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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078024
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】断熱材
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/02 20060101AFI20240603BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240603BHJP
   C04B 35/83 20060101ALI20240603BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
F16L59/02
B32B5/26
C04B35/83
C04B38/00 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190322
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】野村 健太
(72)【発明者】
【氏名】藤井 伸
【テーマコード(参考)】
3H036
4F100
4G019
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB15
3H036AB24
3H036AC03
4F100AA37B
4F100AD11A
4F100AD11B
4F100AG00B
4F100AK32A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DE01B
4F100DE02A
4F100DG01A
4F100JJ02
4F100JJ02A
4G019EA07
(57)【要約】
【課題】 放射伝熱及び伝導伝熱の両方に対して優れた断熱特性を発揮することのできる断熱材を提供する。
【解決手段】 炭素繊維と鱗片状黒鉛とを含む成形体からなる断熱材であって、上記炭素繊維と上記鱗片状黒鉛とは、炭素質結着剤を介して接合されており、上記成形体は、厚さ方向に対向する第1主面及び第2主面を有し、上記第1主面において上記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)が、上記第2主面において上記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)よりも大きい、ことを特徴とする断熱材。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維と鱗片状黒鉛とを含む成形体からなる断熱材であって、
前記炭素繊維と前記鱗片状黒鉛とは、炭素質結着剤を介して接合されており、
前記成形体は、厚さ方向に対向する第1主面及び第2主面を有し、
前記第1主面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)が、前記第2主面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)よりも大きい、ことを特徴とする断熱材。
【請求項2】
前記第1主面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)と、前記第2主面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)の差が、5%以上である、請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
前記第1主面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)と、前記第1主面と前記第2主面の中間面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)と、前記第2主面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)が、S>S>Sを満たす、請求項1又は2に記載の断熱材。
【請求項4】
前記第1主面に、前記炭素繊維間に炭素系粒子を含有する層である被覆層が設けられている、請求項1又は2に記載の断熱材。
【請求項5】
前記被覆層の前記炭素系粒子及び前記炭素繊維は、互いに炭素系接着材で接合されている、請求項4に記載の断熱材。
【請求項6】
前記炭素系粒子は、黒鉛、カーボンブラック、ガラス状カーボン粒子、及び炭素繊維を粉砕した粒子からなる群から選択される少なくとも1つの炭素系粒子である、請求項4に記載の断熱材。
【請求項7】
前記炭素系粒子は、平均粒子径が10nm~500μmである、請求項4に記載の断熱材。
【請求項8】
前記被覆層は、厚さが10μm~1000μmである、請求項4に記載の断熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維を用いた断熱材は、耐熱温度が高く断熱性能も優れることから、単結晶引き上げ装置、セラミック焼結炉など、高温炉用断熱材として広く利用されている。
【0003】
炭素繊維を用いた断熱材は、炭素繊維による伝熱を抑制するため、気孔率の高いフェルト、抄造体などの形態で広く利用されている。一般に、フェルトは変形性があるため、空いた空間に充填して当該空間を埋める部材や、他の部品を囲む断熱材として利用される。一方、抄造体は高い形状保持性を有するため、所定の形状に加工し、断熱部品として利用される。なお、フェルトは、圧縮した後、バインダによって固定することにより、形状保持性の良い断熱部品として使用することもできる。
【0004】
炭素繊維を用いた断熱材は、炉内での酸化、機械的な摩擦などにより、繊維の脱落を起こし、パーティクルを発生させることがある。また、このような不具合が、放射に対する断熱性の低下を引き起こすことがある。
【0005】
このような課題を解決するため、特許文献1には、嵩密度0.1~0.4g/cmの炭素質断熱部材と、嵩密度0.3~2.0g/cmの炭素質保護層と、炭素質保護層よりも嵩密度の大きい熱分解炭素皮膜と、を有する複合炭素質断熱材において、炭素質断熱部材と炭素質保護層とを、鱗片状黒鉛を含む緻密炭素質中間層によって接合すること、炭素質断熱部材と熱分解炭素皮膜とを、鱗片状黒鉛を含む緻密炭素質表面層を介して設けることで、使用時の炭素繊維の消耗、劣化、粉化を抑制し、断熱特性に優れた複合炭素質断熱材を得ることが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、断熱特性の向上、炭素繊維粉の飛散防止、焼結金属から発生するガスの浸透防止を図るためのコーティング剤を炭素繊維成形断熱材の表面にコーティングすること、及び、該コーティング剤が鱗状黒鉛を含むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-327441号公報
【特許文献2】特開2005-133033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2はいずれも、中間層や表面といった断熱材の一部を緻密化する目的で鱗片状黒鉛を使用している。しかしながら、鱗片状黒鉛が緻密化された部分が中間層もしくは表面の一部のみであるため、放射伝熱を充分に防ぐことができない場合があった。さらに、鱗片状黒鉛が緻密質となるために、伝導伝熱を効率的に防ぐことはできなかった。
また、特許文献1、2はいずれも鱗片状黒鉛の緻密化という作用に着目しており、鱗片状黒鉛自体の断熱特性については特に検討されていなかった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、放射伝熱及び伝導伝熱の両方に対して優れた断熱特性を発揮することのできる断熱材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の断熱材は、炭素繊維と鱗片状黒鉛とを含む成形体からなる断熱材であって、上記炭素繊維と上記鱗片状黒鉛とは、炭素質結着剤を介して接合されており、上記成形体は、厚さ方向に対向する第1主面及び第2主面を有し、上記第1主面において上記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)が、上記第2主面において上記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)よりも大きい、ことを特徴とする。
【0011】
鱗片状黒鉛は、他の炭素系材料と比較して放射光の反射率が高い。
本発明の断熱材では、断熱材が炭素繊維と鱗片状黒鉛とを含む成形体からなり、炭素繊維と鱗片状黒鉛とが炭素質結着剤を介して接合されているため、成形体の全体に鱗片状黒鉛が分布しているといえる。
そのため、成形体の全体に分布した鱗片状黒鉛が放射光を効率的に反射することによって、1400℃以上の温度領域において、放射による伝熱を抑制して、断熱性能を高めることができる。
また、本発明の断熱材では、鱗片状黒鉛が一部の領域に密集しているわけではないため、鱗片状黒鉛が含まれている部分であっても断熱材が緻密化しておらず、伝導による伝熱を抑制して、断熱性能を高めることができる。
【0012】
さらに、成形体の第1主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)が、第2主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)よりも大きいことに起因して、第1主面の近傍では放射伝熱に対する断熱性能が相対的に高く、第2主面の近傍では伝導伝熱に対する断熱性能が相対的に高い。そのため、高温領域で用いる場合には、放射伝熱が主となるような熱源側に第1主面を配置し、伝導伝熱が主となる熱源と反対側に第2主面を配置することで、高い断熱性能を発揮することができる。
【0013】
第1主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)、及び、第2主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)は、成形体の第1主面又は第2主面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から求めることができる。
例えば、第1主面のSEM写真から、画像処理等の手段を用いて、鱗片状黒鉛が占める領域と、そうでない領域に分け、全体の面積に占める鱗片状黒鉛が占める面積を算出することにより、「第1主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率」を求めることができる。
【0014】
本発明の断熱材においては、上記第1主面において上記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)と、上記第2主面において上記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)の差が、5%以上であることが好ましい。
【0015】
本発明の断熱材においては、上記第1主面において上記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)と、上記第1主面と上記第2主面の中間面において上記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)と、上記第2主面において上記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)が、S>S>Sを満たすことが好ましい。
上記条件を満たすことで、放射と伝導の両方の伝熱を抑えて、断熱効果を高めることができる。
第1主面と第2主面の中間面における鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)は、成形体を厚さ方向の1/2の位置において切断した切断面のSEM写真から、第1主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)及び第2主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)と同様の方法で求めることができる。
【0016】
本発明の断熱材においては、上記第1主面に、上記炭素繊維間に炭素系粒子を含有する層である被覆層が設けられていることが好ましい。
被覆層が設けられていると、断熱材のガス遮断性を向上させることができる。また、被覆層によって、炭素繊維の劣化によるパーティクルの発生を抑制することができる。
【0017】
本発明の断熱材において、上記被覆層の上記炭素系粒子及び上記炭素繊維は、互いに炭素系接着材で接合されていることが好ましい。
被覆層を構成する炭素系粒子及び炭素繊維が、互いに炭素系接着材で接合されていると、被覆層が強固となる。
【0018】
本発明の断熱材において、上記炭素系粒子は、黒鉛、カーボンブラック、ガラス状カーボン粒子、及び炭素繊維を粉砕した粒子からなる群から選択される少なくとも1つの炭素系粒子であることが好ましい。
黒鉛、カーボンブラック、ガラス状カーボン粒子、及び炭素繊維を粉砕した粒子からなる群から選択される少なくとも1つの炭素系粒子は、不純物が少なく、断熱材を構成する炭素繊維と同じカーボン系の材料であるため、高温域での耐久性が高い。
【0019】
本発明の断熱材において、上記炭素系粒子は、平均粒子径が10nm~500μmであることが好ましい。
炭素系粒子の平均粒子径が10nm~500μmであると、炭素繊維のすき間に薄く被覆層を形成することができ、断熱材において、炭素繊維との接合を高いレベルで確保することができる。また、熱伝導率が大きくなりやすい被覆層の厚さが厚くなり過ぎることを防止することができる。
【0020】
本発明の断熱材において、上記被覆層は、厚さが10μm~1000μmであることが好ましい。
被覆層の厚さが1000μm以下であると、断熱性能の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の断熱材の一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に破線で示した部分の部分拡大図である。
図3図3は、断熱材の第1主面における表面写真を模式的に示す図である。
図4図4は、断熱材の第2主面における表面写真を模式的に示す図である。
図5図5は、断熱材の中間面における表面写真を模式的に示す図である。
図6図6は、本発明の断熱材の別の一例を模式的に示す断面図である。
図7図7は、本発明の断熱材を使用する形態の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0023】
[断熱材]
本発明の断熱材は、炭素繊維と鱗片状黒鉛とを含む成形体からなる断熱材であって、上記炭素繊維と上記鱗片状黒鉛とは、炭素質結着剤を介して接合されており、上記成形体は、厚さ方向に対向する第1主面及び第2主面を有し、上記第1主面において上記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)が、上記第2主面において上記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)よりも大きい、ことを特徴とする。
【0024】
断熱材は、炭素繊維と鱗片状黒鉛とを含む成形体からなる。
【0025】
(炭素繊維)
成形体を構成する炭素繊維の平均繊維径は、1μm~20μmが好ましい。
炭素繊維の平均繊維径が20μm以下であると、炭素繊維自体による伝導伝熱の効果を抑制することができる。また炭素繊維の平均繊維径が1μm以上であると、遮光性に優れ、放射伝熱を抑制することができる。
【0026】
炭素繊維の平均繊維長は、2mm~10000mmが好ましい。
また、炭素繊維の平均繊維長は、2mm~8mmであってもよく、10mm~10000mmであってもよい。
【0027】
炭素繊維は、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維のいずれでも利用できるとともに、黒鉛質、炭素質いずれの炭素繊維も利用することができる。
【0028】
成形体は、炭素繊維のニードルマット、又は、炭素繊維の抄造体で構成されていることが好ましい。
炭素繊維のニードルマット及び炭素繊維の抄造体は、ランダムに配置された炭素繊維で構成されるため、高い断熱性を発揮することができ、断熱材を構成する成形体として特に好適である。
【0029】
成形体が炭素繊維のニードルマットで構成されている場合、炭素繊維の平均繊維長は、10mm~10000mmであることが好ましい。
成形体が炭素繊維の抄造体で構成されている場合、炭素繊維の平均繊維長は、2mm~8mmであることが好ましい。
【0030】
(鱗片状黒鉛)
鱗片状黒鉛は、薄い鱗状の形状を有する黒鉛である。
具体的には、フレーク状であり、厚さが100μm以下の黒鉛を鱗片状黒鉛とする。
【0031】
鱗片状黒鉛の平均粒子径は特に限定されないが、2~500μmであることが好ましい。
鱗片状黒鉛の平均粒子径が2μm~500μmであると、放射光の反射率が高く、鱗片状黒鉛による熱伝導を抑えることができる。
なお、鱗片状黒鉛の平均粒子径は、JIS M 8511(2014)に記載された「天然黒鉛の工業分析及び試験法」に準拠した篩分析法により測定することができる。
【0032】
成形体の少なくとも一方の主面には、鱗片状黒鉛が露出している。
【0033】
本発明の断熱材においては、成形体の一方の表面において鱗片状黒鉛が占める面積比率が、他方の主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率よりも大きい。
具体的には、第1主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)が、第2主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)よりも大きい。
すなわち、鱗片状黒鉛が占める上記面積比率を比較したときに、相対的に面積比率が大きい主面が第1主面であり、相対的に面積比率が小さい主面が第2主面である。
【0034】
第1主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)、及び、第2主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)は、成形体の第1主面又は第2主面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から求めることができる。
【0035】
成形体の第1主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)は、5%~40%であることが好ましい。
成形体の第2主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)は、0%~30%であることが好ましい。
【0036】
上記Sと上記Sとの差は、5%以上であることが好ましい。
上記Sと上記Sとの差が5%以上であると、第1主面側に多くの鱗片状黒鉛が配置されることとなり、放射光の反射をより高めることができる。
【0037】
成形体の第1主面と第2主面の中間面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)は、S>S>Sを満たすことが好ましい。
換言すると、上記中間面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)は、第1主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)より小さいことが好ましく、第2主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)より大きいことが好ましい。
【0038】
成形体の第1主面と第2主面の中間面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)は、0%~35%であることが好ましい。
【0039】
成形体中の鱗片状黒鉛は、成形体の厚さ方向に平行な方向に配向していることが好ましい。
成形体中の鱗片状黒鉛の上記配向度が上記範囲内であると、鱗片状黒鉛による放射光を反射する作用が特に強くなるため、1400℃以上の温度領域における断熱性能をさらに高めることができる。
【0040】
(炭素質結着剤)
炭素繊維と、鱗片状黒鉛とは、炭素質結着剤を介して接合されている。
【0041】
炭素質結着剤とは、有機バインダが非酸化性雰囲気下で加熱されることで炭化したものである。詳細は後述する。
【0042】
(成形体)
成形体の形状は、厚さ方向に対向する第1主面及び第2主面を有する形状であればよく、例えば平板状や筒状等が挙げられるが、断熱対象物の形状に合わせて適宜設定すればよい。
成形体の厚さは特に限定されないが、3~550mmであることが好ましい。
【0043】
成形体の、鱗片状黒鉛が含まれる領域における成形体の嵩密度は、0.1~0.8g/cmであることが好ましい。
【0044】
本発明の断熱材は、成形体の第1主面を熱源(高温)側に向けて配置してもよいし、第2主面を熱源(高温)側に配置してもよい。ただし、第1主面のほうが放射伝熱を遮断する性能が高いため、放射伝熱が支配的になる1200℃以上の温度領域においては、第1主面を高温(熱源)側に向けて使用することが好ましい。
【0045】
成形体の表面には、被覆層が設けられていてもよい。
被覆層は、成形体の一方表面の一部を覆ってもよいし、全部を覆っていてもよい。
また、被覆層は、成形体の第1主面だけに設けられていてもよいし、第2主面だけに設けられていてもよいし、第1主面と第2主面の両方に設けられていてもよい。
【0046】
被覆層は、炭素繊維間に炭素系粒子を含有する層である。
【0047】
被覆層の厚さは特に限定されないが、10μm~1000μmであることが好ましい。
【0048】
被覆層を構成する炭素繊維としては、成形体を構成する炭素繊維と同様のものを好適に用いることができる。
【0049】
被覆層において、炭素繊維と炭素系粒子は、互いに炭素系接着材で接合されていることが好ましい。
炭素繊維と炭素系粒子が互いに炭素系接着材で接合されていると、被覆層が強固となり、断熱材のガス遮断性をより向上させることができる。
【0050】
なお、炭素系接着材とは、有機バインダが非酸化性雰囲気下で加熱されることで炭化したものである。詳細は後述する。
【0051】
なお、炭素系接着材及び炭素質結着剤は、いずれも、有機バインダが非酸化性雰囲気下で加熱されることで炭化したものであり、実質的な違いはないが、接合対象が異なるため、便宜的に区別している。
【0052】
炭素系粒子は、鱗片状黒鉛以外の黒鉛、カーボンブラック、ガラス状カーボン粒子、及び炭素繊維を粉砕した粒子からなる群から選択される少なくとも1つの炭素系粒子であることが好ましい。
以下の説明において、「炭素系粒子」の語には鱗片状黒鉛を含まない。
【0053】
ガラス状カーボン粒子とは、フェノール樹脂の炭化物などの難黒鉛化性炭素を粉砕したものである。
炭素繊維を粉砕した粒子は、ミルド炭素繊維ともいう。ミルド炭素繊維の平均繊維長は、例えば20μm~500μmであることが好ましい。
【0054】
炭素系粒子は、平均粒子径が10nm~500μmであることが好ましい。
炭素系粒子の平均粒子径が10nm~500μmであると、炭素繊維のすき間に炭素系粒子が侵入しやすく、薄い被覆層を形成しやすい。
【0055】
以下、図面を参照しながら、本発明の断熱材の一例を説明する。
図1は、本発明の断熱材の一例を模式的に示す断面図である。図2は、図1に破線で示した部分の部分拡大図である。
【0056】
図1に示すように、断熱材1は、成形体10を備える。
成形体10は、厚さ方向に対向する第1主面10a及び第2主面10bを有する平板形状である。
成形体10の厚さは、図1中、両矢印Tで示す長さである。両矢印Tの長さは、両矢印Tの長さの1/2の長さであり、第1主面10a又は第2主面10bから、後述する中間面10cまでの長さでもある。従って、中間面10cは、成形体10を厚さ方向に走査した時の、第1主面10aから第2主面10bまでの中間にある面であるといえる。
【0057】
図2に示すように、成形体10は、炭素繊維30と鱗片状黒鉛20からなり、炭素繊維30と鱗片状黒鉛20は、互いに炭素質結着剤40で接合されている。
【0058】
成形体10における鱗片状黒鉛20の濃度は、第1主面10a側から第2主面10b側に向かって徐々に低下している。
すなわち、成形体10は、厚さ方向に鱗片状黒鉛20の濃度勾配を有しており、成形体10の第1主面10aにおける鱗片状黒鉛の濃度と、第2主面10bにおける鱗片状黒鉛の濃度が異なる。このことを図3及び図4を用いて説明する。
【0059】
図3は、断熱材の第1主面における表面写真を模式的に示す図である。図4は、断熱材の第2主面における表面写真を模式的に示す図である。
図3に示すように、成形体10の第1主面10aには、鱗片状黒鉛20が露出している。
また、図4に示すように、成形体10の第2主面10bには、鱗片状黒鉛20が露出している。
図3における成形体10の第1主面10aの全面積に対する、鱗片状黒鉛が占める面積の割合が、第1主面10aにおいて鱗片状黒鉛20が占める面積比率(S)である。
同様に、図4における成形体10の第2主面10bの全面積に対する、鱗片状黒鉛20が占める面積の割合が、第2主面10bにおいて鱗片状黒鉛20が占める面積比率(S)である。
図3及び図4の対比から、第1主面10aにおいて鱗片状黒鉛20が占める面積比率(S)は、第2主面10bにおいて鱗片状黒鉛20が占める面積比率(S)よりも大きくなっている。
【0060】
なお、図1及び図4には、成形体10の第2主面10bにも鱗片状黒鉛20が露出している形態を示したが、成形体10の第2主面10bに鱗片状黒鉛20が露出していなくてもよい。この場合、上述した第2主面において鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)は0%となる。
【0061】
図5は、断熱材の中間面における表面写真を模式的に示す図である。また図5は、図1の一点鎖線10cで示す位置(成形体10を厚さ方向に2等分する位置)において、成形体10を切断した際の切断面(露出面)でもある。成形体10のうち一点鎖線10cで示す面を中間面ともいう。
図3及び図4並びに図5に示すように、中間面10cにおいて鱗片状黒鉛20が占める面積比率(S)は、第1主面10aにおいて鱗片状黒鉛20が占める面積比率(S)よりも小さく、かつ、第2主面10bにおいて鱗片状黒鉛20が占める面積比率(S)よりも大きくなっている。
換言すると、上記S、S及びSは、S>S>Sを満たしている。
【0062】
図6は、本発明の断熱材の別の一例を模式的に示す断面図である。
図6に示す断熱材2は、成形体10と、成形体10の第1主面10aに設けられた被覆層50と、を有している。
成形体の第1主面に被覆層が設けられていると、断熱材のガス遮断性を向上させることができる。また、被覆層によって、炭素繊維の劣化によるパーティクルの発生を抑制することができる。
【0063】
図7は、本発明の断熱材を使用する形態の一例を模式的に示す断面図である。
図7は、断熱材1が断熱対象物である熱源60に接した状態を示している。
図7では、断熱材1を構成する成形体10の第1主面10aが熱源60側となるよう配置されている。
【0064】
[断熱材の製造方法]
本発明の断熱材は、例えば、炭素繊維、鱗片状黒鉛及び有機バインダを含み、一方主面と他方主面とで鱗片状黒鉛の含有割合が異なる炭素繊維集合体を得る成形工程と、上記炭素繊維集合体に含まれる上記有機バインダを炭化させて、上記有機バインダが炭化して得られる炭素質結着剤によって上記炭素繊維と上記鱗片状黒鉛とを接合する接合工程と、を含む断熱材の製造方法により得られる。
【0065】
(成形工程)
成形工程では、炭素繊維、鱗片状黒鉛及び有機バインダを含み、一方主面と他方主面とで鱗片状黒鉛の含有割合が異なる炭素繊維集合体を得る。
一方主面と他方主面とで鱗片状黒鉛の含有割合が異なる炭素繊維集合体を得る方法としては、例えば、炭素繊維、鱗片状黒鉛及び有機バインダを含む溶液を抄造する方法において一方主面側から脱溶媒を行うことが挙げられる。
【0066】
炭素繊維、鱗片状黒鉛及び有機バインダを含む溶液を抄造する方法では、炭素繊維、鱗片状黒鉛及び有機バインダを含む溶液を所定の型に流し込み、溶媒(分散媒)を除去することで、炭素繊維、鱗片状黒鉛及び有機バインダを含む炭素繊維集合体が得られる。
型に流し込まれた溶液中では、鱗片状黒鉛がほぼ均一に分散している。当該溶液から溶媒(分散媒)を除去する際に、一方主面側から除去することで、溶液が除去される位置(一方主面)に近い部分に鱗片状黒鉛が移動し、一方主面と他方主面とで鱗片状黒鉛の含有割合が異なる炭素繊維集合体が得られる。
このとき、脱溶媒の速度を調整することで、鱗片状黒鉛の偏りの程度を調整する事ができる。
【0067】
(接合工程)
接合工程では、例えば、炭素繊維集合体に含まれる有機バインダを炭化させて、有機バインダが炭化して得られる炭素質結着剤によって炭素繊維と鱗片状黒鉛とを接合する。
【0068】
接合工程における加熱条件は特に限定されないが、温度700~2100℃、非酸化性雰囲気で1~12時間加熱することが好ましい。
なお、非酸化性雰囲気には、不活性雰囲気及び還元性雰囲気を含む。
【0069】
不活性雰囲気は、主成分を不活性ガスとする雰囲気である。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0070】
還元性雰囲気は、主成分を還元性ガスとする雰囲気である。
還元性ガスとしては、水素、一酸化炭素、炭化水素、塩素等が挙げられる。
【0071】
有機バインダとしては、例えば、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)及びピッチ等が挙げられる。
【0072】
上記工程を経ることにより、本発明の断熱材が得られる。
なお、成形体の第1主面に被覆層を形成したい場合、下記に示す被覆層形成工程を行うことが好ましい。
【0073】
(被覆層形成工程)
被覆層形成工程では、例えば、少なくとも炭素系粒子を含有するスラリーを、成形体の第1主面上に塗布し、焼成することにより被覆層を形成する。
上記工程により、成形体の第1主面に、成形体を構成する炭素繊維と、上記スラリーに含まれる炭素系粒子と、からなる被覆層が形成される。
焼成条件は、上述した接合工程における加熱条件と同様の条件が好ましい。
また、上記スラリーは、有機バインダを含有していてもよい。
上記スラリーが有機バインダを含有していると、焼成により有機バインダが、炭素繊維と炭素系粒子とを接合する炭素系接着剤となり、被覆層が強固となる。
【0074】
本発明の断熱材は、上述した方法の他にも、例えば、炭素繊維からなる集合体の少なくとも一方の表面に鱗片状黒鉛を配置する鱗片状黒鉛配置工程と、上記鱗片状黒鉛が載せられた上記集合体の表面に有機バインダを添加する有機バインダ添加工程と、上記有機バインダを炭化させて、上記有機バインダが炭化して得られる炭素質結着剤によって、上記炭素繊維と上記鱗片状黒鉛とを接合する接合工程と、を含む断熱材の製造方法によっても得ることができる。
【0075】
炭素繊維からなる集合体を準備する方法としては、例えば、ニードリング法や抄造法が挙げられる。
ニードリング法の場合、例えば、平均繊維長が10mm~10000mmの炭素繊維をシート状に積層し、ニードリングにより炭素繊維同士を交絡させることで炭素繊維からなる集合体を得ることができる。
【0076】
抄造法の場合、例えば、平均繊維長が2mm~8mmの炭素繊維を水等の分散媒に分散させた懸濁液を準備し、型を用いて抄造することで、炭素繊維からなる集合体を得ることができる。
【0077】
抄造法の場合、懸濁液には有機バインダが含まれていてもよい。
懸濁液に有機バインダが含まれていると、抄造時に炭素繊維同士が固定されて、成形性が向上する。また、炭素繊維からなる成形体に有機バインダが残留して炭素繊維同士を拘束することができるため、後述の接合工程よりも前の段階における成形体のハンドリング性を向上させることができる。
【0078】
なお、懸濁液に含まれていてもよい有機バインダには、後述する接合工程で用いてもよい有機バインダと同様のものを好適に用いることができる。
【0079】
(鱗片状黒鉛配置工程)
鱗片状黒鉛配置工程では、炭素繊維からなる集合体の少なくとも一方の表面に鱗片状黒鉛を配置する。
配置する鱗片状黒鉛の量は、炭素繊維からなる集合体の重量の5重量%~60重量%の鱗片状黒鉛を配置することが好ましい。
【0080】
(有機バインダ添加工程)
有機バインダ添加工程では、鱗片状黒鉛が配置された炭素繊維からなる集合体の表面に有機バインダを添加する。
このとき、有機バインダを溶媒に分散させた分散液(有機バインダ分散液)の状態で用いることで、有機バインダ分散液が炭素繊維からなる集合体の深さ方向に侵入する。
このときに、炭素繊維からなる集合体の表面に配置された鱗片状黒鉛の一部が有機バインダと共に炭素繊維からなる集合体の深さ方向に侵入する。このことにより、炭素繊維からなる集合体の深さ方向に鱗片状黒鉛が拡散した状態となる。
【0081】
得られた鱗片状黒鉛が配置され、有機バインダが添加された炭素繊維の集合体を複数枚積層させることで、一方主面と他方主面とで鱗片状黒鉛の含有量が異なる炭素繊維集合体が得られる。配置された鱗片状黒鉛の量が異なる集合体を積層することで任意に濃度を変えることができる。
【0082】
以上の工程により、本発明の断熱材が得られる。
なお、成形体の第1主面に被覆層を形成したい場合、さらに上述した被覆層形成工程を行うことが好ましい。
【0083】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0084】
本開示(1)は、炭素繊維と鱗片状黒鉛とを含む成形体からなる断熱材であって、
前記炭素繊維と前記鱗片状黒鉛とは、炭素質結着剤を介して接合されており、
前記成形体は、厚さ方向に対向する第1主面及び第2主面を有し、
前記第1主面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)が、前記第2主面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)よりも大きい、ことを特徴とする断熱材である。
【0085】
本開示(2)は、前記第1主面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)と、前記第2主面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)の差が、5%以上である、本開示(1)に記載の断熱材である。
【0086】
本開示(3)は、前記第1主面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)と、前記第1主面と前記第2主面の中間面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)と、前記第2主面において前記鱗片状黒鉛が占める面積比率(S)が、S>S>Sを満たす、本開示(1)又は(2)に記載の断熱材である。
【0087】
本開示(4)は、前記第1主面に、前記炭素繊維間に炭素系粒子を含有する層である被覆層が設けられている、本開示(1)~(3)のいずれかに記載の断熱材である。
【0088】
本開示(5)は、前記被覆層の前記炭素系粒子及び前記炭素繊維は、互いに炭素系接着材で接合されている、本開示(4)に記載の断熱材である。
【0089】
本開示(6)は、前記炭素系粒子は、黒鉛、カーボンブラック、ガラス状カーボン粒子、及び炭素繊維を粉砕した粒子からなる群から選択される少なくとも1つの炭素系粒子である、本開示(4)又は(5)に記載の断熱材である。
【0090】
本開示(7)は、前記炭素系粒子は、平均粒子径が10nm~500μmである、本開示(4)~(6)のいずれかに記載の断熱材である。
【0091】
本開示(8)は、前記被覆層は、厚さが10μm~1000μmである、本開示(4)~(7)のいずれかに記載の断熱材である。
【0092】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
[成形工程]
炭素繊維(平均繊維径:13μm、平均繊維長:3.3mm)、及び有機バインダ(フェノール樹脂)を100:20(重量比、有機バインダは固形分換算)で含む分散液を抄造型に入れ、その後で鱗片状黒鉛(平均粒子径:100μm)を炭素繊維100重量部に対して40重量部を抄造型に入れた分散液の上から入れ、鱗片状黒鉛が入った分散液を抄造法により成形し、炭素繊維からなるシート状の集合体(厚さ3mm)を得た。
なお、シート状の集合体を脱溶媒する際には、型の底面のみから溶媒(水)を吸引した。
【0094】
[接合工程]
この集合体を不活性雰囲気下で2000℃に加熱して、成形体に含まれる有機バインダ(フェノール樹脂)を炭素化して、炭素繊維と鱗片状黒鉛とが炭素質結着剤により接合された炭素繊維の成形体を得た。
【0095】
得られた成形体の主面をSEMで撮影し、鱗片状黒鉛が占める割合を求めたところ、一方の主面で10%(S)、他方の主面で0%(S)であった。このため、一方の主面が第1主面、他方の主面が第2主面となる。
さらに、得られた成形体を厚さ方向に2分割し、露出した切断面である中間面についても、SEMによって鱗片状黒鉛が占める割合を求めたところ、3%(S)であった。
このため、実施例1に係る断熱材においては、S>S>Sが成立していることを確認した。
【0096】
(実施例2)
成形工程における鱗片状黒鉛の配合量を炭素繊維100重量部に対して80重量部に変更したほかは、実施例1と同様の手順で、実施例2に係る断熱材を得た。
第1主面、第2主面及び中間面において鱗片状黒鉛が占める面積割合(S、S、S)は、それぞれ、20%、5%、0%であった。
【0097】
(実施例3)
炭素繊維(平均繊維径:13μm、平均繊維長:3.3mm)及び有機バインダ(フェノール樹脂)を100:20(重量比、有機バインダは固形分換算)で含む分散液を抄造法により成形し、炭素繊維からなるシート状の集合体(厚さ1.5mm)を得た。
【0098】
[鱗片状黒鉛配置工程]
炭素繊維からなるシート状の集合体の一方主面に、鱗片状黒鉛(平均粒子径:100μm)を配置した。このとき、配置した鱗片状黒鉛の重量は、炭素繊維からなるシート状の集合体の重量の33重量%とした。
【0099】
[有機バインダ添加工程]
続いて、有機バインダ(フェノール樹脂)を溶媒に分散させた有機バインダ分散液を、鱗片状黒鉛が配置された炭素繊維からなるシート状の集合体の表面に添加した。
【0100】
[接合工程]
最後に、炭素繊維からなるシート状の集合体を2枚積層して不活性雰囲気下で2000℃に加熱して、成形体に含まれる有機バインダ(フェノール樹脂)を炭素化して、炭素繊維と鱗片状黒鉛とが炭素質結着剤により接合された炭素繊維の成形体(実施例3に係る断熱材)を得た。
第1主面、第2主面及び中間面において鱗片状黒鉛が占める面積割合(S、S、S)は、それぞれ、25%、25%、0%であった。
【0101】
(比較例1)
成形工程において分散液中に鱗片状黒鉛をあらかじめ添加し攪拌したことほかは、実施例1と同様の手順で、比較例1に係る断熱材を得た。
第1主面、第2主面及び中間面において鱗片状黒鉛が占める面積割合(S、S、S)はすべて同じで、5%であった。
【0102】
(比較例2)
成形工程において鱗片状黒鉛を添加しなかったほかは、実施例1と同様の手順で、比較例2に係る断熱材を得た。
【0103】
[断熱特性評価]
以下の手順で、実施例1~3及び比較例1、2に係る断熱材の断熱特性を評価した。結果を表1に示す。
2000℃不活性雰囲気下に各断熱材を入れ、レーザーフラッシュ法により断熱特性を評価した。比較例2の断熱材を基準にして熱伝導率が20%以上低減できたものを〇、10%未満のものを×とした。
【0104】
【表1】
【0105】
表1の結果より、実施例1~3に係る断熱材の断熱特性が、比較例1に係る断熱材よりも優れていることを確認した。
【符号の説明】
【0106】
1、2 断熱材
10 成形体
10a 成形体の第1主面
10b 成形体の第2主面
10c 成形体の中間面
20 鱗片状黒鉛
30 炭素繊維
40 炭素質結着剤
50 被覆層
60 熱源
成形体の厚さ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7