(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077971
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20240603BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240603BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240603BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240603BHJP
B60L 55/00 20190101ALI20240603BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20240603BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B60L3/00 J
B60L1/00 L
B60L9/18 J
B60L53/14
B60L55/00
B60L58/10
H02J7/00 P
H02J7/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190240
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昂大
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】柳田 泰次
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503BA04
5G503BB02
5G503CC02
5G503DA07
5G503FA06
5G503FA17
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BB05
5H125BB09
5H125BC01
5H125BC05
5H125BC24
5H125BC29
5H125CD04
5H125DD02
5H125EE47
(57)【要約】
【課題】走行用のモータへの電力路とは別の電力路に設けられたリレーの劣化を抑えやすくする。
【解決手段】車両用電源装置10は、第1リレー(例えば第1正極側リレー11)と、
第2リレー(例えば第2正極側リレー13)と、DCDCコンバータ15と、を備える。DCDCコンバータ15は、第1分岐路42における第1リレーと第1コンデンサ45との間の電気経路である第1導電路(例えば第1正極側導電線61)と、低圧バッテリ53との間に設けられ、第1導電路(例えば第1正極側導電線61)側から入力された電圧を降圧して低圧バッテリ53側に出力する。DCDCコンバータ15は、第2分岐路50における第2リレーと第2コンデンサ52との間の電気経路である第2導電路(例えば第2正極側導電線63)と、低圧バッテリ53との間に設けられ、低圧バッテリ53側から入力された電圧を昇圧する昇圧動作を行って第2コンデンサ52に電力を供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧バッテリと、前記高圧バッテリからの電力が供給される共通経路と、前記共通経路から分岐する第1分岐路と、前記第1分岐路を介して前記高圧バッテリに基づく電力が供給される走行用のモータと、前記第1分岐路に接続され前記高圧バッテリと前記モータとの間で電力を変換する電力変換部と、前記電力変換部よりも前記高圧バッテリ側において前記第1分岐路に接続される第1コンデンサと、前記共通経路から分岐する第2分岐路と、前記第2分岐路に接続され前記高圧バッテリと電力の授受を行う授受部と、前記授受部よりも前記高圧バッテリ側において前記第2分岐路に接続される第2コンデンサと、低圧バッテリと、を備える車両用電源システムに用いられる車両用電源装置であって、
前記第1コンデンサよりも前記高圧バッテリ側において前記第1分岐路に設けられる第1リレーと、
前記第2コンデンサよりも前記高圧バッテリ側において前記第2分岐路に設けられる第2リレーと、
前記第1分岐路における前記第1リレーと前記第1コンデンサとの間の電気経路である第1導電路と、前記低圧バッテリとの間に設けられ、前記第1導電路側から入力された電圧を降圧して前記低圧バッテリ側に出力するDCDCコンバータと、を備え、
前記DCDCコンバータは、前記第2分岐路における前記第2リレーと前記第2コンデンサとの間の電気経路である第2導電路と、前記低圧バッテリとの間に設けられ、前記低圧バッテリ側から入力された電圧を昇圧する昇圧動作を行って前記第2コンデンサに電力を供給する
車両用電源装置。
【請求項2】
前記DCDCコンバータは、前記昇圧動作で昇圧した電圧を高圧側導電路に印加する構成であり、
前記高圧側導電路は、第3導電路を介して前記第1導電路に接続され、第4導電路を介して前記第2導電路に接続され、
さらに、前記第3導電路に設けられるスイッチ部を備える
請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記第4導電路に設けられる第2スイッチ部を備え、
前記スイッチ部がオン状態で且つ前記第2スイッチ部がオフ状態である状態において前記DCDCコンバータが前記昇圧動作を行った場合に、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサのうち前記第1コンデンサにのみ前記DCDCコンバータからの電力が供給され、
前記スイッチ部がオフ状態で且つ前記第2スイッチ部がオン状態である状態において前記DCDCコンバータが前記昇圧動作を行った場合に、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサのうち前記第2コンデンサにのみ前記DCDCコンバータからの電力が供給される
請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記第1リレー、前記第2リレー、前記スイッチ部、前記第2スイッチ部、及び前記DCDCコンバータを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの両方をプリチャージする条件が成立した場合に、前記スイッチ部をオン状態に制御し且つ前記第2スイッチ部をオフ状態に制御した状態で前記DCDCコンバータに前記昇圧動作を行わせることで前記第1コンデンサをプリチャージし、前記第1コンデンサをプリチャージした後に前記第1リレーをオン状態に切り替え、前記第1リレーをオン状態に切り替えた後に前記第2スイッチ部をオン状態に切り替えて前記DCDCコンバータに前記昇圧動作を行わせることで前記第2コンデンサをプリチャージし、前記第2コンデンサをプリチャージした後に前記第2リレーをオン状態に切り替える
請求項3に記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記DCDCコンバータを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの両方をプリチャージする条件が成立した場合に、前記DCDCコンバータに前記昇圧動作を行わせて前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの両方を同時期にプリチャージする
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用電源装置。
【請求項6】
プリチャージリレーと抵抗部を直列に接続した構成をなすプリチャージ回路を備え、
前記プリチャージ回路は、前記第1リレー及び前記第2リレーのうち前記第1リレーのみに対して並列に設けられ、前記プリチャージリレーがオン状態のときに前記高圧バッテリからの電力に基づいて前記第1コンデンサをプリチャージする
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池モジュールで構成される駆動用バッテリが開示されている。この駆動用バッテリは、メインコンタクタが設けられた高電圧ラインを介してMCUインバータに高電圧の直流電力を供給する。MCUインバータは、モータに駆動交流電力を供給する。
【0003】
また、駆動用バッテリは、車外充電装置から急速充電用高電圧ラインを介して高電圧の電力が供給される。急速充電用高電圧ラインには、急速充電コンタクタが設けられている。
【0004】
特許文献1の構成によれば、急速充電コンタクタをオン状態に切り替えることで、メインコンタクタをオン状態に切り替えることなく、車外充電装置からの充電が可能となる。このため、メインコンタクタの劣化が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンタクタは、両端の電位差が生じている状態でオン状態に切り替えられると、突入電流が生じて劣化する。そのため、特許文献1の構成では、急速充電コンタクタをオン状態に切り替えるときには、急速充電コンタクタに突入電流が生じ、急速充電コンタクタが劣化することが懸念される。このような問題は、走行用のモータへの電力路とは別の電力路にリレーを設けた他の構成においても同様に生じる。
【0007】
本開示は、走行用のモータへの電力路とは別の電力路に設けられたリレーの劣化を抑えやすい技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の車両用電源装置は、
高圧バッテリと、前記高圧バッテリからの電力が供給される共通経路と、前記共通経路から分岐する第1分岐路と、前記第1分岐路を介して前記高圧バッテリに基づく電力が供給される走行用のモータと、前記第1分岐路に接続され前記高圧バッテリと前記モータとの間で電力を変換する電力変換部と、前記電力変換部よりも前記高圧バッテリ側において前記第1分岐路に接続される第1コンデンサと、前記共通経路から分岐する第2分岐路と、前記第2分岐路に接続され前記高圧バッテリと電力の授受を行う授受部と、前記授受部よりも前記高圧バッテリ側において前記第2分岐路に接続される第2コンデンサと、低圧バッテリと、を備える車両用電源システムに用いられる車両用電源装置であって、
前記第1コンデンサよりも前記高圧バッテリ側において前記第1分岐路に設けられる第1リレーと、
前記第2コンデンサよりも前記高圧バッテリ側において前記第2分岐路に設けられる第2リレーと、
前記第1分岐路における前記第1リレーと前記第1コンデンサとの間の電気経路である第1導電路と、前記低圧バッテリとの間に設けられ、前記第1導電路側から入力された電圧を降圧して前記低圧バッテリ側に出力するDCDCコンバータと、を備え、
前記DCDCコンバータは、前記第2分岐路における前記第2リレーと前記第2コンデンサとの間の電気経路である第2導電路と、前記低圧バッテリとの間に設けられ、前記低圧バッテリ側から入力された電圧を昇圧する昇圧動作を行って前記第2コンデンサに電力を供給する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る技術は、走行用のモータへの電力路とは別の電力路に設けられたリレーの劣化を抑えやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の車両用電源装置を備えた車両用電源システムを概略的に示す回路図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態において、DCDCコンバータから第1コンデンサ及び第2コンデンサに電力が供給される状態を概念的に示す説明図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の車両用電源装置を備えた車両用電源システムを概略的に示す回路図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態において、DCDCコンバータから第2コンデンサに電力が供給される状態を概念的に示す説明図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態の車両用電源装置を備えた車両用電源システムを概略的に示す回路図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態において、DCDCコンバータから第1コンデンサに電力が供給される状態を概念的に示す説明図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態において、DCDCコンバータから第2コンデンサに電力が供給される状態を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0012】
〔1〕高圧バッテリと、前記高圧バッテリからの電力が供給される共通経路と、前記共通経路から分岐する第1分岐路と、前記第1分岐路を介して前記高圧バッテリに基づく電力が供給される走行用のモータと、前記第1分岐路に接続され前記高圧バッテリと前記モータとの間で電力を変換する電力変換部と、前記電力変換部よりも前記高圧バッテリ側において前記第1分岐路に接続される第1コンデンサと、前記共通経路から分岐する第2分岐路と、前記第2分岐路に接続され前記高圧バッテリと電力の授受を行う授受部と、前記授受部よりも前記高圧バッテリ側において前記第2分岐路に接続される第2コンデンサと、低圧バッテリと、を備える車両用電源システムに用いられる車両用電源装置であって、
前記第1コンデンサよりも前記高圧バッテリ側において前記第1分岐路に設けられる第1リレーと、
前記第2コンデンサよりも前記高圧バッテリ側において前記第2分岐路に設けられる第2リレーと、
前記第1分岐路における前記第1リレーと前記第1コンデンサとの間の電気経路である第1導電路と、前記低圧バッテリとの間に設けられ、前記第1導電路側から入力された電圧を降圧して前記低圧バッテリ側に出力するDCDCコンバータと、を備え、
前記DCDCコンバータは、前記第2分岐路における前記第2リレーと前記第2コンデンサとの間の電気経路である第2導電路と、前記低圧バッテリとの間に設けられ、前記低圧バッテリ側から入力された電圧を昇圧する昇圧動作を行って前記第2コンデンサに電力を供給する
車両用電源装置。
【0013】
上記車両用電源装置は、第2リレーがオン状態に切り替わることで、第1リレーがオン状態に切り替わることなく、高圧バッテリと授受部で電力の授受を行うことができる。このため、第1リレーをオン状態に切り替えることに起因する第1リレーの劣化を抑えることができる。さらに、上記車両用電源装置は、低圧バッテリの充電に用いられるDCDCコンバータを利用して、第2コンデンサをプリチャージすることができる。このため、上記車両用電源装置は、第2リレーをオン状態に切り替えるときに生じる突入電流を抑え、第2リレーの劣化を抑えることができる。つまり、上記車両用電源装置は、走行用のモータへの電力路とは別の電力路に設けられた第2リレーの劣化を抑えやすい。
【0014】
〔2〕前記DCDCコンバータは、前記昇圧動作で昇圧した電圧を高圧側導電路に印加する構成であり、
前記高圧側導電路は、第3導電路を介して前記第1導電路に接続され、第4導電路を介して前記第2導電路に接続され、
さらに、前記第3導電路に設けられるスイッチ部を備える
〔1〕に記載の車両用電源装置。
【0015】
上記車両用電源装置は、スイッチ部がオン状態のときに、高圧バッテリからの電力を第3導電路及びDCDCコンバータを介して低圧バッテリに供給することができる。また、上記車両用電源装置は、第4導電路を介してDCDCコンバータからの電力を第2コンデンサに供給する際、スイッチ部をオフ状態にしておくことで、DCDCコンバータからの電力が第1導電路に供給されることを防止することができる。このため、上記車両用電源装置は、第2コンデンサをプリチャージする際に、DCDCコンバータからの電力が第1コンデンサに消費されることを防止することができるとともに、第2コンデンサの充電速度の遅延に繋がることを回避することができる。
【0016】
〔3〕前記第4導電路に設けられる第2スイッチ部を備え、
前記スイッチ部がオン状態で且つ前記第2スイッチ部がオフ状態である状態において前記DCDCコンバータが前記昇圧動作を行った場合に、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサのうち前記第1コンデンサにのみ前記DCDCコンバータからの電力が供給され、
前記スイッチ部がオフ状態で且つ前記第2スイッチ部がオン状態である状態において前記DCDCコンバータが前記昇圧動作を行った場合に、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサのうち前記第2コンデンサにのみ前記DCDCコンバータからの電力が供給される
〔2〕に記載の車両用電源装置。
【0017】
上記車両用電源装置は、DCDCコンバータからの電力供給を、第1コンデンサ及び第2コンデンサに対して選択的に行うことができる。
【0018】
〔4〕前記第1リレー、前記第2リレー、前記スイッチ部、前記第2スイッチ部、及び前記DCDCコンバータを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの両方をプリチャージする条件が成立した場合に、前記スイッチ部をオン状態に制御し且つ前記第2スイッチ部をオフ状態に制御した状態で前記DCDCコンバータに前記昇圧動作を行わせることで前記第1コンデンサをプリチャージし、前記第1コンデンサをプリチャージした後に前記第1リレーをオン状態に切り替え、前記第1リレーをオン状態に切り替えた後に前記第2スイッチ部をオン状態に切り替えて前記DCDCコンバータに前記昇圧動作を行わせることで前記第2コンデンサをプリチャージし、前記第2コンデンサをプリチャージした後に前記第2リレーをオン状態に切り替える
〔3〕に記載の車両用電源装置。
【0019】
上記車両用電源装置は、第1コンデンサ及び第2コンデンサの両方をプリチャージする条件が成立した場合に、第1コンデンサのプリチャージを優先させることができる。このため、上記車両用電源装置は、第1分岐路を介した電力供給の開始を早期化しやすく、ひいては、モータの駆動開始を早期化しやすい。
【0020】
〔5〕前記DCDCコンバータを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの両方をプリチャージする条件が成立した場合に、前記DCDCコンバータに前記昇圧動作を行わせて前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの両方を同時期にプリチャージする
〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の車両用電源装置。
【0021】
上記車両用電源装置は、第1コンデンサ及び第2コンデンサの両方をプリチャージする条件が成立した場合に、低圧バッテリの充電に用いられるDCDCコンバータを利用して、第1コンデンサ及び第2コンデンサの両方を同時期にプリチャージすることができる。
【0022】
〔6〕プリチャージリレーと抵抗部を直列に接続した構成をなすプリチャージ回路を備え、
前記プリチャージ回路は、前記第1リレー及び前記第2リレーのうち前記第1リレーのみに対して並列に設けられ、前記プリチャージリレーがオン状態のときに前記高圧バッテリからの電力に基づいて前記第1コンデンサをプリチャージする
〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の車両用電源装置。
【0023】
上記車両用電源装置は、プリチャージリレーをオン状態に切り替えることで、DCDCコンバータによるプリチャージと比較して急速に第1コンデンサをプリチャージすることができる。さらに、上記車両用電源装置は、第2リレーに対してプリチャージ回路を設けることなく、DCDCコンバータを利用して第2コンデンサをプリチャージすることができる。
【0024】
<第1実施形態>
1.車両用電源システム100の構成
図1には、車両用電源装置10を備えた車両用電源システム100が示されている。車両用電源システム100は、図示しない車両に用いられる。車両は、電気自動車であってもよいし、燃料電池自動車であってもよいし、ハイブリッド車であってもよい。
【0025】
車両用電源システム100は、高圧バッテリ40と、共通経路41と、第1分岐路42と、走行用のモータ43と、電力変換部44と、第1コンデンサ45と、を備える。
【0026】
高圧バッテリ40は、リチウムイオンバッテリであってもよいし、鉛バッテリであってもよいし、その他のバッテリであってもよい。高圧バッテリ40の満充電時の電圧は、例えば、400Vであってもよいし、800Vであってもよいし、その他であってもよい。
【0027】
共通経路41は、高圧バッテリ40からの電力が供給される電気経路である。共通経路41は、高圧バッテリ40に接続される。共通経路41は、正極側共通線41Aと、負極側共通線41Bと、を含む、正極側共通線41Aは、高圧バッテリ40の正極に接続される。負極側共通線41Bは、高圧バッテリ40の負極に接続される。負極側共通線41Bは、図示しないグラウンドに接続される。共通経路41(より具体的には、正極側共通線41A)には、高圧バッテリ40の出力電圧が印加される。なお、本明細書において、電圧とは、負極側共通線41Bの電位を基準とした電圧であり、グラウンドの電位を基準とした電圧である。
【0028】
第1分岐路42は、共通経路41から分岐した電気経路である。第1分岐路42は、正極側共通線41Aから分岐した第1正極側分岐線42Aと、負極側共通線41Bから分岐した第1負極側分岐線42Bと、を含む。
【0029】
電力変換部44は、第1分岐路42に接続される。電力変換部44は、高圧バッテリ40とモータ43との間で電力を変換する。電力変換部44は、本実施形態では、高圧バッテリ40側から供給された直流電力を交流電力に変換してモータ43に供給する機能を有する。電力変換部44は、本実施形態では、インバータである。
【0030】
第1コンデンサ45は、電力変換部44よりも高圧バッテリ40側において第1分岐路42に接続される。第1コンデンサ45の一端は、第1正極側分岐線42Aに接続され、第1コンデンサ45の他端は、第1負極側分岐線42Bに接続される。第1コンデンサ45は、高圧バッテリ40と電力変換部44との間において第1分岐路42に印加された電圧を平滑化する平滑コンデンサとして機能する。
【0031】
車両用電源システム100は、第2分岐路50と、授受部51と、第2コンデンサ52と、低圧バッテリ53と、低圧負荷54と、を備える。
【0032】
第2分岐路50は、共通経路41から分岐した電気経路である。第2分岐路50は、正極側共通線41Aから分岐した第2正極側分岐線50Aと、負極側共通線41Bから分岐した第2負極側分岐線50Bと、を含む。
【0033】
授受部51は、第2分岐路50に接続される。授受部51は、高圧バッテリ40と電力の授受を行う。ここで、「授受」とは、高圧バッテリ40に基づく電力を授受部51に供給すること、及び授受部51に基づく電力を高圧バッテリ40に供給すること、の少なくとも一方のことである。授受部51は、例えばV2X(Vehicle to everything)通信を利用する電気機器であってもよい。授受部51は、車載機器であってもよいし、車外の電気機器であってもよい。より具体的には、授受部51は、車載充電器(例えばオンボードチャージャ)であってもよいし、車外充電器(例えばオフボードチャージャ)であってもよい。授受部51が車載機器である場合には、車両用電源システム100全体が車両に搭載される。授受部51が車外の電気機器である場合には、車両用電源システム100のうち授受部51以外の構成が車両に搭載される。
【0034】
第2コンデンサ52は、授受部51よりも高圧バッテリ40側において第2分岐路50に接続される。第2コンデンサ52の一端は、第2正極側分岐線50Aに接続され、第2コンデンサ52の他端は、第2負極側分岐線50Bに接続される。第2コンデンサ52は、高圧バッテリ40と授受部51との間において第2分岐路50に印加された電圧を平滑化する平滑コンデンサとして機能する。
【0035】
低圧バッテリ53は、満充電時の電圧が高圧バッテリ40の満充電時の電圧よりも低いバッテリである。低圧バッテリ53は、リチウムイオンバッテリであってもよいし、鉛バッテリであってもよいし、その他のバッテリであってもよい。低圧バッテリ53の満充電時の電圧は、例えば、12Vであってもよいし、その他であってもよい。
【0036】
低圧負荷54は、車載用の電気機器である。低圧負荷54は、例えば低圧バッテリ53からの電力に基づいて駆動される。低圧負荷54は、セルモータ、オルタネータ、電動パワーステアリングシステム、電動パーキングブレーキ、照明、ワイパー駆動部、ナビゲーション装置等を含んでいてもよい。
【0037】
2.車両用電源装置10の構成
車両用電源装置10は、第1正極側リレー11と、第1負極側リレー12と、第2正極側リレー13と、第2負極側リレー14と、DCDCコンバータ15と、プリチャージ回路16と、制御部17と、を備える。
【0038】
第1正極側リレー11及び第1負極側リレー12は、第1リレーの一例に相当する。第1正極側リレー11は、第1コンデンサ45よりも高圧バッテリ40側において第1正極側分岐線42Aに設けられる。第1負極側リレー12は、第1コンデンサ45よりも高圧バッテリ40側において第1負極側分岐線42Bに設けられる。
【0039】
第2正極側リレー13及び第2負極側リレー14は、第2リレーの一例に相当する。第2正極側リレー13は、第2コンデンサ52よりも高圧バッテリ40側において第2正極側分岐線50Aに設けられる。第2負極側リレー14は、第2コンデンサ52よりも高圧バッテリ40側において第2負極側分岐線50Bに設けられる。
【0040】
第1正極側リレー11、第1負極側リレー12、第2正極側リレー13、第2負極側リレー14は、いずれも機械式のリレーであり、接点を有する。第1正極側リレー11、第1負極側リレー12、第2正極側リレー13、第2負極側リレー14は、いずれもオン状態のときに接点が閉じた状態となり、オフ状態のときに接点が開いた状態となる。
【0041】
第1分岐路42(より具体的には、第1正極側分岐線42A)における第1正極側リレー11と第1コンデンサ45との間の電気経路は、第1正極側導電線61である。第1分岐路42(より具体的には、第1負極側分岐線42B)における第1負極側リレー12と第1コンデンサ45との間の電気経路は、第1負極側導電線62である。第1正極側導電線61及び第1負極側導電線62は、第1導電路の一例に相当する。
【0042】
第2分岐路50(より具体的には、第2正極側分岐線50A)における第2正極側リレー13と第2コンデンサ52との間の電気経路は、第2正極側導電線63である。第2分岐路50(より具体的には、第2負極側分岐線50B)における第2負極側リレー14と第2コンデンサ52との間の電気経路は、第2負極側導電線64である。第2正極側導電線63及び第2負極側導電線64は、第2導電路の一例に相当する。
【0043】
DCDCコンバータ15は、第1正極側導電線61及び第1負極側導電線62と、低圧バッテリ53との間に設けられる。DCDCコンバータ15は、第1正極側導電線61及び第1負極側導電線62側から入力された電圧を降圧して低圧バッテリ53側に出力する降圧動作を行う。また、DCDCコンバータ15は、低圧バッテリ53側から入力された電圧を昇圧して第1正極側導電線61及び第1負極側導電線62側に出力する昇圧動作を行う。
【0044】
DCDCコンバータ15は、第2正極側導電線63及び第2負極側導電線64と、低圧バッテリ53との間に設けられる。DCDCコンバータ15は、第2正極側導電線63及び第2負極側導電線64側から入力された電圧を降圧して低圧バッテリ53側に出力する降圧動作を行う。また、DCDCコンバータ15は、低圧バッテリ53側から入力された電圧を昇圧して第2正極側導電線63及び第2負極側導電線64側に出力する昇圧動作を行う。
【0045】
DCDCコンバータ15は、降圧動作において、正極高圧側導電線65(より具体的には、正極高圧側導電線65と負極高圧側導電線66との間)に印加された電圧を降圧して正極低圧側導電線67(より具体的には、正極低圧側導電線67と負極低圧側導電線68との間)に印加する。
【0046】
DCDCコンバータ15は、昇圧動作において、正極低圧側導電線67(より具体的には、正極低圧側導電線67と負極低圧側導電線68との間)に印加された電圧を昇圧して正極高圧側導電線65(より具体的には、正極高圧側導電線65と負極高圧側導電線66との間)に印加する。
【0047】
正極高圧側導電線65及び負極高圧側導電線66は、高圧側導電路の一例に相当する。正極高圧側導電線65は、第1正極側導電線61と第2正極側導電線63とに接続される。負極高圧側導電線66は、第1負極側導電線62と第2負極側導電線64とに接続される。正極高圧側導電線65は、第1正極側導電線61を介して、第1コンデンサ45(より具体的には、第1コンデンサ45の一端)に短絡し、第2正極側導電線63を介して、第2コンデンサ52(より具体的には、第2コンデンサ52の一端)に短絡する。負極高圧側導電線66は、第1負極側導電線62を介して、第1コンデンサ45(より具体的には、第1コンデンサ45の他端)に短絡し、第2負極側導電線64を介して、第2コンデンサ52(より具体的には、第2コンデンサ52の他端)に短絡する。このため、DCDCコンバータ15が昇圧動作を行った場合には、DCDCコンバータ15から第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52に電力が供給される。つまり、DCDCコンバータ15は、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52をプリチャージすることができる。
【0048】
正極低圧側導電線67及び負極低圧側導電線68は、低圧側導電路の一例に相当する。正極低圧側導電線67には、低圧バッテリ53の正極が接続され、低圧負荷54の一端が接続される。負極低圧側導電線68には、低圧バッテリ53の負極が接続され、低圧負荷54の他端が接続される。
【0049】
プリチャージ回路16は、プリチャージリレー20と抵抗部21を直列に接続した構成をなす。プリチャージ回路16は、第1正極側リレー11に対して並列に設けられる。プリチャージ回路16は、第1正極側リレー11、第1負極側リレー12、第2正極側リレー13、第2負極側リレー14のうち、第1正極側リレー11のみに対して並列に設けられる。プリチャージ回路16の一端は、高圧バッテリ40の正極に短絡する。プリチャージ回路16の他端は、第1コンデンサ45の一端に短絡し、第2コンデンサ52の一端に短絡する。プリチャージリレー20がオン状態のときには、高圧バッテリ40に基づく電力が、プリチャージ回路16を介して第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52に供給される。つまり、プリチャージ回路16は、プリチャージリレー20がオン状態のときに、高圧バッテリ40からの電力に基づいて第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52をプリチャージする。
【0050】
3.制御部17の構成
制御部17は、例えばMCU(Micro Controller Unit)などの集積回路を含んで構成される。制御部17は、CPUなどの処理部、ROM,RAMなどの記憶部を含む。制御部17は、第1正極側リレー11、第1負極側リレー12、第2正極側リレー13、第2負極側リレー14、プリチャージリレー20、DCDCコンバータ15を制御する。
【0051】
制御部17は、プリチャージ回路16を利用して、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52をプリチャージすることができる。制御部17は、第1負極側リレー12及びプリチャージリレー20をオン状態に切り替えることで、高圧バッテリ40からの電力を、プリチャージ回路16を介して、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52に供給させる。これにより、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52がプリチャージされる。この構成によれば、DCDCコンバータ15を利用してプリチャージする場合と比較して、急速に第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の電圧を上昇させることができる。但し、この場合、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の電圧は、高圧バッテリ40の電圧に近づくにつれて上昇速度が低下する。第1正極側リレー11の両端で電位差が生じている状態で第1正極側リレー11がオン状態に切り替えられると、少なからず、第1正極側リレー11に突入電流が流れ、第1正極側リレー11の劣化に繋がる。
【0052】
制御部17は、DCDCコンバータ15を利用して、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52をプリチャージすることができる。制御部17は、DCDCコンバータ15に昇圧動作を行わせることで、低圧バッテリ53に基づく電力を、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52に供給させる。これにより、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52がプリチャージされる。この構成によれば、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の電圧を、高圧バッテリ40の電圧と同じ電圧まで上昇させることができる。このため、第1正極側リレー11、第1負極側リレー12、第2正極側リレー13、第2負極側リレー14をオン状態に切り替えたときのリレーの劣化を抑えやすい。
【0053】
制御部17は、第1コンデンサ45をプリチャージする条件が成立した場合、例えばプリチャージリレー20及び第1負極側リレー12をオン状態に切り替えて、第1コンデンサ45をプリチャージする。このとき、第2コンデンサ52も充電される。制御部17は、第1コンデンサ45の電圧がある程度上昇したところで、第1正極側リレー11をオン状態に切り替え、プリチャージリレー20をオフ状態に切り替える。これにより、高圧バッテリ40に基づく電力が電力変換部44に供給される。また、電力変換部44が制御部17又は別の制御装置に制御されて電力変換動作を行うことで、電力変換部44で交流電力が生成され、当該交流電力がモータ43に供給される。なお、第1コンデンサ45をプリチャージする条件は、例えばモータ43の駆動を開始させる条件であってもよいし、車両の始動スイッチがオン状態に切り替わったことであってもよい。制御部17は、始動スイッチのオンオフ状態を特定可能な信号を外部から受信する構成とされ、当該信号に基づいて始動スイッチのオンオフ状態を特定する。始動スイッチは、車両が電気自動車又は燃料電池自動車である場合にはパワースイッチであり、車両がハイブリッド車である場合にはイグニッションスイッチである。また、第1コンデンサ45の電圧がある程度上昇したことの判定方法としては、第1コンデンサ45の電圧が所定値を超えたことを判定してもよいし、第1正極側リレー11の両端の電位差が所定値未満になったことを判定してもよいし、プリチャージ回路16を流れる電流の値が所定値未満になったことを判定してもよいし、プリチャージ時間が所定時間経過したことを判定してもよいし、別の方法であってもよい。
【0054】
制御部17は、第2コンデンサ52をプリチャージする条件が成立した場合、例えばDCDCコンバータ15に昇圧動作を行わせ、第2コンデンサ52をプリチャージする(
図2参照)。このとき、第1コンデンサ45も充電される。制御部17は、第2コンデンサ52の電圧がある程度上昇したところで、第2正極側リレー13及び第2負極側リレー14をオン状態に切り替える。これにより、高圧バッテリ40と授受部51が導通し、互いに電力の授受を行うことが可能な状態となる。この構成によれば、第1正極側リレー11をオン状態に切り替えることなく、高圧バッテリ40と授受部51で電力の授受を行うことが可能な状態にすることができる。したがって、第1正極側リレー11をオン状態に切り替える必要が無いので、第1正極側リレー11をオン状態に切り替えることによる第1正極側リレー11の劣化を抑えることができる。なお、第2コンデンサ52をプリチャージする条件は、例えば授受部51の作動を開始させる条件であってもよいし、別の条件であってもよい。また、第2コンデンサ52をプリチャージする条件は、第1コンデンサ45をプリチャージする条件と同じ条件であってもよいし、異なる条件であってもよい。また、第2コンデンサ52の電圧がある程度上昇したことの判定方法としては、第2コンデンサ52の電圧が所定値を超えたことを判定してもよいし、第2正極側リレー13又は第2負極側リレー14の両端の電位差が所定値未満になったことを判定してもよいし、第2正極側導電線63を流れる電流の値が所定値未満になったことを判定してもよいし、プリチャージ時間が所定時間経過したことを判定してもよいし、別の方法であってもよい。
【0055】
4.効果の例
車両用電源装置10は、第2正極側リレー13及び第2負極側リレー14がオン状態に切り替わることで、第1正極側リレー11がオン状態に切り替わることなく、高圧バッテリ40と授受部51で電力の授受を行うことができる。このため、第1正極側リレー11をオン状態に切り替えることに起因する第1正極側リレー11の劣化を抑えることができる。さらに、車両用電源装置10は、低圧バッテリ53の充電に用いられるDCDCコンバータ15を利用して、第2コンデンサ52をプリチャージすることができる。このため、車両用電源装置10は、第2正極側リレー13をオン状態に切り替えるときに生じる突入電流を抑え、第2正極側リレー13の劣化を抑えることができる。つまり、車両用電源装置10は、走行用のモータ43への電力路とは別の電力路に設けられた第2正極側リレー13の劣化を抑えやすい。
【0056】
車両用電源装置10は、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の両方をプリチャージする条件が成立した場合に、低圧バッテリ53の充電に用いられるDCDCコンバータ15を利用して、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の両方を同時期にプリチャージすることができる。
【0057】
車両用電源装置10は、プリチャージリレー20をオン状態に切り替えることで、DCDCコンバータ15によるプリチャージと比較して急速に第1コンデンサ45をプリチャージすることができる。さらに、車両用電源装置10は、第2正極側リレー13に対してプリチャージ回路を設けることなく、DCDCコンバータ15を利用して第2コンデンサ52をプリチャージすることができる。
【0058】
<第2実施形態>
第2実施形態では、DCDCコンバータを利用して第2コンデンサをプリチャージする際に、DCDCコンバータから第1コンデンサへの電流の流れを遮断することが可能な構成について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0059】
第2実施形態の車両用電源システム200は、
図3に示すように、高圧バッテリ40と、共通経路41と、第1分岐路42と、走行用のモータ43と、電力変換部44と、第1コンデンサ45と、第2分岐路50と、授受部51と、第2コンデンサ52と、低圧バッテリ53と、低圧負荷54と、車両用電源装置210と、を備える。
【0060】
車両用電源装置210は、第1正極側リレー11と、第1負極側リレー12と、第2正極側リレー13と、第2負極側リレー14と、DCDCコンバータ15と、プリチャージ回路16と、制御部17と、正極側スイッチ部71と、負極側スイッチ部72と、を備える。
【0061】
DCDCコンバータ15は、降圧動作において、正極高圧側導電線265(より具体的には、正極高圧側導電線265と負極高圧側導電線266との間)に印加された電圧を降圧して正極低圧側導電線67(より具体的には、正極低圧側導電線67と負極低圧側導電線68との間)に印加する。
【0062】
DCDCコンバータ15は、昇圧動作において、正極低圧側導電線67(より具体的には、正極低圧側導電線67と負極低圧側導電線68との間)に印加された電圧を昇圧して正極高圧側導電線265(より具体的には、正極高圧側導電線265と負極高圧側導電線266との間)に印加する。
【0063】
正極高圧側導電線265及び負極高圧側導電線266は、高圧側導電路の一例に相当する。正極高圧側導電線265は、正極高圧側導電線265から分岐した第3正極側導電線81を介して第1正極側導電線61に接続される。正極高圧側導電線265は、正極高圧側導電線265から分岐した第4正極側導電線83を介して第2正極側導電線63に接続される。第3正極側導電線81は、第3導電路の一例に相当する。第4正極側導電線83は、第4導電路の一例に相当する。正極高圧側導電線265は、第3正極側導電線81及び第1正極側導電線61を介して、第1コンデンサ45(より具体的には、第1コンデンサ45の一端)に短絡する。正極高圧側導電線265は、第4正極側導電線83及び第2正極側導電線63を介して、第2コンデンサ52(より具体的には、第2コンデンサ52の一端)に短絡する。
【0064】
負極高圧側導電線266は、負極高圧側導電線266から分岐した第3負極側導電線82を介して第1負極側導電線62に接続される。負極高圧側導電線266は、負極高圧側導電線266から分岐した第4負極側導電線84を介して第2負極側導電線64に接続される。第3負極側導電線82は、第3導電路の一例に相当する。第4負極側導電線84は、第4導電路の一例に相当する。負極高圧側導電線266は、第3負極側導電線82及び第1負極側導電線62を介して、第1コンデンサ45(より具体的には、第1コンデンサ45の他端)に短絡する。負極高圧側導電線266は、第4負極側導電線84及び第2負極側導電線64を介して、第2コンデンサ52(より具体的には、第2コンデンサ52の他端)に短絡する。
【0065】
正極側スイッチ部71及び負極側スイッチ部72は、スイッチ部の一例に相当する。正極側スイッチ部71は、第3正極側導電線81に設けられる。負極側スイッチ部72は、第3負極側導電線82に設けられる。正極側スイッチ部71及び負極側スイッチ部72は、それぞれ接点を有する機械式のスイッチを含んで構成されてもよいし、半導体スイッチを含んで構成されてもよい。正極側スイッチ部71及び負極側スイッチ部72は、それぞれオン状態のときに、双方向の電流の流れを許容し、オフ状態のときに双方向の電流の流れを遮断する。
【0066】
正極側スイッチ部71及び負極側スイッチ部72の両方がオン状態である状態においてDCDCコンバータ15が昇圧動作を行った場合には、DCDCコンバータ15から第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52に電力が供給される。つまり、DCDCコンバータ15は、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52を同時期にプリチャージすることができる。
【0067】
正極側スイッチ部71及び負極側スイッチ部72がオフ状態である状態においてDCDCコンバータ15が昇圧動作を行った場合には、DCDCコンバータ15から第2コンデンサ52に電力が供給される。つまり、DCDCコンバータ15は、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52のうち第2コンデンサ52のみをプリチャージすることができる。
【0068】
制御部17は、正極側スイッチ部71及び負極側スイッチ部72を制御する。制御部17は、低圧バッテリ53を充電させる条件が成立した場合に、例えば第1正極側リレー11、第1負極側リレー12、正極側スイッチ部71、負極側スイッチ部72をオン状態に制御しつつ、DCDCコンバータ15に降圧動作を行わせることで、高圧バッテリ40の電力に基づき低圧バッテリ53を充電する。
【0069】
制御部17は、例えば正極側スイッチ部71、負極側スイッチ部72をオン状態に制御しつつ、DCDCコンバータ15に昇圧動作を行わせることで、DCDCコンバータ15から第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の両方に電力を供給させることができる。これにより、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の両方が、同時期にプリチャージされる。制御部17は、例えば第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の電圧がある程度上昇したところで、第1正極側リレー11、第1負極側リレー12、第2正極側リレー13、第2負極側リレー14をオン状態に切り替える。これにより、高圧バッテリ40に基づく電力が、第1分岐路42を介して電力変換部44に供給されるとともに、高圧バッテリ40と授受部51が互いに電力の授受を行うことが可能な状態となる。第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の電圧がある程度上昇したことの判定方法としては、第2コンデンサ52の電圧が所定値を超えたことを判定してもよいし、第2正極側リレー13又は第2負極側リレー14の両端の電位差が所定値未満になったことを判定してもよいし、第2正極側導電線63を流れる電流の値が所定値未満になったことを判定してもよいし、プリチャージ時間が所定時間経過したことを判定してもよいし、別の方法であってもよい。
【0070】
制御部17は、第2コンデンサ52をプリチャージする条件が成立した場合に、
図4に示すように、例えば正極側スイッチ部71、負極側スイッチ部72をオフ状態に制御しつつ、DCDCコンバータ15に昇圧動作を行わせることで、DCDCコンバータ15から第2コンデンサ52に電力を供給させる。これにより、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52のうち第2コンデンサ52のみがプリチャージされる。制御部17は、第2コンデンサ52の電圧がある程度上昇したところで、第2正極側リレー13、第2負極側リレー14をオン状態に切り替える。これにより、高圧バッテリ40と授受部51が導通し、互いに電力の授受を行うことが可能な状態となる。この構成によれば、第1正極側リレー11をオン状態に切り替えることなく、高圧バッテリ40と授受部51で電力の授受を行うことが可能な状態にすることができる。したがって、第1正極側リレー11をオン状態に切り替えることによる第1正極側リレー11の劣化を抑えることができる。
【0071】
以上の様に、第2実施形態の車両用電源装置210は、正極側スイッチ部71及び負極側スイッチ部72がオン状態のときに、高圧バッテリ40からの電力を第3正極側導電線81及びDCDCコンバータ15を介して低圧バッテリ53に供給することができる。また、車両用電源装置210は、第4正極側導電線83を介して、DCDCコンバータ15からの電力を第2コンデンサ52に供給する際、正極側スイッチ部71及び負極側スイッチ部72をオフ状態にしておくことで、DCDCコンバータ15からの電力が第1正極側導電線61に供給されることを防止することができる。このため、車両用電源装置210は、第2コンデンサ52をプリチャージする際に、DCDCコンバータ15からの電力が第1コンデンサ45に消費されることを防止することができるとともに、第2コンデンサ52の充電速度の遅延に繋がることを回避することができる。
【0072】
<第3実施形態>
第3実施形態では、DCDCコンバータを利用したプリチャージを、第1コンデンサ及び第2コンデンサに対して選択的に行うことが可能な構成について説明する。なお、第2実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0073】
第3実施形態の車両用電源システム300は、
図5に示すように、高圧バッテリ40と、共通経路41と、第1分岐路42と、走行用のモータ43と、電力変換部44と、第1コンデンサ45と、第2分岐路50と、授受部51と、第2コンデンサ52と、低圧バッテリ53と、低圧負荷54と、車両用電源装置310と、を備える。
【0074】
車両用電源装置310は、第1正極側リレー11と、第1負極側リレー12と、第2正極側リレー13と、第2負極側リレー14と、DCDCコンバータ15と、プリチャージ回路16と、制御部17と、正極側スイッチ部71と、負極側スイッチ部72と、第2正極側スイッチ部73と、第2負極側スイッチ部74と、を備える。
【0075】
第2正極側スイッチ部73及び第2負極側スイッチ部74は、第2スイッチ部の一例に相当する。第2正極側スイッチ部73は、第4正極側導電線83に設けられる。第2負極側スイッチ部74は、第4負極側導電線84に設けられる。第2正極側スイッチ部73及び第2負極側スイッチ部74は、それぞれ接点を有する機械式のスイッチを含んで構成されてもよいし、半導体スイッチを含んで構成されてもよい。第2正極側スイッチ部73及び第2負極側スイッチ部74は、それぞれオン状態のときに、双方向の電流の流れを許容し、オフ状態のときに双方向の電流の流れを遮断する。
【0076】
正極側スイッチ部71及び負極側スイッチ部72の両方がオン状態で且つ第2正極側スイッチ部73及び第2負極側スイッチ部74がオフ状態である状態においてDCDCコンバータ15が昇圧動作を行った場合には、
図6に示されるように、DCDCコンバータ15から第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52のうち第1コンデンサ45のみに電力が供給される。
【0077】
正極側スイッチ部71及び負極側スイッチ部72がオフ状態で且つ第2正極側スイッチ部73及び第2負極側スイッチ部74の両方がオン状態である状態においてDCDCコンバータ15が昇圧動作を行った場合には、
図7に示されるように、DCDCコンバータ15から第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52のうち第2コンデンサ52のみに電力が供給される。
【0078】
制御部17は、第2正極側スイッチ部73及び第2負極側スイッチ部74を制御する。制御部17は、第1コンデンサ45をプリチャージする条件が成立した場合に、正極側スイッチ部71及び負極側スイッチ部72をオン状態に制御し、且つ第2正極側スイッチ部73及び第2負極側スイッチ部74をオフ状態に制御する第1制御を実行する。これにより、DCDCコンバータ15からの電力が、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52のうち第1コンデンサ45のみに供給される。つまり、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52のうち第1コンデンサ45のみがプリチャージされる。
【0079】
制御部17は、第2コンデンサ52をプリチャージする条件が成立した場合に、正極側スイッチ部71及び負極側スイッチ部72をオフ状態に制御し、且つ第2正極側スイッチ部73及び第2負極側スイッチ部74をオン状態に制御する第2制御を実行する。これにより、DCDCコンバータ15からの電力が、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52のうち第2コンデンサ52のみに供給される。つまり、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52のうち第2コンデンサ52のみがプリチャージされる。
【0080】
制御部17は、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の両方をプリチャージする条件が成立した場合に、第1制御を実行して第1コンデンサ45をプリチャージする。制御部17は、第1コンデンサ45をプリチャージした後に、第1正極側リレー11及び第1負極側リレー12をオン状態に切り替える。例えば、制御部17は、第1コンデンサ45の電圧がある程度上昇したところで、第1正極側リレー11及び第1負極側リレー12をオン状態に切り替える。制御部17は、第1正極側リレー11及び第1負極側リレー12をオン状態に切り替えた後に、第2制御を実行して第2コンデンサ52をプリチャージする。制御部17は、第2コンデンサ52をプリチャージした後に、第2正極側リレー13及び第2負極側リレー14をオン状態に切り替える。例えば、制御部17は、第2コンデンサ52の電圧がある程度上昇したところで、第2正極側リレー13及び第2負極側リレー14をオン状態に切り替える。第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の両方をプリチャージする条件は、例えば車両の始動スイッチがオン状態に切り替わったことであってもよいし、別の条件であってもよい。
【0081】
以上の様に、第3実施形態の車両用電源装置310は、DCDCコンバータからの電力供給を、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52に対して選択的に行うことができる。つまり、車両用電源装置310は、DCDCコンバータからの電力に基づき、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52のいずれかを選択的にプリチャージすることができる。
【0082】
また、車両用電源装置310は、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の両方をプリチャージする条件が成立した場合に、第1コンデンサ45のプリチャージを優先させることができる。このため、車両用電源装置310は、第1分岐路42を介した電力供給の開始を早期化しやすく、ひいては、モータ43の駆動開始を早期化しやすい。
【0083】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0084】
上記第3実施形態において、制御部17は、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の両方をプリチャージする条件が成立した場合に、DCDCコンバータ15に昇圧動作を行わせて第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の両方を同時期にプリチャージしてもよい。すなわち、制御部17は、DCDCコンバータ15からの電力に基づいて第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52の両方を同時期にプリチャージするように、正極側スイッチ部71、負極側スイッチ部72、第2正極側スイッチ部73、及び第2負極側スイッチ部74部を制御してもよい。
【0085】
上記各実施形態において、プリチャージ回路16は設けられていなくてもよい。この場合においても、DCDCコンバータ15を利用して、第1コンデンサ45及び第2コンデンサ52をプリチャージすることができる。
【0086】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲によって示された範囲内又は請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
10…車両用電源装置
11…第1正極側リレー(第1リレー)
12…第1負極側リレー(第1リレー)
13…第2正極側リレー(第2リレー)
14…第2負極側リレー(第2リレー)
15…DCDCコンバータ
16…プリチャージ回路
17…制御部
20…プリチャージリレー
21…抵抗部
40…高圧バッテリ
41…共通経路
41A…正極側共通線
41B…負極側共通線
42…第1分岐路
42A…第1正極側分岐線
42B…第1負極側分岐線
43…モータ
44…電力変換部
45…第1コンデンサ
50…第2分岐路
50A…第2正極側分岐線
50B…第2負極側分岐線
51…授受部
52…第2コンデンサ
53…低圧バッテリ
54…低圧負荷
61…第1正極側導電線(第1導電路)
62…第1負極側導電線(第1導電路)
63…第2正極側導電線(第2導電路)
64…第2負極側導電線(第2導電路)
65…正極高圧側導電線(高圧側導電路)
66…負極高圧側導電線(高圧側導電路)
67…正極低圧側導電線(低圧側導電路)
68…負極低圧側導電線(低圧側導電路)
71…正極側スイッチ部(スイッチ部)
72…負極側スイッチ部(スイッチ部)
73…第2正極側スイッチ部(第2スイッチ部)
74…第2負極側スイッチ部(第2スイッチ部)
81…第3正極側導電線(第3導電路)
82…第3負極側導電線(第3導電路)
83…第4正極側導電線(第4導電路)
84…第4負極側導電線(第4導電路)
100…車両用電源システム
200…車両用電源装置
210…車両用電源装置
265…正極高圧側導電線(高圧側導電路)
266…負極高圧側導電線(高圧側導電路)
310…車両用電源装置