(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077943
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】フレキシブル基板、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240603BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190197
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲右
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056HA52
2C057AG84
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上させることが可能なフレキシブル基板等を提供する。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係るフレキシブル基板は、基板面と直交する方向に沿って互いに対向する第1配線層および第2配線層と、第1配線層に配置されており、駆動信号を生成する1または複数の駆動デバイスと、第1配線層に配置されており、複数の個別配線を含む個別配線領域と、第2配線層に配置されており、1または複数の共通配線を含む共通配線領域と、基板面内において個別配線領域および共通配線領域よりも噴射部側に配置されており、複数の個別配線および1または複数の共通配線の各々に対して個別に電気的接続された複数の圧着電極を含む圧着電極部と、個別配線領域および共通配線領域の少なくとも一部分同士が基板面内で互いに重なっているオーバーラップ領域と、を備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射部を有する液体噴射ヘッドに適用する駆動信号を出力するフレキシブル基板であって、
基板面と直交する方向に沿って互いに対向する、第1配線層および第2配線層と、
前記第1配線層に配置されており、前記噴射部から液体を噴射させるための前記駆動信号を生成する、1または複数の駆動デバイスと、
前記第1配線層に配置されており、前記駆動デバイスから前記噴射部内の複数の個別電極へ向けて前記駆動信号を個別に伝送する複数の個別配線を含む、個別配線領域と、
前記第2配線層に配置されており、前記噴射部内の共通電極に対して電気的に接続される1または複数の共通配線を含む、共通配線領域と、
前記基板面内において、前記個別配線領域および前記共通配線領域よりも前記噴射部側に配置されており、前記複数の個別配線および前記1または複数の共通配線の各々に対して個別に電気的接続された複数の圧着電極を含む、圧着電極部と、
前記個別配線領域および前記共通配線領域の少なくとも一部分同士が、前記基板面内で互いに重なっているオーバーラップ領域と
を備えたフレキシブル基板。
【請求項2】
前記複数の個別配線が、前記駆動デバイスの長手方向に沿って並んで配置されており、
前記オーバーラップ領域が、前記基板面内において、前記長手方向に沿った中央領域を少なくとも含んで、配置されている
請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項3】
前記共通配線領域の面積が、前記個別配線領域の面積よりも大きくなっていると共に、
前記個別配線領域の全領域が、前記オーバーラップ領域となっている
請求項2に記載のフレキシブル基板。
【請求項4】
前記共通配線領域内における前記共通配線の合計面積が、前記個別配線領域内における前記個別配線の合計面積以上である
請求項3に記載のフレキシブル基板。
【請求項5】
前記共通配線領域における前記オーバーラップ領域は、前記共通配線の配置領域と、前記共通配線の非配置領域と、を有している
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブル基板。
【請求項6】
前記複数の個別配線が、前記駆動デバイスの長手方向に沿って並んで配置されており、
前記共通配線の配置領域は、前記個別配線の延在方向に沿って延在すると共に前記長手方向に沿って並んで配置された、複数の延在領域を含んでいる
請求項5に記載のフレキシブル基板。
【請求項7】
前記複数の延在領域は、前記複数の個別配線と個別に重なっている領域を、前記オーバーラップ領域として含んでいる
請求項6に記載のフレキシブル基板。
【請求項8】
前記複数の延在領域の個数が、前記複数の個別配線の個数よりも少なくなっていると共に、
前記複数の延在領域における前記長手方向に沿った合計幅が、前記複数の個別配線における前記長手方向に沿った合計幅よりも、大きくなっている
請求項6に記載のフレキシブル基板。
【請求項9】
前記共通配線の配置領域は、前記共通配線が網目状に配置された領域を含んでいる
請求項5に記載のフレキシブル基板。
【請求項10】
前記第1配線層および前記第2配線層を含む複数の配線層が、前記基板面と直交する方向に沿って互いに対向していると共に、
前記第1配線層と前記第2配線層とが、前記基板面と直交する方向に沿って、隣接配置されている
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブル基板。
【請求項11】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板から出力される前記駆動信号に基づいて、前記液体を噴射する前記噴射部と
を備えた液体噴射ヘッド。
【請求項12】
請求項11に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブル基板、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドを備えた液体噴射記録装置が様々な分野に利用されており、液体噴射ヘッドとしては、各種方式のものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような液体噴射ヘッドでは一般に、信頼性を向上させることが求められている。信頼性を向上させることが可能な、フレキシブル基板、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係るフレキシブル基板は、噴射部を有する液体噴射ヘッドに適用する駆動信号を出力するフレキシブル基板であって、基板面と直交する方向に沿って互いに対向する第1配線層および第2配線層と、第1配線層に配置されており、噴射部から液体を噴射させるための駆動信号を生成する1または複数の駆動デバイスと、第1配線層に配置されており、駆動デバイスから噴射部内の複数の個別電極へ向けて駆動信号を個別に伝送する複数の個別配線を含む個別配線領域と、第2配線層に配置されており、噴射部内の共通電極に対して電気的に接続される1または複数の共通配線を含む共通配線領域と、基板面内において個別配線領域および共通配線領域よりも噴射部側に配置されており、複数の個別配線および1または複数の共通配線の各々に対して個別に電気的接続された複数の圧着電極を含む圧着電極部と、個別配線領域および共通配線領域の少なくとも一部分同士が基板面内で互いに重なっているオーバーラップ領域と、を備えたものである。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドは、上記本開示の一実施の形態に係るフレキシブル基板と、このフレキシブル基板から出力される駆動信号に基づいて液体を噴射する噴射部と、を備えたものである。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置は、上記本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施の形態に係るフレキシブル基板、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置によれば、信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る液体噴射装置の概略構成例を表すブロック図である。
【
図2】
図1に示した液体噴射ヘッドの概略構成例を模式的に表す斜視図である。
【
図3】
図2に示した液体噴射ヘッドの構成例を模式的に表す断面図である。
【
図4】
図2,
図3に示したフレキシブル基板における表面側の構成例を模式的に表す平面図である。
【
図5】
図2,
図3に示したフレキシブル基板における裏面側の構成例を模式的に表す平面図である。
【
図6】実施例1に係る共通配線領域等の構成例を模式的に表す平面図である。
【
図7】実施例2に係る共通配線領域等の構成例を模式的に表す平面図である。
【
図8】実施例3に係る共通配線領域等の構成例を模式的に表す平面図である。
【
図9】実施例4に係る共通配線領域等の構成例を模式的に表す平面図である。
【
図10】変形例1に係る共通配線領域等の構成例を模式的に表す平面図である。
【
図11】変形例2に係るフレキシブル基板の構成例を模式的に表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(各種形状のオーバーラップ領域を有するフレキシブル基板の例)
2.変形例
変形例1(個別配線領域の一部領域がオーバーラップ領域ではない場合の例)
変形例2(フレキシブル基板を実装基板と中継基板とを用いて構成した場合の例)
3.その他の変形例
【0011】
<1.実施の形態>
[プリンタ5の概略構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ5の概略構成例を、ブロック図で表したものである。
図2は、
図1に示した液体噴射ヘッドとしてのインクジェットヘッド1の概略構成例を、模式的に斜視図で表したものである。
図3は、
図2に示したインクジェットヘッド1の構成例を、模式的に断面図(Y-Z断面図)で表したものである。なお、本明細書の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
プリンタ5は、後述するインク9を利用して、被記録媒体(例えば、
図1中に示した記録紙P)に対し、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。このプリンタ5は、
図1に示したように、インクジェットヘッド1、印刷制御部2およびインクタンク3を備えている。
【0013】
なお、インクジェットヘッド1は、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応し、プリンタ5は、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。また、インク9は、本開示における「液体」の一具体例に対応している。
【0014】
(A.印刷制御部2)
印刷制御部2は、インクジェットヘッド1に対して、各種の情報(データ)を供給するものである。具体的には
図1に示したように、印刷制御部2は、インクジェットヘッド1内(後述する駆動デバイス41等)に対してそれぞれ、印刷制御信号Scを供給するようになっている。なお、この印刷制御信号Scには、例えば、画像データ、吐出タイミング信号、および、インクジェットヘッド1を動作させるための電源電圧等が、含まれるようになっている。
【0015】
(B.インクタンク3)
インクタンク3は、インク9を内部に収容するタンクである。このインクタンク3内のインク9は、
図1に示したように、インク供給管30を介して、インクジェットヘッド1内(後述する噴射部11)へと供給されるようになっている。なお、このようなインク供給管30は、例えば、可撓性を有するフレキシブルホースにより構成されている。
【0016】
(C.インクジェットヘッド1)
インクジェットヘッド1は、
図1中の破線の矢印で示したように、後述する複数のノズル孔Hnから記録紙Pに対して液滴状のインク9を噴射(吐出)して、画像や文字等の記録を行うヘッドである。このインクジェットヘッド1は、例えば
図2,
図3に示したように、1つの噴射部11と、1つのI/F(インターフェース)基板12と、4つのフレキシブル基板13a,13b,13c,13dと、2つの冷却ユニット141,142とを、備えている。
【0017】
(C-1.I/F基板12)
I/F基板12は、
図2,
図3に示したように、2つのコネクタ10と、4つのコネクタ120a,120b,120c,120dと、回路配置領域121とを、備えている。
【0018】
コネクタ10は、
図2に示したように、印刷制御部2からインクジェットヘッド1(後述する各フレキシブル基板13a,13b,13c,13d)へ向けて供給される、前述した印刷制御信号Scを入力する部分(コネクタ部分)である。コネクタ120a,120b,120c,120dはそれぞれ、I/F基板12と、フレキシブル基板13a,13b,13c,13dとの間をそれぞれ、電気的に接続する部分(コネクタ部分)である。
【0019】
回路配置領域121は、I/F基板12上において各種の回路が配置されている領域である。なお、I/F基板12上の他の領域にも、このような回路配置領域が設けられているようにしてもよい。
【0020】
(C-2.噴射部11)
噴射部11は、
図1に示したように、複数のノズル孔Hnを有しており、これらのノズル孔Hnからインク9を噴射する部分である。このようなインク9の噴射は、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13d上の後述する駆動デバイス41から供給される駆動信号Sd(駆動電圧Vd)に従って、行われるようになっている(
図1参照)。
【0021】
このような噴射部11は、
図1に示したように、アクチュエータプレート111およびノズルプレート112を含んで構成されている。
【0022】
(ノズルプレート112)
ノズルプレート112は、ポリイミド等のフィルム材または金属材料により構成されたプレートであり、
図1に示したように、上記した複数のノズル孔Hnを有している。これらのノズル孔Hnは、所定の間隔をおいて並んで形成されており、例えば円形状となっている。
【0023】
具体的には、
図2に示した噴射部11の例では、ノズルプレート112内における複数のノズル孔Hnが、列方向(X軸方向)に沿ってそれぞれ配置された、複数のノズル列(4つのノズル列)により構成されている。また、これらの4つのノズル列同士は、列方向と直交する方向(Y軸方向)に沿って、並んで配置されている。
【0024】
(アクチュエータプレート111)
アクチュエータプレート111は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料により構成されたプレートである。このアクチュエータプレート111には、複数のチャネル(圧力室)が設けられている。これらのチャネルは、インク9に対して圧力を印加するための部分であり、所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルは、圧電体からなる駆動壁(不図示)によってそれぞれ画成されており、断面視にて凹状の溝部となっている。
【0025】
このようなチャネルには、インク9を吐出させるための吐出チャネルと、インク9を吐出させないダミーチャネル(非吐出チャネル)とが、存在している。言い換えると、吐出チャネルにはインク9が充填される一方、ダミーチャネルにはインク9が充填されないようになっている。なお、各吐出チャネルに対するインク9の充填は、例えば、そのような各吐出チャネルに共通して連通する流路(共通流路)を介して、行われるようになっている。また、各吐出チャネルは、ノズルプレート112におけるノズル孔Hnと個別に連通している一方、各ダミーチャネルは、ノズル孔Hnには連通しないようになっている。これらの吐出チャネルとダミーチャネルとは、前述した列方向(X軸方向)に沿って、交互に並んで配置されている。
【0026】
また、上記した駆動壁における対向する内側面にはそれぞれ、駆動電極が設けられている。この駆動電極には、吐出チャネルに面する内側面に設けられたコモン電極(共通電極)と、ダミーチャネルに面する内側面に設けられたアクティブ電極(個別電極)とが、存在している。これらの駆動電極と、後述する駆動デバイス41との間は、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dを介して、電気的に接続されている。これにより、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dを介して、駆動デバイス41から各駆動電極に対し、前述した駆動電圧Vd(駆動信号Sd)が印加されるようになっている(
図1参照)。
【0027】
(C-3.フレキシブル基板13a,13b,13c,13d)
フレキシブル基板13a,13b,13c,13dはそれぞれ、
図2,
図3に示したように、I/F基板12と噴射部11との間を電気的に接続する基板である。これらのフレキシブル基板13a,13b,13c,13dはそれぞれ、前述したノズルプレート112における4列のノズル列ごとのインク9の噴射動作を、個別に制御するようになっている。また、例えば
図3中の符号P1a,P1b,P1c,P1dにて示したように、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dが噴射部11と接続する箇所付近(圧着電極部433付近)では、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dが、折り曲げられるようになっている。なお、圧着電極部433と噴射部11との間は、例えばACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電フィルム)を用いた熱圧着によって、互いに電気的接続がなされるようになっている。
【0028】
このようなフレキシブル基板13a,13b,13c,13d(後述する表面S1側の第1配線層上)にはそれぞれ、駆動デバイス41が個別に実装されている(
図3参照)。これらの駆動デバイス41はそれぞれ、噴射部11における対応するノズル列内のノズル孔Hnからインク9を噴射させるための、駆動信号Sd(駆動電圧Vd)を出力するデバイスである。したがって、各フレキシブル基板13a,13b,13c,13dからは、このような駆動信号Sdが、噴射部11に対して出力されるようになっている。なお、このような各駆動デバイス41は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成されている。
【0029】
また、これらの各駆動デバイス41は、前述した冷却ユニット141,142によって冷却されるようになっている。具体的には
図3に示したように、フレキシブル基板13a,13b上の駆動デバイス41同士の間に、冷却ユニット141が固定配置されており、この冷却ユニット141がこれらの駆動デバイス41に対してそれぞれ押し当てられることで、各駆動デバイス41が冷却されている。同様に、フレキシブル基板13c,13d上の駆動デバイス41同士の間に、冷却ユニット142が固定配置されており、この冷却ユニット142がこれらの駆動デバイス41に対してそれぞれ押し当てられることで、各駆動デバイス41が冷却されている。なお、このような冷却ユニット141,142はそれぞれ、各種方式の冷却機構を用いて構成することが可能である。
【0030】
[フレキシブル基板13a,13b,13c,13dの詳細構成]
続いて、
図1~
図3に加えて
図4,
図5を参照して、前述したフレキシブル基板13a,13b,13c,13dの詳細構成例について、説明する。
【0031】
図4,
図5はそれぞれ、
図2,
図3に示したフレキシブル基板13a~13d(フレキシブル基板13)の詳細構成例を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したものである。具体的には、
図4は、このフレキシブル基板13における表面S1側の構成例を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したものである。また、
図5は、このフレキシブル基板13における裏面S2側の構成例を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したものである。
【0032】
まず、このフレキシブル基板13は、上記した表面S1および裏面S2を含む、複数層構造(
図4,
図5の例では2層構造)の両面基板となっている。具体的には、このフレキシブル基板13は、そのような2層構造の配線層として、基板面(Z―X平面)と直交する方向(Y軸方向)に沿って互いに対向する、表面S1側の第1配線層と、裏面S2側の第2配線層とを、有している。つまり、
図4,
図5の例では、これらの第1配線層と第2配線層とが、基板面と直交する方向(Y軸方向)に沿って、隣接配置されている。
【0033】
なお、フレキシブル基板13における配線層が、例えば、上記した第1配線層および第2配線層を含む、3層以上の構造であってもよい。この場合においても、これらの第1配線層と第2配線層とが、基板面と直交する方向(Y軸方向)に沿って隣接配置されているのが望ましい。
【0034】
また、このフレキシブル基板13は、
図4,
図5に示したように、接続電極130と、複数の個別配線42aを含む個別配線領域Aaと、1または複数の共通配線42cを含む共通配線領域Acと、端部共通配線42ceと、前述した圧着電極部433とを、更に有している。
【0035】
接続電極130は、フレキシブル基板13の表面S1におけるI/F基板12側の端部領域に配置されており(
図4参照)、フレキシブル基板13とI/F基板12との間を、電気的に接続するための電極である。
【0036】
個別配線領域Aaは、
図4に示したように、フレキシブル基板13の表面S1側に配置されており、複数の個別配線42aを含む領域である。この個別配線領域Aaは、
図4の例では略矩形状(台形状)となっており、その長手方向(X軸方向)に沿って、中央領域A1と、この中央領域A1の両端側に位置する端部領域A2,A3とを、有している。また、上記した複数の個別配線42aは、駆動デバイス41の長手方向(X軸方向)に沿って並んで配置されており、この駆動デバイス41から噴射部11内の前述した複数の個別電極へ向けて、駆動信号Sdを個別に伝送するようになっている。
【0037】
共通配線領域Acは、
図5に示したように、フレキシブル基板13の裏面S2側に配置されており、1または複数の共通配線42cを含む領域である。この共通配線領域Acも、
図5の例では略矩形状(台形状)となっていると共に、この
図5の例では、共通配線領域Acの面積SAcが、上記した個別配線領域Aaの面積SAaよりも大きくなっている(SAc>SAa)。また、上記した1または複数の共通配線42cはそれぞれ、噴射部11内の前述した共通電極に対して、電気的に接続されている。なお、このような共通配線領域Acの構成例の詳細については、後述する(実施例1~4:
図6~
図9)。
【0038】
端部共通配線42ceは、上記した1または複数の共通配線42cと電気的に接続されている配線である。この端部共通配線42ceは、
図4,
図5に示したように、フレキシブル基板13における表面S1側および裏面S2側の双方において、駆動デバイス41の長手方向(X軸方向)に沿った両端の領域(端部領域)に、それぞれ配置されている。具体的には、これら両端の端部共通配線42ceはそれぞれ、フレキシブル基板13の表面S1側および裏面S2側において、駆動デバイス41の短手方向(Z軸方向)に沿って延在している。そして、表面S1側の端部共通配線42ceと、裏面S2側の端部共通配線42ceとが、スルーホール領域Ah(
図4,
図5参照)にて、互いに電気的に接続されている。なお、この端部共通配線42ce上のスルーホール領域Ah以外にも、表面S1側と裏面S1側との電気的接続を行うためのスルーホールを、設けるようにしてもよい。
【0039】
圧着電極部433は、
図4に示したように、フレキシブル基板13の基板面内において、上記した個別配線領域Aaおよび共通配線領域Acよりも、噴射部11側に配置されている。なお、この圧着電極部433の配置領域は、以下説明するオーバーラップ領域Aolとは、異なる領域となっている(
図4参照)。この圧着電極部433は、上記した複数の個別配線42aおよび1または複数の共通配線42cの各々に対して個別に電気的接続された、複数の圧着電極を含んでいる。また、この圧着電極部433におけるスルーホール領域433h(
図5参照)にて、上記した端部共通配線42ceと前述した共通電極とが、電気的に接続されるようになっている。このような圧着電極部433の圧着電極を介して、駆動デバイス41から各個別配線42aを介して伝送された駆動信号Sdがそれぞれ、フレキシブル基板13から噴射部11側へと供給されるようになっている。
【0040】
ここで、本実施の形態のフレキシブル基板13では、
図4,
図5に示したように、上記した個別配線領域Aaと共通配線領域Acとの少なくとも一部分同士が、基板面内のオーバーラップ領域Aolにおいて、互いに重なっている。また、
図4,
図5の例では、このオーバーラップ領域Aolが、フレキシブル基板13の基板面内において、前述した中央領域A1を少なくとも含んで、配置されている。具体的には、
図4,
図5の例では、このオーバーラップ領域Aolは、中央領域A1と、前述した端部領域A2,A3とを、それぞれ含んで配置されている。また、
図4,
図5の例では、前述したように、共通配線領域Acの面積SAcが個別配線領域Aaの面積SAaよりも大きくなっている(SAc>SAa)と共に、この個別配線領域Aaの全領域が、上記したオーバーラップ領域Aolとなっている。更に、このフレキシブル基板13では、例えば、共通配線領域Ac内における共通配線42cの合計面積Stc(1または複数の共通配線42cにおける面積の合計値)が、個別配線領域Aa内における個別配線42aの合計面積Sta(複数の個別配線42aにおける面積の合計値)以上となっている(Stc≧Sta)。
【0041】
[共通配線領域Ac,オーバーラップ領域Aolに関する実施例]
ここで、
図1~
図5に加えて
図6~
図9を参照して、上記した共通配線領域Acおよびオーバーラップ領域Aolに関する実施例(実施例1~4)について、詳細に説明する。
【0042】
図6~
図9はそれぞれ、実施例1~4に係る共通配線領域Acおよびオーバーラップ領域Aolの構成例(裏面S2側での構成例)を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したものである。具体的には、
図6は、実施例1に係るフレキシブル基板13Aにおける共通配線領域Acおよびオーバーラップ領域Aolの構成例を、
図7は、実施例2に係るフレキシブル基板13Bにおける共通配線領域Acおよびオーバーラップ領域Aolの構成例を、それぞれ示している。同様に、
図8は、実施例3に係るフレキシブル基板13Cにおける共通配線領域Acおよびオーバーラップ領域Aolの構成例を、
図7は、実施例4に係るフレキシブル基板13Dにおける共通配線領域Acおよびオーバーラップ領域Aolの構成例を、それぞれ示している。
【0043】
(実施例1)
まず、
図6に示した実施例1のフレキシブル基板13Aでは、共通配線領域Acにおけるオーバーラップ領域Aolが、共通配線42cの配置領域のみを有している(共通配線領域Acの全領域が、共通配線42cの配置領域となっている)。つまり、この実施例1のオーバーラップ領域Aolでは、共通配線42cがいわゆる「べた配線」となっている。言い換えると、この実施例1では、個別配線領域Aa(
図4参照)が共通配線42cと完全に重なった状態となっている。
【0044】
(実施例2)
一方、
図7に示した実施例2のフレキシブル基板13Bでは、実施例1のフレキシブル基板13Aとは異なり、共通配線領域Acにおけるオーバーラップ領域Aolが、共通配線42cの配置領域Ac1と、共通配線42cの非配置領域Ac2とを、有している。また、この実施例2では、共通配線42cの配置領域Ac1が、
図4に示した個別配線42aの延在方向(Z軸方向)に沿って延在すると共に、駆動デバイス41の長手方向(X軸方向)に沿って並んで配置された、複数の延在領域Aeを含んでいる。具体的には、
図7の例では、X軸方向に沿って並んで配置された、5つの延在領域Aeが設けられている。
【0045】
なお、このような延在領域Aeの形状としては、例えば、多角形状(三角形、四角形、六角形、台形など)の他、例えば、曲線を含む形状であってもよい。また、延在領域Aeの個数が増加したほうが、後述する電気的なリターン経路が良好となるため、望ましいと言える。
【0046】
また、この
図7に示した実施例2では、以下説明する実施例3(
図8)の場合とは異なり、上記した複数の延在領域Aeの個数(
図7の例では5つ)が、複数の個別配線42aの個数(
図4参照)よりも、少なくなっている。そしてこの実施例2では、これら複数の延在領域AeにおけるX軸方向(駆動デバイス41の長手方向)に沿った合計幅(各延在領域Aeの幅Weの合計値)が、複数の個別配線42aにおけるX軸方向に沿った合計幅よりも、大きくなっている。
【0047】
(実施例3)
図8に示した実施例3のフレキシブル基板13Cでは、まず、実施例2のフレキシブル基板13Bと同様に、共通配線領域Acにおけるオーバーラップ領域Aolが、共通配線42cの配置領域Ac1と、共通配線42cの非配置領域Ac2とを、有している。また、この実施例3においても実施例2と同様に、共通配線42cの配置領域Ac1が、上記した複数の延在領域Aeを含んでいる。
【0048】
ただし、この実施例3では実施例2とは異なり、これら複数の延在領域Aeの個数が、複数の個別配線42aの個数(
図4参照)と、等しくなっている。つまり、共通配線領域Acに含まれる複数の延在領域Aeと、複数の個別配線42aとが、1対1の関係で完全な対をなしている。そして、この実施例3では、これら複数の延在領域Aeは、複数の個別配線42aと個別に重なっている領域を、オーバーラップ領域Aolとして含むようになっている。
【0049】
(実施例4)
図9に示した実施例4のフレキシブル基板13Dにおいても、実施例2,3のフレキシブル基板13B,13Cと同様に、共通配線領域Acにおけるオーバーラップ領域Aolが、共通配線42cの配置領域Ac1と、共通配線42cの非配置領域Ac2とを、有している。
【0050】
ただし、この実施例4では実施例2,3とは異なり、共通配線42cの配置領域Ac1が、実施例2,3のような複数の延在領域Aeではなく、共通配線42cが網目状に配置された領域(網目状領域Am)を、含んでいる。なお、このような網目状領域Amにおける網目の粗さが、粗くなり過ぎると、後述するリターン経路としての性能が下がるため、フレキシブル基板13Dにおける剛性を大きく下げたい場合には、不向きであると言える。
【0051】
[動作および作用・効果]
(A.プリンタ5の基本動作)
このプリンタ5では、以下のようなインクジェットヘッド1によるインク9の噴射動作を用いて、被記録媒体(記録紙P等)に対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。具体的には、本実施の形態のインクジェットヘッド1では、以下のようにして、せん断(シェア)モードを用いたインク9の噴射動作が行われる。
【0052】
まず、各フレキシブル基板13(13a,13b,13c,13d)上の駆動デバイス41はそれぞれ、噴射部11におけるアクチュエータプレート111内の前述した駆動電極(コモン電極およびアクティブ電極)に対し、駆動電圧Vd(駆動信号Sd)を印加する。具体的には、各駆動デバイス41は、前述した吐出チャネルを画成する一対の駆動壁に配置された各駆動電極に対し、駆動電圧Vdを印加する。これにより、これら一対の駆動壁がそれぞれ、その吐出チャネルに隣接するダミーチャネル側へ、突出するように変形する。
【0053】
このとき、駆動壁における深さ方向の中間位置を中心として、駆動壁がV字状に屈曲変形することになる。そして、このような駆動壁の屈曲変形により、吐出チャネルがあたかも膨らむように変形する。このように、一対の駆動壁での圧電厚み滑り効果による屈曲変形によって、吐出チャネルの容積が増大する。そして、吐出チャネルの容積が増大することにより、インク9が吐出チャネル内へ誘導されることになる。
【0054】
次いで、このようにして吐出チャネル内へ誘導されたインク9は、圧力波となって吐出チャネルの内部に伝播する。そして、ノズルプレート112のノズル孔Hnにこの圧力波が到達したタイミング(またはその近傍のタイミング)で、駆動電極に印加される駆動電圧Vdが、0(ゼロ)Vとなる。これにより、上記した屈曲変形の状態から駆動壁が復元する結果、一旦増大した吐出チャネルの容積が、再び元に戻ることになる。
【0055】
このようにして、吐出チャネルの容積が元に戻る過程で、吐出チャネル内部の圧力が増加し、吐出チャネル内のインク9が加圧される。その結果、液滴状のインク9が、ノズル孔Hnを通って外部へと(記録紙Pへ向けて)吐出される(
図1参照)。このようにしてインクジェットヘッド1におけるインク9の噴射動作(吐出動作)がなされ、その結果、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作が行われる。
【0056】
(B.インクジェットヘッド1における作用・効果)
続いて、本実施の形態のインクジェットヘッド1における作用および効果について、詳細に説明する。
【0057】
(B-1.従来のインクジェットヘッドについて)
まず、従来の一般的なインクジェットヘッドにて使用される駆動基板(フレキシブル基板)では、多数のノズル孔を同時に動作させる要求から、以下のようになっている。すなわち、各ノズル孔の駆動信号を出力する駆動デバイスからアクチュエータプレートへと、非常に多くの本数の個別配線がフレキシブル基板上に配置される。そして、この個別配線に対応する共通配線も、フレキシブル基板上に配置する必要がある。この共通配線は個別配線に対するリターン経路であることから、例えば、個別配線および共通配線がアクチュエータプレートへと接続され、共通配線がいずれかの経路を通って、入力側の電源や駆動デバイスなどに接続される必要がある。
【0058】
ところが、例えば、共通配線が個別配線に近接していない状態で配置される状態では、個別配線に流れる電流と配線自体に存在するインダクタンス成分とにより、いわゆる駆動ノイズが配線周囲に現れるという問題が生じ得る。この駆動ノイズが大きい場合、周囲の他の電子回路の誤動作などが問題となる。また、共通配線に流れる電流の経路が、例えばフレキシブル基板の端部領域に主に存在する場合、その電流経路から遠いノズル孔と近いノズル孔との間で、インクの吐出性能に差が生じることがあり、印刷品位の低下を引き起こすおそれがある。
【0059】
このような電子回路の誤動作や印刷品位の低下を防ぐためには、共通配線は個別配線に対して近接しているようにフレキシブル基板上に配置され、基板上の端部領域に偏在しないことが望ましいと言える。その一方で、インクジェットヘッドにて使用されるフレキシブル基板では、共通配線を電気的に安定させるために、非常に広大なべた層などを加えると、フレキシブル基板の剛性が増大することから、インクジェットヘッドの組み立て時に取り回しが難しくなる。このため、場合によっては製造不良を引き起こしたり、剛性の増大に起因して、電気的な接続点(圧着部分やコネクタ部分)が破損し易くなってしまう。
【0060】
これらのことから、従来のインクジェットヘッドにおけるフレキシブル基板では、インクジェットヘッドの動作の安定化を図ることが困難となり、信頼性の低下を招くおそれがあると言える。
【0061】
(B-2.作用・効果)
これに対して、本実施の形態のインクジェットヘッド1では、以下のような構成となっていることで、例えば、以下のような作用および効果が得られる。
【0062】
すなわち、まず、上記したフレキシブル基板13,13A~13Dではそれぞれ、複数の個別配線42aを含む個別配線領域Aaと、1または複数の共通配線42cを含む共通配線領域Acとの少なくとも一部分同士が、基板面内のオーバーラップ領域Aolにおいて、互いに重なっている。
【0063】
これにより本実施の形態では、基板面内にそのようなオーバーラップ領域Aolが設けられていない場合(例えば上記した従来例のように、共通配線42cが基板面内の端部領域に主に配置されているような場合)とは異なり、以下のようになる。すなわち、個別配線42aに対するリターン経路として機能する共通配線42cが、個別配線42aの近傍に配置されることになる。したがって本実施の形態では、上記したような、インクジェットヘッド1の駆動に伴うノイズ(駆動ノイズ)の発生原因となる、配線のインダクタンス成分が抑えられるため、インクジェットヘッド1の動作の安定化を図ることができる。その結果、本実施の形態では、インクジェットヘッド1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態では、上記したオーバーラップ領域Aolが、基板面内の中央領域A1付近を少なくとも含んで配置されていることから(
図4参照)、上記したリターン経路として機能する共通配線42cが、個別配線42aの近傍に配置され易くなる。これにより、上記した配線のインダクタンス成分が更に抑えられる結果、インクジェットヘッド1の動作の更なる安定化を図ることができ、信頼性を更に向上させることが可能となる。
【0065】
更に、本実施の形態では、個別配線領域Aaの全領域がオーバーラップ領域Aolとなっているため(
図4参照)、上記した配線のインダクタンス成分を抑制する効果が、より強固となる。その結果、インクジェットヘッド1の動作がより一層安定化し、信頼性をより一層向上させることが可能となる。
【0066】
加えて、本実施の形態では、共通配線42cの合計面積Stcが、個別配線42aの合計面積Sta以上である(Stc≧Sta:
図5参照)場合には、以下のようになる。すなわち、共通配線42cを流れる電流の許容値が、個別配線42aを流れる電流の許容値と同等以上となり、強固なリターン経路を確保できるようになる。その結果、インクジェットヘッド1の動作の更なる安定化を図ることができ、信頼性を更に向上させることが可能となる。
【0067】
また、本実施の形態では、共通配線領域Acにおけるオーバーラップ領域Aolに、共通配線42cの配置領域Ac1に加えて、共通配線42cの非配置領域Ac2も設けられている(実施例2~4:
図7~
図9参照)場合には、以下のようになる。すなわち、例えば実施例1(
図6)のように、共通配線領域Acにおけるオーバーラップ領域Aolに、共通配線42cの配置領域Ac1のみが設けられている(共通配線領域Acの全領域が、共通配線42cの配置領域Ac1となっている)場合と比べ、フレキシブル基板13B~13Dの剛性が抑えられる。つまり、フレキシブル基板13B~13Dの柔軟性が確保され、インクジェットヘッド1の組立時における取り扱い易さが、向上することになる。その結果、上記した配線のインダクタンス成分を抑制して信頼性を向上させつつ、利便性を向上させることも可能となる。
【0068】
更に、本実施の形態では、上記した共通配線42cの配置領域Ac1に、個別配線42aの延在方向(Z軸方向)に沿って延在する複数の延在領域Aeが含まれている(実施例2,3:
図7,
図8参照)場合には、以下のようになる。すなわち、各個別配線42aに対するリターン経路の割り当てが、明確化されると共に、フレキシブル基板13B,13Cにおいて、個別配線42aの延在方向(Z軸方向)に沿った柔軟性が、確保され易くなる。これにより、上記した配線のインダクタンス成分が更に抑制されると共に、インクジェットヘッド1の組立時における取り扱い易さが、更に向上することになる。その結果、信頼性を更に向上させつつ、利便性も更に向上させることも可能となる。
【0069】
加えて、本実施の形態では、上記した複数の延在領域Aeが、複数の個別配線42aと個別に重なる領域をオーバーラップ領域Aolとして含んでいる(実施例3:
図8参照)場合には、以下のようになる。すなわち、上記したリターン経路と個別配線42aとの距離が、より小さく設定されるため、上記した配線のインダクタンス成分が、より一層抑制されることになる。その結果、信頼性を向上させつつ、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態では、上記した複数の延在領域Aeの個数が、複数の個別配線42aの個数よりも少なくなっていると共に、これら複数の延在領域Aeにおける合計幅が、複数の個別配線42aにおける合計幅よりも大きくなっている(実施例2:
図7参照)場合には、以下のようになる。すなわち、上記した配線のインダクタンス成分の抑制により、信頼性を向上させつつ、個別配線42aの延在方向(Z軸方向)に沿った柔軟性が、更に確保され易くなる。その結果、インクジェットヘッド1の組立時における取り扱い易さが更に向上し、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0071】
更に、本実施の形態では、上記した共通配線42cの配置領域Ac1に、共通配線42cが網目状に配置された領域(網目状領域Am)が含まれている(実施例4:
図9参照)場合には、この共通配線42cの配置領域Ac1内で、共通配線42cが均等に配置されることになる。これにより、各個別配線42aに対するリターン経路も、均等に割り当てられるようになるため、上記した配線のインダクタンス成分が更に抑制されると共に、フレキシブル基板13Dの剛性が更に抑えられ、インクジェットヘッド1の組立時における取り扱い易さが、更に向上することになる。その結果、信頼性を更に向上させつつ、利便性も更に向上させることも可能となる。
【0072】
加えて、本実施の形態では、前述した複数の配線層のうちの第1配線層と第2配線層とが、フレキシブル基板13における基板面内と直交する方向(Y軸方向)に沿って、互いに隣接配置されていることから、以下のようになる。すなわち、個別配線42aの配線密度を増加させつつ、個別配線42aと共通配線42cとによって形成されるループ経路を、最も短く設定することができる。その結果、インクジェットヘッド1の動作の更なる安定化を図ることができ、信頼性を更に向上させることが可能となる。
【0073】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1,2)について説明する。なお、以下では、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0074】
[変形例1]
(A.構成)
図10は、変形例1に係るフレキシブル基板13Eにおける共通配線領域Ac等の構成例(裏面S2での構成例)を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したものである。
【0075】
この変形例1のフレキシブル基板13Eでは、まず、実施の形態のフレキシブル基板13(
図5参照)と同様に、個別配線領域Aaと共通配線領域Acとのオーバーラップ領域Aolが、基板面内の中央領域A1付近を少なくとも含んで、配置されている。具体的には、このフレキシブル基板13Eにおいてもフレキシブル基板13と同様に、そのようなオーバーラップ領域Aolが、中央領域A1と端部領域A2,A3とを、それぞれ含んで配置されている。
【0076】
ただし、このフレキシブル基板13Eではフレキシブル基板13とは異なり、共通配線領域Acの面積SAcが、個別配線領域Aaの面積SAaよりも小さくなっている(SAc<SAa)と共に、個別配線領域Aaにおける一部の領域が、オーバーラップ領域Aolとはなっていない。具体的には、
図10の例では、個別配線領域AaにおけるX軸方向に沿った双方の端部付近の一部領域(
図10中の符号P22,P23で示した各領域)が、上記したオーバーラップ領域Aolにおける端部領域A2,A3からは、除外されている。これは、フレキシブル基板13における共通配線領域Ac(
図5参照)が、略矩形状(台形状)であったのに対し、フレキシブル基板13Eにおける共通配線領域Acは、そのような台形状の一部(符号P22,P23で示した各領域)が欠けた、階段状となっているためである。
【0077】
(B.作用・効果)
このような構成の変形例1のフレキシブル基板13Eにおいても、基本的には、実施の形態のフレキシブル基板13と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0078】
なお、実施の形態および変形例1とは異なり、例えば、オーバーラップ領域Aolが、上記した中央領域A1を含んでいないようにしてもよい。つまり、個別配線領域Aaと共通配線領域Acとの少なくとも一部分同士が、基板面内で互いに重なっているのであれば、オーバーラップ領域Aolの形状や大きさ等は、任意に設定することが可能である。
【0079】
[変形例2]
(A.構成)
図11は、変形例2に係るフレキシブル基板13Fの構成例(表面S1側での構成例)を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したものである。具体的には、この
図11では、変形例2に係るフレキシブル基板13Fの構成例を、模式的に分解した状態で示している。なお、
図11中に示した、後述する圧着電極部432の平面構成例は、後述する圧着電極部431の平面構成例との対応関係を分かり易くするため、便宜上、表面S1側から透かして見た配置構成として、示している。また、この
図11では、フレキシブル基板13F(後述する第1フレキシブル基板131および第2フレキシブル基板132)上における各種配線(駆動信号Sdを伝送する配線等)については、便宜上、図示を省略している。
【0080】
図11に示したように、この変形例2のフレキシブル基板13Fは、駆動信号Sdの伝送方向(Z軸方向)に沿って配置された、2つのフレキシブル基板(第1フレキシブル基板131および第2フレキシブル基板132)により構成されている。第1フレキシブル基板131は、I/F基板12側に配置されており、第2フレキシブル基板132は、噴射部11側に配置されている。
【0081】
第1フレキシブル基板131は、表面S1側に駆動デバイス41が実装された基板(実装基板)である。一方、第2フレキシブル基板132は、第1フレキシブル基板131から噴射部11へ向けて、駆動信号Sdを中継して伝送する基板(中継基板)である。
【0082】
(第1フレキシブル基板131)
第1フレキシブル基板131は、
図11に示したように、前述した接続電極130と、上記した駆動デバイス41と、圧着電極部431とを、備えている。
【0083】
接続電極130は、第1フレキシブル基板131におけるI/F基板12側の端部領域に配置されており、第1フレキシブル基板131とI/F基板12との間を、電気的に接続するための電極である。
【0084】
圧着電極部431は、第1フレキシブル基板131の表面S1側において、噴射部11側(第2フレキシブル基板132側)の端部領域に、配置されている。この圧着電極部431は、第2フレキシブル基板132における後述する圧着電極部432との間で、例えば、前述したACFを用いた熱圧着によって、互いに電気的接続がなされるようになっている。
【0085】
(第2フレキシブル基板132)
第2フレキシブル基板132は、
図11に示したように、圧着電極部432と、圧着電極部433とを、備えている。
【0086】
圧着電極部432は、第2フレキシブル基板132の裏面S2側において、第1フレキシブル基板131側の端部領域に、配置されている。この圧着電極部432は、上記したようにして、第1フレキシブル基板131上の圧着電極部431と互いに圧着(熱圧着)されて、電気的接続されるようになっている。なお、圧着電極部431から圧着電極部432を介して伝送された駆動信号Sdは、第2フレキシブル基板132上において、噴射部11側(圧着電極部433側)へ向けて伝送されるようになっている。
【0087】
圧着電極部433は、第2フレキシブル基板132の表面S1側において、噴射部11側の端部領域に、配置されている。この圧着電極部433は、前述したように、噴射部11と互いに圧着(例えば、前述したACFを用いた熱圧着)されて、電気的接続されるようになっている。なお、この圧着電極部433を介して伝送された駆動信号Sdは、噴射部11(前述したアクチュエータプレート111内の駆動電極)へ向けて、伝送されるようになっている。
【0088】
ここで、このような構成のフレキシブル基板13Fにおいても、これまでに説明したフレキシブル基板13,13A~13Eと同様に、前述したオーバーラップ領域Aolが、設けられている。具体的には、上記した第1フレキシブル基板131および第2フレキシブル基板132において、オーバーラップ領域Aolがそれぞれ設けられている。
【0089】
なお、第1フレキシブル基板131上のオーバーラップ領域Aolと、第2フレキシブル基板132上のオーバーラップ領域Aolとで、例えば前述した実施例1~4のうちの、互いに異なる種類のオーバーラップ領域Aolを、設けるようにしてもよい。この場合、例えば、第2フレキシブル基板132上のオーバーラップ領域Aolについては、この第2フレキシブル基板132の剛性が相対的に小さくなるように、オーバーラップ領域Aolを選択するのが望ましい。一方、第1フレキシブル基板131上のオーバーラップ領域Aolについては、この第1フレキシブル基板131の剛性が相対的に大きくなるように、オーバーラップ領域Aolを選択しても問題無い。
【0090】
(B.作用・効果)
このような構成の変形例2のフレキシブル基板13Fにおいても、基本的には、実施の形態や変形例1と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0091】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態、実施例および変形例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0092】
例えば、上記実施の形態等では、プリンタおよびインクジェットヘッドにおける各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0093】
具体的には、例えば、上記実施の形態等では、フレキシブル基板(駆動基板)、駆動デバイスおよび各種の配線等の構成例(形状、配置、個数等)について、具体的に挙げて説明したが、これらの構成例は、上記実施の形態等で説明したものには限られない。例えば、上記実施の形態等では、複数の駆動基板がインクジェットヘッド内に設けられている場合の例について説明したが、この例には限られず、例えば、インクジェットヘッド内に1つの駆動基板のみが設けられているようにしてもよい。また、上記実施の形態等では、駆動基板上に1つの駆動デバイスが設けられている場合の例について説明したが、この例には限られず、例えば、駆動基板上に複数の駆動デバイスが設けられているようにしてもよい。更に、上記実施の形態等では、駆動デバイスの形状を長方形状としているが、この例には限られず、例えば正方形状であってもよい。加えて、上記実施の形態等では、各駆動基板における基板面上に、各駆動デバイスがフリップチップ実装されている場合の例について説明したが、この例には限られず、例えば、各駆動デバイスが基板面上に、他の実装方法(半田による挿入実装、表面実装、ワイヤボンディング実装など)によって実装されているようにしてもよい。
【0094】
更に、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの数値例については、実施の形態等で説明した数値例には限られず、他の数値であってもよい。
【0095】
また、インクジェットヘッドの構造としては、各タイプのものを適用することが可能である。すなわち、例えば、アクチュエータプレート111における各吐出チャネルの延在方向の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。あるいは、例えば、各吐出チャネルの延在方向に沿ってインク9を吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。更には、プリンタの方式としても、上記実施の形態等で説明した方式には限られず、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)方式など、各種の方式を適用することが可能である。
【0096】
更に、例えば、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッド、あるいは、インク9を循環させずに利用する、非循環式のインクジェットヘッドのいずれであっても、本開示を適用することが可能である。
【0097】
また、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0098】
更に、上記実施の形態等では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、プリンタ5(インクジェットプリンタ)を挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「液体噴射ヘッド」(インクジェットヘッド)を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「液体噴射ヘッド」を適用するようにしてもよい。
【0099】
加えて、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0100】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0101】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
噴射部を有する液体噴射ヘッドに適用する駆動信号を出力するフレキシブル基板であって、
基板面と直交する方向に沿って互いに対向する、第1配線層および第2配線層と、
前記第1配線層に配置されており、前記噴射部から液体を噴射させるための前記駆動信号を生成する、1または複数の駆動デバイスと、
前記第1配線層に配置されており、前記駆動デバイスから前記噴射部内の複数の個別電極へ向けて前記駆動信号を個別に伝送する複数の個別配線を含む、個別配線領域と、
前記第2配線層に配置されており、前記噴射部内の共通電極に対して電気的に接続される1または複数の共通配線を含む、共通配線領域と、
前記基板面内において、前記個別配線領域および前記共通配線領域よりも前記噴射部側に配置されており、前記複数の個別配線および前記1または複数の共通配線の各々に対して個別に電気的接続された複数の圧着電極を含む、圧着電極部と、
前記個別配線領域および前記共通配線領域の少なくとも一部分同士が、前記基板面内で互いに重なっているオーバーラップ領域と
を備えたフレキシブル基板。
(2)
前記複数の個別配線が、前記駆動デバイスの長手方向に沿って並んで配置されており、
前記オーバーラップ領域が、前記基板面内において、前記長手方向に沿った中央領域を少なくとも含んで、配置されている
上記(1)に記載のフレキシブル基板。
(3)
前記共通配線領域の面積が、前記個別配線領域の面積よりも大きくなっていると共に、
前記個別配線領域の全領域が、前記オーバーラップ領域となっている
上記(2)に記載のフレキシブル基板。
(4)
前記共通配線領域内における前記共通配線の合計面積が、前記個別配線領域内における前記個別配線の合計面積以上である
上記(3)に記載のフレキシブル基板。
(5)
前記共通配線領域における前記オーバーラップ領域は、前記共通配線の配置領域と、前記共通配線の非配置領域と、を有している
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のフレキシブル基板。
(6)
前記複数の個別配線が、前記駆動デバイスの長手方向に沿って並んで配置されており、
前記共通配線の配置領域は、前記個別配線の延在方向に沿って延在すると共に前記長手方向に沿って並んで配置された、複数の延在領域を含んでいる
上記(5)に記載のフレキシブル基板。
(7)
前記複数の延在領域は、前記複数の個別配線と個別に重なっている領域を、前記オーバーラップ領域として含んでいる
上記(6)に記載のフレキシブル基板。
(8)
前記複数の延在領域の個数が、前記複数の個別配線の個数よりも少なくなっていると共に、
前記複数の延在領域における前記長手方向に沿った合計幅が、前記複数の個別配線における前記長手方向に沿った合計幅よりも、大きくなっている
上記(6)に記載のフレキシブル基板。
(9)
前記共通配線の配置領域は、前記共通配線が網目状に配置された領域を含んでいる
上記(5)に記載のフレキシブル基板。
(10)
前記第1配線層および前記第2配線層を含む複数の配線層が、前記基板面と直交する方向に沿って互いに対向していると共に、
前記第1配線層と前記第2配線層とが、前記基板面と直交する方向に沿って、隣接配置されている
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のフレキシブル基板。
(11)
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載のフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板から出力される前記駆動信号に基づいて、前記液体を噴射する前記噴射部と
を備えた液体噴射ヘッド。
(12)
上記(11)に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【符号の説明】
【0102】
1…インクジェットヘッド、10…コネクタ、11…噴射部、111…アクチュエータプレート、112…ノズルプレート、12…I/F基板、120a,120b,120c,120d…コネクタ、121…回路配置領域、13,13a,13b,13c,13d,13A~13F…フレキシブル基板、130…接続電極、131…第1フレキシブル基板(実装基板)、132…第2フレキシブル基板(中継基板)、141,142…冷却ユニット、2…印刷制御部、3…インクタンク、30…インク供給管、41…駆動デバイス、42a…個別配線、42c…共通配線、42ce…端部共通配線、431~433…圧着電極部、433h…スルーホール領域、5…プリンタ、9…インク、P…記録紙、Hn…ノズル孔、Sc…印刷制御信号、Sd…駆動信号、Vd…駆動電圧、S1…表面、S2…裏面、Aa…個別配線領域、Ac…共通配線領域、Aol…オーバーラップ領域、Ah…スルーホール領域、A1…中央領域、A2,A3…端部領域、Ac1…配置領域、Ac2…非配置領域、Ae…延在領域、Am…網目状領域、SAa,SAc…面積、Sta,Stc…合計面積、We…幅。