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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078011
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】発電プラント制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/00 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
H02H7/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190301
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一直
(57)【要約】
【課題】主変圧器の保護回路による瞬時動作が生じた場合でも、主変圧器遮断器の切動作と発電電動機の停止動作との両方が確実に行われ、変圧器保護回路と発電機保護回路との協調を図ることが可能な発電プラント制御装置を提供する。
【解決手段】電動機停止指令用リレー(87T1Y)103の動作と主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)104の動作を条件に非常停止動作用リレー(86-1)107を動作させるようにしたので、主変圧器遮断器(CB221)4のトリップ指令がなされた後に、駆動状態にある発電電動機(M2)の停止シーケンスが開始され、主変圧器遮断器(CB221)4の切動作が発電電動機(M2)の停止動作に先行することになる。このため、発電電動機(M2)の停止シーケンスが始まった後に発電電動機(M2)に電流が流れ続ける不都合を回避でき、発電電動機の故障を回避することが可能となる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発電電動機の主回路が並列に接続された主変圧器と、前記主変圧器を電力系統に連繋する主変圧器遮断器と、それぞれの前記主回路に設けられた前記発電電動機への通電を遮断可能とする並列用遮断器と、前記主変圧器遮断器の主変圧器側及びそれぞれの並列用遮断器および起動用遮断器の主変圧器側に設けられた変流器と、
前記変流器により検出された電流に基づいて事故を検出する事故検出リレーと、
前記事故検出リレーの動作後であって、所定の事故継続時間後に動作状態を保持する事故検出補助リレーと、
前記事故検出補助リレーに対して直列に接続され、前記事故検出リレーの動作後であって、前記所定の事故継続時間より短い時間の経過後に駆動状態の発電電動機に対して停止指令を送出するGM停止指令用リレーと、
前記GM停止指令用リレーの動作後に前記駆動状態の発電電動機の停止シーケンスを開始させる停止シーケンス開始用リレーと、
前記事故検出補助リレーに対して直列に接続され、前記事故検出リレーの動作後であって、前記所定の事故継続時間よりも長い時間の経過後に前記主変圧器遮断器に対して切指令を送出する主変圧器遮断器切指令用リレーと、
を有するシステム発電プラント制御装置であって、
前記GM停止指令用リレーの動作と前記主変圧器遮断器切指令用リレーの動作を条件に前記停止シーケンス開始用リレーを動作させて前記発電電動機の停止シーケンスを開始するようにしたことを特徴とする発電プラント制御装置。
【請求項2】
前記非常停止動作用リレーの動作後に前記並列用遮断器に切指令を送出する並列用切指令用リレーをさらに設けたことを特徴とする請求項1記載の発電プラント制御装置。
【請求項3】
前記停止シーケンスは、並列用CB開、ガイドベーンの閉鎖、入口弁の閉鎖、及び界磁回路の停止操作を行うものであることを特徴とする請求項1または2記載の発電プラント制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚水式発電所等の発電プラントに利用可能な制御装置に関し、特に、主変圧器の保護回路の瞬時動作(誤動作)に伴う発電電動機の故障を回避することが可能な発電プラント制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3において、発電プラント制御装置1の従来例を示す単線結線図が示されている。この図において、GM1、GM2は揚水発電用の発電電動機、MC1は発電電動機GM1の主回路、MC2は発電電動機GM2の主回路である。
【0003】
2は、電力系統の母線に接続されたリード線であり、このリード線2に主変圧器断路器(221B)3、主変圧器遮断器(CB221)4、及び主変圧器(MTr)5が直列に接続されている。また、主変圧器(MTr)5に対して発電電動機GM1の主回路MC1と発電電動機GM2の主回路MC2が並列に接続されている。
【0004】
主回路MC1は、全電圧用断路器(281T)11及びこれに直列接続された並列用遮断器(CB281)12が主変圧器(MTr)の低圧側に接続され、半電圧用断路器(251T)13及びこれに直列接続された起動用遮断器(CB251)14が主変圧器(MTr)5の低圧側に接続されている。そして、並列用遮断器(CB281)12及び起動用遮断器(CB251)14と発電電動機GM1との間には、発電運転と揚水運転を切替える相反転断路器15.16とが接続されている。
また、主回路MC2は、全電圧用断路器(282T)21及びこれに直列接続された並列用遮断器(CB282)22が主変圧器(MTr)5の低圧側に接続され、半電圧用断路器(252T)23及びこれに直列接続された起動用遮断器(CB252)24が主変圧器(MTr)5の低圧側に接続されている。そして、並列用遮断器(CB282)22及び起動用遮断器(CB252)24と発電電動機GM2との間には、発電運転と揚水運転を切替える相反転断路器25.26が接続されている。
なお、17は、発電電動機GM1の静止励磁装置、27は、発電電動機GM2の静止励磁装置である。
【0005】
そして、この発電プラントには、主変圧器(MTr)5の保護回路(変圧器保護回路:TPC)と発電電動機の保護回路(GM保護回路:MPC)が設けられている。
変圧器保護回路TPCは、主変圧器5の高圧側に設けられた変流器51と、それぞれの主回路MC1,MC2において主変圧器5の低圧側に設けられた変流器52,53,54,55とにより検出された電流に基づき事故の発生の有無が検出され、事故の発生が検出された場合に動作する電流差動型継電器からなる事故検出リレー(87T:動作時間30ms)101と、この事故検出リレー(87T)101が動作した後に、所定の事故継続時間(15ms)の経過を条件に動作状態が自己保持される事故検出補助リレー(87TX)102と、前記事故検出リレー(87T)101が動作した後に、事故検出補助リレー(87TX)102が自己保持されるまでの時間(15ms)より短い時間の経過後に、駆動状態の発電電動機に対して停止指令を送出する電動機停止指令用リレー(87T1Y:動作時間10ms)103と、事故検出リレー(87T)101が動作した後に、事故検出補助リレー(87TX)102が自己保持されるまでの時間(15ms)よりも長い時間の経過後に前記主変圧器遮断器(CB221)4に対して切指令を送出する主変圧器遮断器切指令用リレー(1861:動作時間50ms)104と、GM停止指令用リレー(87T1Y:動作時間10ms)103の動作後に非常停止指令を送出する非常停止指令用リレー(1861Y1:動作時間約15ms)105を備えている。
【0006】
なお、非常停止指令用リレー(1861Y1)105は、前記GM停止指令用リレー(87T1Y)103の動作を発電電動機の非常停止の対象にする共に、各種変圧器保護補助継電器(9621X,51VT1X,87HTX)の動作を発電電動機の非常停止の対象としている。また、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)104の動作によって、主変圧器遮断器(CB221)の遮断制御用リレー(52TZ21B:動作時間5ms)106を動作させ、主変圧器遮断器(CB221)3をトリップ(開極)させるようにしている。
【0007】
また、GM保護回路(MPC)は、前記非常停止指令用リレー(1861Y1)105の動作や水車・発電機故障が検知された場合(発電電動機保護継電器が故障を検知した時)に発電電動機の停止シーケンスを開始させる停止シーケンス開始用リレー(86-1)107と、この停止シーケンス開始用リレー(86-1)107の動作後に、並列用遮断器(CB282)22に対して切指令を送出する並列用遮断器切指令用リレー(86Y2)108の動作と主変圧器遮断器(CB221)4の切動作によって動作する遮断器動作確認用リレー(152Z2)109の動作を条件として、駆動している発電電動機の並列用遮断器(CB282)22を切動作させる遮断制御用リレー(52TX)110を動作させ、並列用遮断器(CB282)22を開極させるようにしている。
なお、86-1Yは、水車・発電機故障が検出された際に主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)104を動作させるための発電機故障検出用補助リレー111である。
【0008】
したがって、このような発電プラント制御装置においては、主変圧器5に事故が発生した場合、即ち、変流器51~55により検出された電流に基づき事故の発生が検知された場合には、事故の発生から30ms経過すると、事故検出リレー(87T)101が動作し、その後、事故検出補助リレー(87TX)102,GM停止指令用リレー(87T1Y)103、及び、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)104に同時に通電され、事故検出リレー(87T)101の動作後、事故継続時間が15ms以上継続すれば、その後に事故が消滅しても事故検出補助リレー(87TX)102の動作状態は保持される。このため、事故検出補助リレー(87TX)102の動作が継続するためには、事故が発生してから45ms(30ms+15ms)以上継続している必要があり、これより事故継続時間が短い場合には事故検出補助リレー(87TX)の動作が中断し(自己保持せず)、それまでに動作が完結していないリレーは不動作となる。
【0009】
したがって、事故が発生してから事故継続時間が45ms以上であれば(事故検出リレー(87T:動作時間30ms)102の動作後、15ms以上事故が継続すれば)、図4(a)に示されるように、事故検出補助リレー(87TX)の動作は自己保持されるので、事故検出リレー(87T)101が動作した後、50ms経過後に主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)が動作し、遮断制御用リレー(52TZ21B)を介して主変圧器遮断器(CB221)4は開極される。
【0010】
また、GM停止指令用リレー(87T1Y:動作時間10ms)も、事故が発生してから40ms後(事故検出リレー(87T)101が動作してから10ms後)には動作が完結するので、これに続く非常停止指令送出リレー(1861Y1:動作時間約15ms)105によって発電電動機の非常停止指令が送出され、停止シーケンス開始用リレー(86-1:動作時間30ms)107が動作して、発電電動機の停止シーケンスが開始される。
【0011】
これに対して、事故継続時間が40ms未満である場合には、図4(b)に示されるように、事故検出リレー(87T:動作時間30ms)101が動作した後、事故継続時間が事故検出補助リレー(87TX)の動作を自己保持する時間(15ms)に満たないので、事故検出補助リレー(87TX)は自己保持されず、また、GM停止指令用リレー(87T1Y)や主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)も動作時間に満たないので、不動作となる。このため、発電電動機の停止シーケンスは実行されず、また、主変圧器遮断器(CB221)の開極もされない状態となり、駆動している発電電動機はそのまま駆動状態が維持されることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、変圧器保護回路が瞬時動作する場合(事故継続時間が45ms未満となる場合)であっても、事故継続時間が40ms以上となるような場合(事故検出リレー(87T)101が動作してから10ms以上継続するような瞬時動作が生じる場合)がある。例えば、点検したい発電電動機を停止させ、主変圧器の高圧側を活線状態としたまま事故検出リレー(87T)用変流器の点検を行うためにテストターミナルを設置してテストプラグを挿入している場合において、テストプラグを引き抜き接触バラツキにより瞬間的に回路が短絡状態あるいは開放状態となり87Tが瞬時動作(誤動作)するような場合である(図5参照)。
このような場合には、図4(c)に示されるように、GM停止指令用リレー(87T1Y)103は動作し、その後の非常停止指令用リレー(1861Y1)105によって発電電動機の非常停止指令が送出され、停止シーケンス開始用リレー(86-1)107が動作して、発電電動機を停止させるシーケンス処理(並列CB開、GV閉、入口弁閉、界磁回路停止操作)が実行される。
【0013】
しかしながら、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)の動作時間(50ms)は長く、事故継続時間が87TXの自己保持されない45ms未満である場合には、GM停止指令用リレー(87T1Y)103が動作した場合でも、これに追従して主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)は動作せず、主変圧器遮断器(CB221)が切動作しなくなる。
【0014】
また、電動機遮断器(CB282)22の切動作も、前述したごとく主変圧器遮断器(CB221)4の切動作を前提条件としているため、並列用遮断器(CB282)22も切動作せず、駆動している発電電動機が発電機保護回路によって停止動作へ移行しているにも拘わらず、主変圧器遮断器(CB221)や並列用遮断器(CB282)は切動作しないため、図5に示されるように、電流が流れ続けて揚水運転が継続される。このため、発電電動機GM2の励磁回路27に異常電圧が発生し、励磁装置保護用のDCアレスタが破損する等の不都合が生じ得る。
【0015】
このような不都合は、本来同時に行われるべき主変圧器遮断器の切動作と発電電動機の停止動作が同時に行われず、発電電動機の停止動作のみが先行して主変圧器遮断器の切動作が行われないことに起因しているので、停止シーケンス開始用リレー(86-1)107が動作する場合には、主変圧器遮断器(CB221)を確実にトリップさせ、変圧器保護用回路と発電機保護回路の動作の協調を図る必要がある(変圧器保護回路による主変圧器遮断器切指令と発電電動機保護回路による発電電動機停止指令が確実に一致するように,回路を変更する必要がある)。
【0016】
そこで、このような不都合に対応するため、図6図7に示されるように、主変圧器遮断器(CB221)のトリップ信号に停止シーケンス開始用リレー(86-1)107のON動作を前提とし、停止シーケンス開始用リレー(86-1)107が動作した後に主変圧器遮断器(CB221)のトリップ指令を出力して主変圧器遮断器(CB221)を切動作させることも考えられる。
すなわち、停止シーケンス開始用リレー(86-1)107がON動作した後に、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)を再動作させて主変圧器遮断器(CB221)4をトリップさせることも考えられる(図7(c)参照)。
【0017】
しかしながら、上述した瞬時動作が生じる場合においては、発電電動機の停止シーケンスが始まった後に主変圧器遮断器(CB221)のトリップ指令が出力されるため、主変圧器遮断器(CB221)4が開極するまでに時間を要し、発電電動機の停止シーケンスが始まっても主変圧器遮断器(CB221)が動作せずに発電電動機への通電が継続される従来と同様の現象が生じる。すなわち、停止シーケンス開始用リレー(86-1)107による発電電動機の停止動作が主変圧器遮断器(CB221)のトリップよりも先行するため、主変圧器遮断器(CB221)がトリップするまでの間、電流が流れ続けることになり、発電電動機の破損事故が発生する不都合が依然として懸念される。
【0018】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、主変圧器の保護回路による瞬時動作が生じた場合でも、主変圧器遮断器による切動作(主変圧器遮断器のトリップ指令)と発電電動機の停止動作(停止シーケンス開始用リレー(86-1)のON指令)との両方が確実に行われ、変圧器保護用回路と発電機保護回路との協調を図ることが可能な発電プラント制御装置を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を達成するために、本発明に係る発電プラント制御装置は、複数の発電電動機の主回路(MC1,MC2)が並列に接続された主変圧器(MTr)と、前記主変圧器を電力系統に連繋する主変圧器遮断器(CB221)と、それぞれの前記主回路に設けられた前記発電電動機への通電を遮断可能とする並列用遮断器(CB282等)と、前記主変圧器遮断器の主変圧器側及びそれぞれの並列用遮断器の主変圧器側に設けられた変流器と、前記変流器により検出された電流に基づいて事故を検出する事故検出リレー(87T)と、
前記事故検出リレーの動作後であって、所定の事故継続時間後に動作状態を保持する事故検出補助リレー(87TX)と、前記事故検出補助リレー(87TX)に対して直列に接続され、前記事故検出リレー(87T)の動作後であって、前記所定の事故継続時間より短い時間の経過後に駆動状態の発電電動機に対して停止指令を送出するGM停止指令用リレー(87T1Y)と、前記GM停止指令用リレー(87T1Y)の動作後に前記駆動状態の発電電動機の停止シーケンスを開始させる停止シーケンス開始用リレー(86-1)と、前記事故検出補助リレー(87TX)に対して直列に接続され、前記事故検出リレー(87T)の動作後であって、前記所定の事故継続時間よりも長い時間の経過後に前記送電遮断器に対して切指令を送出する主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)と、を有するシステム発電プラント制御装置であって、
前記電動機停止指令用リレー(87T1Y)の動作と前記主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)の動作を条件に前記停止シーケンス開始用リレー(86-1)を動作させて前記発電電動機の停止シーケンスを開始するようにしたことを特徴としている。
【0020】
したがって、電動機停止指令用リレー(87T1Y)の動作と主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)の動作を条件に停止シーケンス開始用リレー(86-1)を動作させるようにしたので、主変圧器遮断器(CB221)のトリップ指令がなされた後に、発電電動機の停止シーケンスが開始され、主変圧器遮断器の切動作が発電電動機の停止動作に先行することとなる。このため、発電電動機の停止シーケンスが始まった後に発電電動機に電流が流れ続ける不都合を確実に回避することが可能となり、発電電動機の故障を回避することが可能となる。
【0021】
なお、停止シーケンス開始用リレー(86-1)の動作後に並列用遮断器に切指令を送出する並列用遮断器切指令用リレー(52TX)をさらに設けるとよい。
発電電動機の停止シーケンスの開始は、前述のごとく送電遮断器の切動作を前提としているので、並列用遮断器の切指令の送出を停止シーケンス開始用リレー(86-1)の動作後に行うことで、並列用遮断器の開極を主変圧器遮断器の開極後に行うことができ、また、並列用遮断器のみが単独で開極されることを回避可能となる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように、本発明に係る発電プラント制御装置によれば、保護回路の瞬時動作が生じた場合には、主変圧器遮断器の切指令が出されたことを条件に発電電動機の停止シーケンスが開始されるので、発電電動機の停止シーケンスのみが行われて主変圧器遮断器の切動作が行われなくなる不都合や、主変圧器遮断器の開極が遅れる不都合を無くすことが可能となり、発電電動機の故障を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明に係る発電プラント制御装置の構成例を示す単線結線図およびシーケンス図である。
図2図2は、図1に示す発電プラント制御装置の動作シーケンスを示すタイムチャートであり、(a)は、通常の事故時の動作シーケンスを示すタイムチャート、(b)は、瞬時動作時(事故継続時間が40ms未満の場合)の動作シーケンスを示すタイムチャートであり、(c)は、瞬時動作時(事故継続時間が45ms未満、40ms以上の場合)の動作シーケンスを示すタイムチャートである。
図3図3は、従来の発電プラント制御装置の単線結線図およびシーケンス図である。
図4図4は、従来の発電プラント制御装置での動作シーケンスを示すタイムチャートであり、(a)は、通常の事故時の動作シーケンスを示すタイムチャート、(b)は、瞬時動作時(事故継続時間が40ms未満の場合)の動作シーケンスを示すタイムチャートであり、(c)は、瞬時動作時(事故継続時間が45ms未満、40ms以上の場合)の動作シーケンスを示すタイムチャートである。
図5図5は、図3で示す発電プラント制御装置の瞬時動作(誤動作)での不具合を説明する動作図である。
図6図6は、発電プラント制御装置の検討段階での単線結線図およびシーケンス図である。
図7図7は、図6の検討段階での発電プラント制御装置での動作シーケンスを示すタイムチャートであり、(a)は、通常の事故時の動作シーケンスを示すタイムチャート、(b)は、瞬時動作時(事故継続時間が40ms未満の場合)の動作シーケンスを示すタイムチャートであり、(c)は、瞬時動作時(事故継続時間が45ms未満、40ms以上の場合)の動作シーケンスを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面により説明する。
【0025】
図1において、本発明に係る発電プラント制御装置の全体構成を示す単線結線図およびシーケンス図が示されている。
この図において、GM1、GM2は揚水発電用の発電電動機、MC1は発電電動機GM1の主回路、MC2は発電電動機GM2の主回路である。
【0026】
2は、電力系統の母線に接続されたリード線であり、このリード線2に主変圧器断路器(221B)3、主変圧器遮断器(CB221)4、及び主変圧器(MTr)5が直列に接続されている。また、主変圧器(MTr)5に対して発電電動機GM1の主回路MC1と発電電動機GM2の主回路MC2が並列に接続されている。
【0027】
主回路MC1は、全電圧用断路器(281T)11及びこれに直列接続された並列用遮断器(CB281)12が主変圧器(MTr)の低圧側に接続され、半電圧用断路器(251T)13及びこれに直列接続された起動用遮断器(CB251)14が主変圧器(MTr)5の低圧側に接続されている。そして、並列用遮断器(CB281)12及び起動用遮断器(CB251)14と発電電動機GM1との間には、発電運転と揚水運転を切替える相反転断路器15.16とが接続されている。
【0028】
また、主回路MC2は、全電圧用断路器(282T)21及びこれに直列接続された並列用遮断器(CB282)22が主変圧器(MTr)5の低圧側に接続され、半電圧用断路器(252T)23及びこれに直列接続された起動用遮断器(CB252)24が主変圧器(MTr)5の低圧側に接続されている。そして、並列用遮断器(CB282)22及び起動用遮断器(CB252)24と発電電動機GM2との間には、発電運転と揚水運転を切替える相反転断路器25.26が接続されている。
なお、17は、発電電動機GM1の静止励磁装置、27は、発電電動機GM2の静止励磁装置である。
【0029】
そして、この発電プラントには、前記主要変圧器5の保護回路(変圧器保護回路:TPC)と発電電動機の保護回路(GM保護回路:MPC)が設けられている。
【0030】
変圧器保護回路TPCは、主変圧器5の高圧側に設けられた変流器51と、それぞれの主回路MC1,MC2において主変圧器5の低圧側に設けられた変流器52,53,54,55と、によって検出された電流に基づき事故の発生の有無が検出され、事故の発生が検出された場合に動作する電流差動型継電器からなる事故検出リレー(87T:動作時間30ms)101と、この事故検出リレー(87T)101が動作した後に、所定の事故継続時間(15ms)の経過を条件に動作状態が自己保持される事故検出補助リレー(87TX)102を有している。
【0031】
また、事故検出補助リレー(87TX)に対して直列に接続され、事故検出リレー(87T)の動作後であって、前記所定の事故継続時間(15ms)より短い時間の経過後に駆動状態の発電電動機に対して停止指令を送出するGM停止指令用リレー(87T1Y:動作時間10ms)103と、
事故検出補助リレー(87TX)に対して直列に接続され、事故検出リレー(87T)の動作後であって、前記所定の事故継続時間(15ms)よりも長い時間の経過後に前記送電遮断器(CB221)4に対して切指令を送出する主変圧器遮断器切指令用リレー(1861:動作時間50ms)104と、主変圧器故障に基づくGM停止指令用リレー(87T1Y:動作時間10ms)103の動作後に非常停止指令を送出する非常停止指令用リレー(1861Y1:動作時間約15ms)105を備えている。
【0032】
なお、非常停止指令用リレー(1861Y1)105は、前記GM停止指令用リレー(87T1Y)103の動作を発電電動機の非常停止の対象にする共に、各種変圧器保護用の補助継電器(9621X,51VT1X,87HTX)の動作を発電電動機の非常停止の対象としている。また、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)104の動作によって、主変圧器遮断器(CB221)の遮断制御用リレー(52TZ21B:動作時間5ms)106を動作させ、主変圧器遮断器(CB221)3をトリップ(開極)させるようにしている。
【0033】
さらに、非常停止指令用リレー(1861Y1)105の動作は、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)104の動作を条件としている。すなわち、GM停止指令用リレー(87T1Y)103の接点と非常停止指令送出リレー(1861Y1)105との間に、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)104の動作により閉成する接点が設けられている。
【0034】
GM保護回路(MPC)は、非常停止指令用リレー(1861Y1)105の動作や水車・発電機故障が検知された時(発電電動機保護継電器が故障を検知した時)に発電電動機の停止シーケンスを開始させる停止シーケンス開始用リレー(86-1)107と、この停止シーケンス開始用リレー(86-1)107の動作後に、並列用遮断器(CB282)22に対して切指令を送出する並列用遮断器切指令用リレー(86Y2)108と、この並列用遮断器切指令用リレー(86Y2)108の動作と主変圧器遮断器(CB221)4の切動作によって動作する遮断器動作確認用リレー(152Z2)109の動作を条件として、停止シーケンスが開始されている発電電動機の並列用遮断器(CB282)22を切動作させる遮断制御用リレー(52TX)110を動作させ、並列用遮断器(CB282)22を開極させるようにしている。
なお、86-1Yは、水車・発電機故障が検出された際に主変圧器遮断器切指令用リレーを動作させるための発電機故障検出用補助リレー(86-1Y)111である。
【0035】
したがって、このような発電プラント制御装置においては、図2(a)に示されるように、主変圧器5に事故が発生した場合、即ち、変流器51~55により検出された電流に基づき事故の発生が検知された場合には、事故の発生から30ms経過すると、事故検出リレー(87T)101が動作し、その後、事故検出補助リレー(87TX)102,GM停止指令用リレー(87T1Y)103、及び、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)104に同時に通電され、事故検出リレー(87T)101の動作後、さらに事故継続時間が15ms以上継続すれば、その後に事故が消滅しても事故検出補助リレー(87TX)102の動作状態は保持される。このため、事故検出補助リレー(87TX)102の動作が継続されるためには、事故が発生してから45ms(30ms+15ms)以上継続している必要があり、これより事故継続時間が短い場合には事故検出補助リレー(87TX)102の動作が中断し(自己保持せず)、これに直列接続されている動作が完結していないリレーは不動作となる。
【0036】
したがって、事故が発生してから事故継続時間が45ms以上であれば(事故検出リレー(87T:動作時間30ms)101の動作後、15ms以上事故が継続すれば)、事故検出補助リレー(87TX)の動作は自己保持されるので、事故検出リレー(87T)101が動作した後、50ms経過後に送電遮断器切指令用リレー(1861)が動作し、遮断制御用リレー(52TZ21B)の動作を経て主変圧器遮断器(CB221)4は開極される。
【0037】
また、電動機停止指令用リレー(87T1Y:動作時間10ms)103は、故が発生してから40ms後(事故検出リレー(87T)101が動作してから10ms後)に動作は完結するが、非常停止指令送出リレー(1861Y1:動作時間約15ms)105の動作は、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861:動作時間約50ms)の動作をも条件としているので、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)の動作が完結する80ms後に非常停止指令送出リレー(1861Y1:動作時間約15ms)105に通電が開始され、事故発生から95ms後に非常停止指令送出リレー(1861Y1)105による発電電動機の非常停止指令が送出され、その後停止シーケンス開始用リレー(86-1)107が動作して、事故が発生してから125ms後に発電電動機の停止シーケンスが開始される。
このため、通常の事故時においては、発電電動機の停止シーケンスの開始は、主変圧器遮断器の開極(開指令)を条件とするので、主変圧器遮断器(CB221)の開極が発電電動機の停止シーケンスに先行することになり、主変圧器遮断器が開極していない状態で発電電動機の停止シーケンスが開始されることはなくなる。
【0038】
これに対して、事故継続時間が40ms未満である場合には、図2(b)に示されるように、事故検出リレー(87T:動作時間30ms)101が動作した後、事故継続時間が事故検出補助リレー(87TX)の動作を自己保持する時間(15ms)に満たないので、事故検出補助リレー(87TX)は自己保持されず、また、GM停止指令用リレー(87T1Y)や主変圧器遮断器切指令送出リレー(1861)も動作時間に満たさないので、不動作となる。このため、発電電動機の停止シーケンスは実行されず、また、主変圧器遮断器(CB221)の開極もされない状態となり、駆動されている発電電動機はそのまま駆動状態が維持されることとなる。
【0039】
ところで、変圧器保護回路が瞬時動作する場合(事故継続時間が45ms未満となる場合)であっても、事故が発生してから40ms以上継続するような場合(事故検出リレー(87T)101が動作してから10ms以上継続するような瞬時動作が生じた場合)には、GM停止指令用リレー(87T1Y:動作時間10ms)103は動作を完結する。
従来においては、送電遮断器(CB221)4がトリップされることなく、GM停止指令用リレー(87T1Y)103の動作によって非常停止指令送出リレー(1861Y1)105の動作が行われ、その後停止シーケンス開始用リレー(86-1)107が動作して、発電電動機の停止シーケンスが開始される。しかしながら、本構成においては、非常停止指令送出リレー(1861Y1)105の動作は、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861:動作時間50ms)104の動作を条件とするため、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)104が動作していない場合には、非常停止指令送出リレー(1861Y1)105も動作しないことになり、その後の非常停止シーケンス開始リレー(86-1)も不動作となって、発電電動機を停止させるシーケンス処理(並列用CB開、GV閉、入口弁閉、界磁回路停止操作)は行われないことになる。
【0040】
このため、主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)104の不動作により主変圧器遮断器(CB221)4が切動作しない場合には、発電電動機の停止シーケンスも実行されることが無いため(主変圧器遮断器(CB221)4のトリップが発電電動機の停止シーケンスの実行に先行するため)、発電電動機の界磁回路の停止操作がなされた状態で揚水運転が継続される(電流が流れ続ける)不都合がなくなり、発電電動機GM2の励磁回路27に異常電圧が発生して励磁装置保護用のDCアレスタが破損する事態を回避することが可能となる。したがって、保護回路の瞬時動作により主変圧器遮断器が切状態にならない場合には、発電電動機が停止動作することはなく、発電電動機の稼働状態が維持されることとなる。
【0041】
なお、本構成においては、発電電動機の停止シーケンスが開始されるまでの時間(86―1動作指令)は、従来に比べて40ms(125ms-85ms)ほど遅れることになるが、この遅れによって発電電動機に特に支障はない。
また、上述の発電プラント制御装置では、発電電動機の停止シーケンスの開始(非常停止動作用リレー(86-1)の動作)後に並列用遮断器切指令用リレー(52TX)を動作させるようにしているので、並列用遮断器を主変圧器遮断器の開極後に開極させることができ、並列用遮断器のみが単独で開極されることはなくなる。
【符号の説明】
【0042】
4 主変圧器遮断器
5 主変圧器
12,22 並列用遮断器
14,24 起動用遮断器
51~55 変流器
101 事故検出リレー(87T)
102 事故検出補助リレー(87TX)
103 GM停止指令用リレー(87T1Y)
104 主変圧器遮断器切指令用リレー(1861)
105 非常停止指令用リレー(1861Y1)
106 遮断制御用リレー(52TZ21B)
107 非常停止開始用リレー(86-1)
110 遮断制御用リレー(52TX)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7