(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077942
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】駆動デバイス、駆動基板、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190196
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲右
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊顕
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG84
2C057AG92
2C057AG93
2C057AK07
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上させることが可能な駆動デバイス等を提供する。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係る駆動デバイスは、複数のノズルを有する液体噴射ヘッドに適用する駆動信号を生成する駆動デバイスであって、この駆動デバイスの長手方向に沿って配置されており、上記ノズルから液体を噴射させるための上記駆動信号を個別に出力する複数の駆動端子と、所定の定電位と電気的に接続可能に構成された1または複数のダミー端子と、を備えている。上記複数の駆動端子は、上記長手方向に沿って配置された複数の駆動端子群に区別されていると共に、上記ダミー端子が、上記複数の駆動端子群同士の間のうちの少なくとも1つの位置に、配置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有する液体噴射ヘッドに適用する駆動信号を生成する駆動デバイスであって、
前記駆動デバイスの長手方向に沿って配置されており、前記ノズルから液体を噴射させるための前記駆動信号を個別に出力する、複数の駆動端子と、
所定の定電位と電気的に接続可能に構成された、1または複数のダミー端子と
を備え、
前記複数の駆動端子が、前記長手方向に沿って配置された複数の駆動端子群に区別されており、
前記ダミー端子が、前記複数の駆動端子群同士の間のうちの少なくとも1つの位置に、配置されている
駆動デバイス。
【請求項2】
前記駆動信号を生成する回路を含む内部回路と、
前記駆動デバイスにおける基板面への被実装領域内において、前記駆動端子群と近接して配置された定電位端子と
を更に備え、
前記ダミー端子が、前記内部回路と接続されていない
請求項1に記載の駆動デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の駆動デバイスを、1または複数備えており、
前記駆動デバイスが、基板面上に実装されている
駆動基板。
【請求項4】
前記駆動デバイスが定電位端子を有しており、
前記複数の駆動端子に対して個別に電気的接続された、複数の駆動信号配線と、
前記ダミー端子に対して電気的に接続されたダミー端子接続配線と、
前記定電位端子に対して電気的に接続されており、前記定電位が印加されている定電位配線と
を更に備え、
前記ダミー端子接続配線と前記定電位配線とが、互いに電気的に接続されている
請求項3に記載の駆動基板。
【請求項5】
基板面と直交する方向に沿って互いに対向する、第1配線層および第2配線層を更に備え、
前記駆動デバイスおよび前記複数の駆動信号配線がそれぞれ、前記第1配線層に配置されており、
前記定電位配線が、
前記第1配線層に配置された第1定電位配線と、
前記第2配線層に配置されており、第1スルーホールを介して前記第1定電位配線と電気的に接続された第2定電位配線と
を含んでいる
請求項4に記載の駆動基板。
【請求項6】
前記第2配線層に配置されており、前記液体噴射ヘッドにおける共通電極と電気的に接続されたリターン配線を、更に備え、
前記リターン配線が、
前記第2定電位配線と電気的に接続されていると共に、
第2スルーホールを介して、前記ダミー端子接続配線と電気的に接続されている
請求項5に記載の駆動基板。
【請求項7】
前記第2定電位配線が、互いに異なる前記定電位が印加されている、複数種類の配線を含んでおり、
前記複数種類の配線における配線幅が、互いに異なっている
請求項5または請求項6に記載の駆動基板。
【請求項8】
前記複数種類の配線が、前記定電位としてのグランド電位が印加されている、グランド配線を含んでおり、
前記複数種類の配線における配線幅のうち、前記グランド配線の配線幅が最大となっている
請求項7に記載の駆動基板。
【請求項9】
複数の前記駆動デバイスが、前記第1配線層において前記第1定電位配線を介して、互いにカスケード接続されており、
前記第2定電位配線が、前記第2配線層において、複数の前記駆動デバイス同士の間に対応する領域に、配置されている
請求項5に記載の駆動基板。
【請求項10】
前記第2定電位配線上に、回路部品が実装されている
請求項5に記載の駆動基板。
【請求項11】
請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の駆動基板と、
前記駆動基板から出力される前記駆動信号に基づいて前記液体を噴射する、前記複数のノズルを有する噴射部と
を備えた液体噴射ヘッド。
【請求項12】
請求項11に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動デバイス、駆動基板、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドを備えた液体噴射記録装置が様々な分野に利用されており、液体噴射ヘッドとしては、各種方式のものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような液体噴射ヘッドでは一般に、信頼性を向上させることが求められている。信頼性を向上させることが可能な、駆動デバイス、駆動基板、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る駆動デバイスは、複数のノズルを有する液体噴射ヘッドに適用する駆動信号を生成する駆動デバイスであって、この駆動デバイスの長手方向に沿って配置されており、上記ノズルから液体を噴射させるための上記駆動信号を個別に出力する複数の駆動端子と、所定の定電位と電気的に接続可能に構成された1または複数のダミー端子と、を備えたものである。上記複数の駆動端子は、上記長手方向に沿って配置された複数の駆動端子群に区別されていると共に、上記ダミー端子が、上記複数の駆動端子群同士の間のうちの少なくとも1つの位置に、配置されている。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る駆動基板は、上記本開示の一実施の形態に係る駆動デバイスを、1または複数備えていると共に、この駆動デバイスが基板面上に実装されているものである。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドは、上記本開示の一実施の形態に係る駆動基板と、この駆動基板から出力される駆動信号に基づいて液体を噴射する複数のノズルを有する噴射部と、を備えたものである。
【0008】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置は、上記本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施の形態に係る駆動デバイス、駆動基板、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置によれば、信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る液体噴射装置の概略構成例を表すブロック図である。
【
図2】
図1に示した液体噴射ヘッドの概略構成例を模式的に表す斜視図である。
【
図3】
図2に示した液体噴射ヘッドの構成例を模式的に表す断面図である。
【
図4A】
図2,
図3に示したフレキシブル基板の詳細構成例を模式的に表す平面図である。
【
図4B】
図2,
図3に示した他のフレキシブル基板の詳細構成例を模式的に表す平面図である。
【
図5】
図4Bに示したフレキシブル基板内での各配線等の配置構成例を模式的に表す平面図である。
【
図6】実施の形態に係る駆動デバイスの詳細構成例を模式的に表す平面図である。
【
図7】実施の形態に係るフレキシブル基板の詳細構成例を模式的に表す平面図である。
【
図8】
図7に示した構成例を模式的に表す断面図である。
【
図9】変形例1-1に係るフレキシブル基板の詳細構成例を模式的に表す平面図である。
【
図10】変形例1-2に係るフレキシブル基板の詳細構成例を模式的に表す平面図である。
【
図11】変形例2に係るフレキシブル基板の詳細構成例を模式的に表す平面図である。
【
図12】変形例3に係る駆動デバイスの詳細構成例を模式的に表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(2つの駆動素子群、各1種類の電源配線・グランド配線の場合の例)
2.変形例
変形例1-1,1-2(実施の形態において2種類の電源配線とした場合の例)
変形例2(変形例1-2において第2定電位配線上に回路部品を設けた場合の例)
変形例3(実施の形態において3つの駆動素子群とした場合の例)
3.その他の変形例
【0012】
<1.実施の形態>
[プリンタ5の概略構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ5の概略構成例を、ブロック図で表したものである。
図2は、
図1に示した液体噴射ヘッドとしてのインクジェットヘッド1の概略構成例を、模式的に斜視図で表したものである。
図3は、
図2に示したインクジェットヘッド1の構成例を、模式的に断面図(Y-Z断面図)で表したものである。なお、本明細書の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
プリンタ5は、後述するインク9を利用して、被記録媒体(例えば、
図1中に示した記録紙P)に対し、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。このプリンタ5は、
図1に示したように、インクジェットヘッド1、印刷制御部2およびインクタンク3を備えている。
【0014】
なお、インクジェットヘッド1は、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応し、プリンタ5は、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。また、インク9は、本開示における「液体」の一具体例に対応している。
【0015】
(A.印刷制御部2)
印刷制御部2は、インクジェットヘッド1に対して、各種の情報(データ)を供給するものである。具体的には
図1に示したように、印刷制御部2は、インクジェットヘッド1内(後述する駆動デバイス41等)に対してそれぞれ、印刷制御信号Scを供給するようになっている。なお、この印刷制御信号Scには、例えば、画像データ、吐出タイミング信号、および、インクジェットヘッド1を動作させるための電源電圧等が、含まれるようになっている。
【0016】
(B.インクタンク3)
インクタンク3は、インク9を内部に収容するタンクである。このインクタンク3内のインク9は、
図1に示したように、インク供給管30を介して、インクジェットヘッド1内(後述する噴射部11)へと供給されるようになっている。なお、このようなインク供給管30は、例えば、可撓性を有するフレキシブルホースにより構成されている。
【0017】
(C.インクジェットヘッド1)
インクジェットヘッド1は、
図1中の破線の矢印で示したように、後述する複数のノズル孔Hnから記録紙Pに対して液滴状のインク9を噴射(吐出)して、画像や文字等の記録を行うヘッドである。このインクジェットヘッド1は、例えば
図2,
図3に示したように、1つの噴射部11と、1つのI/F(インターフェース)基板12と、4つのフレキシブル基板13a,13b,13c,13dと、2つの冷却ユニット141,142とを、備えている。
【0018】
(C-1.I/F基板12)
I/F基板12は、
図2,
図3に示したように、2つのコネクタ10と、4つのコネクタ120a,120b,120c,120dと、回路配置領域121とを、備えている。
【0019】
コネクタ10は、
図2に示したように、印刷制御部2からインクジェットヘッド1(後述する各フレキシブル基板13a,13b,13c,13d)へ向けて供給される、前述した印刷制御信号Scを入力する部分(コネクタ部分)である。コネクタ120a,120b,120c,120dはそれぞれ、I/F基板12と、フレキシブル基板13a,13b,13c,13dとの間をそれぞれ、電気的に接続する部分(コネクタ部分)である。
【0020】
回路配置領域121は、I/F基板12上において各種の回路が配置されている領域である。なお、I/F基板12上の他の領域にも、このような回路配置領域が設けられているようにしてもよい。
【0021】
(C-2.噴射部11)
噴射部11は、
図1に示したように、複数のノズル孔Hnを有しており、これらのノズル孔Hnからインク9を噴射する部分である。このようなインク9の噴射は、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13d上の後述する駆動デバイス41から供給される駆動信号Sd(駆動電圧Vd)に従って、行われるようになっている(
図1参照)。
【0022】
このような噴射部11は、
図1に示したように、アクチュエータプレート111およびノズルプレート112を含んで構成されている。
【0023】
(ノズルプレート112)
ノズルプレート112は、ポリイミド等のフィルム材または金属材料により構成されたプレートであり、
図1に示したように、上記した複数のノズル孔Hnを有している。これらのノズル孔Hnは、所定の間隔をおいて並んで形成されており、例えば円形状となっている。
【0024】
具体的には、
図2に示した噴射部11の例では、ノズルプレート112内における複数のノズル孔Hnが、列方向(X軸方向)に沿ってそれぞれ配置された、複数のノズル列(4つのノズル列)により構成されている。また、これらの4つのノズル列同士は、列方向と直交する方向(Y軸方向)に沿って、並んで配置されている。
【0025】
なお、このようなノズル孔Hnは、本開示における「ノズル」の一具体例に対応している。
【0026】
(アクチュエータプレート111)
アクチュエータプレート111は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料により構成されたプレートである。このアクチュエータプレート111には、複数のチャネル(圧力室)が設けられている。これらのチャネルは、インク9に対して圧力を印加するための部分であり、所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルは、圧電体からなる駆動壁(不図示)によってそれぞれ画成されており、断面視にて凹状の溝部となっている。
【0027】
このようなチャネルには、インク9を吐出させるための吐出チャネルと、インク9を吐出させないダミーチャネル(非吐出チャネル)とが、存在している。言い換えると、吐出チャネルにはインク9が充填される一方、ダミーチャネルにはインク9が充填されないようになっている。なお、各吐出チャネルに対するインク9の充填は、例えば、そのような各吐出チャネルに共通して連通する流路(共通流路)を介して、行われるようになっている。また、各吐出チャネルは、ノズルプレート112におけるノズル孔Hnと個別に連通している一方、各ダミーチャネルは、ノズル孔Hnには連通しないようになっている。これらの吐出チャネルとダミーチャネルとは、前述した列方向(X軸方向)に沿って、交互に並んで配置されている。
【0028】
また、上記した駆動壁における対向する内側面にはそれぞれ、駆動電極が設けられている。この駆動電極には、吐出チャネルに面する内側面に設けられたコモン電極(共通電極)と、ダミーチャネルに面する内側面に設けられたアクティブ電極(個別電極)とが、存在している。これらの駆動電極と、後述する駆動デバイス41との間は、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dを介して、電気的に接続されている。これにより、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dを介して、駆動デバイス41から各駆動電極に対し、前述した駆動電圧Vd(駆動信号Sd)が印加されるようになっている(
図1参照)。
【0029】
(C-3.フレキシブル基板13a,13b,13c,13d)
フレキシブル基板13a,13b,13c,13dはそれぞれ、
図2,
図3に示したように、I/F基板12と噴射部11との間を電気的に接続する基板である。これらのフレキシブル基板13a,13b,13c,13dはそれぞれ、前述したノズルプレート112における4列のノズル列ごとのインク9の噴射動作を、個別に制御するようになっている。また、例えば
図3中の符号P1a,P1b,P1c,P1dにて示したように、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dが噴射部11と接続する箇所付近(圧着電極433付近)では、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dが、折り曲げられるようになっている。なお、圧着電極433と噴射部11との間は、例えばACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電フィルム)を用いた熱圧着によって、互いに電気的接続がなされるようになっている。
【0030】
このようなフレキシブル基板13a,13b,13c,13d上にはそれぞれ、駆動デバイス41が個別に実装されている(
図3参照)。これらの駆動デバイス41はそれぞれ、噴射部11における対応するノズル列内のノズル孔Hnからインク9を噴射させるための、駆動信号Sd(駆動電圧Vd)を出力するデバイスである。したがって、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dからは、このような駆動信号Sdが、噴射部11に対して出力されるようになっている。なお、このような各駆動デバイス41は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成されている。
【0031】
また、これらの各駆動デバイス41は、前述した冷却ユニット141,142によって冷却されるようになっている。具体的には
図3に示したように、フレキシブル基板13a,13b上の駆動デバイス41同士の間に、冷却ユニット141が固定配置されており、この冷却ユニット141がこれらの駆動デバイス41に対してそれぞれ押し当てられることで、各駆動デバイス41が冷却されている。同様に、フレキシブル基板13c,13d上の駆動デバイス41同士の間に、冷却ユニット142が固定配置されており、この冷却ユニット142がこれらの駆動デバイス41に対してそれぞれ押し当てられることで、各駆動デバイス41が冷却されている。なお、このような冷却ユニット141,142はそれぞれ、各種方式の冷却機構を用いて構成することが可能である。
【0032】
[フレキシブル基板13a,13b,13c,13dの詳細構成]
続いて、
図1~
図3に加えて、
図4A,
図4B,
図5~
図8を参照して、前述したフレキシブル基板13a,13b,13c,13dの詳細構成例について、説明する。
【0033】
図4A,
図4Bは、
図2,
図3に示したフレキシブル基板13a~13dの詳細構成例を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したものである。具体的には、
図4Aは、フレキシブル基板13a,13cの平面構成例(Z-X平面構成例)を、
図4Bは、フレキシブル基板13b,13dの平面構成例(Z-X平面構成例)を、それぞれ示している。また、
図5は、
図4Bに示したフレキシブル基板13b,13d内での各配線等の配置構成例を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したものである。
図6は、本実施の形態に係る駆動デバイス41の詳細構成例を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したもの(後述する裏面S2側から図示した場合の構成例)である。
図7は、本実施の形態に係るフレキシブル基板13(13a~13d)の詳細構成例を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したもの(後述する表面S1側から図示した場合の構成例)である。また、
図8は、
図7に示した構成例を、模式的に表す断面図(X-Y断面図)で表したものである。
【0034】
なお、
図5では、フレキシブル基板13b,13dを、フレキシブル基板13と総称して示している。また、この
図5では、フレキシブル基板13b,13bの場合の構成例について示しているが、上記したフレキシブル基板13a,13cの場合についても、基本的には同様の構成となっている。したがって、
図7,
図8ではそれぞれ、フレキシブル基板13a~13dの総称としてフレキシブル基板13と示しており、以降では適宜、フレキシブル基板13として説明する。また、
図8では、後述する差動線路Lt1,Lt2,Lt31~Lt34をそれぞれ、差動線路Ltと総称して示しており、以降では適宜、差動線路Ltとして説明する。
【0035】
まず、
図4A,
図4B,
図5にそれぞれ示したように、これらのフレキシブル基板13a~13dにはそれぞれ、以下のような各部材が、設けられている。すなわち、接続電極130、第1入力端子Tin1、第2入力端子Tin2、差動線路Lt1,Lt2,Lt31~Lt34、複数(この例では5つ)の駆動デバイス41、および、前述した圧着電極433が、設けられている。
【0036】
接続電極130は、各フレキシブル基板13a~13dにおけるI/F基板12側の端部領域に配置されており、各フレキシブル基板13a~13dとI/F基板12との間を、電気的に接続するための電極である。
【0037】
第1入力端子Tin1および第2入力端子Tin2にはそれぞれ、インクジェットヘッド1の外部(前述した印刷制御部2)から伝送される伝送データDt(前述した印刷制御信号Sc)が、入力されるようになっている(
図1,
図2,
図4A,
図4B,
図5参照)。また、このような伝送データDtは、第1入力端子Tin1および第2入力端子Tin2のうちの一方入力端子を介して、各フレキシブル基板13a~13d内に伝送されるようになっている。具体的には、例えば
図4Aに示したように、フレキシブル基板13a,13cではそれぞれ、第1入力端子Tin1を介して、伝送データDtが各フレキシブル基板13a,13c内に、伝送されるようになっている。一方、例えば
図4B,
図5に示したように、フレキシブル基板13b,13dではそれぞれ、第2入力端子Tin2を介して、伝送データDtが各フレキシブル基板13b,13d内に、伝送されるようになっている。
【0038】
上記した5つの駆動デバイス41はそれぞれ、
図4A,
図4B,
図5に示した例では、各フレキシブル基板13a~13d上(表面S1および裏面S2のうちの、表面S1側)に実装されている。このような5つの駆動デバイス41として、
図4A,
図4B,
図5に示した例では、駆動デバイス411~415が、それぞれ設けられている。また、これら5つの駆動デバイス41は、第1入力端子Tin1と第2入力端子Tin2との間において、後述する複数の差動線路を経由して、上記した表面S1上で、互いに直列配置(カスケード接続)されている。具体的には、
図4A,
図4B,
図5に示したように、各フレキシブル基板13a~13dのいずれにおいても、第1入力端子Tin1側から第2入力端子Tin2側へ向けて、駆動デバイス411~415の順で、直列配置されている。換言すると、このような駆動デバイス41の直列配置のうちの一端に、駆動デバイス411が位置すると共に、この直列配置の他端に、駆動デバイス415が位置している。そして、これらの駆動デバイス411,415の間に、複数(この例では3つ)の駆動デバイス412~414が位置している。これら5つの駆動デバイス41はそれぞれ、上記したように、第1入力端子Tin1および第2入力端子Tin2のうちの一方の入力端子を介して入力された伝送データDtに基づいて、前述した駆動信号Sdを生成するようになっている。なお、このようにして生成された駆動信号Sdはそれぞれ、各フレキシブル基板13a~13d上の前述した圧着電極433を介して、噴射部11側へと供給されるようになっている。
【0039】
また、第1入力端子Tin1と第2入力端子Tin2との間には、互いに直列配置された5つの駆動デバイス41を介して、伝送データDtを伝送するための複数の伝送線路(差動線路)が配置されている。換言すると、この差動線路は、各駆動デバイス41へ向けて、差動信号としての伝送データDtを伝送するための線路である。具体的には、
図4A,
図4B,
図5に示したように、第1入力端子Tin1と駆動デバイス411との間には、差動線路Lt1が配置され、第2入力端子Tin2と駆動デバイス415との間には、差動線路Lt2が配置されている。また、駆動デバイス411,412の間には差動線路Lt31が配置され、駆動デバイス412,413の間には差動線路Lt32が配置されている。駆動デバイス413,414の間には差動線路Lt33が配置され、駆動デバイス414,415の間には差動線路Lt34が配置されている。
【0040】
ここで、上記したように、フレキシブル基板13a,13cとフレキシブル基板13b,13dとではそれぞれ、伝送データDtが入力される入力端子(第1入力端子Tin1または第2入力端子Tin2)が、互いに異なっている(
図4A,
図4B,
図5参照)。また、それに伴い、フレキシブル基板13a,13cとフレキシブル基板13b,13dとではそれぞれ、入力された伝送データDtにおける基板内での伝送方向が、互いに異なっている。すなわち、フレキシブル基板13a,13cではそれぞれ、第1入力端子Tin1から入力された伝送データDtが、駆動デバイス411~415の順に、伝送されるようになっている(
図4A参照)。一方、フレキシブル基板13b,13dではそれぞれ、第2入力端子Tin2から入力された伝送データDtが、駆動デバイス415~411の順に、伝送されるようになっている(
図4B,
図5参照)。
【0041】
このようにして、フレキシブル基板13a,13cとフレキシブル基板13b,13dとではそれぞれ、伝送データDtが入力される入力端子および伝送データDtが出力される出力端子が、互いに異なっている。ただし、これらのフレキシブル基板13a,13cとフレキシブル基板13b,13dとではそれぞれ、基板の構造自体は互いに同一となっており、各フレキシブル基板13a~13dの構成が、共通化(共用)されている(
図4A,
図4B,
図5参照)。つまり、伝送データDtの伝送方向等に応じて複数種類のフレキシブル基板(駆動基板)を用意する必要がなく、インクジェットヘッド1内において、1種類のフレキシブル基板13(駆動基板)のみが、設けられていることになる。
【0042】
また、
図5に示したように、このフレキシブル基板13には、各駆動デバイス41(駆動デバイス411~415)へ向けて駆動用の所定の定電位を供給するための、駆動用定電位ラインLdが配置されている。この駆動用定電位ラインLdとしては、詳細は後述するが、所定の定電位Vvを供給するための定電位配線Wvが、設けられている(
図6参照)。また、この定電位配線Wvは、定電位Vvとしての電源電位Vpを供給するための電源配線Wpと、定電位Vvとしてのグランド電位Vgを供給するためのグランド配線Wgとを、含んでいる(
図6参照)。更に、フレキシブル基板13(裏面S2)には、駆動デバイス41以外の各種部品が配置されている、部品配置領域40が設けられている。
【0043】
また、
図8に示したように、このフレキシブル基板13は、前述した表面S1および裏面S2を有する、2層構造の両面基板となっている。つまり、このフレキシブル基板13は、そのような2層構造の配線層として、基板面(Z―X平面)と直交する方向(Y軸方向)に沿って互いに対向する、表面S1側の第1配線層W1と、裏面S2側の第2配線層W2とを、有している。
【0044】
(駆動デバイス41)
まず、上記した各駆動デバイス41(駆動デバイス411~415)は、
図7,
図8に示したように、フレキシブル基板13における表面S1側の第1配線層W1に、実装されている。具体的には、本実施の形態では、各駆動デバイス41は、フレキシブル基板13における基板面(表面S1)上に、後述する各種の端子(バンプ)を介して、フリップチップ実装されている。なお、
図6,
図7中には、駆動デバイス41における基板面への被実装領域Am(フレキシブル基板13上での駆動デバイス41の実装領域)を、示している。
【0045】
このような駆動デバイス41は、
図6,
図7に示した例では、内部回路410、2つのデータ入力端子Tin、2つのデータ出力端子Tout、複数の制御端子Tc、複数の駆動端子Td、複数の定電位端子Tv、および、2つのダミー端子Tdmを、有している。
【0046】
内部回路410は、
図6に示したように、後述する複数の制御端子Tcと複数の駆動端子Tdとの間(内部領域)において、駆動デバイス41の長手方向(X軸方向)に沿って延在している。この内部回路410は、駆動デバイス41における各種の回路(駆動信号Sdを生成する回路等)を含む部分である。
【0047】
データ入力端子Tinおよびデータ出力端子Toutにはそれぞれ、前述した差動線路Ltが接続されており、この差動線路Ltを介して伝送データDtが伝送されるようになっている。具体的には、データ入力端子Tinには差動線路Ltを介して伝送データDtが入力され、データ出力端子Toutから差動線路Ltを介して伝送データDtが出力されるようになっている。
図6,
図7に示した例では、これらのデータ入力端子Tinおよびデータ出力端子Toutは、駆動デバイス41の入力側(Z軸に沿った正方向側)において、駆動デバイス41の長手方向(X軸方向)に沿った両端付近に配置されている。
【0048】
制御端子Tcは、フレキシブル基板13上における制御配線(駆動デバイス41に対して各種制御を行うための配線)を、駆動デバイス41に対して電気的に接続するための端子である。
図6,
図7に示した例では、複数の制御端子Tcが、駆動デバイス41の入力側(データ入力端子Tinおよびデータ出力端子Toutの間の領域)において、駆動デバイス41の長手方向に沿って並んで配置されている。
【0049】
駆動端子Tdは、駆動信号Sdを個別に伝送するための配線(駆動信号配線Wd:
図7参照)を、駆動デバイス41に対して電気的に接続するための端子である。
図6,
図7に示した例では、複数(例えば128個)の駆動端子Tdが、駆動デバイス41の出力側(Z軸に沿った負方向側)において、駆動デバイス41の長手方向に沿って並んで配置されている。また、
図6,
図7に示した例では、これら複数の駆動端子Tdが、駆動デバイス41の長手方向に沿って配置された、複数の駆動端子群(2つの駆動端子群Td1,Td2)に区別(グループ化)されている。なお、一例として、これらの駆動端子群Td1,Td2はそれぞれ、64個ずつの駆動端子Tdを含んで構成されている。
【0050】
定電位端子Tvは、前述した所定の定電位Vv(電源電位Vpまたはグランド電位Vg)を供給するための定電位配線Wvを、駆動デバイス41に対して電気的に接続するための端子である。この定電位端子Tvは、
図6に示した例では、複数の電源端子Tpと、複数のグランド端子Tgとを、有している。また、
図6に示した例では前述したように、定電位配線Wwは、電源電位Vpを供給するための電源配線Wpと、グランド電位Vgを供給するためのグランド配線Wgとを、含んでいる。
【0051】
図6に示した例では、これら複数の電源端子Tpおよび複数のグランド端子Tgはそれぞれ、駆動デバイス41における複数の制御端子Tcと複数の駆動端子Tdとの間の領域において、駆動デバイス41の長手方向に沿って並んで配置されている。具体的には、これらの電源端子Tpおよびグランド端子Tgはそれぞれ、駆動デバイス41における被実装領域Am内において、上記した駆動端子群Td1,Td2と近接して配置されている。なお、本実施の形態では、駆動デバイス41は基板面上にフリップチップ実装されていることから、これらの電源端子Tpおよびグランド端子Tgのうちの一部は、駆動デバイス41における内部回路410の配置領域内にも、配置されている。
【0052】
また、
図6に示したように、駆動デバイス41における複数の電源端子Tpの配置位置(長手方向:X軸方向)に沿って、電源配線Wpが延在していると共に、駆動デバイス41における複数のグランド端子Tgの配置位置(長手方向)に沿って、グランド配線Wgが延在している。これらの電源配線Wp(後述する第1電源配線Wp1)およびグランド配線Wg(後述する第1グランド配線Wg1)から、各電源端子Tpおよび各グランド端子Tgを介して、駆動デバイス41に対して電源電位Vpおよびグランド電位Vgがそれぞれ、個別に供給されるようになっている。
【0053】
ダミー端子Tdmは、詳細は後述するが、所定の定電位Vvと電気的に接続可能に構成されており、駆動デバイス41の内部回路410とは電気的に接続されていない端子である。このダミー端子Tdmは、
図6,
図7に示した例では、駆動デバイス41における複数の駆動端子群の間のうちの少なくとも1つの位置(2つの駆動端子群Td1,T2の間の位置)に、配置されている。
【0054】
なお、
図6,
図7に示した例では、2つのダミー端子Tdmが設けられているが、このダミー端子Tdmの個数は限定されず、例えば、1つあるいは3つ以上であってもよい。また、
図6,
図6に示した例では、これらのダミー端子Tdmが、駆動端子群Td1,Td2の延在方向(X軸方向)と同じ直線上に、並んで配置されているが、このような配置例には限られない。すなわち、例えば、駆動端子群Td1,Td2における延在方向の直線上から多少ずれて、ダミー端子Tdmが配置されているようにしてもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、駆動デバイス41は基板面上にフリップチップ実装されていることから、駆動デバイス41の実装時において、各端子に実装されているバンプには、均等に加圧されることが望ましい。そのため、2つの駆動端子群Td1,T2の間に位置するダミー端子Tdmにおけるバンプは、そのような均等な加圧を行うための助けとなる。
【0056】
(差動線路Lt)
前述した差動線路Lt(差動線路Lt1,Lt2,Lt31~Lt34)はそれぞれ、
図6~
図8に示したように、フレキシブル基板13における表面S1側の第1配線層W1に、配置されている。これらの各差動線路Ltは、前述したように、差動信号としての伝送データDtを伝送するための線路であり、例えば、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)を用いて構成されている。ただし、各差動線路Ltが、例えば、CML(Current Mode Logic)やECL(Emitter Coupled Logic)等を用いて構成されていてもよい。また、これらの各差動線路Ltは、例えば、いわゆるマイクロストリップ線路やコプレーナ線路を用いて構成されている。
【0057】
なお、このような各差動線路Lt上に、各種の部品(例えば、出力側デバイスと入力側デバイスとの間でコモン電圧が異なる場合などに必要となる、ACカップリング用のコンデンサなど)や、スルーホールなどを配置するようにしてもよい。また、スルーホールを配置するようにした場合、このスルーホール上にてインピーダンスコントロールを行うために、各種の電源配線Wpやグランド配線Wgの近傍に、スルーホールを配置するようにしてもよい。
【0058】
(各種の配線等)
続いて、
図6~
図8を参照して、フレキシブル基板13上における各種の配線等について、詳細に説明する。
【0059】
図7に示したように、フレキシブル基板13における駆動デバイス41の周辺には、複数の駆動信号配線Wdと、上記した定電位配線Wvとしての電源配線Wpおよびグランド配線Wgと、ダミー端子接続配線Wdm1と、リターン配線Wr2とが、配置されている。
【0060】
複数の駆動信号配線Wdは、
図7に示したように、駆動デバイス41における複数の駆動端子Tdに対して、個別に電気的接続されている。このような駆動信号配線Wdはそれぞれ、駆動デバイス41とともに、フレキシブル基板13における表面S1側の第1配線層W1に、配置されている(
図8参照)。
【0061】
電源配線Wpは、駆動デバイス41における電源端子Tp(
図6参照)に対して電気的に接続されており、前述した電源電位Vpが印加されている。この電源配線Wpは、
図7,
図8に示したように、第1配線層W1に配置された第1電源配線Wp1と、第2配線層W2に配置された第2電源配線Wp2とを、含んでいる。第1電源配線Wp1は、
図6にて前述したように、フレキシブル基板13の表面S1における駆動デバイス41の裏面側を介して、この駆動デバイス41の長手方向(X軸方向)に沿って延在している(
図7参照)。第2電源配線Wp2は、第1電源配線Wp1と第1スルーホールTH1pを介して電気的に接続されており(
図7,
図8参照)、駆動デバイス41の短手方向(Z軸方向)に沿って延在している。
【0062】
グランド配線Wgは、駆動デバイス41におけるグランド端子Tg(
図6参照)に対して電気的に接続されており、前述したグランド電位Vgが印加されている。このグランド配線Wgは、
図7,
図8に示したように、第1配線層W1に配置された第1グランド配線Wg1と、第2配線層W2に配置された第2グランド配線Wg2とを、含んでいる。第1グランド配線Wg1は、
図6にて前述したように、フレキシブル基板13の表面S1における駆動デバイス41の裏面側を介して、この駆動デバイス41の長手方向に沿って延在している(
図7参照)。第2グランド配線Wg2は、第1グランド配線Wg1と第1スルーホールTH1gを介して電気的に接続されており(
図7,
図8参照)、駆動デバイス41の短手方向に沿って延在している。
【0063】
ダミー端子接続配線Wdm1は、第1配線層W1に配置されており、駆動デバイス41におけるダミー端子Tdm(
図6参照)に対して電気的に接続されている。このダミー端子接続配線Wdm1は、
図7に示したように、ダミー端子Tdmを介して駆動デバイス41の短手方向(Z軸方向)に沿って延在している。また、ダミー端子接続配線Wdm1の一端側は、上記した第1グランド配線Wg1と電気的に接続されていると共に、ダミー端子接続配線Wdm1の他端側は、第2スルーホールTH2を介して、以下説明するリターン配線Wr2と電気的に接続されている(
図7参照)。
【0064】
リターン配線Wr2は、第2配線層W2に配置されており、インクジェットヘッド1における前述した共通電極に対して、電気的接続されている配線である。このリターン配線Wr2は、
図7に示したように、駆動デバイス41の出力側(複数の駆動端子Td側)において、複数の駆動信号配線Wdの配置領域と重なるようにして、駆動デバイス41の長手方向(X軸方向)に沿って延在している。このようなリターン配線Wr2の延在方向に沿った両端側がそれぞれ、第2グランド配線Wg2に対して電気的に接続されている。また、このリターン配線Wr2は、上記したように、第2スルーホールTH2を介して、ダミー端子接続配線Wdm1と電気的に接続されていると共に、このダミー端子接続配線Wdm1は上記したように、第1グランド配線Wg1とも電気的に接続されている。これらのことから、ダミー端子接続配線Wdm1およびリターン配線Wr2にはそれぞれ、グランド配線Wgを介してグランド電位Vgが印加されるようになっている。
【0065】
ここで、上記したフレキシブル基板13(13a~13d)はそれぞれ、本開示における「駆動基板」の一具体例に対応している。また、表面S1および第1配線層W1はそれぞれ、本開示における「第1配線層」の一具体例に対応し、裏面S2および第2配線層W2はそれぞれ、本開示における「第2配線層」の一具体例に対応している。また、電源配線Wpおよびグランド配線Wgはそれぞれ、本開示における「定電位配線」の一具体例に対応し、上記した電源電位Vpおよびグランド電位Vgはそれぞれ、本開示における「所定の定電位」の一具体例に対応している。また、電源端子Tpおよびグランド端子Tgはそれぞれ、本開示における「定電位端子」の一具体例に対応している。また、第1電源配線Wp1および第1グランド配線Wg1はそれぞれ、本開示における「第1定電位配線」の一具体例に対応し、第2電源配線Wp2および第2グランド配線Wg2はそれぞれ、本開示における「第2定電位配線」の一具体例に対応している。
【0066】
[動作および作用・効果]
(A.プリンタ5の基本動作)
このプリンタ5では、以下のようなインクジェットヘッド1によるインク9の噴射動作を用いて、被記録媒体(記録紙P等)に対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。具体的には、本実施の形態のインクジェットヘッド1では、以下のようにして、せん断(シェア)モードを用いたインク9の噴射動作が行われる。
【0067】
まず、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13d上の駆動デバイス41はそれぞれ、噴射部11におけるアクチュエータプレート111内の前述した駆動電極(コモン電極およびアクティブ電極)に対し、駆動電圧Vd(駆動信号Sd)を印加する。具体的には、各駆動デバイス41は、前述した吐出チャネルを画成する一対の駆動壁に配置された各駆動電極に対し、駆動電圧Vdを印加する。これにより、これら一対の駆動壁がそれぞれ、その吐出チャネルに隣接するダミーチャネル側へ、突出するように変形する。
【0068】
このとき、駆動壁における深さ方向の中間位置を中心として、駆動壁がV字状に屈曲変形することになる。そして、このような駆動壁の屈曲変形により、吐出チャネルがあたかも膨らむように変形する。このように、一対の駆動壁での圧電厚み滑り効果による屈曲変形によって、吐出チャネルの容積が増大する。そして、吐出チャネルの容積が増大することにより、インク9が吐出チャネル内へ誘導されることになる。
【0069】
次いで、このようにして吐出チャネル内へ誘導されたインク9は、圧力波となって吐出チャネルの内部に伝播する。そして、ノズルプレート112のノズル孔Hnにこの圧力波が到達したタイミング(またはその近傍のタイミング)で、駆動電極に印加される駆動電圧Vdが、0(ゼロ)Vとなる。これにより、上記した屈曲変形の状態から駆動壁が復元する結果、一旦増大した吐出チャネルの容積が、再び元に戻ることになる。
【0070】
このようにして、吐出チャネルの容積が元に戻る過程で、吐出チャネル内部の圧力が増加し、吐出チャネル内のインク9が加圧される。その結果、液滴状のインク9が、ノズル孔Hnを通って外部へと(記録紙Pへ向けて)吐出される(
図1参照)。このようにしてインクジェットヘッド1におけるインク9の噴射動作(吐出動作)がなされ、その結果、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作が行われる。
【0071】
(B.インクジェットヘッド1における作用・効果)
続いて、本実施の形態のインクジェットヘッド1における作用および効果について、詳細に説明する。
【0072】
(B-1.従来の駆動基板の構成例について)
まず、従来の一般的なインクジェットヘッドにて使用される駆動基板では、多数のノズル孔を同時に動作させる要求から、以下のように構成されている。すなわち、各ノズル孔を駆動させる信号(駆動信号)を出力する駆動デバイスからアクチュエータプレートへ向けて、非常に多くの本数の個別配線が、駆動基板上に配置されている。そして、この個別配線に対応する共通配線も、駆動基板上に配置する必要がある。
【0073】
この共通配線は個別配線に対するリターン経路であることから、従来の駆動基板では、例えば、以下のようになっている。すなわち、まず、個別配線および共通配線がそれぞれ、アクチュエータプレートに接続されると共に、共通配線がいずれかの経路を通って、入力側の電源や駆動デバイスなどに接続される必要がある。また、アクチュエータプレートに接続される個別配線は、例えば駆動デバイスが矩形状である場合、その長手方向に沿って、ノズル孔の個数に対応した複数の個別配線が、並んで配置されることになる。一方、共通配線と繋がるグランド配線は、駆動基板の両端のみに、存在している。
【0074】
このような共通配線の配置は、例えば、駆動デバイスの個数が増えた場合や、駆動デバイスにおける長手方向の長さが長くなるのに応じて、以下のような問題が生じ得る。すなわち、共通配線が駆動基板の両端にしか存在しないため、その共通配線に近い個別配線に繋がるノズル孔と、共通配線から遠い個別配線に繋がるノズル孔との間で、リターン経路の線長差に起因した電気的特性の差が、大きくなっていく。そのため、共通配線からの距離が近いノズル孔と遠いノズル孔との間で、インクの吐出性能の差が大きくなり、最終的には印刷品位の低下を招くことになる。
【0075】
また、放熱の点でも、問題点が生じ得る。例えば、駆動デバイスがノズル孔を駆動することによって発熱をした際に、上記した従来の駆動基板では、駆動デバイスの両脇にあるグランド配線にしか、放熱経路が存在しない。そのため、駆動デバイスの両脇と中央付近とでは、放熱路からの距離が異なることから、駆動デバイス内の両端と中央付近とで、温度環境が異なることになる。したがって、駆動デバイスの熱がアクチュエータプレートへと伝わり、アクチュエータプレートにて温度むらが生じたり、駆動デバイスにおけるアナログ回路の性能に差が生じたりすること等から、吐出性能がノズル列内で異なることになり、印刷品位に影響を与えることになる。
【0076】
これらのことから、従来の駆動基板の構成例では、駆動デバイスの安定動作を確保することが困難となり、信頼性の低下を招くおそれがあると言える。
【0077】
(B-2.作用・効果)
これに対して、本実施の形態のインクジェットヘッド1では、以下のような構成となっていることで、例えば、以下のような作用および効果が得られる。
【0078】
すなわち、まず、このインクジェットヘッド1では、駆動デバイス41における複数の駆動端子群の間のうちの少なくとも1つの位置(2つの駆動端子群Td1,T2の間の位置)に、所定の定電位Vvと電気的に接続可能なダミー端子Tdmが、設けられている。これにより、例えば、これらの駆動端子群Td1,Td2に近接した位置から駆動デバイス41内へと、定電位Vv(例えば、電源電位Vpやグランド電位Vgなど)を供給することが可能となり、駆動デバイス41の安定動作を確保できるようになる。その結果、本実施の形態では、駆動デバイス41(ならびに、フレキシブル基板13およびインクジェットヘッド1等)の信頼性を向上させることが可能となる。
【0079】
また、本実施の形態では、そのようなダミー端子Tdmが、駆動デバイス41内の内部回路410と接続されていないことから、このダミー端子Tdmに印加される定電位Vvとして、多様な電位を設定できる。また、駆動デバイス41内でのダミー端子Tdmの配置自由度が増加するため、この駆動デバイス41がフレキシブル基板13上に実装される際に、フレキシブル基板13上での回路や配線の配置自由度も増加し、フレキシブル基板13上での配線効率が向上する。その結果、本実施の形態では、フレキシブル基板13の小型化を図ることが可能となる。また、この駆動デバイス41の基板面(表面S1)への被実装領域Am内において、駆動端子群Td1,Td2と近接した位置に定電位端子Tvが配置されることから、例えば、この駆動デバイス41に対するリターン経路を、定電位Vvが印加されるダミー端子Tdmを介して、小さくすることができる。その結果、本実施の形態では、信頼性を更に向上させることも可能となる。
【0080】
更に、本実施の形態では、ダミー端子接続配線Wdm1と定電位配線Wvとが、互いに電気的に接続されていることから、駆動デバイス41へと定電位Vvを供給する配線の面積が、増加することになる。これにより、駆動デバイス41へと供給される電源が強化されると共に、そのような電源の強化に伴って、駆動デバイス41への放熱経路も強化されることになる。その結果、駆動デバイス41の更なる安定動作が実現され、信頼性を更に向上させることが可能となる。
【0081】
加えて、本実施の形態では、定電位配線Wvが、第1配線層W1上の第1定電位配線(第1電源配線Wp1および第1グランド配線Wg1)と、第2配線層W2上の第2定電位配線(第2電源配線Wp2および第2グランド配線Wg2)とを含んでいる。そして、これらの第1定電位配線と第2定電位配線とが、第1スルーホールTH1p,TH1gを介して電気的に接続されている。これにより、他の配線が多く存在する層(例えば、複数の駆動信号Sdが存在する第1配線層W1)とは異なる層(第2配線層W2)から、定電位Vvを供給することができる。したがって、駆動デバイス41における上記した電源や放熱経路が、更に強化されることになる結果、駆動デバイス41の更なる安定動作が実現され、信頼性をより一層向上させることが可能となる。
【0082】
また、本実施の形態では、リターン配線Wr2が、第2配線層W2と電気的に接続されていると共に、第2スルーホールTH2を介してダミー端子接続配線Wdm1とも電気的に接続されていることから、以下のようになる。すなわち、駆動デバイス41に対するリターン経路が、例えば駆動デバイス41の両端付近だけでなく、ダミー端子Tdmの位置(複数の駆動端子群の間のうちの少なくとも1つの位置)にも形成されることから、駆動デバイス41の更なる安定動作が実現される。また、広大なリターン配線Wr2とダミー端子接続配線Wdm1とが、電気的に接続されていることから、駆動デバイス41の放熱経路も、更に強化されることになる。これらのことから、本実施の形態では、信頼性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0083】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1-1,1-2,2,3)について説明する。なお、以下では、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0084】
[変形例1-1,1-2]
(構成)
図9,
図10はそれぞれ、変形例1-1,1-2に係るフレキシブル基板13A1,13A2の詳細構成例を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したもの(前述した表面S1側から図示した場合の構成例)である。具体的には、
図9に示した変形例1-1のフレキシブル基板13A1では、1つの駆動デバイス41周辺についての平面構成例を示しており、
図10に示した変形例1-2のフレキシブル基板13A2では、複数(2つ)の駆動デバイス41周辺についての平面構成例を示している。
【0085】
ここで、このような変形例1-1,1-2に係るフレキシブル基板13A1,13A2はそれぞれ、本開示における「駆動基板」の一具体例に対応している。
【0086】
図9,
図10に示したように、変形例1-1,1-2のフレキシブル基板13A1,13A2はそれぞれ、実施の形態のフレキシブル基板13(
図7参照)において、1種類の電源配線Wpの代わりに、複数種類(2種類)の電源配線を設けるようにしたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0087】
具体的には、フレキシブル基板13A1,13A2では、第1配線層W1上に2種類の第1電源配線Wp11,Wp12が配置され、第2配線層W2上に2種類の第2電源配線Wp21,Wp22が配置されている。つまり、フレキシブル基板13における第1電源配線Wp1の代わりに、第1電源配線Wp11,Wp12が設けられ、フレキシブル基板13における第2電源配線Wp2の代わりに、第2電源配線Wp21,Wp22が設けられている。
【0088】
また、第1電源配線Wp11と第2電源配線Wp21とは、第1スルーホールTH1pを介して互いに電気的接続されていると共に、第1電源配線Wp12と第2電源配線Wp22とは、第1スルーホールTH1pを介して互いに電気的接続されている。第1電源配線Wp11および第2電源配線Wp21にはそれぞれ、電源電位Vp1(例えば正電位)が印加されており、第1電源配線Wp12および第2電源配線Wp22にはそれぞれ、電源電位Vp1とは異なる電源電位Vp2(例えば負電位)が印加されている。これにより、例えば駆動信号Sdにおける駆動電圧Vdとして、正負の電圧を含ませることが可能となっている。
【0089】
なお、第1電源配線Wp11,Wp12および第1グランド配線Wg1はそれぞれ、本開示における「第1定電位配線」の一具体例に対応し、第2電源配線Wp21,Wp22および第2グランド配線Wg2はそれぞれ、本開示における「第2定電位配線」の一具体例に対応している。また、第2電源配線Wp21,Wp22および第2グランド配線Wg2はそれぞれ、本開示における「(第2定電位配線に含まれる)複数種類の配線」の一具体例に対応し、第2グランド配線Wg2は、本開示における「(複数種類の配線に含まれる)グランド配線」の一具体例に対応している。また、上記した電源電位Vp1,Vp2およびグランド電位Vgはそれぞれ、本開示における「所定の定電位」の一具体例に対応している。
【0090】
このように、フレキシブル基板13A1,13A2では、上記した第2定電位配線として、互いに異なる定電位Vv(電源電位Vp1,Vp2およびグランド電位Vg)が印加されている、複数種類の配線(3種類の配線:第2電源配線Wp21,Wp22および第2グランド配線Wg2)が、含まれている。そして、例えば
図9中に示したように、第2電源配線Wp21における配線幅dp21と、第2電源配線Wp22における配線幅dp22と、第2グランド配線Wg2における配線幅dg2とが、互いに異なっている。具体的には、
図9,
図10の例では、(配線幅dp22<配線幅dp21<配線幅dg2)となっており、これら3種類の配線のうち、第2グランド配線Wg2の配線幅dg2が最大(最も太く)となっている。
【0091】
なお、配線幅dp21,dp22,dg2における上記のような大小関係は、例えば以下の理由によるものである。すなわち、上記した各定電位Vv(電源電位Vp1,Vp2およびグランド電位Vg)に対する許容電流の大きさに対して、配線幅dp21,dp22,dg2を適切に設定することにより、吐出駆動時の電圧降下を抑制しつつ、フレキシブル基板13A1,13A2への配線配置をコンパクトにすることが可能となるためである。具体的には、
図9,
図10の例では、第2電源配線Wp21における許容電流のほうが、第2電源配線Wp22における許容電流よりも大きい場合を想定しているため、第2電源配線Wp21の配線幅dp21のほうが、第2電源配線Wp22の配線幅dp22よりも大きくなっている。また、第2グランド配線Wg2は、第2電源配線Wp21,Wp22を使用したアクチュエータプレート111の充電状態からの、放電時に使用されることから、この第2グランド配線Wg2の配線幅dg2は、第2電源配線Wp21,Wp22における許容電流の合計値に相当する配線幅以上となっていることが、望ましいためである。
【0092】
また、
図10に示した変形例1-2では特に、複数の駆動デバイス41が、第1配線層W1において上記した第1定電位配線(第1電源配線Wp11,Wp12および第1グランド配線Wg1)を介して、互いにカスケード接続されている。そして、第2配線層W2における複数の駆動デバイス41同士の間に、上記した第2定電位配線(第2電源配線Wp21,Wp22および第2グランド配線Wg2)が配置されている。また、これらの第1定電位配線と第2定電位配線とが、複数の駆動デバイス41の間の領域において、第1スルーホールTH1p,TH1gを介して、個別に電気的接続されている。
【0093】
(作用・効果)
このようにして、変形例1-1,1-2のフレキシブル基板13A1,13A2では、上記した第2定電位配線に含まれる複数種類の配線(第2電源配線Wp21,Wp22および第2グランド配線Wg2)における配線幅(配線幅dp21,dp22,dg2)が、互いに異なっている。これにより、例えば、これらの各配線に流れる電流の大きさに対応した配線幅に設定されることで、以下のようになる。
【0094】
すなわち、例えば、流れる電流が相対的に少ない配線では、配線幅を相対的に狭く設定する一方、流れる電流が相対的に多い配線では、配線幅を相対的に広く設定する、といったことが可能となる。これにより、駆動デバイス41における上記した電源や放熱経路が更に強化され、駆動デバイス41の更なる安定動作を確保しつつ、フレキシブル基板13A1,13A2上の配線効率が増加することになる。その結果、フレキシブル基板13A1,13A2、および、それらのフレキシブル基板13A1,13A2を備えたインクジェットヘッドにおける、小型化を図ることが可能となる。
【0095】
また、上記した複数種類の配線の配線幅のうち、グランド配線(第2グランド配線Wg2)の配線幅(配線幅dg2)が、最大となっていることから、以下のようになる。すなわち、例えば、この第2グランド配線Wg2の許容電流を、他の配線(第2電源配線Wp21,Wp22)における許容電流の合計値以上に設定するといったことが、可能となる。これにより、上記した第2定電位配線の配置効率を向上させつつ、良質なグランドを確保することができるため、小型化を図りつつ信頼性も向上させることが可能となる。
【0096】
更に、特に変形例1-2では、複数の駆動デバイス41が、第1配線層W1において上記した第1定電位配線を介して、互いにカスケード接続されていると共に、第2配線層W2におけるこれらの複数の駆動デバイス41同士の間に、上記した第2定電位配線が配置されていることから、以下のようになる。すなわち、基板面上に複数の駆動デバイス41が実装されている場合においても、効率的なリターン経路や放熱経路を確保できるようになり、信頼性を向上させることが可能となる。
【0097】
なお、変形例1-2では、変形例1-1に対応した配線構成等を、複数の駆動デバイス41に適用した場合の例となっているが、例えば、実施の形態に対応した配線構成等を、複数の駆動デバイス41に適用するようにしてもよい。
【0098】
[変形例2]
(構成)
図11は、変形例2に係るフレキシブル基板13Bの詳細構成例を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したもの(前述した表面S1側から図示した場合の構成例)である。具体的には、この変形例2のフレキシブル基板13Bでは、上記した変形例1-2のフレキシブル基板13A2(
図10参照)と同様に、複数(2つ)の駆動デバイス41周辺についての平面構成例を示している。
【0099】
ここで、このような変形例2に係るフレキシブル基板13Bは、本開示における「駆動基板」の一具体例に対応している。
【0100】
図11に示したように、この変形例2のフレキシブル基板13Bは、変形例1-2のフレキシブル基板13A1(
図10参照)において、以下説明する回路部品42を更に設けるようにしたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0101】
この回路部品42は、複数の駆動デバイス41同士の間の領域において、前述した第2定電位配線(第2電源配線Wp21,Wp22および第2グランド配線Wg2)上に、実装されている。具体的には、
図11の例では、第2電源配線Wp21,Wp22の間を跨ぐように、回路部品42が配置されていると共に、第2電源配線Wp21と第2グランド配線Wg2との間を跨ぐように、回路部品42が配置されている。
【0102】
このような回路部品42は、例えば、以下のような保護ダイオードや電源フィルタ等を含んで構成されている。
【0103】
まず、電源電位Vp22が印加される第2電源配線Wp22は、電源電位Vp1が印加される第2電源配線Wp21との間や、グランド電位Vgが印加される第2グランド配線Wg2との間に、所定の電位差があるため、例えば以下のようなことが起こり得る。すなわち、操作の誤りや駆動ノイズなどに起因して、例えば、第2電源配線Wp22の電位(電源電位Vp22)が、第2電源配線Wp21の電位(電源電位Vp21)よりも高くなる、あるいは、第2グランド配線の電位(グランド電位Vg)よりも低くなる、といったことが起こり得る。このような場合に、第2電源配線Wp21,Wp22の間、および、第2電源配線Wp21と第2グランド配線Wg2との間に、回路部品42としての保護ダイオードが設けられていることで、上記したような電位の逆転現象を防止することが可能となる。なお、このような保護ダイオードは、駆動デバイス41を保護する回路部品42であることから、駆動デバイス41の近傍に配置するのが望ましいため、
図11に示した配置位置の例は、適切であると言える。
【0104】
また、第2電源配線Wp21,Wp22や第2グランド配線Wg2から駆動デバイス41に対して、外来ノイズが入り込むことを抑制するため、例えば、回路部品42として電源フィルタを設けるようにしてもよい。なお、このような電源フィルタも、駆動デバイス41を保護する回路部品42であることから、駆動デバイス41の近傍に配置するのが望ましいため、
図11に示した配置位置の例は、適切であると言える。
【0105】
(作用・効果)
このようにして、変形例2のフレキシブル基板13Bでは、上記した第2定電位配線上に、回路部品42(例えば、保護ダイオードや電源フィルタなど)が実装されているから、駆動デバイス41に近接した位置に、各種の回路機能を実装することができる。その結果、駆動デバイス41の信頼性を、更に向上させることが可能となる。
【0106】
[変形例3]
(構成)
図12は、変形例3に係る駆動デバイス41Cの詳細構成例を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したもの(前述した裏面S2側から図示した場合の構成例)である。
【0107】
この変形例3の駆動デバイス41Cは、実施の形態の駆動デバイス41(
図6参照)において、2つの駆動端子群Td1,Td2の代わりに、3つの駆動端子群Td1~Td3を設けるようにしたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0108】
具体的には、この駆動デバイス41Cでは、複数の駆動端子Tdが、駆動デバイス41Cの長手方向(X軸方向)に沿って配置された、3つの駆動端子群Td1~Td3に区別されている。そして、
図12に示した駆動デバイス41Cの例では、駆動端子群Td1,Td2の間の位置と、駆動端子群Td2,Td3の間の位置とにそれぞれ、1つずつのダミー端子Tdmが設けられている。
【0109】
なお、この変形例3においても実施の形態と同様に、各位置でのダミー端子Tdmの個数は、1または複数のいずれであってもよい。また、この変形例3では、複数の駆動端子Tdが3つの駆動端子群Td1~Td3に区別されているが、この例には限られず、例えば4つ以上の駆動素子群に区別されているようにしてもよい。
【0110】
(作用・効果)
このような構成の変形例3においても、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0111】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0112】
例えば、上記実施の形態等では、プリンタおよびインクジェットヘッドにおける各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0113】
具体的には、例えば、上記実施の形態等では、フレキシブル基板(駆動基板)、駆動デバイス、差動線路、各種の端子および各種の配線等の構成例(形状、配置、個数等)について、具体的に挙げて説明したが、これらの構成例は、上記実施の形態等で説明したものには限られない。例えば、上記実施の形態等では、本開示における「駆動基板」がフレキシブル基板である場合を、例に挙げて説明したが、例えば、本開示における「駆動基板」が、非フレキシブル基板であってもよい。また、上記実施の形態等では、複数の駆動基板がインクジェットヘッド内に設けられている場合の例について説明したが、この例には限られず、例えば、インクジェットヘッド内に1つの駆動基板のみが設けられているようにしてもよい。また、上記実施の形態等では、各駆動基板内に複数の駆動デバイスが、データ出力端子Toutとデータ入力端子Tinとの間のカスケード接続によって、互いに直列配置されて設けられている場合の例について説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、複数の駆動デバイスが(上記したようなカスケード接続ではなく、)互いに並列接続されていたり、あるいは、各駆動基板内に1つの駆動デバイスのみが設けられているようにしてもよい。更に、上記実施の形態等では、駆動デバイスの形状を長方形状としているが、この例には限られず、例えば正方形状であってもよい。加えて、上記実施の形態等では、複数の駆動デバイスが、それらの長手方向に沿って並んで配置されているが、この例には限られず、例えば複数の駆動デバイスが、それらの長手方向に沿って並んで配置されていないようにしてもよい。また、上記実施の形態等では、各駆動基板における基板面上に、各駆動デバイスがフリップチップ実装されている場合の例について説明したが、この例には限られず、例えば、各駆動デバイスが基板面上に、他の実装方法(半田による挿入実装、表面実装、ワイヤボンディング実装など)によって実装されているようにしてもよい。
【0114】
更に、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの数値例については、実施の形態等で説明した数値例には限られず、他の数値であってもよい。
【0115】
また、インクジェットヘッドの構造としては、各タイプのものを適用することが可能である。すなわち、例えば、アクチュエータプレート111における各吐出チャネルの延在方向の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。あるいは、例えば、各吐出チャネルの延在方向に沿ってインク9を吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。更には、プリンタの方式としても、上記実施の形態等で説明した方式には限られず、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)方式など、各種の方式を適用することが可能である。
【0116】
更に、例えば、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッド、あるいは、インク9を循環させずに利用する、非循環式のインクジェットヘッドのいずれであっても、本開示を適用することが可能である。
【0117】
また、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0118】
更に、上記実施の形態等では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、プリンタ5(インクジェットプリンタ)を挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「液体噴射ヘッド」(インクジェットヘッド)を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「液体噴射ヘッド」を適用するようにしてもよい。
【0119】
加えて、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0120】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0121】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
複数のノズルを有する液体噴射ヘッドに適用する駆動信号を生成する駆動デバイスであって、
前記駆動デバイスの長手方向に沿って配置されており、前記ノズルから液体を噴射させるための前記駆動信号を個別に出力する、複数の駆動端子と、
所定の定電位と電気的に接続可能に構成された、1または複数のダミー端子と
を備え、
前記複数の駆動端子が、前記長手方向に沿って配置された複数の駆動端子群に区別されており、
前記ダミー端子が、前記複数の駆動端子群同士の間のうちの少なくとも1つの位置に、配置されている
駆動デバイス。
(2)
前記駆動信号を生成する回路を含む内部回路と、
前記駆動デバイスにおける基板面への被実装領域内において、前記駆動端子群と近接して配置された定電位端子と
を更に備え、
前記ダミー端子が、前記内部回路と接続されていない
上記(1)に記載の駆動デバイス。
(3)
上記(1)または(2)に記載の駆動デバイスを、1または複数備えており、
前記駆動デバイスが、基板面上に実装されている
駆動基板。
(4)
前記駆動デバイスが定電位端子を有しており、
前記複数の駆動端子に対して個別に電気的接続された、複数の駆動信号配線と、
前記ダミー端子に対して電気的に接続されたダミー端子接続配線と、
前記定電位端子に対して電気的に接続されており、前記定電位が印加されている定電位配線と
を更に備え、
前記ダミー端子接続配線と前記定電位配線とが、互いに電気的に接続されている
上記(3)に記載の駆動基板。
(5)
基板面と直交する方向に沿って互いに対向する、第1配線層および第2配線層を更に備え、
前記駆動デバイスおよび前記複数の駆動信号配線がそれぞれ、前記第1配線層に配置されており、
前記定電位配線が、
前記第1配線層に配置された第1定電位配線と、
前記第2配線層に配置されており、第1スルーホールを介して前記第1定電位配線と電気的に接続された第2定電位配線と
を含んでいる
上記(4)に記載の駆動基板。
(6)
前記第2配線層に配置されており、前記液体噴射ヘッドにおける共通電極と電気的に接続されたリターン配線を、更に備え、
前記リターン配線が、
前記第2定電位配線と電気的に接続されていると共に、
第2スルーホールを介して、前記ダミー端子接続配線と電気的に接続されている
上記(5)に記載の駆動基板。
(7)
前記第2定電位配線が、互いに異なる前記定電位が印加されている、複数種類の配線を含んでおり、
前記複数種類の配線における配線幅が、互いに異なっている
上記(5)または(6)に記載の駆動基板。
(8)
前記複数種類の配線が、前記定電位としてのグランド電位が印加されている、グランド配線を含んでおり、
前記複数種類の配線における配線幅のうち、前記グランド配線の配線幅が最大となっている
上記(7)に記載の駆動基板。
(9)
複数の前記駆動デバイスが、前記第1配線層において前記第1定電位配線を介して、互いにカスケード接続されており、
前記第2定電位配線が、前記第2配線層において、複数の前記駆動デバイス同士の間に対応する領域に、配置されている
上記(5)ないし(8)のいずれかに記載の駆動基板。
(10)
前記第2定電位配線上に、回路部品が実装されている
上記(5)ないし(9)のいずれかに記載の駆動基板。
(11)
上記(3)ないし(10)のいずれかに記載の駆動基板と、
前記駆動基板から出力される前記駆動信号に基づいて前記液体を噴射する、前記複数のノズルを有する噴射部と
を備えた液体噴射ヘッド。
(12)
上記(11)に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【符号の説明】
【0122】
1…インクジェットヘッド、10…コネクタ、11…噴射部、111…アクチュエータプレート、112…ノズルプレート、12…I/F基板、120a,120b,120c,120d…コネクタ、121…回路配置領域、13,13a,13b,13c,13d,13A1,13A2,13B…フレキシブル基板、130…接続電極、131…誘電体層(基材)、141,142…冷却ユニット、2…印刷制御部、3…インクタンク、30…インク供給管、40…部品配置領域、41,41C,411~415…駆動デバイス、410…内部回路、42…回路部品、433…圧着電極、5…プリンタ、9…インク、P…記録紙、Hn…ノズル孔、Dt…伝送データ、Sc…印刷制御信号、Sd…駆動信号、Vd…駆動電圧、S1…表面、S2…裏面、Tin1…第1入力端子、Tin2…第2入力端子、Tin…データ入力端子、Tout…データ出力端子、Tc…制御端子、Td…駆動端子、Td1~Td3…駆動端子群、Tv…定電位端子、Tp…電源端子、Tg…グランド端子、Tdm…ダミー端子、Lt1,Lt2,Lt31~Lt34…差動線路、Ld…駆動用定電位ライン、W1…第1配線層、W2…第2配線層、Wv…定電位配線、Wp…電源配線、Wp1,Wp11,Wp12…第1電源配線、Wp2,Wp21,Wp22…第2電源配線、Wg…グランド配線、Wg1…第1グランド配線、Wg2…第2グランド配線、Wd…駆動信号配線、Wdm1…ダミー端子接続配線、Wr2…リターン配線、dp21,dp22,dg2…配線幅、TH1p,TH1g…第1スルーホール、TH2…第2スルーホール、Am…被実装領域。