警戒閾値以上になってもその影響が軽減される。このため、警戒情報を報知すべきであるのに報知されないことを抑制できる。
【0018】
(5)前記特定の変動は、前記数値が一定時間内に所定値以上低下したことであってもよい。
【0019】
本願発明者は、数値が警戒閾値を下回った後、一定時間内に所定値以上低下した場合(言い換えると数値が一定時間内に急激に低下した場合)は、外乱などによる一時的な低下ではない可能性が高いことを見出した。
上記(5)に記載の監視プログラムによると、特定の変動は、数値が一定時間内に所定値以上低下したことであるので、稼働状況の低下を警戒すべき場合にオペレータに警戒情報を報知できる。
【0020】
(6)前記数値が、前記警戒閾値より小さい警報閾値を下回ったか否かを判定する第2の判定処理と、前記第2の判定処理で前記警報閾値を下回ったと判定した場合に、オペレータに警報情報を報知する警報処理と、を前記コンピュータに実行させてもよい。
【0021】
数値の低下が一時的なものであっても、その低下がある程度大きい場合は、オペレータが早期に対処すべき何らかの問題が生じている可能性がある。
上記(6)に記載の監視プログラムによると、数値の低下が一時的なものであっても、その低下が大きい場合(すなわち警戒閾値より小さい警報閾値を下回った場合)は直ちにオペレータに警報情報を報知するので、オペレータは稼働状況の低下に対する何らかの対処を早期に行うことができる。
【0022】
(7)稼働状況の種類によって前記警戒閾値が異なってもよい。
【0023】
適切な警戒閾値は稼働状況の種類によって異なることがある。
上記(7)に記載の監視プログラムによると、稼働状況の種類に応じて適切に警戒閾値を設定できる。
【0024】
(8)前記特定の変動には複数の種類があり、当該監視プログラムは、前記警戒処理において、前記特定の変動の種類に応じた形態で前記警戒情報を報知してもよい。
【0025】
上記(8)に記載の監視プログラムによると、特定の変動の種類に応じた形態で警戒閾値を報知するので、オペレータは報知の形態から変動の種類を把握し易い。
【0026】
(9)実施形態に係る監視プログラムは、基板に部品を実装する部品実装システムの稼働状況を監視する監視プログラムであって、前記部品実装システムの稼働状況が良好なほど小さくなる数値が警戒閾値を上回った後、又は、前記数値の移動平均が警戒閾値を上回った後、特定の変動をしたか否かを判定する第1の判定処理と、前記第1の判定処理で前記特定の変動をしたと判定した場合に、オペレータに警戒情報を報知する警戒処理と、をコンピュータに実行させる。
【0027】
上記(9)に記載の監視プログラムによると、不要な警戒情報の報知を抑制しつつ、稼働状況の低下を警戒すべき場合にオペレータに警戒情報を報知できる。
【0028】
(10)実施形態に係る監視装置は、基板に部品を実装する部品実装システムの稼働状況を監視する監視装置であって、前記部品実装システムの稼働状況が良好なほど大きくなる数値を特定するための情報を取得する取得部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記取得部を介して前記情報を所定の時間間隔で取得する取得処理と、前記情報によって特定される数値が警戒閾値を下回った後、又は、前記数値の移動平均が警戒閾値を下回った後、特定の変動をしたか否かを判定する第1の判定処理と、前記第1の判定処理で前記特定の変動をしたと判定した場合に、オペレータに警戒情報を報知する警戒処理と、を実行する。
【0029】
上記(10)に記載の監視装置によると、不要な警戒情報の報知を抑制しつつ、稼働状況の低下を警戒すべき場合にオペレータに警戒情報を報知できる。
【0030】
(11)実施形態に係る監視方法は、基板に部品を実装する部品実装システムの稼働状況を監視する監視方法であって、前記部品実装システムの稼働状況が良好なほど大きくなる数値が警戒閾値を下回った後、又は、前記数値の移動平均が警戒閾値を下回った後、特定の変動をしたか否かを判定する第1の判定工程と、前記第1の判定工程で前記特定の変動をしたと判定した場合に、オペレータに警戒情報を報知する警戒工程と、を含む。
【0031】
上記(11)に記載の監視方法によると、不要な警戒情報の報知を抑制しつつ、稼働状況の低下を警戒すべき場合にオペレータに警戒情報を報知できる。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲内において実施形態を変更したものを含む。
本開示の実施形態は、装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0033】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図6に基づいて説明する。以降の説明では同一の構成要素には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0034】
(1)部品実装システム
図1を参照して、実施形態1に係る部品実装システム1について説明する。部品実装システム1は回路パターンが印刷されたプリント基板(以下、単に基板という)に電子部品などの部品を実装するシステムである。
【0035】
部品実装システム1は1以上の実装ラインL(L1~L3)、監視装置2(コンピュータの一例)、1以上のオペレータ端末3などで構成されている。実装ラインL、監視装置2及びオペレータ端末3は通信ネットワーク4を介して通信可能に接続されている。オペレータ端末3は通信ネットワーク4に無線接続されている。
オペレータ5(5A,5B)は部品実装システム1で発生する作業を行う作業者である。オペレータ5はオペレータ端末3を携帯している。
【0036】
監視装置2は部品実装システム1の稼働状況を監視する装置である。稼働状況は部品実装システム1がどの程度正常に動作しているかを示す情報である。監視装置2は部品実装システム1の稼働状況が良好なほど大きくなる数値を監視し、当該数値が後述する警戒情報の報知条件を満たした場合はオペレータ端末3を介してオペレータ5に警戒情報を通知(報知の一例)する。監視装置2は、当該数値が後述する警報情報の報知条件を満たした場合はオペレータ端末3を介してオペレータ5に警報情報を通知(報知の一例)する。
【0037】
(1-1)実装ライン
各実装ラインLはそれぞれ1以上の表面実装機6を備えている。実装ラインLは表面実装機6以外にも基板に対する作業を行うその他の装置(ローダー、スクリーン印刷機、印刷検査機、ディスペンサ、実装後外観検査機、リフロー装置、硬化後外観検査機、アンローダーなど)を備えているが、図1ではその他の装置については省略している。
【0038】
図2を参照して、表面実装機6について説明する。表面実装機6は架台30、搬送コンベア31、4つの部品供給装置32、ヘッドユニット33、ヘッド移動部34、制御部及び操作部を備えている。
架台30は平面視長方形状をなすとともに上面が平坦とされている。二点破線で示す領域Aは基板Pに部品Eを実装するときに基板Pが固定される作業位置(以下、作業位置Aという)である。作業位置Aの下方には作業位置Aに搬送された基板Pを固定する図示しないバックアップ装置が配されている。
【0039】
搬送コンベア31は基板Pを搬送する装置である。搬送コンベア31はX方向に循環移動する一対の搬送ベルト(前側搬送ベルト31A及び後側搬送ベルト31B)、搬送ベルトが掛け回されている複数のローラ、搬送ベルトを駆動するベルト駆動モータなどを備えている。搬送コンベア31は上流側から搬入された基板Pを作業位置Aに搬送し、作業位置Aで部品Eが実装された基板Pを下流側に搬出する。
【0040】
部品供給装置32は表面実装機6のY方向の両側においてX方向に並んで2箇所ずつ、計4箇所に配されている。部品供給装置32には複数のテープフィーダ37がX方向に横並び状に整列して取り付けられている。各テープフィーダ37は部品Eを保持している部品テープが巻回されたリール、及び、リールから部品テープを引き出す電動式の送出装置等を備えており、部品Eを1つずつ供給する。
【0041】
ヘッドユニット33は部品Eを吸着及び解放する複数の実装ヘッド38を備えている。ヘッドユニット33についての説明は後述する。
ヘッド移動部34はヘッドユニット33を所定の可動範囲内でX方向及びY方向に移動させる機構である。ヘッド移動部34はヘッドユニット33をX方向に往復移動可能に支持しているビーム39、ビーム39をY方向に往復移動可能に支持している一対のY軸ガイドレール40、ヘッドユニット33をX方向に往復移動させるX軸サーボモータ58、ビーム39をY方向に往復移動させるY軸サーボモータ59などを備えている。
【0042】
図3を参照して、ヘッドユニット33について説明する。ヘッドユニット33は所謂インライン型であり、複数の実装ヘッド38がX方向に並んで設けられている。ヘッドユニット33にはこれらの実装ヘッド38を個別に昇降させるZ軸サーボモータ、及び、これらの実装ヘッド38を一斉に軸周りに回転させるR軸サーボモータが設けられている。
【0043】
各実装ヘッド38はノズルシャフト38Aと、ノズルシャフト38Aの下端部に着脱可能に取り付けられている吸着ノズル38Bとを有している。ノズルシャフト38A内には図示しないフィルタが配されている。吸着ノズル38Bにはノズルシャフト38Aを介して図示しない空気供給装置から負圧及び正圧が供給される。吸着ノズル38Bは負圧が供給されることによって部品Eを吸着し、正圧が供給されることによってその部品Eを解放する。
ここではインライン型のヘッドユニット33を例に説明したが、ヘッドユニット33は例えば複数の実装ヘッド38が円周上に配列された所謂ロータリーヘッドであってもよい。
【0044】
(1-2)監視装置
図4を参照して、監視装置2について説明する。監視装置2は所謂パーソナルコンピュータであり、制御部70、記憶部71、通信部72(取得部の一例)、表示部73及び操作部74を備えている。
制御部70はCPU70A及びRAM70Bを備えている。制御部70は記憶部71に記憶されているプログラムを実行することによって監視装置2の各部を制御する。記憶部71はハードディスクなどの書き換え可能な不揮発性の記憶媒体を有する記憶装置である。記憶部71には制御部70によって実行される各種のプログラムやデータが記憶されている。各種のプログラムには部品実装システム1の稼働状況を監視する監視プログラムも含まれる。
【0045】
通信部72は監視装置2を通信ネットワーク4に接続するための通信回路である。表示部73は液晶ディスプレイなどの表示装置、表示装置を駆動する駆動回路などで構成されている。操作部74はキーボード、マウス、タッチパネルなどである。
【0046】
(1-3)オペレータ端末
図1を参照して、オペレータ端末3について説明する。オペレータ端末3は情報を表示する表示部を備えるコンピュータであり、具体的にはタブレットコンピュータやスマートフォンなどである。オペレータ端末3は携帯型のPC(パーソナルコンピュータ)であってもよいし、専用に設計された端末であってもよい。
オペレータ端末3は、監視端末2から警戒情報や警報情報を受信すると、受信したそれらの情報を表示部に表示する。これにより、警戒情報や警報情報がオペレータ端末3を介してオペレータ5に通知される。
【0047】
(2)稼働状況が良好なほど大きくなる数値
実施形態1では、部品実装システム1の稼働状況が良好なほど大きくなる数値として、実装ヘッド38の吸着率を例に説明する。実装ヘッド38の吸着率とは、実装ヘッド38が部品Eの吸着を試みた回数のうち吸着に成功した回数の割合(%)のことをいう。吸着率は部品実装システム1の稼働状況が良好なほど大きくなる。吸着率は1つの実装ヘッド38の吸着率であってもよいし、複数の実装ヘッド38の吸着率の平均値であってもよい。ここでは1つの実装ヘッド38の吸着率を例に説明する。
【0048】
図5に示すグラフの横軸は時間、縦軸は実装ヘッド38の吸着率である。実装ヘッド38はフィルタが目詰まりしたり吸着ノズル38Bが欠けたりすることによって吸着率が緩やかに低下することがある。吸着率が低下する原因はこれらに限られず、外乱などによって一時的に低下することもある。外乱などによる一時的な低下としては、部品テープの部品切れによる表面実装機6の一時的な停止や、部品テープのスプライシング作業が行われている間の表面実装機6の一時的な停止などが例示される。
【0049】
(3)警戒情報及び警報情報の報知
吸着率が緩やかに低下している場合は、吸着率の更なる低下を警戒することが好ましい。警戒情報は、吸着率が緩やかに低下している場合に、吸着率の更なる低下を警戒すべきことをオペレータ5に報知する情報である。
吸着率の低下が一時的なものであっても、その低下が大きい場合は、オペレータ5が早期に対処すべき何らかの問題が生じている可能性がある。警報情報は、吸着率が一時的に大きく低下した場合に、吸着率の低下に対する何らかの対処を早期に行うようオペレータ5に報知する情報である。
【0050】
図5に示すように、監視装置2には吸着率を監視するための閾値として警戒閾値と警報閾値とが設定されている。警戒閾値は吸着率の緩やかな低下(言い換えると吸着率の一時的ではない低下)を検出するための閾値である。警報閾値は吸着率の一時的で大きな低下を検出するための閾値である。図5に示すように、警報閾値は警戒閾値より小さい。
【0051】
制御部70は1時間間隔(所定の時間間隔の一例)で表面実装機6から吸着率を取得し、吸着率が以下の警戒情報の報知条件を満たしたか否か、及び、以下の警報情報の報知条件を満たしたか否かを判定する。制御部70は、吸着率が警戒情報の報知条件を満たした場合はオペレータ5に警戒情報を報知する。制御部70は、吸着率が警報情報の報知条件を満たした場合はオペレータ5に警報情報を報知する。以下に示す警戒情報の報知条件及び警報情報の報知条件は一例であり、これらの報知条件はオペレータ5が任意に設定できる。
【0052】
警戒情報の報知条件:警戒閾値=80%、判定期間=2時間
警報情報の報知条件:警報閾値=70%、判定期間=0時間
【0053】
判定期間は、吸着率が閾値(警戒閾値あるいは警報閾値)を下回った期間が判定期間以上であった場合に警戒情報又は警報情報を報知することを意味している。判定期間は一定時間の一例である。上述した警戒情報の報知条件では判定期間が2時間であるので、吸着率が警戒閾値を下回っても直ぐには警戒情報が報知されず、吸着率が2時間継続して警戒閾値を下回った場合に警戒情報が報知される。上述した警報情報の報知条件では判定期間が0時間であるので、吸着率が警報閾値を下回ると直ちに警報情報が報知される。
【0054】
図5に示す例では時点P1で吸着率が警戒閾値を下回っており、時点P1から2時間(判定期間)経過した時点P2まで継続して吸着率が警戒閾値を下回っている。このため時点P2で警戒情報が報知される。時点P2では吸着率が警報閾値を下回っていないので、警報情報は報知されない。
ここで、図5に示す例では時点P1より前に吸着率が警戒閾値を下回っているが、実施形態1では1時間間隔で吸着率を取得するので、時点P1で吸着率が警戒閾値を下回ったと判定される。
図5に示す例では時点P3において吸着率が警報閾値を下回っている。このため時点P3で直ちに警報情報が報知される。時点P3では吸着率は2時間以上継続して警戒閾値を下回っていないので、警戒情報は報知されない。
【0055】
(4)警戒処理及び警報処理
図6を参照して、監視プログラムを実行する制御部70によって実行される警戒処理及び警報処理のフローチャートについて説明する。警戒処理及び警報処理は所定の時間間隔(ここでは1時間間隔)で繰り返し実行される。理解を容易にするため、ここでは1つの実装ヘッド38の吸着率を例に説明する。
【0056】
S101では、制御部70は表面実装機6から実装ヘッド38の吸着率を取得する(取得処理の一例)。吸着率は、部品実装システム1の稼働状況が良好なほど大きくなる数値を特定するための情報の一例である。すなわち、制御部70は、部品実装システム1の稼働状況が良好なほど大きくなる数値を特定するための情報として、部品実装システム1の稼働状況が良好なほど大きくなる数値そのものを取得する。
【0057】
S102では、制御部70は警戒情報の報知条件が成立しているか否かを判定する(第1の判定処理の一例)。具体的には、制御部70は、現時点から判定期間によって示される時間遡った時点から現時点まで吸着率が継続して警戒閾値を下回っている場合は成立していると判定し、一時的にでも吸着率が警戒閾値以上であった場合は成立していないと判定する。制御部70は、成立している場合はS103に進み、成立していない場合はS104に進む。
【0058】
S103では、制御部70はオペレータ5に警戒情報を報知する(警戒処理の一例)。具体的には、制御部70は表示部73に警戒情報を表示すると共に、オペレータ端末3に警戒情報を送信することにより、オペレータ端末3を介してオペレータ5に警戒情報を通知する。警戒情報の報知はこれらのうちどちらか一方だけであってもよい。
【0059】
S104では、制御部70は警報情報の報知条件が成立しているか否かを判定する(第2の判定処理の一例)。具体的には、制御部70はS101で取得した吸着率が警報閾値を下回っている場合は成立していると判定し、下回っていない場合は成立していないと判定する。制御部70は、成立している場合はS105に進み、成立していない場合は処理を終了する。
S105では、制御部70はオペレータ5に警報情報を報知する(警報処理の一例)。具体的には、制御部70は表示部73に警報情報を表示すると共に、オペレータ端末3に警報情報を送信することにより、オペレータ端末3を介してオペレータ5に警報情報を通知する。警報情報の報知はこれらのうちどちらか一方だけであってもよい。
【0060】
(5)実施形態の効果
実施形態1に係る監視プログラムによると、吸着率が警戒閾値を下回った後、特定の変動をした場合に警戒情報を報知するので、単に数値が警戒閾値を下回っただけでは警戒情報は報知されない。このため不要な警戒情報の報知を抑制できる。一方、吸着率が警戒閾値を下回った後、特定の変動をした場合は警戒情報を報知するので、吸着率の低下を警戒すべき場合にオペレータ5に警戒情報を報知できる。
【0061】
監視プログラムによると、特定の変動は、吸着率が警戒閾値を一定時間以上継続して下回ることであるので、吸着率の低下を警戒すべき場合にオペレータ5に警戒情報を報知できる。
【0062】
監視プログラムによると、吸着率の低下が一時的なものであっても、その低下が大きい場合(すなわち警戒閾値より小さい警報閾値を下回った場合)は直ちにオペレータ5に警報情報を報知するので、オペレータ5は吸着率の低下に対する何らかの対処を早期に行うことができる。
【0063】
<実施形態2>
実施形態2を図7によって説明する。
実施形態2に係る制御部70は、吸着率の移動平均が警戒閾値を下回った後、一定時間以上継続して警戒閾値を下回った場合に警戒情報を報知する。
実施形態2に係る警戒情報の報知条件及び警報情報の報知条件を以下に示す。実施形態2に係る警戒情報の報知条件は、実施形態1に係る警戒情報の報知条件に移動平均期間が追加されている。実施形態2に係る警報情報の報知条件は実施形態1と同じである。
【0064】
警戒情報の報知条件:警戒閾値=80%、判定期間=3時間、移動平均期間=3時間
警報情報の報知条件:警報閾値=70%、判定期間=0時間
【0065】
図7を参照して、移動平均期間について説明する。図7において実線50は吸着率、一点鎖線51は移動平均を示している。移動平均期間は吸着率の平均値を算出する期間の長さを示している。例えば移動平均期間が3時間である場合、図7に示す時点P4における移動平均は、時点P4を基準に過去の3時間に取得された吸着率の平均値である。時点P5における移動平均は、時点P5を基準に過去の3時間に取得された吸着率の平均値である。
【0066】
図7に示す例では時点P6において移動平均が警戒閾値を下回っており、時点P6から3時間(判定期間)経過した時点P8まで移動平均が継続して警戒閾値を下回っている。図7に示す例では時点P7で吸着率が一時的に警戒閾値を上回っているが、移動平均は時点P8まで継続して警戒閾値を下回っているので、時点P8で警戒情報が報知される。
【0067】
警報情報については実施形態1と同様に吸着率そのものが用いられる。図7に示す例では時点P9で吸着率が警報閾値を下回っているため、時点P9で直ちに警報情報が報知される。
【0068】
実施形態2に係る監視プログラムによると、吸着率の移動平均を用いるので、吸着率が一時的に警戒閾値以上になってもその影響が軽減される。このため、警戒情報を報知すべきであるのに報知されないことを抑制できる。
【0069】
<実施形態3>
実施形態3を図8によって説明する。
実施形態3に係る制御部70は、吸着率が警戒閾値を下回った後、一定時間内に所定値以上低下した場合(言い換えると吸着率が一定時間内に急激に低下した場合)に警戒情報を報知する。
実施形態3に係る警戒情報の報知条件及び警報情報の報知条件を以下に示す。実施形態3に係る警戒情報の報知条件は、実施形態1に係る警戒情報の報知条件に変化値(所定値の一例)が追加されている。実施形態3に係る警報情報の報知条件は実施形態1と同じである。
【0070】
警戒情報の報知条件:警戒閾値=80%、判定期間=1時間、変化値=10%以上
警報情報の報知条件:警報閾値=70%、判定期間=0時間
【0071】
図8を参照して、変化値について説明する。理解を容易にするため、図8では警報閾値は省略している。変化値は以下の式1によって求められる。
変化値=判定期間の開始時点の吸着率-判定期間の終了時点の吸着率 ・・・ 式1
【0072】
図8に示す例では、時点P10で吸着率が警戒閾値を下回っており、時点P10から1時間(判定期間)が経過した時点P11まで吸着率が継続して警戒閾値を下回っている。そして、時点P10における吸着率(判定期間の開始時点の吸着率)から時点P11における吸着率(判定期間の終了時点の吸着率)を減じた変化値が10%以上である。すなわち、吸着率が警戒閾値を下回った後、一定時間内に所定値以上低下している。このため時点P11で警戒情報が報知される。
【0073】
図8に示す例では、時点P12で吸着率が警戒閾値を下回っており、時点P12から1時間(判定期間)が経過した時点P13まで吸着率が継続して警戒閾値を下回っている。そして、時点P12における吸着率(判定期間の開始時点の吸着率)から時点P13における吸着率(判定期間の終了時点の吸着率)を減じた変化値が10%以上である。このため時点P13でも警戒情報が報知される。
【0074】
実施形態3に係る監視プログラムによると、特定の変動は、吸着率が警戒閾値を下回った後、一定時間内に所定値以上低下したことであるので、吸着率の低下を警戒すべき場合にオペレータ5に警戒情報を報知できる。
【0075】
<実施形態4>
実施形態4では警戒情報の報知条件として複数の報知条件が設定されている。言い換えると、実施形態4では特定の変動に複数の種類がある。実施形態4に係る制御部70は、特定の変動の種類に応じた形態で警戒情報を報知する。
以下に複数の報知条件の例(特定の変動の種類の例)を示す。ここでは3つの報知条件を例示する。以下に示す報知条件Aは実施形態1、報知条件Bは実施形態2、報知条件Cは実施形態3で説明した警戒情報の報知条件である。
【0076】
警戒情報の報知条件A:警戒閾値=80%、判定期間=2時間
警戒情報の報知条件B:警戒閾値=80%、判定期間=3時間、移動平均期間=3時間
警戒情報の報知条件C:警戒閾値=80%、判定期間=1時間、変化値=10%以上
【0077】
実施形態4に係る制御部70は、報知条件に応じた形態で警戒情報を報知する。具体的には、実施形態4では報知条件毎に緊急度が設定されている。緊急度はオペレータが任意に設定できる。ここでは以下のように緊急度が設定されているとする。
警戒情報の報知条件C:緊急度=高
警戒情報の報知条件B:緊急度=中
警戒情報の報知条件A:緊急度=低
【0078】
制御部70は、緊急度に応じた形態(言い換えると特定の変動の種類に応じた形態)として以下の形態(表示形態、通知形態)で警戒情報を報知する。
緊急度=高:表示部73に警戒情報を表示、オペレータ端末3を介してオペレータ5に警戒情報を通知
緊急度=中:表示部73に注意情報を表示、オペレータ端末3を介してオペレータ5に注意情報を通知
緊急度=低:表示部73に注意情報を表示のみ
【0079】
実施形態4に係る監視プログラムによると、特定の変動の種類に応じた形態で警戒情報を報知するので、オペレータ5は報知の形態から緊急度を把握し易い。
【0080】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0081】
(1)上記実施形態1では稼働状況として1つの実装ヘッド38の稼働状況(吸着率)を例示したが、稼働状況はこれに限定されない。例えば、稼働状況は部品実装システム1全体の稼働状況であってもよいし、実装ラインLの稼働状況であってもよいし、実装ラインLを構成している機器(スクリーン印刷機、印刷検査機、ディスペンサ、表面実装機6、実装後外観検査機、リフロー装置、硬化後外観検査機など)の稼働状況であってもよいし、機器を構成している一部の構成要素(例えば実装ヘッド38)の稼働状況であってもよい。
【0082】
(2)上記実施形態では部品実装システム1の稼働状況が良好なほど大きくなる数値として吸着率を例示したが、稼働状況が良好なほど大きくなる数値はこれに限られない。例えば、当該数値は稼働率であってもよい。稼働率は、一定時間内に部品実装システム1(あるいは実装ラインL、機器、一部の構成要素)が稼働していた時間を当該一定時間で除算した割合である。何らかのエラーで部品実装システム1が停止した場合、停止している時間が長いほど稼働率が低下する。このため、稼働率は部品実装システム1の稼働状況が良好なほど大きくなる数値である。
稼働率の定義はこれに限られず、適宜に決定できる。例えば、稼働率は単位時間あたりに生産した基板Pの枚数であってもよい。本来は1時間に基板Pを100枚生産できる場合に、実際に生産した枚数が80枚である場合、稼働率は80%になる。
【0083】
稼働状況は障害メトリクスであってもよい。障害メトリクスは、具体的には平均修復時間(MTTR:Mean Time To Repair)、平均障害間隔または平均故障間隔(MTBF:Mean Time Between Failures)、平均障害時間または平均故障時間(MTTF:Mean Time To Failure)、平均検出時間(MTTD:Mean Time To Detect)、平均調査時間(MTTI:Mean Time To Investigate)、平均サービス回復時間(MTRS:Mean Time to Restore Service)、平均システムインシデント間隔(MTBSI:Mean Time Between System Incidents)などである。
【0084】
表面実装機6の場合は、稼働状況が良好なほど大きくなる数値は実装率であってもよい。実装率は、実装を試みた部品Eの数に対する実装に成功した部品Eの数の割合のことをいう。例えば、部品Eの吸着に失敗した場合だけでなく、部品Eを吸着できても途中で落下した場合や、基板P上の搭載位置に搭載されずに持ち帰ってしまった場合も実装に失敗するので、吸着率と実装率とは必ずしも一致しない。実装率は実装ヘッド38毎の実装率であってもよいし、各実装ヘッド38の実装率の平均値であってもよい。
稼働状況はこれらに限定されず、部品実装システム1の稼働に関する他の状況であってもよい。
【0085】
(3)上記実施形態では吸着率(部品実装システム1の稼働状況が良好なほど大きくなる数値)を特定するための情報として吸着率そのものを取得する場合を例示した。これに対し、吸着率を特定するための情報は、部品Eの吸着を試みた回数と、そのうち吸着に成功した回数とであってもよい。そして、制御部70がそれらの情報から吸着率を算出することによって吸着率を特定してもよい。すなわち、稼働状況が良好なほど大きくなる数値は、その数値を特定できればどのような情報として取得されてもよい。
【0086】
(4)上記実施形態では部品実装システム1の稼働状況が良好なほど大きくなる数値を表面実装機6から取得する場合を例示したが、これらの情報が記憶部71あるいはRAM70Bに記憶されている場合は記憶部71あるいはRAM70Bから読み出すことによって取得してもよい。
【0087】
(5)上記実施形態では稼働状況の種類が1種類だけ(吸着率だけ)である場合を例示した。これに対し、制御部70は複数種類の稼働状況のそれぞれについて、警戒情報の報知条件が成立しているか否か、及び、警報情報の報知条件が成立しているか否かを判定してもよい。例えば、制御部70は吸着率及び実装率のそれぞれについて、警戒情報の報知条件が成立しているか否か、及び、警報情報の報知条件が成立しているか否かを判定してもよい。その場合、稼働状況の種類毎に異なる警戒閾値や警報閾値が設定されてもよい。このようにすると、稼働状況の種類に応じて適切に警戒閾値を設定できる。
【0088】
(6)上記実施形態1では、特定の変動として、吸着率が警戒閾値を下回った後、一定時間以上継続して警戒閾値を下回ることを例示した。これに対し、特定の変動は、吸着率が警戒閾値を下回った後、一定時間以上継続して警戒閾値を下回り、且つ、その間、吸着率が継続して下がり続けていることであってもよい。吸着率が警戒閾値を下回った後、一定時間以上継続して下がり続けている場合は、吸着率の更なる低下を警戒すべきである。このため、吸着率が継続して下がり続けていることも条件に含めると、吸着率の低下を警戒すべき場合にオペレータに警戒情報を報知できる。
実施形態2も同様であり、特定の変動は、吸着率の移動平均が警戒閾値を下回った後、移動平均が一定時間以上継続して警戒閾値を下回り、且つ、その間、移動平均が継続して下がり続けていることであってもよい。
実施形態3も同様であり、特定の変動は、吸着率が警戒閾値を下回った後、一定時間内に所定値以上低下し、且つ、その間、吸着率が継続して下がり続けていることであってもよい。
【0089】
(7)上記実施形態2では、特定の変動として、吸着率の移動平均が警戒閾値を下回った後、一定時間以上継続して警戒閾値を下回っていることを例示した。これに対し、吸着率が警戒閾値を下回った後、移動平均が一定時間以上継続して警戒閾値を下回っていることであってもよい。すなわち、一定時間の起点は吸着率が警戒閾値を下回った時であってもよいし、移動平均が警戒閾値を下回った時であってもよい。
【0090】
(8)上記実施形態3では、特定の変動として、吸着率が警戒閾値を下回った後、一定時間内に所定値以上低下することを例示した。これに対し、特定の変動は、吸着率の移動平均が警戒閾値を下回った後、移動平均が一定時間内に所定値以上低下することであってもよい。
【0091】
(9)上記実施形態1では、部品実装システム1の稼働状況が良好なほど大きくなる数値が警戒閾値を下回った後、特定の変動をした場合に、オペレータ5に警戒情報を報知する場合を例に説明した。これに対し、部品実装システム1の稼働状況が良好なほど小さくなる数値が警戒閾値を上回った後、特定の変動をした場合に、オペレータ5に警戒情報を報知してもよい。
【0092】
例えば、上記実施形態では稼働状況が良好なほど大きくなる数値として吸着率を例示した。そして、吸着率が80%(警戒閾値)を下回った後、特定の変動をした場合に警戒情報を報知する場合を例示した。吸着率が80%を下回ることは、吸着失敗率(=100%-吸着率)が20%を上回ることと同義である。吸着失敗率とは、実装ヘッド38が部品Eの吸着を試みた回数のうち吸着に失敗した回数の割合(%)のことをいう。吸着失敗率は、100%から吸着率を減じることによって求めてもよいし、吸着に失敗した回数を実装ヘッド38が部品Eの吸着を試みた回数で除算することによって求めてもよい。すなわち、吸着失敗率は必ずしも100%から吸着率を減じることで求められなくてもよい。
【0093】
吸着失敗率は稼働状況が良好なほど小さくなる数値である。このため、吸着失敗率が20%を上回った後、特定の変動をした場合に、オペレータ5に警戒情報を報知してもよい。特定の変動は、例えば吸着失敗率が警戒閾値を上回った後、一定時間以上継続して警戒閾値を上回ることであってもよいし、吸着失敗率の移動平均が警戒閾値を上回った後、一定時間以上継続して警戒閾値を上回ることであってもよいし、吸着失敗率が警戒閾値を上回った後、一定時間内に所定値以上上昇したことであってもよい。
稼働状況が良好なほど小さくなる数値は吸着失敗率に限定されず、例えば非稼働率(=100%-稼働率)であってもよいし、実装失敗率(=100%-実装率)であってもよい。
【0094】
(10)上記実施形態4では警戒情報の報知条件毎に緊急度が設定されている場合を例示したが、報知条件毎に優先度が設定されてもよい。優先度はオペレータが任意に設定できる。そして、制御部70は、警戒情報を報知するときにその警戒情報に設定されている優先度も合わせて報知してもよい。これにより、オペレータは優先度が高い警戒情報が報知されたのか優先度が低い警戒情報が報知されたのかを知ることができる。
【0095】
(11)上記実施形態4では警戒情報の報知条件が複数あり、それぞれに緊急度が設定されている場合を例示した、これに対し、警戒情報の報知条件と警報情報の報知条件とにそれぞれ緊急度が設定されてもよい。すなわち、警戒情報と警報情報とで報知の形態が異なってもよい。警戒情報の報知条件と警報情報の報知条件とにそれぞれ優先度が設定されてもよい。
【0096】
(12)上記実施形態では警戒情報を表示部73に表示したりオペレータ端末3に通知したりすることによって報知しているが、警戒情報を報知する方法はこれらに限定されない。例えば、警戒情報は電子メールでオペレータ端末3に送信されてもよいし、音声によって報知されてもよいし、所定の警戒音を発音することによって報知されてもよいし、表面実装機6に設けられている図示しない表示灯を点灯させることによって報知されてもよい。警報情報についても同様である。
【符号の説明】
【0097】
1: 部品実装システム
2: 監視装置(コンピュータの一例)
5: オペレータ
70: 制御部
72: 通信部(取得部の一例)
E: 部品
P: 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8