IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 戸田建設株式会社の特許一覧

特開2024-78059風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法
<>
  • 特開-風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法 図1
  • 特開-風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法 図2
  • 特開-風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法 図3
  • 特開-風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法 図4
  • 特開-風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法 図5
  • 特開-風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法 図6
  • 特開-風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法 図7
  • 特開-風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法 図8
  • 特開-風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078059
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/40 20160101AFI20240603BHJP
【FI】
F03D13/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190389
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100213388
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 康司
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
(72)【発明者】
【氏名】山本 純一
(72)【発明者】
【氏名】佛川 隆晃
(72)【発明者】
【氏名】河西 秀明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勇介
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178BB77
3H178BB90
3H178CC02
3H178DD68X
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】本発明は、ブレードを実際に輸送する前に車両及びブレードと干渉する地物の範囲を明確にする風車の輸送支援装置を提供する。
【解決手段】風車の輸送支援装置10は、取得部21と、第1移動処理部22aと、第1判定部22bと、第2移動処理部24aと、第2判定部24bと、第2範囲算出部24cと、を含む。取得部21は、風力発電設備の風車に用いるブレードを輸送する輸送経路に沿った三次元経路データと、伏した状態で積載されたブレードを含む第1車両モデルと、起立させた状態で積載されたブレードとを含む第2車両モデルと、を取得する。第1移動処理部は、第1車両モデル65を移動させ、第1判定部22bは、地物データが干渉する判定し、第2移動処理部24aは、第2車両モデル66を移動させ、第2判定部24bは、地物データが干渉するか判定する。第2範囲算出部24cは、第2車両モデル66に干渉する範囲を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電設備の風車に用いるブレードを輸送する輸送経路に沿った三次元経路データと、前記ブレードを輸送する車両と当該車両に伏した状態で積載された前記ブレードとを含む三次元データの第1車両モデルと、前記車両と当該車両に起立させた状態で積載された前記ブレードとを含む三次元データの第2車両モデルと、を取得する取得部と、
前記三次元経路データにおける前記輸送経路に沿って、前記第1車両モデルを移動させる第1移動処理部と、
前記第1移動処理部の処理において前記三次元経路データに含まれる地物データが前記第1車両モデルに干渉するか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部において前記地物データが前記第1車両モデルに干渉すると判定された前記輸送経路の一部に沿って、前記第2車両モデルを移動させる第2移動処理部と、
前記第2移動処理部の処理において前記地物データが前記第2車両モデルに対して干渉するか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部の処理における干渉する範囲を算出する範囲算出部と、
を備えることを特徴とする、風車の輸送支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の風車の輸送支援装置において、
前記範囲は、道路を拡幅する範囲及び/または樹木を伐採する範囲であることを特徴とする、風車の輸送支援装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の風車の輸送支援装置において、
角度算出部をさらに備え、
前記輸送経路の一部は、複数の区間に分割され、
前記第2車両モデルは、前記ブレードを前記伏した状態から前記起立させた状態へ少なくとも複数の起立角度に変更可能であって、
前記第2移動処理部は、前記複数の起立角度に設定された前記第2車両モデルのそれぞれを前記輸送経路の一部に沿って移動させ、
前記角度算出部は、前記第2判定部の処理で干渉しないと判定された前記第2車両モデルの前記起立角度を前記区間に対応して算出することを特徴とする、風車の輸送支援装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の風車の輸送支援装置において、
角度算出部をさらに備え、
前記第2車両モデルは、前記ブレードを前記伏した状態から前記起立させた状態へ少なくとも複数の起立角度に変更可能であって、
前記第2移動処理部は、前記ブレードの前記起立角度を変更しながら前記第2車両モデルを前記輸送経路の一部に沿って移動させ、
前記角度算出部は、前記第2移動処理部の処理における前記地物データに干渉しないで前記第2車両モデルを移動可能な前記起立角度を前記輸送経路の一部に対応して算出することを特徴とする、風車の輸送支援装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の風車の輸送支援装置において、
前記範囲を表示する表示部を備えることを特徴とする、風車の輸送支援装置。
【請求項6】
請求項5に記載の風車の輸送支援装置において、
前記表示部は、前記第2車両モデルを移動させる開始点と終了点とを地図データ上に表示することを特徴とする、風車の輸送支援装置。
【請求項7】
風力発電設備の風車に用いるブレードを輸送する輸送経路に沿った三次元経路データと

前記ブレードを輸送する車両と当該車両に伏した状態で積載された前記ブレードとを含む三次元データの第1車両モデルと、
前記車両と当該車両に起立させた状態で積載された前記ブレードとを含む三次元データの第2車両モデルと、
を取得し、
前記三次元経路データにおける前記輸送経路に沿って前記第1車両モデルを移動させて、前記三次元経路データに含まれる地物データが前記第1車両モデルに干渉するか否かを判定し、
前記地物データが前記第1車両モデルに干渉すると判定された場合に、干渉する前記輸送経路の一部に沿って前記第2車両モデルを移動させて、前記地物データが前記第2車両モデルに対して干渉するか否かをさらに判定し、
前記地物データが前記第2車両モデルに干渉すると判定された場合に、前記地物データにおける干渉する範囲を算出することを特徴とする、風車の輸送支援方法。
【請求項8】
風力発電設備の風車に用いるブレードを輸送する輸送経路に沿った三次元経路データと、
前記ブレードを輸送する車両と当該車両に伏した状態で積載された前記ブレードとを含む三次元データの第1車両モデルと、
前記車両と当該車両に前記伏した状態から起立させた状態へ少なくとも複数の起立角度に変更可能に積載された前記ブレードとを含む三次元データの第2車両モデルと、
を取得し、
前記三次元経路データにおける前記輸送経路に沿って前記第1車両モデルを移動させて、前記三次元経路データに含まれる地物データが前記第1車両モデルに干渉するか否かを判定し、
前記地物データが前記第1車両モデルに干渉すると判定された場合に、干渉する前記輸送経路の一部に沿って前記起立角度を変更しながら前記第2車両モデルを移動させ、
前記第2車両モデルの移動において前記地物データが前記第2車両モデルに対して干渉するか否かをさらに判定し、
前記地物データが前記第2車両モデルに干渉しない前記輸送経路の区間に対応して変化する前記起立角度を算出し、
前記区間以外の前記輸送経路の一部に対応して前記地物データにおける干渉する範囲を算出することを特徴とする、風車の輸送支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備に用いる風車の特に長尺部材であるブレードを輸送する輸送支援装置及び輸送支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーの活用が注目されており、風力発電設備が沿岸地域や山岳部に建設されている。特に山岳部における風力発電設備の建設は、大型の風車を構成する部材を陸上輸送しなければならない。風車は、円柱状に直立するタワー、タワーの上端に載せるナセル、及びナセルに回転可能に取り付けられる複数のブレード(羽根)などから構成される。風車の部材の中でもブレードは、特に長尺の部材であって、一般に40m以上あり、60m以上のものも存在する。そのため、山岳部に風車を建設する場合、長尺のブレードを積載した大型の車両は、狭く曲がりくねった山道の移動が困難である。
【0003】
そのため、ブレードを片持ち支持する起伏機構を備える運搬用装置が提案されている(特許文献1)。このような運搬用装置は、直線状の道路ではブレードが伏した(倒れた)状態で車両を走行させ、カーブではブレードが起立した状態に変更して旋回径を小さくして走行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-243805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような起伏機構を備える運搬用装置を用いても山岳部における風車の部材輸送に際しては、輸送経路における道路の拡幅や樹木の伐採といった多くの準備が必要となる。そして、経験豊富な輸送作業者による測量等を実施し、道路台帳、付属の平面図を用いて拡幅や伐採の計画を立てても、実際の輸送作業において道路の縦断勾配、法面勾配、樹木の高さ等により拡幅する範囲や伐採する範囲が変更になることがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、長尺部材であるブレードを実際に輸送する前に車両及びブレードと干渉する地物の範囲を明確にする風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[1]本発明に係る風車の輸送支援装置の一態様は、
風力発電設備の風車に用いるブレードを輸送する輸送経路に沿った三次元経路データと、前記ブレードを輸送する車両と当該車両に伏した状態で積載された前記ブレードとを含む三次元データの第1車両モデルと、前記車両と当該車両に起立させた状態で積載された前記ブレードとを含む三次元データの第2車両モデルと、を取得する取得部と、
前記三次元経路データにおける前記輸送経路に沿って、前記第1車両モデルを移動させる第1移動処理部と、
前記第1移動処理部の処理において前記三次元経路データに含まれる地物データが前記
第1車両モデルに干渉するか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部において前記地物データが前記第1車両モデルに干渉すると判定された前記輸送経路の一部に沿って、前記第2車両モデルを移動させる第2移動処理部と、
前記第2移動処理部の処理において前記地物データが前記第2車両モデルに対して干渉するか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部の処理における干渉する範囲を算出する範囲算出部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
[2]前記風車の輸送支援装置の一態様において、
前記範囲は、道路を拡幅する範囲及び/または樹木を伐採する範囲であることができる。
【0010】
[3]前記風車の輸送支援装置の一態様において、
角度算出部をさらに備え、
前記輸送経路の一部は、複数の区間に分割され、
前記第2車両モデルは、前記ブレードを前記伏した状態から前記起立させた状態へ少なくとも複数の起立角度に変更可能であって、
前記第2移動処理部は、前記複数の起立角度に設定された前記第2車両モデルのそれぞれを前記輸送経路の一部に沿って移動させ、
前記角度算出部は、前記第2判定部の処理で干渉しないと判定された前記第2車両モデルの前記起立角度を前記区間に対応して算出することができる。
【0011】
[4]前記風車の輸送支援装置の一態様において、
角度算出部をさらに備え、
前記第2車両モデルは、前記ブレードを前記伏した状態から前記起立させた状態へ少なくとも複数の起立角度に変更可能であって、
前記第2移動処理部は、前記ブレードの前記起立角度を変更しながら前記第2車両モデルを前記輸送経路の一部に沿って移動させ、
前記角度算出部は、前記第2移動処理部の処理における前記地物データに干渉しないで前記第2車両モデルを移動可能な前記起立角度を前記輸送経路の一部に対応して算出することができる。
【0012】
[5]前記風車の輸送支援装置の一態様において、
前記範囲を表示する表示部を備えることができる。
【0013】
[6]前記風車の輸送支援装置の一態様において、
前記表示部は、前記第2車両モデルを移動させる開始点と終了点とを地図データ上に表示することができる。
【0014】
[7]本発明に係る風車の輸送支援方法の一態様は、
風力発電設備の風車に用いるブレードを輸送する輸送経路に沿った三次元経路データと、
前記ブレードを輸送する車両と当該車両に伏した状態で積載された前記ブレードとを含む三次元データからなる第1車両モデルと、
前記車両と当該車両に起立させた状態で積載された前記ブレードとを含む三次元データからなる第2車両モデルと、
を取得し、
前記三次元経路データにおける前記輸送経路に沿って前記第1車両モデルを移動させて、前記三次元経路データに含まれる地物データが前記第1車両モデルに干渉するか否かを判定し、
前記地物データが前記第1車両モデルに干渉すると判定された場合に、干渉する前記輸送経路の一部に沿って前記第2車両モデルを移動させて、前記地物データが前記第2車両モデルに対して干渉するか否かをさらに判定し、
前記地物データが前記第2車両モデルに干渉すると判定された場合に、前記地物データにおける干渉する範囲を算出することを特徴とする。
【0015】
[8]本発明に係る風車の輸送支援方法の一態様は、
風力発電設備の風車に用いるブレードを輸送する輸送経路に沿った三次元経路データと、
前記ブレードを輸送する車両と当該車両に伏した状態で積載された前記ブレードとを含む三次元データからなる第1車両モデルと、
前記車両と当該車両に前記伏した状態から起立させた状態へ少なくとも複数の起立角度に変更可能に積載された前記ブレードとを含む三次元データの第2車両モデルと、
を取得し、
前記三次元経路データにおける前記輸送経路に沿って前記第1車両モデルを移動させて、前記三次元経路データに含まれる地物データが前記第1車両モデルに干渉するか否かを判定し、
前記地物データが前記第1車両モデルに干渉すると判定された場合に、干渉する前記輸送経路の一部に沿って前記起立角度を変更しながら前記第2車両モデルを移動させ、
前記第2車両モデルの移動において前記地物データが前記第2車両モデルに対して干渉するか否かをさらに判定し、
前記地物データが前記第2車両モデルに干渉しない前記輸送経路の区間に対応して変化する前記起立角度を算出し、
前記区間以外の前記輸送経路の一部に対応して前記地物データにおける干渉する範囲を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法によれば、ブレードを実際に輸送する前に車両及びブレードと干渉する地物の範囲を明確にすることができるため、輸送作業を行う者の経験に頼らずに道路の拡幅や樹木の伐採の計画を立案できる。そのため、本発明の風車の輸送支援装置及び風車の輸送支援方法によれば、輸送作業を行う者を支援して、作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る風車の輸送支援装置の概略構成図である。
図2】三次元経路データの一例を説明するための模式図である。
図3】第1車両モデルの一例を説明するための模式図である。
図4】第2車両モデルの一例を説明するための模式図である。
図5】地図データ上に干渉する範囲を表示した一例を説明するための模式図である。
図6】本実施形態に係る風車の輸送支援方法のフローチャートである。
図7】変形例1に係る風車の輸送支援装置の概略構成図である。
図8】変形例1に係る風車の輸送支援方法のフローチャートである。
図9】変形例2に係る風車の輸送支援方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0019】
1.風車の輸送支援装置
図1図5を用いて、本実施形態に係る風車の輸送支援装置10(以下、単に「輸送支援装置10」という)について説明する。図1は、本実施形態に係る輸送支援装置10の概略構成図であり、図2は、三次元経路データ50の一例を説明するための模式図であり、図3は、第1車両モデル65の一例を説明するための模式図であり、図4は、第2車両モデル66の一例を説明するための模式図であり、図5は、地図データ57上に干渉する範囲を表示した一例を説明するための模式図である。
【0020】
図1に示すように、輸送支援装置10は、例えば、処理部20と、記憶部30と、操作部32と、表示部34とを備える。輸送支援装置10は、例えば、コンピュータ装置であり、タブレット型の端末などでもよく、複数のサーバ装置を互いに接続して構成してもよい。処理部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサである。記憶部30は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。操作部32は、例えば、マウス、タッチパネル、キーボードなどのユーザインターフェースである。表示部34は、例えば、液晶画面(LCD(Liquid Crystal Display))や公知の他の表示装置(例えば有機EL(Electro Luminescence)等)であり、操作部32の一部として各種ユーザインターフェース(GUI(Graphical User Interface))を備えてもよい。輸送支援装置10は、外部のシステムに対して高速データ通信を行う通信インターフェースを備えていてもよい。図1の例では、外部のシステムとしてMMS40(Mobile Mapping System)と携帯端末46が接続されているが、これに限られるものではない。また、輸送支援装置10の一部または全部は、インターネットを介してクラウド上に設けられてもよい。
【0021】
処理部20は、少なくとも取得部21と、第1移動処理部22aと、第1判定部22bと、第2移動処理部24aと、第2判定部24bと、第2範囲算出部24cと、を備える。また、処理部20は、第1範囲算出部22c、第1出力制御部22d、第2出力制御部24dを備えてもよい。なお、本実施形態において、「部」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」が有する機能をプログラムによって実現する場合も含む。また、1つの「部」が有する機能が2つ以上の物理的手段やプログラムにより実現されてもよい。
【0022】
取得部21は、風力発電設備の風車に用いるブレード64を輸送する輸送経路52に沿った三次元経路データ50と、ブレード64を輸送する車両60と当該車両60に伏した状態で積載されたブレード64とを含む三次元データの第1車両モデル65と、車両60と当該車両60に起立させた状態で積載されたブレード64とを含む三次元データの第2車両モデル66と、を取得する。なお、三次元経路データ50は図2に示し、第1車両モデル65は図3に示し、第2車両モデル66は図4に示す。三次元経路データ50、第1車両モデル65及び第2車両モデル66は、例えば記憶部30に記憶されている。
【0023】
図2に示すように、三次元経路データ50は、例えば、道路である輸送経路52、輸送経路52に隣接する法面54、及び輸送経路52に隣接する樹木56などの地物データを含む。三次元経路データ50に含まれる地物データは、さらに、ガードレール、道路縁、縁石などの道路構造物、白線などのペイント表記、道路標識、信号機などの標柱、道路近傍の建築物などを含んでもよい。また、三次元経路データ50は、地物データの各対象物の三次元座標系の位置データを含むことができる。
【0024】
三次元経路データ50は、予定されている輸送経路52に沿って地物の計測を行う移動式の測定装置により作成することができる。移動式の測定装置としては、例えば、計測器42を備える車両型のMMS40やドローンのような無人航空機などを採用することができる。MMS40は、市販されている公知のモービル・マッピング・システムを用いることができる。計測器42は、例えば、MMS40の位置データを得るためのGNSS(Global navigation Satellite System)受信機、IMU(Inertial Measurement Unit)、オドメータなど、3次元点群データを得るためのレーザースキャナ、地物の画像を撮影するカメラなどを含む。レーザースキャナは、レーザ光を用いたリモートセンシング技術であるLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)技術が適用できる。また、三次元経路データ50は、MMS40だけでなく、例えば人手による測量結果を取り込んでもよい。
【0025】
図3及び図4に示すように、第1車両モデル65及び第2車両モデル66は、ブレード64の輸送時における実際の車両の形態に基づいて作成される三次元データである。第1車両モデル65及び第2車両モデル66は、実際の車両60及びブレード64の大きさ及び形状を反映したものが好ましいが、処理速度向上のために、例えば、実際のサイズより例えば50cm~100cm程度大きくした形状としてもよいし、最大幅、最大長、最大高さが反映された箱型モデルであってもよい。このように第1車両モデル65及び第2車両モデル66が実際のサイズより大きいことにより、処理速度向上の他に地物データと実際の地物とに差があった場合にも実際の輸送では干渉を回避できるからである。第1車両モデル65及び第2車両モデル66は、例えば、運転手が乗る牽引車61とブレード64が載せられる被牽引車62を備えるトレーラー型の車両60と、被牽引車62上に設置された起伏機構63と、起伏機構63に起伏可能に支持されたブレード64と、が含まれる。第1車両モデル65と第2車両モデル66は別のモデルとして用意してもよいし、単にブレード64の状態が異なるだけなので、第1車両モデル65のブレード64の起立角度θを変化させて第2車両モデル66として用いてもよい。起伏機構63は、ブレード64を支持し、かつ、ブレード64が略水平方向に延びる伏した状態とブレード64が例えば水平面に対して例えば60度に起立させた状態とに変更する駆動機構を備える。起立させた状態の起立角度θは車両60の種類により異なるが、第2車両モデル66における干渉を回避するために走行可能な範囲で起伏機構63の最大の起立角度θに設定されることが好ましい。風車のタワーも長尺部材であるが、一般に輸送可能な程度の長さに切り分けられて輸送されるため、起伏機構63を用いて輸送されることはない。これに対し、ブレード64は切断できないため、ブレード64を伏したままではタワーに比べて干渉範囲が広いため、起伏機構63や干渉範囲の伐採などの対策が必要になるのである。
【0026】
第1移動処理部22aは、図2に示すような三次元経路データ50における輸送経路52に沿って、図3に示すような第1車両モデル65を移動させる処理を実行する。第1移動処理部22aは、例えば操作部32からの入力操作によって、取得部21で取得した三次元経路データ50内の輸送経路52の三次元座標値に沿って第1車両モデル65を移動させ、実際の輸送を想定してシミュレートすることができる。
【0027】
第1判定部22bは、第1移動処理部22aの処理において三次元経路データ50に含まれる地物データが第1車両モデル65に干渉するか否かを判定する処理を実行する。輸送経路52に沿って第1車両モデル65を移動させると例えば山道のカーブにおいてブレード64が大きく旋回することにより、地物データ例えば法面54や樹木56に第1車両モデル65の特にブレード64が接触する箇所がある。その場合、第1判定部22bは、「干渉する」と判定し、同時に干渉すると判定した輸送経路52における当該一部経路を出力することができる。第1判定部22bで「干渉しない」と判定された場合には、第2車両モデル66に変更するまでもなく輸送経路52に沿って走行可能であると判断できる
。なお、例えば、風車のタワーを輸送する場合にもブレード64と同様に伏した状態で輸送するため、タワーを輸送する車両モデルを三次元化すれば第1車両モデル65のように輸送経路52における地物データとの干渉を判断することができる。そして、タワーが干渉する場合には干渉範囲の地物を除去してもよいし、タワーを切断して短くするなどの対応が可能である。
【0028】
第1範囲算出部22cは、第1判定部22bの処理における干渉する範囲を算出する処理を実行する。第1判定部22bで干渉すると判定された場合には、第2移動処理部24a及び第2判定部24bおいて第2車両モデル66を用いてさらに干渉するか否かを判定する必要がある。
【0029】
第1出力制御部22dは、第1範囲算出部22cによって算出された第1車両モデル65と干渉する範囲を出力する。第1出力制御部22dは、例えば、記憶部30、表示部34または外部の装置に干渉する範囲を出力できる。第1出力制御部22dから出力された干渉する範囲を三次元経路データに重ねて表示部34に表示したり、干渉する範囲を横断図や縦断図として表示部34に表示したり、二次元の地図上に重ねて表示部34に表示することができる。また、このような出力情報は紙媒体に印刷してもよい。干渉する範囲を出力することにより、例えば、施工計画を住民や地物などの管理者(国、自治体)にわかりやすく説明することができ、横断図や縦断図などは追加工事の設計などに利用することができる。この出力情報により、例えば、わずかに地物を除去する工事(樹木の先端を伐採など)で干渉を避けることができることが判れば、第2車両モデル66の処理に入らなくてもよい。
【0030】
第2移動処理部24aは、第1判定部22bにおいて地物データが第1車両モデル65に干渉すると判定された輸送経路52の一部に沿って、第2車両モデル66を移動させる処理を実行する。第2車両モデル66は、ブレード64が例えば走行可能な最大起立角度θで起立していることにより第1車両モデル65よりもカーブにおけるブレード64の旋回範囲が狭くなる。そのため、第2移動処理部24aは、第1判定部22bで干渉すると判定された輸送経路52の一部経路であっても干渉が減少することが期待される。第2移動処理部24aは、例えば操作部32からの入力操作によって、当該一部経路に沿って第2車両モデル66を移動させることができ、ブレード64を起立させた状態での輸送をシミュレートすることができる。
【0031】
第2判定部24bは、第2移動処理部24aの処理において地物データが第2車両モデル66に対して干渉するか否かを判定する処理を実行する。第1判定部22bで干渉すると判定された地物データが第2判定部24bにより干渉しないと判定された場合には、その輸送経路52の一部については第2車両モデル66の形態であれば走行可能であると判断できる。第2判定部24bでも干渉すると判定された場合には、第2車両モデル66の形態でも地物との干渉を解消しなければ走行できないと判断できる。第1車両モデル65及び第2車両モデル66によるシミュレーションによって、輸送作業者の経験不足による誤りを削減し、作業効率が向上する。
【0032】
第2範囲算出部24cは、第2判定部24bの処理における干渉する範囲を算出する処理を実行する。第2判定部24bで干渉すると判定された場合には、干渉する範囲の地物に対して走行可能な程度まで変更を加える必要がある。第2範囲算出部24cが干渉する範囲を算出することにより、ブレード64を実際に輸送する前に車両60及びブレード64と干渉する地物の範囲を明確にすることができる。これにより輸送作業を行う者の経験に頼らずに道路の拡幅や樹木56の伐採の計画を的確に立案することができる。このような計画立案は、輸送作業を行う者への支援となる。そして、輸送作業を行う者への支援が、輸送の際に突然の干渉回避作業を減少させることになり、結果として作業効率を向上す
ることができる。
【0033】
第2範囲算出部24cが算出した干渉する範囲は、例えば、道路を拡幅する範囲及び/または樹木56を伐採する範囲である。道路を拡幅することによりブレード64と地物に接触しないように車両60を走行できるようになり、また、樹木56を伐採することによりブレード64と樹木56との接触を回避できる。
【0034】
第2出力制御部24dは、例えば、記憶部30、表示部34または外部の装置に干渉する範囲を出力できる。第2出力制御部24dは、第2範囲算出部24cで算出された干渉する範囲を例えば表示部34に出力する。図5に示すように、表示部34は、干渉する範囲(伐採範囲58、拡幅範囲59)を表示してもよい。干渉する範囲を地図データ57と共に表示部34に表示することにより、輸送作業を行う者が干渉する範囲を把握しやすい。また、第2出力制御部24dから出力された干渉する範囲を三次元経路データに重ねて表示部34に表示することができ、また、干渉する範囲を横断図や縦断図として表示部34に表示してもよい。また、このような出力情報は紙媒体に印刷してもよい。干渉する範囲を出力することにより、例えば、施工計画を住民や地物などの管理者(国、自治体)にわかりやすく説明することができ、横断図や縦断図などは追加工事の設計などに利用することができる。第2出力制御部24dは、外部の、例えば携帯端末46やカーナビゲーションシステムなどに干渉する範囲を出力してもよい。表示部34及び携帯端末46などの表示装置は、輸送経路52上に上記でシミュレートした車両60の走行ルートを曲線として表示してもよい。表示部34及び携帯端末46などに表示された走行ルートを見ながら車両60の運転手が輸送作業を行ってもよい。
【0035】
表示部34は、第2車両モデル66を移動させる開始点53aと終了点53bとを地図データ上に表示することができる。開始点53a及び終了点53bは、第2移動処理部24aにおいて輸送経路52の一部に沿って第2車両モデル66を移動させた移動開始点と移動終了点である。開始点53a及び終了点53bを地図データ57上に表示することにより、輸送作業を行う者がブレード64の起立作業を開始する場所とブレード64を倒す場所を明確に認識することができ、輸送速度が向上する。例えば、輸送作業の前に表示部34などに表示された開始点53aと終了点53bに合わせて実際の輸送経路上に三角コーンなどの目印や警備員を配置することで輸送作業を円滑化できる。また、開始点53a及び終了点53bを明確化することにより、不要な範囲まで拡幅したり伐採したりすることを防止できるので、費用削減の効果もある。
【0036】
2.風車の輸送支援方法
図6のフローチャートに従って、図1図5で説明した輸送支援装置10を用いた風車の輸送支援方法の一例について説明する。図6は、本実施形態に係る風車の輸送支援方法のフローチャートである。
【0037】
図6に示すように、風車の輸送支援方法(以下、単に「輸送支援方法」という)は、データ等を取得する工程(S10)、第1車両モデル65を移動する工程(S20)、干渉を判定する工程(S30)、第2車両モデル66を移動する工程(S40)、干渉を判定する工程(S50)、干渉する範囲を算出する工程(S60)、及び出力する工程(S70)を含む。輸送支援方法は、さらに、図6に示すように、干渉する範囲を算出する工程(S32)、出力する工程(S34)、地物データを変更する工程(S80)及び出力する工程(S82)を含んでもよい。輸送支援方法は、例えば記憶部30に保存されたプログラムを実行することでS10~S82を順に実行することができ、外部から通信インターフェースを介して受信したプログラムに従って実行してもよい。輸送支援方法は、例えば、長い輸送経路52を複数の区間に分けて各区間に対して実行することができる。
【0038】
S10:データ等を取得する工程は、輸送支援装置10における処理部20の取得部21が風力発電設備の風車に用いるブレード64を輸送する輸送経路52(例えば図5に示した輸送経路52の1区間)に沿った三次元経路データ50と、ブレード64を輸送する車両60と当該車両60に伏した状態で積載されたブレード64とを含む三次元データの第1車両モデル65と、車両60と当該車両60に起立させた状態で積載されたブレード64とを含む三次元データの第2車両モデル66と、を例えば記憶部30及びMMS40から取得する工程である。それぞれの三次元データを取得することで輸送作業のシミュレーションを実行できるようになる。
【0039】
S20:第1車両モデル65を移動する工程は、例えば第1移動処理部22aにおいて、取得部21が取得した三次元経路データ50における輸送経路52に沿って取得部21が取得した第1車両モデル65を移動させる工程である。この工程によって、第1車両モデル65を三次元経路データ50と同じ三次元座標系に配置させて、第1車両モデル65の走行をシミュレートすることができる。この工程によれば、輸送作業者の経験にあまり影響されない。
【0040】
S30:干渉を判定する工程は、S20における第1車両モデル65の移動の際に、例えば第1判定部22bにおいて、三次元経路データ50に含まれる地物データ(法面54及び樹木56など)が第1車両モデル65に干渉するか否かを判定する工程である。S30において、地物データが第1車両モデル65と干渉する(YES)と判定した場合は、S40を実行する。干渉すると判定された輸送経路52の一部は、第1車両モデル65のままでは走行できない範囲であり、第2車両モデル66の状態で走行する範囲である。また、S30において、地物データが第1車両モデル65と干渉しない(NO)と判定した場合は処理を終了する。S20とS30とを繰り返すことにより輸送経路52において第1車両モデル65が地物と干渉する範囲が最も少ない走行ルートを求めてもよい。S30は、S20の実行中に処理してもよい。
【0041】
S32:干渉する範囲を算出する工程は、第1範囲算出部22cにおいて、地物データが第1車両モデル65に干渉する(YES)と判定された場合に、地物データにおける第1車両モデル65に干渉する範囲を算出する工程である。前述したタワーように起伏機構を用いない車両による輸送では、S32で算出された範囲に対して伐採や道路の拡幅を行えばよい。S32は、S30の実行中に処理してもよい。
【0042】
S34:出力する工程は、第1出力制御部22dが第1範囲算出部22cで算出された干渉する範囲を例えば表示部34、携帯端末46及び図示しない印刷装置に出力する工程である。S34における出力情報としては、三次元データでもよいし、これを利用した地図などの二次元データでもよい。S34で出力された範囲を例えば風車設置のための住民説明会などに利用することができる。また、S34で出力された範囲を図6の全ての処理が終了した後で作業者が検証作業をしてもよく、その際に例えば樹木を僅かに伐採するだけで干渉を回避できそうだと判断すれば干渉を避けるように地物データを変更してもよい。
【0043】
S40:第2車両モデル66を移動する工程は、例えば第2移動処理部24aにおいて、地物データが第1車両モデル65に干渉すると判定された場合に、干渉する輸送経路52の一部に沿って第2車両モデル66を移動させる工程である。この工程によって、第2車両モデル66を三次元経路データ50と同じ三次元座標系に配置させて、第2車両モデル66の走行をシミュレートすることができる。
【0044】
S50:干渉を判定する工程は、S40における第2車両モデル66の移動の際に、第2判定部24bにおいて、地物データが第2車両モデル66に対して干渉するか否かをさ
らに判定する工程である。S50において、地物データが第2車両モデル66と干渉する(YES)と判定した場合は、S60を実行する。ここで干渉すると判定された輸送経路52の一部は、第2車両モデル66の状態でも走行することができない範囲であるため、干渉する地物の処理が必要になる。また、S50において、地物データが第2車両モデル66と干渉しない(NO)と判定した場合は処理を終了する。S40とS50とを繰り返すことによりS30で干渉するとされた輸送経路52の一部において第2車両モデル66が地物と干渉する範囲が最も少ない走行ルートを求めてもよい。S50は、S40の実行中に処理してもよい。
【0045】
S60:干渉する範囲を算出する工程は、第2範囲算出部24cにおいて、地物データ(図2の例では法面54及び樹木56)が第2車両モデル66に干渉する(YES)と判定された場合に、地物データにおける干渉する範囲(図5の例では樹木56の伐採範囲58及び道路の拡幅範囲59)を算出する工程である。S60は、S50の実行中に処理してもよい。
【0046】
S70:出力する工程は、第2出力制御部24dが第2範囲算出部24cで算出された干渉する範囲を例えば表示部34、携帯端末46及び図示しない印刷装置に出力する工程である。出力された干渉する範囲を用いて道路の拡幅や樹木56の伐採の計画を立案できる。また、第1判定部22bで干渉するとされた輸送経路52の開始点53aと終了点53bを表示部34などに表示すれば、輸送作業を行う者が実際の輸送経路52上でブレード64の起伏状態の変更を容易に判断することができる。
【0047】
S80:地物データを変更する工程は、第2範囲算出部24cにおいて、S60で算出された範囲にある地物データを変更する工程である。地物データの変更は、例えば、樹木56の伐採範囲58及び道路の拡幅範囲59などを三次元の地物データに対して実行する処理である。さらに、第2移動処理部24aにおいて、地物データを変更した後の三次元経路データ50の輸送経路52に第2車両モデル66を配置させて走行シミュレーションを実行して干渉しないことを確認してもよい。
【0048】
S82:出力する工程は、第2出力制御部24dがS80で変更された範囲を二次元の地図、三次元経路及び設計図などに反映した上で、例えば表示部34、携帯端末46及び図示しない印刷装置に出力する工程である。また、S80で変更後の範囲に第2車両モデル66を走らせるシミュレーションを動画で表示してもよい。
【0049】
本実施形態に係る輸送支援方法によれば、ブレード64を実際に輸送する前に車両60及びブレード64と干渉する地物の範囲を明確にすることができるため、輸送作業を行う者の経験に頼らずに道路の拡幅や樹木56の伐採の計画を立案できる。そのため、本実施形態に係る輸送支援方法によれば、輸送作業を行う者を支援して、作業効率を向上することができる。
【0050】
3.変形例1
図7及び図8を用いて変形例1に係る輸送支援方法について説明する。図7は、変形例1に係る風車の輸送支援装置100の概略構成図であり、図8は、変形例1に係る風車の輸送支援方法のフローチャートである。
【0051】
変形例1に係る風車の輸送支援装置100は、基本的に上述した輸送支援装置10の構成と同じであるため、重複する説明は省略する。図7に示すように、輸送支援装置100は、輸送支援装置10の処理部20に加えて角度算出部25aと第3出力制御部25bをさらに備えることができる。
【0052】
取得部21で取得される第2車両モデル66は、ブレード64を伏した状態から起立させた状態へ少なくとも複数の起立角度θ(図4)に変更可能である。起立角度θは、ブレード64が伏した状態の0度から第2車両モデル66に採用される起伏機構63における最高に起立した状態の最大値例えば60度までの間で複数の角度があらかじめ設定される。複数の起立角度θは、例えば10度、20度、30度、…60度のように所定角度毎に設定される。
【0053】
第2移動処理部24aは、複数の起立角度θに設定された第2車両モデル66のそれぞれを輸送経路52の一部に沿って移動させる。本願で「輸送経路52の一部」は、第1判定部22bにおいて地物データが第1車両モデル65に干渉すると判定された輸送経路52における一部経路である。第2移動処理部24aは、例えば、あらかじめ設定された起立角度θの最も小さい角度のブレード64を積載した第2車両モデル66を輸送経路52の一部に沿って移動させ、徐々に大きい角度のブレード64を積載した第2車両モデル66を移動させることができる。逆に、大きい角度から小さい角度へ変更してもよいし、異なる角度のブレード64と地物データとの干渉が判別できるのであれば、複数の第2車両モデル66を同時に移動させてもよい。第2移動処理部24aは、あらかじめ設定された全ての起立角度θでシミュレーションしてもよいし、地物データと第2車両モデル66との干渉が回避される最も小さな起立角度θが判明した後はそれより大きな起立角度θでシミュレーションしなくてもよい。
【0054】
また、少なくとも輸送経路52の一部は、複数の区間に分割された状態に三次元データ化されることが好ましい。取得部21は、三次元経路データ50における輸送経路52の全体を複数の区間に分割した状態で取得してもよいし、第1判定部22bにおいて干渉すると判定された輸送経路52の一部だけを処理部20において複数の区間に分割してもよい。複数の区間に分割することにより、第2判定部24bが区間ごとに干渉するか否かを判定することができるため、処理部20の処理負担が軽減される。
【0055】
角度算出部25aは、第2判定部24bの処理で干渉しないと判定された第2車両モデル66の起立角度θを輸送経路52の区間に対応して算出することができる。角度算出部25aによって算出される起立角度θは、第2移動処理部24aにおいて複数の起立角度θに設定された第2車両モデル66のそれぞれの移動に伴って第2判定部24bにより判定された干渉しない角度である。その起立角度θが輸送経路52の各区間に対応して算出されるので、区間ごとに干渉しない起立角度θが算出されることになる。
【0056】
そのため、角度算出部25aで算出された起立角度θを第3出力制御部25bから例えば表示部34に出力することにより、第1車両モデル65では干渉するとされた輸送経路52の一部において、区間ごとにどの程度の起立角度θにブレード64を設定すれば第2車両モデル66が地物データに干渉せずに移動できるかを知ることができる。そして、実際の輸送に際してそれらの起立角度θにブレード64を各区間で変化させながら車両60を走行させることで、必ずしも最大の起立角度θにブレード64を設定しなくても車両60を干渉無しに走行させることができる。実際の車両60ではブレード64が高くなればなるほど走行時の安定性が低下し、転倒のリスクも高くなる。車両60の安定走行のためにはブレード64をなるべく低く保つことが望ましいため、第3出力制御部25bから出力された情報に基づいて、干渉しない範囲でなるべく小さい起立角度θを区間ごとに設定することが望ましい。
【0057】
変形例1に係る輸送支援装置100によれば、図1の輸送支援装置10に加えて、実際の輸送に際してブレード64の起立角度θを小さく抑えながら車両60を安定して走行させるための情報を得ることができる。
【0058】
次に、図8のフローチャートに従って、図7の輸送支援装置100を用いた変形例1に係る風車の輸送支援方法の一例について説明する。なお、図6の説明と重複する処理は説明を省略する。
【0059】
変形例1に係る輸送支援方法は、データ等を取得する工程(S10)、第1車両モデル65を移動する工程(S20)、干渉を判定する工程(S30)、第2車両モデル66を移動する工程(S40)、干渉を判定する工程(S50)、起立角度θを算出する工程(S56)、及び干渉する範囲を算出する工程(S60)を含む。輸送支援方法は、さらに、干渉する範囲を算出する工程(S32)、出力する工程(S34)、全ての起立角度θを実行したか確認する工程(S52)、起立角度θを変更する工程(S54)、出力する工程(S58)、出力する工程(S70)、地物データを変更する工程(S80)及び出力する工程(S82)を含んでもよい。変形例1に係る輸送支援方法は、例えば記憶部30に保存されたプログラムを実行することでS10~S82を順に実行することができ、外部から通信インターフェースを介して受信したプログラムに従って実行してもよい。
【0060】
S10:データ等を取得する工程は、取得部21が風力発電設備の風車に用いるブレード64を輸送する輸送経路52に沿った三次元経路データ50と、ブレード64を輸送する車両60と当該車両60に伏した状態で積載されたブレード64とを含む三次元データの第1車両モデル65と、車両60と当該車両60に伏した状態から起立させた状態へ少なくとも複数の起立角度θに変更可能に積載されたブレード64とを含む三次元データの第2車両モデル66と、を取得する。
【0061】
S20:第1車両モデル65を移動する工程は、第1移動処理部22aが三次元経路データ50における輸送経路52に沿って第1車両モデル65を移動させる。
【0062】
S30:干渉を判定する工程は、第1判定部22bが三次元経路データ50に含まれる地物データが第1車両モデル65に干渉するか否かを判定する。S32及びS34は、図6と同様である。
【0063】
S40:第2車両モデル66を移動する工程は、第1判定部22bにおいて地物データが第1車両モデル65に干渉すると判定された場合に、第2移動処理部24aが干渉する輸送経路52の一部に沿って起立角度θを変更しながら第2車両モデル66を移動させる。例えば一回目のS40は、伏した状態に最も近い起立角度θの最小値にブレード64が設定された第2車両モデル66を移動させてもよい。この第2車両モデル66で干渉がないとS50で判定されれば、他の角度によるシミュレーションが不要になるからである。起立角度θの変更は、後述するS50で干渉の有無を判定した後、S52及びS54を繰り返し実行することで行うことができる。
【0064】
S50:干渉を判定する工程は、第2判定部24bが第2車両モデル66の移動において地物データが第2車両モデル66に対して干渉するか否かをさらに判定する。第2判定部24bが干渉する(YES)と判定すればS52が実行され、第2判定部24bが干渉しない(NO)と判定すればS56、S58が順に実行される。S50は、S30で第1車両モデル65が干渉する(YES)と判定された輸送経路52の一部における全ての区間についてそれぞれ判定を実行する。そして、ある角度の第2車両モデル66を移動させたとき、全ての区間で干渉しない場合に干渉しない(NO)と判定し、逆に、輸送経路52のある区間で干渉する場合には干渉する(YES)と判定する。
【0065】
S52:全ての起立角度θを実行したか確認する工程は、第2判定部24bが干渉する(YES)と判定した場合に、第2移動処理部24aがあらかじめ設定された複数の起立角度θの全てでS40及びS50が実行されたか否かを確認する。本工程で第2移動処理
部24aが全ての起立角度θを実行した(YES)と判定した場合は、S60、S70,S80,S82が順に実行される。なお、S52が「YES」であれば、全ての起立角度θが実行されているので、このときの起立角度θが最大値であることは確定している。また、本工程で第2移動処理部24aが全ての起立角度θを実行していない(NO)と判定した場合は、S54が実行される。
【0066】
S54:起立角度θを変更する工程は、第2移動処理部24aがS40で既に実行された第2車両モデル66のブレード64の起立角度θをあらかじめ設定された複数の起立角度θにおける異なる角度に変更する。例えば、一回目を最小値の起立角度θとした場合には、S54を実行するたびに小さい角度から順に大きい角度に変更することができる。その場合、S52による判定が「YES」となるのは複数の起立角度θにおける最大値の起立角度θに設定された第2車両モデル66に対してS40及びS50が実行された場合になる。
【0067】
S56:起立角度θを算出する工程は、地物データが第2車両モデル66に干渉しない輸送経路52の区間に対応して変化する起立角度θを角度算出部25aが算出する。すなわち、S56では、輸送経路52の小さく分割された各区間に対してそれぞれの干渉しない起立角度θが算出される。例えば、S40で最小値の起立角度θから順に大きい角度を実行してS50で干渉しない(NO)と判定された場合、その判定までの間に実行された輸送経路52の全ての区間に対応して干渉しない起立角度θが算出される。そして、その場合には、第2車両モデル66で地物データに干渉しないのであるから干渉する範囲を算出する必要はない。また、S50で干渉する(YES)と判定され、かつ、S52で全ての起立角度θを実行した(YES)場合でも、輸送経路52のある区間では干渉するが他の区間では干渉しない起立角度θがある。そのため、角度算出部25aは、干渉しないとされた区間に対応付けられた起立角度θを算出することができる。また、最大値の起立角度θでもS50で干渉する(YES)と判定された場合にも、当該干渉するとされた区間に対応した最大値の起立角度θを算出してもよい。
【0068】
S58:出力する工程は、S56で算出された起立角度θを第3出力制御部25bが例えば表示部34などに出力する。この出力に基づいて、実際の輸送に際して車両60の運転手が、輸送経路52のある区間ではS56で算出された干渉しない起立角度θで車両60を走行させ、またある区間では先の起立角度θとは異なる角度で車両60を走行させるなどの輸送を可能とする。特に、ブレード64はなるべく小さい起立角度θであることが車両60の走行の安定性のために重要であるため、運転手は、この出力の中からなるべく小さい起立角度θを選択して輸送することが走行の安定性の面からは望ましい。
【0069】
S60:干渉する範囲を算出する工程は、さらにS56において輸送経路52の中で干渉しないとされた区間以外の輸送経路52の一部に対応して地物データにおける干渉する範囲を第2範囲算出部24cが算出する。干渉する範囲は、最大値の起立角度θの第2車両モデル66で干渉する範囲になるため、図6のS60と同じ結果となる。なお、S60を実行する場合には起立角度θが最大値であることが確定しているので、S60において起立角度θを算出しなくてもよい。
【0070】
S70~S82は図6の例と重複するので、説明は省略する。
【0071】
変形例1に係る輸送支援方法によれば、図6の方法に加えて、実際の輸送に際してブレード64の起立角度θを小さく抑えながら車両60を安定して走行させるための情報を得ることができる。
【0072】
4.変形例2
図7及び図9を用いて、変形例2に係る輸送支援装置100及び輸送支援方法について説明する。図7は変形例1に係る輸送支援装置100の概略構成図であるが、基本構成は変形例2においても同様であるので変形例2の説明でも図7を用いる。図9は、変形例2に係る風車の輸送支援方法のフローチャートである。図9は、図8と比べてS52及びS54がない点で相違する。
【0073】
変形例2に係る輸送支援装置100の第2移動処理部24aは、ブレード64の起立角度θを変更しながら第2車両モデル66を輸送経路52の一部に沿って移動させる。起立角度θの変更は、ブレード64が地物データに干渉しない角度になるように実行される。具体的に例示すると、起立角度θの変更は、起立角度θの最小値から最大値までの間で地物データの高さに合わせて地物データにブレード64が干渉しないように上下に起立角度θを変更する。また、最大値の起立角度θであってもブレード64が地物データに干渉する場合には、その区間は最大値を維持したまま第2車両モデル66を移動させる。そのため、第2移動処理部24aによる処理は、図8の例のように繰り返し異なる起立角度θで実行する必要がないため、短時間で実行可能である。
【0074】
変形例2に係る第2判定部24bは、第2移動処理部24aにおいて干渉しない角度になるように起立角度θを変更しているので、最大値の起立角度θでも干渉する場合にのみ干渉する(YES)と判定し、それ以外の場合は干渉しない(NO)と判定する。
【0075】
角度算出部25aは、第2移動処理部24aの処理における地物データに干渉しないで第2車両モデル66を移動可能な起立角度θを、輸送経路52の一部に対応して算出する。角度算出部25aは、第2移動処理部24aにおける処理において輸送経路52に沿って変化する起立角度θとして算出することができる。第2移動処理部24aにおける起立角度θの変化は、最大値の起立角度θで干渉する区間を除いて、ブレード64が地物データに干渉しない角度である。
【0076】
変形例2に係る輸送支援装置100によれば、図1の輸送支援装置10に加えて、実際の輸送に際してブレード64の起立角度θを小さく抑えながら車両60を安定して走行させるための情報を得ることができる。
【0077】
図9のフローチャートに沿って、変形例2に係る輸送支援装置100を用いた輸送支援方法について説明する。なお、S10~S34,S58,S80~S82は図8の例と同じであるので重複する説明は省略する。
【0078】
S40:第2車両モデル66を移動する工程は、第1判定部22bにおいて地物データが第1車両モデル65に干渉すると判定された場合に、第2移動処理部24aが干渉する輸送経路52の一部に沿って起立角度θを変更しながら第2車両モデル66を移動させる。図8の変形例1と異なり、第2移動処理部24aは、第2車両モデル66の移動に伴って干渉を避けるように徐々に起立角度θを大きく変更する。最大値の起立角度θでも干渉を避けることができない地物データがある区間では、最大値の起立角度θを採用して第2車両モデル66を移動させる。そして、最大値の起立角度θでも干渉する区間を過ぎたら、例えば、地物データの高さに合わせて干渉を避けるように起立角度θを徐々に小さく変更しながら第2車両モデルを移動させる。
【0079】
S50:干渉を判定する工程は、第2判定部24bが第2車両モデル66の移動において地物データが第2車両モデル66に対して干渉するか否かをさらに判定する。S50の処理は基本的に図8の例と同じであるが、変形例2における判定後の処理は、第2判定部24bが干渉する(YES)と判定すればS62,S72,S80,S82が順に実行され、第2判定部24bが干渉しない(NO)と判定すればS56、S58が順に実行され
る。
【0080】
S56:起立角度θを算出する工程は、S50が「NO」の場合、地物データが第2車両モデル66に干渉しない輸送経路52の区間に対応して変化する起立角度θを角度算出部25aが算出する。
【0081】
S62:起立角度θ及び干渉する範囲を算出する工程は、干渉する範囲を第2範囲算出部24cが算出すると共に、輸送経路52の区間に対応して変化する起立角度θを角度算出部25aが算出する。第2範囲算出部24cが算出する干渉する範囲は、S50の処理で干渉すると判定された区間において、地物データが第2車両モデル66に干渉する地物データの範囲である。角度算出部25aが算出する起立角度θは、輸送経路52の区間に対応して上下に変化する起立角度θである。干渉すると判定された区間では最大値の起立角度θが算出され、それ以外の区間では地物データの高さに合わせて変化する起立角度θが算出される。
【0082】
S72:出力する工程は、S62において角度算出部25aで算出された起立角度θ及び第2範囲算出部24cで算出された干渉する範囲を第3出力制御部25bから例えば表示部34に出力する。なお、S80及びS82は図6の例と基本的に重複するので、説明は省略する。
【0083】
変形例2に係る輸送支援方法によれば、図6の方法に加えて、実際の輸送に際してブレード64の起立角度θを小さく抑えながら車両60を安定して走行させるための情報を得ることができる。
【0084】
上述した実施形態及び変形例1,2において用いられた第1車両モデル65及び第2車両モデル66は、ブレード64の傾斜角度だけを変化させるものであったが、これに限定されるものでなく、実際にブレード64の輸送に用いられる車両の形態及び機構に合わせたモデルを輸送支援装置及び輸送支援方法に採用できる。例えば、起伏機構63に固定されたブレード64の取り付け部分をブレード64の中心軸線を中心に360度回転可能な車両モデルとしてシミュレーション中に回転動作を追加してもよいし、当該取り付け部分を中心にブレード64を水平面内で旋回可能な車両モデルとしてシミュレーション中に水平方向の旋回動作を追加してもよい。
【0085】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0086】
10,100…輸送支援装置、20…処理部、21…取得部、22a…第1移動処理部、22b…第1判定部、22c…第1範囲算出部、22d…第1出力制御部、24a…第2移動処理部、24b…第2判定部、24c…第2範囲算出部、24d…第2出力制御部、25a…角度算出部、25b…第3出力制御部、30…記憶部、32…操作部、34…表示部、40…MMS、42…計測器、46…携帯端末、50…三次元経路データ、52…輸送経路、53a…開始点、53b…終了点、54…法面、56…樹木、57…地図データ、58…伐採範囲、59…拡幅範囲、60…車両、61…牽引車、62…被牽引車、63…起伏機構、64…ブレード、65…第1車両モデル、66…第2車両モデル、θ…
起立角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9