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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077944
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】車載用電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/00 20060101AFI20240603BHJP
   H02H 9/02 20060101ALI20240603BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240603BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240603BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20240603BHJP
【FI】
H02H7/00 L
H02H9/02 D
H02J7/00 P
H02J7/00 S
H02J7/00 Y
H02H7/00 K
B60L50/60
B60L58/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190199
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昂大
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】柳田 泰次
【テーマコード(参考)】
5G013
5G053
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G013AA02
5G013AA04
5G013AA15
5G013BA01
5G013CA07
5G053AA05
5G053BA09
5G053CA04
5G053EC01
5G053FA05
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB13
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503FA17
5G503FA18
5G503GB06
5G503GD04
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB00
5H125BC01
5H125EE68
(57)【要約】
【課題】リレーを含む装置の長寿命化を図りやすくする。
【解決手段】車載用電源装置10は、車載用電源システム100に用いられる。車載用電源システム100は、バッテリ20と、バッテリ20に基づく電力が供給される電力路21と、電力路21に電気的に接続されるコンデンサ22と、を備える。車載用電源装置10は、第1回路(例えばプリチャージ回路60)と、第2回路(例えばリレー回路50)と、を備える。第1回路(例えばプリチャージ回路60)は、コンデンサ22をプリチャージするプリチャージ動作を行う。第2回路(例えばリレー回路50)は、複数のリレー(例えば第1リレー51)を並列に接続した構成をなし、コンデンサ22よりもバッテリ20側において電力路21に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、前記バッテリに基づく電力が供給される電力路と、前記電力路に電気的に接続されるコンデンサと、を備える車載用電源システムに用いられる車載用電源装置であって、
前記コンデンサをプリチャージするプリチャージ動作を行う第1回路と、
複数のリレーを並列に接続した構成をなし、前記コンデンサよりも前記バッテリ側において前記電力路に設けられる第2回路と、を備える
車載用電源装置。
【請求項2】
前記第1回路及び前記複数のリレーを制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記バッテリの充放電を開始させる開始条件が成立した場合に、前記第1回路に前記プリチャージ動作を行わせる第1制御を実行し、
前記第1制御の実行中に第1切替条件が成立した場合に、前記プリチャージ動作を停止させ且つ前記複数のリレーのうち一部の切替対象の前記リレーをオン状態に切り替える第2制御を実行し、
前記第2制御の実行中に第2切替条件が成立した場合に、オフ状態の前記リレーの少なくとも一部をオン状態に切り替える第3制御を実行する
請求項1に記載の車載用電源装置。
【請求項3】
前記第1回路及び前記複数のリレーを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記バッテリの充放電を開始させる開始条件が成立した場合に、前記第1回路に前記プリチャージ動作を行わせ、前記プリチャージ動作中に切替条件が成立した場合に、前記プリチャージ動作を停止させ且つ2以上の切替対象の前記リレーを同時期にオン状態に切り替える
請求項1に記載の車載用電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記切替対象の前記リレーが前記複数のリレーの一部である場合に、所定の順序に従って前記切替対象の前記リレーを選択する
請求項2又は請求項3に記載の車載用電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記切替対象の前記リレーが前記複数のリレーの一部である場合に、各々の前記リレーの劣化度を判定して比較し、比較結果に基づいて前記切替対象の前記リレーを選択する
請求項2又は請求項3に記載の車載用電源装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記劣化度の最も小さい前記リレーを、前記切替対象の前記リレーとして選択する
請求項5に記載の車載用電源装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記劣化度の判定として、各々の前記リレーについてオン状態のときの抵抗値を測定する
請求項5に記載の車載用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される電池システムは、プリチャージ回路による事前の充電の後、負荷装置と電池とを電気的に接続させるリレーを閉じる。この構成によれば、リレーを閉じたときにリレーに流れる突入電流が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-78196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、突入電流が抑えられたとしても、リレーのオンオフが繰り返されることで、リレーの劣化が進行する。リレーの劣化が進行すると、やがてリレーが使用不能な状態となり、リレーを含む装置の交換が必要となる。
【0005】
本開示は、リレーを含む装置の長寿命化を図りやすい技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載用電源装置は、
バッテリと、前記バッテリに基づく電力が供給される電力路と、前記電力路に電気的に接続されるコンデンサと、を備える車載用電源システムに用いられる車載用電源装置であって、
前記コンデンサをプリチャージするプリチャージ動作を行う第1回路と、
複数のリレーを並列に接続した構成をなし、前記コンデンサよりも前記バッテリ側において前記電力路に設けられる第2回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術は、リレーを含む装置の長寿命化を図りやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の車載用電源装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
図2図2は、第1制御を実行したときの車載用電源装置の動作を説明するための説明図である。
図3図3は、第2制御を実行したときの車載用電源装置の動作を説明するための説明図である。
図4図4は、第3制御を実行したときの車載用電源装置の動作を説明するための説明図である。
図5図5は、第4実施形態の車載用電源装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
〔1〕バッテリと、前記バッテリに基づく電力が供給される電力路と、前記電力路に電気的に接続されるコンデンサと、を備える車載用電源システムに用いられる車載用電源装置であって、
前記コンデンサをプリチャージするプリチャージ動作を行う第1回路と、
複数のリレーを並列に接続した構成をなし、前記コンデンサよりも前記バッテリ側において前記電力路に設けられる第2回路と、を備える
車載用電源装置。
【0011】
上記車載用電源装置は、第1回路によってコンデンサをプリチャージしてからリレーをオン状態に切り替えることで、リレーに突入電流が流れることを抑えることができる。しかも、上記車載用電源装置は、複数のリレーのいずれかを選択的に使用することができる。また、上記車載用電源装置は、複数のリレーを同時期にオン状態に切り替えることで各リレーに流れる突入電流を抑えることができる。このため、上記車載用電源装置は、リレーを含む装置の長寿命化を図りやすい。
【0012】
〔2〕前記第1回路及び前記複数のリレーを制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記バッテリの充放電を開始させる開始条件が成立した場合に、前記第1回路に前記プリチャージ動作を行わせる第1制御を実行し、
前記第1制御の実行中に第1切替条件が成立した場合に、前記プリチャージ動作を停止させ且つ前記複数のリレーのうち一部の切替対象の前記リレーをオン状態に切り替える第2制御を実行し、
前記第2制御の実行中に第2切替条件が成立した場合に、オフ状態の前記リレーの少なくとも一部をオン状態に切り替える第3制御を実行する
〔1〕に記載の車載用電源装置。
【0013】
上記車載用電源装置は、第2制御において一部のリレーのみをオン状態に切り替えることで、突入電流の流れるリレーを一部に限定しつつ、リレーを介してバッテリとコンデンサを導通させることができる。更に、上記車載用電源装置は、リレーを介してバッテリとコンデンサが導通された状態においてオフ状態のリレーの少なくとも一部をオン状態に切り替えることで、オン状態のリレーを増加させることができる。その結果、上記車載用電源装置は、各々のリレーに流れる電流を小さくすることができる。
【0014】
〔3〕前記第1回路及び前記複数のリレーを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記バッテリの充放電を開始させる開始条件が成立した場合に、前記第1回路に前記プリチャージ動作を行わせ、前記プリチャージ動作中に切替条件が成立した場合に、前記プリチャージ動作を停止させ且つ2以上の切替対象の前記リレーを同時期にオン状態に切り替える
〔1〕に記載の車載用電源装置。
【0015】
上記車載用電源装置は、2以上のリレーを同時期にオン状態に切り替えることで、各リレーに流れる突入電流を抑えることができる。
【0016】
〔4〕前記制御部は、前記切替対象の前記リレーが前記複数のリレーの一部である場合に、所定の順序に従って前記切替対象の前記リレーを選択する
〔2〕又は〔3〕に記載の車載用電源装置。
【0017】
上記車載用電源装置は、所定の順序に従って切替対象のリレーを選択するため、各リレーを均等に劣化させやすい。
【0018】
〔5〕前記制御部は、前記切替対象の前記リレーが前記複数のリレーの一部である場合に、各々の前記リレーの劣化度を判定して比較し、比較結果に基づいて前記切替対象の前記リレーを選択する
〔2〕又は〔3〕に記載の車載用電源装置。
【0019】
上記車載用電源装置は、切替対象のリレーの選択に、劣化度の比較結果を反映させることができる。
【0020】
〔6〕前記制御部は、前記劣化度の最も小さい前記リレーを、前記切替対象の前記リレーとして選択する
〔5〕に記載の車載用電源装置。
【0021】
上記車載用電源装置は、各リレーを均等に劣化させやすいため、リレーを含む装置の長寿命化をより確実に実現することができる。
【0022】
〔7〕前記制御部は、前記劣化度の判定として、各々の前記リレーについてオン状態のときの抵抗値を測定する
〔5〕又は〔6〕に記載の車載用電源装置。
【0023】
上記車載用電源装置は、各リレーのオン状態のときの抵抗値を劣化度として用いることができる。
【0024】
<第1実施形態>
1.車載用電源システム100の構成
図1には、車載用電源装置10を備えた車載用電源システム100が示されている。車載用電源システム100は、図示しない車両に用いられる。車両は、電気自動車であってもよいし、エンジン車であってもよいし、ハイブリッド車であってもよい。車載用電源システム100は、車載用電源装置10の他に、バッテリ20と、電力路21と、コンデンサ22と、を備える。
【0025】
バッテリ20は、リチウムイオンバッテリであってもよいし、鉛バッテリであってもよいし、その他のバッテリであってもよい。
【0026】
電力路21は、バッテリ20に基づく電力が供給される電気経路である。電力路21は、正極側電力線30と、負極側電力線31と、を有する。正極側電力線30には、バッテリ20の正極側の端子が電気的に接続される。負極側電力線31には、バッテリ20の負極側の端子が電気的に接続される。負極側電力線31は、グラウンドに電気的に接続される。電力路21(より具体的には、正極側電力線30)には、バッテリ20の出力電圧が印加される。なお、本明細書において、電圧とは、グラウンド電位を基準とした電位差のことであり、負極側電力線31を基準とした電位差のことである。
【0027】
コンデンサ22は、電力路21に電気的に接続される。コンデンサ22は、正極側電力線30と負極側電力線31との間に設けられる。コンデンサ22の一端は、正極側電力線30に電気的に接続される。コンデンサ22の他端は、負極側電力線31に電気的に接続される。コンデンサ22には、バッテリ20に基づく電力が、電力路21を介して供給される。コンデンサ22は、バッテリ20に基づく電圧を平滑化する。
【0028】
コンデンサ22は、本実施形態では、車載用電源システム100に設けられる駆動部40の一部として構成される。駆動部40は、コンデンサ22の他に、インバータ41と、モータ42と、を含む。コンデンサ22は、インバータ41よりもバッテリ20側に設けられる。コンデンサ22は、バッテリ20に基づく電圧を平滑化してインバータ41に供給する。インバータ41は、電力路21に電気的に接続される。インバータ41は、バッテリ20から供給される電圧に基づく直流電圧から交流電圧(例えば三相交流)を生成し、モータ42に供給する。モータ42は、例えば主機系モータである。モータ42は、バッテリ20から供給される電力に基づいて回転し、車両の車輪に対して回転力を与える装置である。
【0029】
車載用電源装置10は、車載用電源システム100に用いられる。車載用電源装置10は、リレー回路50と、プリチャージ回路60と、第2リレー70と、を備える。
【0030】
リレー回路50は、「第2回路」の一例に相当する。リレー回路50は、複数の第1リレー51(より具体的には、第1リレー51A、51B、51C)を並列に接続した構成をなす。第1リレー51は、「リレー」の一例に相当する。第1リレー51は、システムメインリレーである。第1リレー51は、メカニカルリレーである。第1リレー51は、接点を有する。
【0031】
複数の第1リレー51のバッテリ20側の端部は、互いに短絡する。複数の第1リレー51のバッテリ20側とは反対側の端部は、互いに短絡する。各々の第1リレー51の一端は、バッテリ20の正極に電気的に接続され、バッテリ20の正極に短絡する。各々の第1リレー51の他端は、コンデンサ22の一端に電気的に接続され、コンデンサ22の一端に短絡する。リレー回路50は、全ての第1リレー51がオフ状態のときに、リレー回路50を介したバッテリ20からコンデンサ22への電流の流れを遮断する。リレー回路50は、少なくとも1の第1リレー51がオン状態のときに、バッテリ20の正極をコンデンサ22の一端に導通させる。リレー回路50は、少なくとも1の第1リレー51がオン状態のときに、リレー回路50を介したバッテリ20からコンデンサ22への電流の流れを許容する。
【0032】
上述した正極側電力線30は、リレー回路50に対しバッテリ20側に設けられる第1正極側電力線32と、リレー回路50に対しバッテリ20側とは反対側に設けられる第2正極側電力線33と、を有する。
【0033】
プリチャージ回路60は、コンデンサ22をプリチャージするプリチャージ動作を行う。プリチャージ回路60は、リレー回路50に対して並列に設けられる。プリチャージ回路60の一端は、第1正極側電力線32に電気的に接続され、第1正極側電力線32に短絡する。プリチャージ回路60の他端は、第2正極側電力線33に電気的に接続され、第2正極側電力線33に短絡する。プリチャージ回路60は、プリチャージリレー61と抵抗部62を直列に接続した構成をなす。
【0034】
プリチャージリレー61は、メカニカルリレーである。プリチャージリレー61は、接点を有する。抵抗部62は、例えば公知の抵抗器によって構成される。
【0035】
第2リレー70は、コンデンサ22よりもバッテリ20側において電力路21に設けられる。第2リレー70は、負極側電力線31に設けられる。第2リレー70の一端は、バッテリ20の負極側の端子に電気的に接続され、バッテリ20の負極側の端子に短絡する。第2リレー70の他端は、コンデンサ22の他端に電気的に接続され、コンデンサ22の他端に短絡する。第2リレー70は、システムメインリレーである。第2リレー70は、メカニカルリレーである。第2リレー70は、接点を有する。
【0036】
2.制御部71の構成
車載用電源装置10は、制御部71と、電流検出部72と、個別電流検出部73と、第1電圧検出部74と、第2電圧検出部75と、温度検出部76と、を備える。
【0037】
制御部71は、例えば集積回路などの制御回路を含んで構成される。制御部71は、CPUなどの処理部、メモリなどの記憶部、入出力部などを含む。
【0038】
電流検出部72は、例えば公知の電流センサとして構成される。電流検出部72は、電力路21のうちリレー回路50とプリチャージ回路60を並列に接続した部位を除く経路(より具体的には、負極側電力線31)を流れる電流の値を検出する。つまり、電流検出部72は、リレー回路50及びプリチャージ回路60のうちリレー回路50にのみ電流が流れるときには、リレー回路50を流れる電流を検出する。また、電流検出部72は、リレー回路50及びプリチャージ回路60のうちプリチャージ回路60にのみ電流が流れるときには、プリチャージ回路60を流れる電流を検出する。電流検出部72は、検出値を特定可能な信号を出力する。制御部71は、電流検出部72の出力信号に基づいて、電力路21(より具体的には、負極側電力線31)を流れる電流の値を特定する。制御部71は、プリチャージ回路60がプリチャージ動作を行っているときの検出値を特定することで、プリチャージ回路60を流れる電流を特定する。
【0039】
個別電流検出部73は、例えば公知の電流センサとして構成される。個別電流検出部73は、各々の第1リレー51に対して個別に設けられる。各々の個別電流検出部73は、対応する第1リレー51がオン状態のときに当該第1リレー51を流れる電流の値を検出する。各々の個別電流検出部73は、検出値を特定可能な信号を出力する。制御部71は、各々の個別電流検出部73の出力信号に基づいて、各々の第1リレー51を流れる電流の値を特定する。
【0040】
第1電圧検出部74は、例えば公知の電圧検出回路として構成される。第1電圧検出部74は、リレー回路50(より具体的には、第1リレー51)の両端の電位差を検出する。第1電圧検出部74は、検出値を特定可能な信号を出力する。制御部71は、第1電圧検出部74の出力信号に基づいて、第1リレー51の両端の電位差を特定する。
【0041】
第2電圧検出部75は、例えば公知の電圧検出回路として構成される。第2電圧検出部75は、コンデンサ22の電圧を検出する。第2電圧検出部75は、検出値を特定可能な信号を出力する。制御部71は、第2電圧検出部75の出力信号に基づいて、コンデンサ22の電圧を特定する。
【0042】
温度検出部76は、例えば公知の温度センサとして構成される。温度検出部76は、各々の第1リレー51に対して個別に設けられる。各々の温度検出部76は、対応する第1リレー51の接点の温度を検出する。各々の温度検出部76は、検出値を特定可能な信号を出力する。制御部71は、各々の温度検出部76の出力信号に基づいて、各々の第1リレー51の接点の温度を特定する。
【0043】
制御部71は、リレー回路50と、プリチャージ回路60と、第2リレー70と、を制御する。つまり、制御部71は、複数の第1リレー51と、プリチャージリレー61と、第2リレー70と、を制御する。
【0044】
制御部71は、バッテリ20の充放電を開始させる開始条件が成立した場合に第1制御を実行する。開始条件が成立した時点では、全ての第1リレー51、プリチャージリレー61、及び第2リレー70がオフ状態になっている。第1制御は、プリチャージ回路60にプリチャージ動作を行わせる制御である。より具体的には、第1制御は、図2に示すように、全ての第1リレー51をオフ状態に維持したまま、プリチャージリレー61及び第2リレー70をオン状態に切り替える制御である。第1制御が行われた状態では、バッテリ20に基づく電力がプリチャージ回路60を介してコンデンサ22に供給される。この構成によれば、電力路21を流れる電流が、プリチャージ回路60の抵抗部62によって抑えられる。このため、第1リレー51、プリチャージリレー61、及び第2リレー70の損傷を抑えつつ、コンデンサ22の電圧を上昇させることができる。コンデンサ22の電圧が上昇するにつれて、コンデンサ22の電圧とバッテリ20の電圧との差が小さくなる。その結果、第1リレー51の両端の電位差が小さくなる。
【0045】
制御部71は、第1制御の実行中に第1切替条件が成立した場合に、第2制御を実行する。第2制御は、プリチャージ回路60によるプリチャージ動作を停止させ且つ複数の第1リレー51のうち一部の切替対象の第1リレー51をオン状態に切り替える制御である。より具体的には、図3に示すように、第2制御は、第2リレー70をオン状態に維持したまま、プリチャージリレー61をオフ状態に切り替え、切替対象の第1リレー51をオン状態に切り替える制御である。第2制御が行われた状態では、リレー回路50(より具体的には、第1リレー51)を介してバッテリ20の正極がコンデンサ22の一端と導通し、バッテリ20の正極がコンデンサ22の一端に短絡する。これにより、短時間でバッテリ20の電圧がコンデンサ22の電圧と同程度になり、第1リレー51の両端の電位差が0Vに近づく。
【0046】
第1切替条件は、第1リレー51の両端の電位差が所定値以下になったことであってもよいし、プリチャージ回路60を流れる電流の値が所定値以下になったことであってもよいし、第1制御の開始から所定時間が経過したことであってもよいし、コンデンサ22の電圧が所定値以上になったことであってもよいし、その他の条件であってもよい。
【0047】
切替対象の第1リレー51の数は、リレー回路50を構成する第1リレー51の一部であればよく、1であってもよいし、2以上であってもよい。
【0048】
制御部71は、所定の順序に従って切替対象の第1リレー51を選択する。例えば、制御部71は、第1リレー51A、第1リレー51B、第1リレー51Cの順に切替対象の第1リレー51を選択してもよい。この場合、例えば制御部71は、今回の第2制御において第1リレー51Aを選択し、次回の第2制御において第1リレー51Bを選択する。このケースでは、制御部71は、第1切替条件が成立するごとに切替対象の第1リレー51を切り替える。これに対し、制御部71は、所定条件が成立するごとに切替対象の第1リレー51を切り替えるようにしてもよい。所定条件は、例えば、切替対象となっている第1リレー51を所定回数連続でオン状態に切り替えたことであってもよいし、切替対象となっている第1リレー51の劣化度が閾値を超えたことであってもよいし、別の条件であってもよい。劣化度について、詳しくは後述する。所定の順序は変更可能であってもよい。
【0049】
制御部71は、第2制御の実行中に第2切替条件が成立した場合に、第3制御を実行する。第3制御は、オン状態の第1リレー51を増加させる制御である。より具体的には、第3制御は、オフ状態の第1リレー51の少なくとも一部をオン状態に切り替える制御である。例えば、制御部71は、図4に示すように、第3制御において、全てのオフ状態の第1リレー51をオン状態に切り替える。つまり、制御部71は、第3制御において全ての第1リレー51をオン状態に制御する。第3制御が行われた状態では、オン状態に制御される複数の第1リレー51を介して電力路21に電流が流れる。
【0050】
第2切替条件は、第1リレー51の両端の電位差が0V付近になった場合に成立する条件であることが好ましい。第2切替条件は、第1リレー51の両端の電位差が所定値以下になったことであってもよいし、プリチャージ回路60を流れる電流の値が所定値以下になったことであってもよいし、第1制御の開始から所定時間が経過したことであってもよいし、コンデンサ22の電圧が所定値以上になったことであってもよいし、その他の条件であってもよい。
【0051】
3.劣化度について
各々の第1リレー51の劣化度は、例えば、他の第1リレー51が全てオフ状態で且つ対象の第1リレー51がオン状態であるときの第1リレー51の両端の電位差(以下、「対象の第1リレー51の両端の電位差」ともいう)、第1リレー51を流れる電流の値、第1リレー51のオン状態のときの抵抗値、第1リレー51の動作回数、第1リレー51のオン状態のときの接点の温度、これらの複数の組み合わせ、などに基づいて特定される。各々の第1リレー51の劣化度は、上記の例示した値そのものであってもよいし、例示した値を演算式に代入して得られる値であってもよい。第1リレー51のオン状態のときの接点の温度は、第1リレー51の劣化度(例えば抵抗値)のみでなく、第1リレー51を流れる電流の値にも依存する。このため、第1リレー51の劣化度が第1リレー51のオン状態のときの接点の温度に基づいて特定される構成においては、第1リレー51の劣化度が第1リレー51のオン状態のときの接点の温度と第1リレー51を流れる電流の値とに基づいて特定されることが好ましい。
【0052】
第1リレー51の劣化度は、対象の第1リレー51の両端の電位差が大きいほど大きい。第1リレー51の劣化度は、第1リレー51を流れる電流の値が小さいほど大きい。第1リレー51の劣化度は、第1リレー51のオン状態のときの抵抗値が大きいほど大きい。第1リレー51の劣化度は、第1リレー51の動作回数が大きいほど大きい。第1リレー51の劣化度は、第1リレー51を流れる電流の値が一定と仮定した場合、第1リレー51のオン状態のときの接点の温度が大きいほど大きい。
【0053】
制御部71は、対象の第1リレー51の両端の電位差を特定する方法として、例えばオン状態にする第1リレー51を順に切り替えるとともに、各第1リレー51をオン状態にしたときの第1リレー51の両端の電位差を特定する。特定開始タイミングは、例えば、第3制御の実行中であってもよい。
【0054】
制御部71は、各々の第1リレー51を流れる電流の値を特定する方法として、例えば各々の個別電流検出部73の出力信号に基づいて、各々の第1リレー51を流れる電流の値を特定する。また、別の例として、制御部71は、オン状態にする第1リレー51を順に切り替えるとともに、各第1リレー51をオン状態にしたときの電流検出部72の出力信号に基づいて、各々の第1リレー51を流れる電流の値を特定する。特定開始タイミングは、例えば、第3制御の実行中であってもよい。
【0055】
制御部71は、第1リレー51のオン状態のときの抵抗値を特定する方法として、例えば、上述した方法によって、対象の第1リレー51の両端の電位差、及び各々の第1リレー51を流れる電流の値を特定する。そして、制御部71は、特定した電位差と電流の値とに基づいて各々の第1リレー51の抵抗値を特定する。特定開始タイミングは、例えば、第3制御の実行中であってもよい。
【0056】
制御部71は、第1リレー51の動作回数を特定する方法として、例えば、第2制御においてオン状態に切り替わった回数を第1リレー51ごとにカウントする。
【0057】
制御部71は、第1リレー51のオン状態のときの接点の温度を特定する方法として、例えば、各々の温度検出部76の出力信号に基づいて、各第1リレー51のオン状態のときの接点の温度を特定する。
【0058】
4.効果の例
車載用電源装置10は、プリチャージ回路60によってコンデンサ22をプリチャージしてから第1リレー51をオン状態に切り替えることで、第1リレー51に突入電流が流れることを抑えることができる。しかも、車載用電源装置10は、複数の第1リレー51のいずれかを選択的に使用することができる。このため、車載用電源装置10は、第1リレー51を含む装置の長寿命化を図りやすい。
【0059】
車載用電源装置10は、第2制御において一部の第1リレー51のみをオン状態に切り替えることで、突入電流の流れる第1リレー51を一部に限定しつつ、第1リレー51を介してバッテリ20とコンデンサ22を導通させることができる。更に、車載用電源装置10は、第1リレー51を介してバッテリ20とコンデンサ22が導通された状態においてオフ状態の第1リレー51の少なくとも一部をオン状態に切り替えることで、オン状態の第1リレー51を増加させることができる。その結果、車載用電源装置10は、各々の第1リレー51に流れる電流を小さくすることができる。
【0060】
車載用電源装置10は、所定の順序に従って切替対象の第1リレー51を選択するため、各第1リレー51を均等に劣化させやすい。
【0061】
車載用電源装置10は、劣化度の判定として、各々の第1リレー51についてオン状態のときの抵抗値を測定することができる。この構成によれば、車載用電源装置10は、 各第1リレー51のオン状態のときの抵抗値を劣化度として用いることができる。
【0062】
<第2実施形態>
第1実施形態では、切替対象の第1リレー51を所定の順序で選択する構成であった。これに対し、第2実施形態では、各々の第1リレー51の劣化度を判定して比較し、比較結果に基づいて切替対象の第1リレー51を選択する構成について説明する。第2実施形態では、主に第1実施形態と異なる点について説明する。なお、第2実施形態の車載用電源システムは、第1実施形態で説明した図1の構成と同じである。このため、第2実施形態は、図1を参照して説明される。
【0063】
第2実施形態では、制御部71が、各々の第1リレー51の劣化度を判定する。そして、制御部71は、判定した劣化度を比較し、比較結果に基づいて切替対象の第1リレー51を選択する。より具体的には、制御部71は、劣化度の最も小さい第1リレー51を、切替対象の第1リレー51として選択する。なお、切替対象の数が2以上である場合には、制御部71は、劣化度の小さい順に2以上の第1リレー51を選択する。例えば、制御部71は、切替対象の数が2である場合には、劣化度の最も小さい2の第1リレー51を選択する。
【0064】
第2実施形態の車載用電源装置10は、切替対象の第1リレー51の選択に、劣化度の比較結果を反映させることができる。更に、第2実施形態の車載用電源装置10は、各第1リレー51を均等に劣化させやすいため、第1リレー51を含む装置の長寿命化をより確実に実現することができる。
【0065】
<第3実施形態>
第3実施形態では、制御部71が、2以上の切替対象の第1リレー51を同時期にオン状態に切り替える構成について説明する。第3実施形態では、主に第1実施形態と異なる点について説明する。なお、第3実施形態の車載用電源システムは、第1実施形態で説明した図1の構成と同じである。このため、第3実施形態は、図1を参照して説明される。
【0066】
第3実施形態では、制御部71が、第2制御において、プリチャージ回路60によるプリチャージ動作を停止させ、且つ2以上の切替対象の第1リレー51を同時期にオン状態に切り替える。つまり、制御部71は、バッテリ20の充放電を開始させる開始条件が成立した場合に、プリチャージ回路60にプリチャージ動作を行わせ、プリチャージ動作中に第1切替条件が成立した場合に、プリチャージ動作を停止させ且つ2以上の切替対象の第1リレー51を同時期にオン状態に切り替える。
【0067】
第1実施形態、及び第2実施形態では、切替対象の第1リレー51の数は、リレー回路50を構成する第1リレー51の一部であった。これに対し、第3実施形態では、切替対象の第1リレー51の数は、リレー回路50を構成する第1リレー51の全部であってもよい。
【0068】
第3実施形態の車載用電源装置10は、2以上の第1リレー51を同時期にオン状態に切り替えることで、各第1リレー51に流れる突入電流を抑えることができる。
【0069】
<第4実施形態>
第4実施形態では、プリチャージ回路60ではなく、DCDCコンバータによってプリチャージ動作を行う例について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成について同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0070】
図5に示す第4実施形態の車載用電源システム400は、プリチャージ回路60を備えず、低圧バッテリ90及びDCDCコンバータ91を備える点で、第1実施形態の車載用電源システム100とは異なり、その他の点で共通する。
【0071】
第4実施形態の車載用電源システム400は、バッテリ20と、電力路21と、コンデンサ22と、低圧バッテリ90と、車載用電源装置410と、を備える。
【0072】
低圧バッテリ90は、バッテリ20と比較して、満充電時の出力電圧の低いバッテリである。つまり、バッテリ20は、「高圧バッテリ」と言える。低圧バッテリ90は、鉛バッテリであってもよいし、リチウムイオンバッテリであってもよいし、別のバッテリであってもよい。
【0073】
車載用電源装置410は、リレー回路50と、第2リレー70と、制御部71と、電流検出部72と、個別電流検出部73と、第1電圧検出部74と、第2電圧検出部75と、温度検出部76と、DCDCコンバータ91と、を備える。
【0074】
DCDCコンバータ91は、「第1回路」の一例に相当する。DCDCコンバータ91は、第1導電路92に印加された電圧を変換(本実施形態では、降圧)して第2導電路93に印加する第1動作を行う。また、DCDCコンバータ91は、第2導電路93に印加された電圧を変換(本実施形態では、昇圧)して第1導電路92に印加する第2動作を行う。第1導電路92は、電力路21に電気的に接続されており、電力路21を介してコンデンサ22に電気的に接続される。第1導電路92は、コンデンサ22に短絡する。第2導電路93には、低圧バッテリ90が接続される。
【0075】
制御部71は、DCDCコンバータ91を制御する。制御部71は、バッテリ20から電力路21に電力が供給されているときに、DCDCコンバータ91に第1動作を行わせることで、低圧バッテリ90を充電する。「バッテリ20から電力路21に電力が供給されているとき」とは、少なくとも1の第1リレー51がオン状態で且つ第2リレー70がオン状態のときである。
【0076】
制御部71は、DCDCコンバータ91に第2動作を行わせることで、低圧バッテリ90に基づく電圧を昇圧して第1導電路92に印加させる。第1導電路92に印加された電圧に基づき、コンデンサ22に電圧が印加される。つまり、DCDCコンバータ91は、コンデンサ22をプリチャージするプリチャージ動作を行うことができる。DCDCコンバータ91は、プリチャージ動作において、コンデンサ22の電圧を、バッテリ20と同程度の電圧まで上昇させる。つまり、第2動作によってコンデンサ22の電圧を、バッテリ20と同程度の電圧まで上昇させる動作が、プリチャージ動作である。
【0077】
制御部71は、開始条件が成立した場合に、DCDCコンバータ91にプリチャージ動作を行わせる。その後、制御部71は、第1実施形態で説明した第1切替条件が成立した場合に、DCDCコンバータ91によるプリチャージ動作を停止させ、且つ、第1リレー51及び第2リレー70をオン状態に切り替える。オン状態に切り替える第1リレー51は、一部であってもよいし、全部であってもよい。オン状態に切り替える第1リレー51が一部である場合、その後、第1実施形態で説明した第3制御が実行されてもよい。
【0078】
第4実施形態の車載用電源装置410は、低圧バッテリ90を充電するDCDCコンバータ91を利用して、コンデンサ22をプリチャージすることができる。このため、第1実施形態で説明したプリチャージ回路60が不要である。また、プリチャージ回路60の場合、コンデンサ22の電圧がバッテリ20の電圧に近づくにつれて上昇しにくくなる。これに対し、DCDCコンバータ91を利用する構成では、コンデンサ22の電圧をバッテリ20の電圧まで迅速に上昇させることができる。
【0079】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0080】
上記各実施形態において、第2リレー70は設けられていなくてもよい。
【0081】
上記各実施形態は、第3制御が実行されない構成であってもよい。
【0082】
上記第1実施形態では、リレー回路50及びプリチャージ回路60が正極側電力線30に設けられる構成であったが、リレー回路50及びプリチャージ回路60が負極側電力線31に設けられる構成であってもよい。
【0083】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲によって示された範囲内又は請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
10…車載用電源装置
20…バッテリ
21…電力路
22…コンデンサ
30…正極側電力線
31…負極側電力線
32…第1正極側電力線
33…第2正極側電力線
40…駆動部
41…インバータ
42…モータ
50…リレー回路(第2回路)
51…第1リレー(リレー)
51A…第1リレー(リレー)
51B…第1リレー(リレー)
51C…第1リレー(リレー)
60…プリチャージ回路(第1回路)
61…プリチャージリレー
62…抵抗部
70…第2リレー
71…制御部
72…電流検出部
73…個別電流検出部
74…第1電圧検出部
75…第2電圧検出部
76…温度検出部
90…低圧バッテリ
91…DCDCコンバータ(第1回路)
92…第1導電路
93…第2導電路
100…車載用電源システム
400…車載用電源システム
410…車載用電源装置
図1
図2
図3
図4
図5