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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007802
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】移動体用熱交換システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 31/00 20060101AFI20240112BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240112BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240112BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20240112BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F25B31/00 B
F25B1/00 399Y
B60H1/22 651A
F25B1/00 381A
F25B1/00 D
F25B1/00 321H
F28F3/08 311
B60H1/22 671
F04B39/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109131
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】依田 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】林 志郎
(72)【発明者】
【氏名】宮地 智也
【テーマコード(参考)】
3H003
3L211
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB06
3H003AC03
3H003CD01
3H003CF00
3L211AA11
3L211BA02
3L211DA22
3L211DA24
3L211DA30
(57)【要約】
【課題】移動体の室内の暖房を好適に実現可能であり、かつ、移動体への搭載性に優れた移動体用熱交換システムを提供する。
【解決手段】本発明の移動体用熱交換システムは、ヒートポンプ装置100及び凝縮器200を備えている。ヒートポンプ装置100は、電動圧縮機1と、熱交換器9と、蒸発器11とを有している。電動圧縮機1は、ハウジング10、吸入口16a及び吐出口16b等を有している。ヒートポンプ装置100では、熱交換器9と蒸発器11との間に電動圧縮機1が配置されつつ、熱交換器9、電動圧縮機1及び蒸発器11が一体化されている。凝縮器200は、ヒートポンプ装置100と接続されてヒートポンプ装置100の外部に位置している。凝縮器200は、吐出口16bから吐出された冷媒と、室内CRに供給される空気との熱交換によって空気を加熱する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動圧縮機、熱交換器及び蒸発器を有するヒートポンプ装置と、
前記ヒートポンプ装置と接続される凝縮器とを備えた移動体用熱交換システムであって、
前記電動圧縮機は、ハウジングと、前記ハウジング内に設けられて冷媒を吸入する吸入口と、前記ハウジング内に設けられて冷媒を吐出する吐出口と、前記ハウジング内に設けられて前記吸入口から吸入した冷媒を圧縮して前記吐出口から吐出させる圧縮機構と、前記ハウジング内に設けられて前記圧縮機構を作動させる電動モータとを有し、
前記熱交換器は、液体の第1熱交換媒体と冷媒とで熱交換を行い、
前記蒸発器は、液体の第2熱交換媒体と、少なくとも前記熱交換器での熱交換を終えた冷媒との熱交換によって前記第2熱交換媒体を冷却し、
前記ヒートポンプ装置は、前記熱交換器と前記蒸発器との間に前記電動圧縮機が配置されつつ、前記熱交換器、前記電動圧縮機及び前記蒸発器が一体化され、かつ、前記吐出口が前記吸入口よりも前記熱交換器の近くに配置され、前記吸入口が前記吐出口よりも前記蒸発器の近くに配置され、
前記凝縮器は前記ヒートポンプ装置の外部に配置され、前記吐出口から吐出された冷媒と、移動体の室内に供給される空気との熱交換によって前記空気を加熱することを特徴とする移動体用熱交換システム。
【請求項2】
前記熱交換器は、冷媒を流入させる熱交換器流入口と、冷媒を流出させる熱交換器流出口とを有し、
前記凝縮器は、冷媒を流入させる凝縮器流入口と、冷媒を流出させる凝縮器流出口とを有し、
前記吐出口と前記凝縮器流入口とを接続する第1接続通路と、
前記凝縮器流出口と前記熱交換器流入口とを接続する第2接続通路とをさらに備えている請求項1記載の移動体用熱交換システム。
【請求項3】
前記第2接続通路に設けられ、前記第2接続通路を流通する冷媒の圧力を調整する圧力調整部をさらに備えている請求項2記載の移動体用熱交換システム。
【請求項4】
前記熱交換器は、冷媒を流入させる熱交換器流入口と、冷媒を流出させる熱交換器流出口とを有し、
前記凝縮器は、冷媒を流入させる凝縮器流入口と、冷媒を流出させる凝縮器流出口とを有し、
前記蒸発器は、冷媒を流入させる蒸発器流入口と、冷媒を流出させる蒸発器流出口とを有し、
前記ハウジングには、前記吐出口と前記熱交換器流入口とを接続する吐出通路と、前記熱交換器流出口と前記蒸発器流入口とを接続する循環通路とが形成され、
前記吐出通路と前記凝縮器流入口とを接続する分岐通路と、
前記循環通路と前記凝縮器流出口とを接続する合流通路と、
前記熱交換器に流入する冷媒の流量と、前記凝縮器に流入する冷媒の流量とを調整する流量調整部とをさらに備えている請求項1記載の移動体用熱交換システム。
【請求項5】
前記熱交換器及び前記蒸発器の少なくとも一方は、複数枚の熱交換プレートと、前記各熱交換プレート同士の間に配置されたスペーサとを有し、
前記各熱交換プレートと前記スペーサと前記ハウジングとは、締結部材によって一体に締結され、
前記締結部材の締結力によって、前記各熱交換プレートと前記スペーサとの間が封止されている請求項1乃至4のいずれか1項記載の移動体用熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体用熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の移動体用熱交換システムが開示されている。この移動体用熱交換システムは、移動体としての電気自動車に搭載されている。移動体用熱交換システムは、ヒートポンプ装置と、暖房用空気冷媒熱交換器とを備えている。
【0003】
ヒートポンプ装置は、電動圧縮機、凝縮器及び蒸発器を有している。電動圧縮機は、ハウジングと、冷媒を吸入する吸入口と、冷媒を吐出する吐出口と、吸入口から吸入した冷媒を圧縮して吐出口から吐出させる圧縮機構と、圧縮機構を作動させる電動モータとを有している。圧縮機構及び電動モータはハウジング内に設けられている。ここで、同文献では、吸入口及び吐出口が配置された具体的な個所は不明である。
【0004】
凝縮器は、冷却液と、圧縮機構で圧縮されて吐出口から吐出した高温高圧の冷媒とを熱交換させることにより、冷却液を加熱する。蒸発器は、冷却液と、凝縮器での熱交換を終えた低温低圧の冷媒とを熱交換させることにより、冷却液を冷却する。
【0005】
また、ヒートポンプ装置では、ハウジングの径方向において、ハウジングと蒸発器とが一体化されている。これにより、凝縮器は圧縮機構及び電動モータの外周側に配置されている。一方、蒸発器は、ハウジングの軸方向でハウジングと一体化されている。なお、ハウジングの径方向とハウジングの軸方向とは、互いに直交する関係にある。
【0006】
暖房用空気冷媒熱交換器は、ヒートポンプ装置と接続されており、ヒートポンプ装置の外部に位置している。より具体的には、暖房用空気冷媒熱交換器は、電気自動車の室内に設けられている。暖房用空気冷媒熱交換器は、凝縮器での熱交換によって加熱された冷却液と、室内に供給される空気とを熱交換させることにより、空気を加熱する。なお、空気との熱交換によって冷却された冷却液は、凝縮器での冷媒との熱交換により再び加熱される。
【0007】
この移動体用熱交換システムでは、蒸発器で冷却された冷却液が走行用モータ等の冷却に用いられる他、暖房用空気冷媒熱交換器において加熱された空気が室内に供給される事により、室内の暖房が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-28606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この種の移動体用熱交換システムでは、室内の暖房を好適に行い得ることが要求される。この点、上記従来の移動体用熱交換システムは、ヒートポンプ装置での冷媒との熱交換によって冷却液を加熱し、この加熱された冷却液と空気とを暖房用空気冷媒熱交換器で熱交換させる。このため、この移動体用熱交換システムでは、室内の暖房を行うために必要な温度まで空気を素早く加熱させ難く、室内の暖房を素早く行い難い。
【0010】
また、移動体には移動体用熱交換システム以外にも種々の機器が搭載されることから、移動体用熱交換システムを搭載するためのスペースを十分に確保することが難しい。このため、このように搭載スペースが限られる場合であっても、移動体用熱交換システムを移動体に容易に搭載し得ることが求められる。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、移動体の室内の暖房を好適に実現可能であり、かつ、移動体への搭載性に優れた移動体用熱交換システムを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の移動体用熱交換システムは、電動圧縮機、熱交換器及び蒸発器を有するヒートポンプ装置と、
前記ヒートポンプ装置と接続される凝縮器とを備えた移動体用熱交換システムであって、
前記電動圧縮機は、ハウジングと、前記ハウジング内に設けられて冷媒を吸入する吸入口と、前記ハウジング内に設けられて冷媒を吐出する吐出口と、前記ハウジング内に設けられて前記吸入口から吸入した冷媒を圧縮して前記吐出口から吐出させる圧縮機構と、前記ハウジング内に設けられて前記圧縮機構を作動させる電動モータとを有し、
前記熱交換器は、液体の第1熱交換媒体と冷媒とで熱交換を行い、
前記蒸発器は、液体の第2熱交換媒体と、少なくとも前記熱交換器での熱交換を終えた冷媒との熱交換によって前記第2熱交換媒体を冷却し、
前記ヒートポンプ装置は、前記熱交換器と前記蒸発器との間に前記電動圧縮機が配置されつつ、前記熱交換器、前記電動圧縮機及び前記蒸発器が一体化され、かつ、前記吐出口が前記吸入口よりも前記熱交換器の近くに配置され、前記吸入口が前記吐出口よりも前記蒸発器の近くに配置され、
前記凝縮器は前記ヒートポンプ装置の外部に配置され、前記吐出口から吐出された冷媒と、移動体の室内に供給される空気との熱交換によって前記空気を加熱することを特徴とする。
【0013】
本発明の移動体用熱交換システムは、ヒートポンプ装置と、ヒートポンプ装置と接続された凝縮器とを備えている。ヒートポンプ装置は、電動圧縮機、熱交換器及び蒸発器を有している。そして、凝縮器は、電動圧縮機の圧縮機構で圧縮されて吐出口から吐出された高温高圧の冷媒と、移動体の室内に供給される空気との熱交換を行うことにより、空気を加熱する。こうして、この移動体用熱交換システムでは、凝縮器で加熱された空気を移動体の室内に供給することで室内の暖房が行われる。
【0014】
このように、この移動体用熱交換システムでは、凝縮器において、液体の熱交換媒体と空気との熱交換ではなく、高温高圧の冷媒と空気との熱交換が行われる。このため、液体の熱交換媒体との熱交換を行う場合に比べて、室内の暖房を行うために必要な温度まで空気を素早く加熱させることができる。
【0015】
また、ヒートポンプ装置の熱交換器では、液体の第1熱交換媒体と冷媒とで熱交換が行われる。ここで、この移動体用熱交換システムでは、熱交換器で熱交換を行った第1熱交換媒体を室内の暖房に用いる必要がない。このため、熱交換器における熱交換では、第1熱交換媒体と冷媒との温度差により、第1熱交換媒体を加熱又は冷却することができる。これにより、熱交換器での熱交換を終えた第1熱交換媒体によって、移動体に搭載されたバッテリ等の機器の温度調整を好適に行うことができる。一方、ヒートポンプ装置の蒸発器では、液体の第2熱交換媒体と、少なくとも第1熱交換媒体での熱交換を終えた冷媒とで熱交換が行われるため、第2熱交換媒体が冷却される。こうして冷却された第2熱交換媒体によって、移動体に搭載された電動モータ等の機器を好適に冷却することができる。
【0016】
そして、ヒートポンプ装置では、熱交換器と蒸発器との間に電動圧縮機が配置されつつ、熱交換器、電動圧縮機及び蒸発器が一体化されている。そして、このヒートポンプ装置では、吐出口が吸入口よりも熱交換器の近くに配置されており、吸入口が吐出口よりも蒸発器の近くに配置されている。このため、例えば、吐出口が吸入口よりも熱交換器から遠くに配置されている場合に比べて、電動圧縮機と熱交換器とを接近させて配置できる。同様に、電動圧縮機と蒸発器とについても接近させて配置できる。これにより、この移動体用熱交換システムでは、ヒートポンプ装置を小型化できるため、ヒートポンプ装置及び凝縮器を備えた全体としての大型化を抑制できる。
【0017】
したがって、本発明の移動体用熱交換システムは、室内の暖房を好適に実現可能であり、かつ、移動体への搭載性に優れている。
【0018】
本発明の移動体用熱交換システムにおいて、熱交換器は、冷媒を流入させる熱交換器流入口と、冷媒を流出させる熱交換器流出口とを有し得る。また、凝縮器は、冷媒を流入させる凝縮器流入口と、冷媒を流出させる凝縮器流出口とを有し得る。そして、本発明の移動体用熱交換システムは、吐出口と凝縮器流入口とを接続する第1接続通路と、凝縮器流出口と熱交換器流入口とを接続する第2接続通路とをさらに備えていることが好ましい。
【0019】
この場合には、吐出口と凝縮器と熱交換器とが直列に接続され、かつ、吐出口から吐出された冷媒の流通方向において、凝縮器が熱交換器よりも上流側に位置する。このため、凝縮器において空気と熱交換を行う冷媒は、熱交換器での第1熱交換媒体との熱交換の影響を受けることがない。これにより、室内の暖房を行うために必要な温度まで空気をより素早く加熱させることができる。一方、熱交換器では、凝縮器での熱交換を終えた冷媒と第1熱交換媒体とが熱交換を行う。こうして、第1熱交換媒体の加熱又は冷却が行われる。
【0020】
また、この場合、移動体用熱交換システムは、第2接続通路に設けられ、第2接続通路を流通する冷媒の圧力を調整する圧力調整部をさらに備えていることが好ましい。これにより、熱交換器での熱交換によって第1熱交換媒体を好適に加熱又は冷却させることができるため、バッテリ等の機器の温度調整をより好適に行うことができる。
【0021】
また、本発明の移動体用熱交換システムにおいて、熱交換器は、冷媒を流入させる熱交換器流入口と、冷媒を流出させる熱交換器流出口とを有し得る。また、凝縮器は、冷媒を流入させる凝縮器流入口と、冷媒を流出させる凝縮器流出口とを有し得る。さらに、蒸発器は、冷媒を流入させる蒸発器流入口と、冷媒を流出させる蒸発器流出口とを有し得る。また、ハウジングには、吐出口と熱交換器流入口とを接続する吐出通路と、熱交換器流出口と蒸発器流入口とを接続する循環通路とが形成され得る。そして、本発明の移動体用熱交換システムは、吐出通路と凝縮器流入口とを接続する分岐通路と、循環通路と凝縮器流出口とを接続する合流通路と、熱交換器に流入する冷媒の流量と、凝縮器に流入する冷媒の流量とを調整する流量調整部とをさらに備えていることも好ましい。
【0022】
この場合には、吐出口から吐出された冷媒の流通方向において、凝縮器と熱交換器とが並列に接続される。このため、凝縮器において空気と熱交換を行う冷媒は、熱交換器での第1熱交換媒体との熱交換の影響を受けることがなく、また、熱交換器において第1熱交換媒体と熱交換を行う冷媒は、凝縮器での空気との熱交換の影響を受けることがない。この結果、熱交換器では、吐出口から吐出された高温高圧の冷媒と第1熱交換媒体とが熱交換を行うため、第1熱交換媒体を好適に加熱することができる。そして、この移動体用熱交換システムでは、凝縮器において空気との熱交換を終えた冷媒は、凝縮器流出口から合流通路を経て循環通路を流通する。これにより、蒸発器では、凝縮器での熱交換を終えた冷媒及び熱交換器での熱交換を終えた冷媒と、第2熱交換媒体とが熱交換を行い、第2熱交換媒体の冷却が行われることになる。
また、この移動体用熱交換システムでは、流量調整部によって、凝縮器における空気の加熱量と、熱交換器における第1熱交換媒体の加熱量とを好適に調整することができる。
【0023】
本発明の移動体用熱交換システムにおいて、熱交換器及び蒸発器の少なくとも一方は、複数枚の熱交換プレートと、各熱交換プレート同士の間に配置されたスペーサとを有し得る。また、各熱交換プレートとスペーサとハウジングとは、締結部材によって一体に締結され得る。そして、締結部材の締結力によって、各熱交換プレートとスペーサとの間が封止されていることが好ましい。
【0024】
この場合には、熱交換器及び蒸発器の少なくとも一方について構成を簡素化しつつ、第1熱交換媒体又は第2熱交換媒体と冷媒との間で好適に熱交換を行うことができる。また、仮に熱交換器が各熱交換プレート及びスペーサを有している場合、締結部材によって各熱交換プレートとスペーサとハウジングとを締結する過程で、熱交換器とハウジングとを一体に締結することが可能となる。さらに、締結部材の締結力によって、各熱交換プレートとスペーサとの間が封止されることにより、第1熱交換媒体や第2熱交換媒体の他、冷媒の漏れを好適に抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の移動体用熱交換システムは、室内の暖房を好適に実現可能であり、かつ、移動体への搭載性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施例1の移動体用熱交換システムの模式図である。
図2図2は、実施例1の移動体用熱交換システムに係り、ヒートポンプ装置の側面図である。
図3図3は、図2のX部分を示す要部拡大断面図である。
図4図4は、実施例2の移動体用熱交換システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0028】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の移動体用熱交換システムは、ヒートポンプ装置100と、暖房用凝縮器200と、制御装置C1とを備えている。暖房用凝縮器200は、本発明における「凝縮器」の一例である。
【0029】
この移動体用熱交換システムは、電気自動車300に搭載されている。電気自動車300は、本発明における「移動体」の一例である。より具体的には、移動体用熱交換システムのうち、ヒートポンプ装置100及び制御装置C1は、電気自動車300の動力室PH内に配置されている。
【0030】
制御装置C1は、後述する第1膨張弁7、第2膨張弁24、給気ファン26の作動制御を行う。なお、動力室PH内には、ヒートポンプ装置100及び制御装置C1の他に、走行用モータやバッテリ(いずれも図示略)等が配置されている。
【0031】
そして、この移動体用熱交換システムでは、暖房用凝縮器200は電気自動車300の車室CR内に配置されている。車室CRは、本発明における「室内」の一例である。なお、暖房用凝縮器200についての詳細は後述する。
【0032】
図1及び図2に示すように、ヒートポンプ装置100は、電動圧縮機1と、レシーバケース3と、レシーバ5と、第1膨張弁7と、熱交換器9と、蒸発器11とを備えている。なお、図1では第1膨張弁7の図示を省略している。
【0033】
電動圧縮機1は、コンプレッサハウジング13と、モータハウジング14と、インバータハウジング15と、圧縮機構16と、電動モータ17と、インバータ回路18とを有している。コンプレッサハウジング13、モータハウジング14及びインバータハウジング15によって、ハウジング10が構成されている。ハウジング10は、アルミニウム合金等の金属製である。
【0034】
本実施例では、図1等に示す実線矢印によって、ハウジング10の軸方向D1を示している。また、本実施例では、軸方向D1の一方側をD1A側として説明し、軸方向D1の他方側をD1B側として説明する。ここで、図1では、説明の便宜上、暖房用凝縮器200及び車室CRをハウジング10軸方向D1に直交する方向に図示している。しかし、本実施例において、ハウジング10、ひいてはヒートポンプ装置100に対する暖房用凝縮器200及び車室CRの各位置は適宜変更可能である。図4に示す実施例2の移動体用熱交換システムについても同様である。
【0035】
図2に示すように、コンプレッサハウジング13は、本体部131と固定部133とからなる。本体部131は、軸方向D1に延びる略円筒状をなしている。固定部133は、本体部131におけるD1A側で本体部131と一体をなしている。つまり、コンプレッサハウジング13では、本体部131がコンプレッサハウジング13におけるD1B側を構成しており、固定部133がコンプレッサハウジング13におけるD1A側を構成している。本体部131と固定部133とは内部で連通している。
【0036】
また、図1に示すように、コンプレッサハウジング13内には、第1内部通路21a、第3循環通路22c及び第3吸入通路23cが形成されている。第1内部通路21a、第3循環通路22c及び第3吸入通路23cは、冷媒が流通可能となっている。
【0037】
また、固定部133には調温用液体入口31と、調温用液体出口32と、第1調温用液体通路33aと、第4調温用液体通路33dとが形成されている。調温用液体入口31と調温用液体出口32とは、固定部133において互いに異なる位置に形成されており、コンプレッサハウジング13の外部に開口している。
【0038】
第1調温用液体通路33a及び第4調温用液体通路33dは固定部133内に形成されている。第1調温用液体通路33aは調温用液体入口31と接続している。第4調温用液体通路33dは調温用液体出口32と接続している。なお、第1調温用液体通路33a及び第4調温用液体通路33dは、第1内部通路21a、第3循環通路22c及び第3吸入通路23cとは接続しておらず、非連通となっている。
【0039】
調温用液体入口31及び調温用液体出口32には、それぞれ図示しない配管が接続されている。これにより、調温用液体入口31には、配管を通じてヒートポンプ装置100の外部から固定部133内、ひいてはハウジング10内に調温用液体が流入する。調温用液体は、本発明における「第1熱交換媒体」の一例である。また、液体出口32から配管を通じて、ハウジング10内からヒートポンプ装置100の外部に調温用液体が流出する。ここで、調温用液体としては、ロングライフクーラントが用いられている。
【0040】
図示を省略するものの、固定部133には仕切壁が設けられている。この仕切壁により、調温用液体入口31から流入した調温用液体と、調温用液体出口32から流出する調温用液体とは、固定部133内で混ざり合うことがない。
【0041】
さらに、コンプレッサハウジング13には第1連絡口131aが形成されている。ここで、第1連絡口131aは、調温用液体入口31及び調温用液体出口32とは異なる位置に形成されている。第1連絡口131aは、コンプレッサハウジング13の内部と外部、すなわち、ヒートポンプ装置100の内部と外部とを連通している。なお、図2では、第1連絡口131aの他、後述する第2連絡口3aの図示を省略している。
【0042】
モータハウジング14は、コンプレッサハウジング13の本体部131と同様に、軸方向D1に延びる略円筒状をなしている。インバータハウジング15は、モータハウジング14におけるD1B側でモータハウジング14と一体をなしている。
【0043】
図1に示すように、モータハウジング14内には、第4循環通路22dと、第2吸入通路23bとが形成されている。また、インバータハウジング15内には、第5循環通路22eと、第1吸入通路23aとが形成されている。第5循環通路22eはD1A側で第4循環通路22dのD1B側と接続している。第1吸入通路23aはD1A側で第2吸入通路23bのD1B側と接続している。
【0044】
また、インバータハウジング15には、冷却用液体入口34と、冷却用液体出口35と、第1冷却用液体通路36aと、第2冷却用液体通路36bとが形成されている。冷却用液体入口34と冷却用液体出口35とは、インバータハウジング15において互いに異なる位置に形成されており、インバータハウジング15の外部に開口している。第1冷却用液体通路36aは冷却用液体入口34と接続している。第2冷却用液体通路36bは冷却用液体入口34と接続している。
【0045】
冷却用液体入口34及び冷却用液体出口35には、それぞれ図示しない配管が接続されている。これにより、冷却用液体入口34及び配管を通じてヒートポンプ装置100の外部からインバータハウジング15、ひいてはハウジング10内に冷却用液体が流入する。冷却用液体は、本発明における「第2熱交換媒体」の一例である。また、冷却用液体出口35から配管を通じてハウジング10内からヒートポンプ装置100の外部に冷却用液体が流出する。ここで、調温用液体と同様、冷却用液体についても、ロングライフクーラントが用いられている。なお、調温用液体及び冷却用液体は、水等であっても良い。
【0046】
図示を省略するものの、インバータハウジング15には仕切壁が設けられており、この仕切壁によって、冷却用液体は、インバータハウジング15内において、後述するインバータ回路18と直接接することがない。また、仕切壁により、冷却用液体入口34から流入した冷却用液体と、冷却用液体出口35から流出する冷却用液体とがインバータハウジング15内で混ざり合うこともない。
【0047】
圧縮機構16は、コンプレッサハウジング13の本体部131内に収容されている。詳細な図示を省略するものの、圧縮機構16は、公知のスクロール型圧縮機構である。圧縮機構16は、吸入口16aと吐出口16bとを有している。吸入口16aは、圧縮機構16におけるD1B側に配置されており、吐出口16bは、圧縮機構16におけるD1A側に配置されている。つまり、吸入口16aはコンプレッサハウジング13のD1B側に位置しており、吐出口16bはコンプレッサハウジング13のD1A側に位置している。吸入口16aは第3吸入通路23cのD1A側と接続している。吐出口16bは、第1内部通路21aのD1B側と接続している。そして、第1内部通路21aは、吐出口16bとは反対側が第1連絡口131aに接続している。こうして、第1内部通路21aを通じて吐出口16bと第1連絡口131aとが接続している。なお、スクロール型圧縮機構に換えて、斜板式圧縮機構やベーン型圧縮機構等を圧縮機構16として採用しても良い。
【0048】
電動モータ17は、モータハウジング14内に収容されている。詳細な図示を省略するものの、電動モータ17は、公知のステータ及びロータ等で構成されている。
【0049】
インバータ回路18は、インバータハウジング15内に収容されている。これにより、インバータ回路18は、モータハウジング14内に収容された電動モータ17に対して、D1B側に位置している。つまり、インバータ回路18は、ハウジング10内において、電動モータ17と軸方向D1で隣接している。
【0050】
詳細な図示を省略するものの、インバータ回路18は、回路基板と、回路基板に設けられたスイッチング素子等で構成されている。インバータ回路18は、電動モータ17と通電可能に接続されている。また、インバータ回路18は、インバータハウジング15に設けられたコネクタ部(図示略)に接続されている。これにより、インバータ回路18は、コネクタ部を通じて、電気自動車300のバッテリに通電可能に接続されている。
【0051】
図2に示すように、コンプレッサハウジング13に対して、モータハウジング14及びインバータハウジング15がD1B側に配置されている。そして、コンプレッサハウジング13の本体部131と、モータハウジング14とを軸方向D1で対向させつつ、コンプレッサハウジング13とモータハウジング14とが図示しないボルトによって締結されている。これにより、コンプレッサハウジング13とモータハウジング14とが軸方向D1で固定されている。こうして、ハウジング10では、コンプレッサハウジング13、モータハウジング14及びインバータハウジング15が軸方向D1でこの順に配置されている。つまり、ハウジング10において、コンプレッサハウジング13が最もD1A側に位置しており、インバータハウジング15が最もD1B側に配置されている。
【0052】
また、ハウジング10内では、圧縮機構16、電動モータ17及びインバータ回路18が軸方向D1でこの順に配置されている。つまり、インバータ回路18が最もD1B側に配置されており、圧縮機構16とインバータ回路18との間に電動モータ17が配置されている。圧縮機構16と電動モータ17とは動力伝達可能に接続されている。
【0053】
また、コンプレッサハウジング13とモータハウジング14とが軸方向D1で固定されることにより、図1に示すように、第3循環通路22cのD1B側と第4循環通路22dのD1A側とが接続している。これにより、第3循環通路22cと第4循環通路22dと第5循環通路22eとが接続されている。また、第3吸入通路23cのD1B側と第2吸入通路23bのD1A側とが接続している。これにより、第1吸入通路23aと第2吸入通路23bと第3吸入通路23cとが接続されている。
【0054】
また、上述のように、吐出口16bはコンプレッサハウジング13のD1A側に位置していることから、吐出口16bは、ハウジング10におけるD1A側に位置している。一方、吸入口16aはハウジング10におけるD1B側、より厳密には、ハウジング10において、吸入口16aは吐出口16bよりもD1B側に位置している。
【0055】
図2に示すように、レシーバケース3は、略矩形の箱状に形成されている。レシーバケース3は、コンプレッサハウジング13の固定部133のD1A側に配置されている。つまり、レシーバケース3は、ハウジング10、ひいては電動圧縮機1に対して軸方向D1に配置され、かつ、電動圧縮機1のD1A側に位置している。
【0056】
図1に示すように、レシーバケース3内には、第2内部通路21dと、第1循環通路22aと、第2循環通路22bとが形成されている他、第2調温用液体通路33bと、第3調温用液体通路33cとが形成されている。また、レシーバケース3には、第2連絡口3aが形成されている。第2連絡口3aは、レシーバケース3の内部と外部、すなわち、ヒートポンプ装置100の内部と外部とを連通している。
【0057】
レシーバ5及び第1膨張弁7は、レシーバケース3内に収容されている。レシーバ5は、第1循環通路22aと、第2循環通路22bとの間に位置しており、第1循環通路22a及び第2循環通路22bに接続している。第1膨張弁7は、第2循環通路22bに設けられている。第1膨張弁7は、制御装置C1に接続されている。なお、レシーバ5及び第1膨張弁7は、それぞれ公知のレシーバ及び膨張弁と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。また、第1膨張弁7はハウジング10内に収容されることにより、第2循環通路22bに換えて、第3~5循環通路22c~22eのいずれかに設けられても良い。
【0058】
図2及び図3に示すように、熱交換器9は、複数枚の第1熱交換プレート91と、複数枚の第1スペーサ92と、1枚の第1エンドプレート93と、1枚の第2エンドプレート94とで構成されている。各第1熱交換プレート91は、本発明における「熱交換プレート」の一例である。また、各第1スペーサ92は、本発明における「スペーサ」の一例である。
【0059】
各第1熱交換プレート91、各第1スペーサ92及び第1、2エンドプレート93、94は金属製であり、略矩形の板状に形成されている。各第1熱交換プレート91及び各第1スペーサ92は、第1、2エンドプレート93、94に比べて板厚が薄く形成されている。図3に示すように、各第1スペーサ92には、軸方向D1の両面にそれぞれ樹脂製のシール部材921、922が設けられている。
【0060】
第1エンドプレート93は、熱交換器9における最もD1A側に配置されている。第2エンドプレート94は、熱交換器9における最もD1B側に配置されている。そして、各第1熱交換プレート91及び各第1スペーサ92は、第1エンドプレート93と第2エンドプレート94との間に配置されている。
【0061】
ここで、各第1熱交換プレート91と各第1スペーサ92とは、それぞれ軸方向D1に交互に配置されている。つまり、第1熱交換プレート91同士における軸方向D1の間に第1スペーサ92が配置されている。これにより、第1熱交換プレート91同士は、第1スペーサ92によって軸方向D1に離隔している。
【0062】
また、最もD1A側に位置する第1熱交換プレート91と第1エンドプレート93との間、及び、最もD1B側に位置する第1熱交換プレート91と第2エンドプレート94との間についても、第1スペーサ92によって軸方向D1に離隔している。
【0063】
そして、第1熱交換プレート91同士の間、最もD1A側に位置する第1熱交換プレート91と第1エンドプレート93との間、及び、最もD1B側に位置する第1熱交換プレート91と第2エンドプレート94との間は、冷媒が流入する第1冷媒領域91a又は調温用液体が流入する第1液体領域91bとされている。第1冷媒領域91aと第1液体領域91bとは、軸方向D1に交互に配置されている。
【0064】
各第1熱交換プレート91と各第1スペーサ92とは、4つの連通路901を形成している。そして、第1エンドプレート93は各連通路901をそれぞれD1A側から塞いでいる。なお、図3では、4つの連通路901のうち1つを図示している。
【0065】
第2エンドプレート94には、第1流入口9aが形成されている他、図1に示すように、第1流出口9bと、第3流入口9cと、第3流出口9dとが形成されている。第1流入口9aは本発明における「熱交換器流入口」の一例であり、第1流出口9bは本発明における「熱交換器流出口」の一例である。
【0066】
そして、各第1スペーサ92は、4つの連通路901のうちの2つの連通路901を第1流入口9a及び第1流出口9bに連通させており、残りの2つの連通路901を第3流入口9c及び第3流出口9dに連通させている。これにより、第1流入口9a及び第1流出口9bと各第1冷媒領域91aとが連通している。そして、第3流入口9c及び第3流出口9dと各第1液体領域91bとが連通している。
【0067】
熱交換器9は、図2に示す複数の第1締結ボルト201によって、ハウジング10及びレシーバケース3に軸方向D1で締結されている。各第1締結ボルト201は、本発明における「締結部材」の一例である。
【0068】
具体的には、コンプレッサハウジング13のD1A側にレシーバケース3を配置する。また、レシーバケース3のD1A側に熱交換器9を配置する。そして、熱交換器9の第1エンドプレート93側から、各第1締結ボルト201を挿通しつつ締結する。
【0069】
これにより、第1エンドプレート93、各第1熱交換プレート91、各第1スペーサ92、第2エンドプレート94を軸方向D1に締結する。この際、各第1締結ボルト201は、レシーバケース3を軸方向D1に貫通してコンプレッサハウジング13の固定部133まで至る。こうして、各第1締結ボルト201によって、コンプレッサハウジング13、すなわちハウジング10と、レシーバケース3と、熱交換器9とが軸方向D1で締結されている。
【0070】
このように、ハウジング10と、レシーバケース3と、熱交換器9とが軸方向D1で固定されることにより、図1に示すように、熱交換器9は、レシーバケース3を介してハウジング10のD1A側に配置されており、ヒートポンプ装置100において最もD1A側に位置している。なお、各第1締結ボルト201の個数は適宜設計可能である。
【0071】
また、熱交換器9では、各第1締結ボルト201の締結力によって、図3に示す各第1スペーサ92のシール部材921、922がそれぞれ弾性変形する。これにより、各第1熱交換プレート91と各第1スペーサ92との間が封止されている。また、第1スペーサ92と第1エンドプレート93との間、及び、第1スペーサ92と第2エンドプレート94との間も同様に封止されている。
【0072】
また、ハウジング10とレシーバケース3とが固定されることにより、図1に示すように、第2循環通路22bがレシーバ5とは反対側で第3循環通路22cのD1A側と接続している。さらに、第1調温用液体通路33aが調温用液体入口31とは反対側で第2調温用液体通路33bと接続しており、第4調温用液体通路33dが調温用液体出口32とは反対側で第3調温用液体通路33cと接続している。
【0073】
また、レシーバケース3と熱交換器9とが固定されることにより、第1流入口9aが第2内部通路21dのD1A側と接続している。そして、第2内部通路21dは、第1流入口9aとは反対側が第2連絡口3aに接続している。こうして、第2内部通路21dを通じて第2連絡口3aと第1流入口9aとが接続している。
【0074】
また、第1流出口9bがレシーバ5とは反対側で第1循環通路22aと接続している。さらに、第3流入口9cが第2調温用液体通路33bのD1A側と接続しており、第3流出口9dが第3調温用液体通路33cのD1A側と接続している。
【0075】
図2に示すように、蒸発器11は、複数枚の第2熱交換プレート111と、複数枚の第2スペーサ112と、1枚の第3エンドプレート113と、1枚の第4エンドプレート114とで構成されている。各第2熱交換プレート111も、本発明における「熱交換プレート」の一例である。また、各第2スペーサ112も、本発明における「スペーサ」の一例である。
【0076】
第3エンドプレート113は、蒸発器11における最もD1B側に配置されている。第4エンドプレート114は、蒸発器11における最もD1A側に配置されている。そして、各第2熱交換プレート111及び各第2スペーサ112は、第3エンドプレート113と第4エンドプレート114との間に配置されている。
【0077】
各第2熱交換プレート111、各第2スペーサ112及び第3、4エンドプレート113、114は、それぞれ各第1熱交換プレート91、各第1スペーサ92及び第1、2エンドプレート93、94と軸方向D1で対称の形状である。ここで、第2熱交換プレート111同士の間は、冷媒が流入する第2冷媒領域111a又は冷却用液体が流入する第2液体領域111bとされている(図1参照)。第2冷媒領域111aと第2液体領域111bとについても、軸方向D1に交互に配置されている。
【0078】
また、第4エンドプレート114には、第2流入口11aと、第2流出口11bと、第4流入口11cと、第4流出口11dとが形成されている。第2流入口11aは本発明における「蒸発器流入口」の一例であり、第2流出口11bは本発明における「蒸発器流出口」の一例である。第2流入口11a及び第2流出口11bは各第2冷媒領域111aと連通しており、第4流入口11c及び第4流出口11dは第2液体領域111bと連通している。
【0079】
図2に示すように、蒸発器11は、インバータハウジング15のD1B側に配置されている。そして、蒸発器11とハウジング10とは、複数の第2締結ボルト203によって、軸方向D1に締結されている。各第2締結ボルト203も、本発明における「締結部材」の一例である。
【0080】
具体的には、第3エンドプレート113側から、各第2締結ボルト203を挿通しつつ締結する。これにより、第3エンドプレート113、各第2熱交換プレート111、各第2スペーサ112、第4エンドプレート114が軸方向D1に締結される。この際、各第2締結ボルト203は、インバータハウジング15まで至ることにより、蒸発器11とハウジング10とが軸方向D1で締結されて固定されている。こうして、蒸発器11は、ヒートポンプ装置100において最もD1B側に位置している。なお、各第2締結ボルト203の個数は適宜設計可能である。
【0081】
そして、ハウジング10と蒸発器11とが固定されることにより、図1に示すように、第2流入口11aが第5循環通路22eのD1B側と接続している。また、第2流出口11bが第1吸入通路23aのD1B側と接続している。さらに、第4流入口11cが第1冷却用液体通路36aのD1B側と接続している。そして、第4流出口11dが第2冷却用液体通路36bのD1B側と接続している。
【0082】
詳細な図示を省略するものの、熱交換器9と同様、蒸発器11においても、第2締結ボルト203の締結力によって、各第2熱交換プレート111と各第2スペーサ112との間が封止されている他、第2スペーサ112と第3エンドプレート113との間、及び、第2スペーサ112と第4エンドプレート114との間が封止されている。
【0083】
図1及び図2に示すように、このヒートポンプ装置100では、D1A側からD1B側に向かって、熱交換器9、レシーバケース3、ハウジング10及び蒸発器11がこの順で固定されて一体化されている。つまり、このヒートポンプ装置100は、軸方向D1において、熱交換器9と蒸発器11との間に電動圧縮機1とレシーバケース3とが配置されている。また、レシーバケース3は、電動圧縮機1よりも熱交換器9側、すなわちD1A側に配置されている。
【0084】
また、図1に示すように、このヒートポンプ装置100では、第1~5循環通路22a~22eによって循環通路221が形成されており、循環通路221によって、第1流出口9bと第2流入口11aとが接続されている。また、第1~3吸入通路23a~23cによって吸入通路231が形成されており、吸入通路231によって、第2流出口11bと吸入口16aとが接続されている。循環通路221及び吸入通路231には、それぞれ冷媒が流通可能となっている。
【0085】
ここで、循環通路221及び吸入通路231は、ハウジング10に形成されている。また、レシーバ5及び第1膨張弁7は循環通路221に設けられている。そして、第1膨張弁7は、循環通路221において、レシーバ5よりも冷媒の流通方向の下流側に位置している。
【0086】
暖房用凝縮器200は、ヒートポンプ装置100とは別体をなしている。暖房用凝縮器200は、電気自動車300の車室CR内に配置されることにより、ヒートポンプ装置100の外部に位置している。暖房用凝縮器200は、凝縮器本体200aと、第5流入口200bと、第5流出口200cとを有している。第5流入口200bは本発明における「凝縮器流入口」の一例であり、第5流出口200cは本発明における「凝縮器流出口」の一例である。凝縮器本体200aは、内部を冷媒が流通可能となっている。第5流入口200b及び第5流出口200cは、互いに異なる位置で凝縮器本体200aに設けられており、凝縮器本体200aの内部に連通している。なお、暖房用凝縮器200は、ヒートポンプ装置100の外部であれば、車室CR内に限らず、電気自動車300において車室CRの近傍となる個所等に配置されても良い。
【0087】
第5流入口200bには、第1外部通路21bが接続されている。つまり、第1外部通路21bは、ヒートポンプ装置100の外部に位置している。第1外部通路21bは冷媒が流通可能となっている。また、第1外部通路21bは、第5流入口200bとは反対側が第1連絡口131aに接続している。これにより、第1外部通路21bは、第1連絡口131aを通じて第1内部通路21aと接続している。こうして、第1内部通路21a、第1連絡口131a及び第1外部通路21bにより、第1接続通路211が形成されている。
【0088】
一方、第5流出口200cには、第2外部通路21cが接続されている。第1外部通路21bと同様、第2外部通路21cもヒートポンプ装置100の外部に位置している。第2外部通路21cは冷媒が流通可能となっている。また、第2外部通路21cは、第5流出口200cとは反対側が第2連絡口3aに接続している。これにより、第2外部通路21cは、第2連絡口3aを通じて第2内部通路21dと接続している。こうして、第2内部通路21d、第2連絡口3a及び第2外部通路21cにより、第2接続通路212が形成されている。
【0089】
また、第2外部通路21cには、第2膨張弁24が設けられている。第2膨張弁24は、本発明における「圧力調整部」の一例である。第1膨張弁7と同様、第2膨張弁24も制御装置C1に接続されている。なお、第2膨張弁24についても公知の膨張弁と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0090】
このように、この移動体用熱交換システムでは、第1接続通路211及び第2接続通路212によって、ヒートポンプ装置100と暖房用凝縮器200とが接続されている。より具体的には、第1接続通路211によって、吐出口16bと第5流入口200bとが接続されており、第2接続通路212によって、第5流出口200cと第1流入口9aとが接続されている。これにより、この移動体用熱交換システムでは、吐出口16bから吐出された冷媒は、第1接続通路211、暖房用凝縮器200、第2接続通路212及び熱交換器9の順で流通する。つまり、この移動体用熱交換システムでは、第1接続通路211及び第2接続通路212によって、吐出口16bと暖房用凝縮器200と熱交換器9とが直列に接続されている。そして、吐出口16bから吐出された冷媒の流通方向において、暖房用凝縮器200は、熱交換器9よりも上流側に位置している。
【0091】
また、車室CR内には給気ファン26が設けられている。給気ファン26は、暖房用凝縮器200の近傍となる個所に配置されており、車室CR内に空気を供給可能となっている。給気ファン26についても、制御装置C1に接続されている。
【0092】
以上のように構成されたこの移動体用熱交換システムでは、ヒートポンプ装置100において、調温用液体が調温用液体入口31から第1、2調温用液体通路33a、33bを経て、第3流入口9cから熱交換器9の各第1液体領域91b内に流入する。同様に、冷却用液体が冷却用液体入口34から第1冷却用液体通路36aを経て、第4流入口11cから蒸発器11の各第2液体領域111b内に流入する。
【0093】
また、ヒートポンプ装置100では、インバータ回路18が電動モータ17に給電を行いつつ電動モータ17の作動制御を行うことにより、電動モータ17は圧縮機構16を作動させる。これにより、圧縮機構16は、吸入口16aから吸入された冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出口16bから吐出する。吐出口16bから吐出された高温高圧の冷媒は、第1接続通路211を経て、暖房用凝縮器200の第5流入口200bから凝縮器本体200a内に流入する。
【0094】
また、制御装置C1は、給気ファン26を作動させる。これにより、暖房用凝縮器200では、凝縮器本体200aの内部を流通する冷媒と、暖房用凝縮器200の周囲の空気とが熱交換を行う。これにより、暖房用凝縮器200の周囲の空気、すなわち、給気ファン26によって車室CR内に供給される空気が加熱される。そして、この加熱された空気が給気ファン26によって車室CR内に供給されることにより、車室CR内の暖房が行われる。
【0095】
一方、凝縮器本体200aにおいて空気との熱交換を終えた冷媒は、第5流出口200cから流出し、第2接続通路212を経て熱交換器9に至る。このように、この移動体用熱交換システムでは、熱交換器9に至った冷媒は、凝縮器本体200aでの熱交換を終えている。このため、第2接続通路212を流通して熱交換器9に至った冷媒は、第1接続通路211を流通して暖房用凝縮器200に向かう冷媒に比べて低温低圧となっている。
【0096】
また、制御装置C1は、第2膨張弁24の作動制御を行い、第2膨張弁24の開度を調整する。これにより、第2外部通路21c、ひいては第2接続通路212を流通する冷媒の圧力が適宜調整される。つまり、制御装置C1が第2膨張弁24の開度を最大にすれば、第2接続通路212を流通する冷媒は、第5流出口200cから流出した際とほぼ同等の圧力を有した状態で熱交換器9に至ることになる。一方、制御装置C1が第2膨張弁24の開度を小さくすれば、第2接続通路212を流通する冷媒は、第5流出口200cから流出した際よりも低圧の状態で熱交換器9に至ることになる。
【0097】
そして、熱交換器9に至った冷媒は、第1流入口9aから熱交換器9内に流入し、各第1冷媒領域91a内を流通する。これにより、熱交換器9において、各第1冷媒領域91a内の冷媒と、各第1液体領域91b内の調温用液体とが熱交換を行う。ここで、第2膨張弁24によって冷媒が比較的高圧を維持した状態で熱交換器9に至っていれば、各第1冷媒領域91a内を流通する冷媒は高温となる。一方、第2膨張弁24によって冷媒が低圧の状態で熱交換器9に至っていれば、各第1冷媒領域91a内を流通する冷媒は低温となる。
【0098】
こうして、各第1液体領域91b内の調温用液体に比べて各第1冷媒領域91a内の冷媒が高温であれば、調温用液体は、熱交換器9での熱交換において冷媒から放熱されて加熱される。反対に、各第1液体領域91b内の調温用液体に比べて各第1冷媒領域91a内の冷媒が低温であれば、調温用液体は、熱交換器9での熱交換において冷媒に吸熱されて冷却される。そして、冷媒との熱交換を終えた調温用液体は、第3流出口9d、第3、4調温用液体通路33c、33dを経て、調温用液体出口32からハウジング10の外部に流出する。このように熱交換器9で熱交換された調温用液体は、電気自動車300のバッテリ等の温度調整に用いられる。
【0099】
一方、熱交換器9での熱交換を終えた冷媒は、第1流出口9bから第1循環通路22aを流通し、レシーバ5内で気液分離される。また、制御装置C1は、第1膨張弁7の作動制御を行い、第1膨張弁7の開度を調整する。これにより、レシーバ5で気液分離された冷媒は第1膨張弁7によって減圧され、第2~5循環通路22b~22e及び第2流入口11aを経て、蒸発器11の各第2冷媒領域111a内を流通する。
【0100】
これにより、蒸発器11において、各第2冷媒領域111a内の冷媒と、各第2液体領域111b内の冷却用液体とが熱交換を行い、各第2液体領域111b内の冷却用液体が冷却される。つまり、蒸発器11では、熱交換器9での熱交換を終えた冷媒と、冷却用液体との熱交換が行われることで、冷却用液体の冷却が行われる。なお、厳密には、この移動体用熱交換システムでは、熱交換器9での熱交換の前に暖房用凝縮器200での熱交換が行われているため、蒸発器11では、暖房用凝縮器200及び熱交換器9での熱交換を終えた冷媒と、冷却用液体との熱交換が行われることとなる。
【0101】
そして、蒸発器11での熱交換を終えた冷却用液体は、第4流出口11d及び第2冷却用液体通路36bを経て、冷却用液体出口35からハウジング10の外部に流出する。このように蒸発器11で冷却された冷却用液体は、車室CR内の冷房に用いられる他、電気自動車300の走行用モータの冷却等に用いられる。
【0102】
一方、蒸発器11での熱交換を終えた冷媒は、第2流出口11bから吸入通路231を流通し、吸入口16aから圧縮機構16内に吸入される。こうして、冷媒は圧縮機構16において再び圧縮される。
【0103】
この移動体用熱交換システムは、ヒートポンプ装置100の他に、暖房用凝縮器200を備えている。そして、暖房用凝縮器200は、圧縮機構16で圧縮されて吐出口16bから吐出された高温高圧の冷媒と、車室CR内に供給される空気との熱交換を行うことにより、空気を加熱する。このように、暖房用凝縮器200では、調温用液体のような液体の熱交換媒体と、空気との熱交換ではなく、高温高圧の冷媒と空気との熱交換が行われる。このため、この移動体用熱交換システムでは、液体の熱交換媒体との熱交換を行う場合に比べて、車室CR内の暖房を行うために必要な温度まで空気を素早く加熱させることができる。こうして、この移動体用熱交換システムでは、暖房用凝縮器200で加熱された空気が給気ファン26によって車室CR内に供給されることで、車室CR内の暖房を好適に行うことが可能となっている。
【0104】
また、ヒートポンプ装置100は熱交換器9を有しており、この熱交換器9では、調温用熱交換媒体と冷媒とで熱交換が行われる。ここで、この移動体用熱交換システムでは、熱交換器9で熱交換を行った調温用液体を車室CR内の暖房に用いる必要がない。これにより、この移動体用熱交換システムでは、熱交換器9で熱交換によって加熱又は冷却された調温交換媒体によって、バッテリ等の温度調整を好適に行うことが可能となっている。また、この移動体用熱交換システムでは、ヒートポンプ装置100の蒸発器11で冷却された冷却用液体によって、車室CRの冷房や電動モータの冷却等も好適に行うことが可能となっている。
【0105】
そして、ヒートポンプ装置100では、熱交換器9及び蒸発器11の両方がハウジング10の軸方向D1でハウジング10と一体化されている。このため、熱交換器9又は蒸発器11がハウジング10の径方向でハウジング10に一体化される構成に比べて、ヒートポンプ装置100は、径方向での大型化が抑制されている。
【0106】
また、吐出口16b及び熱交換器9が共にハウジング10のD1A側に配置されることにより、吐出口16bは、吸入口16aよりも軸方向D1で熱交換器9の近くに配置されている。このため、例えば、圧縮機構16において、吸入口16aがD1B側に設けられ、吐出口16bがD1A側に設けられることにより、吐出口16bが吸入口16aよりも軸方向D1で熱交換器9から遠くに配置される構成に比べて、このヒートポンプ装置100では、電動圧縮機1と熱交換器9とを軸方向D1に近づけることが可能となっている。
【0107】
また、吸入口16a及び蒸発器11が共にハウジング10のD1B側に配置されることにより、吸入口16aが吐出口16bよりも蒸発器11の近くに配置されている。このため、このヒートポンプ装置100では、電動圧縮機1と蒸発器11とについても軸方向D1に近づけることが可能となっている。これにより、この移動体用熱交換システムでは、ヒートポンプ装置100を小型化できる。この結果、この移動体用熱交換システムでは、ヒートポンプ装置100及び暖房用凝縮器200を備えた全体としての大型化が抑制されている。
【0108】
したがって、実施例1の移動体用熱交換システムは、車室CR内の暖房を好適に実現可能であり、かつ、電気自動車300への搭載性に優れている。
【0109】
特に、この移動体用熱交換システムでは、第1接続通路211及び第2接続通路212によって、吐出口16bと暖房用凝縮器200と熱交換器9とが直列に接続されている。そして、吐出口16bから吐出された冷媒の流通方向において、暖房用凝縮器200は、熱交換器9よりも上流側に位置している。このため、暖房用凝縮器200において空気と熱交換を行う冷媒は、熱交換器9での調温用液体との熱交換の影響を受けることがなく、熱交換によって空気を好適に加熱することができる。このため、この点においても、この移動体用熱交換システムでは、車室CR内の暖房を行うために必要な温度まで空気を素早く加熱させることが可能となっている。
【0110】
また、第2外部通路21cには第2膨張弁24が設けられているため、第2外部通路21cを流通する冷媒、ひいては、熱交換器9において調温用液体と熱交換を行う冷媒の圧力を好適に調整することが可能となっている。これにより、調温用液体によって温度調整される際のバッテリの目標温度等に応じて、熱交換器9での熱交換において調温用液体を好適に加熱又は冷却させることが可能となっている。
【0111】
また、ヒートポンプ装置100では、調温用液体入口31及び調温用液体出口32がコンプレッサハウジング13の固定部133に形成されることにより、調温用液体入口31及び調温用液体出口32は熱交換器9の近くに配置されている。また、冷却用液体入口34及び冷却用液体出口35がインバータハウジング15に形成されることにより、冷却用液体入口34及び冷却用液体出口35は蒸発器11の近くに配置されている。
【0112】
このため、このヒートポンプ装置100では、調温用液体が調温用液体入口31から熱交換器9を経て調温用液体出口32まで至る経路が短くなっている。同様に、冷却用液体が冷却用液体入口34から蒸発器11を経て冷却用液体出口35まで至る経路も短くなっている。この点においても、この移動体用熱交換システムでは、ヒートポンプ装置100を小型化することが可能となっている。
【0113】
また、このヒートポンプ装置100では、調温用液体入口31及び調温用液体出口32を熱交換器9に設ける必要がなく、冷却用液体入口34及び冷却用液体出口35を蒸発器11に設ける必要がない。これにより、熱交換器9及び蒸発器11の構成を簡素化できるため、この移動体用熱交換システムでは、熱交換器9及び蒸発器11の大型化も抑制されている。
【0114】
さらに、熱交換器9は、複数枚の第1熱交換プレート91と、複数枚の第1スペーサ92と、1枚の第1エンドプレート93と、1枚の第2エンドプレート94とで構成されている。また、蒸発器11は、複数枚の第2熱交換プレート111と、複数枚の第2スペーサ112と、1枚の第3エンドプレート113と、1枚の第4エンドプレート114とで構成されている。この点においても、この移動体用熱交換システムでは、熱交換器9及び蒸発器11の構成が簡素化されている。
【0115】
ここで、熱交換器9では、複数の第1締結ボルト201によって、各第1熱交換プレート91、各第1スペーサ92及び第1、2エンドプレート93、94を締結して一体化させている。このため、ろう付けを行う場合に比べて、これらの各第1熱交換プレート91等を容易に一体化させることが可能となっている。蒸発器11についても同様である。
【0116】
また、ヒートポンプ装置100では、各第1熱交換プレート91、各第1スペーサ92、第1、2エンドプレート93、94、レシーバケース3及びコンプレッサハウジング13を各第1締結ボルト201によって締結することにより、ハウジング10と、レシーバケース3と熱交換器9とを軸方向D1に固定することが可能となっている。同様に、各第2熱交換プレート111、各第2スペーサ112、第3、4エンドプレート113、114及びインバータハウジング15を各第2締結ボルト203によって締結することにより、ハウジング10と蒸発器11とを軸方向D1に固定することが可能となっている。
【0117】
また、熱交換器9では、各第1締結ボルト201の締結力によって、各第1熱交換プレート91と各第1スペーサ92との間、第1スペーサ92とレシーバケース3との間、第1スペーサ92と第1エンドプレート93との間、及び、第1スペーサ92と第2エンドプレート94との間がそれぞれ封止されている。このため、熱交換器9からの冷媒や調温用液体の漏れを好適に防止することが可能となっている。蒸発器11についても同様である。
【0118】
また、ヒートポンプ装置100では、ハウジング10と熱交換器9との間にレシーバケース3が設けられることにより、レシーバ5は、ハウジング10と熱交換器9との間に配置されている。これにより、循環通路221の構成を簡素化しつつ、熱交換器9での熱交換を終えた冷媒をレシーバ5によって好適に気液分離させることが可能となっている。
【0119】
また、ヒートポンプ装置100では、電動モータ17が圧縮機構16と蒸発器11との間に配置されているため、電動モータ17が蒸発器11に近い位置に配置されている。このため、低温の蒸発器11によって電動モータ17を冷却し易くなっている。
【0120】
さらに、電動モータ17と蒸発器11との間にインバータ回路18が配置されているため、インバータ回路18を電動モータ17よりも蒸発器11に接近させることが可能となっている。これにより、低温の蒸発器11によってインバータ回路18を好適に冷却することが可能となっている。さらに、インバータ回路18を軸方向D1で熱交換器9から離隔させることができるため、インバータ回路18が熱交換器9の熱の影響を受け難くなっている。
【0121】
また、循環通路221及び吸入通路231は、ハウジング10に形成されている。これにより、循環通路221及び吸入通路231のいずれについても、ハウジング10及びレシーバケース3の外部にハウジング10やレシーバケース3とは別体で設けられることがない。この点においても、この移動体用熱交換システムは、電気自動車300への搭載性に優れている。
【0122】
(実施例2)
図4に示すように、実施例2の移動体用熱交換システムでは、第1内部通路21aに換えて、第1吐出通路27a、第2吐出通路27b及び第1分岐通路28aがコンプレッサハウジング13内に形成されている。また、この移動体用熱交換システムでは、第2内部通路21dに換えて、第3吐出通路27c及び第2合流通路29bがレシーバケース3内に形成されている。これらの第1~3吐出通路27a~27c及び第1、2合流通路29a、29bは冷媒が流通可能となっている。
【0123】
さらに、この移動体用熱交換システムでは、第1連絡口131aに換えて、第3連絡口131bがコンプレッサハウジング13に形成されている他、コンプレッサハウジング13内に三方弁38が設けられている。三方弁38は、本発明における「流量調整部」の一例である。そして、この移動体用熱交換システムでは、第2連絡口3aに換えて、第4連絡口3bがレシーバケース3に形成されている。
【0124】
第1吐出通路27aは、D1B側が吐出口16bに接続している。そして、第1吐出通路27aは、D1A側が三方弁38に接続している。第2吐出通路27bは、D1B側が三方弁38に接続している。また、第2吐出通路27bは、ハウジング10、レシーバケース3及び熱交換器9が軸方向D1で締結されることにより、D1A側が第3吐出通路27cのD1B側に接続している。
【0125】
第3吐出通路27cは、D1A側が熱交換器9の第1流入口9aに接続している。これらの第1~3吐出通路27a~27cは、吐出通路270を形成している。こうして、吐出通路270及び三方弁38によって、吐出口16bと第1流入口9aとが接続されている。
【0126】
第1分岐通路28aは三方弁38に接続している。つまり、第1分岐通路28aは、三方弁38を通じて吐出通路270と接続している。また、第1分岐通路28aは、三方弁38とは反対側が第3連絡口131bに接続している。こうして、第1分岐通路28a及び三方弁38を通じて、吐出通路270と第3連絡口131bとが接続している。
【0127】
三方弁38は、制御装置C1に接続している。三方弁38は、制御装置C1によって作動制御されることにより、第1吐出通路27aから第2吐出通路27bに流通する冷媒の流量と、第1吐出通路27aから第1分岐通路28aに流通する冷媒の流量とを調整する。
【0128】
第2合流通路29bは冷媒が流通可能となっている。第2合流通路29bは、レシーバケース3内で第1循環通路22aと接続している。また、第2合流通路29bは、第1循環通路22aとは反対側が第4連絡口3bに接続している。こうして、第2合流通路29bを通じて、循環通路221と第4連絡口3bとが接続している。
【0129】
また、この移動体用熱交換システムでは、暖房用凝縮器200の第5流入口200bに対して、第2分岐通路28bが接続されている。つまり、第2分岐通路28bは、ヒートポンプ装置100の外部に位置している。第1分岐通路28aと同様、第2分岐通路28bも冷媒が流通可能となっている。また、第2分岐通路28bは、第5流入口200bとは反対側が第3連絡口131bに接続している。これにより、第2分岐通路28bは、第3連絡口131bを通じて第1分岐通路28aと接続している。こうして、第1分岐通路28a、第3連絡口131b及び第2分岐通路28bにより、分岐通路280が形成されている。
【0130】
一方、暖房用凝縮器200の第5流出口200cには、第1合流通路29aが接続されている。つまり、第1合流通路29aは、ヒートポンプ装置100の外部に位置している。第2合流通路29bと同様、第1合流通路29aも冷媒が流通可能となっている。また、第1合流通路29aは、第5流出口200cとは反対側が第4連絡口3bに接続している。これにより、第1合流通路29aは、第4連絡口3bを通じて第2合流通路29bと接続している。こうして、第1合流通路29a、第4連絡口3b及び第2合流通路29bにより、合流通路290が形成されている。
【0131】
このように、この移動体用熱交換システムでは、分岐通路280及び合流通路290によって、ヒートポンプ装置100と暖房用凝縮器200とが接続されている。ここで、この移動体用熱交換システムでは、上述のように、吐出通路270及び三方弁38によって、吐出口16bと第1流入口9aとが接続されている。そして、分岐通路280は、三方弁38を通じて吐出通路270に接続することにより、吐出通路270から分岐した状態で第5流入口200bに接続している。また、合流通路290は、第5流出口200cに接続しつつ、第1循環通路22a、ひいては循環通路221と接続している。より具体的には、合流通路290は、レシーバ5よりも冷媒の流通方向の上流側で循環通路221と接続している。こうして、合流通路290は、レシーバ5よりも冷媒の流通方向の上流側で循環通路221に合流する状態となっている。
【0132】
これにより、この移動体用熱交換システムでは、吐出口16bから吐出された冷媒は、一部が吐出通路270を経て熱交換器9に流入し、残りの冷媒は、分岐通路280を経て暖房用凝縮器200に流入する。そして、暖房用凝縮器200での熱交換を終えた冷媒は、合流通路290を流通することにより、熱交換器9での熱交換を終えた冷媒とともに、レシーバ5において気液分離される。つまり、この移動体用熱交換システムでは、分岐通路280及び合流通路290によって、暖房用凝縮器200と熱交換器9とが並列に接続されている。このヒートポンプ装置100の他の構成を含め、この移動体用熱交換システムにおける他の構成は実施例1の移動体用熱交換システムと同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0133】
この移動体用熱交換システムでは、吐出口16bから吐出された高温高圧の冷媒が吐出通路270及び分岐通路280をそれぞれ流通する。このため、暖房用凝縮器200では、凝縮器本体200aの内部を流通する高温高圧の冷媒と、暖房用凝縮器200の周囲の空気との熱交換が行われる。これにより、車室CR内に供給される空気が加熱される。
【0134】
また、熱交換器9では、各第1冷媒領域91a内を流通する冷媒と、各第1液体領域91b内の調温用液体との熱交換が行われる。この際、各第1冷媒領域91a内を流通する冷媒は、暖房用凝縮器200での熱交換の影響を受けることがない。つまり、各第1冷媒領域91a内を流通する冷媒についても、凝縮器本体200aの内部を流通する冷媒と同様に、高温高圧の状態となっている。このため、熱交換器9での熱交換により、調温用液体は加熱されることになる。このように、この移動体用熱交換システムでは、熱交換器9は凝縮器として機能することになる。
【0135】
ここで、この移動体用熱交換システムでは、制御装置C1が三方弁38を制御することにより、第1吐出通路27aから第2吐出通路27bに流通する冷媒の流量と、第1吐出通路27aから第1分岐通路28aに流通する冷媒の流量とが調整される。
【0136】
すなわち、例えば車室CRの暖房よりも調温用液体の加熱が優先される場合には、三方弁38は、第1吐出通路27aから第2吐出通路27bに流通する冷媒の流量を増大させる。このため、この場合には第1流入口9aに流入する冷媒の流量が増大する。この結果、熱交換器9での調温用液体の加熱量が増大することから、調温用液体がより高温に加熱されることになる。一方、調温用液体の加熱よりも車室CRの暖房が優先される場合には、三方弁38は、第1吐出通路27aから第1分岐通路28aに流通する冷媒の流量を増大させる。このため、第5流入口200bに流入する冷媒の流量が増大する。この結果、暖房用凝縮器200での空気の加熱量が増大することから、空気がより高温に加熱される。
【0137】
こうして、この移動体用熱交換システムでは、熱交換器9での調温用液体の加熱量と暖房用凝縮器200での空気の加熱量とを適宜調整可能となっている。なお、三方弁38は、車室CRの暖房が不要な場合に第1吐出通路27aから第1分岐通路28aに流通する冷媒の流量をゼロとしたり、調温用液体の加熱が不要な場合に第1吐出通路27aから第2吐出通路27bに流通する冷媒の流量をゼロとしたりしても良い。
【0138】
そして、暖房用凝縮器200での熱交換を終えた冷媒は、合流通路290を流通することにより、レシーバ5よりも冷媒の流通方向の上流側で循環通路221に合流する。このため、暖房用凝縮器200での熱交換を終えた冷媒と、熱交換器9での熱交換を終えた冷媒とは、ともにレシーバ5において気液分離された後、第1膨張弁7によって減圧される。こうして、蒸発器11では、暖房用凝縮器200及び熱交換器9での熱交換を終えた冷媒と、冷却用液体との熱交換が行われることとなる。この移動体用熱交換システムにおける他の作用は実施例1の移動体用熱交換システムと同様である。
【0139】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0140】
例えば、実施例1、2の移動体用熱交換システムは、ヒートポンプ装置100と接続されてヒートポンプ装置100の外部に配置され、冷媒と、車室CR内に供給される空気との熱交換によって空気を冷却する冷房用蒸発器をさらに備えていても良い。
【0141】
また、実施例1、2の移動体用熱交換システムにおいて、暖房用凝縮器200は、熱交換器9及び蒸発器11と同様に、複数枚の熱交換プレートと、複数枚のスペーサと、一対のエンドプレートとを有する所謂プレート式の熱交換器であっても良い。
【0142】
また、実施例1の移動体用熱交換システムにおいて、第2膨張弁24は、第2外部通路21cに設けられることで車室CR内に配置されても良く、動力室PH内に配置されても良い。さらに、第2膨張弁24は、第2内部通路21dに設けられることでヒートポンプ装置100内に配置されても良い。
【0143】
また、実施例1の移動体用熱交換システムにおいて、第2膨張弁24を省略したり、第2膨張弁24に換えて、固定絞りとしてのオリフィスを本発明における「圧力調整部」として採用したりしても良い。
【0144】
また、実施例2の移動体用熱交換システムでは、三方弁38を本発明における「流量調整部」としている。しかし、これに限らず、吐出通路270に設けられて熱交換器9に流入する冷媒の流量を調整可能な第1流量調整弁と、分岐通路280に設けられて暖房用凝縮器200に流入する冷媒の流量を調整可能な第2流量調整弁とによって、本発明における「流量調整部」を構成しても良い。この際、第2流量調整弁は、ヒートポンプ装置100の内部に配置されても良く、ヒートポンプ装置100の外部に配置されても良い。
【0145】
また、実施例1、2の移動体用熱交換システムでは、ヒートポンプ装置100がレシーバ5及び第1膨張弁7を有している。しかし、これに限らず、ヒートポンプ装置100は、レシーバ5及び第1膨張弁7に換えて、循環通路221に設けられた固定絞りとしてのオリフィスと、吸入通路231に設けられたアキュムレータとを有していても良い。
【0146】
また、実施例1、2の移動体用熱交換システムにおいて、レシーバケース3は、熱交換器9よりもD1A側に配置されても良く、ハウジング10と蒸発器11との間に配置されても良い。さらに、レシーバケース3を省略し、ハウジング10内にレシーバ5及び第1膨張弁7を配置しても良い。
【0147】
また、実施例1、2の移動体用熱交換システムにおいて、インバータ回路18は、ハウジング10の外部に設けられて電動モータ17と接続されても良い。
【0148】
また、実施例1、2の移動体用熱交換システムでは、熱交換器9が複数枚の第1熱交換プレート91と、複数枚の第1スペーサ92と、1枚の第1エンドプレート93と、1枚の第2エンドプレート94とで構成されている。しかし、これに限らず、熱交換器9は他の構成であっても良い。蒸発器11についても同様である。
【0149】
また、実施例1、2の移動体用熱交換システムにおいて、調温用液体入口31及び調温用液体出口32を熱交換器9に形成しても良い。
【0150】
また、実施例1、2の移動体用熱交換システムにおいて、コンプレッサハウジング13の固定部133に調温用液体入口31を形成し、熱交換器9に調温用液体出口32を形成しても良い。反対に、固定部133に調温用液体出口32を形成し、熱交換器9に調温用液体入口31を形成しても良い。
【0151】
また、実施例1、2の移動体用熱交換システムにおいて、冷却用液体入口34及び冷却用液体出口35を蒸発器11に形成しても良い。
【0152】
また、実施例1、2の移動体用熱交換システムにおいて、インバータハウジング15に冷却用液体入口34を形成し、蒸発器11に冷却用液体出口35を形成しても良い。反対に、インバータハウジング15に冷却用液体出口35を形成し、蒸発器11に冷却用液体入口34を形成しても良い。
【0153】
また、実施例1、2の移動体用熱交換システムにおいて、インバータ回路18と電動モータ17との間に圧縮機構16を配置しても良い。
【0154】
また、実施例1、2の移動体用熱交換システムは、本発明における「移動体」としての電気自動車300に搭載されている。しかし、これに限らず、本発明における「移動体」は、例えば、運送車両や産業車両の他、船舶や航空機等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、電気自動車等の移動体に利用可能である。
【符号の説明】
【0156】
1…電動圧縮機
9…熱交換器
9a…第1流入口(熱交換器流入口)
9b…第1流出口(熱交換器流出口)
10…ハウジング
11…蒸発器
11a…第2流入口(蒸発器流入口)
11b…第2流出口(蒸発器流出口)
16…圧縮機構
16a…吸入口
16b…吐出口
17…電動モータ
24…第2膨張弁(圧力調整部)
38…三方弁(流量調整部)
91…第1熱交換プレート(熱交換プレート)
92…第1スペーサ(スペーサ)
100…ヒートポンプ装置
111…第2熱交換プレート(熱交換プレート)
112…第2スペーサ(スペーサ)
200…暖房用凝縮器(凝縮器)
200b…第5流入口(凝縮器流入口)
200c…第5流出口(凝縮器流出口)
201…第1締結ボルト(締結部材)
203…第2締結ボルト(締結部材)
211…第1接続通路
212…第2接続通路
221…循環通路
231…吸入通路
270…吐出通路
280…分岐通路
290…合流通路
300…電気自動車(移動体)
CR…車室(室内)
図1
図2
図3
図4