(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078051
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/00 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
A47C7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190374
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】村中 亮
(57)【要約】
【課題】椅子の安定性を良好に維持しつつ、鉛直方向や水平方向に対して傾斜するデザインを付与することが容易であり、座り心地がよく、椅子を構成するベース部材の数量を削減できて組み立てが簡単であり、耐荷重も高められる椅子を提供する。
【解決手段】互いに同じ外形形状を有する複数のベース部材1の組み合わせにより、座面部11、脚部12及び背もたれ部13が設けられた椅子10であって、各ベース部材1は、ケルビン14面体または扁平したケルビン14面体の外形形状を有し、ベース部材1は、互いに反対方向を向く一対の正六角形面を含む8つの六角形面と、正方形面または長方形面からなる6つの四角形面と、を有し、互いに隣接して配置されるベース部材1の対向する面同士が連結される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同じ外形形状を有する複数のベース部材の組み合わせにより、座面部、脚部及び背もたれ部が設けられた椅子であって、
各前記ベース部材は、ケルビン14面体または扁平したケルビン14面体の外形形状を有し、
前記ベース部材は、
互いに反対方向を向く一対の正六角形面を含む8つの六角形面と、
正方形面または長方形面からなる6つの四角形面と、を有し、
互いに隣接して配置される前記ベース部材の対向する面同士が連結される、
椅子。
【請求項2】
各前記ベース部材は、扁平したケルビン14面体の外形形状を有し、
前記ベース部材の前記8つの六角形面のうち、前記一対の正六角形面以外の6つの六角形面は、扁平した六角形面の形状を有し、
前記6つの四角形面は、長方形面の形状を有し、
前記扁平した六角形面の外周縁または前記長方形面の外周縁に配置される複数の辺のうち、最長寸法を有する長辺と、最短寸法を有する短辺との寸法比が、2以上である、
請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
互いに隣接して配置される前記ベース部材の対向する前記六角形面同士または前記四角形面同士が連結される、
請求項1または2に記載の椅子。
【請求項4】
前記座面部は、1つの前記ベース部材により構成される、
請求項1または2に記載の椅子。
【請求項5】
前記脚部は、3つの前記ベース部材により構成される、
請求項1または2に記載の椅子。
【請求項6】
前記ベース部材は、木材製、樹脂製、金属製、及びこれらを組み合わせた材料のいずれかからなる、
請求項1または2に記載の椅子。
【請求項7】
前記複数のベース部材には、貫通孔を有するベース部材が1つ以上含まれる、
請求項1または2に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のブロック状のベース部材を組み合わせて構成される椅子が知られている(例えば、特許文献1、2)。
特許文献1には、直方体ブロックが複数個連結して形成される組み立て椅子が記載されている。また特許文献2には、連結ブロックの直方体本体に凹部及び凸部が形成されており、複数の連結ブロックを凹部と凸部の嵌合により連結した、システム家具の一例としての大人用椅子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/099161号
【特許文献2】特開平10-5054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2のように、各ベース部材が直方体形状であると、これらのベース部材を組み合わせて構成される椅子の背もたれ部が鉛直方向に延びることとなり、座り心地が損なわれる。また、椅子の安定性を良好に維持したまま、鉛直方向や水平方向に対して傾斜するデザインを付与することが難しい。また、椅子を組み立てるにあたり多くのベース部材を必要とし、組み立て作業が煩雑になりやすい。
また特許文献2のように、凹部と凸部の嵌合による連結構造では、椅子が大きな荷重に耐えられないおそれがある。
【0005】
本発明は、椅子の安定性を良好に維持しつつ、鉛直方向や水平方向に対して傾斜するデザインを付与することが容易であり、座り心地がよく、椅子を構成するベース部材の数量を削減できて組み立てが簡単であり、耐荷重も高められる椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0007】
〔本発明の態様1〕
互いに同じ外形形状を有する複数のベース部材の組み合わせにより、座面部、脚部及び背もたれ部が設けられた椅子であって、各前記ベース部材は、ケルビン14面体または扁平したケルビン14面体の外形形状を有し、前記ベース部材は、互いに反対方向を向く一対の正六角形面を含む8つの六角形面と、正方形面または長方形面からなる6つの四角形面と、を有し、互いに隣接して配置される前記ベース部材の対向する面同士が連結される、椅子。
【0008】
本発明の椅子では、椅子の各パーツ(座面部、脚部及び背もたれ部)を構成する複数のベース部材の外形形状が、互いに同一であり、かつ、ケルビン14面体または扁平したケルビン14面体(以下、単にケルビン14面体と呼ぶ場合がある)とされている。ケルビン14面体は、切頂8面体とも呼ばれ、空間の密な充填に適した多面体である。
【0009】
ここで、ベース部材の外形をなすケルビン14面体について説明する(
図1または
図18を参照)。ケルビン14面体は、互いに反対方向を向く一対の正六角形面を含む8つの六角形面と、正方形面または長方形面からなる6つの四角形面と、をその外面に有する多面体である。ケルビン14面体は、隣り合う面と面を接続する辺(稜線)を、計36辺有する。なお本発明において、ベース部材の外形形状とは、少なくとも、前記36辺により形成される外枠の外形形状を指す。このため、前記外形形状は、フレーム形状等と言い換えてもよい。
【0010】
以下の説明では、前記一対の正六角形面(一方の正六角形面及び他方の正六角形面)の各中心を通る仮想直線を中心軸とし、この中心軸が延びる方向を軸方向と呼ぶ。軸方向のうち、一方の正六角形面から他方の正六角形面へ向かう方向を軸方向他方側と呼び、他方の正六角形面から一方の正六角形面へ向かう方向を軸方向一方側と呼ぶ。
中心軸と直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸に近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸から離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。
【0011】
ケルビン14面体が有する8つの六角形面のうち、軸方向において互いに反対側を向く一対の正六角形面は、それぞれ、中心軸と垂直な方向に広がる。また、8つの六角形面のうち、前記一対の正六角形面以外の6つの六角形面は、前記一対の正六角形面の各外周縁同士を接続する外周面に配置される。外周面は、ケルビン14面体(ベース部材)の外面のうち径方向外側を向く部分である。なお、前記6つの六角形面は正六角形面であってもよいし(
図18を参照)、軸方向の寸法が周方向の寸法よりも短い扁平した六角形面であってもよい(
図1を参照)。
【0012】
また、ケルビン14面体が有する6つの四角形面は、外周面に配置される。
図1に示すように、四角形面が長方形面である場合、各四角形面は、軸方向の寸法が周方向の寸法よりも短い扁平した長方形面であってもよい。また、
図18に示す各四角形面は、正方形面である。
【0013】
より詳しくは、前記一対の正六角形面以外の6つの六角形面のうち3つ、及び、6つの四角形面のうち3つは、ケルビン14面体の外周面において軸方向一方側の部分に配置され、周方向に交互に並んで配列する。これら3つの六角形面及び3つの四角形面は、一方の正六角形面の外周縁をなす6辺にそれぞれ接続される。
【0014】
また、前記一対の正六角形面以外の6つの六角形面のうち他の3つ、及び、6つの四角形面のうち他の3つは、ケルビン14面体の外周面において軸方向他方側の部分に配置され、周方向に交互に並んで配列する。これら3つの六角形面及び3つの四角形面は、他方の正六角形面の外周縁をなす6辺にそれぞれ接続される。
【0015】
ケルビン14面体の外周面において、軸方向一方側の部分に配置される六角形面と、軸方向他方側の部分に配置される六角形面とは、互いに周方向位置がずらされており、周方向において交互に配列する。軸方向一方側の部分に配置される六角形面と、軸方向他方側の部分に配置される六角形面とは、互いに接続される。また、ケルビン14面体の外周面において、軸方向一方側の部分に配置される四角形面と、軸方向他方側の部分に配置される四角形面とは、互いに周方向位置がずらされており、周方向において交互に配列する。
【0016】
ケルビン14面体の外周面において、軸方向一方側の部分に配置される六角形面と、軸方向他方側の部分に配置される四角形面とは、軸方向に並んで配置され、互いに接続される。また、ケルビン14面体の外周面において、軸方向一方側の部分に配置される四角形面と、軸方向他方側の部分に配置される六角形面とは、軸方向に並んで配置され、互いに接続される。
【0017】
そして、本発明の椅子は、このようなケルビン14面体の外形形状を有する複数のベース部材を組み合わせて構成されており、詳しくは、互いに隣接配置されるベース部材が、互いに対向する面同士を連結している。ベース部材は、連結される面(鉛直方向に対して傾斜した面)によって荷重を受けることができるため、従来の椅子のような凹部と凸部の嵌合による連結構造に比べて、大きな荷重に耐え得る椅子を提供できる。さらに、本発明のベース部材はケルビン14面体の外形形状を有するため、互いに同じ外形形状を持つ複数のベース部材を相互に固定することで、組み立て後のこれらベース部材の固定状態がより安定する。
【0018】
また、従来の椅子のように、直方体形状や立方体形状の複数のブロック(ベース部材)を組み合わせてなる構成に比べて、本発明によれば、椅子の安定性を良好に維持したまま、鉛直方向や水平方向に対して傾斜するデザインを付与することが容易である。具体的には、背もたれ部を鉛直方向に対して傾斜させて配置することができ、座り心地がよい。またケルビン14面体は、空間を密に充填する構造を有するため、組み合わせ方により形状の自由度が高い椅子を製作可能である。したがって、椅子のデザイン性が高められる。
【0019】
また、椅子の各パーツ(座面部、脚部及び背もたれ部)を、それぞれ少数のベース部材によって構成することが可能であり、ベース部材の総使用数量を少なく抑えることができる。このため、組み立て作業が容易であり、生産効率が向上する。
【0020】
また、互いに同一形状の(すなわち共通品の)複数のベース部材の組み合わせによって椅子が構成されるため、ベース部材の製造コストを削減可能である。またベース部材は、空間を密に充填する構造を有するため、部品保管時の省スペース化を図ることができる。
【0021】
以上より、本発明の椅子によれば、椅子の安定性を良好に維持しつつ、鉛直方向や水平方向に対して傾斜するデザインを付与することが容易であり、座り心地がよく、椅子を構成するベース部材の数量を削減できて組み立てが簡単であり、耐荷重も高められる。
【0022】
〔本発明の態様2〕
各前記ベース部材は、扁平したケルビン14面体の外形形状を有し、前記ベース部材の前記8つの六角形面のうち、前記一対の正六角形面以外の6つの六角形面は、扁平した六角形面の形状を有し、前記6つの四角形面は、長方形面の形状を有し、前記扁平した六角形面の外周縁または前記長方形面の外周縁に配置される複数の辺のうち、最長寸法を有する長辺と、最短寸法を有する短辺との寸法比が、2以上である、態様1に記載の椅子。
【0023】
上記構成のように、ベース部材が扁平したケルビン14面体の外形形状を有し、上記寸法比が2以上であると、ベース部材が椅子の各パーツ(座面部、脚部及び背もたれ部)により適した形状となる。
【0024】
〔本発明の態様3〕
互いに隣接して配置される前記ベース部材の対向する前記六角形面同士または前記四角形面同士が連結される、態様1または2に記載の椅子。
【0025】
この場合、連結するベース部材同士の位置決めが容易であり、組み立て作業がしやすい。詳しくは、ケルビン14面体の互いに連結される六角形面同士または四角形面同士の辺(稜線)や角(頂点)を利用して簡単に位置決めをすることができ、組み立て作業が簡素化される。
【0026】
〔本発明の態様4〕
前記座面部は、1つの前記ベース部材により構成される、態様1から3のいずれか1つに記載の椅子。
【0027】
この場合、座面部をシンプルに構成でき、かつ、使用者が座ったときの安定性を確保しやすい。
【0028】
〔本発明の態様5〕
前記脚部は、3つの前記ベース部材により構成される、態様1から4のいずれか1つに記載の椅子。
【0029】
この場合、脚部をシンプルに構成でき、かつ、椅子としての安定性を確保できる。
【0030】
〔本発明の態様6〕
前記ベース部材は、木材製、樹脂製、金属製、及びこれらを組み合わせた材料のいずれかからなる、態様1から5のいずれか1つに記載の椅子。
【0031】
本発明の椅子を構成するベース部材は、木材製、樹脂製、金属製、及びこれらを組み合わせた材料のいずれであってもよく、各材料において上述した作用効果を奏する。椅子に要求される様々な機能等に対応して、ベース部材の材料を適宜選定してよい。
【0032】
〔本発明の態様7〕
前記複数のベース部材には、貫通孔を有するベース部材が1つ以上含まれる、態様1から6のいずれか1つに記載の椅子。
【0033】
この場合、椅子を構成する複数のベース部材に、貫通孔が形成されたベース部材が含まれている。貫通孔を形成することでベース部材の軽量化を図ったり、材料使用量の低減を図ったりすることができる。さらに、貫通孔を利用してベース部材同士の連結作業をより簡単に行うことができる。
【0034】
また、ベース部材の貫通孔に、例えば柔軟性を有するクッション部材を嵌め入れて座面部や背もたれ部の一部とすることで、より座り心地のよい椅子を提供することが可能になる。また、クッション部材を交換するなどにより、クッション部材の硬さ、厚さ、触り心地等を使用者の好みに合わせて適宜調整することも可能である。
【発明の効果】
【0035】
本発明の前記態様の椅子によれば、椅子の安定性を良好に維持しつつ、鉛直方向や水平方向に対して傾斜するデザインを付与することが容易であり、座り心地がよく、椅子を構成するベース部材の数量を削減できて組み立てが簡単であり、耐荷重も高められる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、第1実施形態の椅子を構成する複数のベース部材の1つを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、ベース部材を示す斜視断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の椅子を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の椅子を示す上面図である。
【
図5】
図5(a)~(d)は、第1実施形態の椅子の組立手順を説明する斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の変形例の椅子を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の変形例の椅子を示す正面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の変形例の椅子を示す側面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の変形例の椅子を示す上面図である。
【
図14】
図14(a)は、第3実施形態の椅子を示す斜視図であり、
図14(b)は、第3実施形態の椅子を示す正面図であり、
図14(c)は、第3実施形態の椅子を示す側面図であり、
図14(d)は、第3実施形態の椅子を示す上面図である。
【
図15】
図15(a)は、第3実施形態の変形例の椅子を示す斜視図であり、
図15(b)は、第3実施形態の変形例の椅子を示す正面図であり、
図15(c)は、第3実施形態の変形例の椅子を示す側面図であり、
図15(d)は、第3実施形態の変形例の椅子を示す上面図である。
【
図16】
図16(a)は、第4実施形態の椅子を示す斜視図(クッション部材の図示は省略している)であり、
図16(b)は、第4実施形態の椅子を示す斜視図であり、
図16(c)は、第4実施形態の椅子を示す断面図である。
【
図17】
図17(a)は、第5実施形態の椅子を示す斜視図であり、
図17(b)は、第5実施形態の椅子を示す正面図であり、
図17(c)は、第5実施形態の椅子を示す側面図であり、
図17(d)は、第5実施形態の椅子を示す上面図である。
【
図18】
図18は、ベース部材の他の例(変形例)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の椅子10について、
図1~
図5を参照して説明する。
図3に示すように、本実施形態の椅子10は、互いに同じ外形形状を有する複数のベース部材1の組み合わせにより、座面部11、脚部12及び背もたれ部13が設けられている。なおベース部材1は、ブロック、基材、構成部品等と言い換えてもよい。ベース部材1は、例えば、木材製、樹脂製、金属製、及びこれらを組み合わせた材料のいずれかからなる。
【0038】
各ベース部材1は、ケルビン14面体または扁平したケルビン14面体(以下、単にケルビン14面体と呼ぶ場合がある)の外形形状を有する。ケルビン14面体は、切頂8面体とも呼ばれ、空間の密な充填に適した多面体である。
【0039】
図1に示すように、ベース部材1は、互いに反対方向を向く一対の正六角形面2A,2Bを含む8つの六角形面2A,2B,3A,3Bと、正方形面または長方形面からなる6つの四角形面4A,4Bと、を有する。なお本実施形態では、ベース部材1の外面を構成する複数の多角形面(六角形面及び四角形面)を、単に面などと呼ぶ場合がある。
【0040】
ここで、ベース部材1の外形をなすケルビン14面体について、
図1及び
図18を参照して説明する。
図1は、扁平したケルビン14面体を表しており、
図18は、扁平していないケルビン14面体(つまり正多面体としてのケルビン14面体)を表している。ケルビン14面体は、前記8つの六角形面2A,2B,3A,3Bと、前記6つの四角形面4A,4Bと、をその外面に有しており、つまり計14の面を有する多面体である。ケルビン14面体は、隣り合う面と面を接続する辺(稜線)を、計36辺有する。なお本実施形態において、ベース部材1の外形形状とは、少なくとも、前記36辺により形成される外枠の外形形状を指す。このため、前記外形形状は、フレーム形状等と言い換えてもよい。
【0041】
以下の説明では、一対の正六角形面2A,2B(一方の正六角形面2A及び他方の正六角形面2B)の各中心を通る仮想直線を中心軸Cとし、この中心軸Cが延びる方向を軸方向と呼ぶ。軸方向のうち、一方の正六角形面2Aから他方の正六角形面2Bへ向かう方向を軸方向他方側と呼び、他方の正六角形面2Bから一方の正六角形面2Aへ向かう方向を軸方向一方側と呼ぶ。
中心軸Cと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Cに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Cから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸C回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。
【0042】
ケルビン14面体が有する8つの六角形面2A,2B,3A,3Bのうち、軸方向において互いに反対側を向く一対の正六角形面2A,2Bは、それぞれ、中心軸Cと垂直な方向に広がる。また、8つの六角形面2A,2B,3A,3Bのうち、一対の正六角形面2A,2B以外の6つの六角形面3A,3Bは、一対の正六角形面2A,2Bの各外周縁同士を接続する外周面に配置される。外周面は、ケルビン14面体(ベース部材1)の外面のうち径方向外側を向く部分である。なお、前記6つの六角形面3A,3Bは、
図18に示すように正六角形面であってもよいし、
図1に示すように、軸方向の寸法が周方向の寸法よりも短い扁平した六角形面であってもよい。
【0043】
また、ケルビン14面体が有する6つの四角形面4A,4Bは、外周面に配置される。
図1に示すように、四角形面4A,4Bが長方形面である場合、各四角形面4A,4Bは、軸方向の寸法が周方向の寸法よりも短い扁平した長方形面であってもよい。また、
図18に示す各四角形面4A,4Bは、正方形面である。
【0044】
より詳しくは、一対の正六角形面2A,2B以外の6つの六角形面3A,3Bのうち3つの六角形面3A、及び、6つの四角形面4A,4Bのうち3つの四角形面4Aは、ケルビン14面体の外周面において軸方向一方側の部分に配置され、周方向に交互に並んで配列する。これら3つの六角形面3A及び3つの四角形面4Aは、一方の正六角形面2Aの外周縁をなす6辺にそれぞれ接続される。
【0045】
また、一対の正六角形面2A,2B以外の6つの六角形面3A,3Bのうち他の3つの六角形面3B、及び、6つの四角形面4A,4Bのうち他の3つの四角形面4Bは、ケルビン14面体の外周面において軸方向他方側の部分に配置され、周方向に交互に並んで配列する。これら3つの六角形面3B及び3つの四角形面4Bは、他方の正六角形面2Bの外周縁をなす6辺にそれぞれ接続される。
【0046】
ケルビン14面体の外周面において、軸方向一方側の部分に配置される六角形面3Aと、軸方向他方側の部分に配置される六角形面3Bとは、互いに周方向位置がずらされており、周方向において交互に配列する。軸方向一方側の部分に配置される六角形面3Aと、軸方向他方側の部分に配置される六角形面3Bとは、互いに接続される。また、ケルビン14面体の外周面において、軸方向一方側の部分に配置される四角形面4Aと、軸方向他方側の部分に配置される四角形面4Bとは、互いに周方向位置がずらされており、周方向において交互に配列する。
【0047】
ケルビン14面体の外周面において、軸方向一方側の部分に配置される六角形面3Aと、軸方向他方側の部分に配置される四角形面4Bとは、軸方向に並んで配置され、互いに接続される。また、ケルビン14面体の外周面において、軸方向一方側の部分に配置される四角形面4Aと、軸方向他方側の部分に配置される六角形面3Bとは、軸方向に並んで配置され、互いに接続される。
【0048】
図1に示すように本実施形態では、各ベース部材1が、扁平したケルビン14面体の外形形状を有している。すなわち、各ベース部材1は、中心軸Cと垂直な方向に広がる板状をなしている。具体的に、ベース部材1の8つの六角形面2A,2B,3A,3Bのうち、一対の正六角形面2A,2B以外の6つの六角形面3A,3Bは、扁平した六角形面の形状を有している。また、6つの四角形面4A,4Bは、長方形面(扁平した四角形面)の形状を有している。
【0049】
詳しくは、扁平した六角形面3A,3Bの外周縁または長方形面4A,4Bの外周縁に配置される複数の辺5,6のうち、最長寸法を有する長辺5と、最短寸法を有する短辺6との寸法比が、2以上である。本実施形態においては、例えば、長辺5の寸法が225mmであり、短辺6の寸法が45mmであり、長辺5と短辺6との寸法比が5とされている。すなわち、長辺5の寸法:短辺6の寸法が、5:1である。
【0050】
なお、本実施形態において、正六角形面2A(または2B)の外周縁を構成する6辺(6つの長辺5)のうち、互いに平行に延びる一対の辺同士の間の距離は、例えば、389.7mmである。また、一対の正六角形面2A,2B間の軸方向寸法、すなわちベース部材1の厚さ寸法は、例えば、110.2mmである。
ただし、上述したベース部材1の各寸法等は、あくまで一例であり、本実施形態に限定されるものではない。
【0051】
また、
図2に示すように、正六角形面2Aと、正六角形面2Aに接続される六角形面3Aとの間に形成される角度θ1は、109.471°である。同様に、正六角形面2Bと、正六角形面2Bに接続される六角形面3Bとの間に形成される角度θ1は、109.471°である。
【0052】
また、正六角形面2Aと、正六角形面2Aに接続される四角形面4Aとの間に形成される角度θ2は、125.264°である。同様に、正六角形面2Bと、正六角形面2Bに接続される四角形面4Bとの間に形成される角度θ2は、125.264°である。
角度θ1,θ2は、上記長辺5と短辺6との寸法比の大きさに関わらず、それぞれ一定の値となる。
【0053】
そして、
図3及び
図4に示すように、本実施形態の椅子10は、互いに隣接して配置されるベース部材1の対向する面同士が連結されている。詳しくは、互いに隣接して配置されるベース部材1の対向する六角形面3A,3B同士または四角形面4A,4B同士が連結される。特に図示しないが、ベース部材1の対向する面同士は、例えば、金属製の補強材を介し、ボルト・ナット等の締結部材や接着剤などにより連結されて固定されている。なお、ベース部材1が金属製の場合には、溶接等によりベース部材1同士を連結してもよい。
【0054】
ここで、本実施形態では、各図に3次元直交座標系(XYZ直交座標系)を設定し、椅子10の各構成について説明する。
各図においてX軸方向は、椅子10の前後方向に相当する。+X側は前側に相当し、-X側は後側に相当する。また、各図においてY軸方向は、椅子10の左右方向に相当する。+Y側は左側に相当し、-Y側は右側に相当する。また、各図においてZ軸方向は、椅子10の上下方向に相当する。+Z側は上側に相当し、-Z側は下側に相当する。
【0055】
椅子10が備える座面部11、脚部12及び背もたれ部13、ならびに、椅子10の組立手順について説明する。
まず、座面部11となるベース部材1を用意する。
図3~
図5(a)に示すように、本実施形態において座面部11は、1つのベース部材1により構成される。すなわち座面部11は、1つのベース部材1を有する。座面部11を構成するベース部材1は、その中心軸Cが上下方向に延びて配置される。座面部11の正六角形面2A,2B(つまり座面)は、例えば、椅子10が載置される床面等と平行に配置され、水平方向に広がる。
【0056】
次に、座面部11に脚部12を連結する。本実施形態において脚部12は、3つのベース部材1により構成される。すなわち脚部12は、3つのベース部材1を有する。脚部12を構成する3つのベース部材1は、座面部11を構成するベース部材1(以下、単に座面部11と呼ぶ場合がある)の外周面に連結され、周方向に等ピッチで配置される。すなわち、脚部12の3つのベース部材1は、座面部11の中心軸Cを中心とする周方向において、120°ピッチで配列する。
【0057】
脚部12を構成する3つのベース部材1(以下、単に脚部12と呼ぶ場合がある)のうち1つは、
図5(a)に示すように、座面部11の前部に接続される。脚部12を構成する3つのベース部材1のうち他の2つは、
図5(b)、(c)に示すように、座面部11の左後部及び右後部に接続される。
【0058】
座面部11のベース部材1と、脚部12の3つのベース部材1とは、各ベース部材1の外周面に配置される四角形面4Aまたは4B同士が連結されることにより、互いに固定されている。この場合、座面部11の正六角形面2Aまたは2Bと、脚部12の正六角形面2Aまたは2Bとの間に形成される角度は、360°-(θ2+θ2)=109.472°となる(
図8の角度θ12を参照)。
【0059】
また、脚部12の各ベース部材1の下端に位置して下側を向く六角形面3Aまたは3B(つまり最下面)は、座面部11の正六角形面2A,2Bと平行に配置される。すなわち、脚部12のうち、椅子10が載置される床面等と接触する最下面は、この床面等と平行に配置され、水平方向に広がる。これにより、椅子10の安定性が確保される。
【0060】
次に、座面部11に背もたれ部13を連結する。
図3及び
図4に示すように、本実施形態において背もたれ部13は、2つのベース部材1により構成される。すなわち背もたれ部13は、2つのベース部材1を有する。2つのベース部材1は、上下方向に並んで配置される。より詳しくは、前記2つのベース部材1は、上側へ向かうに従い後側に位置するように、鉛直方向に対して傾斜する向きに並んでいる。すなわち、背もたれ部13は、鉛直方向に対して傾斜する方向に延びている。
【0061】
背もたれ部13を構成する2つのベース部材1(以下、単に背もたれ部13と呼ぶ場合がある)のうち、下側に位置する1つは、
図5(d)に示すように、座面部11の後部に接続される。
【0062】
座面部11のベース部材1と、背もたれ部13のうち下側に位置する1つのベース部材1とは、各ベース部材1の外周面に配置される四角形面4Aまたは4B同士が連結されることにより、互いに固定されている。この場合、座面部11の正六角形面2Aまたは2Bと、背もたれ部13の正六角形面2Aまたは2Bとの間に形成される角度は、360°-(θ2+θ2)=109.472°となる(
図8の角度θ13を参照)。
【0063】
背もたれ部13を構成する2つのベース部材1のうち、上側に位置する他の1つは、
図3に示すように、前記下側に位置する1つのベース部材1の上部に接続される。
背もたれ部13の2つのベース部材1同士は、各ベース部材1の外周面に配置される六角形面3Aまたは3B同士が連結されることにより、互いに固定されている。この場合、前記2つのベース部材1の正六角形面2Aまたは2B同士は、互いに平行に配置される(
図8を参照)。
【0064】
また、背もたれ部13のうち上側のベース部材1の上端に位置して上側を向く六角形面3Aまたは3B(つまり最上面)は、座面部11の正六角形面2A,2Bと平行に配置される。
【0065】
なお、本実施形態においては、座面部11に脚部12を連結した後、背もたれ部13を連結する例を挙げたが、これらの連結の順序は逆でもよい。あるいは、座面部11に対して脚部12及び背もたれ部13を同時に連結してもよい。
【0066】
以上説明した本実施形態の椅子10では、椅子10の各パーツ(座面部11、脚部12及び背もたれ部13)を構成する複数のベース部材1の外形形状が、互いに同一であり、かつ、ケルビン14面体(扁平したケルビン14面体を含む)とされている。
【0067】
すなわち、本実施形態の椅子10は、ケルビン14面体の外形形状を有する複数のベース部材1を組み合わせて構成されており、詳しくは、互いに隣接配置されるベース部材1が、互いに対向する面同士を連結している。ベース部材1は、連結される面(鉛直方向に対して傾斜した面)によって荷重を受けることができるため、従来の椅子のような凹部と凸部の嵌合による連結構造に比べて、大きな荷重に耐え得る椅子を提供できる。さらに、本実施形態のベース部材1はケルビン14面体の外形形状を有するため、互いに同じ外形形状を持つ複数のベース部材1を相互に固定することで、組み立て後のこれらベース部材1の固定状態がより安定する。
【0068】
また、従来の椅子のように、直方体形状や立方体形状の複数のブロック(ベース部材)を組み合わせてなる構成に比べて、本実施形態によれば、椅子10の安定性を良好に維持したまま、鉛直方向や水平方向に対して傾斜するデザインを付与することが容易である。具体的には、背もたれ部13を鉛直方向に対して傾斜させて配置することができ、座り心地がよい。またケルビン14面体は、空間を密に充填する構造を有するため、組み合わせ方により形状の自由度が高い椅子10を製作可能である。したがって、椅子10のデザイン性が高められる。
【0069】
また、椅子10の各パーツ(座面部11、脚部12及び背もたれ部13)を、それぞれ少数のベース部材1によって構成することが可能であり、ベース部材1の総使用数量を少なく抑えることができる。このため、組み立て作業が容易であり、生産効率が向上する。
【0070】
また、互いに同一形状の(すなわち共通品の)複数のベース部材1の組み合わせによって椅子10が構成されるため、ベース部材1の製造コストを削減可能である。またベース部材1は、空間を密に充填する構造を有するため、部品保管時の省スペース化を図ることができる。
【0071】
以上より、本実施形態の椅子10によれば、椅子10の安定性を良好に維持しつつ、鉛直方向や水平方向に対して傾斜するデザインを付与することが容易であり、座り心地がよく、椅子10を構成するベース部材1の数量を削減できて組み立てが簡単であり、耐荷重も高められる。
【0072】
また本実施形態では、各ベース部材1が、扁平したケルビン14面体の外形形状を有している。ベース部材1の8つの六角形面2A,2B,3A,3Bのうち、一対の正六角形面2A,2B以外の6つの六角形面3A,3Bは、扁平した六角形面の形状を有し、6つの四角形面4A,4Bは、長方形面の形状を有している。そして、扁平した六角形面3A,3Bの外周縁または長方形面4A,4Bの外周縁に配置される複数の辺のうち、最長寸法を有する長辺5と、最短寸法を有する短辺6との寸法比が、2以上である。
上記構成のように、ベース部材1が扁平したケルビン14面体の外形形状を有し、上記寸法比が2以上であると、ベース部材1が椅子10の各パーツ(座面部11、脚部12及び背もたれ部13)により適した形状となる。
【0073】
また本実施形態では、互いに隣接して配置されるベース部材1の対向する六角形面3A,3B同士または四角形面4A,4B同士が連結される。
この場合、連結するベース部材1同士の位置決めが容易であり、組み立て作業がしやすい。詳しくは、ケルビン14面体の互いに連結される六角形面3A,3B同士または四角形面4A,4B同士の辺(稜線)や角(頂点)を利用して簡単に位置決めをすることができ、組み立て作業が簡素化される。
【0074】
また本実施形態では、椅子10の座面部11が、1つのベース部材1により構成されている。
この場合、座面部11をシンプルに構成でき、かつ、使用者が座ったときの安定性を確保しやすい。
【0075】
また本実施形態では、椅子10の脚部12が、3つのベース部材1により構成されている。
この場合、脚部12をシンプルに構成でき、かつ、椅子10としての安定性を確保できる。
【0076】
また、椅子10を構成するベース部材1は、本実施形態のように木材製、樹脂製、金属製、及びこれらを組み合わせた材料のいずれであってもよく、各材料において上述した作用効果を奏する。椅子10に要求される様々な機能等に対応して、ベース部材1の材料を適宜選定してよい。
【0077】
ここで、第1実施形態の変形例の椅子10について、
図6~
図9を参照して説明する。なお、変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0078】
図6~
図9に示すように、この変形例の椅子10が備える複数のベース部材1には、貫通孔7を有するベース部材1が1つ以上含まれる。具体的に、図示の例では、脚部12を構成する3つのベース部材1と、背もたれ部13を構成する2つのベース部材1とに、それぞれ貫通孔7が設けられている。
【0079】
脚部12の3つのベース部材1は、それぞれ、ベース部材1を軸方向(厚さ方向)に貫通する六角形孔状の貫通孔7a(7)を有する。貫通孔7aは、ベース部材1の一対の正六角形面2A,2Bに開口している。貫通孔7aは、脚部12の各ベース部材1に1つ設けられる。
【0080】
背もたれ部13の2つのベース部材1は、それぞれ、ベース部材1を軸方向に貫通する四角形孔状の貫通孔7b(7)を有する。貫通孔7bは、ベース部材1の一対の正六角形面2A,2Bに開口している。貫通孔7bは、背もたれ部13の各ベース部材1に複数設けられる。複数の貫通孔7bには、互いに開口寸法や開口面積が異なる複数種類の貫通孔7bが含まれる。
【0081】
以上説明した変形例では、椅子10を構成する複数のベース部材1に、貫通孔7が形成されたベース部材1が含まれている。貫通孔7を形成することでベース部材1の軽量化を図ったり、材料使用量の低減を図ったりすることができる。さらに、貫通孔7を利用してベース部材1同士の連結作業をより簡単に行うことができる。
【0082】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の椅子20について、
図10~
図13を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態及び変形例(以下、前述の実施形態等と省略する)と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。
【0083】
本実施形態の椅子20は、互いに隣接して配置されるベース部材1同士の連結する面が、前述の実施形態等で説明した椅子10とは異なる。詳しくは、座面部11と脚部12との連結面、及び、座面部11と背もたれ部13との連結面が、前述の実施形態等と異なる。
【0084】
図10~
図13に示すように、具体的に本実施形態では、座面部11のベース部材1と、脚部12の3つのベース部材1とが、各ベース部材1の外周面に配置される六角形面3Aまたは3B同士が連結されることにより、互いに固定されている。この場合、座面部11の正六角形面2Aまたは2Bと、脚部12の正六角形面2Aまたは2Bとの間に形成される角度θ14は、360°-(θ1+θ1)=141.058°となる。
【0085】
また、座面部11のベース部材1と、背もたれ部13のうち下側に位置する1つのベース部材1とは、各ベース部材1の外周面に配置される六角形面3Aまたは3B同士が連結されることにより、互いに固定されている。この場合、座面部11の正六角形面2Aまたは2Bと、背もたれ部13の正六角形面2Aまたは2Bとの間に形成される角度θ15は、360°-(θ1+θ1)=141.058°となる。
【0086】
以上説明した本実施形態の椅子20においても、前述の実施形態等と同様の作用効果が得られる。
また本実施形態においては、例えばリクライニングシートのように、使用者が臥位(仰臥位)に近い姿勢で椅子20に座ることができ、前述の実施形態等に比べてよりリラックス可能な椅子20を提供できる。
【0087】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態の椅子30について、
図14(a)~(d)を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態等と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。
【0088】
図14(a)~(d)に示すように、本実施形態の椅子30は、脚部12が3つ以上のベース部材1により構成されており、具体的には、6つのベース部材1により構成される。前記6つのベース部材1のうち、上側に位置する3つのベース部材1は、座面部11のベース部材1に連結される。前記6つのベース部材1のうち、下側に位置する他の3つのベース部材1は、前記上側に位置する3つのベース部材1に連結される。
【0089】
前記下側に位置する他の3つのベース部材1は、脚部12の下側部分のうち、左前部、右前部及び後部に配置される。脚部12のうち下側の各ベース部材1は、それぞれ、周方向に隣り合う上側の一対のベース部材1間に配置され、前記一対のベース部材1と連結されている。具体的に、脚部12のうち下側のベース部材1と、上側のベース部材1とは、各ベース部材1の外周面に配置される四角形面4Aまたは4B同士が連結されることにより、互いに固定されている。
【0090】
以上説明した本実施形態の椅子30においても、前述の実施形態等と同様の作用効果が得られる。
また本実施形態では、座面部11の上下方向の位置(つまり座面高さ)を前述の実施形態等よりも高く設定することができる。このように、脚部12を構成するベース部材1の数量を適宜設定することで、使用者の好みに合わせた座面高さとすることができる。
【0091】
ここで、第3実施形態の変形例の椅子30について、
図15(a)~(d)を参照して説明する。この変形例においても、前述の実施形態等と同じ構成には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0092】
図15(a)~(d)に示すように、この変形例の椅子30が備える複数のベース部材1には、貫通孔7を有するベース部材1が1つ以上含まれており、具体的には、すべてのベース部材1に貫通孔7が設けられている。なおこの変形例においては、複数のベース部材1が、すべて同一の形状を有している。すなわち、複数のベース部材1は、共通品である。
【0093】
貫通孔7は、各ベース部材1に複数設けられる。複数の貫通孔7には、前述した貫通孔7aと、ベース部材1の外周面に配置される六角形面3A,3Bに開口する貫通孔7cと、が含まれる。貫通孔7cは、扁平した六角形孔状である。貫通孔7cは、1つのベース部材1の外周面に、周方向に並んで6つ設けられている。
【0094】
この変形例によれば、複数の貫通孔7a,7cを設けることでベース部材1をより軽量化したり、より材料使用量を低減したりすることが可能である。
【0095】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態の椅子40について、
図16(a)~(c)を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態等と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。
【0096】
図16(a)~(c)に示すように、本実施形態の椅子40は、複数のベース部材1と、複数のベース部材1の少なくとも1つに取り付けられるクッション部材8と、を備える。クッション部材8は、例えば柔軟性を有する素材からなり、図示の例では、略六角形板状をなす。また、本実施形態では椅子40に、クッション部材8が複数(2つ)設けられている。なお、
図16(a)においては、クッション部材8の図示を省略している。
【0097】
椅子40が備える複数のベース部材1は、すべて同一の形状を有している。すなわち、本実施形態においても複数のベース部材1は、共通品である。各ベース部材1は、貫通孔7a,7cを有する。また、本実施形態の椅子40は、背もたれ部13が1つのベース部材1により構成される。
【0098】
座面部11のベース部材1の貫通孔7aには、クッション部材8が嵌め入れられている。また、背もたれ部13のベース部材1の貫通孔7aにも、クッション部材8が嵌め入れられている。すなわち、本実施形態の座面部11及び背もたれ部13は、それぞれ、クッション部材8を有している。各クッション部材8は、座面部11及び背もたれ部13の各ベース部材1に対して、着脱可能に取り付けられていてもよいし、着脱不能に固定されていてもよい。
【0099】
以上説明した本実施形態の椅子40においても、前述の実施形態等と同様の作用効果が得られる。
また本実施形態では、ベース部材1の貫通孔7a(7)に、例えば柔軟性を有するクッション部材8を嵌め入れて座面部11や背もたれ部13の一部とすることで、より座り心地のよい椅子40を提供することが可能になる。また、クッション部材8を交換するなどにより、クッション部材8の硬さ、厚さ、触り心地等を使用者の好みに合わせて適宜調整することも可能である。
【0100】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態の椅子50について、
図17(a)~(d)を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態等と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。
【0101】
図17(a)~(d)に示すように、本実施形態の椅子50は、2人(複数人)掛け用の椅子50である。椅子50は、座面部11と、座面連結部15と、脚部12と、背もたれ部13と、背もたれ連結部16と、を備える。
【0102】
本実施形態では、座面部11が2つのベース部材1を有する。前記2つのベース部材1は、左右方向に並んで配置される。前記2つのベース部材1は、左右方向に互いに間隔をあけて配置される。
【0103】
座面連結部15は、1つのベース部材1を有する。座面連結部15のベース部材1は、座面部11の2つのベース部材1間に配置され、前記2つのベース部材1と接続される。すなわち、座面連結部15は、座面部11の2つのベース部材1同士を連結している。
【0104】
座面部11の2つのベース部材1と、座面連結部15のベース部材1とは、各ベース部材1の外周面に配置される六角形面3Aまたは3B同士が連結されることにより、互いに固定されている。座面部11のベース部材1の正六角形面2Aまたは2Bと、座面連結部15のベース部材1の正六角形面2Aまたは2Bとは、互いに平行に配置される。
【0105】
脚部12は、4つのベース部材1を有する。前記4つのベース部材1のうち2つは、座面部11のうち左側に位置するベース部材1の前部と左後部とに連結される。前記4つのベース部材1のうち他の2つは、座面部11のうち右側に位置するベース部材1の前部と右後部とに連結される。
【0106】
背もたれ部13は、4つのベース部材1を有する。前記4つのベース部材1のうち2つは、座面部11のうち左側に位置するベース部材1の後部から上側かつ後側へ向けて、鉛直方向に対して傾斜する方向に並んで配置される。前記4つのベース部材1のうち他の2つは、座面部11のうち右側に位置するベース部材1の後部から上側かつ後側へ向けて、鉛直方向に対して傾斜する方向に並んで配置される。
【0107】
背もたれ連結部16は、1つのベース部材1を有する。背もたれ連結部16のベース部材1は、背もたれ部13の4つのベース部材1間に配置され、前記4つのベース部材1と接続される。すなわち、背もたれ連結部16は、背もたれ部13の4つのベース部材1同士を連結している。
【0108】
背もたれ部13の4つのベース部材1と、背もたれ連結部16のベース部材1とは、各ベース部材1の外周面に配置される六角形面3Aまたは3B同士が連結され、四角形面4Aまたは4B同士が連結されることにより、互いに固定されている。背もたれ部13のベース部材1の正六角形面2Aまたは2Bと、背もたれ連結部16のベース部材1の正六角形面2Aまたは2Bとは、互いに平行に配置される。
【0109】
以上説明した本実施形態の椅子50においても、前述の実施形態等と同様の作用効果が得られる。
また本実施形態では、1つの椅子50を複数の使用者によって同時に使用することができる。
【0110】
本発明は前述の実施形態等に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0111】
前述の実施形態等では、ベース部材1の長辺5と短辺6の寸法比が5であり、すなわち、長辺:短辺=5:1である例を挙げたが、これに限らない。前記寸法比は、5未満、または5を超えてもよい。また、
図18にベース部材1の他の例(変形例)として示すように、ベース部材1の各辺(長辺5と短辺6)の寸法が、互いに等しくてもよい。この場合、ベース部材1は、正多面体のケルビン14面体の外形形状を有する。
【0112】
前述の実施形態等では、1人掛け用の椅子10,20,30,40または2人掛け用の椅子50を例に挙げて説明したが、これらに限らない。特に図示しないが、本発明の椅子は、3人以上が使用できる構成(つまり3人掛け以上)としてもよい。
【0113】
特に図示しないが、本発明の椅子は、さらに、ベース部材1により構成される肘掛け部を備えていてもよい。この場合、肘掛け部は、例えば座面部11に連結される。
【0114】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の椅子によれば、椅子の安定性を良好に維持しつつ、鉛直方向や水平方向に対して傾斜するデザインを付与することが容易であり、座り心地がよく、椅子を構成するベース部材の数量を削減できて組み立てが簡単であり、耐荷重も高められる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0116】
1…ベース部材、2A,2B…正六角形面(六角形面)、3A,3B…六角形面、4A,4B…四角形面、5…長辺、6…短辺、7,7a,7b,7c…貫通孔、10,20,30,40,50…椅子、11…座面部、12…脚部、13…背もたれ部