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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077954
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】光学素子及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240603BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240603BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20240603BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20240603BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20240603BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240603BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240603BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G02F1/1337 525
G02F1/13357
H10K50/86
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190212
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】川平 雄一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】三枝 良輔
(72)【発明者】
【氏名】許 嘉能
(72)【発明者】
【氏名】坂井 彰
【テーマコード(参考)】
2H149
2H290
2H291
2H391
3K107
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB05
2H149BA02
2H149BA04
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA28
2H149EA02
2H149EA06
2H149EA10
2H149EA19
2H149FC07
2H290BA30
2H290BF13
2H290BF23
2H291FA02Y
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA25Z
2H291FA30Z
2H291FA38Z
2H291FA52Z
2H291FA71Z
2H291FA82Z
2H291FA85Z
2H291FA94Z
2H291FA95Z
2H291FB05
2H291FD12
2H291GA19
2H291HA11
2H291HA15
2H291PA08
2H291PA24
2H291PA64
2H391AA03
2H391AA15
2H391AC13
2H391AC26
2H391AC53
2H391EA14
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107EE26
3K107FF06
3K107FF15
(57)【要約】
【課題】上下方位における斜め光を抑制することができる光学素子、及び、当該光学素子を備える表示装置を提供する。
【解決手段】観察面側から背面側に向かって順に、第一偏光子と、ネガティブCプレートと、位相差層と、第二偏光子と、を備え、上記第一偏光子の透過軸は、上記第二偏光子の透過軸と平行であり、上記位相差層は、異方性分子を含み、上記位相差層において、観察面側に位置する上記異方性分子のチルト角と背面側に位置する上記異方性分子のチルト角とは同じであり、かつ、0°を超え、上記異方性分子の傾斜方向を上記位相差層の遅相軸とするとき、上記位相差層の遅相軸は、上記第一偏光子の透過軸と平行である、又は、直交する光学素子。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察面側から背面側に向かって順に、第一偏光子と、ネガティブCプレートと、位相差層と、第二偏光子と、を備え、
前記第一偏光子の透過軸は、前記第二偏光子の透過軸と平行であり、
前記位相差層は、異方性分子を含み、
前記位相差層において、観察面側に位置する前記異方性分子のチルト角と背面側に位置する前記異方性分子のチルト角とは同じであり、かつ、0°を超え、
前記異方性分子の傾斜方向を前記位相差層の遅相軸とするとき、前記位相差層の遅相軸は、前記第一偏光子の透過軸と平行である、又は、直交することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記ネガティブCプレートの厚さ方向のリタデーションRthは、0nmを超え、400nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記位相差層において、観察面側に位置する前記異方性分子のチルト角及び背面側に位置する前記異方性分子のチルト角は、40°以上、70°以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第一偏光子は、吸収型偏光子、又は、吸収型偏光子と反射型偏光子との積層体であり、
前記第二偏光子は、反射型偏光子、又は、吸収型偏光子と反射型偏光子との積層体であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
観察面側から背面側に向かって順に、
観察面側偏光子と、
表示パネルと、
請求項1~4のいずれかに記載の光学素子と、
バックライトと、を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
前記バックライトは、光源と、前記光源の観察面側に配置されたプリズムシートと、を備えることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第一偏光子の透過軸及び前記第二偏光子の透過軸は、前記プリズムシートの稜線に平行である、又は、直交することを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記バックライトは、前記光源の背面側に反射板を備えることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、光学素子及び当該光学素子を備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、映像(動画像および静止画像)を表示する装置として、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electro-Luminescence)表示装置等の様々な表示装置が広く用いられている。
【0003】
例えば、液晶表示装置は、表示のために液晶組成物を利用する表示装置であり、その代表的な表示方式は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を備えるTFT基板と、TFT基板に対向して配置される対向基板と、TFT基板及び対向基板間に封入された液晶層とを有する液晶パネルに対してバックライトから光を照射し、液晶層に含まれる液晶分子に対して電圧を印加して液晶分子の配向状態を変化させることにより、光の透過量を制御するものである。このような液晶表示装置には、コントラストの改善等を目的として光学素子が用いられることがある。
【0004】
光学素子に関する技術として、例えば、特許文献1には、透過性の光学素子であって、視認側から偏光板、少なくとも一枚の傾斜配向位相差フィルムの順に備え、(i)前記偏光板の吸収軸と、前記傾斜配向位相差フィルムの遅相軸が+15度~+55度および-15度~-55度の範囲であり、かつ(ii)前記傾斜配向位相差フィルムが、面内位相差110nm~240nmを有するとともに、フィルム面内に対する平均チルト角γが22度~55度である、光学素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/110216号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶表示装置は、液晶層への光の透過方法により、反射型と透過型に大別される。透過型の液晶表示装置は、光源を有するバックライトを備え、バックライトから出射された光が液晶層を透過することで表示を行う。透過型の液晶表示装置は、装置内に光源を有するため、暗い環境下でも視認性がよい。このような透過型の液晶表示装置が備えるバックライトには、光源からの光を正面に集光するために、光源の観察面側にプリズムシート(レンズシート)が設けられる場合がある。プリズムシートを有するバックライトを備える液晶表示装置では、正面コントラスト(CR:Contrast Ratio)を高めることができる。
【0007】
しかしながら、液晶表示装置に当該プリズムシートを配置することにより、黒表示時の斜めCRが低下する場合がある。斜めCRが低下する要因の一つとして、プリズムシートによって発生するサイドローブ光の存在が挙げられる。サイドローブ光は、プリズムシートが有するプリズムの稜線に垂直な方位において、バックライトから出射された光のうち、極角の大きな成分がプリズムシートによって正面に集光されずに、更に深い極角でプリズムシートから出射されることにより生じる光成分である。すなわち、サイドローブ光は、深い(大きな)極角においてレンズシートで集光されずに漏れ出てくる光成分である。サイドローブ光は本来不要な光成分であり、液晶パネル内で迷光になりやすく、これが黒表示における斜め光(極角の大きな光)の光漏れとなり、斜めCRを低下させる。
【0008】
上記特許文献1では、上下方位における斜め光を抑制することができる光学素子について検討されているが、その効果は充分ではない。
【0009】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、上下方位における斜め光を抑制することができる光学素子、及び、当該光学素子を備える表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一実施形態は、観察面側から背面側に向かって順に、第一偏光子と、ネガティブCプレートと、位相差層と、第二偏光子と、を備え、上記第一偏光子の透過軸は、上記第二偏光子の透過軸と平行であり、上記位相差層は、異方性分子を含み、上記位相差層において、観察面側に位置する上記異方性分子のチルト角と背面側に位置する上記異方性分子のチルト角とは同じであり、かつ、0°を超え、上記異方性分子の傾斜方向を上記位相差層の遅相軸とするとき、上記位相差層の遅相軸は、上記第一偏光子の透過軸と平行である、又は、直交する、光学素子。
【0011】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記ネガティブCプレートの厚さ方向のリタデーションRthは、0nmを超え、400nm以下である、光学素子。
【0012】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は上記(2)の構成に加え、上記位相差層において、観察面側に位置する上記異方性分子のチルト角及び背面側に位置する上記異方性分子のチルト角は、40°以上、70°以下である、光学素子。
【0013】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)又は上記(3)の構成に加え、上記第一偏光子は、吸収型偏光子、又は、吸収型偏光子と反射型偏光子との積層体であり、上記第二偏光子は、反射型偏光子、又は、吸収型偏光子と反射型偏光子との積層体である、光学素子。
【0014】
(5)また、本発明の他の一実施形態は、観察面側から背面側に向かって順に、観察面側偏光子と、表示パネルと、上記(1)、上記(2)、上記(3)又は上記(4)に記載の光学素子と、バックライトと、を備える、表示装置。
【0015】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(5)の構成に加え、上記バックライトは、光源と、上記光源の観察面側に配置されたプリズムシートと、を備える、表示装置。
【0016】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(6)の構成に加え、上記第一偏光子の透過軸及び上記第二偏光子の透過軸は、上記プリズムシートの稜線に平行である、又は、直交する、表示装置。
【0017】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(6)又は上記(7)の構成に加え、上記バックライトは、上記光源の背面側に反射板を備える、表示装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上下方位における斜め光を抑制することができる光学素子、及び、当該光学素子を備える表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】極角及び方位角について説明する図である。
図2】実施形態1に係る光学素子の断面模式図である。
図3】実施形態1に係る光学素子が備える位相差層の断面模式図である。
図4】稜線が方位45°に平行に配置されたプリズムシート及び稜線が方位135°に平行に配置されたプリズムシートを示す平面模式図である。
図5図4に示す2枚のプリズムシートを備えるバックライトの配光特性を示すシミュレーション結果である。
図6】稜線が方位0°に平行に配置されたプリズムシート1枚を示す平面模式図である。
図7】稜線が方位0°に平行に配置されたプリズムシート2枚を示す平面模式図である。
図8図6に示す1枚のプリズムシートを備えるバックライトの配光特性を示すシミュレーション結果である。
図9図7に示す2枚のプリズムシートを備えるバックライトの配光特性を示すシミュレーション結果である。
図10】斜め方位において斜め光の透過率を低減することができる光学素子の断面模式図である。
図11図10に示す光学素子の透過率視野角を示すシミュレーション結果である。
図12】特許文献1の光学素子に類似する構成を有する光学素子の断面模式図である。
図13図12に示す光学素子の透過率視野角のシミュレーション結果である。
図14】実施形態1の光学素子の透過率視野角のシミュレーション結果の一例である。
図15】実施形態1に係る表示装置の断面模式図である。
図16】実施形態1に係る表示装置が備えるTFT基板の画素構成を示す平面模式図である。
図17】実施形態1に係る表示装置が備えるCF基板の画素構成を示す平面模式図である。
図18】実施形態1に係る表示装置が備える液晶パネルの、図16及び図17中のX1-X2線に沿った断面模式図である。
図19】実施形態1に係る表示装置が備えるTFT基板の、図16中のY1-Y2線に沿った断面模式図である。
図20】実施形態1に係る表示装置が備えるプリズムシートの斜視模式図である。
図21】比較例1の表示装置の断面模式図である。
図22】比較例1に係る表示装置の各部材の軸方位を示す図である。
図23】比較例1の偏光板ルーバーの透過率視野角のシミュレーション結果である。
図24】比較例2の表示装置の断面模式図である。
図25】比較例2に係る表示装置の各部材の軸方位を示す図である。
図26】比較例2の偏光板ルーバーの透過率視野角のシミュレーション結果である。
図27】比較例3の表示装置の断面模式図である。
図28】比較例3に係る表示装置の各部材の軸方位を示す図である。
図29】比較例3に係る表示装置が備える位相差層の断面模式図である。
図30】比較例3の偏光板ルーバーの透過率視野角のシミュレーション結果である。
図31】実施例1の表示装置の断面模式図である。
図32】実施例2に係る表示装置の各部材の軸方位を示す図である。
図33】実施例1の偏光板ルーバーの透過率視野角のシミュレーション結果である。
図34】実施例1の表示装置の、極角に対する方位角45°での透過率を示したシミュレーション結果である。
図35】実施例1の表示装置の、極角に対する方位角90°での透過率を示したシミュレーション結果である。
図36】実施例2の表示装置の断面模式図である。
図37】実施例2に係る表示装置の各部材の軸方位を示す図である。
図38】実施例2の偏光板ルーバーの透過率視野角のシミュレーション結果である。
図39】実施例3の表示装置の断面模式図である。
図40】実施例3に係る表示装置の各部材の軸方位を示す図である。
図41】実施例3の偏光板ルーバーの透過率視野角のシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。なお、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
【0021】
[用語の定義]
図1は、極角及び方位角について説明する図である。本明細書中、極角θとは、図1に示すように、対象となる方向(例えば測定方向F)と、光学素子の主面の法線に平行な方向とのなす角度を意味する。すなわち、光学素子の主面の法線に平行な方向は極角0°である。法線に平行な方向は法線方向ともいう。また、方位とは、対象となる方向を光学素子の主面上に射影したときの方向を意味し、基準となる方位との間のなす角度(方位角ともいう)で表現される。本明細書において、基準となる方位(方位角0°)は、光学素子の画面の水平右方向に設定される。
【0022】
角度及び方位(方位角)は、基準となる方位から反時計回りを正の角度、基準となる方位から時計回りを負の角度とする。反時計回り及び時計回りは、いずれも光学素子の主面を観察面側(正面)から見たときの回転方向を表す。また、角度は、光学素子の主面を平面視した状態で測定された値を表し、2つの直線(軸、方向及び稜線を含む)が互いに直交するとは、光学素子の主面を平面視した状態で直交することを意味し、2つの直線(軸、方向及び稜線を含む)が平行であるとは、光学素子の主面を平面視した状態で平行であることを意味する。
【0023】
本明細書において、複屈折層とは、光学的異方性を有する層のことであり、位相差板と液晶パネルとを包含する概念である。複屈折層は、面内方向のリタデーションReと、厚さ方向のリタデーションRthの絶対値とのいずれか一方が10nm以上の値を有するものを意味し、好ましくは、20nm以上の値を有するものを意味する。面内方向のリタデーションReは、面内位相差Re、又は、正面視の面内位相差Reともいい、厚さ方向のリタデーションRthは、厚み方向位相差Rthともいう。
【0024】
本明細書中、複屈折層の面内方向のリタデーションRe、厚さ方向のリタデーションRth及びNz係数(2軸性パラメータ)は、複屈折層の厚さをd、x軸方向の屈折率をnx、y軸方向の屈折率をny、z軸方向の屈折率をnzとしたときに、それぞれ次式で定義される。ここで、x軸は、方位0°-180°に設定され、y軸は、方位90°-270°に設定され、z軸は、x軸及びy軸に対して直交する。
Re=(nx-ny)×d
Rth={nz-(nx+ny)/2}×d
NZ=(nz-nx)/|nz-ny|
【0025】
なお、本明細書中で主屈折率、位相差、Nz係数等の光学パラメータの測定波長は、特に断りのない限り550nm、測定温度は23℃とする。
【0026】
本明細書中、観察面側とは、対象となる部材を観察者に対向して配置した状態において、対象となる部材に対して観察者により近い側を意味し、背面側とは、対象となる部材に対して観察者からより遠い側を意味する。例えば、表示装置の観察面側とは、表示装置の画面(表示面)に対してより観察者に近い側を意味し、背面側とは、表示装置の画面(表示面)に対して観察者からより遠い側を意味する。
【0027】
本明細書において、偏光子は、無偏光(自然光)、部分偏光又は偏光から、特定方向にのみ振動する偏光(直線偏光)を取り出す機能を有するものを意味し、円偏光子(円偏光板)とは区別される。特に断りのない限り、本明細書中で「偏光子」というときは保護フィルムを含まず、偏光機能を有する素子だけを指す。吸収型偏光子とは、特定方向に振動する光を吸収し、それに垂直な方向に振動する偏光(直線偏光)を透過する機能を有するものである。反射型偏光子とは、特定方向に振動する光を反射し、それに垂直な方向に振動する偏光(直線偏光)を透過する機能を有するものである。
【0028】
本明細書において、軸方位とは、特に断りのない限り偏光子の吸収軸(反射軸)、又は、位相差板の光軸(遅相軸)の方位を意味する。
【0029】
(実施形態1)
図2は、実施形態1に係る光学素子の断面模式図である。図3は、実施形態1に係る光学素子が備える位相差層の断面模式図である。本実施形態の光学素子30は、図2及び図3に示すように、観察面側から背面側に向かって順に、第一偏光子31と、ネガティブCプレート32と、位相差層33Aと、第二偏光子34と、を備え、第一偏光子31の透過軸は、第二偏光子34の透過軸と平行であり、位相差層33Aは、異方性分子33ALを含み、位相差層33Aにおいて、観察面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A1と背面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A2とは同じであり、かつ、0°を超え、異方性分子33ALの傾斜方向を位相差層33Aの遅相軸とするとき、位相差層33Aの遅相軸は、第一偏光子31の透過軸と平行である、又は、直交する。異方性分子を含む位相差層であって、上記位相差層において、観察面側に位置する上記異方性分子のチルト角と背面側に位置する上記異方性分子のチルト角とが同じであり、かつ、0°を超える位相差層は、チルト配向位相差層ともいう。
【0030】
ここで、サイドローブ光が発生する方位は、バックライトが備えるプリズムシートの稜線の配置によって変化する。例えば、図4に示すように、稜線42xが方位45°に平行(すなわち、方位45°-225°)に配置されたプリズムシート42と、稜線42xが方位135°に平行(すなわち、方位135°-315°)に配置されたプリズムシート42とを備えるバックライトを用いる場合、図5の破線丸印に示すように斜め方位(方位45°、135°、225°及び315°)でサイドローブ光が発生する。図4は、稜線が方位45°に平行に配置されたプリズムシート及び稜線が方位135°に平行に配置されたプリズムシートを示す平面模式図である。図5は、図4に示す2枚のプリズムシートを備えるバックライトの配光特性を示すシミュレーション結果である。図5に示すシミュレーション結果には同心円が点線で描かれている。図5に示すシミュレーション結果の円の中心は極角0°を示し、すなわち、光学素子を正面から観察した場合の結果を示し、点線で描かれた同心円は、内側から外側に向かって順に、それぞれ、極角10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°及び80°を示している。すなわち、最外周の円は、極角80°を示している。以下に示すシミュレーション結果も同様に、極角0°から極角80°までの結果を示す。
【0031】
一方、図6及び図7に示すように、稜線42xが方位0°に平行(すなわち、方位0°-180°)、又は、方位90°に平行(すなわち、方位90°-270°)に配置されたプリズムシート42を備えるバックライトを用いる場合、図8及び図9の破線丸印に示すように上下方位(方位90°及び270°)でサイドローブ光が発生する。図6は、稜線が方位0°に平行に配置されたプリズムシート1枚を示す平面模式図である。図7は、稜線が方位0°に平行に配置されたプリズムシート2枚を示す平面模式図である。図8は、図6に示す1枚のプリズムシートを備えるバックライトの配光特性を示すシミュレーション結果である。図9は、図7に示す2枚のプリズムシートを備えるバックライトの配光特性を示すシミュレーション結果である。
【0032】
本発明者らが鋭意検討した結果、図10に示す光学素子10R、すなわち、偏光子11Rと二軸位相差層12Rと偏光子13Rとを順に備える光学素子10Rは、図11に示すように、斜め方位(方位45°、135°、225°及び315°)において、極角の大きな光(斜め光)の透過率を低減することが可能であることを見出した。更に、当該光学素子10Rを図4及び図5に示すバックライトと組み合わせることにより、サイドローブ光が発生する方位及び極角と、光学素子10Rにより透過率を低減することができる方位及び極角とをそれぞれ一致させることが可能となり、斜め方位(方位45°、135°、225°及び315°)における斜め光を抑制できることを見出した。二軸位相差層12Rとしては、例えば、Re=260nm、Nz=1.6である二軸位相差層を用いることができる。図10は、斜め方位において斜め光の透過率を低減することができる光学素子の断面模式図である。図11は、図10に示す光学素子の透過率視野角を示すシミュレーション結果である。
【0033】
しかしながら、図10及び図11に示す光学素子10Rでは、上下方位(方位90°及び270°)において斜め光の透過率を低減することが困難である。そのため、図6図9に示すような、上下方位(方位90°及び270°)でサイドローブ光が発生するバックライトに、図10及び図11に示す光学素子10Rを適用しても、サイドローブ光が発生する方位及び極角と、光学素子10Rにより透過率を低減することができる方位及び極角とを一致させることができず、上下方位における斜め光を抑制することはできない。
【0034】
上記特許文献1では、液晶表示装置等、偏光が出射される表示装置の観察面側に、偏光板と傾斜配向位相差フィルムとを含む光学素子を配置することにより、上下方位の映像光の出射を抑制し、車載用途でのフロントガラスへの映り込み防止効果、及び、外光反射防止効果が得られることが開示されている。
【0035】
しかしながら、特許文献1の光学素子は、上下方位の近傍において斜め光の透過率を低減できる領域が非常に狭い。特許文献1の光学素子に類似する構成を有する光学素子を例に挙げて説明する。例えば、図12の光学素子30Rは、特許文献1の光学素子に類似する構成を有し、方位0°に平行な吸収軸を有する第一偏光子31と、方位0°に平行な遅相軸を有する位相差層33Aと、方位0°に平行な反射軸を有する第二偏光子34と、を備える。位相差層33Aは、異方性分子を含み、位相差層33Aにおいて観察面側に位置する上記異方性分子のチルト角、及び、位相差層33Aにおいて背面側に位置する異方性分子のチルト角は、いずれも50°である。図12は、特許文献1の光学素子に類似する構成を有する光学素子の断面模式図である。
【0036】
図12の光学素子30Rについて透過率視野角をシミュレーションすると、例えば、図13に示すように、斜め光の透過率が20%以下となる領域は、方位90°~120°近傍及び方位240°~270°近傍と非常に狭い。そのため、上下方位からややずれると、映り込み防止効果等は低減する。図13は、図12に示す光学素子の透過率視野角のシミュレーション結果である。
【0037】
一方、本実施形態の光学素子30は、観察面側から背面側に向かって順に、第一偏光子31と、ネガティブCプレート32と、位相差層33Aと、第二偏光子34と、を備え、第一偏光子31の透過軸は、第二偏光子34の透過軸と平行であり、位相差層33Aは、異方性分子33ALを含み、位相差層33Aにおいて、観察面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A1と背面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A2とは同じであり、かつ、0°を超え、異方性分子33ALの傾斜方向を位相差層33Aの遅相軸とするとき、位相差層33Aの遅相軸は、第一偏光子31の透過軸と平行である、又は、直交する。このような態様とすることにより、斜め光の透過率を低減できる領域を上下方位の近傍で広げることが可能となるため、上下方位における斜め光を充分に抑制することができる。その結果、上下方位からずれても、映り込み防止効果、及び、外光反射防止効果を充分に得ることができる。
【0038】
例えば、図14に示されるように、本実施形態の光学素子30において斜め光の透過率が20%以下となる領域は、例えば、方位30°~150°近傍及び方位210°~330°近傍と非常に広い。図14は、実施形態1の光学素子の透過率視野角のシミュレーション結果の一例である。図14は、第一偏光子31が方位0°に平行な吸収軸を有する吸収型偏光子であり、第二偏光子34が方位0°に平行な反射軸を有する反射型偏光子であり、位相差層33Aが方位0°に平行な遅相軸を有し、位相差層33Aにおいて観察面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A1と背面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A2がいずれも50°であり、位相差層33Aの遅相軸が方位0°に平行である場合を示している。
【0039】
光学素子30は光学的なルーバーとして機能するので、偏光板ルーバー70ともいう。本明細書では、第一偏光子31から第二偏光子34までの全ての部材から構成される光学素子を偏光板ルーバーという。
【0040】
第一偏光子31及び第二偏光子34は、それぞれ、透過軸と、上記透過軸と直交する吸収軸又は反射軸とを有する。
【0041】
第一偏光子31及び第二偏光子34は、パラレルニコルに配置される。すなわち、第一偏光子31の透過軸(又は吸収軸若しくは反射軸)及び第二偏光子34の透過軸(又は吸収軸若しくは反射軸)は、平行である。
【0042】
ここで、本明細書中、2つの軸(方向)が平行であるとは、両者のなす角度(絶対値)が0±3°の範囲内であることを指し、好ましくは0±1°の範囲内であり、より好ましくは0±0.5°の範囲内であり、特に好ましくは0°(完全に平行)である。また、本明細書中、2つの軸(方向)が互いに直交するとは、両者のなす角度(絶対値)が90±3°の範囲内であることを指し、好ましくは90±1°の範囲内であり、より好ましくは90±0.5°の範囲内であり、特に好ましくは90°(完全に直交)である。上記軸としては、偏光子の透過軸及び位相差板の遅相軸が挙げられる。
【0043】
第一偏光子31及び第二偏光子34としては、材料や光学的性能について特に限定されず、例えば、吸収型偏光子、反射型偏光子等を適宜用いることができる。具体的には、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムに二色性を有するヨウ素錯体等の異方性材料を吸着配向させた吸収型偏光子の他、二種類の樹脂からなる共押出しフィルムを1軸延伸して得られる反射型偏光子(例えば、日東電工社製のAPCFや3M社製のDBEF)、金属ワイヤーの細線を周期的に配列させた反射型偏光子(所謂ワイヤーグリッド偏光子)等を適宜用いることができる。また、吸収型偏光子と反射型偏光子とを積層したものを用いることもできる。
【0044】
なかでも、第一偏光子31としては、吸収型偏光子が好適であり、第二偏光子34としては、反射型偏光子が好適である。この場合、第一偏光子31は、透過軸と、上記透過軸と直交する吸収軸とを有する。第二偏光子34は、透過軸と、上記透過軸と直交する反射軸とを有する。
【0045】
光学素子30は、第二偏光子34を複数有していてもよい。この場合、複数の第二偏光子34の透過軸は、実質的に同じ方位に設定される。
【0046】
また、機械強度や耐湿熱性を確保するために、第一偏光子31及び第二偏光子34の観察面側及び背面側の少なくとも一方に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の保護フィルム(図示せず)がラミネートされてもよい。保護フィルムは、任意の適切な接着層(図示せず)を介して第一偏光子31及び第二偏光子34に貼り付けられる。
【0047】
なお、本明細書において、「接着層」とは、隣り合う部材の面と面とを接合し、実用上充分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。接着層を形成する材料としては、例えば、接着剤、アンカーコート剤が挙げられる。接着層は、被着体の表面にアンカーコート層が形成され、その上に接着剤層が形成されたような、多層構造であってもよい。また、肉眼的に認知できないような薄い層であってもよい。
【0048】
また、本明細書において、「粘着層」とは、「接着層」と同様に、隣り合う部材の面と面とを接合し、実用上充分な接着力と接着時間で一体化させるものをいうが、接着層との違いは、そのもの自体が粘り気と弾性を持つことであり、水、溶剤、熱等をきっかけとした化学変化を起こすことで接合するのではなく、常温で短時間、かつわずかな圧力を加えるだけで接合することである。また、一度接合したら剥がすことができないのが接着層であるのに対して、剥がすことができるのが粘着層でもある。粘着層を形成する材料としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等の樹脂材料や、ゴム材料が挙げられる。
【0049】
光学素子30は、ネガティブCプレート32を備える。ここで、Cプレートとは、面内方向(x軸方向、y軸方向)の主屈折率をnx、ny、面外(厚み)方向(z軸方向)の主屈折率をnzとするとき、nx≒ny≠nzの関係を満たし、光学軸が面外方向にある位相差層をいう。また、Cプレートは(異常光屈折率)-(常光屈折率)の値の正又は負に応じて、nx≒ny<nz(好ましくは、nx=ny<nz)であればポジティブCプレートといい、nx≒ny>nz(好ましくは、nx=ny>nz)であればネガティブCプレートという。
【0050】
ネガティブCプレート32としては、例えば、延伸処理されたシクロオレフィンポリマーフィルムが挙げられる。
【0051】
ネガティブCプレート32の厚さ方向のリタデーションRthは、0nmを超え、400nm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、斜め方位(例えば、方位45°)において、極角の大きな光(斜め光)の透過率を低減することができる。ネガティブCプレート32の厚さ方向のリタデーションRthは、50nm以上、350nm以下であることが好ましく、100nm以上、300nm以下であることがより好ましい。
【0052】
ネガティブCプレート32は、生産の都合上、面内方向のリタデーションReが数nm程度生じる場合があるため、ネガティブCプレート32の面内方向のリタデーションReは、例えば、0nm以上、5nm以下である。
【0053】
位相差層33Aは、複屈折材料等を利用して直交する2つの偏光成分に位相差をつけて、入射偏光の状態を変える機能を有する。位相差層33Aは、異方性分子33ALを含む。異方性分子33ALは、位相差層33Aに複屈折性を発現させる分子である。より具体的には、異方性分子33ALは、当該分子が特定の方向に配向することにより、光の屈折率の異方性が発現する分子である。異方性分子33ALとしては、重合性液晶、重合性液晶の硬化物等の液晶性材料が挙げられる。
【0054】
位相差層33Aの遅相軸は、異方性分子33ALの傾斜方向である。位相差層33Aの遅相軸は、第一偏光子31の透過軸と平行である、又は、直交する。位相差層の遅相軸は、位相差測定装置(例えば、Axometrics社製、「Axoscan」)を用いて測定することができる。Axoscanでは、位相差、遅相軸、及び、異方性分子のチルト角を測定可能である。具体的には、光の偏光状態を表す4×4の16つからなる行列(ミューラーマトリックス)を測定、解析することで位相差、遅相軸、及び、異方性分子のチルト角等の特性を測定することができる。
【0055】
位相差層33Aは、異方性分子33ALを含み、位相差層33Aにおいて、観察面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A1と背面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A2とは同じであり、かつ、0°を超える。このような位相差層33Aは、チルト配向位相差層ともいう。2つのチルト角が同じであるとは、両者の差が5°以下であることを意味し、両者の差が3°以下であることが好ましく、両者の差が1°以下であることがより好ましい。
【0056】
なお、光学素子30が位相差層33Aを複数備える場合、観察面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A1及び背面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A2は、それぞれ、各位相差層33Aにおける観察面側及び背面側に位置する異方性分子のチルト角を意味する。以下では、位相差層33Aにおいて、観察面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A1を、単に、チルト角33A1ともいい、背面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A2を、単に、チルト角33A2ともいう。また、位相差層において観察面側に位置する異方性分子のチルト角を、単に、観察面側のチルト角ともいい、位相差層において背面側に位置する異方性分子のチルト角を、単に、背面側のチルト角ともいう。
【0057】
位相差層33Aにおいて、観察面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A1及び背面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A2は、40°以上、70°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、上下方位(例えば、方位90°)において、極角の大きな光(斜め光)の透過率を低減することができる。位相差層33Aにおいて、観察面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A1及び背面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A2は、45°以上、65°以下であることがより好ましく、50°以上、60°以下であることが更に好ましい。
【0058】
位相差層33Aは、例えば、重合性液晶の硬化物を含有することが好ましい。重合性液晶(リアクティブメソゲン)の硬化物からなるリアクティブメソゲン層(コーティング位相差層)は、例えば、配向処理が施された配向膜上に、重合性液晶を塗布し、焼成、光照射等の方法で硬化させることにより形成できる。硬化された重合性液晶は、配向処理により定められた配向膜の配向方位に応じて配向し、位相差を発現する。重合性液晶の種類、焼成の条件、光照射の条件等を調整することにより、異方性分子33ALのチルト角を制御することができる。このようなコーティング位相差層は、樹脂フィルムからなる位相差層よりも薄くすることができるという利点がある。
【0059】
コーティング位相差層に用いる配向膜としては、ポリイミド等の液晶表示パネルの分野で一般的なものを用いることができる。配向膜は、基材上に、溶液を塗布し、焼成、光照射等の方法で硬化させることにより形成できる。配向膜の配向処理は、ラビング、光照射等を用いることができる。
【0060】
重合性液晶としては特に限定されないが、光反応性基を有する液晶性ポリマーが好適に用いられる。光反応性基を有する液晶性ポリマーを用いる場合には、偏光照射等により配向させることができるので、下地の配向膜を設けずに、コーティング位相差層を形成することができる。また、光反応性基を有する液晶性ポリマーを用いて形成したコーティング位相差層は、ラビング処理等により、層内部の光軸の方向と層表面の光軸の光軸とを異ならせることができるので、配向膜としても機能することができる。したがって、光反応性基を有する液晶性ポリマーを用いて形成したコーティング位相差層上に、配向膜を設けずに、他のコーティング位相差層を直接形成することができる。このように、光反応性基を有する液晶性ポリマーを用いてコーティング位相差層を形成すれば、配向膜を省略することができ、薄型化や製造工程の簡略化が可能となる。
【0061】
光反応性基を有する液晶性ポリマーとしては、例えば、液晶性高分子のメソゲン成分として多用されているビフェニル基、ターフェニル基、ナフタレン基、フェニルベンゾエート基、アゾベンゼン基、これらの誘導体等のメソゲン基と、シンナモイル基、カルコン基、シンナミリデン基、β-(2-フェニル)アクリロイル基、桂皮酸基、これらの誘導体等の光反応性基とを、併せ有する構造の側鎖を有し、アクリレート、メタクリレート、マレイミド、N-フェニルマレイミド、シロキサン等の構造を主鎖に有するポリマーを挙げることができる。
【0062】
上記液晶性ポリマーは、単一の繰り返し単位からなるホモポリマーであってもよく、側鎖の構造の異なる2以上の繰り返し単位からなるコポリマーであってもよい。上記コポリマーとしては、交互型、ランダム型、グラフト型等のいずれをも含むものである。また、上記コポリマーにおいては、少なくとも一の繰り返し単位に係る側鎖は、上記メソゲン基と上記光反応性基とを併せ有する構造の側鎖であるが、他の繰り返し単位に係る側鎖は、上記メソゲン基や上記光反応性基を有さないものであってよい。
【0063】
上記液晶性ポリマーの好ましい具体例としては、下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する共重合性(メタ)アクリル酸ポリマーが挙げられる。
【0064】
【化1】
【0065】
上記式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはアルキル基、又は、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基及びハロゲン原子から選ばれる基で置換されたフェニル基であり、環A及び環Bはそれぞれ独立して、下記一般式(M1)~(M5)で表される基であり、p及びqはそれぞれ独立して、1~12のいずれかの整数であり、r及びsは、0.65≦r≦0.95、0.05≦s≦0.35、r+s=1の関係を満たす共重合体に占める各モノマーのモル分率である。
【0066】
【化2】
【0067】
上記式中、X~X38の各々はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基である。
【0068】
上記液晶性ポリマーは、下記一般式(I-a)で示される繰り返し単位を有する共重合性(メタ)アクリル酸ポリマーであることが好ましい。
【0069】
【化3】
【0070】
上記式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはアルキル基、又は、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基及びハロゲン原子から選ばれる基で置換されたフェニル基であり、X1A~X4Aの各々はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、環Bは、下記一般式(M1a)又は(M5a)で表される基であり、p及びqはそれぞれ独立して、1~12のいずれかの整数であり、r及びsは、0.65≦r≦0.95、0.05≦s≦0.35、r+s=1の関係を満たす共重合体に占める各モノマーのモル分率である。
【0071】
【化4】
【0072】
上記式中、X1B~X4B及びX31B~X38Bの各々はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基である。
【0073】
更に、上記液晶性ポリマーは、下記一般式(I-b)又は(I-c)で示される繰り返し単位を有する共重合性(メタ)アクリル酸ポリマーであることがより好ましい。
【0074】
【化5】
【0075】
上記式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはアルキル基、又は、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基及びハロゲン原子から選ばれる基で置換されたフェニル基であり、X1A~X4A及びX31B~X38Bの各々はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、p及びqはそれぞれ独立して、1~12のいずれかの整数であり、r及びsは、0.65≦r≦0.95、0.05≦s≦0.35、r+s=1の関係を満たす共重合体に占める各モノマーのモル分率である。
【0076】
【化6】
【0077】
上記式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはアルキル基、又は、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基及びハロゲン原子から選ばれる基で置換されたフェニル基であり、X1A~X4A及びX1B~X4Bの各々はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、p及びqはそれぞれ独立して、1~12のいずれかの整数であり、r及びsは、0.65≦r≦0.95、0.05≦s≦0.35、r+s=1の関係を満たす共重合体に占める各モノマーのモル分率である。
【0078】
上記一般式(I)(一般式(I-a)、一般式(I-b)及び一般式(I-c)を含む。以下同様。)において、Rとしては、メチル基が好ましい。Rとしては、アルキル基、又は、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基及びハロゲン原子から選ばれる1の基で置換されたフェニル基が好ましく、このうちアルキル基、又は、アルコキシ基若しくはシアノ基で置換されたフェニル基がより好ましく、アルキル基、又は、アルコキシ基で置換されたフェニル基が特に好ましい。
【0079】
31B~X38Bとしては、いずれも、水素原子又はハロゲン原子が好ましく、すべて水素原子である場合が最も好ましい。
【0080】
p及びqとしては、いずれも、3~9のいずれかの整数が好ましく、このうち5~7のいずれかの整数が好ましく、6が最も好ましい。rについては、好ましくは0.75≦r≦0.85の範囲であり、最も好ましいのは0.8である。対応するsの好ましい範囲は、r+s=1から自ずと定まる範囲である。すなわち、好ましくは0.15≦s≦0.25の範囲であり、最も好ましいのは0.2である。
【0081】
上記一般式(I-a)、(I-b)又は(I-c)において、X1A~X4Aとしては、水素原子又はハロゲン原子が好ましく、特に、X1A~X4Aのいずれか一つがハロゲン原子であって、その他が水素原子である場合、又は、全てが水素原子である場合が好ましい。また、上記一般式(I-b)において、X31B~X38Bとしては、水素原子又はハロゲン原子が好ましく、全てが水素原子である場合が最も好ましい。また、上記一般式(I-c)において、X1B~X4Bとしては、水素原子又はハロゲン原子が好ましく、全てが水素原子である場合が最も好ましい。
【0082】
のアルキル基又はRのフェニル基の置換基のアルキル基としては、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、そのうち、好ましくは炭素数1~6のものが、更に好ましくは炭素数1~4のものが、最も好ましくはメチル基が挙げられる。Rのフェニル基の置換基のアルコシキ基としては、炭素数1~12のアルコキシ基が挙げられ、そのうち、好ましくは炭素数1~6のものが、更に好ましくは炭素数1~4のものが、最も好ましくはメトキシ基が挙げられる。Rのフェニル基の置換基のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、このうち、フッ素原子が好ましい。
【0083】
~X38において、アルキル基としては、炭素数1~4のものが挙げられ、そのうちメチル基が最も好ましく、アルコキシ基としては、炭素数1~4のものが挙げられ、そのうちメトキシ基が最も好ましく、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、このうち、フッ素原子が好ましい。
【0084】
なお、本明細書において、X1A~X38Aは、環A又は環B上の置換基であるX~X38について、それらが環A上の置換基である場合を表し、X1B~X38Bは、それらが環B上の置換基である場合を表すものである。したがって、X~X38についての説明は、そのままX1A~X38A及びX1B~X38Bに対しても適用し得るものである。
【0085】
上記液晶性ポリマーは、溶媒に溶解して、位相差層用組成物とすることができる。さらに、上記位相差層用組成物には、光重合開始剤、界面活性剤等の他、光や熱により重合を起こさせる重合性組成物に通常含まれる成分を適宜添加してもよい。
【0086】
位相差層用組成物に用いる溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジブチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、エタノール、プロパノール、シクロヘキサン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサノン、n-ヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0087】
上記光重合開始剤としては、少量の光照射により均一な膜を形成させるために一般に知られている汎用の光重合開始剤をいずれも用いることができる。具体例としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾニトリル系光重合開始剤、イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、イルガキュア369(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等のα-アミノケトン系光重合開始剤、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等のベンゾフェノン系光重合開始剤、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等の光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤は、何れかを単独で用いてもよいし、2種以上を併せて用いてもよい。
【0088】
界面活性剤としては、均一な膜を形成させるために一般に用いられている界面活性剤をいずれも用いることができる。具体例としては、例えば、ラウリル硫酸ソーダ、ラウリル硫酸アンモニウム等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールモノラウレート、ステアリン酸ソルビタン等のノニオン性界面活性剤;ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等のカオチン性界面活性剤;ラウリルベタイン、アルキルスルホベタイン等のアルキルベタイン、アルキルイミダゾリン、ラウロイルサルコシンナトリウム等の両性界面活性剤;更には、BYK-361、BYK-306、BYK-307(ビックケミージャパン社製)、フロラードFC430(住友スリーエム社製)、メガファックF171、R08(大日本インキ化学工業社製)等の界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、何れかを単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0089】
以下、本実施形態の光学素子30を備える表示装置について詳細に説明する。
【0090】
図15は、実施形態1に係る表示装置の断面模式図である。図15に示す表示装置1は、観察面側から背面側に向かって順に、観察面側偏光子11と、表示パネルとしての液晶パネル20と、図2に示す光学素子30と、バックライト40と、を備える。
【0091】
観察面側偏光子11は、透過軸と、上記透過軸と直交する吸収軸又は反射軸とを有する。
【0092】
観察面側偏光子11及び第一偏光子31は、クロスニコル又はパラレルニコルに配置される。高コントラストを得る観点からは、観察面側偏光子11及び第一偏光子31は、クロスニコルに配置されることが好ましい。観察面側偏光子11及び第一偏光子31がクロスニコルに配置されるとは、すなわち、観察面側偏光子11の透過軸(又は吸収軸若しくは反射軸)及び第一偏光子31の透過軸(又は吸収軸若しくは反射軸)が、互いに直交することをいう。また、観察面側偏光子11及び第一偏光子31がパラレルニコルに配置されるとは、すなわち、観察面側偏光子11の透過軸(又は吸収軸若しくは反射軸)及び第一偏光子31の透過軸(又は吸収軸若しくは反射軸)が、互いに平行であることをいう。
【0093】
観察面側偏光子11としては、材料や光学的性能について特に限定されず、例えば、吸収型偏光子、反射型偏光子等を適宜用いることができる。
【0094】
なかでも、観察面側偏光子11としては、吸収型偏光子が好適である。この場合、観察面側偏光子11は、透過軸と、上記透過軸と直交する吸収軸とを有する。
【0095】
また、機械強度や耐湿熱性を確保するために、観察面側偏光子11の観察面側及び背面側の少なくとも一方に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の保護フィルム(図示せず)がラミネートされてもよい。保護フィルムは、任意の適切な接着層(図示せず)を介して観察面側偏光子11に貼り付けられる。
【0096】
光学素子30は、通常、粘着層(図示せず)により液晶パネル20に貼付されている。
【0097】
第一偏光子31は、吸収型偏光子、又は、吸収型偏光子と反射型偏光子との積層体であり、第二偏光子34は、反射型偏光子、又は、吸収型偏光子と反射型偏光子との積層体であることが好ましい。このような態様とすることにより、バックライト40から出るサイドローブ光を吸収するのではなく、一度バックライト40側へ反射させることが可能となり、バックライト40が備える反射板43との間で光をリサイクルすることが可能となる。その結果、正面輝度をより向上させることができる。この場合、第一偏光子31は、透過軸と、上記透過軸と直交する吸収軸とを有する。第二偏光子34は、透過軸と、上記透過軸と直交する反射軸とを有する。
【0098】
第一偏光子31が複数の偏光子の積層体である場合、当該複数の偏光子の透過軸は平行であることが好ましい。同様に、第二偏光子34が複数の偏光子の積層体である場合、当該複数の偏光子の透過軸は平行であることが好ましい。
【0099】
第二偏光子34とバックライト40との間には、拡散板が設けられていることが好ましい。このような態様とすることにより、バックライト40から出射される光の利用効率を高めることができる。
【0100】
図16は、実施形態1に係る表示装置が備えるTFT基板の画素構成を示す平面模式図である。図17は、実施形態1に係る表示装置が備えるCF基板の画素構成を示す平面模式図である。図18は、実施形態1に係る表示装置が備える液晶パネルの、図16及び図17中のX1-X2線に沿った断面模式図である。図19は、実施形態1に係る表示装置が備えるTFT基板の、図16中のY1-Y2線に沿った断面模式図である。図16及び図17は、それぞれ、観察面側から見た平面模式図である。
【0101】
図18に示すように、本実施形態の液晶パネル20は、背面側から観察面側に向かって順に、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)基板100、第一配向膜61、液晶層300、第二配向膜62、カラーフィルタ(CF:Color Filter)基板200を備える。
【0102】
図16及び図19に示すように、TFT基板100は、表示装置1の画素のオン・オフをスイッチングするために用いられるスイッチング素子である薄膜トランジスタ104が設けられた基板である。本実施形態では、FFSモード用のTFT基板100の構成を説明するが、他の横電界モードにおいても有効であり、例えば、IPS(In-Plane-Switching)モードに適用してもよい。
【0103】
TFT基板100は、TFT104を有し、背面側から観察面側に向かって順に、支持基板110と、ゲート線101と、ゲート絶縁膜120と、ソース線102と、ソース絶縁膜140と、平坦化膜150と、共通電極160と、層間絶縁膜170と、画素電極(信号電極)180と、を備える。このような構成によれば、一対の電極を構成する共通電極160及び画素電極180の間に電圧を印加することによって液晶層300に横電界(フリンジ電界)を発生させることができる。よって、共通電極160と画素電極180との間に印加する電圧を調整することにより、液晶層300中の液晶分子の配向を制御することができる。
【0104】
TFT基板100は、支持基板110上に、互いに平行に延設された複数のゲート線101と、ゲート絶縁膜120を介して各ゲート線101と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線102と、を備える。複数のゲート線101及び複数のソース線102は、各画素を区画するように全体として格子状に形成されている。各ゲート線101と各ソース線102との交点にはスイッチング素子としてのTFT104が配置されている。
【0105】
各TFT104は、複数のゲート線101及び複数のソース線102のうちの対応するゲート線101及びソース線102に接続され、対応するゲート線101から突出した(ゲート線101の一部である)ゲート電極101G、対応するソース線102から突出した(ソース線102の一部である)ソース電極102S、複数の画素電極180のうちの対応する画素電極180と接続されたドレイン電極102D、及び、薄膜半導体層103を有する三端子スイッチである。ソース電極102S及びドレイン電極102Dは、ソース線102と同じソース配線層130に設けられる電極であり、ゲート電極101Gはゲート線101と同じゲート配線層に設けられる電極である。各画素電極180は、層間絶縁膜170、共通電極160、平坦化膜150及びソース絶縁膜140に設けられたコンタクトホール104CHを介して、ドレイン電極102Dに接続されている。
【0106】
各TFT104の薄膜半導体層103は、例えば、アモルファスシリコン、ポリシリコン等からなる高抵抗半導体層と、アモルファスシリコンにリン等の不純物をドープしたn+アモルファスシリコン等からなる低抵抗半導体層とによって構成される。また、薄膜半導体層103として、酸化亜鉛等の酸化物半導体層を用いてもよい。
【0107】
TFT104は、既知の構成であって、例えば酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の酸化物半導体材料によって形成された半導体層からなるチャネル部等を有する。
【0108】
支持基板110は、透明基板であることが好ましく、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等が挙げられる。
【0109】
ゲート絶縁膜120、ソース絶縁膜140及び層間絶縁膜170は、例えば、無機絶縁膜である。無機絶縁膜としては、例えば、窒化珪素(SiNx)、酸化珪素(SiO)等の無機膜(比誘電率ε=5~7)や、それらの積層膜を用いることができる。ゲート絶縁膜120及びソース絶縁膜140は、例えば、酸化珪素の無機膜である。層間絶縁膜170は、例えば、窒化珪素の無機膜であり、膜厚170Wは、例えば、0.2μmである。
【0110】
ゲート配線層及びソース配線層130は、例えば、銅、チタン、アルミニウム、モリブデン、タングステン等の金属、又は、それらの合金の、単層又は複数層である。ゲート線101、ソース線102及びTFT104を構成する各種配線及び電極は、スパッタリング法等により、銅、チタン、アルミニウム、モリブデン、タングステン等の金属、又は、それらの合金を、単層又は複数層で成膜し、続いて、フォトリソグラフィ法等でパターニングを行うことで形成することができる。これら各種配線及び電極は、同じ層に形成されるものについては、それぞれ同じ材料を用いることで製造が効率化される。
【0111】
平坦化膜150は、TFT基板100に設けられたTFT104の液晶層300側の面を平坦化するものであり、例えば、有機絶縁膜(比誘電率ε=3~4)を用いることができ、具体的にはアクリル樹脂が挙げられる。平坦化膜150は、例えば、光硬化性の樹脂を塗布し、紫外線照射及び焼成を行うことにより形成される。
【0112】
共通電極160は、画素の境界に関わらず、画素電極180とドレイン電極102Dとの接続部(コンタクトホール104CH)等の特定部分を除いて、ほぼ一面に形成された電極である。共通電極160に対しては一定値に保たれた共通信号が供給され、共通電極160は一定の電位に保たれる。
【0113】
画素電極180は、互いに隣接する2本のゲート線101と互いに隣接する2本のソース線102とに囲まれた各領域に配置された電極である。画素電極180は、TFT104が備える薄膜半導体層103を介して対応するソース線102と電気的に接続されている。画素電極180は、対応するTFT104を介して供給されるデータ信号に応じた電位に設定される。単一の画素電極180が設けられる各画素の幅1Wは、例えば、28μmである。
【0114】
図16及び図18に示すように、画素電極180には、互いに平行な複数のスリット180Sが設けられている。スリット180Sは、液晶分子の初期配向方位に対して傾斜して設けられている。液晶分子の初期配向方位に対して画素電極180に設けられたスリット180Sに角度を持たせることで、液晶分子を一定方向へ回転させることができ、電圧制御によって液晶分子の配向を制御することが可能となっている。画素電極180の幅Lとスリットの幅Sの比L/Sは、例えば、L/S=3μm/4μmである。
【0115】
共通電極160及び画素電極180の材料としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等が挙げられる。
【0116】
第一配向膜61及び第二配向膜62は、液晶層300に含まれる液晶分子の配向を制御する機能を有する。第一配向膜61及び第二配向膜62は、液晶層300への印加電圧が閾値電圧未満(電圧無印加を含む)のときには、主に第一配向膜61及び第二配向膜62の働きによって、液晶層300中の液晶分子の長軸が第一配向膜61及び第二配向膜62に対して水平方向を向くように制御されることが好ましい。
【0117】
ここで、液晶層300中の液晶分子の長軸が第一配向膜61及び第二配向膜62に対して水平方向を向くとは、液晶分子のチルト角(プレチルト角を含む)が、第一配向膜61及び第二配向膜62に対して0~5°であることを意味し、好ましくは0~3°、より好ましくは0~1°であることを意味する。液晶分子のチルト角は、液晶分子の長軸(光軸)が第一配向膜61及び第二配向膜62の表面に対して傾斜する角度を意味する。
【0118】
第一配向膜61及び第二配向膜62は、液晶分子の配向を制御するための配向処理がなされた層であり、ポリイミド等の液晶表示装置の分野で一般的な配向膜を用いることができる。第一配向膜61及び第二配向膜62の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリシロキサン等の主鎖を有するポリマーが挙げられ、主鎖又は側鎖に光反応部位(官能基)を有する光配向膜材料が好適に用いられる。
【0119】
液晶層300は、一対の電極を構成する共通電極160及び画素電極180の間に印加された電圧により液晶層300内に発生する電界に応じて液晶分子の配向が変化することにより、光の透過量を制御するものである。液晶層300中の液晶分子は、TFT基板100に設けられた一対の電極間に電圧が印加されていない状態(電圧無印加時)では第一配向膜61及び第二配向膜62の規制力によって水平配向することが好ましい。すなわち、液晶分子の長軸が第一配向膜61及び第二配向膜62に対して水平方向を向くように制御されることが好ましい。液晶層300中の液晶分子は、一対の電極間に電圧が印加された状態(電圧無印加時)では液晶層300内に発生した横電界に応じて面内方向に回転する。液晶層300の膜厚であるセルギャップ300Wは、例えば、3μmである。
【0120】
上記液晶分子は、下記式(L)で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するものであってもよく、負の値を有するものであってもよい。本実施形態の液晶層300は、Δεが負の値を有する液晶分子を含むことが好ましい。このような態様とすることにより、コントラストを高めることができる。なお、正の誘電率異方性を有する液晶分子はポジ型液晶ともいい、負の誘電率異方性を有する液晶分子はネガ型液晶ともいう。なお、液晶分子の長軸方向が遅相軸の方向となる。
Δε=(長軸方向の誘電率)-(短軸方向の誘電率) (L)
【0121】
図17及び図18に示すように、CF基板200は、観察面側から背面側に向かって順に、支持基板210、ブラックマトリクス層220、CF層230、及び、平坦化膜240を備える。
【0122】
支持基板210は、透明基板であることが好ましく、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等が挙げられる。
【0123】
ブラックマトリクス層220は、支持基板210上に、ゲート線101及びソース線102に対応するように格子状に設けられており、画素領域外に配置されている。ブラックマトリクス層220の材料は、遮光性を有するものである限り特に限定されないが、黒色顔料を含有した樹脂材料、又は、遮光性を有する金属材料が好適に用いられる。ブラックマトリクス層220は、例えば、黒色顔料を含む感光性樹脂を塗布して成膜し、露光及び現像等を行うフォトリソグラフィ法により形成される。
【0124】
CF層230は、赤色カラーフィルタ230R、緑色カラーフィルタ230G及び青色カラーフィルタ230Bが面内に並べられ、ブラックマトリクス層220で区画された構成を有する。赤色カラーフィルタ230R、緑色カラーフィルタ230G及び青色カラーフィルタ230Bは、例えば、顔料を含有する透明樹脂で構成されている。通常、すべての画素に赤色カラーフィルタ230R、緑色カラーフィルタ230G及び青色カラーフィルタ230Bの組み合わせが配置され、赤色カラーフィルタ230R、緑色カラーフィルタ230G及び青色カラーフィルタ230Bを透過する色光の量を制御しつつ混色させることで各画素において所望の色が得られる。
【0125】
平坦化膜240は、CF層230の液晶層300側の表面を覆う。平坦化膜240は、CF層230の液晶層300側の表面が平坦でない場合に、第二配向膜62の下地を平坦化する機能を有する。また、平坦化膜240によりCF層230中の不純物が液晶層300側へ溶出することを防止できる。例えば、有機絶縁膜(比誘電率ε=3~4)を用いることができ、具体的にはアクリル樹脂が挙げられる。平坦化膜240は、例えば、光硬化性の樹脂を塗布し、紫外線照射及び焼成を行うことにより形成される。
【0126】
液晶パネル20の液晶モードは特に限定されず、液晶層中の液晶分子を基板面に垂直に配向させることで黒表示を行うものであってもよいし、液晶層中の液晶分子を基板面に平行又は垂直でも平行でもない方向に配向させることで黒表示を行うものであってもよい。また、液晶パネルの駆動形式としては、TFT方式(アクティブマトリクス方式)のほか、単純マトリクス方式(パッシブマトリクス方式)、プラズマアドレス方式等であってもよい。
【0127】
液晶パネル20の構成としては、例えば、一方に画素電極及び共通電極が形成された一対の基板間に液晶層を狭持し、画素電極及び共通電極の間に電圧を印加して液晶層に横電界(フリンジ電界を含む)を印加することで表示を行うもの、一方に画素電極、他方に共通電極が形成された一対の基板間に液晶層を狭持し、画素電極及び共通電極の間に電圧を印加して液晶層に縦電界を印加することで表示を行うものが挙げられる。より具体的には、横電界方式としては、電圧無印加時に液晶層中の液晶分子が基板面に対して平行に配向する、FFSモードやIPSモードが挙げられ、縦電界方式としては、電圧無印加時に液晶層中の液晶分子が基板面に対して垂直に配向する、垂直配向(VA:Vertical Alignment)が挙げられる。
【0128】
図15に示されるバックライト40は、光源41と、光源41の観察面側に配置されたプリズムシート42と、を備える。本実施形態の表示装置1は、光源41の観察面側にプリズムシート42を備えるため、正面コントラスト(CR:Contrast Ratio)を高めることができる。
【0129】
バックライト40は、液晶パネル20に対して光を照射するものであれば特に限定されず、直下型やエッジ型やその他のどの方式でもよい。バックライト40は、更に、導光板、反射板等を有していてもよい。
【0130】
光源41は、可視光を含む光を発するものであれば特に限定されず、可視光のみを含む光を発するものであってもよく、可視光及び紫外光の両方を含む光を発するものであってもよい。表示装置1によるカラー表示を可能とするためには、白色光を発する光源が好適に用いられる。光源の種類としては、例えば、冷陰極蛍光灯(CCFL)、発光ダイオード(LED)等が好適に用いられる。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長380nm以上、800nm未満の光(電磁波)を意味する。
【0131】
図20は、実施形態1に係る表示装置が備えるプリズムシートの斜視模式図である。図20に示すように、プリズムシート42は、観察面側の表面に複数列に並ぶプリズム42pを有する。すなわち、プリズムシート42は、観察面側の表面に、互いに平行に延設された複数列のプリズム42pを有する。プリズムシート42の稜線42xは、プリズム42pの凸部の頂点が線状に連続したものであり、いずれも直線状である。
【0132】
プリズムシート42の稜線42xは、方位0°に平行に配置されることが好ましい。より具体的には、稜線42xの方位角は、0°±3°であることが好ましい。ここで、プリズムシートは、斜め光線を正面方向に集光する機能を有するため、稜線に垂直な方位の配光が狭くなる。したがって、プリズムシート42の稜線42xが方位0°に平行に配置されることにより、左右方位(方位0°及び180°)におけるプリズムシート42での集光が上下方位(方位90°及び270°)よりも抑えられ、左右方位において斜めの輝度を高めることが可能となり、広い視野角を実現することができる。このような態様は、左右方位において広い輝度視野角が求められているOEM規格に対して、特に好適に用いられる。
【0133】
第一偏光子31の透過軸及び第二偏光子34の透過軸は、プリズムシート42の稜線42xに平行である、又は、直交することが好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に上下方位における斜め光を抑制することができる。
【0134】
例えば、プリズムシート42の稜線42x、第一偏光子31の透過軸及び第二偏光子34の透過軸は、方位0°に平行に配置されることが好ましい。より具体的には、第一偏光子31が吸収型偏光子であり、第二偏光子34が反射型偏光子である場合、プリズムシート42の稜線42x、第一偏光子31の透過軸及び第二偏光子34の透過軸は方位0°に平行に配置されることが好ましい。すなわち、プリズムシート42の稜線42xは方位0°に平行に配置され、第一偏光子31の吸収軸及び第二偏光子34の反射軸は、方位90°に平行な方向に配置されることが好ましい。
【0135】
また、プリズムシート42の稜線42xは方位0°に平行に配置され、第一偏光子31の透過軸及び第二偏光子34の透過軸は方位90°に平行に配置されることも好ましい。より具体的には、第一偏光子31が吸収型偏光子であり、第二偏光子34が反射型偏光子である場合、プリズムシート42の稜線42xは方位0°に平行に配置され、第一偏光子31の透過軸及び第二偏光子34の透過軸は、方位90°に平行に配置されることが好ましい。すなわち、プリズムシート42の稜線42x、第一偏光子31の吸収軸及び第二偏光子34の反射軸は、方位0°に平行に配置されることが好ましい。
【0136】
バックライト40は、図7に示す2枚のプリズムシート42を備えることが好ましい。すなわち、バックライト40は、稜線42xが方位0°に平行であるプリズムシート42を2枚(第一のプリズムシート421及び第二のプリズムシート422)備えることが好ましい。
【0137】
第一のプリズムシート421は、面内の第一方向に沿って複数が並んで配置されていて面内において上記第一方向と直交する第二方向に沿って延在する第一のプリズム421pを有する。第二のプリズムシート422は、第一のプリズムシート421に対して出光側に配置され、かつ、面内の上記第一方向に沿って複数が並んで配置されていて上記第二方向に沿って延在する第二のプリズム422pを有する。第一のプリズム421p及び第二のプリズム422pは、それぞれ、上記第一方向に並行する底辺と、上記底辺の両端から立ち上がる一対の斜辺と、を有する。
【0138】
バックライト40が、例えば、エッジ型であり、バックライト40の上記第一方向の一方の端部に光源41が配置される場合、第二のプリズム422pの光源41側の斜辺と底辺とのなす角度は、第一のプリズム421pの光源41側の斜辺と底辺とのなす角度よりも小さいことが好ましい。このような態様とすることにより、光の利用効率を高めることができる。
【0139】
第二のプリズム422pの一対の斜辺が底辺に対してなす角度は、同じであることが好ましい。このような態様とすることにより、第二のプリズム422pの一対の斜辺の一方に当たってから他方によって第一のプリズムシート421側に戻される光のリサイクル効率が良好になるので、輝度の向上を図ることができる。また、第二のプリズム422pの一対の斜辺に当たって出射される光のそれぞれに付与される立ち上げ作用が同等になるので、視野角特性がより優れたものとなる。
【0140】
第二のプリズム422pの一対の斜辺同士がなす角度は、80°以上、100°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、輝度を高め、広い視野角特性を実現することができる。
【0141】
第一のプリズム421pの光源41とは反対側の斜辺と底辺とのなす角度は、35°以上、50°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、正面輝度を向上させることができ、かつ、良好な視野角特性を得ることができる。第一のプリズム421pの光源41とは反対側の斜辺と底辺とのなす角度は、45°であることがより好ましい。
【0142】
第一のプリズム421pの光源41側の斜辺と底辺とのなす角度は、50°以上、60°以下であることも好ましい。このような態様とすることにより、正面輝度を向上させることができ、かつ、良好な視野角特性を得ることができる。第一のプリズム421pの光源41側の斜辺と底辺とのなす角度は、55°であることがより好ましい。
【0143】
第一のプリズム421pの屈折率は、1.49以上、1.52以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第一のプリズムシート421の出射光に含まれる短波長の光と長波長の光とが適切な比率となり、特定の色味が付き難くなる。これにより、色ムラの発生が抑制される。
【0144】
図15に示すように、バックライト40は、光源41の背面側に反射板43を備えることが好ましい。反射板43は、光源41から射出され、光学素子30等で反射したリサイクル光を、再度観察面側に反射できるものであればよく、表示装置の分野において通常使用されるものを用いることができる。
【0145】
本実施形態の表示装置1は、上述の部材の他、TCP(テープ・キャリア・パッケージ)、PCB(プリント配線基板)等の外部回路;視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルム;ベゼル(フレーム)等の複数の部材により構成されるものであり、部材によっては、他の部材に組み込まれていてもよい。既に説明した部材以外の部材については特に限定されず、表示装置の分野において通常使用されるものを用いることができるので、説明を省略する。
【0146】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0147】
(比較例1)
図21は、比較例1の表示装置の断面模式図である。図21に示す角度は、軸方位を表す。図22は、比較例1に係る表示装置の各部材の軸方位を示す図である。
【0148】
図21及び図22に示す比較例1の表示装置1Rは、観察面側から背面側に向かって順に、観察面側偏光子11と、液晶パネル20と、第一偏光子31と、第二偏光子34と、バックライト40と、を備えていた。比較例1の表示装置1Rは、通常の液晶表示装置であった。
【0149】
比較例1の表示装置1Rが備える液晶パネル20の構成は、図16図19と同様であった。液晶駆動モードはFFSモードであり、TFT104はIGZOによって形成された薄膜半導体層103を有し、ゲート絶縁膜120及びソース絶縁膜140はSiOの無機絶縁膜であり、平坦化膜150、240はアクリル樹脂であり、層間絶縁膜170は膜厚170Wが0.2μmであるSiNxの無機絶縁膜であり、共通電極160及び画素電極180はIGZO膜であった。液晶層300は、Δε=+2.5であるポジ型液晶を含み、Δn=0.11であった。液晶層300のセルギャップ300Wは3μmであり、画素電極180の幅Lとスリットの幅Sの比L/S=3μm/4μm、単一の画素電極180が設けられる各画素の幅1Wは28μmであった。液晶パネル20は、ヘッドマウント用途の高解像度液晶パネル(2.5型1200ppi)であった。
【0150】
比較例1の観察面側偏光子11は吸収型偏光子であり、透過軸は方位0°に平行、すなわち、吸収軸は方位90°に平行に配置されていた。液晶層300の遅相軸は方位90°に平行に配置されていた。
【0151】
第一偏光子31は吸収型偏光子であり、透過軸は方位90°に平行、すなわち、吸収軸は方位0°に平行に配置されていた。第二偏光子34は、反射型偏光子であり、透過軸は方位90°に平行、すなわち、反射軸は方位0°に平行に配置されていた。
【0152】
また、比較例1では、光源41と、光源41の観察面側に配置された2枚のプリズムシート42とを備えるバックライト40を用いた。2枚のプリズムシート42は、図7に示す2枚のプリズムシート42、すなわち、稜線42xが方位0°に平行である第一のプリズムシート421及び第二のプリズムシート422であった。
【0153】
[透過率視野角の測定]
比較例1の表示装置1Rが備える偏光板ルーバーの透過率視野角を計算した。具体的には、図21において破線で囲まれた領域、すなわち、第一偏光子31から第二偏光子34までの全ての部材(第一偏光子31及び第二偏光子34)からなる光学素子30R(偏光板ルーバー70R)の透過率視野角を、LCD Masterを用いて計算した。
【0154】
図23は、比較例1の偏光板ルーバーの透過率視野角のシミュレーション結果である。図23より、比較例1の偏光板ルーバー70Rは、一般的なパラレルニコル偏光板の透過率と同等であることが分かった。
【0155】
[正面白輝度及び正面CRの測定]
比較例1の表示装置1Rについて、白表示及び黒表示におけるそれぞれの正面輝度をトプコン社製輝度計SR-UL1にて測定した。正面CRは、白表示における正面輝度(正面白輝度)を黒表示における正面輝度(正面黒輝度)で除することにより(正面CR=正面白輝度/正面黒輝度)で算出した。結果を表1に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
表1に示すように、比較例1の表示装置1Rの正面白輝度は500cd/mであり、正面CRは790(正面白輝度:正面黒輝度=790:1)であった。
【0158】
(比較例2)
図24は、比較例2の表示装置の断面模式図である。図24に示す角度は、軸方位を表す。図25は、比較例2に係る表示装置の各部材の軸方位を示す図である。
【0159】
図24及び図25に示す比較例2の表示装置1Rは、第一偏光子31と第二偏光子34との間に、面内位相差260nm、NZ係数1.6の二軸位相差層35が配置されていること以外は、比較例1の表示装置1Rと同様であった。二軸位相差層35の厚さは20μmであり、観察面側のチルト角は0°、背面側のチルト角は0°、正面位相差(面内位相差)は260μmであった。
【0160】
比較例1と同様に、比較例2の表示装置1Rが備える偏光板ルーバー70Rの透過率視野角を計算した。具体的には、図24において破線で囲まれた領域、すなわち、第一偏光子31から第二偏光子34までの全ての部材(第一偏光子31、二軸位相差層35及び第二偏光子34)からなる光学素子30R(偏光板ルーバー70R)の透過率視野角を、LCD Masterを用いて計算した。
【0161】
図26は、比較例2の偏光板ルーバーの透過率視野角のシミュレーション結果である。図26より、比較例2の偏光板ルーバー70Rは、比較例1の偏光板ルーバー70Rに対して、斜め方位(方位45°-225°及び135°-315°)の透過率がやや小さくなっていた。
【0162】
比較例2の表示装置1Rについて、比較例1と同様にして正面白輝度及び正面CRを測定した。結果を表2に示す。
【0163】
【表2】
【0164】
表2に示すように、比較例2の表示装置1Rの正面白輝度は500cd/mであり、比較例1と変わらなかった。比較例2の表示装置1Rの正面CRは814(正面白輝度:正面黒輝度=814:1)であり、比較例1に対してやや増加したがその改善率は5%未満と小さかった。
【0165】
(比較例3)
図27は、比較例3の表示装置の断面模式図である。図27に示す角度は、軸方位を表す。図28は、比較例3に係る表示装置の各部材の軸方位を示す図である。図29は、比較例3に係る表示装置が備える位相差層の断面模式図である。
【0166】
図27及び図28に示す比較例3の表示装置1Rは、第一偏光子31と第二偏光子34との間に、位相差層33Aが配置されていること以外は、比較例1の表示装置1Rと同様であった。位相差層33Aは、図29に示すように、異方性分子のチルト角がフィルム膜厚方向で一定(50°(観察面側のチルト角は50°、背面側のチルト角は50°))であり、かつ、正面視の面内位相差(正面位相差ともいう)が155nmであるチルト配向位相差層であった。位相差層33Aの遅相軸は、方位0°に平行であった。位相差層33Aの厚さは2.2μmであった。
【0167】
比較例1と同様に、比較例3の表示装置1Rが備える偏光板ルーバー70Rの透過率視野角を計算した。具体的には、図27において破線で囲まれた領域、すなわち、第一偏光子31から第二偏光子34までの全ての部材(第一偏光子31、位相差層33A及び第二偏光子34)からなる光学素子30R(偏光板ルーバー70R)の透過率視野角を、LCD Masterを用いて計算した。
【0168】
図30は、比較例3の偏光板ルーバーの透過率視野角のシミュレーション結果である。図30より、比較例3の偏光板ルーバー70Rは、比較例1の偏光板ルーバー70Rに対して、上下方位(方位90°-270°)の透過率が小さくなっているが、絞り範囲は方位90°-270°近傍のみであることが分かった。
【0169】
比較例3の表示装置1Rについて、比較例1と同様にして正面白輝度及び正面CRを測定した。結果を表3に示す。
【0170】
【表3】
【0171】
表3に示すように、比較例3の表示装置1Rの正面白輝度は500cd/mであり、比較例1と変わらなかった。比較例3の表示装置1Rの正面CRは826(正面白輝度:正面黒輝度=826:1)であり、比較例1に対してやや増加したがその改善率は5%未満と小さかった。
【0172】
(実施例1)
図31は、実施例1の表示装置の断面模式図である。図31に示す角度は、軸方位を表す。図32は、実施例2に係る表示装置の各部材の軸方位を示す図である。
【0173】
図31及び図32に示す実施例1の表示装置1は、実施形態1の表示装置1である。実施例1の表示装置1は、第一偏光子31と位相差層33Aとの間に厚さ方向のリタデーションRthが300nmであるネガティブCプレート32が配置されていること以外は、比較例3の表示装置1Rと同様であった。
【0174】
比較例1と同様に、実施例1の表示装置1が備える偏光板ルーバー70の透過率視野角を計算した。具体的には、図31において破線で囲まれた領域、すなわち、第一偏光子31から第二偏光子34までの全ての部材(第一偏光子31、ネガティブCプレート32、位相差層33A及び第二偏光子34)からなる光学素子30(偏光板ルーバー70)の透過率視野角を、LCD Masterを用いて計算した。
【0175】
図33は、実施例1の偏光板ルーバーの透過率視野角のシミュレーション結果である。図33より、実施例1の偏光板ルーバー70は、比較例1の偏光板ルーバー70Rに対して、上下方位(方位90°-270°)の透過率が小さくなっており、かつ、絞り範囲は方位90°-270°を中心に方位30°から150°あたりまで広がっていた。
【0176】
実施例1の表示装置1について、比較例1と同様にして正面白輝度及び正面CRを測定した。結果を表4に示す。
【0177】
【表4】
【0178】
表4に示すように、実施例1の表示装置1の正面白輝度は500cd/mであり、比較例1と変わらなかった。実施例1の表示装置1の正面CRは901(正面白輝度:正面黒輝度=901:1)であり、比較例1に対して14%と大きな改善を示した。
【0179】
更に、実施例1の表示装置において、ネガティブCプレート32の厚さ方向のリタデーションRthを適宜変更し、極角に対する方位角45°での透過率をシミュレーションにより求めた。図34は、実施例1の表示装置の、極角に対する方位角45°での透過率を示したシミュレーション結果である。図34に示すように、ネガティブCプレート32の厚さ方向のリタデーションRthが400nm以下である場合、方位角45°での透過率を抑えられることが分かった。
【0180】
更に、実施例1の表示装置において、位相差層33Aの観察面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A1、及び、位相差層33Aの背面側に位置する異方性分子33ALのチルト角33A2を適宜変更し、極角に対する方位角90°での透過率をシミュレーションにより求めた。なお、各シミュレーションにおいて、チルト角33A1及びチルト角33A2は同じに設定した。図35は、実施例1の表示装置の、極角に対する方位角90°での透過率を示したシミュレーション結果である。図35に示すように、チルト角33A1及びチルト角33A2が40°以上、70°以下である場合、透過率を抑えられることが分かった。特に、チルト角33A1及びチルト角33A2が50°以上、60°以下である場合、効果的に透過率を抑えられることが分かった。
【0181】
(実施例2)
図36は、実施例2の表示装置の断面模式図である。図36に示す角度は、軸方位を表す。図37は、実施例2に係る表示装置の各部材の軸方位を示す図である。
【0182】
図36及び図37に示す実施例2の表示装置1は、実施形態1の表示装置1である。実施例2の表示装置1は、第一偏光子31及び第二偏光子34の透過軸を90°回転させた(すなわち、第一偏光子31の吸収軸及び第二偏光子34の反射軸を90°回転させた)こと以外は、実施例1の表示装置1と同様であった。
【0183】
比較例1と同様に、実施例2の表示装置1が備える偏光板ルーバー70の透過率視野角を計算した。具体的には、図36において破線で囲まれた領域、すなわち、第一偏光子31から第二偏光子34までの全ての部材(第一偏光子31、ネガティブCプレート32、位相差層33A及び第二偏光子34)からなる光学素子30(偏光板ルーバー70)の透過率視野角を、LCD Masterを用いて計算した。
【0184】
図38は、実施例2の偏光板ルーバーの透過率視野角のシミュレーション結果である。図38より、実施例2の偏光板ルーバー70は、比較例1の偏光板ルーバー70Rに対して、上下方位(方位90°-270°)の透過率が小さくなっており、かつ、絞り範囲は方位90°-270°を中心に方位30°から150°あたりまで広がっていた。
【0185】
実施例2の表示装置1について、比較例1と同様にして正面白輝度及び正面CRを測定した。結果を表5に示す。
【0186】
【表5】
【0187】
表5に示すように、実施例2の表示装置1の正面白輝度は500cd/mであり、比較例1と変わらなかった。実施例2の表示装置1の正面CRは916(正面白輝度:正面黒輝度=916:1)であり、比較例1に対して16%と大きな改善を示した。
【0188】
(実施例3)
図39は、実施例3の表示装置の断面模式図である。図39に示す角度は、軸方位を表す。図40は、実施例3に係る表示装置の各部材の軸方位を示す図である。
【0189】
図39及び図40に示す実施例3の表示装置1は、第一偏光子31が、吸収型偏光子31A及び反射型偏光子31Bからなる積層体であること以外は、実施例1の表示装置1と同様であった。吸収型偏光子31Aの吸収軸、及び、反射型偏光子31Bの反射軸は、方位0°に平行であった。
【0190】
比較例1と同様に、実施例3の表示装置1が備える偏光板ルーバー70の透過率視野角を計算した。具体的には、図39において破線で囲まれた領域、すなわち、第一偏光子31から第二偏光子34までの全ての部材(第一偏光子31、ネガティブCプレート32、位相差層33A及び第二偏光子34)からなる光学素子30(偏光板ルーバー70)の透過率視野角を、LCD Masterを用いて計算した。
【0191】
図41は、実施例3の偏光板ルーバーの透過率視野角のシミュレーション結果である。図41より、実施例3の偏光板ルーバー70は、実施例1と同様に位相差層33Aをパラレルニコルに配置された2枚の偏光子で挟む構成であるため、実施例3のシミュレーション結果は実施例1と同様であった。
【0192】
実施例3の表示装置1について、比較例1と同様にして正面白輝度及び正面CRを測定した。結果を表6に示す。
【0193】
【表6】
【0194】
表6に示すように、実施例3の表示装置1の正面白輝度は530cd/mであり、比較例1に対して6%改善した。実施例3の表示装置1の正面CRは869(正面白輝度:正面黒輝度=869:1)であり、比較例1に対して10%と大きな改善を示した。第一偏光子31が反射型偏光子31Bを備えることにより、バックライト40から出るサイドローブ光を吸収するのではなく、一度バックライト40側へ反射させ、バックライト40が備える反射板との間で光をリサイクルすることが可能となるため、正面白輝度を向上させる効果が得られたと考えられる。
【符号の説明】
【0195】
1、1R:表示装置
10R、30、30R:光学素子
11:観察面側偏光子
11R、13R:偏光子
12R:二軸位相差層
20:液晶パネル
31:第一偏光子
31A:吸収型偏光子
31B:反射型偏光子
32:ネガティブCプレート
33A:位相差層
33AL:異方性分子
33A1、33A2:チルト角
34:第二偏光子
35:二軸位相差層
40:バックライト
41:光源
42:プリズムシート
42p、421p、422p:プリズム
42x:稜線
43:反射板
61:第一配向膜
62:第二配向膜
70、70R:偏光板ルーバー
100:薄膜トランジスタ(TFT)基板
101:ゲート線
101G:ゲート電極
102:ソース線
102D:ドレイン電極
102S:ソース電極
103:薄膜半導体層
104:薄膜トランジスタ(TFT)
104CH:コンタクトホール
110、210:支持基板
120:ゲート絶縁膜
130: ソース配線層
140:ソース絶縁膜
150、240:平坦化膜
160:共通電極
170:層間絶縁膜
170W:膜厚
180:画素電極(信号電極)
200:カラーフィルタ(CF)基板
220:ブラックマトリクス層
230:カラーフィルタ(CF)層
230B:青色カラーフィルタ
230G:緑色カラーフィルタ
230R:赤色カラーフィルタ
300:液晶層
300W:セルギャップ
F:測定方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図28
図29
図30
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図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41