(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078074
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】機器搬送方法
(51)【国際特許分類】
B66F 3/36 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
B66F3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190411
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】森田 幸吉
(57)【要約】
【課題】ジャッキを利用して機器や機器ベースを挙上して、目的の設置場所に搬送する機器搬送方法を提供する。
【解決手段】実施形態は、吊りプレートを有する機器ベースを有する設置物を設置場所に搬送する機器輸送方法である。この機器輸送方法では、吊りプレートのクレーン係止孔に挿通するピンを有するジャッキアップ用治具を準備し、ジャッキによって前記ジャッキアップ用治具を介して、前記設置物を挙上し、挙上した前記設置物の下にチルローラを配置して、前記チルローラによって前記設置物の設置場所に移動する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンによって挙上する際にクレーンに係止する複数のクレーン係止孔をそれぞれ有する複数の吊りプレートを設けた機器ベースと前記機器ベース上に載置された機器とを含む設置物をクレーンによらずにチルローラ上に載せて目的の設置場所に搬送する機器搬送方法であって、
前記複数のクレーン係止孔のそれぞれに挿通するピンと、前記複数のクレーン係止孔から脱落しないように前記ピンに接合されたエンドプレートと、をそれぞれ有する複数のジャッキアップ用治具を準備し、
前記複数のクレーン係止孔にそれぞれ挿通された前記複数のジャッキアップ用治具の下方にそれぞれ配置された複数のジャッキによって、前記複数のジャッキアップ用治具を支持して、前記複数のジャッキアップ用治具を介して前記設置物を挙上し、
挙上された前記設置物と前記設置物を搬送する搬送路との間に配置されたチルローラによって、前記設置場所に搬送する機器搬送方法。
【請求項2】
前記複数のジャッキアップの前記ピンは、前記複数のジャッキの支持部に当接する位置に平坦面を有する請求項1記載の機器搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、クレーンによる挙上ができない状況での機器搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器や機械装置等の重量物を搬送する場合には、クレーンによって搬送物を挙上し移動して、目的の場所に設置する。プラント機器や変電設備等を屋内に設置する場合には、クレーンを利用することができない場合がある。
【0003】
設置する機器や機器とともに設置場所に設置される機器ベースごとに、ネジを利用してジャッキアップする技術が知られている(たとえば、特許文献1)。機器ごと、機器ベースごとにジャッキアップのためのネジを設計したりするのでは、汎用性が乏しく、ネジを設けるための設計期間等が長くなる。また、機器ベースに設置された機器を機器ベースごと設置場所に設置する場合において、その設置場所でクレーンの利用が可能か否かでネジを設けるか否かを判断するのでは、機器ベース等の設計作業が煩雑になる。
【0004】
機器ベースの設置場所ごとにクレーンの利用可否を問わずに、機器を搭載した機器ベースを挙上して所定の設置場所に搬送する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、汎用のジャッキを利用して機器や機器ベースを挙上して目的の設置場所に搬送する機器搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、クレーンによって挙上する際にクレーンに係止する複数のクレーン係止孔をそれぞれ有する複数の吊りプレートを設けた機器ベースと前記機器ベース上に載置された機器とを含む設置物をクレーンによらずにチルローラ上に載せて目的の設置場所に搬送する機器搬送方法である。この機器搬送方法では、前記複数のクレーン係止孔にそれぞれに挿通するピンと、前記複数のクレーン係止孔から脱落しないように前記ピンに接合されたエンドプレートと、をそれぞれ有する複数のジャッキアップ用治具を準備し、前記複数のクレーン係止孔のそれぞれ挿通された前記複数のジャッキアップ用治具の下方にそれぞれ配置された複数のジャッキによって、前記複数のジャッキアップ用治具を支持して、前記複数のジャッキアップ用治具を介して前記設置物を挙上し、挙上された前記設置物と前記設置物を搬送する搬送路との間に配置されたチルローラによって、前記設置場所に搬送する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態によれば、汎用のジャッキを利用して機器や機器ベースを挙上して目的の設置場所に搬送する機器搬送方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)は、実施形態に係る機器搬送方法に用いられるジャッキアップ用治具を例示する模式図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、実施形態に係る機器搬送方法に用いられる機器ベースを例示する模式図である。
【
図3】
図3(a)および
図3(b)は、
図2(a)および
図2(b)の機器ベースに機器を搭載した設置物を例示する模式図である。
【
図4】実施形態に係る機器搬送方法を説明するための模式図である。
【
図5】実施形態に係る機器搬送方法を説明するための模式図である。
【
図6】実施形態に係る機器搬送方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
なお、以下の説明では、重力方向にほぼ垂直な平面の上方または下方から対象物を見ることを平面視ということがある。
【0011】
まず、実施形態に係る機器搬送方法を実行するために用いられる部材の構成について説明する。
図1(a)および
図1(b)は、実施形態に係る機器搬送方法に用いられるジャッキアップ用治具を例示する模式図である。
図1(a)および
図1(b)に示すように、ジャッキアップ用治具10は、エンドプレート11付のピン12である。ピン12は、
図2に関連して後述する機器ベース20の吊りプレート25のクレーン係止孔26に挿通される。ピン12は、ほぼ円柱形状の部材であり、円柱の側面の一部が面取りされ、面取りされた面は荷重面13とされている。荷重面13は、ジャッキの支持部を当接させるために設けられている。
【0012】
ピン12の太さは、吊りプレートのクレーン係止孔26に挿通される十分な長さを有し、クレーン係止孔26に挿通できるように、クレーン係止孔26の径よりも細く、ジャッキアップしたときに十分な強度となるような太さとされる。ピン12の太さをクレーン係止孔26の径よりも細くすることによって、ジャッキアップ用治具10は、クレーン係止孔26に着脱可能とすることができる。エンドプレート11は、ピン12の一方の端部に設けられている。エンドプレート11は、クレーン係止孔26から抜けないように、十分な大きさとされる。エンドプレート11およびピン12は、たとえば、鋼で形成され、溶接により互いに接合されている。
【0013】
図2(a)および
図2(b)は、実施形態に係る機器搬送方法に用いられる機器ベースを例示する模式図である。
図2(a)および
図2(b)に示すように、機器ベース20は、上板21、下板22、短いH鋼23、長いH鋼24および吊りプレート25を有する。機器ベース20では、対向して配置された2つの短いH鋼23の両端を挟むように、2つの長いH鋼24が設けられる。平面視で、長方形状に組み合わされた4つのH鋼23、23、24、24は、それぞれの端部でたとえば溶接により接合される。上板21および下板22は、長方形状に組み合わされた4つのH鋼23、23、24、24を上下から挟み込んで、4つのH鋼23、23、24、24にたとえば溶接により接合される。
【0014】
吊りプレート25は、機器ベース20が載置され、搬送される搬送面にほぼ垂直な面を有する板状の部材である。吊りプレート25は、機器を搭載した機器ベース20を挙上する場合には、機器ベース20の載置面に対して重力方向の力を受けるので、重力方向の力に対して、十分な強度を有するように、たとえば溶接によってH鋼24に接合される。
【0015】
吊りプレート25には、クレーン係止孔26が開口されている。クレーン係止孔26は、重力方向に対してほぼ垂直な平面である搬送面に対してほぼ平行な方向に、吊りプレート25を貫通して設けられている。クレーン係止孔26は、搬送面に対してほぼ平行な方向に吊りプレート25を貫通して設けられることによって、ジャッキアップ用治具10のピン12を搬送面に対してほぼ平行に挿通することができる。そのため、ピン12をジャッキにより支持したときに十分な強度で吊りプレート25を支持し、機器ベース20を挙上することができる。
【0016】
なお、吊りプレート25およびクレーン係止孔26は、クレーンによって機器ベース20を挙上し、機器ベースを移動する場合にも利用される。その場合には、クレーン係止孔26は、搬送面に対してほぼ平行な方向に吊りプレート25を貫通して設けられているので、クレーン係止孔26にクレーンのロープやワイヤ、フック等を係止したときに、これらが外れにくく、十分な強度で係止される。クレーン係止孔26は、ロープ等の係止に利用されるため、その径は、複数種類の機器ベースについて共通とされる。したがって、クレーン係止孔26に挿通されるジャッキアップ用治具10は、複数種類の機器ベースについて共通に利用することが可能である。
【0017】
上板21、下板22および4つの吊りプレート25は、たとえば、鋼で形成されており、十分な強度とされる。
【0018】
この例の機器ベース20では、2つのH鋼24のそれぞれ2箇所ずつに吊りプレート25が設けられている。つまり、この例では、吊りプレート25は、4箇所に設けられている。吊りプレート25の配置や数は、これに限らず、挙上する機器および機器ベースの重量や床面積等によって適切に設定される。
【0019】
図3に関連して後述するように、機器ベース20上には機器30が配置される。機器ベース20は、機器30が配置された状態で、搬送され、そのまま目的の設置場所に設置される。つまり、機器ベース20は、機器30と一体の設置物であり、たとえば、機器30を製造した工場で機器ベース20に機器が搭載されて出荷される。
【0020】
上述の例では、機器ベース20は、平面視で、長方形であるとしたが、これに限らず、搭載する機器30の底面の形状や搭載する機器の数に応じて、適切な任意の形状とされる。吊りプレート25の数や吊りプレート25が設けられる位置は、機器ベース20の平面視での形状や搭載する機器の重量、機器の配置に応じて適切に設定される。
【0021】
図3(a)および
図3(b)は、
図2(a)および
図2(b)の機器ベースに機器を搭載した設置物を例示する模式図である。
図3(a)および
図3(b)に示すように、機器ベース20上に機器30が搭載され、機器30は、たとえばボルト-ナットで機器ベース20に固定される。機器30および機器30が搭載された機器ベース20を含めて設置物40と呼ぶものとする。
【0022】
実施形態に係る機器搬送方法を実行するために用いられる部材では、上述のほかにチルローラが用いられる。チルローラは、設置物40と設置物40を挙上して搬送する場合の搬送路との間に設けられ、設置物40を目的の設置位置に搬送する。
【0023】
実施形態に係る機器搬送方法を実行するために用いられる部材では、上述のほかにジャッキが用いられる。ジャッキは、吊りプレート25のクレーン係止孔26に挿通されたジャッキアップ用治具10を支持して、設置物40をジャッキアップする。これらの利用の具体例は、実施形態に係る機器搬送方法の説明において詳述する。
【0024】
実施形態に係る機器搬送方法について説明する。
図4~
図6は、実施形態に係る機器搬送方法を説明するための模式図である。
まず、機器ベース20および機器30からなる設置物40が、たとえば機器を製造する工場で組み立てられて、設置物40の設置場所のある工事現場に輸送される。
【0025】
図4に示すように、設置物40は、横付けされた車両から工事現場の搬送路に移動される。搬送路には、設置物40を設置する設置面G2と設置物40との間にジャッキを挿入できる空間を設けるために、補助部材G1が配置されており、設置物40は、補助部材G1上に降ろされる。補助部材G1は、たとえば、機器ベース20の短いH鋼23の長さよりも短い幅の鋼材である。設置面G2と吊りプレート25に挿通されたジャッキアップ用治具10との間の距離が、ジャッキの最短長さの場合よりも長い場合には、補助部材G1を省略してもよい。なお、設置物40を車両から搬送路に降ろす際には、たとえば、車両の荷台の高さを搬送路の高さに合わせた後に、設置物40を補助部材G1上に移動させる。
【0026】
図5に示すように、4つの吊りプレート25のクレーン係止孔26のそれぞれに、ジャッキアップ用治具10のピン12が挿通される。この例では、同じH鋼24に設けられた隣り同士の吊りプレート25のクレーン係止孔26に対して、ピン12を吊りプレート25の反対側から挿入しているが、これに限るものではなく、同じ側から挿入してももちろんよい。
【0027】
4つのクレーン係止孔26に挿通されたピンの下方に、ジャッキ50がそれぞれ配置される。クレーン係止孔26に挿通された4つのピンは、荷重面13がジャッキ50の上方でジャッキ50に対向するように配置される。なお、使用するジャッキ50の種類は問わない。油圧式ジャッキでもよいし、機械式ジャッキ等でもよい。
【0028】
図6に示すように、すべてのジャッキ50の支持部をピン12の荷重面13に当接するまで上方に上昇させ、当接後も支持部をさらに上昇させる。ジャッキアップは、設置物40と補助部材G1との間にチルローラ60を配置できるまで行われる。設置物40と補助部材との間にチルローラ60を配置した後には、ジャッキ50の支持部を下降させ、ジャッキ50を除去する。設置物40は、チルローラ60により目的の設置場所に搬送される。
【0029】
その後、設置場所に搬送された設置物40は、上述と同様に、ジャッキ50を用いて、所定の設置場所に降ろされる。設置物40が設置された後には、ジャッキ50は除去され、ジャッキアップ用治具10は、吊りプレート25からはずされる。なお、ジャッキアップ用治具10は、設置物40をチルローラ60に載置した後にクレーン係止孔26から取り外して、他の設置物のために利用してもよい。
【0030】
実施形態に係る機器搬送方法の効果について説明する。
実施形態に係る機器搬送方法では、設置物40の機器ベース20が吊りプレート25を有している。吊りプレート25では、クレーンによって挙上し、重力方向の荷重に対して、H鋼24との接合強度を確保するために、クレーン係止孔26が、機器ベース20の搬送路に対してほぼ平行となる方向に吊りプレート25に開口されている。そのため、載置面対して、ほぼ平行になるように、ジャッキアップ用治具10のピン12をクレーン係止孔26に挿通することができる。
【0031】
ジャッキアップ用治具10のピン12をクレーン係止孔26に挿通することによって、ピン12は、ジャッキ50の支持部の可動方向に対してほぼ垂直な方向でジャッキ50の支持部に支持されることができる。
【0032】
そのため、安定して、設置物40をジャッキアップして、設置物40と搬送路との間にチルローラ60を配置することができる。
【0033】
このように、ジャッキ50、ジャッキアップ用治具および吊りプレート25によって、設置物40を挙上することができるので、クレーンを配置することのできない工事現場であっても、重量物を含む設置物を所定の設置場所に搬送することができる。
【0034】
クレーン搬送ができる場合であってもなくても、機器ベース20に吊りプレート25を設けるようにしておけば、機器の設置現場や機器ベースに応じて、機器ベースごとにネジ等のジャッキアップ手段を設ける必要がない。
【0035】
ジャッキ50は、汎用のものを利用することができる。ジャッキアップ用治具10は、搬送前のジャッキアップの際に利用した後、設置物40と一緒に搬送して、設置物40の設置場所でのジャッキダウンする場合にも利用することができる。そのため、設置物ごとに専用のネジやジャッキ等を準備する必要がなく、工事現場等での生産性を向上させることができる。
【0036】
ジャッキアップ用治具10のピン12には、ジャッキ50の支持部に当接する平坦面である荷重面13が設けられている。そのため、ジャッキ50の支持部に安定して当接させることができ、重量物を安全に挙上することができる。
【0037】
ジャッキアップ用治具10は、ピン12の一方の端部にエンドプレート11が設けられている。エンドプレート11が設けられたことによって、ピン12をクレーン係止孔26に挿入したときに、ジャッキアップ用治具10がクレーン係止孔26から脱落することが防止される。そのため、実施形態に係る機器搬送方法を高い生産性で実施することが可能になる。
【0038】
このようにして、汎用のジャッキを利用して機器や機器ベースを挙上して目的の設置場所に搬送する機器搬送方法を実現することができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
10…ジャッキアップ用治具、11…エンドプレート、12…ピン、13…荷重面、20…機器ベース、21…上板、22…下板、23、24…H鋼、25…吊りプレート、26…クレーン係止孔、30…機器、40…設置物、50…ジャッキ、60…チルローラ