(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078032
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】車載装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240603BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240603BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
H02J1/00 306G
B60R16/02 660K
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190337
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】谷中 裕太
【テーマコード(参考)】
5G165
5K033
【Fターム(参考)】
5G165BB04
5G165BB09
5G165EA02
5G165GA04
5G165GA09
5G165HA07
5G165HA09
5G165HA20
5G165KA08
5G165KA11
5G165KA12
5G165LA02
5G165LA03
5K033BA06
5K033DA01
5K033DA05
5K033DB19
5K033DB20
5K033EC01
(57)【要約】
【課題】車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに対し、給電に関する処理を効率的に行うことができる車載装置等を提供する。
【解決手段】車載装置は、車両に搭載され、車載ネットワークに接続される車載ECUと通信可能に接続される車載装置であって、前記車載ECUの給電に関する処理を行う制御部を備え、前記制御部は、前記車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに流れる電流値を取得し、前記車両に搭載される電源装置において、前記サービスを実行するにあたり使用可能な使用可能容量を取得し、取得した前記使用可能容量及び電流値に基づき、前記サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続するか否かを判定し、前記判定結果に応じて、給電に関する処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車載ネットワークに接続される車載ECUと通信可能に接続される車載装置であって、
前記車載ECUの給電に関する処理を行う制御部を備え、
前記制御部は、
前記車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに流れる電流値を取得し、
前記車両に搭載される電源装置において、前記サービスを実行するにあたり使用可能な使用可能容量を取得し、
取得した前記使用可能容量及び電流値に基づき、前記サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続するか否かを判定し、
前記判定結果に応じて、給電に関する処理を行う
車載装置。
【請求項2】
前記サービスに対応する車載ECUには、前記電源装置からの給電を遮断するための給電遮断部が設けられており、
前記制御部による給電に関する処理は、前記給電遮断部に対し、給電を遮断する制御を含む
請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記制御部による給電に関する処理は、前記車載ネットワークを介して、前記サービスに対応する車載ECUに対し、スリープ信号を出力する処理を含む
請求項1に記載の車載装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記サービスの実行中において、周期的に検出される電流値それぞれを取得し、
取得した複数の電流値に基づき、累積使用電力量を算出し、
前記使用可能容量、前記累積使用電力量、及び今回取得した電流値に基づき、前記サービスに対応する車載ECUへの給電の継続可能時間を算出し、
算出した前記継続可能時間が所定値未満となった場合、前記サービスに対応する車載ECUに対する給電を遮断するための処理を行う
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項5】
前記車両にて実行される前記サービスは複数個あり、
前記制御部は、
複数の前記サービスにおいて定められている優先順位に応じて、給電を遮断する車載ECUを特定し、
特定した車載ECUに対する給電を遮断するための処理を行う
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項6】
前記制御部は、
複数の前記サービスそれぞれに対応する車載ECUへの給電の継続可能時間それぞれを周期的に算出し、
算出した前記サービスそれぞれにおける継続可能時間それぞれに関する情報を出力し、
前記継続可能時間それぞれに関する情報は、単一の前記サービスのみを実行する際における継続可能時間、又は複数の前記サービスを組み合わせて実行する際における継続可能時間を含む
請求項5に記載の車載装置。
【請求項7】
前記車載ネットワークには、複数の車載ECU間にて送受信される通信データの中継する中継装置が接続されており、
前記制御部は、
前記給電に関する処理として、出力し中継装置へ電源制御指示を出力することにより、前記サービスに対応する車載ECUに対しスリープ信号を出力させる処理を前記中継装置に実行させる
請求項1に記載の車載装置。
【請求項8】
前記制御部は複数の車載ECU間にて送受信される通信データの中継する処理を行い、
前記サービスに対応する車載ECUには、前記電源装置からの給電を遮断するための給電遮断部が設けられており、
前記車両には、前記給電遮断部と導通可能に接続される給電遮断装置が搭載されており、
前記制御部は、
前記給電遮断装置から、前記サービスに対応する車載ECUに流れる電流値を取得し、
取得した前記使用可能容量及び電流値に基づき、前記サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続するか否かを判定し、
前記判定結果に応じて、給電に関する処理を行い、
前記給電に関する処理は、
前記車載ネットワークを介して、前記サービスに対応する車載ECUに対しスリープ信号を出力する処理と、
前記給電遮断装置へ電源制御指示を出力することにより、前記給電遮断部に対し給電を遮断する処理を、前記給電遮断装置に実行させる処理とを含む
請求項1に記載の車載装置。
【請求項9】
車載ネットワークに接続される車載ECUと通信可能に接続されるコンピュータに、
車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに流れる電流値を取得し、
前記車両に搭載される電源装置において、前記サービスを実行するにあたり使用可能な使用可能容量を取得し、
取得した前記使用可能容量及び電流値に基づき、前記サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続するか否かを判定し、
前記判定結果に応じて、給電に関する処理を行う
処理を実行させる情報処理方法。
【請求項10】
車載ネットワークに接続される車載ECUと通信可能に接続されるコンピュータに、
車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに流れる電流値を取得し、
前記車両に搭載される電源装置において、前記サービスを実行するにあたり使用可能な使用可能容量を取得し、
取得した前記使用可能容量及び電流値に基づき、前記サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続するか否かを判定し、
前記判定結果に応じて、給電に関する処理を行う
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のECU(Electronic Control Unit)が通信バスに接続されている車載システムが開示されている。各ECUは、通信バスを介して他のECUと通信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車載システムでは、車両で実行されるサービスに対応する車載ECUによる消費電力に関し何ら考慮されていないという問題点がある。
【0005】
本開示は、車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに対し、給電に関する処理を効率的に行うことができる車載装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車載装置は、車両に搭載され、車載ネットワークに接続される車載ECUと通信可能に接続される車載装置であって、前記車載ECUの給電に関する処理を行う制御部を備え、前記制御部は、前記車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに流れる電流値を取得し、前記車両に搭載される電源装置において、前記サービスを実行するにあたり使用可能な使用可能容量を取得し、取得した前記使用可能容量及び電流値に基づき、前記サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続するか否かを判定し、前記判定結果に応じて、給電に関する処理を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに対し、給電に関する処理を効率的に行う車載装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る車載装置等を含む車載システムの構成を例示する模式図である。
【
図2】車載装置の内部構成を例示するブロック図である。
【
図3】車載装置の制御部の処理を例示するフローチャートである。
【
図4】実施形態2(複数サービスの優先順位)に係るサービステーブルに関する説明図である。
【
図5】車載装置の制御部の処理を例示するフローチャートである。
【
図6】実施形態3(中継装置がスリープ信号を出力)に係る車載装置等を含む車載システムの構成を例示する模式図である。
【
図7】車載装置の制御部の処理を例示するフローチャートである。
【
図8】実施形態4(中継装置が電源制御を実施)に係る車載装置等を含む車載システムの構成を例示する模式図である。
【
図9】車載装置(中継装置)の制御部の処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0010】
(1)本開示の一態様に係る車載装置は、車両に搭載され、車載ネットワークに接続される車載ECUと通信可能に接続される車載装置であって、前記車載ECUの給電に関する処理を行う制御部を備え、前記制御部は、前記車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに流れる電流値を取得し、前記車両に搭載される電源装置において、前記サービスを実行するにあたり使用可能な使用可能容量を取得し、取得した前記使用可能容量及び電流値に基づき、前記サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続するか否かを判定し、前記判定結果に応じて、給電に関する処理を行う。
【0011】
本態様にあたっては、車載装置は、車載ネットワークに接続される複数の車載ECUの給電に関する処理を行う制御部を備え、これら車載ECUの給電を開始又は遮断させることにより、当該車載ECUの起動又は停止を制御する電源制御装置として機能する。車載装置は、鉛バッテリ又はオルタネータ等の電源装置と電源線にて接続されており、当該電源線を介して電源装置から供給された電力を、電流の流れ方向にて下流側に配置される複数の車載ECUに対し分配する電源分配装置として機能する。電源分配装置として機能する車載装置は、電源装置から延設される電線を複数の電線に分岐し、分岐された電線(分岐電線)それぞれは、コネクタを介して、対応する車載ECUそれぞれに接続されている。分岐された電線それぞれにおいて、車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに接続される電線には、例えば電流センサが配置されている。車載装置の制御部は、電流センサが検出した電流値(a[A])を定期的、周期的又は定常的に取得し、所定の処理単位時間(サンプリング周期:E[s])における電流値の積算量(F[C]=a[A]*E[s])を算出する。車載装置の制御部は、電流値の積算量を算出するにあたり、直近(現時点)に取得した一回分での電流値を用いる場合に限定されず、現時点から遡及して複数回(例えば3回分など)にて取得した電流値の平均値(移動平均)を算出し、当該平均値を用いて、電流値の積算量を算出するものであってもよい。例えば、単一のサービスを実行するにあたり、複数の車載ECU(ECUa、ECUb、ECUc)を起動(ウェイクアップ)する場合、車載装置の制御部は、これら複数の車載ECU(ECUa、ECUb、ECUc)それぞれが接続される分岐電線それぞれに配置される電流センサそれぞれが検出した各電流値(a[A]、b[A]、c[A])を取得する。この場合、電流値の積算量は、これら各電流値(a[A]、b[A]、c[A])の合計値(F[C]=(a+b+c)[A]*E[s])となる。車載装置の記憶部には、電源装置のバッテリ容量(満充電容量)に対し、サービスを実行するにあたり使用可能な使用可能容量が記憶されており、車載装置の制御部は、当該記憶部を参照することにより、使用可能容量を取得する。使用可能容量は、例えば車両の停止時(IGスイッチがオフ時)において、電源装置のバッテリ容量(満充電容量)の対し、サービスに対応する車載ECUが使用可能な割合に基づき決定される電力量である。すなわち、使用可能容量は、電源装置のバッテリ容量(満充電容量:x[Ah])に、使用可能な割合(G[%])を乗算した値(H[C]=x[Ah]*3600*(G/100))となる。このように、車載装置の制御部は、例えば車両の停止時等において、まずはサービスに対応する車載ECUに給電してサービスを実行すると共に、当該車載ECUにて流れた電流値の積算量(消費電力量)を算出する。車載装置の制御部は、算出した電流値の積算量と、使用可能容量とに基づき、サービスに対応する車載ECUに対する給電を、継続するか否かの判定を行う。従って、駐車中であり、車両の停止時等であっても、鉛バッテリ等にて構成される電源装置において、バッテリあがりやバッテリが劣化することを抑制しつつ、サービスを適切な範囲にて実行することができ、当該サービスの価値の低下を抑制することができる。
【0012】
(2)本開示の一態様に係る車載装置は、前記サービスに対応する車載ECUには、前記電源装置からの給電を遮断するための給電遮断部が設けられており、前記制御部による給電に関する処理は、前記給電遮断部に対し、給電を遮断する制御を含む。
【0013】
本態様にあたっては、電源分配装置として機能する車載装置から、車載ECUそれぞれに延設される電線それぞれには、車載ECUへの給電を遮断する給電遮断部が接続されている。すなわち、サービスに対応する個々の車載ECUには、給電遮断部が接続されている。給電遮断部それぞれと、車載装置とは、例えばシリアルケーブル、ワイヤーハーネス又は、一つの信号のみを送信する導電ケーブル(じか線)等の信号線により通信可能に接続されている。給電遮断部は、例えば、半導体リレー、機械式リレー又は開閉スイッチにより構成されており、車載装置から出力される信号に応じて、車載ECUが電源装置から給電される接続状態(給電状態)と、電源装置からの給電が遮断される遮断状態(非給電状態)とを遷移する。給電遮断部がリレー等により構成される場合、車載ECUが電源装置から給電される接続状態はリレーのオン状態に相当し、電源装置からの給電が遮断される遮断状態はリレーのオフ状態に相当する。このように車載装置の制御部による給電遮断部に対する制御、すなわち給電を遮断(リレーをオフ)する制御、及び給電を開始(リレーをオン)する制御は、給電遮断部の構成、特性及び仕様に応じて行われる。車載装置の制御部は、例えば特定のサービスを実行するため、起動対象となる車載ECUに接続される給電遮断部を、給電を開始(リレーをオン)する状態に制御する。車載装置の制御部は、取得した使用可能容量及び電流値に基づき、サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続しないと判定した場合、給電に関する処理として、当該サービスに対応する車載ECUに接続される給電遮断部に対し給電を遮断する制御を行う。これにより、サービスに対応する車載ECUに対し、給電に関する処理を効率的に行うことができ、バッテリあがり等の発生を防止しつつ、サービスを適切な範囲にて実行することができ、当該サービスの価値の低下を抑制することができる。
【0014】
(3)本開示の一態様に係る車載装置は、前記制御部による給電に関する処理は、前記車載ネットワークを介して、前記サービスに対応する車載ECUに対し、スリープ信号を出力する処理を含む。
【0015】
本態様にあたっては、車載ネットワークに接続される車載ECUは、当該車載ネットワークを介して、車載装置から送信されるウェイクアップ信号等の起動信号、及びスリープ信号等の停止信号を受信する。車載ECUは、車載装置から送信されるウェイクアップ信号又はスリープ信号を受信することにより、ウェイクアップ状態(起動状態)、又はスリープ状態(停止又は待機状態)に遷移する。スリープ状態となった車載ECUは、電源装置から供給される電力を受電しない状態となり、実質的に給電が遮断された状態となる。車載装置の制御部は、例えば特定のサービスを実行するため、起動対象となる車載ECUに対し、ウェイクアップ信号を送信する。車載装置の制御部は、取得した使用可能容量及び電流値に基づき、サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続しないと判定した場合、給電に関する処理として、当該サービスに対応する車載ECUに対し、スリープ信号を出力(送信)する処理を行い、当該車載ECUをスリープ状態(停止又は待機状態)して実質的に給電が遮断された状態する。これにより、サービスに対応する車載ECUに対し、給電に関する処理を効率的に行うことができ、バッテリあがり等の発生を防止しつつ、サービスを適切な範囲にて実行することができ、当該サービスの価値の低下を抑制することができる。
【0016】
(4)本開示の一態様に係る車載装置は、前記制御部は、
前記サービスの実行中において、周期的に検出される電流値それぞれを取得し、取得した複数の電流値に基づき、累積使用電力量を算出し、前記使用可能容量、前記累積使用電力量、及び今回取得した電流値に基づき、前記サービスに対応する車載ECUへの給電の継続可能時間を算出し、算出した前記継続可能時間が所定値未満となった場合、前記サービスに対応する車載ECUに対する給電を遮断するための処理を行う。
【0017】
本態様にあたっては、車載装置の制御部は、電流センサが検出した電流値を周期的に取得することにより、時系列に並ぶ複数の電流値を取得する。車載装置の制御部は、例えば、電流値を取得する都度、当該電流値にサンプリング周期(E[s])を乗算させ、サンプリング周期に対応した処理単位期間毎における電流値の積算量(F(n)[A*s])として算出する。車載装置の制御部は、例えば車両が停止中においてサービスの実行を開始すると共に、電流値の周期的な取得及び積算量の算出を繰り返し、当該サービスの実行開始時点から現時点までにおける積算量(F(1)、F(2)、F(3)・・F(n))を合算(F_ALL(n)=F(1)+F(2)+F(3)・・+F(n))することにより、現時点における累積使用電力量を算出する。車載装置の制御部は、例えば、使用可能電力量から累積使用電力量を減算した値(残電力量:H-F_ALL)に対し、直近(現時点)にて取得した電流値((a+b+c)[A])を除算することにより、サービスに対応する車載ECUへの給電の継続可能時間を算出(K[s])する。車載装置の記憶部には、継続可能時間の閾値として予め定められた所定値(例えば、1分)が記憶されており、継続可能時間(K[s])が、当該所定値(1分(60[s]))よりも小さくなった場合、車載装置の制御部は、サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続しないと判定する。継続可能時間(K[s])が、当該所定値(1分(60[s]))以上である場合、車載装置の制御部は、サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続すると判定する。このようにサービスに対応する車載ECUへの給電の継続可能時間を算出することにより、サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続するか否かの判定を効率的に行うことができる。
【0018】
(5)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車両にて実行される前記サービスは複数個あり、前記制御部は、複数の前記サービスにおいて定められている優先順位に応じて、給電を遮断する車載ECUを特定し、特定した車載ECUに対する給電を遮断するための処理を行う。
【0019】
本態様にあたっては、車載装置の制御部は、例えば車両が停止中に複数のサービスが実行されている場合、これら複数のサービスにおいて定められている優先順位に応じて、給電を遮断する車載ECUを特定する。当該サービスの優先順位に関する情報は、車載装置の記憶部に予め定められており、車載装置の制御部は記憶部を参照することにより、これらサービスにおける優先順位を把握することができる。車載装置の制御部は、複数のサービスが実行中において、サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続しないと判定した場合、例えば、最も優先順位(優先度)が低いサービスを特定し、当該低優先度のサービスに対応する車載ECUを特定する。車載装置の制御部は、特定した低優先度のサービスに対応する車載ECUに対し、給電に関する処理、すなわち給電を遮断するための処理を行う。このように複数のサービスが実行中であっても、一律に全ての車載ECUの給電を遮断することなく、サービスの優先順位(優先度)に応じて、給電を遮断すべき車載ECUを特定し、当該車載ECUに対する給電を遮断するための処理を行うことができる。これにより、優先順位(優先度)が低いサービスから、順次に停止することができ、バッテリあがり等の発生を防止しつつ、サービスを適切な範囲にて実行することができ、当該サービスの価値の低下を抑制することができる。
【0020】
(6)本開示の一態様に係る車載装置は、前記制御部は、複数の前記サービスそれぞれに対応する車載ECUへの給電の継続可能時間それぞれを周期的に算出し、算出した前記サービスそれぞれにおける継続可能時間それぞれに関する情報を出力し、前記継続可能時間それぞれに関する情報は、単一の前記サービスのみを実行する際における継続可能時間、又は複数の前記サービスを組み合わせて実行する際における継続可能時間を含む。
【0021】
本態様にあたっては、車載装置の制御部は、例えば車両が停止中に複数のサービスが実行されている場合、これら複数のサービスそれぞれに対応する車載ECUへの給電の継続可能時間それぞれを周期的に算出し、当該継続可能時間それぞれに関する情報を、例えば、ディスプレイ装置等のHMI装置、又は車両の操作者が保有する携帯端末等に出力する。継続可能時間それぞれに関する情報は、単一のサービスのみを実行する際における継続可能時間、又は複数のサービスを組み合わせて実行する際における継続可能時間を含むため、車両の操作者に対し、実行されている複数のサービスそれぞれに関する情報を効率的に報知することができる。
【0022】
(7)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車載ネットワークには、複数の車載ECU間にて送受信される通信データの中継する中継装置が接続されており、前記制御部は、前記給電に関する処理として、出力し中継装置へ電源制御指示を出力することにより、前記サービスに対応する車載ECUに対しスリープ信号を出力させる処理を前記中継装置に実行させる。
【0023】
本態様にあたっては、車載ネットワークには中継装置が接続されており、当該中継装置は、電源分配装置として機能する車載装置から、電源分配されるものであってもよい。これにより、車載装置は、中継装置に流れる電流値についても取得することができる。中継装置は、車載ネットワークを介して、複数の車載ECUそれぞれに対し、ウェイクアップ信号及びスリープ信号を送信する機能を有する。車載装置は、給電に関する処理として、サービスに対応する車載ECUの給電を遮断する処理を行うにあたり、中継装置に対し、給電遮断の対象となる車載ECUを特定した電源制御指示を出力する。すなわち、電源制御指示には、給電遮断の対象となる車載ECUのECUID、IPアドレス又は接続されている通信線のバス番号等、当該車載ECUを特定するための情報が含まれている。車載装置から電源制御指示を取得した中継装置は、当該電源制御指示に応じて、停止するサービスに対応する車載ECU、すなわち給電遮断の対象となる車載ECUに対し、スリープ信号を出力する。これにより、当該車載ECUに対する給電を効率的に遮断し、バッテリあがり等の発生を防止しつつ、サービスを適切な範囲にて実行することができ、当該サービスの価値の低下を抑制することができる。この際、給電遮断部が設けられている車載ECUに対しては、車載装置の制御部が、当該給電遮断部に対し給電を遮断する制御を行うものであってもよい。このように給電遮断の対象となる車載ECUの構成に応じて、中継装置によるスリープ信号の出力、又は車載装置による給電遮断部への給電遮断制御を行うことができ、当該車載ECUの構成又は製品仕様に対し柔軟に対応することができる。
【0024】
(8)本開示の一態様に係る車載装置は、前記制御部は複数の車載ECU間にて送受信される通信データの中継する処理を行い、前記サービスに対応する車載ECUには、前記電源装置からの給電を遮断するための給電遮断部が設けられており、前記車両には、前記給電遮断部と導通可能に接続される給電遮断装置が搭載されており、前記制御部は、前記給電遮断装置から、前記サービスに対応する車載ECUに流れる電流値を取得し、取得した前記使用可能容量及び電流値に基づき、前記サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続するか否かを判定し、前記判定結果に応じて、給電に関する処理を行い、前記給電に関する処理は、前記車載ネットワークを介して、前記サービスに対応する車載ECUに対しスリープ信号を出力する処理と、前記給電遮断装置へ電源制御指示を出力することにより、前記給電遮断部に対し給電を遮断する処理を、前記給電遮断装置に実行させる処理とを含む。
【0025】
本態様にあたっては、中継装置が、車載ECUの起動又は停止を制御する電源制御装置として機能する。車載ECUそれぞれに流れる電流値の検出は、給電遮断装置が行う。当該給電遮断装置は、電源装置と電源線にて接続されており、当該電源線を介して電源装置から供給された電力を、電流の流れ方向にて下流側に配置される複数の車載ECUに対し分配する電源分配装置として機能する。サービスに対応する複数の車載ECUの少なくとも一部の車載ECUには、電源装置からの給電を遮断するための給電遮断部が設けられており、当該給電遮断部と給電遮断装置とは導通可能に接続されている。電源制御装置として機能する中継装置(車載装置)の制御部は、使用可能容量及び、給電遮断装置から取得した電流値に基づき、サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続するか否かを判定する。従って、電流値の検出処理を担う装置(給電遮断装置)と、給電を継続するか否かを判定及び当該判定結果に応じた給電に関する処理を行う車載装置(中継装置)とを別装置として処理を分散化することができる。この際、給電遮断装置は、中継装置(車載装置)からの電源制御指示に応じて、給電遮断部に対し給電を遮断する処理を行うもとなり、給電遮断装置における処理負荷を軽減することができる。中継装置(車載装置)に対する電源配分は、給電遮断装置(電源分配装置)によって行われるものであってもよく、又は、中継装置(車載装置)は、給電遮断装置(電源分配装置)を介することなく、電源装置又はヒューズボックス等と接続されるものであってもよい。
【0026】
(9)本開示の一態様に係る情報処理方法は、車載ネットワークに接続される車載ECUと通信可能に接続されるコンピュータに、車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに流れる電流値を取得し、前記車両に搭載される電源装置において、前記サービスを実行するにあたり使用可能な使用可能容量を取得し、取得した前記使用可能容量及び電流値に基づき、前記サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続するか否かを判定し、前記判定結果に応じて、給電に関する処理を行う。
【0027】
本態様にあたっては、コンピュータを、車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに対し、給電に関する処理を効率的に行う車載装置として機能させる情報処理方法を提供することができる。
【0028】
(10)本開示の一態様に係るプログラムは、車載ネットワークに接続される車載ECUと通信可能に接続されるコンピュータに、車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに流れる電流値を取得し、前記車両に搭載される電源装置において、前記サービスを実行するにあたり使用可能な使用可能容量を取得し、取得した前記使用可能容量及び電流値に基づき、前記サービスに対応する車載ECUに対する給電を継続するか否かを判定し、前記判定結果に応じて、給電に関する処理を行う。
【0029】
本態様にあたっては、コンピュータを、車両にて実行されるサービスに対応する車載ECUに対し、給電に関する処理を効率的に行う車載装置として機能させるプログラムを提供することができる。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。本開示の実施形態に係る車載装置1を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0031】
(実施形態1)
以下、実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る車載装置1等を含む車載システムSの構成を例示する模式図である。
図2は、車載装置1の内部構成を例示するブロック図である。車載システムSは、車両Cに搭載される車載装置1、車載ECU2、及びこれらを通信可能に接続する車載ネットワーク3により構成される。車載ネットワーク3は、複数の通信線31により構成される。車載ネットワーク3における通信が、例えばCAN(Controller Area Network)又はCAN-FDの通信プロコトルに応じた通信が行われる場合、通信線31はCANバスに相当する。
【0032】
車両Cには、鉛バッテリ、オルタネータ又は二次電池等にて構成される電源装置5が搭載されている。電源装置5と車載装置1とは、電源線51にて接続されている。電源装置5と車載装置1とは、電源線51にて直接的に接続されている場合に限定されず、電源装置5と車載装置1との間にリレーボックス又はヒューズボックス等の電気箱(ジャンクションボックス)が介在し、間接的に接続されているものであってもよい。車載装置1と、複数の車載ECUとは、電源線51にて接続されており、車載装置1は、これら複数の車載ECUに対し、電力を分配する。すなわち、車載装置1は、電源線51を介して電源装置5から供給された電力を、電流の流れ方向にて下流側に配置される複数の車載ECUに対し分配する電源分配装置として機能する。
【0033】
電源装置5から延設された電源線51は、車載装置1(電源分配装置)の内部にて分岐され、分岐された内部電線(分岐電線15)それぞれには、コネクタ等を介して車載ECU2にが接続される。これら分岐電線15には、電流センサ等にて構成される電流検出部151が設けられている。当該電流検出部151は、全ての分岐電線15に配置されているものでなく、車両Cにて実行されるサービスに対応する車載ECUが接続される分岐電線15にのみ配置されるものであってもよい。
【0034】
車載装置1のコネクタと、車載ECU2とは、電源線51にて接続されており、当該電源線51には、給電遮断部52が設けられている。当該給電遮断部52は、車載装置1と車載ECU2とを接続する全ての電源線51に配置されているものでなく、車両Cにて実行されるサービスに対応する車載ECUが接続される電源線51にのみ配置されるものであってもよい。更には、車両Cにて実行されるサービスに対応する車載ECUであって、例えば車載ネットワーク3に接続されないことによりスリープ信号等を受信できない車載ECUが接続される電源線51にのみ配置されるものであってもよい。車載ECU2それぞれに対応して設けられた給電遮断部52それぞれと、車載装置1とは信号線140によって通信可能に接続されている。給電遮断部52は、車載装置1によって行われる給電を遮断する制御に応じて、当該給電遮断部52が接続される車載ECU2に対する電源装置5からの給電を遮断する。給電が遮断されることにより、車載ECU2は、停止状態となる。
【0035】
電源装置5は、当該電源装置5を構成するバッテリの充電率(SOC:State Of Charge)及び健康状態(SOH:State Of Health/劣化度)等、バッテリ状態に関する管理を行う電源管理部50(バッテリ管理システム)を含む。電源管理部50は、例えばバッテリの内部状態を検出する各種センサ及び通信機能を有するマイコンにて構成され、周期的に検出する充電率(SOC)等のバッテリ情報を、車載ネットワーク3を介して車載装置1に出力(送信)する。これにより、車載装置1の制御部11は、電源装置5を構成するバッテリの充電率(SOC)及び健康状態(SOH)等のバッテリ情報を取得することができる。
【0036】
車載ECU2は、後述する車載装置1と同様に制御部、記憶部、及び通信部を備える。車載ECU2は、記憶部に記憶されているプログラムを実行することにより、各種の機能又はサービスを実行するための処理を行う。これら車載ECU2は、鉛バッテリ、オルタネータ又は二次電池等にて構成される電源装置5と、車載装置1(電源分配装置)及び電源線51を介して接続されている。車載ECU2は、当該電源線51を介して、車載装置1にてより分配される電力を受電する。車載ECU2は、車載装置1から送信されるウェイクアップ信号又はスリープ信号を受信することにより、ウェイクアップ状態(起動状態)、又はスリープ状態(停止又は待機状態)に遷移する。
【0037】
車載装置1は、車載ECUの起動又は停止を制御する電源制御装置として機能し、例えばCANゲートウェイ等の中継機能を有する装置である。又は、車載装置1は、車両Cの全体を統合的に制御し、中継機能を有する統合ECU(ヴィークルコンピュータ)であってもよい。又は、車載装置1は、統合ECUの配下に接続され、車両Cの各エリアに配置される個別ECUであってもよい。又は、車載装置1は、車両Cのボディ系アクチュエータを制御するボディECU等として構成されるものであってもよい。又は、車載装置1は、通信に関する中継に加え、二次電池等の電源装置5から出力された電力を分配及び中継し、アクチュエータ等の車載器に電力を供給する電力分配装置としても機能するPLB(Power Lan Box)であってもよい。車載装置1には、各種スイッチ、センサ又はアクチュエータ等の車載機器が接続されるものであってもよい。
【0038】
車載装置1は、制御部11、記憶部12、通信部13、及び入出力I/F14を含む。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してあり、記憶部12に予め記憶された制御プログラムP(プログラム製品)及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。
【0039】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子又は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子、又は、これら記憶デバイスの組み合わせにより構成してあり、制御プログラムP(プログラム製品)及び処理時に参照するデータが予め記憶してある。記憶部12に記憶された制御プログラムP(プログラム製品)は、車載装置1が読み取り可能な記録媒体Mから読み出された制御プログラムP(プログラム製品)を記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから制御プログラムP(プログラム製品)をダウンロードし、記憶部12に記憶させたものであってもよい。
【0040】
通信部13は、例えばCAN、CAN-FD又はイーサネット(Ethernet/登録商標)等の通信プロトコルを用いた入出力インターフェイスであり、制御部11は、通信部13を介して車載ネットワーク3に接続されている車載ECU2と相互に通信する。車載装置1において、通信部13は、複数個、設けられており、通信部13それぞれに対しCANバス等の通信線31が接続される。中継機能を有する車載装置1は、これら複数の通信部13(CANバス等の通信線31)の間にて送受信される通信データを中継する。
【0041】
入出力I/F14は、例えばシリアル通信するための通信インターフェイスである。入出力I/F14は、複数の端子(出力端子)を含み、端子それぞれには、給電遮断部52それぞれに延設される信号線140それぞれが、接続されている。信号線140は、例えば、シリアルケーブル、ワイヤーハーネス又は、一つの信号のみを送信する導電ケーブル(じか線)等により構成される。更に入出力I/F14には、車両Cの起動及び停止を行うIGスイッチ141が接続されるものであってもよい。更に、入出力I/F14には、車両Cの操作者によって操作される各種装置、及び各種センサが接続されるものであってもよい。
【0042】
信号線140それぞれは、車載ECU2それぞれに対応して設けられた給電遮断部52それぞれに接続されている。給電遮断部52は、車載ECU2と、電源装置5又はグランドとの間に介在して配置されている。給電遮断部52は、例えば、半導体リレー、機械式リレー又は開閉スイッチにより構成されており、車載装置1から出力される信号に応じて、車載ECU2が電源装置5から給電される接続状態と、電源装置5からの給電が遮断される遮断状態とを遷移する。給電遮断部52がリレー等により構成される場合、車載ECU2が電源装置5から給電される接続状態はリレーのオン状態に相当し、電源装置5からの給電が遮断される遮断状態はリレーのオフ状態に相当する。このように車載装置1の制御部11による給電遮断部52に対する制御、すなわち給電を遮断(リレーをオフ)する制御、及び給電を開始(リレーをオン)する(行う)制御は、給電遮断部52の構成、特性及び仕様に応じて行われる。
【0043】
給電を遮断する制御は、デューティ(オン信号)の出力の停止、又はオフ信号の出力を行う制御を含む。給電遮断部52が、例えば、n型FET(Field Effect Transistor)にて構成される場合、ゲート端子にゲート電圧(デューティ)を印加することにより、給電遮断部52(n型FET)は、オンとなる。当該ゲート電圧を印加しない状態においては、給電遮断部52(n型FET)はオフとなり、従って、給電遮断部52(n型FET)は常時オフの状態となっている。給電遮断部52が、例えば、機械式リレー又は開閉スイッチ等にて構成されている場合、当該機械式リレーがa接点リレーであれば、車載装置1からのオン信号によりコイル電流が流れることにより、オンとなり、従って、給電遮断部52(機械式リレー等)は常時オフの状態となっている。又は、機械式リレーがb接点リレーである場合、常時オンの状態となり、車載装置1からのオフ信号によりコイル電流が流れることにより、オフとなる。
【0044】
車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2に接続されている給電遮断部52を、給電が行われる状態(リレーがオン状態)に遷移させる。給電遮断部52が、例えばFET等の半導体リレーで構成されている場合、車載装置1の制御部11は、当該FET(給電遮断部52)のゲート端子にゲート電圧(デューティ)を印加(出力)することにより、FETはオン状態となり、二次電池等にて構成される電源装置5からの給電が開始される。FETはオンとなり給電が開始された起動対象の車載ECU2は、一旦、スリープ状態(待機状態)となるものであってもよい。車載装置1の制御部11は、当該起動対象の車載ECU2が接続される給電遮断部52が電源経路を遮断(リレーがオフ状態)することなく、給電が行われている状態(リレーがオン状態)を維持しつつ、車載ネットワーク3を介してウェイクアップ信号等の起動信号を出力するものであってもよい。当該起動信号(ウェイクアップ信号)を受信した起動対象の車載ECU2は、スリープ状態(待機状態)から、ウェイクアップ状態(起動状態)に遷移する。
【0045】
この際、起動対象の車載ECU2以外の車載ECU2に接続される給電遮断部52に対して、車載装置1は、給電を遮断する制御を行っており、すなわちこれら給電遮断部52に接続される車載ECU2に対し、電源装置5からの給電は行われない。従って、車載ネットワーク3を介して起動信号が出力された場合であっても、遮断状態となっている給電遮断部52に接続される車載ECU2は起動しないため、これら車載ECU2により電力が消費されることを防止することができる。
【0046】
車載装置1の制御部11は、プログラムを実行することにより、電源遷移マネージャとして機能し、給電遮断制御機能(給電遮断制御部)、及び通信WU/SLP制御機能(通信WU/SLP制御部)を有する(含む)。WUはウェイクアップ(Wake UP)を示し、SLPはスリープ(Sleep)を示す。電源遷移マネージャは、車載ECU2に対しウェイクアップ信号又はスリープ信号を出力することにより、当該車載ECU2をウェイクアップ状態(起動状態)、又はスリープ状態(停止又は待機状態)に遷移させる。このように状態遷移されることにより、車載ECU2は、ウェイクアップ状態(起動状態)においては電源装置5からの給電が行われ、スリープ状態(停止又は待機状態)においては、電源装置5からの給電が行わない又は消費電力が低減する。
【0047】
車載装置1の内部において、電源装置5から延設された電源線51は、複数本の分岐電線15に分岐される。当該分岐電線15の本数、すなわち分岐数は、車載装置1に接続される車載ECUの個数と同数となる等、当該車載ECUの接続個数に対応するものであってもよい。車載装置1の内部に設けられた分岐電線15それぞれにおいて、サービスの実行に伴い起動を要する車載ECUが接続される分岐電線15には、電流検出部151が配置されている。電流検出部151は、例えばシャント抵抗等にて構成される電流センサであり、検出した電流値を車載装置1の制御部11に出力する。車載装置1の制御部11は、電流検出部151それぞれから、周期的に電流値を取得することにより、サービスの実行に伴い起動を要する車載ECUそれぞれに流れる電流値(消費電力)を取得することができる。
【0048】
分岐電線15には、更に当該分岐電線15に流れる電流値に応じたヒューズ又は機械式リレー等が配置されるものであってもよい。この際、ヒューズ等と電流検出部151とは、例えばIPD(Intelligent Power Device)により構成され、当該IPDは、半導体ヒューズとして機能するものであってもよい。IPDを用いることにより、電流検出部151を構成する電流検出回路と、当該電流検出回路における機械式ヒューズ等を削減することができ、更に当該IPDの先に接続される分岐電線15又は電源線51等のワイヤーハーネスの細径化を実現することができる。
【0049】
図3は、車載装置1の制御部11の処理を例示するフローチャートである。車載装置1の制御部11は、例えば、車両Cが停止時(IGスイッチ141がオフ)の場合等、オルタネータ等による発電(バッテリー充電)ができない状態において、定常的に以下の処理を行う。
【0050】
車載装置1の制御部11は、サービスを実行するにあたり対応する車載ECU2を起動する(S101)。車載装置1の制御部11は、例えば、入出力I/F14に接続されているスイッチからの信号を取得、又は通信部13を介してCANメッセージ等の通信データを取得することにより、実行すべきサービスに関する情報(サービス開始要求)を取得する。車載装置1は、例えば、車両Cの各エリアに複数配置された個別ECU、又は車ボディ系アクチュエータを駆動制御するBCU(ボディECU)であり、電源装置5から常時給電を受けている。
【0051】
車載装置1の制御部11は、入出力I/F14を介して、当該入出力I/F14に接続されているスイッチ又はセンサから出力される各種の信号(入力信号)を取得(受信)する。又は、車載装置1の制御部11は、CANトランシーバ等の通信部13及び車載ネットワーク3を介して、車載ECU2から送信されるCANメッセージ等の通信データを取得(受信)する。これら信号又は通信データには、例えば、車両Cとして実行する各種機能又はサービスに関する情報が含まれている。これら機能又はサービスは、予め定められた車載ECU2の処理によって行われるもとして予め定義されており、当該サービス等を実行する際に起動対象となる車載ECU2に関する情報に相当する。又は、これら信号又は通信データには、起動対象の車載ECU2に関する情報そのものが含まれているものであってもよい。車載装置1の制御部11は、これら取得した信号又は通信データをトリガーとし、以下のように電源給電や起動が必要な車載ECU2を特定する。又は、車載装置1の制御部11は、いずれかの車載ECU2から取得したサービス開始要求に基づき、例えば記憶部12に記憶されているサービステーブルを参照することにより、起動対象の車載ECU2を特定するものであってもよい。
【0052】
車載装置1の制御部11は、当該特定した車載ECU2(サービスを実行するにあたり対応する車載ECU2)に対し、例えば、ウェイクアップ信号を送信する。又は、車載装置1の制御部11は、当該特定した車載ECU2に接続される電源線51に設けられた給電遮断部52に対し、給電を開始(リレーをオン)する制御を行う。これにより、サービスを実行するにあたり対応する1つ以上の車載ECU2が、起動(ウェイクアップ)する。
【0053】
車載装置1の制御部11は、サービスを実行するにあたり使用可能な使用可能容量を取得する(S102)。車載装置1の記憶部12には、電源装置5のバッテリ容量(満充電容量)に対し、サービスを実行するにあたり使用可能な使用可能容量が記憶されている。車載装置1の制御部11は、当該記憶部12を参照することにより、使用可能容量を取得する。使用可能容量は、電源装置5のバッテリ容量(満充電容量)の対し、サービスに対応する車載ECU2が使用可能な割合に基づき決定される電力量であり、電源装置5のバッテリ容量(満充電容量:x[Ah])に、使用可能な割合(G[%])を乗算した値(H[C]=x[Ah]*3600*(G/100))となる。
【0054】
車載装置1の制御部11は、サービスに対応する車載ECU2に流れる電流値を取得する(S103)。車載装置1の制御部11は、電流センサ等の電流検出部151が検出した電流値(a[A])を定期的、周期的又は定常的に取得する。車載装置1の制御部11は、サービスに対応する車載ECU2が接続されている分岐電線15に配置された電流検出部151から、当該車載ECU2に流れる電流値(a[A])を取得する。単一のサービスを実行するにあたり、複数の車載ECU2(ECUa、ECUb、ECUc)を起動する場合、車載装置1の制御部11は、これら複数の車載ECU2(ECUa、ECUb、ECUc)が接続される分岐電線15それぞれに配置される電流検出部151それぞれが検出した各電流値(a[A]、b[A]、c[A])を取得する。車載装置1の制御部11は、電流検出部151それぞれが検出した各電流値を、対応する車載ECU2(当該電流検出部151が接続される車載ECU2)のECUID等の識別情報と、電流値の検出時点(取得時点)とに関連付けて、検出履歴データとして記憶部12に記憶するものであってもよい。
【0055】
車載装置1の制御部11は、取得した電流値に対し、電流値検出のサンプリング周期(E[s])を処理単位時間として、当該処理単位時間おける電流値の積算量を算出する。複数の車載ECU2(ECUa、ECUb、ECUc)が起動される場合、電流値の積算量は、これら各電流値(a[A]、b[A]、c[A])の合計値にサンプリング周期(E[s])を乗算した値(F[C]=(a+b+c)[A]*E[s])となる。車載装置1の制御部11は、算出した電流値の積算量を電流値の取得時点に関連付けて、記憶部12に記憶する。車載装置1の制御部11は、電流値を取得するにあたり、直近(現時点)に取得した一回分での電流値を用いる場合に限定されず、現時点から遡及して複数回(例えば3回分など)にて取得した電流値の平均値(移動平均)を算出し、当該平均値を、サービスに対応する車載ECU2に流れる電流値として取得するものであってもよい。
【0056】
車載装置1の制御部11は、取得した電流値に基づき、累積使用電力量を算出する(S104)。車載装置1の制御部11は、取得した電流値に基づき今回算出した電流値の積算量(F)と、前回までに算出した電流値の積算量の合計値(前回までの累積使用電力量:F_ALL(前回分))とを加算することにより、現時点における累積使用電力量(今回の累積使用電力量:F_ALL)を算出する。
【0057】
車載装置1の制御部11は、使用可能電力量、累積使用電力量、及び今回取得した電流値に基づき、サービスに対応する車載ECU2への給電の継続可能時間を算出する(S105)。車載装置1の制御部11は、使用可能電力量から累積使用電力量を減算し、当該減算値(残電力量:H-F_ALL)を直近(現時点)にて取得した電流値((a+b+c)[A])で除算することにより、サービスに対応する車載ECU2への給電の継続可能時間を算出(K[s]=(H-F_ALL)/(a+b+c))する。
【0058】
車載装置1の制御部11は、算出した継続可能時間が所定値未満であるか否かを判定する(S106)。車載装置1の記憶部12には、継続可能時間に対する判定を行うための閾値として、予め定められた所定値(L:例えば、1分)が記憶されている。車載装置1の制御部11は、記憶部12を参照することにより、当該所定値(L)を取得し、継続可能時間が所定値未満(K<L)であるか否かを判定する。車載装置1の制御部11は、判定結果と、判定を行った時点とを関連付けて、記憶部12に記憶する。
【0059】
継続可能時間が所定値未満である場合(S106:YES)、車載装置1の制御部11は、サービスに対応する車載ECU2に対する給電を遮断するための処理を実行する(S107)。継続可能時間が所定値未満(K<L)である場合、車載装置1の制御部11は、サービスに対応する車載ECU2に対する給電を遮断するための処理として、当該車載ECU2に対し、スリープ信号を出力する。又は、車載装置1の制御部11は、サービスに対応する車載ECU2に対する給電を遮断するための処理として、当該車載ECU2に設けられた給電遮断部52に対し、給電を遮断する制御(リレーをオフ)を行う。このように給電を遮断するための処理が行われた車載ECU2は、停止状態又はスリープ状態となり、電源装置5から供給される電力を受電しない状態となり、実質的に給電が遮断された状態となる。
【0060】
継続可能時間が所定値未満でない場合(S106:NO)、車載装置1の制御部11は、所定の周期が経過したか否かを判定する(S1061)。継続可能時間が所定値未満(K<L)でない場合、すなわち継続可能時間が所定値以上(K≧L)である場合、車載装置1の制御部11は、所定の周期が経過したか否かを判定する。当該所定の周期とは、サービスに対応する車載ECU2に対する給電を遮断するか否かを判定するにあたり、当該判定周期に相当する。このように各種の処理に応じた周期それぞれの値は、車載装置1の記憶部12に記憶されており、車載装置1の制御部11は、記憶部12を参照することにより、各種の処理に応じた周期を取得することができる。所定の周期が経過していない場合(S1061:NO)、車載装置1の制御部11は、再度S1061の処理を実行すべく、ループ処理を行う。これにより、所定の周期が経過するまで、車載装置1の制御部11は、待機処理を行う。
【0061】
所定の周期が経過した場合(S1061:YES)、車載装置1の制御部11は、再度S103の処理を実行すべく、ループ処理を行う。これにより、車載装置1の制御部11は、所定の周期にて、サービスに対応する車載ECU2に対する給電を遮断するか否かの判定を行うことができる。
【0062】
車載装置1の制御部11は、所定の周期にて給電を遮断するか否かの判定を繰り返すにあたり、例えば、5周期毎などの所定の頻度にて、電源管理部50から、電源装置5のバッテリの充電率(SOC)を取得するものであってもよい。当該充電率(SOC)に対し、バッテリ容量を乗算することにより、電源装置5の残容量(D)を算出することができる。又は、車載装置1の制御部11は、電源管理部50から劣化率(SOH)を取得し、バッテリ容量に、充電率(SOC)及び劣化率(SOH)を乗算することにより、電源装置5の残容量(D)を算出するものであってもよい。車載装置1の制御部11は、今回取得した充電率(SOC:D_after)での残容量と、前回取得した充電率(SOC:D_befor)での残容量との差異(残容量差異)とを算出し、当該残容量差異と、充電率の前回取得時点から今回取得時点までの間における累積使用電力量(F_all)とを比較(D_after-(D_befor-F_all))し、当該比較結果に応じて、現時点における累積使用電力量を補正するものであってもよい。車載装置1の制御部11は、サービスの実行による電力消費量を算出するにあたり、例えば、CANゲートウェイ又はIPスイッチ等に流れる電流値(消費電力量)を検出していない場合、当該CANゲートウェイ等の電流想定値を加味した値を、使用電流値として用いる(累積使用電力量に加味する)ものであってもよい。
【0063】
(実施形態2)
図4は、実施形態2(複数サービスの優先順位)に係るサービステーブルに関する説明図である。実施形態2における車載装置1の制御部11は、例えば車両Cの停止時等において、複数のサービスを実行するために、当該複数のサービスそれぞれに対応する複数の車載ECU2を起動する。車載装置1の制御部11は、複数のサービスそれぞれに対応する複数の車載ECU2を起動するにあたり、例えば、記憶部12に記憶されているサービステーブルを参照するものであってもよい。
【0064】
車載装置1の記憶部12等、車載装置1の制御部11がアクセス可能な記憶領域には、サービスを実行するにあたり、起動を要する車載ECU2等の設定情報が例えばテーブル形式(サービステーブル)にて記憶されている。サービステーブルは、管理項目(フィールド)として、サービス名、起動ECU、優先度(停止順位)、停止閾値、及び停止ECUを含む。
【0065】
サービス名の管理項目には、実行するサービスを特定するためのサービスの名称(サービス名)が格納される。車載装置1の制御部11は、例えば、入出力I/F14に接続されているスイッチからの信号を取得、又は通信部13を介してCANメッセージ等の通信データを取得することにより、サービス開始要求を受信し、当該サービス開始要求に含まれるサービス名によって、実行(開始)すべきサービスを特定することができる。
【0066】
起動ECUの管理項目には、同じレコードに格納されるサービス(サービス名)を実行するにあたり、起動を有する車載ECU2の名称又は識別番号(ECUID)が格納される。当該識別番号(ECUID)は、車載ECU2の製造番号(SN)を用いるものであってもよい。車載ネットワーク3における通信プロトコルがTCP/IPの場合、識別番号(ECUID)は、車載ECU2のIPアドレス又はMACアドレスであってもよい。車載装置1の制御部11は、ECUIDを用いることにより、車載ECU2それぞれを一意に特定することができる。
【0067】
優先度(停止順位)の管理項目には、同じレコードに格納されるサービス(サービス名)の優先順位に関する数値が格納される。本実施形態における図示においては、優先度(停止順位)の数値が小さいサービスが、優先順位が低いサービスであることを意味し、従って、優先度(停止順位)が1に設定されているサービス(SA)が、継続可能時間等に応じて、最も早く停止されるものとなる。優先度(停止順位)の数値が大きくなるにつれ、優先順位は高いものとなり、優先度(停止順位)の数値が最大のサービスが、最も遅く停止されるものとなる。サービスの優先順位については、例えば、当該サービスを行うにあたり対応する各車載ECU2にて実行されるプログラムのASIL(Automotive Safety Integrity Level)に応じて決定されるものであってもよい。すなわちASILの段階が高くなるほど、サービスの優先順位が高くなるように設定されるものであってもよい。
【0068】
停止閾値の管理項目には、同じレコードに格納されるサービス(サービス名)を停止する際に参照される閾値が格納される。当該停止閾値は、サービスの優先順位(優先度:SA<SB<SC・・・<SN)の対応するものであり、サービスの優先度(停止順位)の数値が大きくなるにつれ、停止閾値の値は小さく(停止閾値:L1>L2>L3・・・>LN)なる。車載装置1の制御部11は、複数のサービスが実行されている場合、使用可能電力量、累積使用電力量、及び今回取得した電流値に基づき算出した継続可能時間と、各サービスそれぞれに対し定義されている停止閾値とを比較することにより、現時点にて実行されているサービスにおいて、最も優先順位が低いサービスを特定することができる。これにより、車載装置1の制御部11は、特定した最も優先順位が低いサービスに対応する車載ECU2の給電を遮断する制御を行うことができ、現時点にて実行されている複数のサービスにおいて、優先順位(優先度)の低いサービスから段階的に停止することができる。
【0069】
停止ECUの管理項目には、同じレコードに格納されるサービス(サービス名)を停止する際、給電を遮断する処理を行うことにより停止状態又はスリープ状態にさせる車載ECU2の名称又は識別番号(ECUID)が格納される。本実施形態のサービステーブルにて図示するように、同一の車載EUC(ECUa)が、複数のサービス(SA、SB)に対応する場合がある。例えば、車載EUC(ECUa)は、サービス(SA)のみならず、サービス(SB)に関する処理を行う。このような場合、優先度(停止順位)に基づき、サービス(SA)を停止するにあたり、サービス(SA)にのみ対応する車載EUC(ECUb、ECUc)のみならず、停止対象でないサービス(SB)等、他のサービスにも対応する車載EUC(ECUa)についても給電を遮断する制御を行うと、当該他のサービスも停止するものとなり、サービスの価値の低下を抑制することが困難となる。これに対し、停止ECUの管理項目には、停止対象のサービスにのみ対応する車載ECU2の名称等を格納することにより、車載装置1の制御部11は、他のサービスに影響を与えることなく、停止対象のサービスにのみ対応する車載ECU2を効率的に特定することができる。
【0070】
図5は、車載装置1の制御部11の処理を例示するフローチャートである。車載装置1の制御部11は、例えば、車両Cが停止時(IGスイッチ141がオフ)の場合等、オルタネータ等による発電(バッテリー充電)ができない状態において、定常的に以下の処理を行う。
【0071】
車載装置1の制御部11は、サービスを実行するにあたり対応する車載ECU2を起動する(S201)。車載装置1の制御部11は、実施形態1と同様に、入出力I/F14に接続されているスイッチからの信号を取得、又は通信部13を介してCANメッセージ等の通信データを取得することにより、実行すべき複数のサービスに関する情報(複数のサービス開始要求)を取得する。車載装置1の制御部11は、例えば、記憶部12に記憶されているサービステーブルを参照することにより、実行すべき複数のサービスそれぞれに対応する複数の車載ECU2を特定し、特定した複数の車載ECU2に対し、ウェイクアップ信号を送信する。又は、車載装置1の制御部11は、当該特定した車載ECU2に接続される電源線51に設けられた給電遮断部52に対し、給電を開始(リレーをオン)する制御を行う。これにより、複数のサービスを実行するにあたり対応する1つ以上の車載ECU2が、起動(ウェイクアップ)する。
【0072】
車載装置1の制御部11は、サービスを実行するにあたり使用可能な使用可能容量を取得する(S202)。車載装置1の制御部11は、サービスに対応する車載ECU2に流れる電流値を取得する(S203)。車載装置1の制御部11は、取得した電流値に基づき、累積使用電力量を算出する(S204)。車載装置1の制御部11は、使用可能電力量、累積使用電力量、及び今回取得した電流値に基づき、サービスに対応する車載ECU2への給電の継続可能時間を算出する(S205)。車載装置1の制御部11は、実施形態1のS102からS105と同様にS202からS205の処理を行う。
【0073】
この際、車載装置1の制御部11は、複数のサービスを実行するにあたり起動した全ての車載ECU2(ECUa、ECUb、ECUc・・・ECUz)に流れる電流値を取得し、電流値の積算量(F[C]=(a+b+c・・+z)[A]*E[s])及び累積使用電力量を算出する。実行する複数のサービスには、使用する時間が予め決定されているサービス(使用時間決定サービス)が含まれる場合がある。又、この際、車載装置1の制御部11は、当該使用時間決定サービスに対応する車載ECU2(使用時間決定ECU)の電流値(消費電力)を、各サービスの継続可否判定において、除外するものであってもよい。車載装置1の制御部11は、使用時間決定ECUに流れる電流値(c、d)を検出し、当該電流値に使用時間決定ECUの使用時間(P[s])を乗算した値(M[C]=(c+d)*P)を、別個に計上するものであってもよい。そして、使用可能容量(H[C])から、累積使用電力量(F_ALL)と、使用時間決定ECU用に計上した使用容量(M[C])とを減算した値を用いて、継続可能時間(K)を算出するものであってもよい。車載装置1の制御部11は、当該継続可能時間(K)を算出するにあたり、現時点において実行している全てのサービスに対応する車載ECU2それぞれに流れる電流値((a+b+c・・+z)[A])にて除算((H-F_ALL-M)/(a+b+c・・+z))する。
【0074】
車載装置1の制御部11は、継続可能時間はいずれかの所定値未満であるか否かを判定する(S206)。車載装置1の制御部11は、例えば、記憶部12に記憶されているサービステーブルを参照し、算出した継続可能時間(K)が、いずれかのサービスに対し定義されている停止閾値(所定値:L1、L2、L3・・・)よりも、小さい(所定値未満)値であるか否かを判定する。複数のサービスそれぞれに対し停止閾値(所定値)は、当該サービスの優先順位に応じて段階的に定義されている。当該停止閾値(所定値)が最も大きいサービスは、優先順位(優先度)が最も低いサービスとなり、最も先に停止されるものとなる。車載装置1の制御部11は、継続可能時間はいずれかの所定値未満であるか否かを判定することにより、実行中のサービスにおいて、停止閾値(所定値)が、現時点における継続可能時間以上となるサービスの有無を判定する。
【0075】
継続可能時間はいずれかの所定値未満でない場合(S206:NO)、車載装置1の制御部11は、所定の周期が経過したか否かを判定する(S2061)。所定の周期が経過していない場合(S2061:NO)、車載装置1の制御部11は、再度S1061の処理を実行すべく、ループ処理を行う。車載装置1の制御部11は、実施形態1のS1061と同様にS2061の処理を行う。
【0076】
継続可能時間はいずれかの所定値未満である場合(S206:YES)、車載装置1の制御部11は、該当する所定値に対応するサービスの車載ECU2への給電を遮断する(S207)。車載装置1の制御部11は、サービステーブルを参照することにより、該当する所定値、すなわち実行中のサービスにおいて、停止閾値(所定値)が現時点における継続可能時間以上(例えば、L1≧K)となるサービス(例えば、SA)を、停止対象のサービスとして特定する。
【0077】
車載装置1の制御部11は、例えば、サービステーブルを参照することにより、当該停止対象のサービスに対応する車載ECU2を、給電を遮断する車載ECU2として特定する。車載装置1の制御部11は、特定した車載ECU2に対し、スリープ信号を出力する。又は、車載装置1の制御部11は、特定した車載ECU2に設けられた給電遮断部52に対し、給電を遮断する制御(リレーをオフ)を行う。
【0078】
このように給電を遮断するための処理が行われた車載ECU2は、停止状態又はスリープ状態となり、電源装置5から供給される電力を受電しない状態となり、実質的に給電が遮断された状態となる。サービステーブルの停止ECUの管理項目には、停止対象のサービスのみに対応する車載ECU2の名称等が格納されているため、他のサービスに影響を与えることなく、停止対象のサービスを停止することができる。
【0079】
車載装置1の制御部11は、停止したサービスの名称、及び停止した時点を関連付けて、記憶部12に記憶する。このようにサービスの実行及び停止の履歴に関するデータ(サービス履歴データ)を記憶部12に記憶することにより、車載装置1の制御部11は、現時点において実行中のサービスを把握することができる。
【0080】
車載装置1の制御部11は、全てのサービスが停止されたか否かを判定する(S208)。車載装置1の制御部11は、S201の処理にて実行した複数のサービスにおいて、全てのサービスが停止されているか否かを判定する。車載装置1の制御部11は、サービスの実行及び停止の履歴に関するデータ(サービス履歴データ)を記憶部12に記憶しており、当該サービス履歴データを参照することにより、全てのサービスが停止されたか否かを判定することができる。全てのサービスが停止されたと判定して場合(S208:YES)、車載装置1の制御部11は、一連の処理を終了する。
【0081】
全てのサービスが停止されていない判定して場合(S208:NO)、又は所定の周期が経過した場合(S2061:YES)、車載装置1の制御部11は、継続可能時間に関する情報を出力する(S2062)。車載装置1の制御部11は、全てのサービスが停止されていない場合、すなわちいずれかのサービスが実行中である場合、現時点にて実行中である1つ以上のサービスにおいて、各サービス毎での継続可能時間それぞれを算出する。又は、車載装置1の制御部11は、現時点にて実行中である複数のサービスにおいて、当該複数のサービスにおける2つ以上のサービスを組み合わせた場合での継続可能時間それぞれを算出する。
【0082】
車載装置1の制御部11は、サービステーブルを参照することにより、実行中であるサービスそれぞれに対応する車載ECU2を特定し、特定した車載ECU2に流れる電流値(消費電力)及び残電力量(H-F_ALL)に基づき、各サービス毎での継続可能時間、及び2つ以上のサービスを組み合わせた場合での継続可能時間それぞれを算出するものであってもよい。この際、車載装置1の制御部11は、上述した使用時間決定ECU用に計上した使用容量(M[C])を残電力量(H-F_ALL)から減算した値を用いて、継続可能時間を算出するものであってもよい。
【0083】
車載装置1の制御部11は、このように算出した継続可能時間それぞれに関する情報を、例えば、車載ネットワーク3を介して、車両Cに搭載されるディスプレイ装置等のHMI装置、又は無線機能を有する車外通信装置を介して、車両Cの操作者が保有する携帯端末等に出力する。車載装置1の制御部11は、S2062の処理の実行後、再度S203の処理を実行すべく、ループ処理を行う。これにより、実行されている複数のサービスそれぞれに関する情報(実行中の各サービスの継続可能時間)を、車両Cの操作者に対し周期的に報知することができる。
【0084】
(実施形態3)
図6は、実施形態3(中継装置101がスリープ信号を出力)に係る車載装置1等を含む車載システムSの構成を例示する模式図である。本実施形態における車載システムSは、車載装置1とは別装置として、中継装置101を含む。中継装置101は、実施形態1の車載装置1と同様に制御部、記憶部、及び通信部を含む。車載装置1は、実施形態1と同様に電源制御装置及び電源分配装置として機能する。車載装置1と中継装置101とは電源線51により接続され、車載装置1は、中継装置101に対しても、電力を分配するものであってもよい。車載装置1と中継装置101とは車載ネットワーク3を介して通信可能に接続される。
【0085】
車載装置1は、停止するサービスに対応する車載ECU2に対し、給電を遮断する制御を実行するにあたり、給電遮断部52が設けられている車載ECU2に対しては、当該給電遮断部52に対し給電を遮断する制御(リレーをオフ)を行う。更に、車載装置1は、停止するサービスに対応する車載ECU2に対し、給電を遮断する制御を実行するにあたり、中継装置101に対し、給電遮断の対象となる車載ECU2を特定した電源制御指示を出力する。車載装置1から電源制御指示を取得した中継装置101は、当該電源制御指示に応じて、停止するサービスに対応する車載ECU2、すなわち給電遮断の対象となる車載ECU2に対し、スリープ信号を出力する。
【0086】
図7は、車載装置1の制御部11の処理を例示するフローチャートである。車載装置1の制御部11の処理を例示するフローチャートである。車載装置1の制御部11は、例えば、車両Cが停止時(IGスイッチ141がオフ)の場合等、オルタネータ等による発電(バッテリー充電)ができない状態において、定常的に以下の処理を行う。車載装置1の制御部11は、実施形態1の処理S101からS1061と同様にS301からS3061までの処理を行う。
【0087】
継続可能時間が所定値未満である場合(S306:YES)、車載装置1の制御部11は、中継装置101へ電源制御指示を出力する(S307)。車載装置1の制御部11は、給電に関する処理として、中継装置101へ電源制御指示を出力することにより、サービスに対応する車載ECU2に対しスリープ信号を出力させる処理を中継装置101に実行させる。電源制御指示には、給電遮断の対象となる車載ECU2のECUID等が含まれており、中継装置101は、当該電源制御指示に応じて、停止するサービスに対応する車載ECU2、すなわち給電遮断の対象となる車載ECU2に対し、スリープ信号を出力する。
【0088】
車載装置1の制御部11は、給電遮断部52に対し給電を遮断する制御を実行する(S308)。車載装置1の制御部11は、給電遮断の対象となる車載ECU2であって、給電遮断部52が設けられている車載ECU2に対しては、当該給電遮断部52に対し給電を遮断する制御(リレーをオフ)を行う。このように車載装置1の制御部11は、給電の遮断に関しS307及びS308の処理を行う。
【0089】
(実施形態4)
図8は、実施形態4(中継装置101が電源制御を実施)に係る車載装置1等を含む車載システムSの構成を例示する模式図である。本実施形態における車載システムSは、車載装置1として中継装置101を含み、更に電源分配装置として機能する給電遮断装置102を含む。中継装置101は、実施形態1の車載装置1と同様に制御部、記憶部、及び通信部を含む。本実施形態においては、中継装置101が、実施形態1における車載装置1(電源制御装置)として機能する。すなわち、電源制御装置として機能する車載装置1は、中継装置101に相当する。
【0090】
中継装置101は、実施形態1における車載装置1と同様に電源管理部50と通信し、電源装置5のバッテリ情報を取得する。給電遮断装置102は、実施形態1の車載装置1と同様に制御部、記憶部、入出力I/F及び通信部を含み、更に分岐電線15及び電流検出部151を含む。中継装置101(車載装置1)に対する電源配分は、給電遮断装置102(電源分配装置)によって行われるものであってもよく、又は、中継装置101(車載装置1)は、給電遮断装置102(電源分配装置)を介することなく、電源装置5又はヒューズボックス等と接続されるものであってもよい。
【0091】
電源制御装置(車載装置1)として機能する中継装置101は、給電遮断装置102から、サービスに対応する車載ECU2に流れる電流値(電流情報)を取得する。中継装置101は、実施形態1の車載装置1と同様に、給電遮断装置102から取得した電流値(電流情報)等に基づき、サービスに対応する車載ECU2に対する給電を継続するか否かを判定し、判定結果に応じて給電に関する処理(給電を遮断する制御)を行う。
【0092】
中継装置101は、停止するサービスに対応する車載ECU2に対し、給電を遮断する制御を実行するにあたり、スリープ信号を出力する。更に、中継装置101は、給電遮断装置102へ、給電遮断の対象となる車載ECU2を特定した電源制御指示を出力することにより、給電遮断部52に対し給電を遮断する処理を、給電遮断装置102に実行させる。給電遮断装置102は、電源制御指示に応じて、停止するサービスに対応する車載ECU2の給電遮断部52に対し、給電を遮断する制御(リレーをオフ)を行う。
【0093】
図9は、車載装置1(中継装置101)の制御部の処理を例示するフローチャートである。車載装置1の制御部11の処理を例示するフローチャートである。車載装置1の制御部11は、例えば、車両Cが停止時(IGスイッチ141がオフ)の場合等、オルタネータ等による発電(バッテリー充電)ができない状態において、定常的に以下の処理を行う。本実施形態において、中継装置101が、車載装置1として一連の処理を行う。中継装置101(車載装置1)の制御部は、実施形態1の処理S101からS1061と同様にS401からS4061までの処理を行う。中継装置101の制御部は、これらの処理を行うにあたり、電源分配装置として機能する給電遮断装置102から、サービスに対応する車載ECU2それぞれに流れる電流値を取得する。
【0094】
継続可能時間が所定値未満である場合(S406:YES)、中継装置101の制御部は、給電遮断装置102へ電源制御指示を出力する(S407)。中継装置101の制御部は、給電遮断装置102へ電源制御指示を出力することにより、給電遮断部52に対し給電を遮断する処理を、当該給電遮断装置102に実行させる。電源制御指示には、給電遮断の対象となる車載ECU2のECUID等が含まれており、給電遮断装置102は、中継装置101から取得した電源制御指示に基づき、給電遮断の対象となる車載ECU2を特定する。給電遮断装置102は、特定した車載ECU2の給電遮断部52に対し、給電を遮断する制御(リレーをオフ)を行う。
【0095】
中継装置101の制御部は、サービスに対応する車載ECU2に対し、スリープ信号を出力する(S408)。中継装置101の制御部は、車載ネットワーク3を介して、停止するサービスに対応する車載ECU2に対し、スリープ信号を出力する。このように中継装置101の制御部は、給電の遮断に関しS407及びS408の処理を行う。
【0096】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0097】
特許請求の範囲に記載されている複数の請求項に関して、引用形式に関わらず、相互に組み合わせることが可能である。特許請求の範囲では、複数の請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。多項従属請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。多項従属請求項に従属する多項従属請求項が記載されていない場合であっても、これは、多項従属請求項に従属する多項従属請求項の記載を制限するものではない。
【符号の説明】
【0098】
C 車両
S 車載システム
1 車載装置(電源制御装置、電源分配装置)
11 制御部
12 記憶部
M 記録媒体
P 制御プログラム(プログラム製品)
13 通信部
14 入出力I/F
140 信号線
141 IGスイッチ
15 分岐電線
151 電流検出部
2 車載ECU
3 車載ネットワーク
31 通信線
5 電源装置
50 電源管理部(バッテリ管理システム)
51 電源線
52 給電遮断部(リレー)
101 中継装置
102 給電遮断装置(電源分配装置)