(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078069
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ヒートポンプ式蒸気生成装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20240603BHJP
F25B 1/10 20060101ALI20240603BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20240603BHJP
F25B 43/02 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
F25B1/00 321S
F25B1/00 399Y
F25B1/00 387K
F25B1/10 G
F25B1/00 387A
F25B43/00 R
F25B43/02 A
F25B1/00 331D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190403
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安嶋 賢哲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 時空
(72)【発明者】
【氏名】藤本 裕地
(57)【要約】
【課題】熱損失を低減することのできるヒートポンプ式蒸気生成装置を提供する。
【解決手段】ヒートポンプ式蒸気生成装置10Aは、熱源水から回収した熱で低圧冷媒を蒸発させる蒸発器16と、低圧冷媒を高圧冷媒に圧縮する圧縮機20と、高圧冷媒から油分を分離する油分離器22と、油分が分離された高圧冷媒を凝縮させ供給水を加熱して沸騰させる凝縮器24と、凝縮器24によって凝縮された冷媒を減圧膨張して蒸発器16に導出する膨張弁30,34と、蒸発器16に対して熱源水の経路の上流側で、油分離器22において分離された油を熱源水と熱交換して冷却する油冷却器46とを備える。油冷却器46で熱交換されて昇温した熱源水は蒸発器16で冷媒と熱交換する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源水から回収した熱で低圧冷媒を蒸発させる蒸発器と、低圧冷媒を高圧冷媒に圧縮する圧縮機と、高圧冷媒から油分を分離する油分離器と、油分が分離された高圧冷媒を凝縮させ供給水を加熱して沸騰させる凝縮器と、前記凝縮器によって凝縮された冷媒を減圧膨張して前記蒸発器に導出する膨張弁とを有したヒートポンプ式蒸気生成装置であって、
前記蒸発器に対して前記熱源水の経路の上流側で、前記油分離器において分離された油を前記熱源水と熱交換して冷却する油冷却器を備え、
前記油冷却器で熱交換されて昇温した前記熱源水の少なくとも一部を前記蒸発器で冷媒と熱交換する
ことを特徴とするヒートポンプ式蒸気生成装置。
【請求項2】
前記熱源水が前記油冷却器を通らないようにバイパスさせるバイパス機構を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式蒸気生成装置。
【請求項3】
熱源水から回収した熱で低圧冷媒を蒸発させる蒸発器と、低圧冷媒を高圧冷媒に圧縮する圧縮機と、高圧冷媒から油分を分離する油分離器と、油分が分離された高圧冷媒を凝縮させ供給水を加熱して沸騰させる凝縮器と、前記凝縮器によって凝縮された冷媒を減圧膨張して前記蒸発器に導出する膨張弁とを有したヒートポンプ式蒸気生成装置であって、
前記凝縮器に対して前記供給水の上流側で、前記油分離器において分離された油を前記供給水と熱交換して冷却する油冷却器を備え、
前記油冷却器で熱交換されて昇温した前記供給水の少なくとも一部を用い前記凝縮器で冷媒と熱交換する
ことを特徴とするヒートポンプ式蒸気生成装置。
【請求項4】
前記油冷却器に対して前記供給水の経路の上流側または下流側に設けられ、
前記蒸発器で冷媒と熱交換した前記熱源水によって前記供給水と熱交換して昇温させる予熱器を有する
ことを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ式蒸気生成装置。
【請求項5】
前記供給水が前記予熱器を通らないようにバイパスさせるバイパス機構を有する
ことを特徴とする請求項4に記載のヒートポンプ式蒸気生成装置。
【請求項6】
前記膨張弁は気液分離器を介して高圧側の第1膨張弁と低圧側の第2膨張弁とにより構成され、
前記圧縮機は低圧側の第1圧縮機と高圧側の第2圧縮機とによって構成される二段圧縮機であり、
前記気液分離器から前記第1圧縮機と前記第2圧縮機との間を連通する中圧ラインを有する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のヒートポンプ式蒸気生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒循環回路における蒸発器において外部熱源によって冷媒を蒸発させ、凝縮器において冷媒を凝縮させるとともに供給水を蒸発させるヒートポンプ式蒸気生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ式蒸気生成装置のヒートポンプ部では圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を環状に接続した冷媒循環回路を形成し、蒸発器において外部熱源によって冷媒を蒸発させ、凝縮器において冷媒を凝縮させる(特許文献1)。
【0003】
圧縮機は摺動部を有することから油により潤滑を行なうことが望ましい。摺動部を潤滑した高温の油は油分離器で冷媒から分離して圧縮機に戻す(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-46081号公報
【特許文献2】特開昭57-117761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献2に記載の回路では、冷媒から分離された油を空冷式の油冷塔を介して放熱し所定の温度まで冷却した後に分離して圧縮機に戻しているが、高温になった油の熱は大気に放熱されることから熱損失となっている。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、熱損失を低減することのできるヒートポンプ式蒸気生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるヒートポンプ式蒸気生成装置は、熱源水から回収した熱で低圧冷媒を蒸発させる蒸発器と、低圧冷媒を高圧冷媒に圧縮する圧縮機と、高圧冷媒から油分を分離する油分離器と、油分が分離された高圧冷媒を凝縮させ供給水を加熱して沸騰させる凝縮器と、前記凝縮器によって凝縮された冷媒を減圧膨張して前記蒸発器に導出する膨張弁とを有したヒートポンプ式蒸気生成装置であって、前記蒸発器に対して前記熱源水の経路の上流側で、前記油分離器において分離された油を前記熱源水と熱交換して冷却する油冷却器を備え、前記油冷却器で熱交換されて昇温した前記熱源水の少なくとも一部を前記蒸発器で冷媒と熱交換することを特徴とする。
【0008】
前記熱源水が前記油冷却器を通らないようにバイパスさせるバイパス機構を有してもよい。このバイパス機構によれば熱条件が満たされない場合に熱源水をバイパスさせることができる。
【0009】
また、本発明にかかるヒートポンプ式蒸気生成装置は、熱源水から回収した熱で低圧冷媒を蒸発させる蒸発器と、低圧冷媒を高圧冷媒に圧縮する圧縮機と、高圧冷媒から油分を分離する油分離器と、油分が分離された高圧冷媒を凝縮させ供給水を加熱して沸騰させる凝縮器と、前記凝縮器によって凝縮された冷媒を減圧膨張して前記蒸発器に導出する膨張弁とを有したヒートポンプ式蒸気生成装置であって、前記凝縮器に対して前記供給水の上流側で、前記油分離器において分離された油を前記供給水と熱交換して冷却する油冷却器を備え、前記油冷却器で熱交換されて昇温した前記供給水の少なくとも一部を用い前記凝縮器で冷媒と熱交換することを特徴とする。
【0010】
前記油冷却器に対して前記供給水の経路の上流側または下流側に設けられ、前記蒸発器で冷媒と熱交換した前記熱源水によって前記供給水と熱交換して昇温させる予熱器を有してもよい。このような予熱器では熱源水の熱をさらに有効利用することができる。
【0011】
前記供給水が前記予熱器を通らないようにバイパスさせるバイパス機構を有してもよい。このバイパス機構によれば予熱器の熱条件が満たされない場合に供給水をバイパスさせることができる。
【0012】
前記膨張弁は気液分離器を介して高圧側の第1膨張弁と低圧側の第2膨張弁とにより構成され、前記圧縮機は低圧側の第1圧縮機と高圧側の第2圧縮機とによって構成される二段圧縮機であり、前記気液分離器から前記第1圧縮機と前記第2圧縮機との間を連通する中圧ラインを有してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、油冷却器を水冷式として、熱交換されて昇温した水の少なくとも一部を蒸発器または凝縮器で冷媒と熱交換することにより熱損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかるヒートポンプ式蒸気生成装置の回路図である。
【
図2】
図2は、第2の実施形態にかかるヒートポンプ式蒸気生成装置の回路図である。
【
図3】
図3は、第3の実施形態にかかるヒートポンプ式蒸気生成装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の第1~第3の実施形態にかかるヒートポンプ式蒸気生成装置10A~10Cを図面に基づいて詳細に説明する。これらは代表的にヒートポンプ式蒸気生成装置10とも呼ぶ。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかるヒートポンプ式蒸気生成装置10Aの回路図である。ヒートポンプ式蒸気生成装置10は、供給水を蒸発させて水蒸気を生成し、外部へと送り出す蒸気生成部12と、供給される熱源水から熱を回収してこの熱を蒸気生成部12における蒸気生成のための熱源として供給するヒートポンプ部14とを備える。ヒートポンプ式蒸気生成装置10は図示しない制御部によって制御される。ヒートポンプ式蒸気生成装置10は制御部も含めて図示しない筐体に収められている。制御部は管路に設けられたセンサからの温度、圧力を読み取り、各種バルブの開閉制御、圧縮機20の回転制御などを行う。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現してもよい。
【0017】
ヒートポンプ部14は冷媒が循環する回路であり、冷媒の循環する順に、蒸発器16、低段内部熱交換器18、圧縮機20、油分離器22、凝縮器24、過冷却器26、高段内部熱交換器28、高段膨張弁30、気液分離器32、および低段膨張弁34を有する。蒸発器16は熱源水から回収した熱で低圧冷媒を蒸発させる。熱源水には、例えば他のシステムからの排温水が利用される。圧縮機20は低圧冷媒を高圧冷媒に圧縮する。圧縮機20は、例えばスクロール式である。油分離器22は高圧冷媒から油分を分離する。該油分離器22は、例えば一般的な気液分離器と同様な旋回流によりガス冷媒と油とを分離する構造である。つまり密度の大きい油は旋回流の遠心力で油分離器の内壁に付着、流下して分離する。ヒートポンプ部14の回路では、油分離器22が圧縮機20の吐出側に設けられており、油が回路を循環することおよび油の循環のための動力が抑制され、冷媒の圧力損失およびエネルギー損失を低減させることができる。
【0018】
凝縮器24は油分が分離された高圧冷媒を凝縮させ供給水を加熱して沸騰させる。過冷却器26は、凝縮器24と高段内部熱交換器28との間に設けた熱交換器であって冷媒を過冷却させる。高段膨張弁30は凝縮器24および過冷却器26によって凝縮および過冷却された冷媒を減圧膨張させて中圧冷媒とする。気液分離器32は中圧冷媒を気液分離する。低段内部熱交換器18は、気液分離器32の液相側出口から導入された中圧冷媒と蒸発器16から導入された低圧冷媒との間で熱交換を行う。これにより中圧冷媒が過冷却される一方、低圧冷媒が過熱されてヒートポンプ式蒸気生成装置10の熱効率が向上する。低段膨張弁34は、低段内部熱交換器18から導入された冷媒を減圧膨張させて低圧冷媒とし蒸発器16に導入する。
【0019】
ヒートポンプ部14は二段圧縮機構となっている。つまり、圧縮機20は低圧側の第1圧縮機と20aと高圧側の第2圧縮機20bとによって構成される二段圧縮機であり、気液分離器32から第1圧縮機20aと第2圧縮機20bとの間を連通する中圧ライン36を有している。二段圧縮機構では、低段の圧縮機構に導入される冷媒循環量と高段の圧縮機構に導入される冷媒循環量とが異なる場合であっても、簡易な構成で装置の小型化を実現することができる。
【0020】
高段内部熱交換器28は、過冷却器26から高段膨張弁30に供給される高圧冷媒と中圧ライン36の中圧冷媒との間で熱交換を行うように配置されている。これにより、中圧冷媒は第2圧縮機20bの供給される前段階で昇温されることで熱効率が上昇する。
【0021】
ヒートポンプ部14の冷媒管路には複数の電磁弁38が設けられている。電磁弁38は運転終了時に適宜の順序で閉じることにより冷媒を所定の管路に重点的に貯留し、運転開始時には適宜の順序で開くことにより適切な条件での運転が可能になる。ヒートポンプ部14では、設計条件により過冷却器26、高段内部熱交換器28、低段内部熱交換器18、電磁弁38を省略してもよい。ヒートポンプ部14は中圧ライン36のない単段圧縮機構であってもよい。
【0022】
蒸気生成部12では、供給水が過冷却器26および凝縮器24で冷媒と熱交換を行い蒸発し、水蒸気分離器40および圧力調整弁42を介して水蒸気(過熱水蒸気を含む)として外部に供給されるようになっている。水蒸気分離器40で分離された水は蒸発器16に戻すようになっている。
【0023】
ヒートポンプ式蒸気生成装置10Aには、さらに油分離器22で冷媒から分離された油を圧縮機20に戻す油還元部44Aが設けられている。油還元部44Aは油冷却器46、流量調整弁48および三方弁50を有する。油冷却器46は蒸発器16に対して熱源水の経路の上流側に設けられており、油分離器22において冷媒から分離された高温の油を熱源水と熱交換して冷却する。油分離器22で冷却された油は流量調整弁48で流量調整されて圧縮機20に戻される。流量調整弁48は、圧縮機20の前後差圧などに基づき該圧縮機20の各軸に必要となる油量が供給されるように制御部によって制御される。また、二段圧縮二段膨張サイクルのように冷媒の分岐を伴うサイクルの場合、油の圧縮機20への戻りが不安定になることがあるが、油分離器22にて油を分離して戻す構成を取ることにより安定化する。油冷却器46で熱交換されてさらに昇温した熱源水は蒸発器16に供給されて冷媒と熱交換をする。
【0024】
油は圧縮機20によって冷媒とともに高温となっているが、油冷却器46により適正に冷却され、粘度低下による潤滑不良や、圧縮機20への吸入冷媒加熱による吸入密度低下での冷媒流量低下(熱出力低下)を防止することができる。
【0025】
この油還元部44Aの油冷却器46は空冷式の油冷塔などとは異なる水冷式であり、油の熱は大気に放熱されることなく熱交換によって熱源水で回収して蒸発器16に対する予熱として利用されることから熱損失が低減する。また、冷媒の圧力損失増大によるエネルギー損失や、圧縮機20の吐出圧増大や吸入圧低下による熱出力およびCOP(Coefficient Of Performance、サイクル効率)の低下を防止することができる。なお、油冷却器46で昇温された熱源水は、熱的条件などによりその一部を蒸発器16以外に供給するようにしてもよい。換言すれば、油冷却器46で熱交換されて昇温した熱源水の少なくとも一部を蒸発器16で冷媒と熱交換することにより熱損失を低減することができる。さらに、蒸発器16へ供給される熱源水温度が上昇することで、ヒートポンプ部14の低段側の圧力を上昇させて冷媒流量を増大させることができる。また、油の冷却が空冷式でないことから、ヒートポンプ式蒸気生成装置10Aの筐体内の空気温度の上昇を抑制することができ、油冷却器46と制御部とが同一筐体内にあっても該制御部など電子機器の耐熱保護が容易となる。
【0026】
三方弁50は熱源水が油冷却器46を通らないようにバイパスさせるバイパス機構を構成している。三方弁50によれば、運転開始時やその他何らかの要因により、油冷却器46を通る熱源水入力温度Taと油入力温度Tbとの温度条件が逆転している場合に、熱源水が油冷却器46を通らないようにバイパスさせることができる。三方弁50および後述する三方弁54は2つの電磁弁を連動させることにより構成してもよい。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態にかかるヒートポンプ式蒸気生成装置10Bについて説明する。ヒートポンプ式蒸気生成装置10Bおよび後述するヒートポンプ式蒸気生成装置10Cについて上記のヒートポンプ式蒸気生成装置10Aと同様の構成要素については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0028】
図2は、ヒートポンプ式蒸気生成装置10Bの回路図である。ヒートポンプ式蒸気生成装置10Bは油還元部44Bを有する。油還元部44Bは上記の油還元部44Aに代わるものであり、油冷却器46、流量調整弁48、予熱器52および三方弁54を有する。
【0029】
ヒートポンプ式蒸気生成装置10Bにおける油冷却器46、は基本的に上記のヒートポンプ式蒸気生成装置10Aにおけるものと同じであるが適用形態が異なっている。すなわち、この実施例における油冷却器46は、凝縮器24及び過冷却器26に対して供給水の上流側で、油分離器22において分離された油を供給水と熱交換して冷却するように設けられている。この油還元部44Bでは、油冷却器46で油を冷却しているが空冷式の油冷塔などとは異なり、油の熱は大気に放熱されることなく熱交換によって熱源水で回収して凝縮器24および過冷却器26に対する予熱として利用されることから熱損失を低減することができる。また、供給水を予熱することで出力としての水蒸気の量を増やすことができる。なお、油冷却器46で昇温された供給水は、熱的条件などによりその一部を凝縮器24および過冷却器26以外に供給するようにしてもよい。換言すれば、油冷却器46で熱交換されて昇温した供給水の少なくとも一部を凝縮器24および過冷却器26で冷媒と熱交換することにより熱損失を低減することができる。
【0030】
予熱器52は、油冷却器46に対して供給水の経路の上流側で、蒸発器16で冷媒と熱交換した熱源水によって供給水と熱交換して昇温させるように設けられている。この予熱器52によれば、蒸発器16で冷媒と熱交換した熱源水の熱量にさらに余裕がある場合にその熱量を回収して熱効率を一層向上させることができる。
【0031】
ただし、熱量に余裕がない場合には、熱源水入力温度Tdが供給水入力温度Tcを下回る可能性もある。そのため、油還元部44Bの三方弁54は供給水が予熱器52を通らないようにバイパスさせるバイパス機構を構成しており、熱条件が満たされない場合には供給水をバイパスさせることができる。
【0032】
ヒートポンプ式蒸気生成装置10Bでは、予熱器52が供給水の入力ラインおよび熱源水の出力ラインに設けられていることから、仮想線で示す接続部56を境としてオプション的な後付け構成として設定することが容易である。
【0033】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態にかかるヒートポンプ式蒸気生成装置10Cの回路図である。ヒートポンプ式蒸気生成装置10Cは油還元部44Cを有する。油還元部44Cは上記の油還元部44Bに代わるものであり、構成要素は同じであるが配置が異なっている。すなわち、この実施例における油冷却器46は、凝縮器24及び過冷却器26に対して供給水の上流側にあるが、油冷却器46と過冷却器26との間に予熱器52が設けられている。換言すれば、予熱器52は、供給水の経路において油冷却器46に対して下流側、過冷却器26に対して上流側に設けられている。ヒートポンプ式蒸気生成装置10Cではヒートポンプ式蒸気生成装置10Bと同様に、蒸発器16で冷媒と熱交換した熱源水から熱量を回収して熱効率を一層向上させることができる。
【0034】
また、三方弁54は油冷却器46と予熱器52との間に設けられており、上記のヒートポンプ式蒸気生成装置10Cと同様に、供給水が予熱器52を通らないようにバイパスさせるバイパス機構を構成しており、熱源水入力温度Tdと供給水入力温度Tcとの熱条件が逆転した場合のバイパスが可能である。
【0035】
なお、ヒートポンプ式蒸気生成装置10Bとヒートポンプ式蒸気生成装置10Cとは、構成および作用に関して大きな差異はなく、予熱器52を上記したようなオプション設定とする必要がなければ、供給水温度と熱源水温度との温度条件などによりいずれかを選択すればよい。
【0036】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
10A,10B,10C ヒートポンプ式蒸気生成装置
12 蒸気生成部
14 ヒートポンプ部
16 蒸発器
18 低段内部熱交換器
20 圧縮機
22 油分離器
24 凝縮器
26 過冷却器
30 高段膨張弁
32 気液分離器
34 低段膨張弁
36 中圧ライン
38 電磁弁
40 水蒸気分離器
42 圧力調整弁
44A,44B,44C 油還元部
46 油冷却器
48 流量調整弁
50,54 三方弁(バイパス機構)
52 予熱器