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特開2024-78056共重合体、顔料分散剤、顔料分散液、及び塗料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078056
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】共重合体、顔料分散剤、顔料分散液、及び塗料
(51)【国際特許分類】
   C08F 230/02 20060101AFI20240603BHJP
   C09K 23/52 20220101ALI20240603BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240603BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240603BHJP
   C09D 7/60 20180101ALI20240603BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20240603BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20240603BHJP
   C08F 212/08 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C08F230/02
C09K23/52
C09D201/00
C09D7/65
C09D7/60
C09D17/00
C08F220/10
C08F212/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190383
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】深澤 甲
【テーマコード(参考)】
4D077
4J037
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4D077AA03
4D077AB03
4D077AB06
4D077AC05
4D077BA01
4D077BA02
4D077DD03X
4D077DD10X
4D077DD14X
4D077DD18X
4D077DD23X
4D077DD29X
4D077DD38X
4J037AA22
4J037CC13
4J037CC16
4J037EE08
4J037EE28
4J037FF23
4J038CG001
4J038HA166
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA10
4J038NA26
4J038PC10
4J100AB02P
4J100AB02S
4J100AJ02T
4J100AL03T
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100AL08S
4J100AL08T
4J100BA02T
4J100BA05Q
4J100BA08Q
4J100BA08R
4J100BA08T
4J100BA15T
4J100BA64T
4J100CA03
4J100DA01
4J100DA29
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100JA01
4J100JA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】顔料の初期分散性と分散安定性に優れ、かつ低起泡性であり、塗料塗膜の光沢度が高い共重合体を提供すること。
【解決手段】スチレン系単量体に由来する構造単位(A)、(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位(B)、及び式(2)等で表される単量体に由来する構造単位(C)

(式中、Rは、水素原子またはメチル基、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基、pはオキシアルキレン基の数であって1~50、Xは-O-又は-NH-、Rは炭素数1~6のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~13のアルキレン基を表し、qは0~30の数、rは1または2、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。)を有し、全構造単位における各構造単位の割合が、構造単位(A)が1~30質量%、構造単位(B)が15~85質量%、構造単位(C)が1~30質量%である共重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系単量体由来の構造単位(A)、
下記一般式(1)で表される構造単位(B)、
【化1】
(式中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~10の炭化水素基を表し、Rは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アンモニウム、炭素原子数1~24の炭化水素基、又は-(AO)-Rを表し、Aは炭素原子数2~4のアルキレン基、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1~100の数、Rは水素原子または炭素原子数1~24の炭化水素基を表す。)
および、
下記一般式(2)又は(3)で表される単量体に由来する構造単位(C)
【化2】
【化3】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基、
Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基、pはオキシアルキレン基の数であって1~50、Xは-O-又は-NH-、
は炭素数1~6のアルキレン基を表し
は炭素数1~13のアルキレン基を表し、qは0~30の数、
rは1または2、
Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。)
を有し、全構造単位における各構造単位の割合が、構造単位(A)が1~30質量%、構造単位(B)が15~85質量%、構造単位(C)が1~30質量%である共重合体。
【請求項2】
重量平均分子量が5,000以上50,000以下である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか1項に記載の共重合体を含有する、顔料分散剤。
【請求項4】
請求項1~2のいずれか1項に記載の共重合体、顔料、及び溶媒を含有する、顔料分散液。
【請求項5】
請求項1~2のいずれか1項に記載の共重合体、顔料、溶媒及びバインダーを含有する塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体、及びそれを含有する顔料分散剤、顔料分散液、並びに塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への取り組みや安全上の理由から、インクや塗料の水性化が進んでいる。しかしながら、無機顔料や有機顔料はいずれも水に対する親和性が低く、水に分散させることは容易ではない。このような背景から、インクや塗料などの顔料分散体組成物において、顔料の分散性を向上させることのできる分散剤が開発されている。
【0003】
顔料用の分散剤としては、スチレン-アクリル酸共重合体、ポリアクリル酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物等の高分子分散剤が知られている。これらの高分子分散剤は、立体障害効果により顔料分散体の長期保存安定性に効果を有するが、分子量が大きいため、溶媒の顔料へのぬれ性(湿潤効果)はほとんど得られない。また、高分子分散剤は、分子中の複数の吸着基により一つの分子が複数の粒子に吸着するいわゆる橋架け凝集が起こりやすく、特に顔料が高濃度のとき、顔料粒子の凝集や沈降を引き起こすことがあった。
【0004】
一方、湿潤作用を有する顔料分散剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレントリブロック共重合体、アルコキシポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩等のアニオン界面活性剤等が知られている(特許文献1、2参照)。また、スチレン-無水マレイン酸共重合体にポリアルキレングリコール鎖をグラフト化したくし形共重合体を含む湿潤兼分散剤や、該くし形共重合体と界面活性剤を併用した顔料分散樹脂組成物が知られている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-352861号公報
【特許文献2】特開2005-54128号公報
【特許文献3】特表2010-514864号公報
【特許文献4】国際公開第2015/152042号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非イオン界面活性剤からなる顔料分散剤は、顔料粒子に対する湿潤性を有するため顔料の初期分散性には効果を有するものの、顔料粒子間にはたらく斥力が不十分であり、長期保存下においては顔料粒子の凝集や沈降を引き起こすことがあった。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩は、顔料の初期分散性及び長期保存安定性に効果を有するものの、起泡性が高いという問題があった。
【0007】
一方、特許文献3や特許文献4に記載されているくし形共重合体は、酸化チタンのような親水化処理された顔料粒子への吸着力が弱く、十分な粘度低減効果が得られず、また塗料塗膜の光沢度が低い問題があった。
本発明は、上記先行技術の問題点に鑑みなされたものであり、顔料の初期分散性と分散安定性に優れ、かつ低起泡性であり、分散液を使用した塗料塗膜が高光沢である共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、顔料分散剤として特定の共重合体を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の[1]~[5]に関するものである。
[1]スチレン系単量体由来の構造単位(A)、
下記一般式(1)で表される構造単位(B)、
【化1】
(式中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~10の炭化水素基を表し、Rは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アンモニウム、炭素原子数1~24の炭化水素基、又は-(AO)-Rを表し、Aは炭素原子数2~4のアルキレン基、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1~100の数、Rは水素原子または炭素原子数1~24の炭化水素基を表す。)
および、
下記一般式(2)又(3)で表される単量体に由来する構造単位(C)
【化2】
【化3】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基、
Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基、pはオキシアルキレン基の数であって1~50、Xは-O-又は-NH-、
は炭素数1~6のアルキレン基を表し
は炭素数1~13のアルキレン基を表し、qは0~30の数、
rは1または2、
Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。)
を有し、全構造単位における各構造単位の割合が、構造単位(A)が1~30質量%、構造単位(B)が15~85質量%、構造単位(C)が1~30質量%である共重合体。
[2]重量平均分子量が5,000以上50,000以下である、[1]に記載の共重合体。
[3][1]~[2]のいずれか1項に記載の共重合体を含有する、顔料分散剤。
[4][1]~[2]のいずれか1項に記載の共重合体、顔料、及び溶媒を含有する、顔料分散液。
[5][1]~[2]のいずれか1項に記載の共重合体、顔料、溶媒及びバインダーを含有する塗料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の共重合体やそれを含有する顔料分散剤を用いることで、顔料の初期分散性と分散安定性に優れ、かつ泡立ちの少なく、塗膜が高光沢となる塗料を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の共重合体、顔料分散剤、顔料分散液、及び塗料について詳述する。
【0011】
<構造単位(A)>
本発明の共重合体は、スチレン系単量体(a)由来の構造単位(A)を有する。スチレン系単量体(a)はベンゼンの水素原子の一つがビニル基に置換した構造を有するものであり、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、ハロゲンで核置換されたスチレン、1-ビニルナフタレン、p-メチルスチレン、p-プロピルスチレン、p-シクロヘキシルスチレン、p-ドデシルスチレン等の芳香族ビニル単量体が挙げられる。これらの中でも、スチレン、またはα-メチルスチレンが好ましい。
【0012】
本発明の共重合体の全構造単位中、構造単位(A)の割合は、顔料表面への吸着をより強固にし、また顔料分散液の乾燥性を高める観点から1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、そして、水系顔料分散液の分散安定性の観点から30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは23質量%以下である。
【0013】
<構造単位(B)>
本発明の共重合体は、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(b)に由来する構造単位(B)を有する。
【0014】
【化1】
(式中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~10の炭化水素基を表し、Rは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アンモニウム、炭素原子数1~24の炭化水素基、又は-(AO)-Rを表し、Aは炭素原子数2~4のアルキレン基、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1~100の数、Rは水素原子または炭素原子数1~24の炭化水素基を表す。)
【0015】
一般式(1)中、Rは、水素原子または炭素原子数1~10の炭化水素基を表し、炭素原子数1~10の炭化水素基として具体的には、直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられる。これらの中でも、顔料分散液の分散安定性の観点から、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0016】
一般式(1)中、Rは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アンモニウム、炭素原子数1~24の炭化水素基、又は-(AO)-Rを表し、Aは炭素原子数2~4のアルキレン基、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1~100の数、Rは水素原子または炭素原子数1~24の炭化水素基を表す。炭素原子数1~24の炭化水素基として具体的には、直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられる。これらの中でも、顔料分散液の分散安定性の観点から、Rが水素原子、またはRが-(AO)-Rで、Aが炭素原子数2または3のアルキレン基であり、Rが水素原子またはメチル基であるものが好ましい。
【0017】
一般式(1)中、AOは炭素原子数2~4のアルキレンオキシ基を示し、具体的には、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基が挙げられる。AOは、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基又はブチレンオキシ基のみから構成されていてもよいし、これら2種以上の基を含んでいてもよい。2種以上の基を含む場合、それらの付加形態はランダム付加、ブロック付加のいずれであってもよい。
【0018】
一般式(1)中、nは上記アルキレンオキサイドの繰り返し構造単位数を示し、分散性の観点から1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上であり、水系顔料分散液の乾燥性や抑泡性の観点から100以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは60以下である。
【0019】
単量体(b)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの塩、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにアルキレンオキサイドを付加させた、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アルキルアクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アルキルアクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アルキルアクリレート、(メタ)アクリル酸にメトキシポリエチレングリコールをエステル化させたメトキシポリエチレングリコールアクリレート、(メタ)アクリル酸にメトキシポリプロピレングリコールをエステル化させたメトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、(メタ)アクリル酸にメトキシブチレングリコールをエステル化させたメトキシポリブチレン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの単量体は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
本発明の共重合体の全構造単位中、構造単位(B)の割合は、顔料粒子同士の凝集を抑制して分散安定性を付与する観点から15質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上であり、そして、水系顔料分散液の乾燥性や抑泡性の観点から85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
【0021】
<構造単位(C)>
本発明の共重合体は、一般式(2)または(3)で表されるリン酸基を有する単量体(c)に由来する構造単位(C)を有する。
【0022】
【化2】
【化3】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基、
Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基、pはオキシアルキレン基の数であって1~50、Xは-O-又は-NH-、
は炭素数1~6のアルキレン基を表し
は炭素数1~13のアルキレン基を表し、qは0~30の数、
rは1または2、
Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。)
【0023】
単量体(c)は、公知の方法により製造することができる。例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにアルキレンオキサイドまたは環状エステルや環状カーボネートを付加させた後、得られた付加物に対してリン酸化剤を反応させてリン酸エステル化することにより得ることができる。
【0024】
上記リン酸化剤としては、例えば、オルトリン酸、五酸化リン(無水リン酸)、ポリリン酸、オキシ塩化リン等の公知のリン化合物を使用できる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
単量体(c)としては、リン酸モノエステル体(一般式(2)または(3)中のrが1の場合)、リン酸ジエステル体(rが2の場合)、またはそれらの混合物が挙げられる。モノエステル体とジエステル体の混合物を用いる場合、重合時の分子量制御の観点から、モノエステル体の比率が60モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。
【0026】
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0027】
上記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、それらの付加形態はランダム付加、ブロック付加のいずれであってもよい。
これらアルキレンオキサイドを反応させることにより、上記一般式(2)または(3)における-(AO)-を形成する。
【0028】
一般式(2)または(3)中、pは上記アルキレンオキサイドの繰り返し構造単位数を示し、分散性の観点から1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、水系顔料分散液の乾燥性や抑泡性の観点から50以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
【0029】
一般式(2)または(3)中、qは上記環状エステルや環状カーボネートの繰り返し構造単位数を示し、分散性の観点から0以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、水系顔料分散液の乾燥性や抑泡性の観点から30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
【0030】
上記環状エステルとしては、例えば、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等の炭素数3~11のラクトン類を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、ε-カプロラクトンが好適である。また、上記環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート等の5員環(1,3-ジオキソラン環)構造を有するもの;1,3-プロピレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、1,3-ペンチレンカーボネート、2,4-ペンチレンカーボネート、2,2-ジメチル-1,3-プロピレンカーボネート(ネオペンチルグリコールカーボネートまたは5,5-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オンとも呼ばれる)等の6員環(1,3-ジオキサン環)構造を有するもの;1,4-ブチレンカーボネート、1,4-ペンチレンカーボネート等の7員環(1,3-ジオキセパン環)構造を有するものなどを挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、2,2-ジメチル-1,3-プロピレンカーボネートが好適である。
【0031】
本発明の共重合体の全構造単位中、構造単位(C)の割合は、顔料の分散性や、低泡性の観点から1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、また30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0032】
<その他の構造単位>
本発明の共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、構造単位(A)、(B)及び(C)以外のその他の構造単位を含んでもよい。
その他の構造単位としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、アクリロニトリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、アリルメタクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス―(2-メトキシエトキシ)ビニルシラン等の単量体に由来する構造単位が例示できる。
【0033】
本発明の共重合体の全構成単位中、前記その他の構成単位の割合は、本発明の効果を発現させる観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0034】
<共重合体の製造方法>
本発明の共重合体は、上記構造単位である、スチレン系単量体由来の単量体(a)、(メタ)アクリル酸系単量体に由来の単量体(b)及びリン酸基を有する単量体由来の単量体(c)を含む単量体混合物を溶液重合法で重合させる等、公知の方法で得ることができる。溶液重合に用いられる溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;エタノール、2-プロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、メトキシプロピルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒等が挙げられる。溶媒の量は、単量体全量100質量部に対し、好ましくは50質量部以上1000質量部以下である。
【0035】
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、アゾ系重合開始剤、ヒドロ過酸化物類、過酸化ジアルキル類、過酸化ジアシル類、ケトンペルオキシド類、過酸化エステル等が挙げられる。重合開始剤の量は、モノマー全量100モルに対し、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上、更に好ましくは3モル以上であり、そして、好ましくは15モル以下、より好ましくは12モル以下、更に好ましくは9モル以下である。重合反応は、好ましくは窒素雰囲気で行い、反応温度は、好ましくは60℃以上180℃以下、反応時間は、好ましくは0.5時間以上20時間以下である。
【0036】
重合の際には、さらに連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、メルカプトコハク酸等のメルカプタン類;チウラムジスルフィド類;炭化水素類;α-メチルスチレン等の不飽和環状炭化水素化合物;不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
<共重合体>
本発明の共重合体において、構造単位(A)、構造単位(B)、及び構造単位(C)の配列は、ランダム、ブロック、又はグラフトのいずれでもよいが、共重合体の製造容易性の観点から、好ましくはランダム及びブロックから選ばれる少なくとも1種である。また、顔料分散液の分散安定性の観点から、共重合体中の酸基が塩基性化合物により部分中和または完全中和されていることが好ましい。塩基性化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2-アミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール等の有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0038】
本発明の共重合体の重量平均分子量は、分散性向上の観点から好ましくは5,000以上であり、より好ましくは15,000以上、更に好ましくは18,000以上であり、そして、分散性向上及び共重合体の製造容易性の観点から好ましくは50,000以下であり、より好ましくは40,000以下、更に好ましくは30,000以下である。なお、重量平均分子量の測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0039】
本発明の共重合体の酸価は、分散性向上の観点から、好ましくは10mgKOH/g以上であり、より好ましくは15mgKOH/g以上、更に好ましくは20mgKOH/g以上であり、そして、起泡性の観点から、好ましくは50mgKOH/g以下であり、より好ましくは40mgKOH/g以下、さらに好ましくは30mgKOH/g以下である。
【0040】
本発明の共重合体の残存モノマーは、塗料塗膜の光沢度の観点から、好ましくは15%以下、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは10%以下である。なお、残存モノマーの定量方法は、実施例に記載の方法による。
【0041】
<顔料分散剤>
本発明の共重合体は、顔料に優れた初期分散性と分散安定性を付与できることから、顔料分散剤として好適に用いることができる。本発明の顔料分散剤は、前記共重合体の他に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、前記共重合体製造時の未反応の単量体や副生成物、反応溶媒、水及び有機溶剤を含有していても良い。
【0042】
<顔料分散液>
本発明の顔料分散液は、本発明の共重合体を用いて顔料の粉体、粉体の原鉱石又は粗粒子を水系媒体等の溶媒中に分散させることにより得ることができる。
顔料としては、有機顔料及び無機顔料等が挙げられる。
有機顔料としては、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系等の不溶性アゾ顔料、銅フタロシニンブルー、ハロゲン化銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、イソシンドリノン系、キナクリドン系、ジオキサンジン系、ペリノン系及びペリレン系等の多環式又は複素環式化合物等が挙げられる。
無機顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、アルミナ、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト及びチタンブラック等が挙げられる。
【0043】
溶媒としては、特に限定されるものではなく、水、水とエタノール、エチレングリコール等の水溶性有機溶媒との混合溶液、有機溶媒が挙げられるが、好ましくは水である。有機溶媒としては、キシレン、酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトン、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、n-プロパノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、n-ブタノール及びメタノール等が挙げられる。
【0044】
本発明の顔料分散液中の顔料の含有量は、特に規定はないが、通常50~90質量%であり、55~85質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましい。また、顔料分散液中の本発明の共重合体の含有量は特に規定されないが、顔料100質量部に対して通常0.01~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がさらに好ましく、0.05~3質量部が特に好ましい。
【0045】
本発明の顔料分散剤を使用して、顔料分散液を得る方法としては、通常のスラリー化方法が用いられる。例えば本発明の顔料分散剤を溶解した水溶液に顔料を添加して撹拌、混合する方法、顔料に水と本発明の顔料分散剤を加えて撹拌、混合する方法等が挙げられる。撹拌、混合する方法としては、例えばホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ディスパー、超音波分散器、ビーズミル、ボールミル、3本ロールミル、マイルダー等、一般に用いられる湿式粉砕機を使用することができる。
【0046】
<塗料>
本発明の顔料分散液は、バインダーを添加することにより塗料として使用することができる。バインダーとしては樹脂エマルション、モノマーエマルション、樹脂溶液等が挙げられ、樹脂エマルションとしては、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルション、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、その共重合体樹脂エマルション、バーサチック酸ビニルエステル樹脂エマルション、スチレン樹脂エマルション、スチレン―ブタジエン樹脂エマルション、スチレン-アクリル樹脂エマルション、スチレン-無水マレイン酸樹脂エマルション、アクリロニトリル―ブタジエン樹脂エマルション、エチレン-酢酸ビニル樹脂エマルション、エチレン-ビニルアルコール樹脂エマルション、エチレン-(メタ)アクリル酸樹脂エマルション、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル―無水マレイン酸樹脂エマルション、酸化ポリエチレン樹脂エマルション、酸化ポリプロピレン樹脂エマルション、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂エマルション、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂エマルション、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン樹脂エマルション、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン-プロピレン樹脂エマルション、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン樹脂エマルション、無水マレイン酸変性ポリブタジエンエマルション、塩素化ポリエチレン樹脂エマルション、塩素化ポリプロピレン樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、ウレタンアクリル樹脂エマルション、ポリエステル樹脂エマルション、アルキッド樹脂エマルション、アミノアルキド樹脂エマルション、ポリ塩化ビニル樹脂エマルション、ロジンエマルション、ロジンエステルエマルション、石油樹脂エマルション、尿素樹脂(ユリア樹脂)エマルション、メラミン樹脂エマルション、フェノール樹脂エマルション、レゾルシノール樹脂エマルション、シリコーン樹脂エマルション、シリコンアクリル樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション、テルペン樹脂エマルション、テルペンフェノール樹脂エマルション、ポリ乳酸樹脂エマルション、パラフィンワックスエマルション、マイクロクリスタリンワックスエマルション、FTワックスエマルション、カルナバワックスエマルション、ライスワックスエマルション、モンタンワックスエマルション、キャンデリラワックスエマルション、蜜蝋エマルション、セラックエマルション、アマイドワックスエマルションなどが挙げられる。樹脂溶液としては水溶性フェノール溶液、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、イソブチレン―無水マレイン酸共重合樹脂のアルカリ金属塩、アミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0047】
モノマーエマルションとしては、UVなどで硬化する目的でメタ(アクリル酸)エステルを分散させたエマルションなどが挙げられる。UV硬化用モノマーとしては単官能アクリレートモノマーとして、β-カルボキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2官能アクリレートモノマーとして、ジプロピレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコール変性ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、3官能アクリレートモノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4官能以上のアクリレートモノマーとしてペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート、ペンタエリスリトールアルコキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられ、メタクリレートモノマーとしては、イソボルニルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。樹脂エマルション、モノマーエマルション及び樹脂溶液の配合量は塗料組成物の固形分100質量部に対して、通常固形分として20質量部以上99質量部以下であるが、好ましくは30質量部以上80質量部以下であり、さらに好ましくは40質量部以上70質量部以下である。
【実施例0048】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に指定のない限り、配合量は質量部で示す。
【0049】
(1)重量平均分子量の測定
ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」と称する)法を用いた。試料をTHF(テトラヒドロフラン)で希釈し、試料の固形分濃度0.05質量%の溶液を調整して試料溶液とし、その20μLを測定に供した。THFを溶離液として、GPC(装置:東ソー株式会社製「HLC-8320GPC」、検出器:RI(示差屈折)検出器(装置付属)、カラム:東ソー株式会社製「TSKgel(登録商標) SuperMultiporeHZ-M×2本、TSKgel SuperMultiporeHZ1000×1本、TSKgel(登録商標) SuperMultiporeHZ2000×1本」、カラム温度:40℃、溶離液流速:1mL/min)により、測定した。標準物質としては、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製「PStQuick(登録商標)」)を用いた。
【0050】
(2)残存モノマーの定量
(1)のGPC測定にて得られた全てのシグナルの面積を100%として、ポリマーシグナルを除いた面積を残存モノマーのシグナルとして、面積%で比較した。
【0051】
[製造例1]
(リン酸基を有する単量体(c):PM-Pの製造例)
撹拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコにポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製、ブレンマー(登録商標)PP-1000)100gを仕込み、無水燐酸14.0gを60℃を超えないよう1時間かけて添加した。60℃で1時間撹拌反応した後、90℃まで昇温し、更に3時間撹拌反応した。イオン交換水1.1gを添加して、同温度で3時間撹拌反応し、冷却後、α-ヒドロキシ-ω-メタクリロイルオキシポリオキシプロピレン=ホスファート(PM-P)を得た。
【0052】
[製造例2]
(リン酸基を有する単量体(c):EM-Pの製造例)
撹拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコにポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製、ブレンマー(登録商標)PE-200)100gを仕込み、無水燐酸17.2gを60℃を超えないよう1時間かけて添加した。60℃で1時間撹拌反応した後、90℃まで昇温し、更に3時間撹拌反応した。イオン交換水1.3gを添加して、同温度で3時間撹拌反応し、冷却後、α-ヒドロキシ-ω-メタクリロイルオキシポリオキシエチレン=ホスファート(EM-P)を得た。
【0053】
[製造例3]
(リン酸基を有する単量体(c):LM-Pの製造例)
撹拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコにポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート(株式会社ダイセル製、プラクセル(登録商標)FM2D)100gを仕込み、無水燐酸14.4gを60℃を超えないように1時間かけて添加した。60℃で1時間撹拌反応した後、90℃まで昇温し、更に3時間撹拌反応した。イオン交換水1.1gを添加して、同温度で3時間撹拌反応し、冷却後、2-ヒドロキシエチル=メタクリラートの6-ヘキサノリド付加重合物のリン酸エステル(LM-P)を得た。
【0054】
[実施例1]
(共重合体1の製造例)
撹拌機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた5つ口フラスコに、初期仕込み用モノマー液としてスチレン9.6g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート49.5g、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート13.5g、ドデシルメルカプタン0.6g及びメトキシプロピルアセテート102.9gを仕込み、窒素気流下120℃まで昇温し、同温度を保ちながら、滴下用モノマー液としてスチレン9.6g、メタクリル酸メチル9.0g、メタクリル酸1.8g、PM-P9.9g、ドデシルメルカプタン0.6g、tert-ブチル=2-エチルペルオキシヘキサノアート0.9g及びメトキシプロピルアセテート92.1gの混合液を滴下し、4時間反応させて共重合体1の溶液を得た。
【0055】
[実施例2~17、比較例1~6]
「初期仕込み用モノマー液」及び「滴下用モノマー液」の組成をそれぞれ表1、2の記載に従って変更したことを除いては、実施例1と同様の方法により、共重合体2~23の溶液を得た。不揮発分、並びに重量平均分子量は、表1、2に示した通りである。
なお、表中の略号は以下を意味する。
・St:スチレン
・M-MPEG:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(数平均分子量2800)
・M-PP:ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製、ブレンマー(登録商標)PP-500D)
・MA-Es:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(東邦化学工業社製、メトキシ PEG-2000、数平均分子量2000)のマレエート
・MA-EPs:ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比、2.4/1.0、数平均分子量 2000)のマレエート
・MA-EPAs:マレイン酸と片末端アミノ化ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノメチルエーテル(ハンツマン社製 ジェファーミン(登録商標)M2070、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比 10/31、重量平均分子量 2000)のアミド化物
・MMA:メタクリル酸メチル
・MAA:メタクリル酸
・PM-P:α-ヒドロキシ-ω-メタクリロイルオキシポリオキシプロピレン=ホスファート
・EM-P:α-ヒドロキシ-ω-メタクリロイルオキシポリオキシエチレン=ホスファート
・LM-P:2-ヒドロキシエチル=メタクリラートの6-ヘキサノリド付加重合物のリン酸エステル
・PGMEA:メトキシプロピルアセテート
・P-O:tert-ブチル=2-エチルペルオキシヘキサノアート(日油株式会社製 パーブチル(登録商標) O)
・AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
・DM:ドデシルメルカプタン
【0056】
(顔料分散液の調整)
共重合体1を2.9g(固形分換算で1.0g)と、イオン交換水26.1gを容量50mLガラス容器に入れ、pH約7となるまで撹拌しながら2-ジメチルアミノエタノールを滴下し中和した。その後、中和液を容量200mLのポリプロピレン製容器に入れ、更に二酸化チタン(Ti-Pure(登録商標) R-902 ケマーズ社製)71gも同容器に入れた。次いで、ホモディスパーにて混合撹拌(2,000rpm×15分)を行い、顔料分散液1を得た。実施例2~17、比較例1~6も同様な工程で顔料分散液を調整した。
【0057】
(塗料の調整)
上記顔料分散液1を室温にて24時間静置した後、撹拌機を備えた容量110mLガラス容器に33.9g取り分けた。次いで、シリコンアクリル樹脂エマルション(DIC株式会社製、ボンコート(登録商標)SA-6340、不揮発分50%)60.7g、造膜助剤(KHネオケム株式会社製、製品名 キョーワノール(登録商標) M)2.5g、増粘剤(アシュランド社製、アクアフロー(登録商標)NLS-200)0.3g及び2-ジメチルアミノエタノール0.1gを撹拌しながら混合した。次いで、混合液の粘度が5,000mPa・s±1,000の範囲になるように、撹拌しながらイオン交換水を適量添加して粘度調整を行い、塗料を得た。実施例2~17、比較例1~6も同様な工程で塗料を調整した。
【0058】
[性能評価]
上記実施例1~17及び比較例1~6で得た塗料を以下の(1)~(3)の性能評価試験に供した。結果を表1、2に示す。
【0059】
[顔料分散液の評価]
(1)泡立ち評価
泡立ちの評価として、顔料分散液作製時のホモディスパーで混合撹拌した直後の泡高さを測定した。
【0060】
(2)分散性評価
初期分散性と分散安定性の評価として、得られた顔料分散液の調整直後と50℃、7日間静置後の粘度測定評価を行った。
粘度測定は、東機産業株式会社製粘度計TVB-10、ローターNo.2、30rpmにて行った。
また、粘度上昇率は以下の式により算出した。
粘度上昇率=50℃、7日間静置後の粘度(mPa・s)/調整直後の粘度(mPa・s)
【0061】
[塗料の評価]
(3)光沢度評価
上記調整した塗料を隠ぺい試験紙に適量採り、150μmの膜厚となるようアプリケーターにて塗布をして、室温にて1時間乾燥した。乾燥後、塗膜のそれぞれ異なる場所3点の20°光沢度を日本電色工業株式会社製ハンディ型光沢度計 PG-2Mにて測定し、平均値を光沢度とした。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1、2に示すとおり、本発明の共重合体を用いた実施例1~17の顔料分散液及び塗料は、比較例1~6よりも初期分散性と分散安定性が優れており、また泡立ちも少なくかつ塗料塗膜の光沢度も高かった。