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特開2024-7804回路装置の製造方法及び封止用樹脂組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007804
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】回路装置の製造方法及び封止用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20240112BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H05K3/34 507C
H01L21/60 311S
H05K3/34 504E
H05K3/34 508Z
H05K3/34 512C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109133
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大津 渓杜
(72)【発明者】
【氏名】森 康剛
(72)【発明者】
【氏名】沼尾 敏和
【テーマコード(参考)】
5E319
5F044
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AC01
5E319BB05
5E319CC33
5E319CD27
5E319GG03
5E319GG15
5F044LL01
5F044LL04
5F044RR17
5F044RR18
5F044RR19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】回路基板と実装用部品とがハンダで接合され、ハンダ接合部の周囲が樹脂封止部で封止されている回路装置を、一度のリフロー処理によりハンダ接合部と樹脂封止部とを形成し、ハンダ粒子の飛散を抑制し、セルフアライメント特性を低下させない。
【解決手段】回路基板と実装用部品とを接合する製造方法は、回路基板1の電極パッド1aにハンダペースト3’を配し、その周縁の少なくとも一部に封止用樹脂組成物4’を配し、電極パッドと実装用部品2の電極バンプ2aとの間に挟持されたハンダペーストに対してリフロー処理によりハンダ接合部を形成すると共に、封止用樹脂組成物を硬化させて樹脂封止部を形成する。ハンダペーストのフラックスに含まれる溶剤の溶解度パラメータを「溶剤SP値」とし、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の溶解度パラメータを「樹脂SP値」としたときに、式(溶剤SP値)-(樹脂SP値)≧-0.25を満たすようにする。
【選択図】図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と実装用部品とがハンダペースト由来のハンダ接合部で接合され、ハンダ接合部の周囲が樹脂封止部で封止されている回路装置の製造方法であって、
回路基板の電極にハンダペーストを配し、ハンダペーストの周縁の少なくとも一部に封止用樹脂組成物を配し、回路基板の電極に実装用部品の電極を位置合わせし、回路基板の電極と実装用部品の電極との間に挟持されたハンダペーストに対してリフロー処理を施すことによりハンダ接合部を形成すると共に、リフロー処理の際の加熱により封止用樹脂組成物を硬化させて樹脂封止部を形成することにより、回路基板と実装用部品とを接合する製造方法において、
ハンダペーストのフラックスに含まれる溶剤の溶解度パラメータを「溶剤SP値」とし、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の溶解度パラメータを「樹脂SP値」としたときに、以下の式(1)を満たす製造方法。
【数1】
【請求項2】
回路基板と実装用部品とがハンダペースト由来のハンダ接合部で接合され、ハンダ接合部の周囲が樹脂封止部で封止されている回路装置の製造方法であって、
回路基板の電極にハンダペーストを配し、回路基板の電極に実装用部品の電極を位置合わせし、実装用部品の周縁の少なくとも一部に封止用樹脂組成物を配し、回路基板の電極と実装用部品の電極との間に挟持されたハンダペーストに対してリフロー処理を施すことによりハンダ接合部を形成すると共に、リフロー処理の際の加熱により封止用樹脂組成物を硬化させて樹脂封止部を形成することにより、回路基板と実装用部品とを接合する製造方法において、
ハンダペーストのフラックスに含まれる溶剤の溶解度パラメータを「溶剤SP値」とし、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の溶解度パラメータを「樹脂SP値」としたときに、以下の式(1)を満たす製造方法。
【数2】
【請求項3】
以下の式(2)を満たす請求項1又は2記載の製造方法。:
【数3】
【請求項4】
以下の式(3)を満たすとき、ハンダペーストのフラックスに含まれる溶剤の比重を「溶剤比重」とし、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の比重を「樹脂比重」としたときに、以下の式(4)を満たす請求項1又は2記載の製造方法。
【数4】
【請求項5】
実装用部品が半導体チップであり、回路基板が半導体装置である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項6】
ハンダペーストのフラックスに含まれる溶剤が、ヘキシルカルビトールである請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項7】
回路基板と実装用部品とがハンダペースト由来のハンダ接合部で接合され、ハンダ接合部の周囲が樹脂封止部で封止されている回路装置の当該樹脂封止部を形成するための封止用樹脂組成物であって、
ハンダペーストのフラックスに含まれる溶剤の溶解度パラメータを「溶剤SP値」とし、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の溶解度パラメータを「樹脂SP値」としたときに、以下の式(1)を満たす封止用樹脂組成物。
【数5】
【請求項8】
ハンダペーストのフラックスに含まれる溶剤が、ヘキシルカルビトールである請求項7記載の封止用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置、具体的には半導体装置の製造方法、並びにその製造方法に使用する封止用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板に実装部品、例えば半導体チップを実装する方法の1つとして、ハンダリフロー法を採用して実装する方法がある。この方法では、回路基板の電極パッドにハンダペーストを塗布し、ハンダペースト上に半導体チップをその電極バンプが電極パッドに対応するように載置し、セルフアライメント作用を期待できる処理であるハンダリフロー処理によりハンダ接合部を形成した後、液状の封止用樹脂組成物をハンダ接合部を封止するように供給し、加熱硬化処理により樹脂封止部を形成することにより実装している。しかし、この方法では、セルフアライメント作用が期待できるものの、ハンダのハンダリフロー処理と封止用樹脂組成物の加熱硬化処理とが別々の工程で行われているため、生産性が低下し、実装コストの低減が困難という問題がある。
【0003】
そこで、ハンダのリフロー処理の際に、同時に封止用樹脂組成物の加熱硬化処理も行うこと(リフロー硬化処理)が提案されている(特許文献1)。この特許文献1では、表面実装部品のバンプ電極と回路基板の実装用電極のいずれか一方をハンダで形成し、回路基板の実装電極形成面又は表面実装部品のバンプ電極形成面のいずれか一方に電極を覆わないようにアンダーフィル用液状エポキシ樹脂組成物を塗布した後、回路基板の実装電極と表面実装部品のバンプ電極とが対向するように、回路基板に表面実装部品を載置し、リフロー硬化処理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-108155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1ではハンダペーストを使用していないため、回路基板の実装用電極と表面実装部品のバンプ電極のいずれかをハンダで形成することに代えて、回路基板の電極パッドにハンダペーストを塗布した場合にどのような結果が得られるのかは特許文献1では検討されていない。このため、本発明者らは、回路基板と実装用部品とがハンダペースト由来のハンダ接合部で接合され、ハンダ接合部の周囲が樹脂封止部で封止されている回路装置を製造する際に、回路基板の電極と実装用部品の電極との間にハンダペーストを配し、ハンダペーストの周縁に封止用樹脂組成物を配し、ハンダペーストに対してリフロー処理を施すことによりハンダ接合部を形成すると共に、リフロー処理の際の加熱により封止用樹脂組成物を硬化させて樹脂封止部を形成することにより、回路基板と実装用部品とを接合することを試みたところ、以下のような問題が発生した。
【0006】
即ち、リフロー処理の際に、対向電極間に挟持されているハンダペーストに意図しないボイドが生じるため、バンダペーストに含有されている微細なハンダ粒子が封止用樹脂組成物と共に、本来接続に関与すべきハンダ接合部の外側まで飛散するという問題があった。そのようなハンダ粒子の飛散が発生すると、接続すべき対向電極間のハンダ粒子濃度が低下し、導通信頼性が損なわれることが懸念されるだけでなく、ハンダリフロー処理によるセルフアライメント特性が低下することも懸念される。
【0007】
本発明の目的は、回路基板と実装用部品とがハンダペースト由来のハンダ接合部で接合され、ハンダ接合部の周囲が樹脂封止部で封止されている回路装置を、一度のリフロー硬化処理によりハンダ接合部と樹脂封止部とを形成する際に、ハンダ粒子の飛散を抑制すると共に、ハンダペーストのリフロー時のセルフアライメント特性を低下させないことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ハンダ粒子の飛散が生ずる要因が、リフロー硬化処理中に液状の封止用樹脂組成物がハンダペースト内に拡散し、ハンダペースト内のハンダ粒子近傍で気化して微細なボイドが形成され、更にそのボイドがリフロー硬化処理中に爆発的に大きくなることにあることを知見した。また、本発明者らは、封止用樹脂組成物のハンダペーストへの拡散を抑制すればハンダ粒子の飛散を抑制できるとの仮定の下、ハンダペーストに用いられているフラックスに含有されている溶剤の溶解度パラメータと、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の溶解度パラメータとの差を調整することにより本願発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、回路基板と実装用部品とがハンダペースト由来のハンダ接合部で接合され、ハンダ接合部の周囲が樹脂封止部で封止されている回路装置の製造方法であって、
第1の製造方法として、回路基板の電極にハンダペーストを配し、ハンダペーストの周縁の少なくとも一部に封止用樹脂組成物を配し、回路基板の電極に実装用部品の電極を位置合わせし、回路基板の電極と実装用部品の電極との間に挟持されたハンダペーストに対してリフロー処理を施すことによりハンダ接合部を形成すると共に、リフロー処理の際の加熱により封止用樹脂組成物を硬化させて樹脂封止部を形成することにより、回路基板と実装用部品とを接合する製造方法を提供し、
第2の製造方法として、回路基板の電極にハンダペーストを配し、回路基板の電極に実装用部品の電極を位置合わせし、実装用部品の周縁の少なくとも一部に封止用樹脂組成物を配し、回路基板の電極と実装用部品の電極との間に挟持されたハンダペーストに対してリフロー処理を施すことによりハンダ接合部を形成すると共に、リフロー処理の際の加熱により封止用樹脂組成物を硬化させて樹脂封止部を形成することにより、回路基板と実装用部品とを接合する製造方法を提供する。
【0010】
本発明の第1及び第2の製造方法は、ハンダペーストのフラックスに含まれる溶剤の溶解度パラメータを「溶剤SP値」とし、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の溶解度パラメータを「樹脂SP値」としたときに、以下の式(1)、好ましくは式(2)を満たすことを特徴としている。ここで、液状樹脂成分とは、大気圧下、室温で流動する樹脂成分(モノマー、オリゴマー、またはポリマー)である。
【0011】
【数1】
【0012】
なお、本発明の第1及び第2の製造方法が、以下の式(3)を満たすとき、ハンダペーストのフラックスに含まれる溶剤の比重を「溶剤比重」とし、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の比重を「樹脂比重」としたときに、以下の式(4)を満たすことが好ましい。
【0013】
【数2】
【0014】
また、本発明は、回路基板と実装用部品とがハンダペースト由来のハンダ接合部で接合され、ハンダ接合部の周囲が樹脂封止部で封止されている回路装置の当該樹脂封止部を形成するための封止用樹脂組成物を提供する。この封止用樹脂組成物は、ハンダペーストに含まれる溶剤の溶解度パラメータを「溶剤SP値」とし、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の溶解度パラメータを「樹脂SP値」としたときに、以下の式(1)、好ましくは式(2)を満たすことを特徴としている。
【0015】
【数3】
【発明の効果】
【0016】
本発明の回路装置の第1及び第2の製造方法は、回路基板の電極と実装用部品の電極との間に挟持されたハンダペーストに対してリフロー処理を施すことによりハンダ接合部を形成すると共に、リフロー処理の際の加熱により封止用樹脂組成物を硬化させて樹脂封止部を形成することにより、回路基板と実装用部品とを接合する製造方法である。これらの製造方法では、ハンダペーストに含まれる溶剤の溶解度パラメータを「溶剤SP値」とし、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の溶解度パラメータを「樹脂SP値」としたときに、溶剤SP値から樹脂SP値を差し引いた値が-0.25以上(前出の式(1)参照)となっている。このため、一度のリフロー硬化処理によりハンダ接合部と樹脂封止部とを形成する際に、ハンダ粒子の飛散を抑制すると共に、ハンダペーストのリフロー時のセルフアライメント特性を低下させないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本発明の第1の製造方法の工程説明図である。
図1B】本発明の第1の製造方法の工程説明図である。
図1C】本発明の第1の製造方法の工程説明図である。
図1D】本発明の第1の製造方法の工程説明図である。
図1E】本発明の製造方法の目的物である回路装置の概略断面図である。
図2A】本発明の第2の製造方法の工程説明図である。
図2B】本発明の第2の製造方法の工程説明図である。
図2C】本発明の第2の製造方法の工程説明図である。
図2D】本発明の第2の製造方法の工程説明図である。
図2E】本発明の製造方法の目的物である回路装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0019】
(本発明の第1及び第2の製造方法の目的物である回路装置)
本発明の第1及び第2の製造方法の目的物は、それぞれ図1E及び図2Eに示すように、回路基板1と実装用部品2とがハンダペースト由来のハンダ接合部3で接合され、ハンダ接合部3の周囲が樹脂封止部4で封止されている回路装置10である。ハンダ接合部3は、回路基板1の電極パッド1aと実装用部品2の電極バンプ2aとの間に配置されている。
【0020】
回路基板1としては、半導体基板、フレキシブル回路基板、リジッド配線基板、プリント配線基板等の公知の基板を挙げることができ、中でも半導体基板を好ましく挙げることができる。回路基板1の電極パッド1aとしては、銅パッド、アルミパッド等の公知の電極パッドを採用することができる。電極パッド1aは、他の形態の電極、例えば電極バンプなどで代用することが可能である。
【0021】
実装用部品2としては、表面実装用の公知の各種部品を適用することができ、半導体チップ、発光ダイオード、コンデンサチップ、抵抗素子等を挙げることができる。中でも半導体チップを好ましく挙げることができる。実装用部品2の電極バンプ2aとしては、金バンプやハンダバンプ等の公知の電極バンプを採用することができる。電極バンプ2aは、他の形態の電極、例えば電極パッドなどで代用することが可能である。
【0022】
ハンダ接合部3は、ハンダペーストをリフロー処理することで形成されるものであり、実装用部品2の電極バンプ2aと回路基板1の電極パッド1aとの間を導通させるものである。また、ハンダ接合部3は、ハンダペーストのリフロー処理の際に、電極パッド1aの周縁を超えて広がらずに、電極パッド1aの表面に留まろうとするため、回路基板1に対して実装用部品2をセルフアライメントすることが可能となる。
【0023】
ハンダ接合部3を形成するためのハンダペーストとしては、公知のハンダペーストの中から適宜選択して使用することができる。ハンダペーストは、一般に、平均粒径が10~40μmのハンダ粒子と、ハンダ表面の酸化膜除去のためのフラックスとを均一に混合したものである。フラックスとしては、ロジン等に高沸点溶剤を有機酸などの活性化剤やチクソ剤などと共に混合した公知のものを使用することができる。ハンダ接合部3にボイドを発生させる要因となる高沸点溶剤としては、リフロー処理温度等を考慮して選択されるが、カルビトール系溶剤、特にヘキシルカルビトールを好ましく使用することができる。
【0024】
(回路装置の第1の製造方法)
本発明の回路装置の第1の製造方法は、以下の工程A1~工程D1を有する。
【0025】
(工程A1)
図1Aに示すように、回路基板1の電極パッド1aにハンダペースト3′を配する。ハンダペーストは、公知の方法により電極パッド1aに配することができ、例えば、精密ディスペンサーを用いて塗布することができる。
【0026】
(工程B1)
次に、図1Bに示すように、ハンダペースト3′の周縁の少なくとも一部に封止用樹脂組成物4′を配する。封止用樹脂組成物4′は、公知の方法により電極パッド1aの周縁の少なくとも一部に配することができ、例えば、ディスペンサーを用いて塗布することができる。封止用樹脂組成物4′としては、アンダーフィル剤として用いられているものを適用することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物や(メタ)アクリル樹脂組成物等を適用することができる。これらの樹脂組成物は、樹脂の種類に応じて、熱酸発生剤、熱重合開始剤等を含有する。必要により、光重合開始剤や光酸発生剤を含有することもできる。
【0027】
(工程C1)
次に、図1Cに示すように、回路基板1に実装用部品2を載置する。具体的には、回路基板1の電極パッド1aに実装用部品2の電極バンプ2aを位置合わせし、必要に応じて軽くプレスする。これにより、実装用部品2の電極バンプ2aがハンダペースト3′と接触すると共に、回路基板1と実装用部品2の対向面間が封止用樹脂組成物4′で満たされる。場合により、実装用部品2の表面側も封止用樹脂組成物4′で覆うことができる。
【0028】
(工程D1)
次に、図1Dに示すように、回路基板1の電極パッド1aと実装用部品2の電極バンプ2aとの間に挟持されたハンダペースト3′に対してリフロー処理を施す。リフロー処理は、ハンダ粒子の溶融温度よりも高い温度にハンダペースト3′を加熱し、ハンダ粒子表面の酸化被膜をフラックスにより除去し、電極パッド1aと電極バンプ2aとの間に濡れ拡がらせてハンダ接合部3を形成する。そのハンダ接合部3の形成と共に、リフロー処理の際の加熱により封止用樹脂組成物4′を硬化させて樹脂封止部4を形成する。本発明におけるリフロー処理は、ハンダペーストのリフロー処理と封止用樹脂組成物の硬化処理とを同時に行うリフロー硬化処理という意義を有する。なお、リフロー硬化処理の際には、ハンダペーストと封止用樹脂組成物とが流動し、その結果、実装用部品2が回路基板1に対して適正な位置に移動するというセルフアライメントを実現できる。これにより、回路基板1と実装用部品2とを接合することができ、図1Eに示す構造の回路装置10が得られる。
【0029】
(回路装置の第2の製造方法)
本発明の回路装置の第2の製造方法は、以下の工程A2~工程D2を有する。
【0030】
(工程A2)
図2Aに示すように、回路基板1の電極パッド1aにハンダペースト3′を配する。ハンダペーストは、公知の方法により電極パッド1aに配することができ、例えば、精密ディスペンサーを用いて塗布することができる。
【0031】
(工程B2)
次に、図2Bに示すように、回路基板1に実装用部品2を載置する。具体的には、回路基板1の電極パッド1aに実装用部品2の電極バンプ2aを位置合わせし、必要に応じて軽くプレスする。これにより、実装用部品2の電極バンプ2aがハンダペースト3′と接触する。
【0032】
(工程C2)
次に、図2Cに示すように、実装用部品2の周縁の少なくとも一部に封止用樹脂組成物4′を配する。封止用樹脂組成物4′は、公知の方法により実装用部品2の周縁の少なくとも一部に配することができ、例えば、ディスペンサーを用いて塗布することができる。封止用樹脂組成物4′としては、アンダーフィル剤として用いられているものを適用することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物や(メタ)アクリル樹脂組成物等を適用することができる。これらの樹脂組成物は、樹脂の種類に応じて、熱酸発生剤、熱重合開始剤等を含有する。必要により、光重合開始剤や光酸発生剤を含有することもできる。
【0033】
(工程D2)
次に、図2Dに示すように、回路基板1の電極パッド1aと実装用部品2の電極バンプ2aとの間に挟持されたハンダペースト3′に対してリフロー処理を施す。リフロー処理は、ハンダ粒子の溶融温度よりも高い温度にハンダペースト3′を加熱し、ハンダ粒子表面の酸化被膜をフラックスにより除去し、電極パッド1aと電極バンプ2aとの間に濡れ拡がらせてハンダ接合部3を形成する。そのハンダ接合部3の形成と共に、リフロー処理の際の加熱により封止用樹脂組成物4′を硬化させて樹脂封止部4を形成する。この硬化に先立って、回路基板1と実装用部品2の対向面間に加熱により流動させた封止用樹脂組成物4′を満たすことも可能であり、場合により、実装用部品2の表面全面を封止用樹脂組成物4′で覆うこともできる。本発明におけるリフロー処理は、ハンダペーストのリフロー処理と封止用樹脂組成物の硬化処理とを同時に行うリフロー硬化処理という意義を有する。なお、リフロー硬化処理の際には、ハンダペーストと封止用樹脂組成物とが流動し、その結果、実装用部品2が回路基板1に対して適正な位置に移動するというセルフアライメントを実現できる。これにより、回路基板1と実装用部品2とを接合することができ、図2Eに示す構造の回路装置10が得られる。
【0034】
(本発明の第1及び第2の製造方法の特徴)
以上が本発明の第1及び第2の製造方法の工程の説明であるが、本発明のこれらの製造方法は、ハンダペーストのフラックスに含まれる溶剤のfedors法による溶解度パラメータを「溶剤SP値」とし、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の溶解度パラメータを「樹脂SP値」としたときに、以下の式(1)、好ましくは式(2)を満たすことを特徴としている。ここで、複数の溶剤が併用されている場合の「溶剤SP値」は、各溶剤のSP値にその含有割合を乗じて得られた数値の和であり、また、封止用樹脂組成物が複数の液状樹脂成分(換言すれば、液状のモノマ―、液状のオリゴマー、液状のポリマー)を併用している場合の「樹脂SP値」は、各樹脂のSP値にその含有割合を乗じて得られた数値の和である。
【0035】
【数4】
【0036】
式(1)の規定は、溶剤SP値から樹脂SP値を差し引いた数値が-0.25未満になると、リフロー処理の際にハンダ粒子の飛散を防げず、適正なセルフアライメントも実現できないという事実を根拠に規定されたものである。換言すれば、式(1)の規定は、溶剤SP値から樹脂SP値を差し引いた数値が-0.25以上であれば、リフロー処理の際にハンダ粒子の飛散を防ぐことができると共に、適正なセルフアライメントも実現できるという意義を有する。
【0037】
なお、式(1)では上限が規定されていないが、これは、溶剤SP値から樹脂SP値を差し引いた数値が大きくなると、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分とハンダペーストのフラックスに含まれている溶剤とが互いに相溶し難くなり、それに伴い、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分がハンダペースト中へ拡散し難くなり、ハンダ粒子の飛散を抑制できると共に適正なセルフアライメントも実現できるため、上限を規定する意義が希薄だからである。ただ、後述する実施例の結果を参酌すれば、少なくとも2.00以下であることが必要と推察される。
【0038】
式(2)の規定は、溶剤SP値から樹脂SP値を差し引いた数値が0.7以上であれば、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分とハンダペーストのフラックスに含まれている溶剤とが互いに非相溶となり、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分がハンダペースト中へ拡散し難くなり、その結果、リフロー処理の際にハンダ粒子の飛散をより効果的に防ぐことができると共に、適正なセルフアライメントも実現できるという意義を有する。
【0039】
ところで、以上の式(1)を満たすが、式(2)を満たさない場合、即ち、以下の式(3)を満たす場合、ハンダペーストに含まれる溶剤の比重と封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の比重との関係性が、発明の効果に大きく影響を与えることを、本発明者らは知見した。即ち、ソルダーペーストを覆う封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の比重がソルダーペーストのフラックスの溶剤の比重よりも小さいと、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分(液状のモノマーやオリゴマー、ポリマー)がハンダペースト中へ拡散しにくくなり、結果的にハンダ粒子の近傍ではなく、封止用樹脂組成物の表面近傍で気化するために、リフロー処理の際にハンダ粒子の飛散が生じにくくなることが知見された。この知見に基づき、ハンダペーストのフラックスに含まれている溶剤の比重を「溶剤比重」とし、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の比重を「樹脂比重」としたときに、以下の式(4)を満たさない場合には、満たした場合に比べ、リフロー処理の際にハンダ粒子の飛散を防ぎ難くなり、適正なセルフアライメントも実現し難くなる傾向がある。ここで、フラックスに複数の溶剤が併用されている場合の「溶剤比重」は、各溶剤の比重にその含有割合を乗じて得られた数値の和であり、また、複数の液状樹脂成分(換言すれば、液状のモノマ―、液状のオリゴマー、液状のポリマー)が併用されている場合の「樹脂比重」は、各液状樹脂成分の比重にその含有割合を乗じて得られた数値の和である。
【0040】
【数5】
【0041】
なお、式(4)では上限が規定されていないが、これは、溶剤比重から樹脂比重を差し引いた数値が大きくなると、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分がハンダペースト中へより拡散し難くなり、その結果、ハンダ粒子の飛散を抑制できると共に適正なセルフアライメントも実現できるため、上限を規定する意義が希薄だからである。ただ、後述する実施例の結果を参酌すれば、少なくとも0.1以下であることが必要と推察される。
【0042】
本発明において、式(1)、(2)、(3)又は(4)を満足させるには、ハンダペーストのフラックスの溶剤の選択と、封止用樹脂組成物の組成の選択を行う方法が挙げられる。
【0043】
(封止用樹脂組成物)
本発明の製造方法に適用する封止用樹脂組成物は、以下のように規定することができ、本発明の一態様である。即ち、本発明の封止用樹脂組成物は、回路基板と実装用部品とがハンダペースト由来のハンダ接合部で接合され、ハンダ接合部の周囲が樹脂封止部で封止されている回路装置の当該樹脂封止部を形成するための封止用樹脂組成物である。その特徴は、前述した式(1)、好ましくは式(2)を満たすことである。なお、前述の式(3)を満たす場合には、追加的に式(4)を満たすことが好ましい。
【0044】
本発明の封止用樹脂組成物を規定する用語の意味は、本発明の回路装置の製造方法で説明した通りである。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例と比較例とにより具体的に説明する。なお、実施例と比較例で使用した封止用樹脂組成物の液状樹脂成分(液状モノマー、オリゴマー又はポリマー)を以下に示す。また、ハンダペーストは、合金組成がAg3.0%-Cu0.5%-Sn(残部)のものであり、フラックス中の溶剤はヘキシルカルビトール(溶剤SP値:10.22、溶剤比重:0.94)を使用した。
【0046】
2EHA: 2-エチルヘキシルアクリレート
BA: ブチルアクリレート
ISTA: イソステアリルアクリレート
IBXA: イソボルニルアクリレート
IBXMA: イソボルニルメタアクリレート
デナコールEX-121: 2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)
デナコールEX-192: C12,C13混合アルコールグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)
デナコールEX-146P: p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)
YX8000: 高純度水添エポキシ樹脂、三菱ケミカル(株)
NKエステルLC3: トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学工業(株)
HDDA: 1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
EXA-850CRP: ビスフェノールA骨格エポキシ樹脂、DIC(株)
HBA: 4-ヒドロキシブチルアクリレート
HEA: ヒドロキシエチルアクリレート
パーロイルL: ジラウロイルパーオキサイド、日油(株)
AH-154: ジシアンジアミド、味の素ファインテクノ(株)
【0047】
実施例1~15,比較例1~5
(封止用樹脂組成物の調製)
表1に示した封止用樹脂組成物の液状樹脂成分と硬化剤とを、表1の配合割合で均一に混合することにより封止用樹脂組成物を調製した。なお、表1に液状樹脂成分の樹脂SP値と樹脂比重とを併せて記載し、更に、「(溶剤SP値)-(樹脂SP値)」の数値と、「(溶剤比重)-(樹脂比重)」の数値とを示す。
【0048】
(リフロー硬化処理の際の「ハンダ粒子の飛散」試験)
試験用回路基板として以下のFR-4グレードの回路基板を用い、また、試験用実装用部品として以下の半導体素子を用いて、「ハンダ粒子の飛散」試験用の回路装置を作成した。具体的には、試験用回路基板の電極パッドに、千住金属工業株式会社製造のハンダペースト(「M705-GRN360-K2-V」(ハンダ粒子:AG3.0%-Cu0.5%-Sn(残部):フラックス中の溶剤=ヘキシルカルビトール(溶剤SP値:10.22、溶剤比重:0.94))を、150μm厚となるように精密ディスペンサーで塗布し、ハンダペーストが塗布された試験用回路基板の電極パッドに対し、試験用実装用部品の電極バンプを位置合わせし、軽くプレスすることにより試験用回路基板に試験用実装用部品を載置した。次に試験用実装用部品の周縁4辺中の隣接する2辺に、封止用樹脂組成物を80mg塗布し、大気下にて常温から170℃まで3℃/秒で昇温し、170℃で90秒間保持した後、2℃/秒で250℃まで昇温した後、2℃/秒で常温へ冷却するリフロー硬化処理を行い、これによりハンダ接合部と樹脂封止部とを形成した。これにより、図2Eに示すような構造の回路装置を作成した。
【0049】
(使用した試験用回路基板)
試験用回路基板として、表面に金メッキ加工を施した銅配線(1.0×7.2(mm))を有するFR-4グレード回路基板(20×40×0.6(mm))を使用した。
【0050】
(使用した試験用実装用部品)
試験用実装用部品として、(1.0×7.2(mm))の電極バンプを有する半導体素子(5×9.5×1(mm))を使用した。
【0051】
「ハンダ粒子の飛散」評価
作成した回路装置をX線により観察し、以下の評価基準に従って評価した。評価結果を表1に示す。
【0052】
(「ハンダ粒子の飛散」の評価基準)
ランク: 基準
A: 回路装置1台あたりの飛散したハンダ粒子の数が20個未満
AB: 回路装置1台あたりの飛散したハンダ粒子の数が20個以上40個未満
B: 回路装置1台あたりの飛散したハンダ粒子の数が40個以上60個未満
BC: 回路装置1台あたりの飛散したハンダ粒子の数が60個以上100個未満
C: 回路装置1台あたりの飛散したハンダ粒子の数が100個以上
【0053】
(リフロー硬化処理の際の「セルフアライメント」試験)
「ハンダ粒子の飛散」試験の場合と同様に回路装置を作成した。
【0054】
「セルフアライメント」評価
作成した回路基板を研磨後、ハンダ接合部の断面を観察し、以下の評価基準に従って評価した。評価結果を表1に示す。
【0055】
(「セルフアライメント」の評価基準)
ランク: 基準
A: 回路基板の電極パッド1aならびに実装用部品の電極バンプ2aがハンダ接合部3により電気的に接合されている
C: 回路基板の電極パッド1aならびに実装用部品の電極バンプ2aがハンダ接合部3により電気的に接合されていない
【0056】
【表1】
【0057】
<結果の考察>
実施例1~15の封止用樹脂組成物と、千住金属工業株式会社製造のハンダペースト(「M705-GRN360-K2-V」(ハンダ粒子:AG3.0%-Cu0.5%-Sn(残部):フラックス中の溶剤=ヘキシルカルビトール(溶剤SP値:10.22、溶剤比重:0.94))とを用いて半導体装置を作成した場合、「ハンダ粒子の飛散」の評価が、A、AB又はBであり、実用上問題のない評価であった。「セルフアライメント」の評価もA評価であった。
【0058】
なお、実施例10、11、12、15の場合、「ハンダ粒子の飛散」評価が、実用上問題が無いものの、AB又はB評価であった。この理由は、「(溶剤SP値)-(樹脂SP値)」の数値が-0.25以上であるが0.7未満であるため、ハンダペーストのフラックスの溶剤と封止用樹脂組成物の液状樹脂成分との間の相溶性が向上し、その結果、液状樹脂成分がハンダペースト中に拡散し易くなるためと考えられる。その反面、これらの実施例では、「(溶剤比重)-(樹脂比重)」の数値が、-0.25未満となっていないため、比重差の点から拡散が抑制され、その結果、「ハンダ粒子の飛散」の評価がAB又はB評価になったと考えられる。
【0059】
また、実施例1~9、13~14の場合、「ハンダ粒子の飛散」評価が、「(溶剤比重)-(樹脂比重)」の比重差に依存することなく、A評価であった。この理由は、「(溶剤SP値)-(樹脂SP値)」の数値が0.7以上であり、ハンダペーストのフラックスの溶剤と封止用樹脂組成物の液状樹脂成分との間の非相溶性が向上し、その結果、液状樹脂成分がハンダペースト中に拡散し難くなるためと考えられる。
【0060】
なお、比較例1~5の封止用樹脂組成物と、千住金属株式会社製造のハンダペースト(「M705-GRN360-K2-V」(ハンダ粒子:AG3.0%-Cu0.5%-Sn(残部):フラックス中の溶剤=ヘキシルカルビトール(溶剤SP値:10.22、溶剤比重:0.94))とを用いて半導体装置を作成した場合、「(溶剤SP値)-(樹脂SP値)」の数値が-0.25未満であったため、「ハンダ粒子の飛散」の評価が、BC又はCであり、実用上問題のある評価であった。しかも、「セルフアライメント」もC評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の製造方法では、ハンダペーストに含まれる溶剤の溶解度パラメータを「溶剤SP値」とし、封止用樹脂組成物の液状樹脂成分の溶解度パラメータを「樹脂SP値」としたときに、溶剤SP値から樹脂SP値を差し引いた値が-0.25以上(前出の式(1)参照)となっている。このため、一度のリフロー硬化処理によりハンダ接合部と樹脂封止部とを形成する際に、ハンダ粒子の飛散を抑制すると共に、ハンダペーストのリフロー時のセルフアライメント特性を低下させないようにすることができる。従って、本発明の製造方法は、半導体装置等の回路装置の製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 回路基板
1a 回路基板の電極パッド
2 実装用部品
2a 実装部品の電極バンプ
3 ハンダ接合部
3′ハンダペースト
4 樹脂封止部
4′ 封止用樹脂組成物
10 回路装置
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E