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特開2024-78053三次元造形物の製造方法、および、情報処理装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078053
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法、および、情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20240603BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240603BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20240603BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240603BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240603BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240603BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/118
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190379
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 茂
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AR07
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL62
4F213WL85
(57)【要約】
【課題】サポート構造の部分的な欠落によって造形物の精度に影響が及ぶことを抑制する。
【解決手段】三次元造形物の製造方法は、経路データを含む造形データを生成する第1工程と、造形データに基づいて造形物及びサポート構造を造形する第2工程とを有する。サポート構造の少なくとも一の層内には、造形物の上方または下方で造形物に接触する接触層と、接触層とは異なる非接触層とが互いに隣り合って配置される。第1工程は、造形物の形状データに基づいて、サポート領域として、接触層を造形する第1領域と非接触層を造形する第2領域とを特定する特定工程と、経路生成条件に基づいてサポート領域内に経路データを生成するデータ生成工程とを有する。データ生成工程では、特定された第1領域の幅が、経路生成条件に基づいて経路データを生成するのに不足する場合、第1領域内に経路データが生成されるように第1領域を隣り合う第2領域まで拡張する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層を積層することによって三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
ノズルが造形材料を吐出しつつ移動する経路を表した経路データを含む造形データを生成する第1工程と、
前記造形データに基づいて、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する第2工程と、を有し、
前記サポート構造の少なくとも一の層内には、前記造形物の上方または下方で前記造形物に接触する接触層と、前記接触層とは異なる非接触層と、が互いに隣り合って配置され、
前記第1工程は、
前記造形物の形状を表すデータに基づいて、前記サポート構造を造形するサポート領域として、前記接触層を造形する第1領域と、前記非接触層を造形する第2領域と、を特定する特定工程と、
予め定められた経路生成条件に基づいて、前記サポート領域内に前記経路データを生成するデータ生成工程と、を有し、
前記データ生成工程では、前記特定工程で特定された前記第1領域の幅が、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに不足する場合、前記第1領域内に前記経路データが生成されるように、前記第1領域を、前記第1領域に隣り合う前記第2領域まで拡張する、三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記データ生成工程において、前記第1領域が拡張されることによって縮小された前記第2領域の幅が、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに不足する場合、拡張された前記第1領域を更に拡張することによって、前記第2領域を消滅させる、三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記データ生成工程において、前記特定工程で特定された前記第2領域の幅が、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに不足する場合、前記第1領域を拡張することによって、前記第2領域を消滅させる、三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記特定工程において、複数の前記第1領域を特定し、
前記データ生成工程において、前記特定工程で特定された複数の前記第1領域のうち、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに幅が不足する前記第1領域を前記第2領域まで拡張し、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成できる幅を有する前記第1領域を拡張しない、三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記データ生成工程では、前記第1領域を拡張する場合に、前記第1領域および前記第2領域を、前記特定工程で特定された前記サポート領域の外へ拡張しない、三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記サポート構造の少なくとも一の層は、前記接触層と、前記非接触層と、のいずれかのみを有する単独層であり、
前記データ生成工程において、前記単独層を造形する単独領域の幅が、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに不足する場合、前記単独領域内に前記経路データが生成されるように、前記単独領域を前記特定工程で特定された前記サポート領域の外へ拡張する、三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
造形材料を吐出して層を積層することで、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する三次元造形装置で用いられる造形データを生成する、情報処理装置であって、
前記造形データに含まれ、前記三次元造形装置のノズルが前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を表した経路データ、を生成するデータ生成部を備え、
前記データ生成部は、
前記造形物の形状を表すデータに基づいて、前記サポート構造を造形するサポート領域として、前記造形物の上方または下方で前記造形物に接触する接触層を造形する第1領域と、前記接触層とは異なる非接触層を造形する第2領域と、を特定する特定処理と、
予め定められた経路生成条件に基づいて、前記サポート領域内に前記経路データを生成するデータ生成処理と、を実行し、
前記サポート構造の少なくとも一の層内には、前記接触層と、前記非接触層と、が互いに隣り合って配置され、
前記データ生成部は、前記データ生成処理において、前記特定処理で特定された前記第1領域の幅が、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに不足する場合、前記第1領域内に前記経路データが生成されるように、前記第1領域を、前記第1領域に隣り合う前記第2領域まで拡張する、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形物の製造方法、および、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物の製造方法に関し、特許文献1には、押出堆積によって、第1の層構造体と支持構造体との上に第2の層構造体を形成し、その後、支持構造体を除去することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2021-511990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献のように、造形物を支持するサポート構造を形成することで、造形物の形状崩れを防いで精度よく造形物を造形できる。ここで、上記文献のようにサポート構造を形成する場合、サポート構造の形状や造形条件によっては、サポート構造を造形するためのノズルの移動経路を意図したとおりに設定できず、結果としてサポート構造の一部が欠落することがある。サポート構造の一部が欠落すると、造形物の精度に影響が及ぶ場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、層を積層することによって三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、ノズルが造形材料を吐出しつつ移動する経路を表した経路データを含む造形データを生成する第1工程と、前記造形データに基づいて、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する第2工程と、を有する。前記サポート構造の少なくとも一の層内には、前記造形物の上方または下方で前記造形物に接触する接触層と、前記接触層とは異なる非接触層と、が互いに隣り合って配置される。前記第1工程は、前記造形物の形状を表すデータに基づいて、前記サポート構造を造形するサポート領域として、前記接触層を造形する第1領域と、前記非接触層を造形する第2領域と、を特定する特定工程と、予め定められた経路生成条件に基づいて、前記サポート領域内に前記経路データを生成するデータ生成工程と、を有する。前記データ生成工程では、前記特定工程で特定された前記第1領域の幅が、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに不足する場合、前記第1領域内に前記経路データが生成されるように、前記第1領域を、前記第1領域に隣り合う前記第2領域まで拡張する。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、造形材料を吐出して層を積層することで、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する三次元造形装置で用いられる造形データを生成する、情報処理装置が提供される。この情報処理装置は、前記造形データに含まれ、前記三次元造形装置のノズルが前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を表した経路データ、を生成するデータ生成部を備える。前記データ生成部は、前記造形物の形状を表すデータに基づいて、前記サポート構造を造形するサポート領域として、前記造形物の上方または下方で前記造形物に接触する接触層を造形する第1領域と、前記接触層とは異なる非接触層を造形する第2領域と、を特定する特定処理と、予め定められた経路生成条件に基づいて、前記サポート領域内に前記経路データを生成するデータ生成処理と、を実行する。前記サポート構造の少なくとも一の層内には、前記接触層と、前記非接触層と、が互いに隣り合って配置される。前記データ生成部は、前記データ生成処理において、前記特定処理で特定された前記第1領域の幅が、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに不足する場合、前記第1領域内に前記経路データが生成されるように、前記第1領域を、前記第1領域に隣り合う前記第2領域まで拡張する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】三次元造形システムの概略構成を示す説明図。
図2】フラットスクリューの下面側の概略構成を示す斜視図。
図3】バレルの上面側を示す概略平面図。
図4】三次元造形装置が造形物を造形する様子を模式的に示す説明図。
図5】情報処理装置の概略構成を示す説明図。
図6】造形処理のフローチャート。
図7】特定処理のフローチャート。
図8A】造形物の形状の例を示す図。
図8B】サポート構造の形状の例を示す図。
図9A】特定処理を説明する第1の図。
図9B】特定処理を説明する第2の図。
図10】第1実施形態におけるデータ生成処理のフローチャート。
図11A】第1実施形態におけるデータ生成処理を説明する第1の図。
図11B】第1実施形態におけるデータ生成処理を説明する第2の図。
図11C】第1実施形態におけるデータ生成処理を説明する第3の図。
図12】データ生成部によって生成される造形データを視覚化した例を示す図。
図13】第2実施形態におけるデータ生成処理のフローチャート。
図14A】第2実施形態におけるデータ生成処理を説明する第1の図。
図14B】第2実施形態におけるデータ生成処理を説明する第2の図。
図14C】第2実施形態におけるデータ生成処理を説明する第3の図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形システム10の概略構成を示す説明図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向及びY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、鉛直上向きに沿った方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、方向の向きを特定する場合には、各図において矢印が指し示す方向を「+」、その反対の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。また、X方向およびY方向に沿った平面のことを「XY平面」とも呼ぶ。XY平面に沿った方向のことをXY方向とも呼ぶ。
【0009】
三次元造形システム10は、三次元造形装置100と情報処理装置400とを備えている。本実施形態の三次元造形装置100は、材料押出方式によって造形物を造形する装置である。三次元造形装置100は、三次元造形装置100の各部を制御するための制御部300を備えている。制御部300と情報処理装置400とは、相互に通信可能に接続されている。以下では、造形物のことを造形物本体とも呼ぶ。
【0010】
三次元造形装置100は、造形材料を生成して吐出する造形部110と、造形物の基台となる造形用のステージ210と、造形材料の吐出位置を制御する移動機構230とを備える。
【0011】
造形部110は、制御部300の制御下において、固体状態の材料を可塑化させた造形材料をステージ210上に吐出する。造形部110は、造形材料に転化される前の原材料の供給源である材料供給部20と、原材料を造形材料へと転化させる可塑化部30と、造形材料を吐出する吐出部60とを備える。
【0012】
材料供給部20は、可塑化部30に、原材料MRを供給する。材料供給部20は、例えば、原材料MRを収容するホッパーによって構成される。材料供給部20は、連通路22を介して、可塑化部30に接続されている。原材料MRは、ペレットや粉末等の形態で材料供給部20に投入される。本実施形態では、ペレット状のABS樹脂の材料が用いられる。
【0013】
可塑化部30は、材料供給部20から供給された原材料MRを可塑化させて流動性を発現させたペースト状の造形材料を生成し、吐出部60へと導く。本実施形態において「可塑化」とは 、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0014】
可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、バレル50と、を有する。フラットスクリュー40は、ローターあるいはスクロールとも呼ばれる。バレル50は、スクリュー対面部とも呼ばれる。
【0015】
フラットスクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。フラットスクリュー40の上面47は駆動モーター32に連結されており、フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。駆動モーター32は、制御部300の制御下において駆動する。なお、フラットスクリュー40は、減速機を介して駆動モーター32によって駆動されてもよい。
【0016】
図2は、フラットスクリュー40の下面48側の概略構成を示す斜視図である。図2に示したフラットスクリュー40は、技術の理解を容易にするため、図1に示した上面47と下面48との位置関係を、鉛直方向において逆向きとした状態で示されている。フラットスクリュー40は、その中心軸に沿った方向である軸線方向における長さが、軸線方向に垂直な方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。フラットスクリュー40は、その回転中心となる回転軸RXがZ方向に平行になるように配置される。
【0017】
フラットスクリュー40の、回転軸RXと交差する面である下面48には、渦状の溝部42が形成されている。上述した材料供給部20の連通路22は、フラットスクリュー40の側面から、当該溝部42に連通する。本実施形態では、溝部42は、凸条部43によって隔てられて3本分形成されている。なお、溝部42の数は、3本に限られず、1本でもよいし、2本以上であってもよい。溝部42は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0018】
図1に示すように、フラットスクリュー40の下面48は、バレル50の上面52に対面しており、フラットスクリュー40の下面48の溝部42と、バレル50の上面52との間には空間が形成される。フラットスクリュー40とバレル50との間のこの空間には、材料供給部20から図2に示した材料流入口44を通じて原材料MRが供給される。
【0019】
バレル50には、回転しているフラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRを加熱するためのバレルヒーター58が埋め込まれている。バレル50の中心には連通孔56が設けられている。
【0020】
図3は、バレル50の上面52側を示す概略平面図である。バレル50の上面52には、連通孔56に接続され、連通孔56から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝54が形成されている。なお、案内溝54の一端は、連通孔56に接続されていなくてもよい。また、案内溝54が省略されてもよい。
【0021】
フラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRは、溝部42内において可塑化されながら、フラットスクリュー40の回転によって溝部42に沿って流動し、造形材料としてフラットスクリュー40の中央部46へと導かれる。中央部46に流入した流動性を発現しているペースト状の造形材料は、バレル50の中心に設けられた連通孔56を介して吐出部60に供給される。なお、造形材料では、造形材料を構成する全ての種類の物質が可塑化していなくてもよい。造形材料は、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が可塑化することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0022】
図1の吐出部60は、造形材料を吐出するノズル61と、フラットスクリュー40とノズル開口62との間に設けられた造形材料の流路65と、造形材料の吐出を制御する吐出制御部77とを備える。
【0023】
ノズル61は、流路65を通じて、バレル50の連通孔56に接続されている。ノズル61は、可塑化部30において生成された造形材料を、先端のノズル開口62からステージ210に向かって吐出する。
【0024】
吐出制御部77は、流路65を開閉する吐出調整部70と、造形材料を吸引して一時的に貯留する吸引部75とを備える。
【0025】
吐出調整部70は、流路65内に設けられており、流路65内で回転することにより流路65の開度を変化させる。本実施形態において、吐出調整部70は、バタフライバルブによって構成されている。吐出調整部70は、制御部300による制御下において、第1駆動部74によって駆動される。第1駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。制御部300は、第1駆動部74を用いて、バタフライバルブの回転角度を制御することによって、可塑化部30からノズル61に流れる造形材料の流量、つまり、ノズル61から吐出される造形材料の吐出量を調整することができる。吐出調整部70は、造形材料の吐出量を調整可能であると共に、造形材料の流出のオン/オフを制御可能である。
【0026】
吸引部75は、流路65において吐出調整部70とノズル開口62との間に接続されている。吸引部75は、ノズル61からの造形材料の吐出停止時に、流路65中の造形材料を一時的に吸引することによって、造形材料がノズル開口62から糸を引くように垂れる尾引き現象を抑制する。本実施形態において、吸引部75は、プランジャーにより構成されている。吸引部75は、制御部300による制御下において、第2駆動部76によって駆動される。第2駆動部76は、例えば、ステッピングモーターや、ステッピングモーターの回転力をプランジャーの並進運動に変換するラックアンドピニオン機構等によって構成される。
【0027】
ステージ210は、ノズル61のノズル開口62に対向する位置に配置されている。第1実施形態では、ノズル61のノズル開口62に対向するステージ210の造形面211は、X,Y方向、すなわち水平方向に平行となるように配置される。ステージ210には、ステージ210上に吐出された造形材料が急激に冷却することを抑制するためのステージヒーター212が備えられている。ステージヒーター212は制御部300によって制御される。
【0028】
移動機構230は、制御部300の制御下において、ステージ210とノズル61との相対位置を変化させる。本実施形態では、ノズル61の位置が固定されており、移動機構230は、ステージ210を移動させる。移動機構230は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ210をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。本明細書において、特に断らない限り、ノズル61の移動とは、ノズル61や吐出部60をステージ210に対して相対的に移動させることを意味する。
【0029】
なお、他の実施形態では、移動機構230によってステージ210を移動させる構成の代わりに、ステージ210の位置が固定された状態で、移動機構230がステージ210に対してノズル61を移動させる構成が採用されてもよい。また、移動機構230によってステージ210をZ方向に移動させ、ノズル61をX,Y方向に移動させる構成や、移動機構230によってステージ210をX,Y方向に移動させ、ノズル61をZ方向に移動させる構成が採用されてもよい。これらの構成であっても、ノズル61とステージ210との相対的な位置関係が変更可能である。
【0030】
制御部300は、三次元造形装置100全体の動作を制御する制御装置である。制御部300は、1つ、又は、複数のプロセッサー310と、主記憶装置や補助記憶装置からなる記憶装置320と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。プロセッサー310は、記憶装置320に記憶されたプログラムを実行することによって、情報処理装置400から取得された造形データに従い、造形部110及び移動機構230を制御して、ステージ210上に造形物の造形を行う。なお、制御部300は、コンピューターによって構成される代わりに、回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0031】
図4は、三次元造形装置100が造形物を造形する様子を模式的に示す説明図である。三次元造形装置100では、上述したように、固体状態の原材料MRが可塑化されて造形材料MMが生成される。制御部300は、ステージ210の造形面211とノズル61との距離を保持したまま、ステージ210の造形面211に沿った方向に、ステージ210に対するノズル61の位置を変えながら、ノズル61から造形材料MMを吐出させる。ノズル61から吐出された造形材料MMは、ノズル61の移動方向に連続して堆積されていく。
【0032】
制御部300は、ノズル61の移動を繰り返して層MLを形成する。制御部300は、1つの層MLを形成した後、ステージ210に対するノズル61の位置を、Z方向に相対移動させる。そして、これまでに形成された層MLの上に、さらに層MLを積み重ねることによって造形物を造形していく。
【0033】
制御部300は、例えば、一層分の層MLを完了した場合のノズル61のZ方向への移動や、各層で独立する複数の造形領域がある場合には、ノズル61からの造形材料の吐出を一時的に中断させることがある。この場合、吐出調整部70によって流路65を閉塞させて、ノズル開口62からの造形材料MMの吐出を停止させ、吸引部75によって、ノズル61内の造形材料を一時的に吸引する。制御部300は、ノズル61の位置を変更した後、吸引部75内の造形材料を排出しつつ吐出調整部70によって流路65を開くことによって、変更後のノズル61の位置から造形材料MMの堆積を再開させる。
【0034】
図5は、情報処理装置400の概略構成を示す説明図である。情報処理装置400は、CPU410とメモリー420と記憶装置430と通信インターフェイス440と入出力インターフェイス450とがバス460によって相互に接続されたコンピューターとして構成されている。入出力インターフェイス450には、キーボードやマウスなどの入力装置470と、液晶ディスプレイなどの表示装置480とが接続されている。情報処理装置400は、通信インターフェイス440を介して、三次元造形装置100の制御部300に接続される。
【0035】
CPU410は、記憶装置430に記憶されたプログラムを実行することによって、データ生成部411として機能する。データ生成部411は、特定処理と、データ生成処理とを実行する。
【0036】
特定処理とは、造形物の形状を表す形状データに基づいて、造形物を支持するサポート構造を造形するサポート領域を特定する処理のことを指す。より詳細には、データ生成部411は、特定処理では、サポート領域として、接触層を造形する第1領域と、非接触層を造形する第2領域とを特定する。接触層と非接触層とは、それぞれ、サポート構造の層のXY方向における一部や全部を構成する層である。接触層は、サポート構造の層のうち、造形物と積層方向に接触する部分であり、より詳細には、造形物の上方または下方で造形物に接触する部分である。接触層は、造形物の上方と下方との両方で造形物に接触してもよい。非接触層は、サポート構造の層のうち、接触層とは異なる部分である。つまり、非接触層は、造形物の上方および下方で造形物に接触しない。サポート構造の層は、接触層と非接触層との両方を含む層であってもよいし、いずれかのみを含む層であってもよい。以下では、サポート構造の層のことをサポート層とも呼ぶ。接触層と非接触層とのいずれかのみを有するサポート層のことを、単独層とも呼ぶ。また、造形物本体の層のことを、本体層とも呼ぶ。
【0037】
データ生成処理とは、予め定められた経路生成条件に基づいて、サポート領域内に経路データを生成する処理のことを指す。経路データは、ノズル61が造形材料を吐出しつつ移動する経路を表したデータである。経路生成条件は、サポート領域内に経路を生成するための条件である。本実施形態では、データ生成部411は、第1領域に経路データを生成する場合と、第2領域に経路データを生成する場合とで、それぞれ異なる経路生成条件を適用可能である。経路生成条件の詳細については後述する。以下では、サポート領域内に生成される経路データのことを、サポート経路データとも呼ぶ。また、サポート構造を造形するためのデータのことをサポートデータとも呼ぶ。サポート経路データは、サポートデータに含まれる。
【0038】
また、本実施形態では、データ生成部411は、後述するように、造形物本体を造形するための本体データを生成する。本体データは、本体経路データを含む。本体経路データは、造形物本体を造形する本体領域に生成される経路データを表す。
【0039】
情報処理装置400は、データ生成部411によって生成される本体データとサポートデータとを含む造形データを、三次元造形装置100の制御部300に送信する。制御部300は、受信した造形データに従って、吐出部60及び移動機構230を制御して、材料を吐出して層を積層方向に積層することで、造形物、及び、造形物を支持するサポート構造をステージ210上に造形する。
【0040】
図6は、三次元造形システム10において実行される造形処理のフローチャートである。この造形処理は、三次元造形物の製造方法を実現するための処理である。造形処理は、例えば、制御部300に対してユーザーによる所定の開始操作が行われた場合に実行される。図6に示すステップS10からS50の処理は、情報処理装置400において実行され、ステップS60からS80の処理は、三次元造形装置100において実行される。
【0041】
ステップS10において、情報処理装置400のデータ生成部411は、他のコンピューター、記録媒体、あるいは、記憶装置430から、形状データを取得する。データ生成部411は、ステップS10では、形状データとして、三次元CADソフトや三次元CGソフト等を用いて作成された三次元形状データを取得する。この場合、形状データとして、例えば、STL形式やAMF形式等のデータを用いることができる。また、形状データは、造形物の形状を表すデータであればよく、例えば、他の三次元造形装置や他の情報処理装置によって生成された本体データや造形データであってもよい。この場合、データ生成部411は、本体データや造形データを解析することによって、造形物の形状を得てもよい。
【0042】
ステップS20において、データ生成部411は、サポート構造に関する造形条件の設定をユーザーから受け付ける。ユーザーは、図5に示した入力装置470を用いて、表示装置480に表示された設定画面を操作し、造形条件の設定を行う。
【0043】
本実施形態では、上述した第1領域と第2領域とに対して、それぞれ異なる造形条件を設定可能である。より詳細には、造形条件として、線幅、積層ピッチ、層数、造形パターン、充填率、周数および分離距離が、第1領域と第2領域とに対して個別に設定される。ユーザーは、ステップS20において、例えば、上記の項目ごとに数値を入力することによって、造形条件を設定する。他の実施形態では、上記の項目のうち一部や全部は、ユーザーによって設定可能でなくてもよく、例えば、データ生成部411や制御部300によってユーザーによらずに定められてもよい。
【0044】
「線幅」は、ノズル61から吐出する造形材料の幅を表す項目である。「積層ピッチ」は、1層ごとの高さを表す項目である。「層数」は、接触層や非接触層を構成する層の数を表す項目である。「造形パターン」は、接触層や非接触層の内部領域を埋めるためのノズル61の移動経路を示すパターンを表す項目である。「充填率」は、指定した造形パターンによって内部領域を埋める面積割合を表す項目である。「周数」は、接触層や非接触層の輪郭を形成するための周数を表す項目である。「分離距離」は、造形時においてノズル61を造形済みの最上層から離す距離を表す項目である。そのため、実際の造形物には、隙間は形成されず、造形材料が指定された距離だけ上方から吐出されることになる。なお、分離距離は、実寸法に限らず、層数によって指定可能であってもよい。
【0045】
本実施形態では、「周数」としては1周以上が設定可能であり、1つのサポート領域内で輪郭が少なくとも1周するように、そのサポート領域内に経路データが生成される。造形条件として設定される「周数」は、1つのサポート領域内で線幅方向に並ぶ経路の最低本数を決定するとも言える。より詳細には、この「経路の最低本数」は、設定される周数が1周以上である場合、その周数の2倍である。例えば、周数として1周が設定された場合、経路の最低本数は2本である。周数として2周が設定された場合、経路の最低本数は4本である。他の実施形態では、例えば、経路の最低本数が、造形条件として、直接、設定可能であってもよい。以下では、経路の最低本数のことを、単に「最低本数」とも呼ぶ。
【0046】
ステップS20では、後述するステップS80で接触層CPを造形物MDからより剥離させやすくするために、例えば、接触層CPにおいて、非接触層nCPと比較して、積層ピッチをより大きくすることや、造形物MDからより剥離させやすい造形パターンを用いることや、充填率を低くすることや、分離距離をより大きくすることが実現されるように、第1領域SA1に対する造形条件を設定できる。なお、接触層CPを造形する際に、積層ピッチや分離距離をより大きくすることで、ノズル61から吐出される接触層CPを造形するための材料の上面がノズル61の下端面によって押されにくくなる。そのため、接触層CPと造形物MDとの密着強度を低くでき、接触層CPを造形物MDから剥離させやすくできる。
【0047】
データ生成部411は、図6のステップS30からステップS50を実行することによって、造形データを生成する。本実施形態におけるステップS30からステップS50のように、造形データを生成する工程のことを第1工程とも呼ぶ。
【0048】
データ生成部411は、第1工程において、まず、図6のステップS30に示す特定処理を実行することによって、形状データに基づいて第1領域と第2領域とを特定する。ステップS30のように、形状データに基づいて第1領域と第2領域とを特定する工程のことを、特定工程とも呼ぶ。
【0049】
図7は、図6のステップS30で実行される特定処理のフローチャートである。図8Aは、造形物MDの形状の例を示す図である。図8Aには、形状データによって表される造形物MDの形状の例が示されている。図8Aでは、造形物MDの形状には右上がりのハッチングが付されている。
【0050】
図7のステップS31にて、データ生成部411は、図6のステップS10で取得した形状データを解析するとともに、造形条件に含まれる積層ピッチ及び層数に従って、造形物MDの形状をXY平面に沿って複数の層にスライスする。図8Aには、造形物MDの形状が、このようにスライスされた様子が示されている。
【0051】
図7のステップS33にて、データ生成部411は、造形物MDのうち、オーバーハング部OHを特定する。オーバーハング部OHとは、造形物MDのうちの下方に支えのない出っ張りの部分を指す。「オーバーハング部OH」の意味には、ブリッジ部が含まれる。ブリッジ部とは、造形物において両端が支持された橋状の部分を指す。図8Aにおけるオーバーハング部OHは、ブリッジ部ではない単なるオーバーハング部OHである。図8Aでは、オーバーハング部OHの下面が太線によって表されている。
【0052】
図7のステップS35にて、データ生成部411は、サポート構造の形状を生成する。
【0053】
図8Bは、ステップS35で生成されるサポート構造SCの形状の例を示す図である。図8Bでは、サポート構造SCの形状には右下がりのハッチングが付されている。また、図8Bでは、図8Aと同様に、造形物MDの形状に右上がりのハッチングが付され、オーバーハング部OHの下面が太線によって表されている。
【0054】
本実施形態では、データ生成部411は、図7のステップS35において、図8Bに示すように、オーバーハング部OHの下面の全てがサポート構造SCによって下から支持されるように、かつ、積層方向における上方から見たときにサポート構造SCがオーバーハング部OHに覆われるように、サポート構造SCの形状を生成する。サポート構造SCの形状は、造形物MDの形状と略同様に、積層ピッチ及び層数に従って複数の層にスライスされる。以下では、サポート構造SCの形状のスライスによって生成された各サポート層を、Z方向においてステージ210から近い順に、自然数nを用いて第nサポート層とも呼ぶ。例えば、第2サポート層は、下から数えて2層目のサポート層である。
【0055】
図9Aは、特定処理を説明する第1の図である。図9Bは、特定処理を説明する第2の図である。図9Aでは、図8Bと同様に、サポート構造SCに右下がりのハッチングが付されている。また、図9Aおよび図9Bでは、造形物MDは、破線によって示されている。図9Aでは、サポート構造SCのうち、接触層CPに、非接触層nCPよりも濃いハッチングが付されている。図9Aに示した各接触層CPは、造形物MDの下方で造形物MDに接触している。図7のステップS37にて、データ生成部411は、図9Aに示すように、ステップS35で生成されたサポート構造SCの層の全てについて、層ごとに、接触層CPと非接触層nCPとを特定する。
【0056】
図9Aに示すように、サポート構造SCの少なくとも一の層内には、接触層CPと非接触層nCPとが互いに隣り合って配置される。なお、「接触層CPと非接触層nCPとが隣り合う」とは、XY平面に沿った方向において接触層CPと非接触層nCPとが隣り合うことを意味する。図9Aに示すように、本実施形態では、第3サポート層SL3から第6サポート層SL6は、それぞれ、互いに隣り合う接触層CPと非接触層nCPとを有している。第1サポート層SL1と第2サポート層SL2とは、それぞれ、非接触層nCPのみを有する単独層である。第7サポート層SL7は、接触層CPのみを有する単独層である。
【0057】
図7のステップS39にて、データ生成部411は、図9Bに示すように、ステップS37で特定された接触層CPを造形する領域として第1領域SA1を特定し、同様に特定された非接触層nCPを造形する領域として第2領域SA2を特定する。図9Bでは、サポート領域に、つまり、第1領域SA1と第2領域SA2に、網点模様のハッチングが付されている。図9Bでは、第1領域SA1には、第2領域SA2よりも濃いハッチングが付されている。なお、本実施形態におけるステップS39では、データ生成部411は、第1領域SA1と第2領域SA2とに加え、本体領域を特定する。
【0058】
次に、データ生成部411は、図6のステップS40において、データ生成処理を実行することによって、経路生成条件に基づいてサポート経路データを生成する。ステップS40のように、経路生成条件に基づいてサポート経路データを生成する工程のことを、データ生成工程とも呼ぶ。
【0059】
より詳細には、本実施形態では、データ生成部411は、ステップS40のデータ生成処理において、サポート経路データと吐出量情報とを含むサポートデータを生成する。本実施形態では、データ生成部411は、サポートデータを生成するにあたり、経路生成条件として、図6のステップS20で決定された線幅と、造形パターンと、充填率と、経路の最低本数とを用いて、サポート経路データを生成する。サポート経路データに含まれる各経路には、その経路において吐出される造形材料の吐出量を表す吐出量情報が含まれる。データ生成部411は、このような吐出量情報を含むサポート経路データの生成を、各サポート層について実行することで、サポート経路データと吐出量情報とを含むサポートデータを生成する。サポートデータは、例えば、Gコードによって表される。
【0060】
データ生成部411は、データ生成処理において、特定処理で特定された第1領域SA1の幅が、経路生成条件に基づいて経路データを生成するのに不足する場合、その第1領域SA1内に経路データが生成されるように、その第1領域SA1を、同じ層内で隣り合う第2領域SA2まで拡張する。第1領域SA1や第2領域SA2の幅とは、その領域のXY方向における最小の幅のことを指す。また、本明細書において、「第1領域SA1の幅が不足する」場合とは、その第1領域SA1の幅が、最低本数分の経路の合計の幅未満であることを指す。従って、ある第1領域SA1の幅が、線幅と最低本数との積未満であれば、その第1領域SA1の幅は、経路生成条件に基づいて経路データを生成するのに不足する。以下では、幅が不足する第1領域SA1のことを「狭小第1領域」とも呼ぶ。また、データ生成処理において拡張された第1領域のことを拡張領域と呼ぶ。拡張領域のうち、第1領域SA1が広がることによって追加的に生成される部分のことを追加領域と呼ぶ。従って、拡張領域は、特定処理で特定された第1領域SA1と、追加領域とによって構成される。上記のように第1領域SA1が第2領域SA2まで拡張された場合、追加領域は、元々、第2領域SA2であった部分に相当する。
【0061】
第1領域SA1の場合と同様に、本明細書において、「第2領域SA2の幅が不足する」とは、その第2領域SA2の幅が、最低本数分の経路の合計の幅未満であることを指す。以下では、経路生成条件に基づいて経路データを生成するのに幅が不足する第2領域SA2のことを、狭小第2領域とも呼ぶ。
【0062】
図10は、データ生成処理のフローチャートである。図11Aは、データ生成処理を説明する第1の図である。図11Bは、データ生成処理を説明する第2の図である。図11Cは、データ生成処理を説明する第3の図である。図11Aから図11Cでは、第1領域SA1と第2領域SA2とに、図9Bと同様のハッチングが付されている。図11Aから図11Cは、図6のステップS20で第1領域SA1および第2領域SA2に対して「周数」として1周が設定された場合におけるデータ生成処理の例を説明している。つまり、図11Aから図11Cの例では、経路の最低本数が2本となるように、各サポート領域内にサポート経路データが生成される。
【0063】
図10のステップS41にて、データ生成部411は、経路生成条件に基づいて、サポート層ごとに、狭小第1領域SA1nを検出する。図11Aでは、狭小第1領域SA1nは、太線によって囲われている。図11Aでは、第3サポート層SL3、第5サポート層SL5、第6サポート層SL6および第7サポート層SL7における各第1領域SA1の幅w1は、経路1本分の線幅に相当し、経路2本分の幅w2、つまり、最低本数分の経路の合計の幅よりも狭い。そのため、これらの各サポート層における第1領域SA1は、それぞれ、狭小第1領域SA1nとして検出される。このように、本実施形態では、狭小第1領域SA1nの検出には、経路生成条件のうち、線幅と最低本数とが用いられる。
【0064】
図11Aでは、第6サポート層SL6に含まれる第2領域SA2は、幅w1を有しており、狭小第2領域SA2nに相当する。他の実施形態では、データ生成部411は、データ生成工程において、例えば、ステップS41と略同様に、狭小第2領域SA2nの検出を実行してもよい。
【0065】
図10のステップS43にて、データ生成部411は、ステップS41で検出された狭小第1領域SA1nを、その狭小第1領域SA1nに隣り合う第2領域SA2まで拡張することによって、拡張領域ESA1を生成する。図11Bには、第3サポート層SL3と第5サポート層SL5と第6サポート層SL6とにおいて、拡張領域ESA1が生成される様子が示されている。図11Bでは、ステップS43で生成された拡張領域ESA1が太線によって示されている。本実施形態では、データ生成部411は、各狭小第1領域SA1nを、各拡張領域ESA1内に経路データを生成できるように、最低限の幅分だけ拡張する。つまり、データ生成部411は、各狭小第1領域SA1nを、幅w1分だけ拡張する。そのため、図11Bに示した各拡張領域ESA1の幅は、幅w2である。なお、後述するステップS49において、サポート領域のうち、経路データを生成するのに最低限の幅である幅w2を有している部分には、内部領域を造形するための経路データは生成されず、輪郭を造形するための経路データのみが生成される。
【0066】
本実施形態では、データ生成部411は、データ生成工程において、特定工程で特定された第1領域SA1のうち、狭小第1領域SA1nを第2領域SA2まで拡張する一方で、経路生成条件に基づいて経路データを生成できる幅を有する第1領域SA1を拡張しない。つまり、本実施形態では、データ生成部411は、特定工程で特定された第1領域SA1のうち、狭小第1領域SA1nのみを選択的に第2領域SA2まで拡張する。以下では、このように経路データを生成できる幅を有する第1領域SA1のことを、「広い第1領域SA1」とも呼ぶ。本実施形態では、第4サポート層SL4における第1領域SA1は、幅w2よりも広い幅w3を有しており、広い第1領域SA1に相当する。
【0067】
また、本実施形態では、第7サポート層SL7が接触層CPのみを有する単独層であるため、第7サポート層SL7における狭小第1領域SA1nは、第2領域SA2と隣り合っていない。本実施形態におけるデータ生成処理では、このように接触層CPのみを有する層における狭小第1領域SA1nは、拡張されない。以下では、単独層を造形する第1領域SA1や第2領域SA2のことを、単独領域とも呼ぶ。また、単独層における狭小第1領域SA1nを「単独の狭小第1領域SA1n」とも呼び、単独層における狭小第2領域SA2nのことを「単独の狭小第2領域SA2n」とも呼ぶ。
【0068】
図11Bでは、図11Aで第6サポート層SL6に含まれていた狭小第2領域SA2nは、拡張領域ESA1の追加領域によって上書きされ、消滅している。図11Bでは、このように消滅した狭小第2領域SA2nが破線によって示されている。つまり、図11Aから図11Cに示したデータ生成処理の例では、特定処理で特定された狭小第2領域SA2nは、この狭小第2領域SA2nに隣り合う狭小第1領域SA1nが拡張されることによって消滅している。より詳細には、図11Aに示した第6サポート層SL6における狭小第1領域SA1nが、同じ層の狭小第2領域SA2nの全体まで拡張されることによって、この狭小第2領域SA2nが消滅している。
【0069】
図10のステップS45にて、データ生成部411は、各サポート層に新たな狭小第2領域SA2nが生成されたか否かを判定する。新たな狭小第2領域SA2nとは、狭小第1領域SA1nの拡張によって第2領域SA2が縮小されることで、新たに生成される狭小第2領域SA2nのことを指す。図11Bでは、第5サポート層SL5において、幅w1を有する新たな狭小第2領域SA2nが生成されている。
【0070】
図10のステップS45でいずれかのサポート層に新たな狭小第2領域SA2nが含まれると判定された場合、データ生成部411は、ステップS47に処理を進める。ステップS47にて、データ生成部411は、図11Cに示すように、拡張領域ESA1を更に拡張することで、ステップS45で検出された新たな狭小第2領域SA2nを消滅させる。つまり、本実施形態では、データ生成部411は、拡張領域ESA1の生成によって縮小された第2領域SA2が狭小第2領域SA2nである場合、その拡張領域ESA1を更に拡張することによって、その第2領域SA2を消滅させる。より詳細には、図11Aから図11Cに示したデータ生成処理の例では、第5サポート層SL5における拡張領域ESA1が、第5サポート層SL5における狭小第2領域SA2nの全体まで更に拡張されることによって、この狭小第2領域SA2nが消滅している。図11Cでは、拡張領域ESA1の更なる拡張によって消滅した狭小第2領域SA2nが破線によって示されている。また、図11Cでは、ステップS47で更に拡張された拡張領域ESA1が太線によって示されている。
【0071】
ステップS48にて、データ生成部411は、第1領域SA1と第2領域SA2とを確定させる。本実施形態では、図11Cにおいて実線で示した第1領域SA1と、第2領域SA2とが、それぞれ、ステップS48で確定される第1領域SA1と第2領域SA2とに相当する。
【0072】
ステップS41からS48で説明したように、本実施形態におけるデータ生成処理では、第1領域SA1の拡張は、特定処理で特定されたサポート領域内で行われる。また、本実施形態におけるデータ生成処理では、第2領域SA2の拡張は実行されない。つまり、本実施形態では、データ生成部411は、データ生成工程において第1領域SA1を拡張する場合に、第1領域SA1および第2領域SA2を、特定処理で特定されたサポート領域の外へ拡張しない。以下では、特定処理で特定されたサポート領域のことを、最初のサポート領域とも呼ぶ。
【0073】
ステップS49にて、データ生成部411は、サポートデータを生成する。より詳細には、データ生成部411は、ステップS49において、ステップS48で確定されたサポート領域内に、吐出量情報を含むサポート経路データを生成する。
【0074】
図6のステップS50にて、データ生成部411は、造形部本体を造形するための造形データである本体データを生成する。データ生成部411は、本体データの生成にあたり、造形物MDの各層の輪郭を形成すると共にその内部領域を予め定められた充填率や造形パターンで埋めるためのノズル61の経路を表す本体経路データを、本体領域内に生成する。本体経路データは、直線状の複数の経路を表すデータを含んでいる。本体経路データに含まれる各経路には、その経路において吐出される造形材料の吐出量を表す吐出量情報が含まれる。データ生成部411は、造形物MDの全ての層について本体経路データ及び吐出量情報を生成することによって本体データを生成する。本体データは、例えば、サポートデータと同様に、Gコードによって表される。本実施形態では、ステップS40とステップS50とが完了することで、サポートデータと本体データとを含む造形データが生成される。
【0075】
図12は、データ生成部411によって生成される造形データを視覚化した例を示す図である。図12に示した造形データは、本体データBDと、第1サポートデータSD1と、第2サポートデータSD2とを含んでいる。第1サポートデータSD1は、確定された第1領域SA1に接触層を造形するための造形データである。第2サポートデータSD2は、確定された第2領域SA2に非接触層を造形するための造形データである。図12には、本体データBDに従って造形される本体層の形状MFと、第1サポートデータSD1に従って造形される接触層の形状CFと、第2サポートデータSD2に従って造形される非接触層の形状nCFとが示されている。図12では、本体層の形状MFには右上がりのハッチングが付されている。また、図12では、接触層の形状CFと非接触層の形状nCFとには、右下がりのハッチングが付されており、接触層の形状CFには、非接触層の形状nCFよりも濃いハッチングが付されている。
【0076】
図12に示すように、接触層の形状CFのうち、拡張領域ESA1内に造形される接触層の形状ECFは、追加領域に対応する部分を含むので、造形物の形状MFと積層方向に接触しない部分を含む。つまり、拡張領域ESA1内に造形される接触層は、造形物MDと積層方向に接触しない部分を含む。本明細書では、拡張領域ESA1に造形される接触層については、造形物MDと積層方向に接触しない部分を含めて、単に接触層と呼ぶ。また、接触層のうち、追加領域に対応する部分のことを追加部分とも呼ぶ。
【0077】
図12の例では、サポート領域が確定された時点で狭小第1領域SA1nのみを含む第7サポート層SL7に対応する領域は、サポート経路データが生成されない空白領域BAとなっている。そのため、後述する第2工程において、第7サポート層SL7に対応する領域には、接触層と非接触層とのいずれも造形されない。このように、確定された第1領域SA1や第2領域SA2が、狭小第1領域SA1nや狭小第2領域SA2nである場合、その第1領域SA1内や第2領域SA2内には、サポート経路データが生成されない。
【0078】
図6のステップS60において、三次元造形装置100の制御部300は、情報処理装置400によって生成された造形データを、情報処理装置400から取得する。
【0079】
ステップS70において、制御部300は、情報処理装置400から取得した造形データに基づいて、吐出部60及び移動機構230を制御することによって、ステージ210の造形面211上に、造形物MD及びサポート構造SCを造形する。ステップS70のように、造形データに基づいて、造形物MD及びサポート構造SCを造形する工程のことを、第2工程とも呼ぶ。
【0080】
ステップS80において、造形物からサポート構造が分離される。サポート構造は、三次元造形装置100に備えられた切削装置によって切削されてもよい。
【0081】
以上で説明した本実施形態における三次元造形物の製造方法によれば、造形データを生成する第1工程は、形状データに基づいて、サポート領域として第1領域SA1および第2領域SA2を特定する特定工程と、経路生成条件に基づいてサポート領域内に経路データを生成するデータ生成工程とを有する。データ生成工程では、特定工程で特定された第1領域SA1の幅が、経路生成条件に基づいて経路データを生成するのに不足する場合、その第1領域SA1内に経路データが生成されるように、その第1領域SA1を隣り合う第2領域SA2まで拡張する。そのため、特定工程で特定された第1領域SA1の幅が経路データを生成するのに不足する場合であっても、その第1領域SA1を第2領域SA2まで拡張することによって、その第1領域SA1内に経路データを生成できる。従って、第1領域SA1内に経路データが生成されないことに起因する、サポート構造SC内の接触層CPの欠落を抑制できる。接触層CPは、造形物MDの上方または下方で造形物に直接的に接触する部分であるため、このように接触層CPの欠落を抑制することで、造形物MDの精度に影響が及ぶことを効果的に抑制できる。
【0082】
また、本実施形態では、第1領域SA1が拡張されることによって縮小された第2領域SA2の幅が、経路生成条件に基づいて経路データを生成するのに不足する場合、その拡張された第1領域SA1を更に拡張することによって、その第2領域SA2を消滅させる。つまり、拡張領域ESA1が生成されることによって新たな狭小第2領域SA2nが生成された場合、その拡張領域ESA1を更に拡張することによって、その新たな狭小第2領域SA2nを消滅させる。そのため、新たな狭小第2領域SA2nに経路データが生成されないことに起因して、サポート構造SCが部分的に欠落することを抑制できる。この場合、サポート構造SCのうち、造形物MDと積層方向に接触しない部分が欠落することを抑制できることに加え、この部分の欠落が抑制されることで、その上方にサポート構造の層が安定的に造形されやすくなる。
【0083】
また、本実施形態では、データ生成工程において、特定工程で特定された第2領域SA2の幅が、経路生成条件に基づいて経路データを生成するのに不足する場合、第1領域SA1を拡張することによって、その第2領域SA2を消滅させる。そのため、特定工程で特定された狭小第2領域SA2nに経路データが生成されないことに起因して、サポート構造SCが部分的に欠落することを抑制できる。この場合、サポート構造SCのうち、造形物MDと積層方向に接触しない部分が欠落することを抑制できることに加え、この部分の欠落が抑制されることで、その上方にサポート構造の層が安定的に造形されやすくなる。
【0084】
また、本実施形態では、データ生成工程において、特定工程で特定された複数の第1領域SA1のうち、狭小第1領域SA1nを第2領域SA2まで拡張し、広い第1領域SA1を拡張しない。このようにすれば、狭小第1領域SA1nのみを選択的に第2領域SA2まで拡張できる。そのため、例えば、広い第1領域SA1をも拡張する形態と比較して、データ生成工程におけるデータ処理速度を向上できる。
【0085】
また、本実施形態では、データ生成工程では、第1領域SA1を拡張する場合に、第1領域SA1および第2領域SA2を、最初のサポート領域の外へ拡張しない。そのため、第1領域SA1や第2領域SA2を、最初のサポート領域の外へ拡張する形態と比較して、サポート構造SCの造形に要する時間や材料を削減できる。また、最初のサポート領域内に接触層CPや非接触層nCPが造形されるので、接触層CPや非接触層nCPが、意図せず造形物MDに接触することを抑制できる。例えば、接触層CPの側面や非接触層nCPの側面が、意図せず造形物MDの側面に接触することを抑制できる。なお、本実施形態とは異なり、例えば、狭小第1領域SA1nに経路データが生成されるようにサポート領域全体を一律に拡張する形態では、第1領域SA1や第2領域SA2が自ずと最初のサポート領域の外へ拡張される。一方で、本実施形態では、狭小第1領域SA1nを第2領域SA2まで拡張するので、上記のように、第1領域SA1や第2領域SA2を最初のサポート領域の外へ拡張しないことが可能である。
【0086】
また、本実施形態では、上述したように、図7のステップS35において、積層方向における上方から見たときにサポート構造SCがオーバーハング部OHに覆われるように、サポート構造SCの形状が生成される。そのため、データ生成工程で第1領域SA1および第2領域SA2を最初のサポート領域の外へ拡張しないことによって、第2工程において、サポート構造SCは、積層方向の上方から見たときに造形物MDによって覆われるように造形される。このように、第2工程で積層方向の上方から見たときに造形物MDによって覆われるサポート構造SCが造形されるように、第1工程でサポート経路データを生成することで、接触層CPの側面や非接触層nCPの側面が、意図せず造形物MDの側面に接触することをより抑制できる。特に、造形物MDがブリッジ部を有する場合に上記のようにサポート経路データを生成することで、接触層CPの側面や非接触層nCPの側面が、意図せず造形物MDの側面に接触することを効果的に抑制できる。
【0087】
B.第2実施形態:
図13は、第2実施形態におけるデータ生成処理のフローチャートである。図13に示したデータ生成処理は、例えば、図10に示したデータ生成処理と同様に、図6のステップS40で実行される。本実施形態におけるデータ生成処理では、制御部300は、第1実施形態とは異なり、第1領域SA1や第2領域SA2が最初のサポート領域の外へ拡張されることを許容する。図13では、第1実施形態で説明した図10と同様の工程には、図10と同じ符号が付されている。本実施形態における三次元造形装置100や情報処理装置400のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0088】
図14Aは、第2実施形態におけるデータ生成処理を説明する第1の図である。図14Bは、第2実施形態におけるデータ生成処理を説明する第2の図である。図14Cは、第2実施形態におけるデータ生成処理を説明する第3の図である。図14Aから図14Cでは、図11Aから図11Cと同様に、第1領域SA1と第2領域SA2とにハッチングが付されている。図14Aから図14Cは、図11Aから図11Cと同様に、図6のステップS20で第1領域SA1および第2領域SA2に対して「周数」として1周が設定された場合におけるデータ生成処理の例を説明している。
【0089】
図14Aには、第1実施形態で説明した図11Bと同様に、図13のステップS43で狭小第1領域SA1nが第2領域SA2まで拡張された様子が示されている。図14Aに示した第7サポート層SL7は、第1実施形態で説明したように、狭小第1領域SA1nのみを有する単独層である。図13のステップS441にて、データ生成部411は、単独の狭小第1領域SA1nを最初のサポート領域の外へ拡張する。つまり、ステップS441では、データ生成部411は、単独の狭小第1領域SA1nを、特定工程で特定された第1領域SA1および第2領域SA2とは異なる領域へ拡張する。より詳細には、図14Bでは、第7サポート層SL7における単独の狭小第1領域SA1nが、+X方向に拡張されることで、サポート領域の外へと拡張されている。図14Bでは、単独の狭小第1領域SA1nの拡張によって生成された拡張領域ESA1が太線によって示されている。図14Aから図14Cに示した例では、単独の狭小第1領域SA1nは、ステップS43で拡張された他の狭小第1領域SA1nと同様に、最低限の幅である幅w1分、拡張され、拡張後に幅w2を有している。
【0090】
図13のステップS442にて、データ生成部411は、図14Cに示すように、ステップS441で生成された拡張領域ESA1よりも下層のサポート領域を、拡張領域ESA1に対応して、最初のサポート領域の外へ拡張する。より詳細には、データ生成部411は、ステップS441で生成された拡張領域ESA1内に造形される接触層を下方から支持できるように、下層のサポート領域を拡張する。図14Cでは、第1サポート層SL1から第6サポート層SL6までの各層における、最も+X方向に配置されたサポート領域が、+X方向に幅w1分、拡張されている。より詳細には、第1サポート層SL1から第5サポート層SL5における各第2領域SA2と、第6サポート層SL6における拡張領域ESA1とが、それぞれ、ステップS441で生成された拡張領域ESA1に対応して+X方向に幅w1分、拡張されている。図14Cでは、ステップS442で拡張された下層の第1領域SA1や第2領域SA2が、太線によって示されている。なお、他の実施形態では、ステップS442は省略されてもよい。例えば、下層を拡張しなくても造形物MDを支持できるようにサポート構造SCを造形できる場合や、サポート層のうちの最下層における単独の狭小第1領域SA1nが拡張された場合には、ステップS442が省略されてもよい。
【0091】
以上で説明した本実施形態における三次元造形物の製造方法によれば、データ生成工程において、単独の第1領域SA1の幅が、経路生成条件に基づいてサポート経路データを生成するのに不足する場合、その単独の第1領域SA1に経路データが生成されるように、その単独の第1領域SA1を最初のサポート領域の外へ拡張する。このような形態によれば、単独の狭小第1領域SA1n内に経路データが生成されないことに起因する接触層の欠落を抑制できる。
【0092】
なお、他の実施形態では、単独の狭小第1領域SA1nを最初のサポート領域の外に拡張することに加え、または、このことに代えて、単独の狭小第2領域SA2nを、その内部にサポート経路データが生成されるように、最初のサポート領域の外へ拡張してもよい。このようにすれば、単独の狭小第2領域SA2nに経路データが生成されないことに起因して、サポート構造SCが部分的に欠落することをより抑制できる。この場合、サポート構造SCのうち、造形物MDと積層方向に接触しない部分が欠落することをより抑制できることに加え、この部分の欠落が抑制されることで、この部分の上方にサポート構造の層が安定的に造形されやすくなる。このように、データ生成工程において、単独の狭小領域を、その内部にサポート経路データが生成されるように最初のサポート領域の外へ拡張することで、幅が不足する単独領域内に経路データが生成されないことに起因して、サポート構造SCが部分的に欠落することを抑制できる。
【0093】
また、他の実施形態では、上述した単独の狭小領域の拡張は、第1領域SA1および第2領域SA2が確定される前の任意のタイミングで実行されてよい。例えば、単独の狭小領域の拡張を、ステップS43と同時に実行してもよいし、ステップS47で新たな狭小第2領域SA2nを消滅させた後に実行してもよい。
【0094】
C.他の実施形態:
(C-1)上記実施形態では、第1領域SA1を拡張することによって狭小第2領域SA2nを消滅させる場合、第1領域SA1を狭小第2領域SA2nの全体まで拡張させている。これに対して、第1領域SA1を、狭小第2領域SA2nを超えて拡張することによって、その狭小第2領域SA2nを消滅させてもよい。
【0095】
(C-2)上記実施形態では、新たな狭小第2領域SA2nが生成された場合、拡張領域ESA1を更に拡張することによって、その狭小第2領域SA2nを消滅させている。これに対して、例えば、新たな狭小第2領域SA2nが、拡張されていない第1領域SA1にも隣り合う場合、その拡張されていない第1領域SA1を拡張することによって、その狭小第2領域SA2nを消滅させてもよい。また、例えば、新たな狭小第2領域SA2nが生成された場合であっても、新たな狭小第2領域SA2nを消滅させなくてもよい。
【0096】
(C-3)上記実施形態では、特定工程で特定された第2領域SA2の幅が不足する場合、その第2領域SA2に隣り合う第1領域SA1を拡張することによって、その第2領域SA2を消滅させている。これに対して、特定工程で特定された第2領域SA2の幅が不足する場合であっても、その第2領域SA2を消滅させなくてもよい。
【0097】
(C-4)上記実施形態では、特定工程で特定された複数の第1領域SA1のうち、狭小第1領域SA1nを第2領域SA2まで拡張し、広い第1領域SA1を拡張していない。これに対して、特定工程で特定された狭小第1領域SA1nに加え、特定工程で特定された広い第1領域SA1を拡張してもよい。例えば、サポート層内で、広い第1領域SA1と狭小第2領域SA2nとが隣り合って配置されている場合に、広い第1領域SA1を拡張することによって、その狭小第2領域SA2nを消滅させてもよい。また、第2実施形態で説明したように単独領域を最初のサポート領域の外へ拡張する場合に、サポート領域の外へ拡張された単独領域を下方から支持するために、特定工程で特定された広い第1領域SA1を拡張してもよい。また、例えば、特定工程において第2領域SA2と隣り合う第1領域SA1が特定された場合、その第1領域SA1が狭小第1領域SA1nであるか広い第1領域SA1であるかを問わずに第2領域SA2まで拡張することによって、狭小第1領域SA1nに加えて広い第1領域SA1を第2領域SA2まで拡張してもよい。
【0098】
(C-5)上記実施形態では、特定処理にて、サポート構造SCの全ての層について第1領域SA1や第2領域SA2を特定した後に、データ生成処理にて、サポート構造CSの各層内に経路データを生成している。これに対して、このように特定処理とデータ生成処理とを実行しなくてもよく、例えば、サポート構造SCの1層について特定処理とデータ生成処理とを実行することを、サポート構造SCの全層数分、繰り返してもよい。
【0099】
(C-6)上記実施形態では、図7のステップS35にて、オーバーハング部OHの下面の全てがサポート構造SCによって下から支持されるように、サポート構造SCを生成している。これに対して、サポート構造SCをこのように生成しなくてもよい。例えば、オーバーハング部OHの下面のうち、XY平面に対する傾きの角度が予め定められた角度以下である部分がサポート構造SCによって支持されるように、サポート構造SCを生成してもよい。
【0100】
(C-7)上記実施形態では、「周数」として1周以上が設定可能であるが、例えば、「周数」として0周が設定可能であってもよい。この場合、「周数」として0周が設定されたサポート領域には、輪郭領域は造形されず、内部領域のみが造形される。また、この場合、経路の最低本数は、1本となる。なお、経路の最低本数が1本に設定された場合であっても、図10のステップS41のように狭小第1領域SA1nを検出する工程では、第1実施形態で説明したのと同様に、ある第1領域SA1の幅が最低本数分の経路の合計の幅未満である場合に、その第1領域SA1の幅が不足すると判定される。つまり、この場合、線幅に相当する幅w1未満の幅を有する第1領域SA1が、狭小第1領域SA1nとして検出される。
【0101】
(C-8)上記実施形態の三次元造形装置100は、造形部110を1つ備えているが、三次元造形装置100は、3つの造形部110を備えてもよい。この場合、第1の造形部110からは、造形物MDを造形するための造形材料を吐出させ、第2の造形部110からは、接触層CPを造形するための第1のサポート材料を吐出させ、第3の造形部110からは、非接触層nCPを造形するための第2のサポート材料を吐出させる。三次元造形装置100が複数の造形部110を備える場合、造形条件には、サポート層の材料に関する条件が含まれてもよい。接触層CPと非接触層nCPとをそれぞれ異なる材料で造形することができる。例えば、第1サポート材料として、第2サポート材料と比較して、造形材料との間の密着強度がより低い材料を用いることができる。なお、第1サポート材料と第2サポート材料とのいずれか一方を、造形材料と同一の材料としてもよい。この場合、造形部110は、三次元造形装置100に少なくとも2つ備えられていればよい。
【0102】
(C-9)上記実施形態において、造形部110は、フラットスクリュー40によって材料を可塑化している。これに対して造形部110は、例えば、インラインスクリューを回転させることによって材料を可塑化するものであってもよい。また、造形部110は、フィラメント状の材料をヒーターで可塑化するものであってもよい。
【0103】
(C-10)上記実施形態において、例えば、第1実施形態のように第1領域SA1や第2領域SA2が最初のサポート領域の外へ拡張されることを許容しないモードと、第2実施形態のように第1領域SA1や第2領域SA2が最初のサポート領域の外へ拡張されることを許容するモードとが、ユーザーによって切り替え可能に構成されていてもよい。
【0104】
D.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0105】
(1)本開示の第1の形態によれば、層を積層することによって三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、ノズルが造形材料を吐出しつつ移動する経路を表した経路データを含む造形データを生成する第1工程と、前記造形データに基づいて、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する第2工程と、を有する。前記サポート構造の少なくとも一の層内には、前記造形物の上方または下方で前記造形物に接触する接触層と、前記接触層とは異なる非接触層と、が互いに隣り合って配置される。前記第1工程は、前記造形物の形状を表すデータに基づいて、前記サポート構造を造形するサポート領域として、前記接触層を造形する第1領域と、前記非接触層を造形する第2領域と、を特定する特定工程と、予め定められた経路生成条件に基づいて、前記サポート領域内に前記経路データを生成するデータ生成工程と、を有する。前記データ生成工程では、前記特定工程で特定された前記第1領域の幅が、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに不足する場合、前記第1領域内に前記経路データが生成されるように、前記第1領域を、前記第1領域に隣り合う前記第2領域まで拡張する。
このような形態によれば、特定工程で特定された第1領域の幅が経路データを生成するのに不足する場合であっても、その第1領域を第2領域まで拡張することによって、その第1領域内に経路データを生成できる。従って、第1領域内に経路データが生成されないことに起因する、サポート構造内の接触層の欠落を抑制できる。そのため、サポート構造の部分的な欠落に起因して造形物の精度に影響が及ぶことを抑制できる。
【0106】
(2)上記形態では、前記データ生成工程において、前記第1領域が拡張されることによって縮小された前記第2領域の幅が、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに不足する場合、拡張された前記第1領域を更に前記第2領域以上まで拡張することによって、前記第2領域を消滅させてもよい。このような形態によれば、縮小によって幅が不足した第2領域に経路データが生成されないことに起因して、サポート構造が部分的に欠落することを抑制できる。
【0107】
(3)上記形態では、前記データ生成工程において、前記特定工程で特定された前記第2領域の幅が、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに不足する場合、前記第1領域を前記第2領域以上まで拡張することによって、前記第2領域を消滅させてもよい。このような形態によれば、特定工程で特定された第2領域に経路データが生成されないことに起因して、サポート構造が部分的に欠落することを抑制できる。
【0108】
(4)上記形態では、前記特定工程において、複数の前記第1領域を特定し、前記データ生成工程において、前記特定工程で特定された複数の前記第1領域のうち、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに幅が不足する前記第1領域を前記第2領域まで拡張し、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成できる幅を有する前記第1領域を拡張しなくてもよい。このような形態によれば、経路データを生成するのに幅が不足する第1領域のみを選択的に第2領域まで拡張できる。そのため、例えば、経路データを生成できる幅を有する第1領域をも拡張する形態と比較して、データ生成工程におけるデータ処理速度を向上できる。
【0109】
(5)上記形態では、前記サポート構造の少なくとも一の層は、前記接触層と、前記非接触層と、のいずれかのみを有する単独層であり、前記データ生成工程において、前記単独層を造形する単独領域の幅が、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに不足する場合、前記単独領域内に前記経路データが生成されるように、前記単独領域を前記特定工程で特定された前記サポート領域の外へ拡張してもよい。このような形態によれば、幅が不足する単独領域内に経路データが生成されないことに起因して、サポート構造が部分的に欠落することを抑制できる。
【0110】
(6)上記形態では、前記データ生成工程では、前記第1領域を拡張する場合に、前記第1領域および前記第2領域を、前記特定工程で特定された前記サポート領域の外へ拡張しなくてもよい。このような形態によれば、第1領域や第2領域を、特定工程で特定されたサポート領域の外へ拡張する形態と比較して、サポート構造の造形に要する時間や材料を削減できる。
【0111】
(7)本開示の第2の形態によれば、造形材料を吐出して層を積層することで、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する三次元造形装置で用いられる造形データを生成する、情報処理装置が提供される。この情報処理装置は、前記造形データに含まれ、前記三次元造形装置のノズルが前記造形材料を吐出しつつ移動する経路を表した経路データ、を生成するデータ生成部を備える。前記データ生成部は、前記造形物の形状を表すデータに基づいて、前記サポート構造を造形するサポート領域として、前記造形物の上方または下方で前記造形物に接触する接触層を造形する第1領域と、前記接触層とは異なる非接触層を造形する第2領域と、を特定する特定処理と、予め定められた経路生成条件に基づいて、前記サポート領域内に前記経路データを生成するデータ生成処理と、を実行する。前記サポート構造の少なくとも一の層内には、前記接触層と、前記非接触層と、が互いに隣り合って配置される。前記データ生成部は、前記データ生成処理において、前記特定処理で特定された前記第1領域の幅が、前記経路生成条件に基づいて前記経路データを生成するのに不足する場合、前記第1領域内に前記経路データが生成されるように、前記第1領域を、前記第1領域に隣り合う前記第2領域まで拡張する。
【符号の説明】
【0112】
10…三次元造形システム、20…材料供給部、22…連通路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、42…溝部、43…凸条部、44…材料流入口、46…中央部、47…上面、48…下面、50…バレル、52…上面、54…案内溝、56…連通孔、58…バレルヒーター、60…吐出部、61…ノズル、62…ノズル開口、65…流路、70…吐出調整部、74…第1駆動部、75…吸引部、76…第2駆動部、77…吐出制御部、100…三次元造形装置、110…造形部、210…ステージ、211…造形面、212…ステージヒーター、230…移動機構、300…制御部、310…プロセッサー、320…記憶装置、400…情報処理装置、410…CPU、411…データ生成部、420…メモリー、430…記憶装置、440…通信インターフェイス、450…入出力インターフェイス、460…バス、470…入力装置、480…表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14A
図14B
図14C