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特開2024-78068挟持装置、及び該挟持装置を用いた床パネルの敷込方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078068
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】挟持装置、及び該挟持装置を用いた床パネルの敷込方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20240603BHJP
   B66C 1/30 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
E04G21/16
B66C1/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190401
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504082025
【氏名又は名称】株式会社イング
(71)【出願人】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(71)【出願人】
【識別番号】399117730
【氏名又は名称】住友金属鉱山シポレックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000152631
【氏名又は名称】株式会社日東
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】中村 知行
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 浩之
(72)【発明者】
【氏名】永木 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】高田 潤祐
(72)【発明者】
【氏名】岡本 航介
(72)【発明者】
【氏名】飯田 好孝
(72)【発明者】
【氏名】松村 尚人
【テーマコード(参考)】
2E174
3F004
【Fターム(参考)】
2E174AA03
2E174BA02
2E174CA14
2E174CA38
2E174DA17
3F004AA08
3F004AB14
3F004AD07
3F004AF01
3F004AF06
3F004EA27
(57)【要約】
【課題】複数の床パネルを、互いに当接するように隣接した位置に敷き込む際に、床パネル間に空隙が残ることなく床パネルを敷き込むことができ、もって作業負担の軽減を図ることが可能な挟持装置と、該挟持装置を用いた床パネルの敷込方法を提供する。
【解決手段】挟持装置10は、左右方向の両側において揺動し、下端部において敷込対象床パネルP1の端面を挟持する左右の挟持アーム12と、挟持アーム12を揺動させる操作部16と、を備え、左右の挟持アーム12は、左右方向の内側に形成されて、敷込対象床パネルP1の端面と当接する挟持面125aと、敷込対象床パネルP1を敷き込む際に、敷込対象床パネルP1の下面よりも上方の位置において挟持面125aの下端から左右方向の外側に突出し、既に敷き込まれた隣接床パネルP2の上面に当接して上下方向の位置合わせを行う位置合わせ面125bと、を有している。
【選択図】図8F
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚重機械によって吊り上げられて、複数の床パネルを互いに当接するように隣接した位置に敷き込む際に用いられる挟持装置であって、
左右方向の両側において揺動し、それぞれの下端部において敷込対象床パネルの左右方向の端面を挟持する左右の挟持部材と、
左右方向の中央に位置し、前記揚重機械によって吊り上げられて昇降する昇降部材と、
前記左右の挟持部材の間に介在し、前記昇降部材と前記左右の挟持部材とを接続する左右の接続部材と、
前記昇降部材を昇降させることにより、前記左右の接続部材を介して前記左右の挟持部材を揺動させる操作手段と、を備え、
前記左右の挟持部材は、それぞれの前記下端部において、
左右方向の内側に形成されて、前記敷込対象床パネルを挟持する際に、該敷込対象床パネルと当接する挟持面と、
前記敷込対象床パネルを敷き込む際に、該敷込対象床パネルの下面よりも上方の位置において前記挟持面の下端から左右方向の外側に突出するように延びて、既に敷き込まれた隣接床パネルの上面に当接して上下方向の位置合わせを行う位置合わせ面と、を有していることを特徴とする挟持装置。
【請求項2】
前記挟持装置は、左右方向に延びて前記左右の挟持部材を両端部で揺動可能に支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、その下端部において、前記挟持装置が前記敷込対象床パネルを挟持する際に、該敷込対象床パネルの上面と当接する当接面を有し、
前記当接面が前記敷込対象床パネルと当接した際に、前記位置合わせ面は前記敷込対象床パネルの下面よりも上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の挟持装置。
【請求項3】
前記左右の挟持部材のそれぞれの前記下端部は、前記昇降部材が最も下降した最下降位置にあるときに左右方向の外側に揺動し、
前記操作手段は、
前後方向に延びる回転軸を中心に回転操作可能であって、
長尺形状を有する操作アームと、
前記操作手段の前記回転軸側の端部に設けられて、前記回転軸の中心からの距離が変化する変径部と、を有し、
前記変径部には、前記昇降部材と係合し、前記昇降部材を前記最下降位置に保持する保持部と、前記回転操作とともに前記昇降部材が昇降するように前記昇降部材を駆動する駆動部と、を有することを特徴とする請求項2に記載の挟持装置。
【請求項4】
前記支持部材及び前記左右の接続部材には、左右方向の両端側の第一の位置、及び前記第一の位置よりも左右方向の中心側に位置する第二の位置において前記左右の挟持部材のそれぞれに設けられた被係合部材と係合可能な左右の係合部材が設けられ、
前記保持部は、
前記左右の挟持部材のそれぞれが前記第一の位置において前記左右の係合部材と係合するときに前記昇降部材を前記最下降位置に保持する第一保持部と、
前記左右の挟持部材のそれぞれが前記第二の位置において前記左右の係合部材と係合するときに前記昇降部材を前記最下降位置に保持する第二保持部と、を有することを特徴とする請求項3に記載の挟持装置。
【請求項5】
揚重機械によって吊り上げられる挟持装置を用いて、複数の床パネルを互いに当接するように隣接した位置に敷き込む床パネルの敷込方法であって、
敷込対象床パネルの左右方向の端面を挟持する左右の挟持部材のそれぞれの下端部を、前記敷込対象床パネルの下面よりも上方に位置させ、前記左右の挟持部材のそれぞれの前記下端部の左右方向の内側に形成された挟持面を前記敷込対象床パネルに当接させて前記敷込対象床パネルを挟持する挟持工程と、
前記揚重機械によって前記挟持装置を吊り上げて、前記敷込対象床パネルを、既に敷き込まれた隣接床パネルの側方の敷込位置の上方に搬送する搬送工程と、
前記敷込対象床パネルの左右方向の一方側の端面を、前記隣接床パネルの前記一方側の端面と対向する端面に当接させるとともに、前記左右の挟持部材のうち、前記一方側の前記挟持部材の前記下端部において、前記挟持面の下端から左右方向の外側に突出するように延びる位置合わせ面を前記隣接床パネルの上面に当接させて前記敷込対象床パネルの上下方向の位置合わせを行う位置合わせ工程と、
前記左右の挟持部材のそれぞれの前記下端部を左右方向の外側に揺動させることによって前記敷込対象床パネルを前記敷込位置に敷き込む敷込工程と、を有することを特徴とする床パネルの敷込方法。
【請求項6】
前記挟持工程は、
左右方向に延びて前記左右の挟持部材を両端部で揺動可能に支持する支持部材の下端に形成された当接面を前記敷込対象床パネルの上面に当接させる上面当接工程と、
前記左右の挟持部材のそれぞれの前記下端部を左右方向の内側に揺動させることによって前記挟持面を前記敷込対象床パネルの前記左右方向の端面に当接させる端面挟持工程と、を有することを特徴とする請求項5に記載の床パネルの敷込方法。
【請求項7】
前記隣接床パネルは、前記敷込位置を挟むように前記敷込位置の左右に敷き込まれており、
前記位置合わせ工程では、前記敷込対象床パネルの前記一方側の端面を、前記左右の隣接床パネルのいずれか一方の前記一方側の端面と対向する端面に当接させるとともに、前記左右の挟持部材のそれぞれの前記下端部において、前記挟持面の下端から左右方向の外側に突出するように延びる前記位置合わせ面を、前記左右の隣接床パネルのそれぞれの上面に当接させることを特徴とする請求項5に記載の床パネルの敷込方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挟持装置、及び該挟持装置を用いた床パネルの敷込方法に係り、特に複数の床パネルを互いに当接するように隣接した位置に敷き込む際に用いられる挟持装置、及び該挟持装置を用いた床パネルの敷込方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商業施設、工場、又は集合住宅等に用いられる建築パネルとして、耐火性、耐震性、断熱性等に優れたALCパネルの普及が進んでいる。ALCパネルは、珪石、セメント、生石灰、発泡剤のアルミ粉末を主原料とするコンクリート建材であり、その重量は、約80kgに及ぶ場合がある。そのため、建築現場に搬送されたALCパネルは、移動式クレーン車等の揚重機械を用いて揚重されて、敷込現場の床面に敷き込まれる。
【0003】
特許文献1には、移動式クレーンによって建築パネルを敷き込む際に用いられる吊り具が開示されている。特許文献1に開示された吊り具は、左右の挟持部材を有し、挟持部材によって複数枚のALCパネルの端面を、両側から挟み込む。そして、移動式クレーンのフックを吊り具に設けられた係合部に係合させることにより、複数枚のALCパネルを同時に吊り上げて運搬することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-015608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された吊り具を用いることによって、複数枚のALCパネルを同時に運搬し、敷込作業を行うことができ、建築現場における敷込作業の作業効率が向上する。しかしながら、建築現場では、更なる改善が望まれていた。以下で、より詳細に説明する。
【0006】
特許文献1に開示された吊り具は、ALCパネルを挟持する際に、左右の挟持部材の下端を、敷込対象のALCパネルの下端とほぼ等しい高さに位置させて用いられる。これにより、ALCパネルの運搬中に誤ってALCパネルを落下させてしまうことを抑制することができる。しかしながら、複数のALCパネルを互いに隣接する位置に敷き込んだ後に、隣接するALCパネルの間に、挟持部材の下端の幅寸法に対応する空隙が形成されていた。そのため、吊り具を用いた敷込作業の後に、ALCパネル間の空隙を埋めるために、互いに当接しあうようにALCパネルを側方に押し込む作業が必要となり、作業負担の軽減が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複数の床パネルを、互いに当接するように隣接した位置に敷き込む際に、床パネル間に空隙が残ることなく床パネルを敷き込むことができ、もって作業負担の軽減を図ることが可能な挟持装置と、該挟持装置を用いた床パネルの敷込方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の挟持装置によれば、揚重機械によって吊り上げられて、複数の床パネルを互いに当接するように隣接した位置に敷き込む際に用いられる挟持装置であって、左右方向の両側において揺動し、それぞれの下端部において敷込対象床パネルの左右方向の端面を挟持する左右の挟持部材と、左右方向の中央に位置し、前記揚重機械によって吊り上げられて昇降する昇降部材と、前記左右の挟持部材の間に介在し、前記昇降部材と前記左右の挟持部材とを接続する左右の接続部材と、前記昇降部材を昇降させることにより、前記左右の接続部材を介して前記左右の挟持部材を揺動させる操作手段と、を備え、前記左右の挟持部材は、それぞれの前記下端部において、左右方向の内側に形成されて、前記敷込対象床パネルを挟持する際に、該敷込対象床パネルと当接する挟持面と、前記敷込対象床パネルを敷き込む際に、該敷込対象床パネルの下面よりも上方の位置において前記挟持面の下端から左右方向の外側に突出するように延びて、既に敷き込まれた隣接床パネルの上面に当接して上下方向の位置合わせを行う位置合わせ面と、を有していることにより解決される。
【0009】
上記構成によれば、左右の挟持部材の下端部の左右方向の内側には、挟持面が形成されている。また、左右の挟持部材には、敷込対象床パネルを敷き込む際に、該敷込対象床パネルの下面よりも上方の位置において挟持面の下端から左右方向の外側に突出するように延びて、既に敷き込まれた隣接床パネルの上面に当接して上下方向の位置合わせを行う位置合わせ面が形成されている。これにより、敷込対象床パネルの端面の下方側を、隣接床パネルの対向する端面に当接させるとともに、位置合わせ面を隣接床パネルの上面に当接させることによって、敷込対象床パネルを、隣接床パネルと当接する隣接位置に位置合わせすることができる。そのため、敷込後に床パネルの間に空隙が残ることなく複数の床パネルが互いに当接するように敷き込むことが可能となり、結果として作業負担の軽減を図ることが可能となる。また、敷込対象床パネルを上下方向に位置合わせするため、高い位置から床パネルを解放することによって床パネルを損傷させてしまう事態を抑制することが可能となる。
【0010】
また、前記挟持装置は、左右方向に延びて前記左右の挟持部材を両端部で揺動可能に支持する支持部材を備え、前記支持部材は、その下端部において、前記挟持装置が前記敷込対象床パネルを挟持する際に、該敷込対象床パネルの上面と当接する当接面を有し、前記当接面が前記敷込対象床パネルと当接した際に、前記位置合わせ面は前記敷込対象床パネルの下面よりも上方に位置するとよい。
上記構成によれば、支持部材の下端部に形成された当接面を敷込対象床パネルの上面に当接するまで下降させることで、左右の挟持部材の下端を床パネルの下端よりも高く位置させることができるため、挟持部材によって敷込対象床パネルを挟持する際の作業負担の軽減を図ることが可能となる。
【0011】
また、前記左右の挟持部材のそれぞれの前記下端部は、前記昇降部材が最も下降した最下降位置にあるときに左右方向の外側に揺動し、前記操作手段は、前後方向に延びる回転軸を中心に回転操作可能であって、長尺形状を有する操作アームと、前記操作手段の前記回転軸側の端部に設けられて、前記回転軸の中心からの距離が変化する変径部と、を有し、前記変径部には、前記昇降部材と係合し、前記昇降部材を前記最下降位置に保持する保持部と、前記回転操作とともに前記昇降部材が昇降するように前記昇降部材を駆動する駆動部と、を有するとよい。
上記構成によれば、操作手段の変径部には、昇降部材を最下降位置に保持する保持部が形成されているため、操作手段を回転操作することによって挟持部材の下端部を左右方向の外側に揺動した状態に維持することが可能となる。また、変径部には、昇降部材が昇降するように駆動する駆動部が形成されているため、操作手段を回転操作することによって挟持部材の下端部を左右に揺動させることが可能となる。
【0012】
また、前記支持部材及び前記左右の接続部材には、左右方向の両端側の第一の位置、及び前記第一の位置よりも左右方向の中心側に位置する第二の位置において前記左右の挟持部材のそれぞれに設けられた被係合部材と係合可能な左右の係合部材が設けられ、前記保持部は、前記左右の挟持部材のそれぞれが前記第一の位置において前記左右の係合部材と係合するときに前記昇降部材を前記最下降位置に保持する第一保持部と、前記左右の挟持部材のそれぞれが前記第二の位置において前記左右の係合部材と係合するときに前記昇降部材を前記最下降位置に保持する第二保持部と、を有するとよい。
上記構成によれば、挟持部材を、第一の位置又は第二の位置において係合部材に係合させることができるため、左右方向の寸法(幅寸法)の異なる床パネルを挟持することが可能となる。また、保持部は、挟持部材が第一の位置及び第二の位置のいずれに位置する場合であっても昇降部材を最下降位置に保持することができるため、挟持部材の下端部を左右方向の外側に揺動した状態に維持することが可能となる。
【0013】
前記課題は、揚重機械によって吊り上げられる挟持装置を用いて、複数の床パネルを互いに当接するように隣接した位置に敷き込む床パネルの敷込方法であって、敷込対象床パネルの左右方向の端面を挟持する左右の挟持部材のそれぞれの下端部を、前記敷込対象床パネルの下面よりも上方に位置させ、前記左右の挟持部材のそれぞれの前記下端部の左右方向の内側に形成された挟持面を前記敷込対象床パネルに当接させて前記敷込対象床パネルを挟持する挟持工程と、前記揚重機械によって前記挟持装置を吊り上げて、前記敷込対象床パネルを、既に敷き込まれた隣接床パネルの側方の敷込位置の上方に搬送する搬送工程と、前記敷込対象床パネルの左右方向の一方側の端面を、前記隣接床パネルの前記一方側の端面と対向する端面に当接させるとともに、前記左右の挟持部材のうち、前記一方側の前記挟持部材の前記下端部において、前記挟持面の下端から左右方向の外側に突出するように延びる位置合わせ面を前記隣接床パネルの上面に当接させて前記敷込対象床パネルの上下方向の位置合わせを行う位置合わせ工程と、前記左右の挟持部材のそれぞれの前記下端部を左右方向の外側に揺動させることによって前記敷込対象床パネルを前記敷込位置に敷き込む敷込工程と、を有することにより解決される。
【0014】
上記構成によれば、敷込対象床パネルの端面の下方側を、隣接床パネルの対向する端面に当接させるとともに、位置合わせ面を隣接床パネルの上面に当接させることによって、敷込対象床パネルを、隣接床パネルと当接する隣接位置に位置合わせすることができる。そのため、敷込後に床パネルの間に空隙が残ることなく複数の床パネルが互いに当接するように敷き込むことが可能となり、結果として作業負担の軽減を図ることが可能となる。また、敷込対象床パネルを上下方向に位置合わせするため、高い位置から床パネルを解放することによって床パネルを損傷させてしまう事態を抑制することが可能となる。
【0015】
また、前記挟持工程は、左右方向に延びて前記左右の挟持部材を両端部で揺動可能に支持する支持部材の下端に形成された当接面を前記敷込対象床パネルの上面に当接させる上面当接工程と、前記左右の挟持部材のそれぞれの前記下端部を左右方向の内側に揺動させることによって前記挟持面を前記敷込対象床パネルの前記左右方向の端面に当接させる端面挟持工程と、を有するとよい。
上記構成によれば、支持部材の下端部に形成された当接面を敷込対象床パネルの上面に当接するまで下降させることで、左右の挟持部材の下端を床パネルの下端よりも高く位置させることができるため、挟持部材によって敷込対象床パネルを挟持する際の作業負担の軽減を図ることが可能となる。
【0016】
また、前記隣接床パネルは、前記敷込位置を挟むように前記敷込位置の左右に敷き込まれており、前記位置合わせ工程では、前記敷込対象床パネルの前記一方側の端面を、前記左右の隣接床パネルのいずれか一方の前記一方側の端面と対向する端面に当接させるとともに、前記左右の挟持部材のそれぞれの前記下端部において、前記挟持面の下端から左右方向の外側に突出するように延びる前記位置合わせ面を、前記左右の隣接床パネルのそれぞれの上面に当接させるとよい。
上記構成によれば、敷込位置を挟むように、敷込位置の両側に床パネルが敷き込まれている場合であっても、敷込対象床パネルを両側の敷き込み済みの隣接床パネルと当接する隣接位置に位置合わせすることができる。そのため、敷込作業後に床パネルを押し込む作業が不要となり、結果として作業負担の軽減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の挟持装置及び該挟持装置を用いた敷込方法によれば、複数の床パネルを、互いに当接するように隣接した位置に敷き込む際に、床パネル間に空隙が残ることなく床パネルを敷き込むことができ、もって作業負担の軽減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ALCパネルを挟持していない状態の挟持装置の斜視図である。
図2】ALCパネルを挟持した状態の挟持装置の斜視図である。
図3】連結軸及び操作部を取り外した状態の挟持装置の斜視図である。
図4】挟持装置の要部を拡大した斜視図である。
図5A】挟持アームが外側位置(第一の位置)にある挟持装置の正面図である。
図5B】挟持アームが内側位置(第二の位置)にある挟持装置の正面図である。
図6】操作部による挟持アームの動作を説明するための図である。
図7】操作部による挟持アームの動作を説明するための図である。
図8A】ALCパネルの上方に挟持装置を位置させた状態を示す図である。
図8B】敷込対象ALCパネルを挟持した状態を示す図である。
図8C】敷込対象ALCパネルを吊り上げて搬送した状態を示す図である。
図8D】敷込対象ALCパネル(1枚目)を敷き込んだ状態を示す図である。
図8E】敷込対象ALCパネル(2枚目)を吊り上げて搬送した状態を示す図である。
図8F】敷込対象ALCパネル(2枚目)の端面を隣接ALCパネルの端面に当接させた状態を示す図である。
図8G】敷込対象ALCパネル(2枚目)を下降させた状態を示す図である。
図8H】敷込対象ALCパネル(2枚目)を敷き込んだ状態を示す図である。
図9A】第一変形例に係るALCパネルの敷込方法であって、敷込対象ALCパネルを、左右の隣接ALCパネルの間に位置する敷込位置の上方に搬送した状態を示す図である。
図9B】敷込対象ALCパネルの端面を隣接ALCパネルの端面に当接した状態を示す図である。
図9C】敷込対象ALCパネルを敷き込んだ状態を示す図である。
図10】第二変形例に係る挟持装置の要部を拡大した斜視図である。
図11A】挟持アームが外側位置(第一の位置)にある挟持装置の正面図である。
図11B】挟持アームが内側位置(第二の位置)にある挟持装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図8Hを参照しながら、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る挟持装置10について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0020】
本発明の挟持装置10は、クレーン車等の揚重機械によって吊り上げられて、複数のALCパネルPを互いに当接するように隣接した位置に敷き込む際に用いられる。敷込対象のALCパネルPを、既に敷き込まれたALCパネルPと当接するように敷き込むことができるため、敷き込んだ後にALCパネルP間の空隙を埋めるために側方に押し込む作業が不要となり、もって作業負担の軽減を図ることが可能となる。なお、以降の説明において、敷込対象のALCパネルPを、敷込対象ALCパネルP1と称し、既に敷き込まれたALCパネルPを隣接ALCパネルP2と称する。敷込対象ALCパネルP1は敷込対象床パネルに相当し、隣接ALCパネルP2は隣接床パネルに相当する。
【0021】
また、以下の説明中、「上下方向」とは、鉛直方向であって、ALCパネルPを吊り上げ、又は吊り下げる方向(図5A及び図5Bの上下方向)と一致する。「左右方向」とは、挟持装置10がALCパネルPを挟持する方向であって、ALCパネルPの短手方向(図5A及び図5Bの左右方向)と一致する。「前後方向」とは、「上下方向」及び「左右方向」と直交する方向であって、敷込対象ALCパネルP1の長手方向を意味する。
【0022】
<<挟持装置10の概要>>
次に、挟持装置10の構成について図1から図3を参照して説明する。
図1及び図2は、挟持装置10の外観を示す斜視図である。図1は、ALCパネルPを挟持していない状態の挟持装置10の斜視図を示している。図2は、ALCパネルPを挟持した状態の挟持装置10の斜視図を示している。図3は、連結軸14及び操作部16を取り外した状態の挟持装置10の斜視図を示している。
図1から図3に示すように、挟持装置10は、支持部材11と、左右の挟持アーム12と、昇降軸13と、連結軸14と、左右のリンク部材15と、操作部16と、を主な構成として有している。
【0023】
支持部材11は、挟持装置10の略中心に位置し、前方側に配置された前方支持部材11Aと、後方側に配置されて、前方支持部材11Aと対向する後方支持部材11Bと、を有している。前方支持部材11A及び後方支持部材11Bの間には、前後に延びる昇降軸13及び連結軸14が介在し、前方支持部材11Aと後方支持部材11Bを、所定の間隔を隔てた状態で連結している。
【0024】
前方支持部材11Aと後方支持部材11Bは、同一の形状、寸法、及び構成を有しているため、以下の説明において、前方支持部材11Aと後方支持部材11Bとを特に区別する必要がない場合には、単に「支持部材11」として説明する。後述する支持部材11を構成する水平支持部111、垂直支持部112、及びリンク部材15についても、同様である。
【0025】
支持部材11は、左右方向に延びる水平支持部111と、水平支持部111から上方に延びる垂直支持部112と、を有している。水平支持部111は、長尺形状を有し、鋼製の板状体である。水平支持部111は、左右方向の両端部において、左右の挟持アーム12を揺動可能に支持している。また、水平支持部111は、その下端において、当接片111bを有している。当接片111bは、左右方向に延びており、挟持装置10がALCパネルPを挟持する際に、ALCパネルPの上面と当接する(図2を参照)。ALCパネルPの左右の端面を挟持アーム12で挟持するとともに、ALCパネルPの上面を当接片111bに当接させることにより、ALCパネルPの搬送及び敷込作業の安全性の向上を図ることが可能となる。当接片111bの下面は、当接面に相当する。
【0026】
垂直支持部112は、水平支持部111の左右方向の中心部から上方に延びる鋼製の板状体である。垂直支持部112の中心には、上下方向に延びる昇降軸ガイド孔112aが形成されている。図3に示すように、昇降軸ガイド孔112aは、前方支持部材11Aと後方支持部材11Bとの間で前後方向に延びる昇降軸13の昇降を案内する。
【0027】
昇降軸13は、挟持装置10の左右方向の中央に位置する軸部材である。昇降軸13は、ワイヤWを介してクレーン車と連結されている。そのため、クレーン車によって吊り上げられると、昇降軸13は、上述した昇降軸ガイド孔112aに案内されて上昇する。また、昇降軸13は、後述する左右のリンク部材15の内側端部15aが連結されている。したがって、昇降軸13の昇降運動は、左右のリンク部材15を介して左右の挟持アーム12に伝達されて、左右の挟持アーム12を揺動させる。昇降軸13は、ワイヤWが揚重機械によって吊り上げられた場合、又は後述する操作部16が回転操作された場合に昇降する。昇降軸13は、昇降部材に相当する。
【0028】
図1に戻って、左右のリンク部材15は、長尺形状を有する鋼製の板状体である。リンク部材15は、左右の挟持アーム12の間に介在している。より詳細には、左右のリンク部材15の内側端部15aが昇降軸13と連結し、リンク部材15の外側端部15bが、挟持アーム12の上部連結軸121と連結している。リンク部材15は、接続部材に相当する。
【0029】
挟持アーム12は、左右方向の両側において水平支持部111に支持されて左右に揺動する。挟持アーム12は、上部連結軸121と、下部連結軸122と、前面板123と、後面板124と、パネル当接部材125と、を主な構成として有している。上部連結軸121及び下部連結軸122は、前面板123と後面板124の間に介在する軸部材であって、前面板123と後面板124を、所定の間隔を隔てた状態で連結している。
【0030】
挟持アーム12の上端部は、リンク部材15の外側端部15bが回転可能に連結されている。また、挟持アーム12の上下方向の略中央は、水平支持部111に対して回転可能に連結されている。これにより、上述した昇降軸13の昇降運動は、左右のリンク部材15を介して挟持アーム12の揺動運動に変換される。より詳細には、昇降軸13が上昇すると、挟持アーム12の下端に取り付けられたパネル当接部材125が左右方向の内側に揺動し、ALCパネルPを挟持する(挟持状態になる)。一方、昇降軸13が下降すると、パネル当接部材125が左右方向の外側に揺動し、ALCパネルPを解放する(解放状態となる)。
【0031】
図1及び図2に示すように、パネル当接部材125の左右方向の内側には、ALCパネルPを挟持する際にALCパネルPと当接する挟持面125aが形成されている。挟持面125aは、合成ゴム製シートによって被覆されているが、これに限定されない。挟持面125aは、ALCパネルPに対して高い摩擦力を生じさせることによってALCパネルPの落下を防止することができればよく、例えばウレタン製シートによって被覆されていてもよい。挟持アーム12は、挟持部材に相当する。
【0032】
次に、図4図5A及び図5Bを参照して、支持部材11及びリンク部材15の左右方向の両端部に設けられた係合部材17について説明する。
係合部材17は、下部係合プレート171と、上部係合プレート172と、から構成されて、左右の挟持アーム12の左右方向の位置決めを行う役割を担う。下部係合プレート171は、前方支持部材11A及び後方支持部材11Bの左右方向の両端部に取り付けられている。上部係合プレート172は、前方リンク部材15A及び後方リンク部材15Bの左右方向の両端部に取り付けられている。
【0033】
最初に、下部係合プレート171について説明する。図4に示すように、下部係合プレート171は、鋼製の板状体であって、前方支持部材11Aの前方側及び後方支持部材11Bの後方側に設けられている。下部係合プレート171には、第一係合凹部171a1と、第二係合凹部171a2と、上下方向に延びる第一ガイド孔171b及び第二ガイド孔171cと、水平方向に突出する操作片171dと、が形成されている。
【0034】
第一係合凹部171a1及び第二係合凹部171a2は、挟持アーム12に固定された被係合部材122aが係合可能な寸法及び形状を有し、挟持アーム12の水平方向の位置を規制する。図4において、被係合部材122aは、第一係合凹部171a1に係合している。
【0035】
第一ガイド孔171b及び第二ガイド孔171cは、下部係合プレート171の左右方向の両端部において、上下に延びており、水平支持部111に固定されたガイド部材111cが挿通されている。
また、下部係合プレート171の上端には、操作片171dが形成されている。操作片171dが操作されることによって、下部係合プレート171は、第一ガイド孔171b及び第二ガイド孔171cに案内されて、上下方向に変位する。
【0036】
以上のように構成された下部係合プレート171の操作方法について説明する。作業者は、挟持アーム12の左右方向の位置を変更する必要がある場合、最初に、操作片171dを操作して下部係合プレート171を上方に変位させる。これにより、挟持アーム12に固定された被係合部材122aと、第一係合凹部171a1又は第二係合凹部171a2の係合状態が解除される。このとき、作業者は、挟持アーム12を左右にスライドさせることができる。換言すると、作業者は、挟持アーム12を、左右方向の両端側の第一の位置に設けられた第一係合凹部171a1、及び第一の位置よりも左右方向の中心側に位置する第二の位置に設けられた第二係合凹部171a2のいずれかと係合させることができる。最後に、作業者は、再び操作片171dを操作して下部係合プレート171を下方に変位させる。これにより、挟持アーム12の左右方向の位置が規制される。
【0037】
次に、上部係合プレート172について説明する。図4に示すように、上部係合プレート172は、鋼製の板状体であって、前方リンク部材15Aの後方側及び後方リンク部材15Bの前方側に接合するように取り付けられている。上部係合プレート172は、下部係合プレート171と同一の寸法及び形状を有している。前後の上部係合プレート172は、上部連結プレート173によって連結されているとともに、上部連結プレート173を操作することによって、上部連結プレート173を上下に変位させることができる。
【0038】
以上のように構成された上部係合プレート172の操作方法について説明すると、作業者は、挟持アーム12の左右方向の位置を変更する必要がある場合、最初に上部連結プレート173を操作して上部係合プレート172を上方に変位させる。これにより、下部係合プレート171と同様に、挟持アーム12を左右にスライドさせることが可能となる。そして、挟持アーム12を、左右方向の両端側の第一の位置、又は第一の位置よりも左右方向の中心側に位置する第二の位置に係合させる。最後に、再び上部連結プレート173を操作して上部係合プレート172を下方に変位させることにより、挟持アーム12の左右方向の位置が規制される。
【0039】
このように、下部係合プレート171及び上部係合プレート172は、挟持アーム12の左右方向の位置を変更可能に固定する役割を担う。換言すると、係合部材17は、左右方向の両端側の第一の位置、及び第一の位置よりも左右方向の中心側に位置する第二の位置において左右の挟持アーム12と係合する。
図5Aは、左右の挟持アーム12が第一の位置に固定された状態を示している。挟持アーム12を第一の位置に固定することによって、短手方向において606mmの寸法を有するALCパネルPを挟持することができる。一方、図5Bは、左右の挟持アーム12が第二の位置に固定された状態を示している。挟持アーム12を第二の位置に固定することによって、短手方向において455mmの寸法を有するALCパネルPを挟持することができる。ただし、ALCパネルPの短手方向の寸法は606mm及び455mmに限定されない。また、互いに異なるサイズを有する複数種類のALCパネルPを挟持可能とするために、係合部材17は、3つ以上の係合凹部を有していてもよい。
【0040】
次に、操作部16について説明する。操作部16は、昇降軸13を昇降させることにより、左右のリンク部材15を介して左右の挟持アーム12を揺動させるために操作される。図1及び図2に示すように、操作部16は、前方支持部材11A及び後方支持部材11Bの間に介在し、前後方向に延びる連結軸14を中心に回転操作可能に支持されている。操作部16は操作手段に相当し、連結軸14は、回転軸に相当する。
【0041】
図6及び図7に示すように、操作部16は、操作アーム161と、操作アーム支持部162と、を有している。操作アーム161は、長尺形状を有し、先端には作業者によって把持される把持部161aが設けられている(図1を参照)。作業者は、把持部161aを把持して操作アーム161を回転操作することにより、挟持アーム12のパネル当接部材125が左右方向の外側に揺動した解放状態と、パネル当接部材125が左右方向の内側に揺動した挟持状態との間で変位させることができる。
【0042】
操作アーム支持部162は、連結軸14に対して、操作部16を回転可能に支持している。また、操作アーム支持部162には、把持部161aと反対側の端部、すなわち連結軸14側の端部において、連結軸14の中心からの距離が変化するように形成された第一変径部162b及び第二変径部162cを有している。
第一変径部162bには、挟持アーム12が上述した第一の位置にあるときに昇降軸13を最下降位置に保持する第一保持部162b1と、操作部16の回転操作とともに昇降軸13が昇降するように昇降軸13を駆動する第一駆動部162b2と、を有している。
第一保持部162b1は、第一変径部162bの外縁に形成された凹部である。第一保持部162b1は、操作部16を図6に示す傾倒位置に回転操作した際に昇降軸13と当接する位置に形成されている。第一保持部162b1は、昇降軸13と係合することによって昇降軸13を最下降位置に保持する。
【0043】
第一駆動部162b2は、第一変径部162bの外縁に沿って形成されている。第一駆動部162b2は、操作部16を図7に示す反時計回りに回転操作し、起立位置となるまで昇降軸13と当接するように形成されている。第一変径部162bを構成する第一駆動部162b2は、連結軸14の中心からの距離が、連続的に変化するように形成されている。より詳細には、第一保持部162b1側の端部において、連結軸14の中心から第一駆動部162b2の外縁までの距離は、最も大きくなる。一方、第一保持部162b1から離れた先端部162b3において、連結軸14の中心から第一駆動部162b2の外縁までの距離は、最も小さくなる。
【0044】
第二変径部162cには、挟持アーム12が第二の位置にあるときに昇降軸13を最下降位置に保持する第二保持部162c1と、操作部16の回転操作とともに昇降軸13が昇降するように昇降軸13を駆動する第二駆動部162c2と、を有している。第二保持部162c1及び第二駆動部162c2は、それぞれ第一保持部162b1及び第一駆動部162b2と同等の形状及び役割を有している。以下では、挟持アーム12が第一の位置にある場合について説明を行い、挟持アーム12が第二の位置にある場合についての詳細な説明は省略する。
【0045】
操作部16の回転操作に伴う挟持装置10の動作について説明すると、最初に、作業者が図6に示す傾倒位置に操作部16を回転操作すると、第一保持部162b1が昇降軸13と係合して、昇降軸13は最下降位置に保持される。これにより、左右の挟持アーム12は、その下端部に設けられたパネル当接部材125が左右方向の外側に揺動した解放状態となる。
【0046】
次に、作業者は、挟持装置10をALCパネルPの上方に位置させて、水平支持部111の下端に形成された当接片111bをALCパネルPの上面に当接させる。さらに作業者は、操作部16を反時計回りに回転操作して、第一保持部162b1と昇降軸13の係合を解除する。これにより、昇降軸13は、上昇可能な状態となる。
【0047】
続いて、クレーン車によってワイヤWを上方に吊り上げると、昇降軸13は上昇する。昇降軸13の上昇に伴って、リンク部材15を介して左右の挟持アーム12が揺動する。これにより、挟持アーム12の下端に形成されたパネル当接部材125の左右方向の内側に形成された挟持面125aは、ALCパネルPの左右の端面にそれぞれ当接し、ALCパネルPを挟持する(図7を参照)。このとき、挟持面125aの下端は、ALCパネルPの下端よりも上方に位置している。換言すると、ALCパネルPの左右の端面の下方には、挟持面125aと当接しない非当接部Puが形成される。後述するように、非当接部Puは、敷込対象ALCパネルP1を隣接ALCパネルP2に対して位置合わせするために利用される。
【0048】
また、パネル当接部材125の下端には、隣接する位置において既に敷き込まれたALCパネルPの上面と当接する位置合わせ面125bが左右方向の外側に突出するように延びている(図4参照)。位置合わせ面125bは、挟持アーム12がALCパネルPを敷き込む際に、ALCパネルPの下面よりも上方に位置する。位置合わせ面125bは、ALCパネルPの上下方向の位置合わせを行うために利用される。また、挟持面125aの下端から左右方向の外側に突出するように位置合わせ面125bを形成することにより、パネル当接部材125の強度の向上を図ることが可能となる。
【0049】
最後に、作業者は、操作部16を時計回りに回転操作することによって、ALCパネルPを解放し、敷込位置に敷き込むことができる。より詳細に説明すると、作業者が操作部16を時計回りに回転操作すると、第一駆動部162b2又は第二駆動部162c2は、昇降軸13が下方に変位するように昇降軸13を駆動する。これにより、挟持アーム12の下端に固定されたパネル当接部材125は左右方向の外側に揺動し、ALCパネルPを解放する。
【0050】
<<揚重作業の流れ>>
次に、挟持装置10を用いたALCパネルPの敷込作業の流れについて、図8Aから図8Hを参照して説明する。図8Aから図8Hは、積層された状態にある複数のALCパネルPを互いに当接するように隣接した位置に1枚ずつ順次敷き込む作業の流れを示している。ここで、ALCパネルPの枚数が3枚でなくてもよいことは勿論である。
また、以下の敷込作業は、クレーン車(不図示)を操作する作業者と、挟持装置10を操作する作業者の少なくとも2名によって行われることとして説明する。
【0051】
最初に、図8Aに示すように、挟持装置10は、載置台Tに積層された3枚のALCパネルPの上方に位置するように吊り上げられる。このとき、左右の挟持アーム12の下端部は左右方向の外側に揺動され、ALCパネルPの幅寸法よりも、左右方向に間隔を広げた状態に保持されている。
【0052】
次に、図8Bに示すように、クレーン車によって挟持装置10は吊り下げられる。このとき、支持部材11の下端部に設けられた当接片111bは、敷込対象ALCパネルP1の上面と当接される。このとき、左右の挟持アーム12に設けられたパネル当接部材125の下端部は、敷込対象ALCパネルP1の下面より上方に位置する。続いて、作業者が操作部16を回転操作すると、挟持アーム12の下端部は、敷込対象ALCパネルP1の左右の端面と当接する。このように、挟持装置10は、左右の挟持アーム12と当接片111bを敷込対象ALCパネルP1と当接させて、安定した状態で敷込対象ALCパネルP1を敷込位置に搬送することができる。
【0053】
続いて、クレーン車の操作者が挟持装置10を吊り上げると、ワイヤWに連結された昇降軸13が上昇する。そのため、挟持アーム12は、より強い挟持力で敷込対象ALCパネルP1を挟持する。これにより、クレーン車によってALCパネルPを吊り上げた際に敷込対象ALCパネルP1の落下防止を図ることが可能となる。
【0054】
次に、図8C及び図8Dに示すように、1枚目の敷込対象ALCパネルP1が、敷込位置である梁Bの上に敷き込まれる。具体的に説明すると、クレーン車の操作者によって、敷込対象ALCパネルP1が敷込位置に搬送されて下降する。続いて、挟持装置10の操作者が操作部16を操作する。これにより、挟持アーム12の下端部が左右方向の外側に揺動し、ALCパネルPが解放される。以上により、1枚目の敷込対象ALCパネルP1の敷込作業が完了する。
【0055】
次に、作業者は、2枚目の敷込対象ALCパネルP1の上方位置から挟持装置10を吊り下げて、当接片111bを敷込対象ALCパネルP1の上面に当接させる(上面当接工程)。続いて作業者は、操作部16を操作して左右の挟持アーム12のパネル当接部材125を左右方向の内側に揺動させることによって挟持面125aを敷込対象ALCパネルP1の左右の端面に当接させる(挟持工程、端面挟持工程)。このとき、パネル当接部材125の下端は、敷込対象ALCパネルP1の下面より上方に位置する。換言すると、敷込対象ALCパネルP1の左右の端面の下方には、非当接部Puが形成されている。
【0056】
続いて、図8Eに示すように、クレーン車によって挟持装置10が吊り上げられて、敷込対象ALCパネルP1を、既に敷き込まれた1枚目のALCパネルP(隣接ALCパネルP2)の側方の敷込位置(隣接位置)の上方に搬送する(搬送工程)。
【0057】
図8Fに示すように、敷込対象ALCパネルP1は、敷込位置の上方から下方に下降する。この時、敷込対象ALCパネルP1の左側(一方側)の端面の下方に形成された非当接部Puは、隣接ALCパネルP2の、非当接部Puと対向する端面と当接される。これにより、敷込対象ALCパネルP1は、隣接ALCパネルP2と当接するように位置合わせされる。
また、敷込対象ALCパネルP1が下方に下降した際に、左側の挟持アーム12の下端に形成された位置合わせ面125bは、隣接ALCパネルP2の上面と当接する。上述したように、挟持面125aの下端から左右方向の外側に突出するように延びる位置合わせ面125bは、敷込対象ALCパネルP1の下面よりも上方に位置している。より詳細には、位置合わせ面125bは、敷込対象ALCパネルP1の厚み寸法の略半分の位置において左右方向の外側に突出するように延びている。そのため、位置合わせ面125bが隣接ALCパネルP2に当接することで、敷込対象ALCパネルP1は、その下方に、敷込対象ALCパネルP1の厚みの寸法の約半分の高さの空隙が形成された状態で位置合わせされる(位置合わせ工程)。
【0058】
このように、位置合わせ面125bが、敷込対象ALCパネルP1の厚み寸法の略半分の高さに位置することにより、位置合わせ面125bより上方に位置する挟持面125aは、十分な挟持力で敷込対象ALCパネルP1の端面を挟持することができる。換言すると、位置合わせ面125bがALCパネルPの厚み寸法の略半分よりも高い位置にある場合には、挟持面125aによる挟持力が不十分となり、ALCパネルPを落下させてしまう虞があった。
また、敷込対象ALCパネルP1の上下方向の位置合わせを行った後に後述する敷込工程を行うことによって、敷込対象ALCパネルP1が、高い位置で解放されることによる落下の衝撃によって損傷することを防止することが可能となる。換言すると、位置合わせ面125bが、ALCパネルPの厚み寸法の略半分よりも低い位置にある場合には、敷込対象ALCパネルP1を敷き込む際に、左右の挟持アーム12の間から下方に落下した際の衝撃によってALCパネルP損傷する虞があった。
【0059】
続いて、図8Gに示すように、2枚目の敷込対象ALCパネルP1がさらに下降する。図8Gは、敷込対象ALCパネルP1が、さらに下方に下降した状態を示している。敷込対象ALCパネルP1は、左側の端部において隣接ALCパネルP2と当接するとともに、梁Bとの間に空隙を有している。一方、敷込対象ALCパネルP1は、右側の端部において梁Bと当接している。
次に、図8Hに示すように、作業者が操作部16を操作すると、操作部16の第一変径部162b又は第二変径部162cによって昇降軸13が下方に駆動されて、左右の挟持アーム12の下端部が左右方向の外側に揺動する。これにより敷込対象ALCパネルP1が解放されて敷込位置に敷き込まれる(敷込工程)。
【0060】
続いて、3枚目のALCパネルPの敷込作業が行われる。3枚目のALCパネルPは、2枚目のALCパネルPと当接するように隣接する位置に敷き込まれる。具体的なALCパネルPの敷込方法は、上述した2枚目のALCパネルPの場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。以上で複数のALCパネルPの敷込作業が全て完了する。
【0061】
<<変形例>>
以上、本発明の一実施形態に係る挟持装置10について説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
上述した実施形態では、敷込対象ALCパネルP1は、既に敷き込まれた1枚の隣接ALCパネルP2の側方の敷込位置に敷き込まれることとして説明したが、これに限定されない。既に2枚の隣接ALCパネルP2が敷き込まれていて、その間に敷込対象ALCパネルP1を敷き込む場合に本発明を適用してもよい。
【0062】
図9Aから図9Cは、変形例に係るALCパネルPの敷込方法を示している。図9Aは、左右に1枚ずつ、合計2枚の隣接ALCパネルP2が梁Bに敷き込まれ、その間に位置する敷込位置の上方に敷込対象ALCパネルP1が搬送された状態を示している。
【0063】
図9Bに示すように、敷込対象ALCパネルP1は、敷込位置の上方から下方に下降する。この時、敷込対象ALCパネルP1の左右の端面の下方に形成された非当接部Puのいずれか一方が、左右のいずれかの隣接ALCパネルP2の、非当接部Puと対向する端面と当接される。これにより、敷込対象ALCパネルP1は、隣接ALCパネルP2と当接するように位置合わせされる。
また、図9Bに示すように、敷込対象ALCパネルP1が下方に下降した際に、左右の挟持アーム12の下端に形成された位置合わせ面125bは、左右の隣接ALCパネルP2のそれぞれの上面と当接する。ここで位置合わせ面125bは、敷込対象ALCパネルP1の下面よりも上方であって、敷込対象ALCパネルP1の厚み寸法の略半分の位置において左右方向の外側に突出するように延びている。そのため、左右の位置合わせ面125bが左右の隣接ALCパネルP2のそれぞれの上面に当接することで、敷込対象ALCパネルP1は、敷込対象ALCパネルP1の厚みの寸法の約半分の空隙が形成された高さに位置合わせされる(位置合わせ工程)。
最後に、図9Cに示すように、作業者が操作部16を操作すると、左右の挟持アーム12の下端部が左右方向の外側に揺動する。これにより敷込対象ALCパネルP1が解放されて敷込位置に敷き込まれる(敷込工程)。
【0064】
<<第二変形例>>
また、上述した実施形態では、左右のリンク部材15は、直線状に延びる長尺形状を有し、操作部16は、第一保持部162b1及び第二保持部162c1を有していることとして説明したが、これに限定されない。図10図11A及び図11bは、第二変形例に係る挟持アーム212と、リンク部材215と、操作部216と、を示している。
【0065】
図10図11A及び図11Bに示すように、リンク部材215は、その外側端部15bにおいて、水平方向に延びるように屈曲している。そして、上部連結プレート173は、リンク部材215の外側端部15bに、水平方向に延びるように取り付けられている。
図11Aは、左右の挟持アーム212が第一の位置に固定された状態を示している。挟持アーム212を第一の位置に固定することによって、短手方向において606mmの寸法を有するALCパネルPを挟持することができる。一方、図11Bは、左右の挟持アーム212が第二の位置に固定された状態を示している。挟持アーム212を第二の位置に固定することによって、短手方向において455mmの寸法を有するALCパネルPを挟持することができる。
【0066】
また、操作部216は、連結軸14の中心からの距離が変化するように形成された変径部162dを有している。変径部162dには、挟持アーム212が第一の位置にあるときに昇降軸13を最下降位置に保持する保持部162d1と、操作部216の回転操作とともに昇降軸13が昇降するように昇降軸13を駆動する駆動部162d2と、を有している。
保持部162d1は、変径部162dの外縁に形成された凹部である。保持部162d1は、操作部216を図11A及び図11Bに示す傾倒位置に回転操作した際に昇降軸13と当接する位置に形成されている。保持部162d1は、昇降軸13と係合することによって昇降軸13を最下降位置に保持することができる。
【0067】
図11A及び図11Bに示すように、挟持アーム212が第一の位置に固定された場合であっても、第二の位置に固定された場合であっても、リンク部材215は、同一の配置で同一の動作を行う。そのため、操作部216は、図5A及び図5Bに示す第一変径部162b及び第二変径部162cを有することなく、図11A及び図11Bに示す単一の変径部162dを有している。
【0068】
図10に戻って、左右の挟持アーム212は、その上端部にスライドハンドル126が上方に延びるように取り付けられている。作業者は、下部係合プレート171及び上部係合プレート172を上方に変位させた後に、スライドハンドル126の把持部126aを把持して挟持アーム212を左右にスライドさせることができる。これにより、挟持アーム212の位置を容易に変更することが可能となる。
【0069】
また、上述した実施形態では、位置合わせ面125bは、挟持面125aの下端において、左右方向の外側に突出するように垂直に延びることとして説明したが、これに限定されない。ALCパネルPは、その端面及び上面の間に面取り加工が施されている。したがって、位置合わせ面125bが、ALCパネルPの面取り加工面と当接する形状を有することとしてもよい。換言すると、位置合わせ面125bは、挟持面125aの下端から、ALCパネルPの面取り加工面と当接するように屈曲しながら左右方向の外側に突出させてもよい。これにより、隣接ALCパネルP2と位置合わせ面125bの間の位置合わせ精度を高めることが可能となる。
【0070】
また、上述した実施形態では、昇降軸13は、クレーン車によってワイヤWを介して吊り上げるか、又は操作部16を操作することによって昇降されることとして説明したが、これに限定されない。昇降軸13と連結軸14の間に弾性部材(スプリング)を配設し、スプリングによって昇降軸13が上昇するように付勢されることとしてもよい。これにより、挟持アーム12の下端部が左右方向の内側に揺動するように付勢されることとなる。そのため、挟持装置10の挟持力を向上させ、敷込作業中にALCパネルPを落下させてしまう事態を抑制することができ、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0071】
上述した実施形態では、床パネルとしてALCパネルPを例示したが、本発明はこれに限定されず、その他の床パネル、例えばコンクリート製床パネルの敷込作業を行う場合に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 挟持装置
11 支持部材
11A 前方支持部材
11B 後方支持部材
111 水平支持部
111b 当接片
111c ガイド部材
112 垂直支持部
112a 昇降軸ガイド孔
12、212 挟持アーム(挟持部材)
121 上部連結軸
122 下部連結軸
122a 被係合部材
123 前面板
124 後面板
125 パネル当接部材
125a 挟持面
125b 位置合わせ面
126 スライドハンドル
126a 把持部
13 昇降軸(昇降部材)
14 連結軸(回転軸)
15、215 リンク部材(接続部材)
15A 前方リンク部材
15B 後方リンク部材
15a 内側端部
15b 外側端部
16、216 操作部(操作手段)
161 操作アーム
161a 把持部
162 操作アーム支持部
162b 第一変径部
162b1 第一保持部
162b2 第一駆動部
162c 第二変径部
162c1 第二保持部
162c2 第二駆動部
162d 変径部
162d1 保持部
162d2 駆動部
17 係合部材
171 下部係合プレート
171a1 第一係合凹部
171a2 第二係合凹部
171b 第一ガイド孔
171c 第二ガイド孔
171d 操作片
172 上部係合プレート
173 上部連結プレート
B 梁
P ALCパネル
P1 敷込対象ALCパネル(敷込対象床パネル)
P2 隣接ALCパネル(隣接床パネル)
Pu 非当接部
T 載置台
W ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B